JP2004146664A - 光電変換素子 - Google Patents

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Yuji Fujimori
藤森 裕司
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Abstract

【課題】安価に製造ができ、光電変換効率に優れる色素増感型光電変換素子を提供すること。
【解決手段】図1に示す太陽電池1Aは、電解質溶液を必要としない、いわゆる乾式太陽電池と呼ばれるものであり、第1の電極3と、第1の電極3と対向して設置された第2の電極6と、これらの間に位置する電子輸送層4と、電子輸送層4と接触する色素層Dと、電子輸送層4と第2の電極6との間に位置し、色素層Dに接触する正孔輸送層5とを有し、これらは、基板2上に設置されている。前記電子輸送層中には、色素から励起した電子の逆電子移動を抑制する物質が含まれており、前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも価電子帯(Valence Band)側に伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電変換素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、環境にやさしい電源として、シリコンを用いた太陽電池(光電変換素子)が注目を集めている。シリコンを用いた太陽電池の中には、人工衛星等に用いられる単結晶シリコン型の太陽電池もあるが、実用的なものとしては、特に多結晶シリコンを用いた太陽電池や、アモルファスシリコンを用いた太陽電池が、産業用や家庭用として実用化が始まっている。
【0003】
しかしながら、これらのシリコンを用いた太陽電池は、いずれも、製造コストが高く、また、製造に多大なエネルギーを必要とし、必ずしも省エネルギーな電源とは言えなかった。
【0004】
また、これに替わる次世代の太陽電池として開発され、製造コストが安く、また、製造エネルギーが少ないとされる色素増感型湿式太陽電池(例えば、特許文献1参照)は、蒸気圧の高い電解液を用いているため、電解液が揮発するという問題があった。
【0005】
また、このような欠点を補うものとして、完全固体型色素増感型太陽電池(例えば、非特許文献1参照)の発表がされている。
【0006】
この太陽電池は、TiO層が積層された電極と、TiO層上に設けられたp型半導体層とを有する構成とされている。
【0007】
しかしながら、これらのいずれの方式の色素増感型太陽電池も、まだ変換効率が低く実用化には至っていない。
【0008】
また、従来の技術として、光触媒等の用途に好適な材料であるナノチューブ状の結晶チタニア(チタニアナノチューブ)が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平01−220380号公報
【特許文献2】
特開平10−152323号公報
【非特許文献1】
K. Tennakone, G.R.R.A. Kumara, I.R.M. Kottegoda, K.G.U. Wijiayantha,and V.P.S. Perera: J. Phys. D: Appl. Phys. 31(1998)1492
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安価に製造ができ、光電変換効率に優れる固体型色素増感型光電変換素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(17)の本発明により達成される。
(1)第1の電極と、
該第1の電極と対向して設置された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置し、その少なくとも一部が多孔質な電子輸送層と、
該電子輸送層と接触する色素層と、
前記電子輸送層と前記第2の電極との間に位置する正孔輸送層とを有する光電変換素子であって、
前記電子輸送層中には、色素から励起した電子の逆電子移動を抑制する物質が含まれていることを特徴とする光電変換素子。
(2)前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質である光電変換素子。
(3)前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも価電子帯(Valence Band)側に伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質である光電変換素子。
(4)前記電子輸送層の表面には、色素から励起した電子の逆電子移動を抑制する物質がオーバーコートされている光電変換素子。
(5)前記電子輸送層の表面には、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質がオーバーコートされている光電変換素子。
(6)前記電子の逆電子移動を抑制する物質は酸化物である光電変換素子。
(7)前記電子の逆電子移動を抑制する物質は金属酸化物である光電変換素子。
(8)前記電子の逆電子移動を抑制する物質は化合物である光電変換素子。
(9)前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位は4.5eVである光電変換素子。
(10)前記電子の逆電子移動を抑制する物質の伝導帯(Conduction Band)下端電位は4.5eVよりも価電子帯(Valence Band)側に下端電位を有する物質であるである光電変換素子。
(11)前記電子輸送材料表面の前記電子の逆電子移動を抑制する物質のオーバーコート層は、0.1〜10ナノメートルである光電変換素子。
(12)前記電子輸送材料は、少なくとも結晶粒子または、チューブ状結晶を含有してなる光電変換素子。
(13)前記電子輸送材料は、少なくともTiOナノ粒子または、チタニアナノチューブである光電変換素子。
(14)前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも高い価電子帯(Valence Band)下端電位を有する物質である光電変換素子。
(15)前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも伝導帯(Conduction Band)側に価電子帯(Valence Band)下端電位を有する物質である光電変換素子。
(16)前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも高い価電子帯(Valence Band)下端電位を有する物質が前記電子輸送層の表面にオーバーコートされている光電変換素子。
(17)太陽電池である光電変換素子。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光電変換素子を添付図面に示す好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第1実施形態を示す部分断面図、図2は、第1実施形態の太陽電池の厚さ方向の中央部付近の断面を示す拡大図、図3は、色素層が形成された電子輸送層の断面を示す部分拡大図、図4は、電子輸送層および色素層の構成を示す模式図、図5は、太陽電池の原理を示す模式図、図6は、図1に示す太陽電池回路の等価回路を示す図である。
【0014】
図1に示す太陽電池1は、電解質溶液を必要としない、いわゆる完全固体型色素増感太陽電池と呼ばれるものであり、第1の電極3と、第1の電極3と対向して設置された第2の電極6と、これらの間に位置する電子輸送層4と、電子輸送層4と接触する色素層Dと、電子輸送層4と第2の電極6との間に位置し、色素層Dに接触する正孔輸送層5と、バリヤ層8とを有し、これらは、基板2上に設置されている。
【0015】
以下、各構成要素について説明する。なお、以下の説明では、図1および図2中、各層(各部材)の上側の面を「上面」、下側の面を「下面」と言う。
【0016】
基板2は、第1の電極3、バリヤ層8、電子輸送層4、色素層D、正孔輸送層5および第2の電極6を支持するためのものであり、平板状の部材で構成されている。
【0017】
本実施形態の太陽電池1Aでは、図1に示すように、基板2および後述する第1の電極3側から、例えば、太陽光等の光(以下、単に「光」と言う。)を入射させて(照射して)使用するものである。このため、基板2および第1の電極3は、それぞれ、好ましくは実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされる。これにより、光を、後述する色素層Dに効率よく到達させることができる。
【0018】
この基板2の構成材料としては、例えば、各種ガラス材料、各種セラミックス材料、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような各種樹脂材料、または、アルミニウムのような各種金属材料等が挙げられる。
【0019】
基板2の平均厚さとしては、材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、次のようにすることができる。
【0020】
基板2を、例えばガラス材料のような硬質材料で構成する場合、その平均厚さとしては、0.1〜1.5mm程度であるのが好ましく、0.8〜1.2mm程度であるのがより好ましい。
【0021】
また、基板2を、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のようなフレキシブル素材(可撓性材料)で構成する場合、その平均厚さとしては、0.5〜150μm程度であるのが好ましく、10〜75μm程度であるのがより好ましい。
【0022】
なお、基板2は、必要に応じて、省略することもできる。
【0023】
基板2の上面には、層状(平板状)の第1の電極3が設置されている。換言すれば、第1の電極3は、後述する色素層Dが形成された電子輸送層4の受光面側に、この受光面を覆うようにして設置されている。この第1の電極3は、後述する色素層Dで発生した電子を、電子輸送層4およびバリヤ層8を介して受け取り、これに接続された外部回路100へ伝達する。
【0024】
第1の電極3の構成材料としては、例えば、インジウムティンオキサイド(ITO)、フッ素ドープした酸化錫(FTO)、酸化インジウム(IO)、酸化錫(SnO)のような金属酸化物、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタルのような金属またはこれらを含む合金、あるいは、黒鉛のような各種炭素材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
第1の電極3の平均厚さとしては、材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、次のようにすることができる。
【0026】
第1の電極3を前記の金属酸化物(透明導電性金属酸化物)で構成する場合、その平均厚さとしては、0.05〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜1.5μm程度であるのがより好ましい。
【0027】
また、第1の電極3を前記の金属またはこれらを含む合金、あるいは、各種炭素材料で構成する場合、その平均厚さとしては、0.01〜1μm程度であるのが好ましく、0.03〜0.1μm程度であるのがより好ましい。
【0028】
なお、第1の電極3は、図示の構成のようなものに限定されず、例えば、複数の櫛歯を有する形状のもの等であってもよい。この場合、光は、複数の櫛歯同士の間を通過して、色素層Dに到達するので、第1の電極3は、実質的に透明でなくてもよい。これにより、第1の電極3の構成材料や形成方法(製造方法)等の選択の幅を拡大することができる。また、この場合、第1の電極3の平均厚さとしては、特に限定されないが、例えば、1〜5μm程度とするのが好ましい。
【0029】
また、第1の電極3としては、このような櫛歯状の電極と、ITO、FTO等からなる透明な電極とを組み合わせて(例えば、積層等して)用いることもできる。
【0030】
第1の電極3の上面には、膜状(層状)のバリヤ層(短絡防止手段)8が設置されている。なお、このバリヤ層8の詳細については、後述する。
【0031】
バリヤ層8の上面には、多孔質な電子輸送層4と、この電子輸送層4と接触する色素層Dとが設置されている。
【0032】
電子輸送層4は、少なくとも色素層Dで発生した電子を輸送する機能を有するものである。
【0033】
電子輸送層4の構成材料としては、例えば、二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)のようなn型酸化物半導体材料や、その他のn型半導体材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、この中でも、酸化チタン、特に、二酸化チタンを用いるのが好ましい。すなわち、電子輸送層4は、主として二酸化チタンで構成されているのが好ましい。
【0034】
二酸化チタンは、特に、電子の輸送能力に優れ、また、光に対する感受性が高いので、電子輸送層4自体でも、電子を発生することができる。その結果、太陽電池1Aでは、光電変換効率(発電効率)をより向上することができる。
【0035】
また、二酸化チタンは、その結晶構造が安定しているので、二酸化チタンを主とする電子輸送層4では、過酷な環境下に曝された場合でも、経年変化(劣化)が少なく、安定した性能が長期間継続して得られるという利点を有する。
【0036】
また、二酸化チタンからなる電子輸送層4には、ナノチューブ状の結晶チタニア(チタニアナノチューブ)を単体もしくは混合物として用いてもよい。
【0037】
従来、このナノチューブ状の結晶チタニア(チタニアナノチューブ)は、特開平10−152323公報で報告されているように、紫外線吸収剤、接着剤、触媒等の用途に好適な材料として用いられているものである。
【0038】
我々の実験では、このチタニアナノチューブを単体もしくは混合物として本発明の電子輸送層に用いた場合には、色素で励起され、電子輸送層へ注入された電子の伝搬スピードが非常に速くなり、電子と正孔の再結合を抑制する作用があることが、明らかになっている。
【0039】
これは、従来のTiOナノ粒子が、数個〜数十個のTiO分子の固まり(粒子、grain)であるのに対し、チタニアナノチューブは、単分子もしくは数分子からなるTiO分子がチューブ状に結合してチタニアナノチューブを形成しているからであり、電子の伝搬スピードが速く、色素で励起した電子の逆電子移動を抑制しているため、電子と正孔の再結合が起こり難いためである。
【0040】
二酸化チタンからなる電子輸送層4にナノチューブ状の結晶チタニア(以下、チタニアナノチューブという)を単体もしくは混合物として用いると、通常用いられる二酸化チタン粒子に比べてチタニアナノチューブの比表面積が5〜100倍大きいので、電子輸送層4の表面積を十分大きくすることができる。
【0041】
より具体的には、通常用いられる二酸化チタン粒子は10〜150m/g程度の比表面積であるのに比べて、チタニアナノチューブは100〜1500m/g程度の比表面積を有する。
【0042】
したがって、電子輸送層4の外面および孔41の内面に沿って形成される色素層D(後述参照)の形成面積(形成領域)も十分に大きくすることができ、従来のポーラス状のTiO結晶に比べて色素の吸着量が、5〜100倍になった。
【0043】
チタニアナノチューブの比表面積が、従来のTiOナノ粒子の比表面積に比べて大きい理由は、従来のTiOナノ粒子が、数個〜数十個のTiO分子の固まり(粒子、grain)であるのに対し、チタニアナノチューブは、単分子もしくは数分子からなるTiO分子がチューブ状に結合してチタニアナノチューブを形成しているからである。
【0044】
次に、このチタニアナノチューブの形成方法を以下に詳細に説明する。
(1)まず、チタンイソプロポキシド(Ti(OPr))等の金属アルコキシドとIPA(イソプロピルアルコール)等のアルコールを混合した溶液に硝酸、酢酸等の酸を入れた溶液に、水を加えることによって加水分解してTiO(二酸化チタン)を形成するゾルゲル法、チタン鉱石を硝酸等の強酸で、加熱過熱化水分解して得られる含水酸化チタンを800〜900℃で焼成してTiOを形成する気相法、TiClにOおよびHを接触させてTiOを形成する液相法等のよく知られている形成法により、TiOを形成する。
(2)次に、これらの方法により得られたTiO(結晶)を5〜15M(モル)のKOH(水酸化カリウム)またはNaOH(水酸化ナトリウム)の水溶液中に入れ、60〜150℃で10〜20時間、アルカリ処理をする。
(3)このTiOアルカリ水溶液を希塩酸(HCl)水溶液及び純水でpH7前後になるように中和処理する。
(4)この状態では、TiOの塊となっているため、乳鉢等で1〜10時間程度の時間、混連し、チタニアナノチューブを得る。
【0045】
こうして得られた、粉末をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察すると、製造条件によるが、直径5〜50nm、長さ10〜200nm、比表面積100〜1500m/gのチタニアナノチューブが形成されていた。
【0046】
こうして形成された二酸化チタンからなるナノチューブ状(体)の結晶チタニア(チタニアナノチューブ)を単体もしくは混合物として電子輸送層4に用いる。
【0047】
また、色素で励起した電子の逆電子移動を抑制する別の方法としては、上述したTiOナノ粒子または、チタニアナノチューブの表面に、0.1〜10ナノメートルの電子の逆電子移動を抑制する物質(薄膜金属酸化物)をオーバーコートしてもよい。
【0048】
このとき、電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質であることが必要であり、電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質が前記電子輸送層の表面に0.1〜10ナノメートルの厚みのオーバーコート層が形成されている。
【0049】
電子の逆電子移動を抑制する物質が、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有するとは、具体的には、電子の逆電子移動を抑制する物質が、電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも価電子帯(Valence Band)側に伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質であるということである。
【0050】
我々の実験では、電子の逆電子移動を抑制する物質として、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質をチタニアナノ粒子またはチタニアナノチューブの表面に、0.1〜10ナノメートルの厚みでオーバーコートした場合には、色素で励起された電子が、まず金属酸化物からなるオーバーコート層に注入され、次にTiOに伝搬される。その後は、両者の伝導帯(Conduction Band)下端電位の高さの違いにより、TiOから、金属酸化物への電子の逆移動が起こり難くなるため、電子と正孔の再結合を抑制する作用があることが、明らかになっている。
【0051】
このとき、電子輸送層にTiOを用いた場合には、TiOの伝導帯(Conduction Band)下端電位は4.5eVであり、電子の逆電子移動を抑制する物質の伝導帯(Conduction Band)下端電位は4.5eV以下である。
【0052】
電子の逆電子移動を抑制する物質の伝導帯(Conduction Band)下端電位が4.5eV以下であるということは、電子の逆電子移動を抑制する物質の伝導帯(Conduction Band)下端電位が4.5eVよりも価電子帯(Valence Band)側に下端電位を有する物質であるであるということを指す。
【0053】
電子輸送材料は、少なくとも結晶粒子または、チューブ状結晶を含有しており、少なくともTiOナノ粒子または、チタニアナノチューブであることが好ましい。
【0054】
また、前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも高い価電子帯(Valence Band)下端電位を有する物質であることが好ましい。すなわち、前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも伝導帯(Conduction Band)側に価電子帯(Valence Band)下端電位を有するということである。
【0055】
電子の逆電子移動を抑制する物質の具体的な例としては、金属酸化物が好ましく、金属酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、酸化ニオブ、MgO、ZnO、SnOなどが用いられ、これらは、電子輸送層4を構成するTiO(二酸化チタン)の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する金属酸化物である。
【0056】
この物質が前記電子輸送層の表面に0.1〜10ナノメートルの厚さでオーバーコートされている。
【0057】
次に、このオーバーコート層の形成方法を以下に詳細に説明する。
(1)ガラス基板上に、少なくともチタニアナノ粒子またはチタニアナノチューブを含む電子輸送材料層を形成する。
(2)次に、この電子輸送材料層が形成されたガラス基板をマグネシウム溶液に浸漬させる。
(3)その後、溶液から取り出した基板を洗浄し、大気中または酸素雰囲気中で、400〜500度の温度で基板を再焼成することによって、電子輸送材料層であるチタニアナノ粒子またはチタニアナノチューブの表面に0.1〜10ナノメートルの酸化マグネシウムの薄膜金属酸化物層が形成する。
【0058】
このような薄膜姻族酸化物層が前記電子輸送層の表面に0.1〜10ナノメートルの厚さでオーバーコートされている。
【0059】
次に二酸化チタンとしては、結晶構造がアナターゼ型の二酸化チタンを主とするもの、ルチル型の二酸化チタンを主とするもの、アナターゼ型の二酸化チタンとルチル型の二酸化チタンとの混合物を主とするもののいずれであってもよい。
【0060】
結晶構造がアナターゼ型の二酸化チタンは、電子をより効率よく輸送することができるという利点を有する。
【0061】
なお、ルチル型の二酸化チタンとアナターゼ型の二酸化チタンとを混合する場合、ルチル型の二酸化チタンとアナターゼ型の二酸化チタンとの混合比は、特に限定されないが、例えば、重量比で95:5〜5:95程度であるのが好ましく、80:20〜20:80程度であるのがより好ましい。
【0062】
電子輸送層4は、複数の孔(細孔)41を有している。図3は、電子輸送層4に、光が入射している状態を模式的に示している。図3に示すように、バリヤ層8を通過した光(図3中の矢印)は、電子輸送層4の内部まで侵入し、電子輸送層4内を透過、または、孔41内で任意の方向に反射(乱反射、拡散等)する。このとき、光は、色素層Dと接触することになり、色素層Dにおいて高い頻度で電子および正孔を発生させることができる。
【0063】
この電子輸送層4の空孔率としては、特に限定されないが、例えば、5〜90%程度であるのが好ましく、15〜50%程度であるのがより好ましく、20〜40%程度であるのがさらに好ましい。
【0064】
電子輸送層4の空孔率を、このような範囲内とすることにより、電子輸送層4の表面積を十分大きくすることができる。したがって、電子輸送層4の外面および孔41の内面に沿って形成される色素層D(後述参照)の形成面積(形成領域)も十分に大きくすることができる。このため、色素層Dでは、十分な電子を発生させることができるとともに、この電子を効率よく電子輸送層4へ受け渡すことができる。その結果、太陽電池1Aでは、発電効率(光電変換効率)をより向上することができる。
【0065】
また、電子輸送層4は、比較的厚さの大きなものであってもよいが、膜状をなすものが好ましい。これにより、太陽電池1Aの薄型化(小型化)、製造コストの削減を図ることができ有利である。
【0066】
この場合、電子輸送層4の平均厚さ(膜厚)としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜300μm程度であるのが好ましく、0.5〜100μm程度であるのがより好ましく、1〜25μm程度であるのがさらに好ましい。
【0067】
このような電子輸送層4には、色素を、例えば吸着、結合(共有結合、配位結合)等させることにより、色素層Dが接触するようにして形成されている。
【0068】
この色素層Dは、受光により、電子と正孔とを発生する受光層であり、図4に示すように、電子輸送層4の外面および孔41の内面に沿って形成されている。これにより、色素層Dで発生した電子を効率よく電子輸送層4に受け渡すことができる。
【0069】
この色素層Dを構成する色素としては、特に限定されないが、例えば、顔料、染料等が挙げられ、これらを単独または混合して使用することができるが、経時的変質、劣化がより少ないという点で顔料を、電子輸送層4への吸着性(電子輸送層4との結合性)がより優れるという点で染料を用いるのが好ましい。
【0070】
また、顔料としては、特に限定されないが、例えば、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ペンゾイミダゾロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ペンズイミダゾロンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミダゾロンブラウン等のアゾ系顔料、アントラピリミジンイエロー、アントラキノニルレッド等のアントラキノン系顔料、銅アゾメチンイエロー等のアゾメチン系顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系顔料、イソインドリンイエロー等のイソインドリン系顔料、ニッケルジオキシムイエロー等のニトロソ系顔料、ペリノンオレンジ等のペリノン系顔料、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンマルーン、キナクリドンスカーレット、キナクリドンレッド等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンマルーン等のペリレン系顔料、ジケトピロロピロールレッド等のピロロピロール系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料のような有機顔料、カーボンブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン等の炭素系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等クロム酸塩系顔料、カドミウムイエロー、カドミウムリトポンイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムリトポンオレンジ、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムリトポンレッド、硫化等の硫化物系顔料、オーカー、チタンイエロー、チタンバリウムニッケルイエロー、べんがら、鉛丹、アンバー、褐色酸化鉄、亜鉛鉄クロムブラウン、酸化クロム、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック等の酸化物系顔料、ビリジアン等の水酸化物系顔料、紺青等のフェロシアン化物系顔料、群青等のケイ酸塩系顔料、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等のリン酸塩系顔料、その他(例えば硫化カドミウム、セレン化カドミウム等)のような無機顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
また、染料としては、特に限定されないが、例えば、RuL(SCN)、RuLCl、RuLCN、Rutenium535−bisTBA(Solaronics社製)、[RuL (NCSOのような金属錯体色素、シアン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記組成式中のLは、2,2’ーbipyridine、または、その誘導体を示す。
【0072】
色素層Dが形成された電子輸送層4の上面には、層状(平板状)の正孔輸送層5が設置されている。換言すれば、正孔輸送層5は、色素層Dが形成された電子輸送層4を介して第1の電極3と対向して設置されている。この正孔輸送層5は、色素層Dで発生した正孔を捕捉し、輸送する機能を有する。換言すれば、この正孔輸送層5は、後述する第2の電極6を介して、または、正孔輸送層5自体が電極となり外部回路100へ正孔を輸送する機能を有する。
【0073】
正孔輸送層5の平均厚さとしては、特に限定されないが、例えば、1〜500μm程度であるのが好ましく、10〜300μm程度であるのがより好ましく、10〜30μm程度であるのがさらに好ましい。
【0074】
正孔輸送層5の構成材料としては、例えば、各種イオン伝導特性を有する物質、トリフェニルジアミン(モノマー、ポリマー等)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、フタロシアニン化合物(例えば、銅フタロシアニン)またはこれらの誘導体のような各種p型半導体材料、または、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタルのような金属またはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、イオン伝導特性を有する物質が好ましく用いられる。
【0075】
すなわち、正孔輸送層5は、主としてイオン伝導特性を有する物質で構成されているのが好ましい。これにより、正孔輸送層5は、色素層Dで発生した正孔(ホール)をより効率よく輸送することができる。
【0076】
このとき、正孔輸送層5を構成する正孔輸送材料は、p型無機半導体または、p型化合物半導体であるイオン伝導特性を有する物質であるのが好ましく、電子輸送層中の電子輸送材料にTiOを用いる場合には、TiOのバンドギャップが2.2eVであることから、正孔輸送層5を構成する正孔輸送材料のバンドギャップは2.2eV以上であることが必要である。
また、このイオン伝導特性を有する物質としては、例えば、CuI、AgIのようなヨウ化金属化合物、AgBrのような臭化金属化合物等のハロゲン化金属化合物、CuSCNのようなチオシアン酸金属塩(ロダン化金属化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
これらの中でも、イオン伝導特性を有する物質としては、ヨウ化金属化合物、臭化金属化合物等のハロゲン化金属化合物が好ましい。ハロゲン化金属化合物は、イオン伝導特性に特に優れている。
【0078】
さらに、イオン伝導特性を有する物質としては、CuI、AgIのようなヨウ化金属化合物のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが、特に好ましい。ヨウ化金属化合物は、イオン伝導特性に極めて優れている。このため、正孔輸送層5の主材料として、ヨウ化金属化合物を用いることにより、太陽電池1Aの光電変換効率(エネルギー変換効率)をより向上することができる。
【0079】
また、正孔輸送層5は、図2に示すように、色素層Dが形成された電子輸送層4の孔41内に入り込んで形成されている。これにより、色素層Dと正孔輸送層5との接触面積を増大することができるので、色素層Dで発生した正孔(ホール)を、より効率よく正孔輸送層5へ伝達することができる。その結果、太陽電池1Aは、発電効率をさらに向上することができる。
【0080】
正孔輸送層5の上面には、層状(平板状)の第2の電極6が設置されている。
【0081】
第2の電極6の平均厚さとしては、材料、用途等により適宜設定され、特に限定されない。
【0082】
また、第2の電極6の構成材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタルのような金属またはこれらを含む合金、あるいは、黒鉛のような各種炭素材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
また、本発明の光電変換素子は、光化学素子であるため、第2の電極6と正孔輸送層5との間には界面を形成し、この界面には触媒層が形成されている。
【0084】
従来の色素増感湿式光電変換素子は、正孔輸送層にヨウ素溶液等からなる電解液が用いられているため、第2の電極6と色素を吸着した電子輸送層4との間には、スペーサー等を用いてある距離の間隙を形成し、この間隙には、正孔輸送層である電解液が充填されている構造であった。
【0085】
このような、従来の色素増感湿式太陽電池やK. Tennakone, G.R.R.A. Kumara,I.R.M. Kottegoda, K.G.U. Wijiayantha, and V.P.S. Perera: J. Phys. D: Appl. Phys. 31(1998)1492 等に発表されている従来の完全固体型色素増感型太陽電池等は、第2の電極が形成された基板と色素が吸着された電子輸送層4が形成された基板とをクリップ等で狭持して、正孔輸送層と第2の電極を押し当てて、押圧により物理的に接触させているものであり、接触抵抗が大きい等の問題があった。
【0086】
しかしながら、本発明の完全固体型色素増感光電変換素子は、第2の電極6と正孔輸送層5の間には界面を形成しており、この界面には、触媒層が形成されている点で、上述した従来の色素増感型太陽電池等とは異なる。
【0087】
また、本発明の完全固体型色素増感光電変換素子の正孔輸送層5と触媒層とからなる界面の界面準位は0.1〜0.0001eVであることが好ましく、さらに好ましい界面準位は0.01〜0.001eVである。
【0088】
本発明においては、正孔輸送層5上の触媒層の形成は、スピンコート、印刷法、スプレーコート、塗布等のウェットプロセス(湿式)法が用いられ、正孔輸送層5と触媒層との間には界面を形成している。これらのウェットプロセス(湿式)の後工程には、触媒層を乾燥、焼成してもよい。
【0089】
また、本発明においては、正孔輸送層5上の触媒層の形成は、スパッタ、蒸着、CVD法等のドライプロセス(乾式)法が用いられて、正孔輸送層5と触媒層との間には界面を形成している。
【0090】
触媒層としては、Pt(白金)、Pt−Ru(白金−ルテニウム)、Au(金)等が用いられるが、本発明にいては、黒鉛のような各種炭素材料等が最適である。
【0091】
炭素材料の例としては、黒鉛、グラファイト、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フラーレン(C60)等のいずれか1つ以上が用いられる。
【0092】
炭素材料の強度を上げるために、これらの炭素材料中には炭素繊維が織り込まれていてもよい。炭素繊維としては、レーヨンやポリアクリロニトリルなどの有機繊維や精製した石油ピッチを紡糸して作った繊維を、不活性ガス中で熱処理して炭化して作った繊維が用いられる。
【0093】
特に、ポリアクリロニトリルで作った炭素繊維は高弾性、高強度であり、これを上述した炭素材料と樹脂などで固めた複合剤は、本発明の触媒層として最適である。
【0094】
炭素繊維および樹脂は導電性を有している。
【0095】
さらに、第2の電極6と正孔輸送層5との間には、より密着した界面を形成するために、正孔輸送層をより平滑に形成することが必要である。
【0096】
正孔輸送層の触媒層と界面をなす側の表面は、平坦であることが望ましく、正孔輸送層の触媒層と界面をなす側の表面の表面荒さは、Rmax(最大表面荒さ)が10μm以下であることが望ましく、Ra(平均表面荒さ)は5μm以下であることが望ましい。
【0097】
また、形成された触媒層の表面荒さも、Rmax(最大表面荒さ)が10μm以下であることが望ましく、Ra(平均表面荒さ)は5μm以下であることが望ましい。
【0098】
このような太陽電池1Aでは、図5に示すように、光が入射すると、主に色素層Dにおいて、電子が励起され、電子(e)と正孔(h)とが発生する。このうち、電子は、電子輸送層4へ、正孔は、正孔輸送層5へ移動し、第1の電極3と第2の電極6との間に、電位差(光起電力)が生じて、外部回路100に、電流(光励起電流)が流れる。
【0099】
なお、図5に示すVaccum Energyの値は、電子輸送層4およびバリヤ層8が二酸化チタンで構成され、正孔輸送層5がCuIで構成される場合の一例である。
【0100】
この様子を等価回路で表すと、図6に示すようなダイオード200を有する電流の循環回路が形成されているものとなる。
【0101】
なお、光の照射(受光)により、色素層Dでは、電子および正孔が同時に発生するが、以下の説明では、便宜上、「電子が発生する」と記載する。
【0102】
さて、本発明では、第1の電極3と正孔輸送層5との間での短絡(リーク)を防止または抑制する短絡防止手段を設けたことに特徴を有している。
【0103】
以下、この短絡防止手段について、詳述する。
【0104】
本実施形態では、短絡防止手段として、膜状(層状)をなし、第1の電極3と電子輸送層4との間に位置するバリヤ層8が設けられている。このバリヤ層8は、電子輸送層4の空孔率より、その空孔率が小さくなるよう形成されたものである。
【0105】
太陽電池1Aを製造する際には、後述するように、例えば、正孔輸送層材料を塗布法により、色素層Dが形成された電子輸送層4の上面に塗布することが行われる。
【0106】
この場合、仮に、バリヤ層8が設けられない太陽電池では、電子輸送層4の空孔率を大きくすると、正孔輸送層材料が色素層Dが形成された電子輸送層4の孔41内を浸透していき、第1の電極3に到達してしまうことがある。すなわち、バリヤ層8を有さない太陽電池では、第1の電極3と正孔輸送層5との間で接触(短絡)が生じることにより、漏れ電流が多くなり、発電効率(光電変換効率)の低下を招く場合がある。
【0107】
これに対し、バリヤ層8が設けられた太陽電池1Aでは、前述のような不都合が防止され、発電効率の低下が好適に防止または抑制される。
【0108】
また、バリヤ層8の空孔率をA[%]とし、電子輸送層4の空孔率をB[%]としたとき、B/Aが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。これにより、バリヤ層8と電子輸送層4とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
【0109】
より具体的には、バリヤ層8の空孔率Aとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バリヤ層8は、緻密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
【0110】
さらに、バリヤ層8と電子輸送層4との厚さの比率は、特に限定されないが、例えば、1:99〜60:40程度であるのが好ましく、10:90〜40:60程度であるのがより好ましい。換言すれば、バリヤ層8と電子輸送層4との全体におけるバリヤ層8の占める厚さの割合は、1〜60%程度であるのが好ましく、10〜40%程度であるのがより好ましい。これにより、バリヤ層8は、第1の電極3と正孔輸送層5との接触等による短絡を、より確実に防止または抑制することができるとともに、色素層Dへの光の到達率が低下するのを好適に防止することができる。
【0111】
より具体的には、バリヤ層8の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.1〜5μm程度であるのがより好ましく、0.5〜2μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
【0112】
このバリヤ層8の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、電子輸送層4の主たる構成材料である酸化チタンの他、例えば、SrTiO、ZnO、SiO、Al、SnOのような各種金属酸化物、CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BN、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、この中でも、電子輸送層4と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。バリヤ層8をこのような材料で構成することにより、色素層Dで発生した電子をより効率よく、電子輸送層4からバリヤ層8へ伝達することができ、その結果、太陽電池1Aの発電効率をより向上することができる。
【0113】
このバリヤ層8および電子輸送層4の厚さ方向の抵抗値は、それぞれ、特に限定されないが、バリヤ層8と電子輸送層4との全体における厚さ方向の抵抗値、すなわち、バリヤ層8と電子輸送層4との積層体の厚さ方向の抵抗値は、100Ω/cm以上程度であるのが好ましく、1kΩ/cm以上程度であるのがより好ましい。これにより、第1の電極3と正孔輸送層5との間でのリーク(短絡)をより確実に防止または抑制することができ、太陽電池1Aの発電効率の低下を防ぐことができるという利点がある。
【0114】
また、バリヤ層8と電子輸送層4との界面は、明確でなくても、明確であってもよいが、明確でない(不明確である)のが好ましい。すなわち、バリヤ層8と電子輸送層4とは、一体的に形成され、互いに部分的に重なっているのが好ましい。これにより、バリヤ層8と電子輸送層4との間での電子の伝達を、より確実に(効率よく)行うことができる。
【0115】
さらに、バリヤ層8と電子輸送層4とは、同一の組成の材料(例えば、二酸化チタンを主とする材料)を用いて作成し、それらの空孔率のみが異なる構成、すなわち、電子輸送層4の一部が、前記バリヤ層8として機能するような構成であってもよい。
【0116】
この場合、電子輸送層4は、その厚さ方向に、密な部分と粗な部分とを有し、このうち、密な部分がバリヤ層8として機能する。
【0117】
また、この場合、密な部分は、電子輸送層4の第1の電極3側に形成されているのが好ましいが、厚さ方向の任意の位置に形成することもできる。
【0118】
また、この場合、電子輸送層4は、密な部分で粗な部分を挟んだ部分を有する構成のものや、粗な部分で密な部分を挟んだ部分を有する構成のもの等であってもよい。
【0119】
このような太陽電池1Aでは、色素層D(色素層Dが形成された電子輸送層4)への光の入射角が90°での光電変換効率をR90とし、光の入射角が52°での光電変換効率をR52としたとき、R52/R90が0.8以上程度となるような特性を有しているのが好ましく、0.85以上程度であるのがより好ましい。このような条件を満たすということは、色素層Dが形成された電子輸送層4が光に対する指向性が低い、すなわち、等方性を有するということである。したがって、このような太陽電池1Aは、太陽の日照時間のほぼ全域に渡って、より効率良く発電することができる。
【0120】
さらに、太陽電池1Aでは、第1の電極3が正、第2の電極6(正孔輸送層5)が負となるようにして、0.5Vの電圧を印加したとき、その抵抗値が、例えば、100Ω/cm以上程度となる特性を有するのが好ましく、1kΩ/cm以上程度となる特性を有するのがより好ましい。このような特性を有するということは、太陽電池1Aでは、第1の電極3と正孔輸送層5との間での接触等による短絡(リーク)が好適に防止または抑制されていることを示すものである。よって、このような太陽電池1Aでは、発電効率(光電変換効率)をより向上することができる。
【0121】
このような太陽電池1Aは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0122】
まず、例えばソーダガラス等で構成された基板2を用意する。この基板2には、厚さが均一で、たわみのないものが好適に用いられる。
【0123】
<1> まず、第1の電極3を基板2の上面に形成する。
第1の電極3は、例えばFTO等で構成される第1の電極3の材料を、例えば、蒸着法、スパッタリング法、印刷法等を用いることにより、形成することができる。
【0124】
<2> 次に、バリヤ層8を第1の電極3の上面に形成する。
バリヤ層8は、例えば、ゾル・ゲル法、蒸着(真空蒸着)法、スパッタリング法(高周波スパッタリング、DCスパッタリング)、スプレー熱分解法、ジェットモールド(プラズマ溶射)法、CVD法等により形成することができるが、この中でも、ゾル・ゲル法により形成するのが好ましい。
【0125】
このゾル・ゲル法は、その操作が極めて簡単であり、例えば、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法と組み合わせて用いることにより、大掛かりな装置も必要とせず、好適にバリヤ層8を膜状(厚膜および薄膜)に形成することができる。
【0126】
また、塗布法によれば、例えばマスク等を用いて、マスキングを行うことにより、所望のパターン形状のバリヤ層8を容易に得ることができる。
【0127】
このゾル・ゲル法としては、バリヤ層材料中での後述するチタン化合物(有機または無機)の反応(例えば、加水分解、重縮合等)を許容しない(防止する)方法(以下、「MOD(Metal Organic DepositionまたはMetal Organic Decomposition)法」と言う。)、あるいは、これを許容する方法が挙げられるが、特に、MOD法を用いるのが好ましい。
【0128】
このMOD法によれば、バリヤ層材料中でのチタン化合物(有機または無機)の安定性が維持され、また、バリヤ層8をより容易かつ確実に(再現性よく)、緻密なもの(前記範囲内の空孔率)とすることができる。
【0129】
特に、チタンテトライソプロポキシド(TPT)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシドのような化学的に非常に不安定な(分解しやすい)チタンアルコキシド(金属アルコキシド)等の有機チタン化合物を用いて、緻密なTiO層(本発明のバリヤ層8)を形成する場合には、このMOD法は最適である。
【0130】
以下、バリヤ層8のMOD法による形成方法について説明する。
【0131】
[バリヤ層材料の調製]
例えば、チタンテトライソプロポキシド(TPT)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシドのようなチタンアルコキシド(金属アルコキシド)等の有機チタン化合物のうちの1種または2種以上組み合わせたものを用いる場合には、まず、この有機チタン化合物(またはこの溶液)を、例えば、無水エタノール、2−ブタノール、2−プロパノール、2−n−ブトキシエタノール等の有機溶媒(またはこれらの混合溶媒)に溶解する。
【0132】
これにより、有機チタン化合物の前記溶液中の濃度(含有量)を調製(例えば0.1〜10mol/L程度)して、得られるバリヤ層材料の粘度を調製する。このバリヤ層材料の粘度としては、前記塗布法の種類等により、適宜設定され、特に限定されないが、スピンコートを用いる場合には、好ましくは高粘度(例えば0.5〜20cP(常温)程度)とされ、スプレーコートを用いる場合には、好ましくは低粘度(例えば0.1〜2cP(常温)程度)とされる。
【0133】
次に、この溶液に、例えば、四塩化チタン、酢酸、アセチルアセトン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の前記チタンアルコキシド(金属アルコキシド)を安定化する機能を有する添加物を添加する。
【0134】
これらの添加物を加えることにより、これらの添加物がチタンアルコキシド中のチタン原子に配位するアルコキシド(アルコキシル基)と置換して、チタン原子に配位する。これにより、チタンアルコキシドの加水分解を抑止して、安定化させる。すなわち、これらの添加物は、チタンアルコキシドの加水分解を抑止する加水分解抑止剤として機能するものである。この場合、この添加物とチタンアルコキシドとの配合比は、特に限定されないが、例えば、モル比で1:2〜8:1程度とするのが好ましい。
【0135】
より具体的には、チタンアルコキシドにジエタノールアミンを配位させた場合、チタンアルコキシドのアルコキシド(アルコキシル基)に換わり(置換して)、チタン原子にジエタノールアミンが2分子配位する。このジエタノールアミンにより置換された化合物は、チタンアルコキシドよりも二酸化チタンを生成する上で安定化した化合物となる。
【0136】
他の場合の組み合わせでも同様である。
【0137】
これにより、バリヤ層材料(バリヤ層形成用のゾル液:MOD用ゾル液)を得る。
【0138】
また、四塩化チタン(TTC)等の無機チタン化合物を用いる場合には、この無機チタン化合物(またはこの溶液)を、無水エタノール、2−ブタノール、2−プロパノール、2−n−ブトキシエタノール等の有機溶媒(またはこれらの混合溶媒)に溶解することにより、有機溶媒がチタンに配位し、添加物を加えないで安定した化合物となる。
【0139】
さらに、チタンオキシアセチルアセトナート(TOA)等の有機チタン化合物を用いる場合には、この有機チタン化合物(またはこの溶液)が単独で安定なものであるので、前記有機溶媒に溶解することで安定したバリヤ層材料を得ることができる。
【0140】
なお、本発明において、MOD法でバリヤ層8を形成する場合には、上述した3つの溶液のうち、次の方法により調整された溶液を用いるのが最適である。すなわち、チタンテトライソプロポキシド(TPT)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシドのようなチタンアルコキシド等の有機チタン化合物(またはこの溶液)を溶媒で溶解(または希釈)し、この溶液に、四塩化チタン、酢酸、アセチルアセトン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の添加物を添加する方法により調整された溶液を用いるのが最適である。この方法によれば、チタンアルコキシドのチタン原子に、前記添加物を配位させ、二酸化チタンを生成する上で安定化した化合物を得ることができる。
【0141】
これによって、化学的に不安定なチタンアルコキシドを、化学的に安定な化合物にすることができる。かかる化合物は、本実施形態のバリヤ層8、すなわち、二酸化チタンを主材料とする緻密なバリヤ層8を形成する場合において、極めて有用である。
【0142】
[バリヤ層8の形成]
第1の電極3の上面に、塗布法(例えば、スピンコート等)により、バリヤ層材料を塗布して膜状に形成する。塗布法としてスピンコートを用いる場合、回転数を500〜4000rpm程度で行うのが好ましい。
【0143】
次いで、かかる塗膜に対して、熱処理を施す。これにより、有機溶媒を揮発、除去する。この熱処理条件としては、好ましくは50〜250℃程度で1〜60分間程度、より好ましくは100〜200℃程度で5〜30分間程度とされる。
【0144】
かかる熱処理は、例えば、大気中、窒素ガス中で行うことができる他、例えば、各種不活性ガス、真空、減圧状態(例えば、1×10−1〜1×10−6Torr)のような非酸化性雰囲気中で行うようにしてもよい。
【0145】
なお、バリヤ層材料の第1の電極3の上面への塗布は、第1の電極3を加熱しつつ行うようにしてもよい。
【0146】
さらに、塗膜に対して、前記熱処理より高温で熱処理を施す。これにより、塗膜中に残存する有機成分を除去するとともに、二酸化チタン(TiO)を焼結させ、アモルファスまたはアナターゼ型の結晶構造の二酸化チタンからなるバリヤ層8を形成する。この熱処理条件としては、好ましくは300〜700℃程度で1〜70分間程度、より好ましくは400〜550℃程度で5〜45分間程度とされる。
【0147】
なお、かかる熱処理の雰囲気は、前記熱処理と同様の雰囲気とすることができる。
【0148】
以上のような操作を、好ましくは1〜20回程度、より好ましくは1〜10回程度行って、前述したような平均厚さのバリヤ層8を形成する。
【0149】
この場合、1回の前記操作により得られる塗膜の厚さ(膜厚)は、100nm以下程度とするのが好ましく、50nm以下程度とするのがより好ましい。このような薄膜を積層してバリヤ層8を形成することにより、バリヤ層8をより均一で密度の高いものとすることができる。また、1回の前記操作により得られる膜厚の調整は、バリヤ層材料の粘度を調製することで、容易に行うことができる。
【0150】
なお、バリヤ層8の形成に先立って、第1の電極3の上面には、例えば、Oプラズマ処理、EB処理、有機溶剤(例えばエタノール、アセトン等)での洗浄処理等を行うことにより、第1の電極3の上面に付着した有機物を除去するようにしてもよい。この場合、バリヤ層8を形成する部分を残し、第1の電極3の上面にマスク層を形成し、マスキングしておく。また、このマスク層は、バリヤ層8の形成後に除去するようにしてもよく、太陽電池1Aの完成後に除去するようにしてもよい。
【0151】
<3> 次に、バリヤ層8の上面に、電子輸送層4を形成する。
電子輸送層4は、例えば、ゾル・ゲル法、蒸着法、スパッタリング法等により形成することができるが、この中でも、ゾル・ゲル法により形成するのが好ましい。
【0152】
このゾル・ゲル法は、その操作が極めて簡単であり、例えば、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法と組み合わせて用いることにより、大掛かりな装置も必要とせず、好適に電子輸送層4を膜状(厚膜および薄膜)に形成することができる。
【0153】
また、塗布法によれば、例えばマスク等を用いて、マスキングを行うことにより、所望のパターン形状の電子輸送層4を容易に得ることができる。
【0154】
この電子輸送層4の形成には、電子輸送層材料の粉末を含有するゾル液を用いるのが好ましい。これにより、電子輸送層4をより容易かつ確実に多孔質とすることができる。
【0155】
電子輸送層材料の粉末の平均粒径としては、特に限定されないが、例えば、1nm〜1μm程度であるのが好ましく、5〜50nm程度であるのがより好ましい。電子輸送層材料の粉末の平均粒径を前記の範囲内とすることにより、電子輸送層材料の粉末のゾル液中での均一性を向上することができる。また、このように電子輸送層材料の粉末の平均粒径を小さくすることにより、得られる電子輸送層4の表面積(比表面積)をより大きくすることができるので、色素層Dの形成領域(形成面積)をより大きくすることができ、太陽電池1Aの発電効率の向上に寄与する。
【0156】
以下に、電子輸送層4の形成方法の一例について説明する。
【0157】
[酸化チタン粉末(電子輸送層材料の粉末)の調製]
<3−A0> ルチル型の二酸化チタン粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末とを所定の配合比(アナターゼ型の二酸化チタン粉末のみ、ルチル型の二酸化チタン粉末のみの場合も含む)にて、配合し混合しておく。
【0158】
これらのルチル型の二酸化チタン粉末の平均粒径と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末の平均粒径とは、それぞれ異なっていてもよいし、同じであってもよいが、異なっている方が好ましい。
【0159】
なお、酸化チタン粉末全体としての平均粒径は、前述の範囲とする。
【0160】
また、上記二酸化チタン粉末の替わりに、もしくは上記二酸化チタン粉末と混合して、ナノチューブ状(体)の結晶チタニア(チタニアナノチューブ)を単体もしくは混合物として用いてもよい。
【0161】
このときのチタニアナノチューブの大きさの平均は、内径5nm、外形8nm、長さは70nmであった。また、このチタニアナノチューブの比表面積の平均は400m/gであった。
【0162】
[ゾル液(電子輸送層材料)の調製]
<3−A1> まず、例えば、チタンテトライソプロポキシド(TPT)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシドのようなチタンアルコキシド、チタンオキシアセチルアセトナート(TOA)等の有機チタン化合物や、四塩化チタン(TTC)等の無機チタン化合物のうちの1種または2種以上組み合わせたものを、例えば、無水エタノール、2−ブタノール、2−プロパノール、2−n−ブトキシエタノール等の有機溶媒(またはこれらの混合溶媒)に溶解する。
【0163】
このとき、チタン化合物(有機または無機)の溶液中の濃度(含有量)としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜3mol/L程度とするのが好ましい。
【0164】
次に、必要に応じて、この溶液中に各種添加物を添加する。有機チタン化合物として、例えばチタンアルコキシドを用いる場合には、チタンアルコキシドは、化学的安定性が低いので、例えば、酢酸、アセチルアセトン、硝酸等の添加物を添加するようにする。これにより、チタンアルコキシドを化学的に安定な化合物とすることができる。この場合、この添加物とチタンアルコキシドとの配合比は、特に限定されないが、例えば、モル比で1:2〜8:1程度とするのが好ましい。
【0165】
<3−A2> 次に、この溶液に、例えば、蒸留水、超純水、イオン交換水、RO水等の水を混合する。この水とチタン化合物(有機または無機)との配合比は、モル比で1:4〜4:1程度とするのが好ましい。
【0166】
<3−A3> 次いで、かかる溶液に、前記工程<3−A0>で調製した酸化チタン粉末もしくはチタニアナノチューブを混合して懸濁(分散)液を得る。
【0167】
<3−A4> さらに、この懸濁液を前記の有機溶媒(または、混合溶媒)で希釈する。これにより、ゾル液を調製する。この希釈倍率としては、例えば、1.2〜3.5倍程度が好ましい。
【0168】
また、酸化チタン粉末(電子輸送層材料の粉末)もしくはチタニアナノチューブのゾル液中の含有量としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜10wt%(重量%)程度であるのが好ましく、0.5〜5wt%程度であるのがより好ましい。これにより、電子輸送層4の空孔率を好適に前記範囲内とすることができる。
【0169】
[電子輸送層(酸化チタン層)4の形成]
<3−A5> バリヤ層8を好ましくは加熱しつつ、バリヤ層8の上面に、塗布法(例えば、滴下等)により、ゾル液を塗布して膜状体(塗膜)を得る。この加熱温度としては、特に限定されないが、例えば、80〜180℃程度であるのが好ましく、100〜160℃程度であるのがより好ましい。
【0170】
以上のような操作を、好ましくは1〜10回程度、より好ましくは5〜7回程度行って、前述したような平均厚さの電子輸送層4を形成する。
【0171】
次いで、この電子輸送層4に、必要に応じて、例えば、温度250〜500℃程度で0.5〜3時間程度、熱処理(例えば、焼成等)を施してもよい。
【0172】
<3−A6> 前記工程<3−A5>で得られた電子輸送層4には、必要に応じて、後処理を行うことができる。
【0173】
この後処理としては、例えば、形状を整えるための、研削、研磨等のような機械加工(後加工)や、その他、洗浄、化学処理のような後処理等が挙げられる。
【0174】
また、電子輸送層4は、例えば、次のようにして形成することもできる。以下、電子輸送層4の他の形成方法について説明する。なお、以下の説明では、前記の形成方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0175】
[酸化チタン粉末(電子輸送層材料の粉末)の調製]
<3−B0> 前記工程<3−A0>と同様の工程を行う。
【0176】
[塗布液(電子輸送層材料)の調製]
<3−B1> まず、前記工程で調製した酸化チタン粉末もしくはチタニアナノチューブを適当量の水(例えば、蒸留水、超純水、イオン交換水、RO水等)に懸濁する。
【0177】
<3−B2> 次に、かかる懸濁液に、例えば硝酸等の安定化剤を添加し、メノウ製(またはアルミナ製)の乳鉢内で十分に混練する。
【0178】
<3−B3> 次いで、かかる懸濁液に、前記の水を加えてさらに混練する。このとき、前記安定化剤と水との配合比は、体積比で好ましくは10:90〜40:60程度、より好ましくは15:85〜30:70程度とし、かかる懸濁液の粘度を、例えば0.2〜30cP(常温)程度とする。
【0179】
<3−B4> その後、かかる懸濁液に、例えば、最終濃度が0.01〜5wt%程度となるように界面活性剤を添加して混練する。これにより、塗布液(電子輸送層材料)を調製する。
【0180】
なお、界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、両イオン性、非イオン性のいずれであってもよいが、好ましくは非イオン性のものが用いられる。
【0181】
また、安定化剤としては、硝酸に代わり、酢酸やアセチルアセトンのような酸化チタンの表面修飾試薬を用いることもできる。
【0182】
また、塗布液(電子輸送層材料)中には、必要に応じて、例えばポリエチレングリコールのようなバインダー、可塑剤、酸化防止剤等の各種添加物を添加してもよい。
【0183】
[電子輸送層(酸化チタン層)4の形成]
<3−B5> 第1の電極3の上面に、塗布法(例えば、ディッピング等)により、塗布液を塗布・乾燥して膜状体(塗膜)を形成する。また、塗布・乾燥の操作を複数回行って積層するようにしてもよい。これにより、電子輸送層4を得る。
【0184】
次いで、この電子輸送層4に、必要に応じて、例えば、温度250〜500℃程度で0.5〜3時間程度、熱処理(例えば、焼成等)を施してもよい。これにより、単に接触するのに止まっていた酸化チタン粉末同士は、その接触部位に拡散が生じ、酸化チタン粉末同士がある程度固着(固定)するようになる。なお、この状態で、電子輸送層4が多孔質となる。
【0185】
<3−B6> 前記工程<3−A6>と同様の工程を行う。
【0186】
以上のような工程を経て、電子輸送層4が得られる。
【0187】
<4> 次いで、電子輸送層4と、前述したような色素を含む液(例えば、色素を溶媒に溶解した溶液、色素を溶媒に懸濁した懸濁液)とを、例えば、浸漬、塗布等により接触させることにより、色素を電子輸送層4の外面および孔41の内面に、例えば吸着、結合等して色素層Dを形成する。
【0188】
より具体的には、基板2、第1の電極3、バリヤ層8および電子輸送層4の積層体を、色素を含む液に浸漬することにより、容易に、色素層Dを電子輸送層4の外面、孔41の内面に沿って形成することができる。
【0189】
色素を溶解または懸濁(分散)する溶媒(液体)としては、特に限定されないが、例えば、各種水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、酢酸エチル、エーテル、塩化メチレン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0190】
この後、前記積層体を前記溶液(懸濁液)中から取り出し、例えば、自然乾燥による方法や、空気、窒素ガス等の気体を吹き付ける方法等により溶媒を除去する。
【0191】
さらに、必要に応じて、この積層体を、例えば60〜100℃程度の温度で、0.5〜2時間程度、クリーンオーブン等で乾燥してもよい。これにより、色素をより強固に電子輸送層4に吸着(結合)させることができる。
【0192】
<5> 次に、色素層D(色素層Dが形成された電子輸送層4)の上面に、正孔輸送層5を形成する。
正孔輸送層5は、例えばCuI等のイオン伝導特性を有する物質を含む正孔輸送層材料(電極材料)を、色素層Dが形成された電子輸送層4の上面に、例えば、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター等の各種塗布法により、塗布して形成するのが好ましい。
【0193】
このような塗布法によれば、正孔輸送層5を色素層Dが形成された電子輸送層4の孔41内により確実に浸透するようにして形成することができる。
【0194】
また、これらの塗布法は、色素層Dが電子輸送層4上に形成された基板2を、少なくとも、大気圧よりも減圧された容器内に入れられた状態で、上記色素層Dの上面に上記各種塗布法によって正孔輸送層5が塗布されるのが望ましい。
【0195】
より具体的には、図7に示す減圧チャンバーを用いる。この減圧チャンバーは、図7に示すように、例えば、上部構造80と、下部構造79からなり、位置決め口76と位置決めピン77によって、位置決めされ、シリコンゴム等からなるシーリング部材81で上部構造と下部構造がナットとボルトなどによってかしめられることによって密着される構造になっている。
【0196】
この減圧チャンバーは、吸引口78、減圧バルブ(弁)74、減圧室75を有し、吸引口78は真空ポンプにつながれている。減圧バルブ(弁)74を開放した状態で、真空ポンプを稼働させると減圧室75内が、減圧され、上述したように、1×10−1〜1×10−6torr程度の真空状態になる。
【0197】
この密閉されたチャンバー内に、色素層Dが電子輸送層4上に形成された基板2を入れ、このチャンバーを減圧にする。その後、チャンバーの基板2上に設けられたシリコンゴムに、正孔輸送材料を入れたシリンジ73の針71を刺し、気密状態が破られない状態で、電子輸送層4上に形成された色素層D上に、シリンジ内の正孔輸送材料をゆっくりと滴下して、塗布する。
【0198】
このときの正孔輸送材料の前記基板への滴下の量は、1cmの面積に対し、1〜0.001mL毎分である。
【0199】
また、前記塗布法によるは正孔輸送材料の前記色素層上への滴下の開始は、前記減圧チャンバー内が減圧状態になった後、1〜5分経過後に開始される。
【0200】
このように、色素層Dが電子輸送層4上に形成された基板2上に、正孔輸送層を塗布する場合において、上記塗布処理を減圧下で行えば、電子輸送層中に形成された多孔質層内の空隙中にある空気(気体)を脱気することが出来る。
【0201】
したがって、ナノポーラス状態に形成したTiO層中へのCuIの浸透をより助成することが出来る。
【0202】
このときの、減圧状態は、大気圧よりも低い状態で行われるが、より具体的には、1×10−1〜1×10−6torrであることが望ましく、さらに望ましくは、1×10−1〜1×10−3torrであることがより望ましい。
【0203】
前記塗布法によって形成される正孔輸送層5の平均厚さとしては、特に限定されないが、例えば、1〜500μm程度であるのが好ましく、10〜300μm程度であるのがより好ましく、10〜30μm程度であるのがさらに好ましい。
【0204】
その後、チャンバーの減圧室75内に置かれた基板2上に設けられたシリコンゴム等からなる逆止弁72に、正孔輸送材料を入れたシリンジ73の針71を刺し、真空チャンバーの気密状態が破られない状態で、電子輸送層4上に形成された色素層D上に、シリンジ71内の正孔輸送材料をゆっくりと滴下して、塗布する。
【0205】
また、塗膜形成後に、かかる塗膜に熱処理を施すようにしてもよいが、正孔輸送層材料の色素層Dが形成された電子輸送層4の上面への塗布は、色素層D(色素層Dが形成された電子輸送層4)を加熱しつつ行うのが好ましい。これにより、より迅速に正孔輸送層5を形成すること、すなわち、太陽電池1Aの製造時間の短縮に有利である。
【0206】
この加熱温度としては、好ましくは温度50〜150℃程度とされ、この加熱処理は、5〜60分なされる。なお、塗膜形成後、熱処理を行う場合には、かかる熱処理の前に、塗膜の乾燥を行ってもよい。
【0207】
また、以上のような操作は、複数回繰り返して行うようにしてもよい。
【0208】
より具体的には、80℃程度に加熱したホットプレート上に、基板2、第1の電極3、バリヤ層8および色素層Dが形成された電子輸送層4の積層体を設置し、正孔輸送層材料を、色素層Dが形成された電子輸送層4の上面に滴下して、乾燥する。この操作を複数回行って、前述したような平均厚さの正孔輸送層5を形成する。
【0209】
また、上述したように、真空チャンバーを用いて減圧状態で正孔輸送材料を塗布する場合には、80℃程度に加熱したホットプレート上に、前記減圧チャンバーを設置して、塗布工程を行う。
【0210】
正孔輸送層材料に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の有機溶剤、あるいは、各種水等の1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0211】
なお、イオン伝導特性を有する物質を溶解する溶媒としては、アセトニトリルが好適に使用される。
【0212】
このとき、本発明では、正孔輸送層材料の溶液は、溶媒10mLに対し、200〜1mgの正孔輸送材料を溶解して調製された低濃度のCuI溶液を用いる。
【0213】
さらに好ましくは、正孔輸送層材料の溶液は、溶媒10mLに対し、100〜10mgの正孔輸送材料を溶解して調製された低濃度のCuI溶液を用いる。
【0214】
例えば、溶媒にアセトニトリルを用いた場合には、アセトニトリル10mL(7.8g)に対して、重量比で2.5〜0.05%のCuIを溶解した低濃度のCuI溶液を用いる。
【0215】
さらに好ましくは、アセトニトリル10mL(7.8g)に対して、重量比で1.5〜0.1%の範囲のCuIを溶解した低濃度のCuI溶液を用いる。
【0216】
より具体的には、アセトニトリル10mL(7.8g)に対して、100mg(重量比で1.28%)のCuIを溶解した低濃度のCuI溶液を用いる。
【0217】
なお、この塗布方法は、この低濃度CuI溶液を前記色素層上に2〜100回に分けて浸透させて塗布され、低濃度CuI溶液の塗布間隔は、低濃度CuI溶液の溶媒が揮発後または、揮発する直前に連続して塗布する。
【0218】
このように、本発明においては、低濃度のCuI溶液を用いているので、一回の塗布工程におけるCuIの量を減らすことが出来るので、アセトニトリルの揮発によりCuIがTiO層の上面に堆積してしまうという問題を解決できる。
【0219】
また、本発明のように、低濃度のCuI溶液を複数回(2〜100回程度)連続して塗布することにより、溶媒であるアセトニトリルがTiO層の上面に堆積したCuIを再溶解し、ナノポーラス状態に形成したTiO層中へのCuIの浸透することを助成することが出来る。
【0220】
また、本発明のように低濃度CuI溶液を用いれば、ある単位溶液中の溶媒量を増やすことが出来るので、溶媒であるアセトニトリルが揮発する時間を長くすることが出来る。
【0221】
さらに、本発明においては、イオン伝導特性を有する物質のアセトニトリル溶液中には、バインダーとして、例えばシアノレジン等のシアノエチル化物を添加するとよい。この場合、イオン伝導特性を有する物質に対しシアノエチル化物を、質量比(重量比)で、5〜0.5wt%で混合(配合)するのが好ましい。
【0222】
また、正孔輸送層材料は、正孔の輸送効率を向上させる機能を有する正孔輸送効率向上物質を含有しているのが好ましい。正孔輸送層材料がこの正孔輸送効率向上物質を含有していると、正孔輸送層5は、イオン伝導特性の向上により、キャリア移動度がより大きくなる。その結果、正孔輸送層5は、その電気伝導性が向上する。
【0223】
正孔輸送効率向上物質としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化アンモニウム等のハロゲン化物が挙げられ、特に、テトラプロピルアンモニウムヨーダイド(TPAI)等のハロゲン化アンモニウムを用いるのが好ましい。正孔輸送効率向上物質として、ハロゲン化アンモニウム、特に、テトラプロピルアンモニウムヨーダイドを用いることにより、正孔輸送層5は、イオン伝導特性がより向上することにより、キャリア移動度がさらに大きくなる。その結果、正孔輸送層5は、その電気伝導性がさらに向上する。
【0224】
この正孔輸送効率向上物質の正孔輸送層材料中の含有量は、特に限定されないが、1×10−4〜1×10−1wt%(重量%)程度であるのが好ましく、1×10−4〜1×10−2wt%程度であるのがより好ましい。このような数値範囲内において、前記の効果がさらに顕著となる。
【0225】
また、正孔輸送層5を、イオン伝導特性を有する物質を主材料として構成する場合には、正孔輸送層材料は、イオン伝導特性を有する物質が結晶化する際に、その結晶サイズが増大するのを抑制する結晶サイズ粗大化抑制物質を含有しているのが好ましい。
【0226】
この結晶サイズ粗大化抑制物質としては、特に限定されないが、例えば、前述したシアノエチル化物、正孔輸送効率向上物質の他、チオシアン酸塩(ロダン化物)等が挙げられる。また、結晶サイズ粗大化抑制物質は、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0227】
なお、チオシアン酸塩としては、例えば、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、チオシアン酸カリウム(KSCN)、チオシアン酸銅(CuSCN)、チオシアン酸アンモニウム(NHSCN)等が挙げられる。
【0228】
また、結晶サイズ粗大化抑制物質として、正孔輸送効率向上物質を用いる場合には、ハロゲン化アンモニウムが好適である。正孔輸送効率向上物質の中でも、ハロゲン化アンモニウムは、イオン伝導特性を有する物質の結晶サイズが増大するのを抑制する機能が、特に優れている。
【0229】
ここで、正孔輸送層材料が、この結晶サイズ粗大化抑制物質を含有していないと、イオン伝導特性を有する物質の種類、前述した加熱温度等によっては、イオン伝導特性を有する物質が結晶化する際に、その結晶サイズが大きくなり過ぎ、結晶の体積膨張が過度に進む場合がある。特に、かかる結晶化がバリヤ層8の孔(微少孔)内で生じると、バリヤ層8にクラックが発生し、その結果、正孔輸送層5と第1の電極3との間で、部分的に接触等による短絡が生じる場合がある。
【0230】
また、イオン伝導特性を有する物質の結晶サイズが大きくなると、イオン伝導特性を有する物質の種類等によっては、色素層Dが形成された電子輸送層4との接触性が低下してしまう場合がある。その結果、色素層Dが形成された電子輸送層4から、イオン伝導特性を有する物質、すなわち、正孔輸送層5が剥離してしまう場合ある。
【0231】
よって、このような太陽電池は、光電変換効率等のデバイスとしての特性が低下してしまうことがある。
【0232】
これに対し、正孔輸送層材料が、この結晶サイズ粗大化抑制物質を含有していると、イオン伝導特性を有する物質は、結晶サイズの増大が抑制され、結晶サイズが極小または比較的小さいものとなる。
【0233】
例えば、CuIのアセトニトリル溶液中に、チオシアン酸塩を添加すると、飽和状態で溶解しているCuIのうちのCu原子のまわりにチオシアン酸イオン(SCN)が吸着し、Cu−S(硫黄、Sulfor)結合が生じる。これにより、飽和状態で溶解しているCuI分子同士の結合が著しく阻害され、結果として、CuIの結晶成長を防止することができるので、微細に成長したCuI結晶を得ることができる。
【0234】
このようなことから、太陽電池1Aは、前述したようなイオン伝導特性を有する物質の結晶サイズの粗大化による不都合を好適に抑制することができる。
【0235】
また、この結晶サイズ粗大化抑制物質の正孔輸送層材料中の含有量としては、特に限定されないが、1×10〜10wt%(重量%)程度であるのが好ましく、1×10−4〜1×10−2wt%程度であるのがより好ましい。このような数値範囲内において、前記の効果がさらに顕著となる。
【0236】
また、正孔輸送層5を、前述したようなp型半導体材料で構成する場合には、このp型半導体材料を、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール等の各種有機溶媒(またはこれらを含む混合溶媒)に溶解(または懸濁)して、正孔輸送層材料を調製するようにする。この正孔輸送層材料を用いて、前記と同様にして、正孔輸送層5を成膜(形成)する。
【0237】
<6> 次に、第2の電極6を、正孔輸送層5の上面に形成する。
第2の電極6は、例えば白金等で構成される第2の電極6の材料を、例えば、蒸着法、スパッタリング法、印刷法等を用いることにより、形成することができる。
【0238】
<7>次に、第1の電極と第2の電極6で狭持された光電変換素子を、熱または光により可塑処理する。
この処理は、CuIからなる正孔輸送層と可塑性バインダー(導電性樹脂)および色素を吸着したTiO層をより強固に結びつけ、さらには、なじませるための処理である。
【0239】
すなわち、CuI等からなる正孔輸送層中に含有された可塑性バインダー(導電性樹脂)を可塑処理することにより、正孔輸送層をナノポーラス状態に形成したTiO層に十分に浸透、密着させる。
【0240】
このとき用いる可塑性バインダー(導電性樹脂)の粘度(20℃)は、150〜7000cPのものが用いられ、外観は、粒状または粘液状のものが用いられ、さらに好ましくは、可塑性バインダー(導電性樹脂)の粘度(20℃)は、240〜1200cPのものが特に好適である。
【0241】
また、可塑性バインダー(導電性樹脂)の軟化温度は、25〜200℃のものが用いられ、さらに好ましくは、可塑性バインダー(導電性樹脂)の軟化温度は、40〜120℃のものが特に好適である。
【0242】
可塑性バインダー(導電性樹脂)の軟化温度は、バインダーの可塑処理の熱で吸着させた色素が破壊されない程度の温度である必要がある
次に、CuI等からなる正孔輸送層中に含有された可塑性バインダー(導電性樹脂)の可塑処理方法について、具体的に説明する。
【0243】
第1の可塑処理方法は、熱可塑処理である。この熱可塑処理は、25〜250℃の温度でなされ、5〜300分程度の時間継続される。
【0244】
第2の可塑処理は、光可塑処理である。この光可塑処理は、ハロゲンまたはキセノン光源でなされ、25〜250℃の温度で、5〜300分程度の時間継続される。
【0245】
以上のような工程を経て、太陽電池1Aが製造される。
【0246】
以上、本発明の光電変換素子を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。光電変換素子を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0247】
本発明の光電変換素子は、前記第1および第2実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【0248】
なお、本発明の光電変換素子は、太陽電池のみならず、例えば、光センサー、光スイッチのような、光を受光して電気エネルギーに変換する各種素子(受光素子)に適用することができるものである。
【0249】
また、本発明の光電変換素子では、光の入射方向は、図示のものとは異なり、逆方向からであってもよい。すなわち、光の入射方向は、任意である。
【0250】
なお、上述した発明の実施の形態においては、光電変換素子の正孔輸送層をCuI(ヨウ化銅)等の固体材料で形成した例を用いて説明したが、本発明においては、正孔輸送層を従来のヨウ素溶液等の液体にしても、電子輸送層をチタニアナノチューブにした効果が得られる。よって、(実施例2)には、チタニアナノチューブを電子輸送層に用いた場合の色素増感型湿式太陽電池(特開平01−220380号公報)の例を示す。
【0251】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0252】
(実施例1)
次のようにして、図1に示す太陽電池(光電変換素子)を製造した。
【0253】
−0− まず、寸法:縦30mm×横35mm×厚さ1.0mmのソーダガラス基板を用意した。次に、このソーダガラス基板を85℃の洗浄液(硫酸と過酸化水素水との混合液)に浸漬して洗浄を行い、その表面を清浄化した。
【0254】
−1− 次に、ソーダガラス基板の上面に、蒸着法により、寸法:縦30mm×横35mm×厚さ1μmのFTO電極(第1の電極)を形成した。
【0255】
−2− 次に、形成したFTO電極の上面の縦30mm×横30mmの領域に、バリヤ層を形成した。これは、次のようにして行った。
【0256】
[バリヤ層材料の調製]
まず、チタンテトライソプロポキシド(有機チタン化合物)を、2−n−ブトキシエタノールに0.5mol/Lとなるように溶解した。
【0257】
次いで、この溶液に、ジエタノールアミン(添加物)を添加した。なお、ジエタノールアミンとチタンテトライソプロポキシドとの配合比は、2:1(モル比)となるようにした。
【0258】
これにより、バリヤ層材料を得た。なお、バリヤ層材料の粘度は、3cP(常温)であった。
【0259】
[バリヤ層の形成]
バリヤ層材料をスピンコート(塗布法)により塗布し、塗膜を得た。なお、このスピンコートは、回転数を1500rpmで行った。
【0260】
次いで、ソーダガラス基板、FTO電極および塗膜の積層体を、ホットプレート上に設置して、160℃で10分間、熱処理を施すことにより塗膜を乾燥した。
【0261】
さらに、かかる積層体を、480℃で30分間、オーブン内で熱処理を施すことにより、塗膜中に残存する有機成分を除去した。
【0262】
かかる操作を10回繰り返して積層するようにした。
【0263】
これにより、空孔率が1%未満のバリヤ層を得た。なお、このバリヤ層の平均厚さは、0.9μmであった。
【0264】
−3− 次に、バリヤ層の上面(全体)に酸化チタン層(電子輸送層)を形成した。これは、次のようにして行った。
【0265】
[酸化チタン粉末の調製]
ルチル型の二酸化チタン粉末と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末との混合物からなる酸化チタン粉末を用意した。なお、酸化チタン粉末の平均粒径は、40nmであり、ルチル型の二酸化チタン粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末との配合比は、重量比で60:40とした。
【0266】
さらに、二酸化チタン粉末とは別にチタニアナノチューブを用意した。このチタニアナノチューブの直径は、製造条件によるが、5〜50nmであり、長さは10〜200nmである。また、このチタニアナノチューブ状の比表面積は200〜600m/g程度であった。
【0267】
[ゾル液(酸化チタン層材料)の調製]
まず、チタンテトライソプロポキシドを、2−プロパノールに1mol/Lとなるように溶解した。
【0268】
次いで、この溶液に、酢酸(添加物)と、蒸留水とを混合した。なお、酢酸とチタンテトライソプロポキシドとの配合比は、1:1(モル比)となるように、また、蒸留水とチタンテトライソプロポキシドとの配合比は、1:1(モル比)となるようにした。
【0269】
次いで、かかる溶液に、調製した酸化チタン粉末もしくはチタニアナノチューブを混合した。さらに、この懸濁液を2−プロパノールで2倍に希釈した。これにより、ゾル液(酸化チタン層材料)を調製した。
【0270】
なお、酸化チタン粉末単体を用いた場合のゾル液中の含有量は0.1〜10wt%とした。
【0271】
また、チタニアナノチューブ単体を用いた場合のゾル液中の含有量は0.1〜10wt%とした。
【0272】
さらに、酸化チタン粉末とチタニアナノチューブの混合物を用いた場合のゾル液中の含有量は0.1〜10wt%とした。このとき、酸化チタン粉末とチタニアナノチューブの配合比99:1〜1:99となるようにした。
【0273】
[酸化チタン層の形成]
ソーダガラス基板、FTO電極およびバリヤ層の積層体を、140℃に加熱したホットプレート上に設置し、バリヤ層の上面に、ゾル液(酸化チタン層材料)を滴下(塗布法)し、乾燥した。この操作を7回繰り返し行って積層するようにした。
【0274】
これにより、空孔率が34%の酸化チタン層を得た。なお、この酸化チタン層の平均厚さは、7.2μmであった。
【0275】
なお、バリヤ層と酸化チタン層との全体における厚さ方向の抵抗値は、1kΩ/cm以上であった。
【0276】
−4− 次いで、ソーダガラス基板、FTO電極、バリヤ層および酸化チタン層の積層体を、ルテニウムトリスビピジル(有機染料)の飽和エタノール溶液に浸漬した後、かかるエタノール溶液から取り出し、自然乾燥により、エタノールを揮発した。さらに、80℃、0.5時間、クリーンオーブンで乾燥した後、一晩放置した。これにより、酸化チタン層の外面および孔の内面に沿って色素層を形成した。
【0277】
−5− 次いで、ソーダガラス基板、FTO電極、バリヤ層および色素層Dが形成された酸化チタン層の積層体を少なくとも、大気圧よりも減圧された図7に示す減圧チャンバーに入れた状態で、上記色素層Dの上面に上記各種塗布法によって正孔輸送層5を塗布する。
【0278】
より具体的には、図7に示す密閉されたチャンバー内に、色素層Dが電子輸送層4上に形成された基板2を入れ、このチャンバーを減圧にする。
【0279】
次に減圧チャンバーの減圧バルブ(弁)74を開放した状態で、真空ポンプを稼働させ、減圧室75内を減圧し、1×10−2torr程度の真空状態にする。
【0280】
その後、チャンバーの基板2上に設けられたシリコンゴムに、正孔輸送材料を入れたシリンジ73の針71を刺し、気密状態が破られない状態で、電子輸送層4上に形成された色素層D上に、シリンジ内の正孔輸送材料をゆっくりと滴下して、塗布する。
【0281】
このときの正孔輸送材料の前記基板への滴下の量は、1cmの面積に対し、0.01mL毎分である。
【0282】
なお、前記塗布法によるは正孔輸送材料の前記色素層上への滴下の開始は、前記減圧チャンバー内が減圧状態になった後、1〜5分経過後に開始した。
【0283】
前記塗布法によって形成される正孔輸送層5の平均厚さとしては、20μm程度であった。
【0284】
また、減圧チャンバーは80℃に加熱したホットプレート上に設置し、CuIのアセトニトリル溶液(正孔輸送層材料)を、色素層Dが形成された酸化チタン層の上面に滴下し、乾燥しながら行った。
【0285】
この操作を2〜100回程度繰り返し行って、CuI溶液がナノポーラス状態に形成したTiO層に十分に浸透するようにして、寸法:縦30mm×横30mm×厚さ20μmのCuI層(正孔輸送層)を形成した。
【0286】
なお、アセトニトリル溶液中には、正孔輸送効率向上物質として、テトラプロピルアンモニウムヨーダイドを1×10−3wt%となるように添加した。
【0287】
また、アセトニトリル溶液中には、CuIのバインダーとして、シアノレジン(シアノエチル化物)を添加した。なお、CuIとシアノレジンとが、質量比(重量比)で、97:3となるように配合した。
【0288】
さらに、アセトニトリル溶液中には、結晶サイズ粗大化抑制物質として、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)を1×10−3wt%となるように添加した。
【0289】
−6− 次いで、CuI層の上面に、蒸着法により、寸法:縦30mm×横30mm×厚さ0.1mmの白金電極(第2の電極)を形成した。
【0290】
−7− 次いで、第1の電極と第2の電極6で狭持された光電変換素子を、キセノン光源で光アニールした。このときの温度は110℃、時間は180分間である。の温度でなされる。
【0291】
(実施例2)
次のようにして、湿式色素増感型太陽電池(光電変換素子)を製造した。
【0292】
−0− まず、寸法:縦30mm×横35mm×厚さ1.0mmのソーダガラス基板を用意した。次に、このソーダガラス基板を85℃の洗浄液(硫酸と過酸化水素水との混合液)に浸漬して洗浄を行い、その表面を清浄化した。
【0293】
−1− 次に、ソーダガラス基板の上面に、蒸着法により、寸法:縦30mm×横35mm×厚さ1μmのFTO電極(第1の電極)を形成した。
【0294】
−2− 次に、形成したFTO電極の上面の縦30mm×横30mmの領域に酸化チタン層(電子輸送層)を形成した。これは、次のようにして行った。
【0295】
[酸化チタン粉末の調製]
ルチル型の二酸化チタン粉末と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末との混合物からなる酸化チタン粉末を用意した。なお、酸化チタン粉末の平均粒径は、20nmであり、ルチル型の二酸化チタン粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末との配合比は、重量比で60:40とした。
【0296】
さらに、二酸化チタン粉末とは別にチタニアナノチューブを用意した。このチタニアナノチューブ状(体)の直径は、製造条件によるが、5〜50nmであり、長さは10〜200nmである。
【0297】
[ゾル液(酸化チタン層材料)の調製]
まず、チタンテトライソプロポキシドを、2−プロパノールに1mol/Lとなるように溶解した。
【0298】
次いで、この溶液に、酢酸(添加物)と、蒸留水とを混合した。なお、酢酸とチタンテトライソプロポキシドとの配合比は、1:1(モル比)となるように、また、蒸留水とチタンテトライソプロポキシドとの配合比は、1:1(モル比)となるようにした。
【0299】
次いで、かかる溶液に、調製した酸化チタン粉末もしくはチタニアナノチューブを混入した。さらに、この懸濁液を2−プロパノールで2倍に希釈した。これにより、ゾル液(酸化チタン層材料)を調製した。
【0300】
なお、酸化チタン粉末単体を用いた場合のゾル液中の含有量は0.1〜10wt%とした。
【0301】
また、チタニアナノチューブ単体を用いた場合のゾル液中の含有量は0.1〜10wt%とした。
【0302】
さらに、酸化チタン粉末とチタニアナノチューブの混合物を用いた場合のゾル液中の含有量は0.1〜10wt%とした。このとき、酸化チタン粉末とチタニアナノチューブの配合比99:1〜1:99となるようにした。
【0303】
[酸化チタン層の形成]
ソーダガラス基板上のFTO電極の周辺を5mm程テープでマスキングし、チタニアナノチューブを含有したゾル液(酸化チタン層材料)をスキージ印刷法などで塗布し、乾燥した。
【0304】
その後、ガラス基板からマスキングテープを剥離し、450℃に熱した大気炉に投入し、30分程度の時間、これを焼成した。
【0305】
これにより、空孔率が34%の酸化チタン層を得た。なお、この酸化チタン層の平均厚さは、17.2μmであった。
【0306】
−3− 次いで、ソーダガラス基板、FTO電極および酸化チタン層の積層体を、ルテニウムトリスビピジル(有機染料)の飽和エタノール溶液に浸漬した後、かかるエタノール溶液から取り出し、自然乾燥により、エタノールを揮発した。さらに、80℃、0.5時間、クリーンオーブンで乾燥した後、一晩放置した。これにより、酸化チタン層の外面、孔内及びチタニアナノチューブの内面に沿って色素層を吸着させた。
【0307】
−4−
次に、FTO基板上のTiO層が形成されていない領域の周辺に30μm程度のスペーサーを張付し、さらにスペーサー上に寸法:縦30mm×横30mm×厚さ1.0mmのガラス基板を張り付けた。
【0308】
−5−
つぎに、上記で作成した2枚のガラス基板の間隙に、アセトニトリルを溶媒としたヨウ素溶液を注入した。正孔輸送効率向上物質として、テトラプロピルアンモニウムヨーダイドを1×10−3wt%となるように添加した。
【0309】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、第1の電極と第2の電極6で狭持された光電変換素子において、前記電子輸送層材料には、ナノチューブ状(体)の結晶チタニア(チタニアナノチューブという)を単体もしくは混合物として用いているので、通常用いられる二酸化チタン粒子に比べてチタニアナノチューブの比表面積が大きく、電子輸送層4の表面積を十分大きくすることができる。したがって、電子輸送層4の外面および孔41の内面に沿って形成される色素層D(後述参照)の形成面積(形成領域)も十分に大きくすることができる。
【0310】
また、本発明の光電変換素子は、製造が容易であり、安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した場合の第1実施形態を示す部分断面図である。
【図2】第1実施形態の太陽電池の厚さ方向の中央部付近の断面を示す拡大図である。
【図3】色素層が形成された電子輸送層の断面を示す部分拡大図である。
【図4】電子輸送層および色素層の構成を示す模式図である。
【図5】太陽電池の原理を示す模式図である。
【図6】図1に示す太陽電池回路の等価回路を示す図である。
【符号の説明】
1A、1B……太陽電池
2……基板
3……第1の電極
4……電子輸送層
41……孔
5……正孔輸送層
51……凸部
6……第2の電極
7……スペーサ
8……バリヤ層
11A……積層体
12A……積層体
11B……積層体
12B……積層体
100……外部回路
200……ダイオード
D……色素層

Claims (17)

  1. 第1の電極と、
    該第1の電極と対向して設置された第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置し、その少なくとも一部が多孔質な電子輸送層と、
    該電子輸送層と接触する色素層と、
    前記電子輸送層と前記第2の電極との間に位置する正孔輸送層とを有する光電変換素子であって、
    前記電子輸送層中には、色素から励起した電子の逆電子移動を抑制する物質が含まれていることを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも価電子帯(Valence Band)側に伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  4. 前記電子輸送層の表面には、色素から励起した電子の逆電子移動を抑制する物質がオーバーコートされていることを特徴とする請求項1ないし3に記載の光電変換素子。
  5. 前記電子輸送層の表面には、前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位よりも低い伝導帯(Conduction Band)下端電位を有する物質がオーバーコートされている請求項1に記載の光電変換素子。
  6. 前記電子輸送材料表面の前記電子の逆電子移動を抑制する物質のオーバーコート層は、0.1〜10ナノメートルであることを特徴とする請求項5及び請求項6に記載の光電変換素子。
  7. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質は酸化物である請求項1に記載の光電変換素子。
  8. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質は金属酸化物である請求項1に記載の光電変換素子。
  9. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質は化合物である請求項1に記載の光電変換素子。
  10. 前記電子輸送層の伝導帯(Conduction Band)下端電位は4.5eVである請求項1に記載の光電変換素子。
  11. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質の伝導帯(Conduction Band)下端電位は4.5eVよりも価電子帯(Valence Band)側に下端電位を有する物質であるである請求項1に記載の光電変換素子。
  12. 前記電子輸送材料は、少なくとも結晶粒子または、チューブ状結晶を含有してなる請求項1に記載の光電変換素子。
  13. 前記電子輸送材料は、少なくともTiOナノ粒子または、チタニアナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  14. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも高い価電子帯(Valence Band)下端電位を有する物質であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  15. 前記電子の逆電子移動を抑制する物質は、前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも伝導帯(Conduction Band)側に価電子帯(Valence Band)下端電位を有する物質であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  16. 前記電子輸送層の価電子帯(Valence Band)下端電位よりも高い価電子帯(Valence Band)下端電位を有する物質が前記電子輸送層の表面にオーバーコートされている請求項14および請求項15に記載の光電変換素子。
  17. 太陽電池である請求項1ないし16のいずれかに記載の光電変換素子。
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