JP2011165469A - 半導体電極層及びその製造方法、並びに電気化学装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低温焼成によって作製でき、クラックの発生を抑え、電極性能と硬度および支持体への密着性とを両立させ得る、金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層及びその製造方法、並びに、その電極層を有し、色素増感型太陽電池などとして有用な電気化学装置を提供すること。
【解決手段】 金属酸化物半導体微粒子2と第1および第2の化合物とを含有する塗液を調製する。第1の化合物は容易に加水分解して第1の酸化物を生じる物質である。第2の化合物は、第1の化合物より加水分解しにくく、加水分解すると第1の酸化物より硬度の高い第2の酸化物を生じる物質である。塗液を支持体5に被着させ、有機溶媒を蒸発させた後、焼成して、微粒子2間および微粒子2と支持体5との間が第1酸化物層3によって結着され、結着が第2酸化物層4によって補強されている多孔質層1を作製する。その際、微粒子2として粒子径が異なる2種類以上の微粒子を用いる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層及びその製造方法、並びに、その半導体電極層を有し、色素増感型太陽電池などとして有用な電気化学装置に関するものである。
エネルギー源として石炭や石油などの化石燃料を用いると、二酸化炭素が発生する。二酸化炭素は地球温暖化を引き起こす原因物質の1つである。原子力エネルギーの利用では放射性元素が生成し、放射能汚染などの危険性が伴う。また、これらのエネルギー資源は有限であり、いずれ枯渇する。近年、これらに代わる、クリーンで、無尽蔵なエネルギー源として太陽光が注目されており、太陽光を利用する太陽電池のより一層の普及が期待されている。太陽電池は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。
太陽電池の原理や構成材料として、様々なものが提案されている。そのうち、半導体のpn接合を利用する太陽電池は、現在最も普及しており、シリコンを半導体材料とした太陽電池が多数市販されている。しかし、pn接合を用いた太陽電池の製造には、高純度の半導体材料を製造する工程や、pn接合を形成する工程が必要である。このため、高温プロセスなどの製造工程におけるエネルギー消費が大きいという問題がある。また、製造工程数が多く、クリーンルームや真空装置などの大がかりな装置が必要であるので、製造コストが高くなるという問題もある。
一方、色素によって光増感された光誘起電子移動を応用した色素増感型太陽電池が、グレーツェルらによって提案されている(特許公報第2664194号(第2および3頁、図1)、およびB.O'Regan and M.Graetzel,Nature,353,p.737-740(1991)など参照。)。
図4は、一般的な色素増感型太陽電池100の構造を示す要部断面図である。色素増感型太陽電池100は、主として、ガラスなどの透明基板101、透明導電層(負極集電体)102、光増感色素を保持した半導体電極層103(負極)、電解質層104、対向電極(正極)105、対向基板106、および(図示省略した)封止材などで構成されている。
透明導電層102は、ITO(Indium Tin Oxide;インジウム・スズ複合酸化物)やFTO(フッ素がドープされた酸化スズ)などからなり、透明基板101の上に設けられており、負極集電体として機能する。負極である半導体電極層103は、透明導電層102の上に設けられている。半導体電極層103として、酸化チタンTiO2などの金属酸化物半導体の微粒子を焼結させた多孔質層が用いられることが多い。光増感色素は、半導体電極層103を構成する金属酸化物の表面に吸着されている。電解質層104としては、酸化還元種(レドックス対)を含む電解液などが用いられる。対向電極105は白金層などで構成され、対向基板106上に設けられている。
色素増感型太陽電池100は、光が透明基板101側から入射するように構成されている。入射した光の一部は光増感色素によって吸収され、この光吸収によって励起された電子の一部が半導体電極層103に取り出される。一方、電子を失った光増感色素は、電解質層104中の還元剤によって還元される。この結果、電解質層104中に生じた酸化剤は、対向電極(正極)105から電子を受け取り還元される。この結果、色素増感型太陽電池100は、透明導電層102および半導体電極層103を負極、対向電極105を正極とする光電池として動作する。色素増感型太陽電池は、半導体電極層を有する電気化学装置の一例である。
色素増感型太陽電池には、製造に大がかりな装置を必要とせず、酸化チタンなどの安価な酸化物半導体を用いて、少ない工程で、生産性よく製造できる長所がある。また、可視光領域を中心として広い波長領域に、各波長領域の光を吸収できる光増感色素が種々存在するので、用いる色素を変えることによって、吸収する光の波長を選択したり、あるいは複数の色素を組み合わせることによって、広い波長領域の光を利用したりできる長所がある。さらに、プラスチックなどの、軽量でフレキシブルな基材を用いて、ロール・ツー・ロール・プロセスで、さらに生産性よく安価に製造できる可能性を秘めている。このため、新世代の太陽電池として、近年非常に注目されている。
図5は、従来の、金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層103の、一般的な作製工程を示すフロー図である。以下、酸化チタンなどを材料として半導体電極層103を作製する場合について説明する。
金属酸化物半導体多孔質層を作製するには、まず、粒子径が十数nmから数十nmの金属酸化物半導体微粒子を分散させた、ペースト状の分散液を調製する。次に、透明基板101上に設けられた透明導電層102の上に、塗布法などによって分散液を被着させた後、溶媒を蒸発させ、金属酸化物半導体微粒子層を形成する。
次に、金属酸化物半導体微粒子層を空気中で450〜550℃程度の高温にて30分間ほど加熱する焼結工程を行う。この焼結工程で、微粒子同士が接点近傍で融着し、微粒子間が細い連結部を介してネットワーク状に連結され、微粒子間の空隙が空孔として残された金属酸化物半導体多孔質層が形成される(以下、接点近傍での融着によって、微粒子間が細い連結部を介して連結される現象をネッキングと言い、この様な連結を形成する処理をネッキング処理と言うことがある。)。この金属酸化物半導体多孔質層は、光増感色素を吸着させると、半導体電極層103として用いることができる。
焼結工程で形成される微粒子間の連結部は、微粒子間の電子の通路(パス)を形成する。従って、色素増感型太陽電池100の光電変換特性はネッキングの状態に大きく依存し、ネッキング処理が十分行われ、微粒子間の連結性が高いほど、電子の流れがスムーズになり、光電変換特性も向上する。しかし、通常、ネッキング処理は加熱をともなうため、過度に行われると、微粒子同士が必要以上に融着してしまい、空孔がつぶれて、多孔質層の実表面積が減少する。この実表面積の減少は、半導体電極層103の表面における光増感色素の保持や電極反応の進行に不利である。従って、焼結工程は、適切な処理温度および処理時間に制御して行う必要がある。
なお、多孔質層では、外側表面の面積(投影面積)に比べて、多孔質層内部の空孔に面する構成微粒子の表面の面積が数倍〜数千倍の大きさに達する。従って、多孔質層における光増感色素の保持や電極反応の進行は、主として、多孔質層内部の空孔に面する表面において行われる。そこで、本明細書では、多孔質層内部の空孔に面する表面も含めて、多孔質層を構成する微粒子の全表面積を実表面積と呼んで、多孔質層の投影面積と区別する。また、本明細書でいう多孔質層の表面処理とは、多孔質層内部の空孔に面する表面を主とする全表面に対して行う処理を言うものとする。
焼結後、多孔質層の実表面積を増加させたり、微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、多孔質層の表面処理、例えば、四塩化チタン水溶液処理や、直径10nm以下の酸化チタン超微粒子ゾルによるディップ処理などを行うのが一般的である。四塩化チタン水溶液処理では、例えば、0.05M程度の濃度の四塩化チタン水溶液中に酸化チタン多孔質層を70℃で30分間保持する。続いて蒸留水で洗浄した後、450〜550℃の高温にて30分間ほど加熱処理する(後述の非特許文献1および2参照。)。
この四塩化チタン水溶液処理では、下記の反応式で示される四塩化チタンTiCl4の加水分解によって、ナノサイズの高純度の酸化チタン微粒子が、多孔質層を構成する酸化チタン微粒子の表面に形成される。
TiCl4 + 4H2O → Ti(OH)4 + 4HCl
Ti(OH)4 → TiO2 + 2H2
この新たに形成された酸化チタン微粒子の表面は、光電変換活性の高い領域として機能するとされている(後述の非特許文献2参照。)。また、微粒子間の連結性を向上させることによって、微粒子間の導電性を向上させる効果などがあると言われている(後述の非特許文献3参照。)。
さて、高温における焼結工程は、製造工程におけるエネルギー消費を低減する上で障害となる。また、400〜500℃の高温に耐え得るプラスチック材料はないので、高温焼結を行う場合、透明基板101としてプラスチックを用いることは不可能になる。
一方、色素増感型太陽電池を低コスト化したり、曲面等に設置できるように可暁性をもたせたりするために、透明基板101としてプラスチックフィルムを用いる場合には、プラスチック基板の耐熱温度(ガラス転移温度)との関係で、加熱処理温度を150℃程度とする低温焼成を行うことになる。しかしながら、低温焼成で得られる金属酸化物半導体多孔質層では、結晶性が悪いので、光電変換効率が低い。また、微粒子間の結合状態が悪いので、ロール・ツー・ロール・プロセスなどによる太陽電池の製造工程において、酸化チタン多孔質層の傷つきや剥離が生じるおそれがある。
そこで、後述の特許文献1には、金属酸化物微粒子と、該金属酸化物微粒子を接着するための金属アルコキシドとを混練してペーストとなし、該ペーストを導電性基板に塗布し、上記金属アルコキシドを加水分解することにより、上記導電性基板の表面に上記金属酸化物微粒子の多孔質膜を形成し、次いで、酸素雰囲気中において紫外線照射を行い、オゾンを発生させる、いわゆるUVオゾン処理を行い、次いで、該多孔質膜に増感色素を吸着させることを特徴とする色素増感型太陽電池の製造方法が提案されている。
図6は、特許文献1に示されている、金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層の作製工程を示すフロー図である。特許文献1には下記のように説明されている。
金属酸化物半導体多孔質層を作製するには、まず、粒子径が5〜100nmの金属酸化物半導体微粒子を300〜500℃で加熱処理して、金属酸化物半導体微粒子に吸着されている水分や有機物を除去する。この前処理によって、得られる色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する。また、紫外線照射によって金属酸化物半導体微粒子から有機物を除去する前処理でも、色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する。
次に、金属酸化物半導体微粒子と金属アルコキシドとを溶媒とともに混練して、ペースト状の塗液を調製する。
次に、導電層などが設けられた導電性基板に、塗布法などによって上記塗液を被着させた後、溶媒を蒸発させる。このとき、金属アルコキシドが空気中の水分と反応し、下記の反応式で示すように、金属アルコキシドの加水分解によって金属酸化物が生成する。なお、反応式は金属アルコキシドがチタンアルコキシドである例を示し、式中、ORはアルコキシ基を表すものとする。
Ti(OR)4 + 4H2O → Ti(OH)4 + 4ROH
Ti(OH)4 → TiO2 + 2H2
生成する金属酸化物はアモルファスで、金属酸化物半導体微粒子の表面に付着し、金属酸化物半導体微粒子間、および金属酸化物半導体微粒子と導電性基板との間を接着する役割を果たす。この結果、導電性基板上に金属酸化物半導体多孔質層が形成される。なお、金属酸化物半導体微粒子が酸化チタン微粒子である場合、新たに生成させる金属酸化物も酸化チタンであるときに、色素増感型太陽電池の光電変換効率が高くなる。しかし、ジルコニウムやニオブなど、異種金属元素の酸化物を付着させることも可能である。
次に、この金属酸化物半導体多孔質層に酸素雰囲気中にて紫外線を照射してオゾンを発生させ、残留する有機物を酸化して除去する。さらに、この後、80〜200℃で加熱処理するのが好ましい。これらの後処理で、色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する。この後、金属酸化物半導体多孔質層に光増感色素を吸着させる。
金属酸化物半導体微粒子の前処理や金属酸化物半導体多孔質層の後処理によって、色素増感型太陽電池の光電変換効率が向上する原因としては、水分や有機物の除去によって、金属酸化物半導体多孔質層に吸着される光増感色素の量が増加することが挙げられている。また、金属酸化物半導体多孔質層中の有機物は電子の再結合中心として働くので、有機物の除去は、電子の再結合を抑制し、電子寿命を増大させ、量子効率を向上させる効果もあると説明されている。
特許文献1に示されている製造方法によれば、低温焼成で金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層を作製することができる。この結果、製造工程におけるエネルギー消費を抑えることができ、また、軽量、安価で、フレキシブルなプラスチックフィルムなどの耐熱性の乏しい材料を基材として用いることができるので、好ましい。
しかしながら、特許文献1に示されている製造方法によれば、金属酸化物半導体微粒子と金属アルコキシドとの混合比に関連して、二律背反の関係が存在する。すなわち、金属酸化物半導体微粒子の量に比して金属アルコキシドの量が少なすぎる場合、金属アルコキシドの分解によって生じる金属酸化物が不足し、金属酸化物半導体微粒子間、および金属酸化物半導体微粒子と導電性基板との間の接着が不十分となって、金属酸化物半導体多孔質層の機械的強度が不足したり、金属酸化物半導体多孔質層が基材から剥離したりしやすくなる。一方、金属酸化物半導体微粒子の量に比して金属アルコキシドの量が多すぎる場合、金属酸化物半導体微粒子表面がアモルファス金属酸化物層によって厚く被覆されてしまったり、金属酸化物半導体微粒子の実表面積が減少したりして、電極としての性能が低下する。従って、電極としての性能を重視すると、金属酸化物半導体多孔質層の硬度が不足したり、基材への密着性が不十分になったりする。
そこで、本出願人は、最近、
金属酸化物半導体微粒子と、加水分解すると第1の酸化物を生じる第1の化合物と、 前記第1の化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると前記第1の酸化物より硬 度の高い第2の酸化物を生じる第2の化合物とを、有機溶媒に分散又は溶解させた塗液 を調製する工程と、
前記塗液の層を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から前記有機溶媒を蒸発させる蒸発工程と、
前記蒸発工程後、温度を上昇させ、加熱処理する焼成工程と
を有し、
前記第1の酸化物の層が、主として直接、前記金属酸化物半導体微粒子及び前記支持 体に結着し、
前記第2の酸化物の層が、主として前記第1の酸化物の層を介して、前記金属酸化物 半導体微粒子及び前記支持体に結着し、
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記金属酸化物半導体微粒子間、 及び前記金属酸化物半導体微粒子と前記支持体との間が結着されている金属酸化物半導 体多孔質層
を作製する、半導体電極層の製造方法を発明し、これを特許出願した(特願2009−298384)。
この半導体電極層の製造方法では、蒸発工程及び/又は焼成工程において、第1の酸化物および第2の酸化物を生じる脱水縮合反応による体積収縮が起こり、金属酸化物半導体多孔質層にクラックが発生することがある。このクラックは、金属酸化物半導体多孔質層の硬度および支持体への密着性には大きな悪影響を及ぼさない。しかし、クラックが発生するような場合、金属酸化物半導体微粒子間のネッキングの形成が不十分であり、金属酸化物半導体微粒子間の導電性が低下し、この金属酸化物半導体微粒子層を用いた色素増感太陽電池の光電変換性能が低下することが判明した。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、低温焼成によって作製することができ、かつ、クラックの発生を抑え、電極としての性能と、硬度および支持体への密着性とを両立させることのできる、金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層及びその製造方法、並びに、その半導体電極層を有し、色素増感型太陽電池などとして有用な電気化学装置を提供することにある。
即ち、本発明は、
一次粒子の平均粒子径が100nm以下の第1の微粒子と、一次粒子の平均粒子径が 100nmより大きく、10000nm以下である第2の微粒子との、少なくとも2種 類の大きさの微粒子を含有し、支持体上に配置された金属酸化物半導体微粒子と、
主として直接、前記金属酸化物半導体微粒子及び前記支持体に結着している第1酸化 物層と、
前記第1酸化物層を形成している第1の酸化物よりも硬度の高い第2の酸化物からな り、主として前記第1酸化物層を介して、前記金属酸化物半導体微粒子及び前記支持体 に結着している第2酸化物層と
を含有し、前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記金属酸化物半導体微粒子間、及び前記金属酸化物半導体微粒子と前記支持体との間が結着されてなる、半導体電極層に係わるものである。
また、
一次粒子の平均粒子径が100nm以下の第1の微粒子と、一次粒子の平均粒子径 が100nmより大きく、10000nm以下である第2の微粒子との、少なくとも 2種類の大きさの微粒子を含有する金属酸化物半導体微粒子と、
加水分解すると第1の酸化物を生じる第1の化合物と、
前記第1の化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると前記第1の酸化物よ り硬度の高い第2の酸化物を生じる第2の化合物と
を、有機溶媒に分散又は溶解させた塗液を調製する工程と、
前記塗液の層を支持体に被着させる工程と、
前記塗液の層から前記有機溶媒を蒸発させる蒸発工程と、
前記蒸発工程後、温度を上昇させ、加熱処理する焼成工程と
を有し、
前記第1の酸化物の層が、主として直接、前記金属酸化物半導体微粒子及び前記支持 体に結着し、
前記第2の酸化物の層が、主として前記第1の酸化物の層を介して、前記金属酸化物 半導体微粒子及び前記支持体に結着し、
前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記金属酸化物半導体微粒子間、 及び前記金属酸化物半導体微粒子と前記支持体との間が結着されている金属酸化物半導 体多孔質層
を作製する、半導体電極層の製造方法に係わるものである。
また、少なくとも、前記の本発明の半導体電極層と、対向電極と、これらの間に挟持された電解質層とを有する、電気化学装置に係わるものである。
本発明の半導体電極層の製造方法によれば、金属酸化物半導体微粒子と、加水分解すると第1の酸化物を生じる第1の化合物と、前記第1の化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると前記第1の酸化物より硬度の高い第2の酸化物を生じる第2の化合物とを、有機溶媒に分散又は溶解させた塗液を調製する。未精製の前記金属酸化物半導体微粒子や前記有機溶媒には、通常、多かれ少なかれ吸着または吸蔵された水分が含まれている。この結果、前記塗液中で前記第1の化合物の加水分解が進行し、生成した前記第1の酸化物が前記金属酸化物半導体微粒子の表面に結合し、前記金属酸化物半導体微粒子間を連結して、前記塗液中で前記金属酸化物半導体微粒子間のネットワークが形成されることがある。次に、前記塗液の層を支持体に被着させ、前記塗液の層から前記有機溶媒を蒸発させると、前記塗液に含まれていた前記第1の酸化物は、前記金属酸化物半導体微粒子に結着する。また、空気中の水分との反応によって前記第1の化合物の加水分解がさらに進む。この結果、前記第1の化合物は、次の焼成工程に入る前に大部分が前記第1の酸化物に変化する。そして、前記金属酸化物半導体微粒子間、および前記金属酸化物半導体微粒子と前記支持体との間が、前記第1酸化物層によって結着された金属酸化物半導体多孔質層が形成される。
この後、前記焼成工程を行う。前記焼成工程までに加水分解される前記第2の化合物は少量で、大部分の前記第2の化合物が前記焼成工程において、空気中から供給される水分によって加水分解される。この場合、前記第2の化合物の加水分解によって生成する、硬度の高い前記第2の酸化物は、主として前記第1酸化物層の上に結着して前記第2酸化物層を形成し、前記金属酸化物半導体微粒子間、及び前記金属酸化物半導体微粒子と前記支持体との間に結着している前記第1酸化物層を強固に補強する。この結果、機械的強度に優れ、前記支持体との密着性の高い、本発明の半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)が得られる。
前記金属酸化物半導体微粒子として、例えば、一次粒子の平均粒子径が100nm以下の前記第1の微粒子のみを用いると、前記蒸発工程及び/又は前記焼成工程において、前記第1の酸化物および前記第2の酸化物を生じる脱水縮合反応による体積収縮によって、前記金属酸化物半導体多孔質層にクラックが発生することがある。これに対し、本発明では、一次粒子の平均粒子径が100nm以下の第1の微粒子と、一次粒子の平均粒子径が100nmより大きく、10000nm以下である第2の微粒子との、少なくとも2種類の微粒子を含有する金属酸化物半導体微粒子を用いるので、クラックの発生を抑えることができる。この場合、平均粒子径が1種類の金属酸化物半導体微粒子のみを用いる場合に比べて、前記金属酸化物半導体多孔質層の導電性が向上し、この金属酸化物半導体多孔質層を用いた色素増感型太陽電池の光電変換性能が向上する。
本発明の製造方法によれば、低温焼成で金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層を作製することができる。この結果、製造工程におけるエネルギー消費を抑えることができ、また、軽量、安価で、フレキシブルなプラスチックフィルムなどの、耐熱性の乏しい材料を基材として用いることができる。また、ロール・ツー・ロール・プロセスで、さらに生産性よく安価に製造可能である。
本発明の電気化学装置は、前記の本発明の半導体電極層を電極として有しているので、軽量、安価で、フレキシブルなプラスチックフィルムなどを支持体として用いて、ロール・ツー・ロール・プロセスで、さらに生産性よく安価に製造可能である。
本発明の実施の形態1に基づく金属酸化物半導体多孔質層の構造を示す断面図である。 同、金属酸化物半導体多孔質層の作製工程を示すフロー図である。 本発明の実施の形態2に基づく色素増感型太陽電池の構造を示す断面図である。 一般的な色素増感型太陽電池の構造を示す要部断面図である。 従来の、金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層の一般的な作製工程を示すフロー図である。 特許文献1に示されている、金属酸化物半導体多孔質層からなる半導体電極層の作製工程を示すフロー図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
本発明の半導体電極層において、前記第2の微粒子の一次粒子の平均粒子径が、200nm〜5000nmであるのがよい。
また、前記第2の微粒子の配合質量の、前記第1の微粒子の配合質量に対する比が、0.06〜6であるのがよい。
また、前記金属酸化物半導体微粒子が、酸化チタンTiO2、酸化亜鉛ZnO、酸化タングステンWO3、酸化ニオブNb25、チタン酸ストロンチウムSrTiO3、及び酸化スズSnO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物からなるのがよい。
また、前記第1酸化物層を構成している元素が、前記金属酸化物半導体微粒子を構成している金属元素と同一の元素であるのがよい。
また、前記の硬度の高い第2酸化物層を構成している酸化物が、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物であるのがよい。
また、前記支持体の材料がプラスチック材料であるのがよい。
また、表面に光増感色素を保持し、色素増感型太陽電池の半導体電極層として構成されているのがよい。この際、前記支持体が、一方の表面に光透過性導電層が設けられている光透過性支持体であり、この光透過性導電層に接して設けられているのがよい。このとき、前記支持体が、一方の表面に光透過性導電層と密着補助層とが積層して設けられている光透過性支持体であり、この密着補助層に接して設けられているのもよい。あるいは、前記支持体が絶縁性の光透過性支持体であり、前記支持体と接している面とは反対側の面に、多孔性の導電層が設けられているのがよい。
本発明の半導体電極層の製造方法において、前記第1の化合物として塩又はアルコキシドを用いるのがよい。この前記第1の化合物は、チタンTi、アルミニウムAl、ケイ素Si、バナジウムV、ジルコニウムZr、ニオブNb、及びタンタルTaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の化合物であるのがよい。また、前記第1の化合物として、前記金属酸化物半導体微粒子及び/又は前記有機溶媒に通常含まれる少量の水分と室温において反応し、一部又は全部が前記塗液中で加水分解される化合物を用いるのがよい。
また、前記第2の化合物として、ケイ素Si、ホウ素B、アルミニウムAl、及びジルコニウムZrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のアルコキシドを用いるのがよい。
また、前記蒸発工程中及び/又は前記蒸発工程後の温度を25〜200℃に保つのがよい。
また、前記焼成工程中の温度を40〜200℃に保つのがよい。
前記支持体の材料としてプラスチック材料を用いるのがよい。この際、前記支持体上に形成された前記半導体電極層のカレンダー処理を行うのがよい。
本発明の電気化学装置において、前記半導体電極層が光増感色素を保持しており、光が入射すると、この光を吸収して励起された前記光増感色素の電子が前記半導体電極層へ取り出されるとともに、前記電子を失った前記光増感色素は、前記電解質層中の還元剤によって還元され、この結果、前記電解質層中に生じた酸化剤は、前記対向電極から電子を受け取り還元される色素増感型太陽電池として構成されているのがよい。
前記色素増感型太陽電池において、前記支持体が、一方の表面に光透過性導電層が設けられている光透過性支持体であり、前記半導体電極層がこの光透過性導電層に接して設けられているのがよい。この際、前記支持体が、一方の表面に光透過性導電層と密着補助層とが積層して設けられている光透過性支持体であり、この密着補助層に接して設けられているのもよい。あるいは、前記支持体が絶縁性の光透過性支持体であり、前記支持体と接している面とは反対側の面に、多孔性の導電層が設けられているのがよい。
以下、本発明の実施の形態に基づき、詳細を図面参照下に具体的に説明する。
[実施の形態1]
実施の形態1では、請求項1〜8に記載した半導体電極層、および請求項12〜20に記載したその製造方法の例について説明する。
図1(a)は、支持体5の上に形成された半導体電極層1の断面図および部分拡大図である。半導体電極層1は、支持体5の上に配置された金属酸化物半導体微粒子2間、および金属酸化物半導体微粒子2と支持体5との間が、第1酸化物層3と第2酸化物層4とによって結着された金属酸化物半導体多孔質層である。本発明の特徴の1つとして、金属酸化物半導体微粒子2は、一次粒子の平均粒子径が100nm以下の第1の微粒子2Aと、一次粒子の平均粒子径が100nmより大きく、10000nm以下である第2の微粒子2Bとの、大きさが異なる2種類の微粒子によって構成されている。
金属酸化物半導体微粒子2は、半導体電極層の特性に応じて、酸化チタンTiO2、酸化亜鉛ZnO、酸化タングステンWO3、酸化ニオブNb25、チタン酸ストロンチウムSrTiO3、及び酸化スズSnO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物からなるのがよい。多くの場合、第1酸化物層3を構成する金属元素が、金属酸化物半導体微粒子2を構成している金属元素と同一の金属元素であるのがよい。このようであると金属酸化物半導体微粒子2と第1酸化物層3の密着性が最良になることが期待される。第1酸化物層3は、主として直接、金属酸化物半導体微粒子2および支持体5に結着している。
第2酸化物層4は、第1酸化物層3を形成している第1の酸化物よりも硬度の高い第2の酸化物からなり、主として第1酸化物層3を介して金属酸化物半導体微粒子2および支持体5に結着し、第1酸化物層3を補強している。第2酸化物層4を構成している酸化物は、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物であるのがよい。
金属酸化物半導体微粒子2のうち、第1の微粒子2Aは、一次粒子の平均粒子径が1〜100nmであるので、可視光の透過性を高め、比表面積を大きくすることができる。一方、第2の微粒子2Bの一次粒子平均粒子径は、100nmよりも大きく、10000nm以下である。第2の微粒子2Bの平均粒子径が大きいほど、また、第2の微粒子2Bの配合質量の、第1の微粒子2Aの配合質量に対する比(=(第2の微粒子2Bの配合質量)/(第1の微粒子2Aの配合質量))が大きいほど、後述の実施例で明らかなように、金属酸化物半導体多孔質層1に発生するクラックは減少する。
この理由が完全に解明されたとは言えないが、下記のようなことが考えられる。比較的小さい第1の微粒子2Aのみで金属酸化物半導体多孔質層を形成した場合には、第1の微粒子2Aの表面積は比較的小さいので、第1の微粒子2A間を第1酸化物層3と第2酸化物層4とで確実に結着することは難しく、結着強度が不十分な微粒子間の連結部が生じやすい。さらに、ある長さの導電路を形成する上で、比較的多数の第1の微粒子2A間を連結する必要がある。以上の結果、金属酸化物半導体多孔質層にクラッキングが生じやすくなり、導電性も低くなりやすい。これに対し、比較的大きな第2の微粒子2Bが共在する場合には、図1の拡大図に示すように、第2の微粒子2Bの表面積は比較的大きいので、第2の微粒子2Bとその周囲の第1の微粒子2Aとの連結は、微粒子2Bの表面上で確実に十分な結着強度で形成される。また、同じ長さの導電路を形成するために連結する必要のある粒子数が比較的少数になるので、結着強度が不十分になりやすい第1の微粒子2A間の連結部は著しく少なくなる。以上の結果、第1の微粒子2Aと第2の微粒子2Bが共存する金属酸化物半導体多孔質層では、クラッキングが生じにくく、導電性も高く保たれる。なお、ここでは一次粒子の平均粒子径が異なる2種類の微粒子を含有する例を示したが、上記の理由から、平均粒子径が異なる3種類以上の微粒子を含有する構成であってもよいのは、明らかである。
また、第2の微粒子2Bが共存すると、入射光が散乱されやすくなり、金属酸化物半導体多孔質層1の内部HAZEが上昇し、全光線透過率が低下する。この金属酸化物半導体多孔質層1を半導体電極として用いた色素増感型太陽電池では、入射光の散乱によって光利用効率が高まり、光電変換性能が向上する。この場合、内部HAZE値は85%以上、全光線透過率は50%以下であることが好ましい。
第2の微粒子2Bの一次粒子平均粒子径は、200nm〜5000nmであるのがより好ましい。一次粒子の平均粒子径が200nmよりも小さい場合、金属酸化物半導体多孔質層1におけるクラックの発生を抑える効果が不十分となり、また、入射光を散乱する性能も十分でない傾向がある。一方、一次粒子の平均粒子径が5000nmよりも大きい場合、第2の微粒子2Bが塗液中で沈殿しやすくなり、塗液のポットライフが低化する傾向がある。
第2の微粒子2Bの配合質量の、第1の微粒子2Aの配合質量に対する比は、0.06〜6であるのが好ましい。0.06未満である場合、金属酸化物半導体多孔質層1におけるクラックの発生を抑える効果が不十分となり、また、入射光を散乱する性能も十分でない傾向がある。一方、6よりも大きい場合、金属酸化物半導体多孔質層1におけるクラックの発生を抑える効果が十分であり、入射光を散乱する性能も十分であるが、金属酸化物半導体多孔質層1の比表面積の低下を招き、この半導体電極層1を用いた色素増感型太陽電池の性能の低下を招く。
図1(b)は、支持体5に密着補助層6が設けられ、その上に半導体電極層1が形成されている例を示す断面図である。密着補助層6は、半導体電極層1と支持体5との密着性が十分でない場合に、密着性を向上させるために設けられる層である。密着性が不十分になりやすい例としては、支持体5が、表面にITO層が設けられている基材である例を挙げることができる。密着補助層6の材料としては、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、および金属元素の塩化物(四塩化チタンなど)や過酸化物(過酸化チタンなど)やアルコキシドなどの加水分解・脱水縮合生成物などを用いることができる。半導体電極層1を色素増感型太陽電池の半導体層として用いる場合には、密着補助層6の厚さは、太陽電池の光電変換効率を著しく低下させない厚さとすることが望ましい。
図2は、半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)1を作製する工程を示すフロー図である。以下、上述した特異な構造を有する半導体電極層1が、どのようにして形成されるのか、という点に重点をおいて説明する。
半導体電極層1を作製するには、まず、金属酸化物半導体微粒子2を構成する第1の微粒子2Aおよび第2の微粒子2Bを、それぞれ、適当な有機溶媒に分散させ、ペースト状の分散液を2つ調製する。分散方法としては、公知の方法、例えば、攪拌処理、超音波分散処理、ビーズ分散処理、混錬処理、およびホモジナイザー処理などを好ましく用いることができる。
溶媒としては、金属酸化物半導体微粒子2を分散させることができ、かつ、第1の化合物および第2の化合物を溶解させることができるものを適宜選択して用いる。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素類、アミド類、およびスルフィド類などから選択して用いる。
次に、上記2つの分散液を所定の比率で混合し、これに第1の化合物および第2の化合物を添加し、攪拌して溶解させ、均一な塗液とする。第1の化合物と第2の化合物とを添加する順序はどちらが先でもよい。第1の化合物は、加水分解して第1の酸化物を生じる化合物である。第2の化合物は、第1の化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると上記第1の酸化物より硬度の高い第2の酸化物を生じる化合物である。
具体的には、第1の化合物として、金属元素の塩又はアルコキシドを用いるのがよい。この金属元素は、例えば、チタンTi、アルミニウムAl、ケイ素Si、バナジウムV、ジルコニウムZr、ニオブNb、およびタンタルTaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であるのがよい。また、未精製の金属酸化物半導体微粒子や有機溶媒には、通常、多かれ少なかれ吸着または吸蔵された水分が含まれているが、第1の化合物として、これらの水分と室温において反応し、一部又は全部が塗液中で加水分解される化合物を用いるのが好ましい。この場合、塗液の調製中に粘度が増加するのが観察される。これは、第1の化合物と金属酸化物半導体微粒子および有機溶媒との混合が進むと、第1の化合物が水分と反応し、第1の化合物の加水分解によって生成した第1の酸化物が金属酸化物半導体微粒子2の表面に結合し、金属酸化物半導体微粒子2間を連結していくためであると考えられる。
一方、第2の化合物としては、ケイ素Si、ホウ素B、アルミニウムAl、およびジルコニウムZrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のアルコキシドを用いるのがよい。
金属酸化物半導体微粒子2の配合量は、塗液の質量の1〜50質量%、例えば20質量%程度とする。1質量%未満である場合には、塗布法によって、十分な厚さを有する金属酸化物半導体微粒子層を形成することができない不都合がある。一方、50質量%よりも大きい場合には、塗液の粘度が高くなりすぎて、塗布法などによって金属酸化物半導体微粒子層を形成する際の、取り扱いが困難になる不都合がある。
第1の化合物の配合量は、塗液の質量の0.01〜20質量%とする。また、第2の化合物の配合量は、塗液の質量の0.01〜20質量%とする。第1の化合物および第2の化合物の配合量は、半導体電極層1の、所望の硬度と支持体への密着性とを得るために、金属酸化物半導体微粒子2の材料や分散性、第1の化合物および第2の化合物の材料種に応じて、上記範囲内において適宜選択する。第1の化合物および第2の化合物の配合量が上記の範囲外である場合、半導体電極層1の硬度と支持体5への密着性とを両立させることが難しくなる傾向がある。また、半導体電極層1を色素増感型太陽電池の半導体電極層として用いる場合には、第1の化合物および第2の化合物の材料種によっては、増感色素の吸着が阻害されて、光電変換効率が低化することもある。
次に、公知の方法、例えば、塗布法または印刷法などによって、支持体5の上に上記塗液の層を被着させる。塗布方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、印刷方法としては、例えば、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、およびスクリーン印刷法などを用いることができる。
次に、塗液の層から溶媒を蒸発させて除去し、第1の化合物、第2の化合物、および第1の酸化物を含有する金属酸化物半導体微粒子層を形成する。溶媒を蒸発させる方法としては、室温で蒸発させてもよいし、加熱して蒸発させてもよい。ただし、蒸発むらを抑えるために、溶媒の蒸発速度を調整することが好ましい。具体的には、20℃〜100℃の温度範囲、30秒間〜20分間の時間範囲で蒸発させるのが好ましい。溶媒が蒸発して除かれると、塗液に含まれていた第1の酸化物は、金属酸化物半導体微粒子2に結着する。第1の化合物は空気中の水分と反応して加水分解する。この結果、第1の化合物は、次の焼成工程に入る前に大部分が第1の酸化物に変化する。そして、金属酸化物半導体微粒子2間、および金属酸化物半導体微粒子2と支持体5との間が、金属酸化物層3によって結着された金属酸化物半導体多孔質層が形成される。この際、第1の化合物の加水分解を促進するために、蒸発工程中及び/又は蒸発工程後の温度を25〜200℃、例えば80℃程度に保ってもよい。また、蒸発工程と下記焼成工程とを同時に行うことも可能である。
次に、金属酸化物半導体多孔質層を焼成して、金属酸化物半導体微粒子2間の電子的な接続を向上させ、また、金属酸化物半導体多孔質層の機械的強度と、基板との密着性とを向上させる。焼成温度に特に制限はないが、温度が高すぎると支持体5が熱で劣化することもあるので、焼成温度は40〜1000℃であり、通常、300〜600℃程度であるのが好ましい。支持体5の材料としてプラスチック材料を用いる場合には、そのガラス転移点以下、通常、40〜200℃であるのが好ましい。また、焼成時間に特に制限はないが、通常、30秒間〜10時間程度である。
この際、焼成工程までに加水分解される第2の化合物の割合は少く、大部分の第2の化合物が、焼成工程において空気中から供給される水分によって加水分解されることが好ましい。このようであると、第2の化合物の加水分解によって生成する第2の酸化物は、主として第1酸化物層3の上に結着して第2酸化物層4を形成し、金属酸化物半導体微粒子2間、および金属酸化物半導体微粒子2と支持体5との間に結着している第1酸化物層3を強固に補強する。この結果、機械的強度に優れ、支持体5との密着性の高い半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)1が得られる。
なお、第1の化合物のみでは、半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)1と支持体5との密着性が不十分になりやすい。なぜなら、加水分解が起こりやすい第1の化合物は、塗液を支持体5に被着させる前にかなりの部分が加水分解する。この、塗液を支持体5に被着させる以前に生成した第1の酸化物は、金属酸化物半導体微粒子2間を連結し、金属酸化物半導体多孔質層1の機械的強度を高める上では寄与するが、支持体5との密着性を高める上では寄与しないからである。これに対し、第2の化合物の加水分解は大部分が塗液を支持体5に被着させた後に起こるので、第2の酸化物は、金属酸化物半導体多孔質層1の機械的強度の向上にも、支持体5との密着性の向上にも、同様に寄与する。ただし、第2の化合物だけでは、表層剥がれや傷つきが生じやすい。これは、第2の化合物は金属酸化物半導体微粒子2の表面との反応性が第1の化合物に比べて低いので、第2の化合物のみでは微粒子2間のネッキング数が少なくなり、強度不足になりやすいからである。すなわち、半導体電極層1の機械的強度と支持体5への密着性とを両立させるには、第1の化合物と第2の化合物との両方が必要である。
焼成後、金属酸化物半導体多孔質層の実表面積を増大させたり、金属酸化物半導体微粒子2間のネッキングを高めたりする目的で、例えば四塩化チタン水溶液やチタンアルコキシドを用いたネッキング処理を行ってもよい。また、金属酸化物半導体多孔質層内に残留する有機物や未反応物を溶媒等で洗浄除去してもよい。
支持体5の材料としてプラスチック材料を用いる場合、加熱加圧処理、例えばカレンダー処理によって半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)1を支持体5に圧着する処理を行うことも可能である。
以下、半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)1およびその製造方法について、さらに詳述する。
半導体電極層1を色素増感型太陽電池の半導体電極層として用いる場合には、下記の通りである。金属酸化物半導体微粒子2の材料として、各種の金属酸化物半導体や、ペロブスカイト構造を有する化合物などを用いることができる。この際、金属酸化物半導体微粒子2の材料が、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体材料であることが好ましい。このような半導体材料は、具体的に例示すると、TiO2、ZnO、WO3、Nb25、SrTiO3、およびSnO2などであり、これらの中でTiO2がとくに好ましい。ただし、金属酸化物半導体微粒子2の材料はこれらに限定されるものではない。また、これらの材料を2種類以上混合して用いることもできる。金属酸化物半導体多孔質層1の厚さは1〜30μmであるのがよい。厚さが1μm未満である場合、十分な光電変換効率が得られない。厚さが厚いほど光電変換効率は向上するが、厚さが30μmをこえると、膜厚の増加による光電変換効率向上の効果が乏しくなる。従って、厚さは30μm以下が好ましい。金属酸化物半導体微粒子2の形状は、特に限定されるものではなく、一般的な形状であってよい。
金属酸化物半導体微粒子2の材料として酸化チタンを用いる場合、その結晶型はルチル型、アナターゼ型、およびブルッカイト型の中から選択される1種類でよく、2種類以上の混合物でもよい。市販品を用いてもよいし、また、四塩化チタンやチタンアルコキシドなどをゾル−ゲル法などの公知の方法で加水分解処理または水熱処理するなどして、所定の粒径のものを形成してもよい。
市販品としては、第1の微粒子2Aとして、例えば、デグサ社製のP25およびP90(以上、商品名)、石原産業(株)製のST−01およびST−21(以上、商品名)、昭和電工(株)製のスーパータイタニアF−1、F−2、F−3、F−4、F−5、およびF−6(以上、商品名)、堺化学工業(株)製のSSP−25、SSP−20、SSP−M、およびSTRシリーズ(以上、商品名)、テイカ(株)製のMT−150A、MT−500B、MT−600B、MT−700B、AMT−100、AMT−600、TKP−101、およびTKP−102(以上、商品名)、シーアイ化成(株)製のNanoTek Powderシリーズ(商品名)などを用いることができる。
また、第2の微粒子2Bとして、例えば、石原産業(株)製のPT−301、CR−EL、ET−500W、ET−600W、およびST−41(以上、商品名)、昭和電工(株)製のG−1、G−2、およびF−10(以上、商品名)、テイカ(株)製JR(商品名)、富士チタン工業(株)製TA−100、TA−200、TA−300、TA−500(以上、商品名)などを用いることができる。
金属酸化物半導体微粒子2の材料として酸化亜鉛を用いる場合、市販品としては、第1の微粒子2Aとして、例えば、テイカ(株)製のMZ−300およびMZ−500(以上、商品名)、石原産業(株)製のFZO−50(商品名)、シーアイ化成(株)製のNanoTek Powderシリーズ(商品名)、堺化学工業(株)製のFINEXシリーズ(商品名)、ハクスイテック(株)製のF−1、F−2、F−3、Pazet CK、およびPazet GK-40(以上、商品名)などを用いることができる。第2の微粒子2Bとして、例えば、堺化学工業(株)製のLPZINC−2およびLPZINC−5(以上、商品名)などを用いることができる。金属酸化物半導体微粒子2の材料として酸化スズを用いる場合、市販品としては、第1の微粒子2Aとして、例えば、Johnson Matthey(株)製の平均粒径15nmのものや、シーアイ化成(株)製のNanoTek Powderシリーズ(商品名)などを用いることができる。
なお、上記の金属酸化物半導体微粒子2の材料は、適宜混合して用いることも可能である。
第1の化合物として塩またはアルコキシドのうち、有機溶媒に溶解させることができるものを用いることができる。上記第1の化合物は、Ti、Al、Si、V、Zr、Nb、およびTaなどの、少なくとも一種の元素の化合物であるのがよい。また、多くの場合、上記元素が金属酸化物半導体微粒子2を構成している金属元素と同一の元素であり、第1の化合物から生成する第1の酸化物と、金属酸化物半導体微粒子2を構成している金属酸化物とが同種の酸化物であるのがよい。このようであると金属酸化物半導体微粒子2と第1酸化物層3との密着性が最良になると期待できる。
また、第1の化合物として、金属酸化物半導体微粒子2及び/又は有機溶媒に通常含まれる水分によって室温で加水分解される第1の化合物を用いるのがよい。この場合、前述したように、塗液中で第1の化合物の加水分解が始まり、生成した第1の酸化物によって金属酸化物半導体微粒子2間が連結されていくので、微粒子2間の強固なネットワークが形成されやすい。
塩としては、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物などのうち、溶媒に溶解するものを用いることができる。具体的には、TiOSO4、Zr(CH3COO)2O、Zr(CH3COO)4、Al(NO3)3、Al(CH3COO)3、Al2(SO4)3、TiCl4、AlCl3、Ti(C24)2、Zr(C24)2、およびAl2(C24)3などを用いることができる。
また、用いることのできるアルコキシドは、下記の一般式のように表すことができる。
アルコキシドの一般式:
Figure 2011165469
上記一般式で、金属アルコキシドは、モノマー(m=0)、オリゴマー(m=1〜10)、およびポリマー(m>10)のいずれでもよく、2種類以上を混合して用いることもできる。アルコキシ基としては、メトキシ基(n=1)、エトキシ基(n=2)、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基(以上、n=3)、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基(以上、n=4)や、2−エチルヘキソキシ基、その他の低級および高級アルコール由来のアルコキシ基を用いることができる。また、アルコキシドがアセチルアセトンなどのβ−ジケトン類で修飾されていてもよい。アルコキシ基の一部がヒドロキシ基で置換されていてもよい。
市販品としては、例えば、下記のものを用いることができる。すなわち、日本曹達株式会社製のA−1、B−1、TOT、TOG、T−50、T−60、A−10、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA、DPSTA−25、S−151、S−152、S−181、TAT、およびTLA−A−50(以上、商品名)、三菱ガス化学株式会社製のTPT、TBT、DBT、TST、TEAT、TAA、TEAA、TLA、およびOGT(以上、商品名)、味の素ファインテクノ株式会社製のKR TTS、KR 46B、KR 55、KR 41B、KR 38S、KR 138S、KR 238S、338X、KR 44、KR 9SA、KR ET、およびAL−M(以上、商品名)、マツモトファインケミカル株式会社製のTA−10、TA−25、TA−22、TA−30、TC−100、TC−401、TC−200、TC−750、TC−400、TC−300、TC−310、TC−315、TPHS、ZA−40、ZA−65、ZC−150、ZC−540、ZC−570、ZC−580、ZC−700、ZB−320、およびZB−126(以上、商品名)、コルコート株式会社製のエチルシリケート28、エチルシリケート28P、N−プロピルシリケート、N−ブチルシリケート、MCS−18、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS−485、SS−101、HAS−6、HAS−1、HAS−10、SS−C1、コルコートP、コルコートN−103X、およびマグネシウムエチラート(以上、商品名)を用いることができる。
金属酸化物半導体微粒子2の材料として酸化チタンを用いる場合、第1の化合物として、例えば、四塩化チタンTiCl4、硫酸チタニアTiOSO4、テトラメトキシチタンTi(OCH3)4、テトラプロポキシチタンTi(OCH2CH2CH3)4、テトラブトキシチタンTi(OCH2CH2CH2CH3)4、テトラペントキシチタンTi(OCH2CH2CH2CH2CH3)4、ブトキシチタンダイマー、ブトキシチタンオリゴマー、ブトキシチタンポリマー、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH3)4、テトラエトキシジルコニウムZr(OCH2CH3)4、テトラプロポキシジルコニウムZr(OCH2CH2CH3)4、テトラブトキシジルコニウムZr(OCH2CH2CH2CH3)4、トリメトキシアルミニウムAl(OCH3)3、トリエトキシアルミニウムAl(OCH2CH3)3、トリプロポキシアルミニウムAl(OCH2CH2CH3)3、トリブトキシアルミニウムAl(OCH2CH2CH2CH2CH3)3などを好ましく用いることができる。
一方、第2の化合物としては、Si、B、Al、およびZrなどのアルコキシドを用い、第2酸化物層4を形成する酸化物が、SiO2、B23、Al23、およびZrO2などの硬度の高い酸化物であるのがよい。
金属酸化物半導体微粒子2の材料として酸化チタンを用いる場合、第2の化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシランSi(CH3)2(OCH3)2、ジメチルジエトキシシランSi(CH3)2(OCH2CH3)2、メチルトリメトキシシランSi(CH3)(OCH3)3、メチルトリエトキシシランSi(CH3)(OCH2CH3)3、テトラメトキシシランSi(OCH3)4、テトラエトキシシランSi(OCH2CH3)4、テトラプロポキシシランSi(OCH2CH2CH3)4、テトラブトキシシランSi(OCH2CH2CH2CH3)4、エトキシシランダイマー、エトキシシランオリゴマー、エトキシシランポリマー、トリメトキシボランB(OCH3)3、トリエトキシボランB(OCH2CH3)3、トリイソプロポキシボランB(OCH(CH3)CH3)3などを好ましく用いることができる。
溶媒としては、第1の化合物および第2の化合物を溶解させ、金属酸化物半導体微粒子2を分散させることができるものを用いる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−ブタノール(イソブチルアルコール)、3−メチル−2−プロパノール(sec−ブチルアルコール)、および2−メチル−2−プロパノール(tert−ブチルアルコール)などのアルコール、シクロヘキサノンおよびシクロペンタノンなどのケトン、ヘキサンなどの炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシドなどから選択される少なくとも1種類以上を用いることができる。
塗液層の表面における乾燥むらを抑えるため、高沸点溶媒を添加して、溶媒の蒸発速度を制御することもできる。そのような高沸点溶媒として、例えば、ブチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ブチルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエーテル、メチルグリコールなどを用いることができる。また、支持体への塗布性や組成物のポットライフを向上させる目的で、必要に応じて界面活性剤、粘度調整剤、および分散剤などの添加剤を加えることができる。
支持体5は用いられる環境において安定であればよく、それ以外に特に制限されないが、支持体5の材料がプラスチック材料である場合、本発明の特徴が生かされるので、とくに好ましい。また、電気化学装置に外部から侵入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、また、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。支持体5の厚さは特に制限されず、光の透過率や、水蒸気の透過を遮断する遮断性能や、機械的強度などを勘案して、適宜選択することができる。
半導体電極層1を色素増感型太陽電池の半導体電極層として用いる場合のように、支持体5が光透過性であることが求められる場合には、支持体5として、光が透過しやすい材質と形状のものを用いる。例えば、石英、サファイア、ガラスなどの透明無機基板、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタラート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエステル(TPEE)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート類、ポリアクリレート、アクリル樹脂(PMMA)、ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などの透明プラスチック基板が挙げられる。これらの中でも、特に可視光の透過率が高い基板材料を用いるのが好ましい。
また、光透過性基材上に透明導電層が形成されている支持体を用いてもよい。この透明導電層の材料としては公知のものを使用可能であり、具体的にはITO、FTO、アンチモンがドープされた酸化スズ(ATO)、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム・亜鉛複合酸化物(IZO)などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。
[実施の形態2]
実施の形態2では、請求項6〜9に記載した半導体電極層、および請求項19〜21に記載した電気化学装置の例として、色素増感型太陽電池として構成された電気化学装置について説明する。
図3は、実施の形態2に基づく色素増感型太陽電池20の構造を示す断面図である。色素増感型太陽電池20は、主として、透明基板21、透明導電層(負極集電体)22、光増感色素を保持した半導体電極層(負極)23、電解質層24、対向電極(正極)25、対向基板26、および封止材27などで構成されている。対向セル
本実施の形態の特徴として、半導体電極層23は、実施の形態1で説明した、酸化チタンTiO2などの金属酸化物半導体多孔質層であり、金属酸化物半導体微粒子2などの表面に光増感色素が保持されている。その他は、従来の色素増感型太陽電池と同様である。すなわち、透明基板21はガラス板や、PENやPETなどのプラスチックフィルムなどからなる。透明導電層(負極集電体)22はITOやFTOなどからなり、透明基板21の上に設けられている。電解質層24は半導体電極層23と対向電極25との間に配置され、I-/I3 -(三ヨウ化物イオンI3 -は、I2がヨウ化物イオンI-と結びついてイオンとして存在している化学種である。)などの酸化還元種(レドックス対)を含む電解液などで構成されている。対向電極25は、下地層に積層された白金層や、カーボン層などからなり、対向基板26の上に設けられている。対向基板26はガラス板やプラスチックフィルムなどからなる。
色素増感型太陽電池20は、光が入射すると、対向電極25を正極、半導体電極層23を負極とする電池として動作する。
すなわち、透明基板21および透明導電層22を透過してきた光子を光増感色素が吸収すると、光増感色素中の電子が基底状態から励起状態へ励起される。励起状態の電子は、光増感色素と半導体電極層23との間の電気的結合を介して、半導体電極層23の伝導帯に取り出され、半導体電極層23を通って透明導電層22に到達する。
一方、電子を失った光増感色素は、電解質層24中の還元剤、例えばI-から下記の反応
2I- → I2 + 2e-
2 + I- → I3 -
によって電子を受け取り、電解質層24中に酸化剤、例えばI3 -を生成させる。生じた酸化剤は拡散によって対向電極25に到達し、上記の反応の逆反応
3 - → I2 + I-
2 + 2e- → 2I-
によって対向電極25から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
透明導電層22から外部回路へ流れ出した電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対向電極25に戻る。このようにして、光増感色素にも電解質層24にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
色素増感型太陽電池20を作製するには、透明基板21に設けられた透明導電層22上に、実施の形態1で説明したようにして、半導体電極層23として金属酸化物半導体多孔質層を形成する。次に、金属酸化物半導体多孔質層23に光増感色素を吸着させる。色素を吸着させる方法に特に制限はないが、例えば、色素分子を溶解させた溶液を調製し、金属酸化物半導体多孔質層23が形成された透明基板21を色素溶液に浸漬するか、または、金属酸化物半導体多孔質層23に色素溶液を塗布、噴霧、または滴下するかなどして、金属酸化物半導体多孔質層23に色素溶液をしみこませた後、溶媒を蒸発させる。次に、半導体電極層23と対向電極25とが対向するように透明基板21と対向基板26とを配置して、封止剤27を介して貼り合わせる。最後に、電解液を注入して電解質層24を形成する。
金属酸化物半導体多孔質層23は、多くの光増感色素を吸着することができるように、多孔質層内部の空孔に面する微粒子表面も含めた実表面積の大きいものが好ましく、金属酸化物半導体多孔質層23の実表面積は、半導体電極層23の外側表面の面積(投影面積)に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。
一般に、半導体電極層23の厚さが増し、単位投影面積当たりに含まれる金属酸化物半導体微粒子2の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積あたりに保持できる色素量が増加するので、入射光に対する光吸収率が高くなる。一方、半導体電極層23の厚さが増加すると、光増感色素から半導体電極層23に移行した電子が透明導電層22に達するまでに拡散する距離が増加するため、半導体電極層23内での電荷再結合による電子のロスも大きくなる。従って、半導体電極層23には好ましい厚さが存在するが、一般的には0.1〜100μmであり、1〜30μmであるのがより好ましい。
色素増感型太陽電池20は、半導体電極層23以外の部材については、従来の色素増感型太陽電池と同様である。以下、要点を説明する。
半導体電極層23に保持させる光増感色素としては、増感作用を示すものであれば特に制限はないが、例えば、ローダミンBやローズベンガルやエオシンやエリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニンやキノシアニンやクリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニンやカブリブルーやチオシンやメチレンブルーなどの塩基性染料、その他のアゾ色素、クロロフィルや亜鉛ポルフィリンやマグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物、フタロシアニン系化合物、クマリン系化合物、ルテニウムRuのビピリジン錯体やテルピリジン錯体、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、スクアリリウム系色素などが挙げられる。中でも、配位子がピリジン環を有するルテニウムRuのビピリジン錯体は、量子収率が高く、光増感色素として好ましい。ただし、光増感色素はこれに限定されるものではなく、単独で、もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
電解質層4としては、電解液、またはゲル状あるいは固体状の電解質が使用可能である。電解質としては、酸化還元系(レドックス対)を含む溶液が挙げられ、具体的には、ヨウ素I2と金属ヨウ化物塩または有機ヨウ化物塩との組み合わせや、臭素Br2と金属臭化物塩または有機臭化物塩との組み合わせを用いる。金属ハロゲン化物塩を構成するカチオンは、リチウムLi+、ナトリウムNa+、カリウムK+、セシウムCs+、マグネシウムMg2+、およびカルシウムCa2+などであり、有機ハロゲン化物塩を構成するカチオンは、テトラアルキルアンモニウムイオン類、ピリジニウムイオン類、イミダゾリウムイオン類などの第4級アンモニウムイオンが好適であるが、これらに限定されるものではなく、単独もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
上記の中でも特に、ヨウ素I2と、ヨウ化リチウムLiI、ヨウ化ナトリウムNaI、またはイミダゾリウムヨーダイドなどの第4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好適である。電解液における電解質塩の濃度は0.05M〜5Mが好ましく、さらに好ましくは0.1M〜3Mである。ヨウ素I2または臭素Br2の濃度は0.0005M〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.5Mである。また、開放電圧や短絡電流を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやカルボン酸など各種添加剤を加えることもできる。
電解液を構成する溶媒として、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、および炭化水素などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、単独で、もしくは2種類以上を混合して用いることができる。また、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系第4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
色素増感型太陽電池20からの電解液の漏液や、電解液を構成する溶媒の揮発を減少させる目的で、電解質構成物にゲル化剤、ポリマー、架橋モノマー、または各種形状の金属酸化物半導体微粒子(繊維)などを溶解または分散させて混合し、ゲル状電解質として用いることも可能である。ゲル化材料と電解質構成物の比率は、電解質構成物が多ければイオン導電率は高くなるが、機械的強度は低下する。逆に、電解質構成物が少なすぎると、機械的強度は大きいが、イオン導電率は低下する。
電解液の注入方法に特に制限はないが、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象によって導入する方法が簡便である。また、必要に応じて、減圧もしくは加熱下で注入操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であればガラス板やプラスチック基板を封止材で貼り付けて封止することもできる。
また、電解質が、ポリマーなどを用いてゲル化された電解質や、全固体型の電解質である場合、電解質と可塑剤とを含むポリマー溶液を、半導体電極層23の上にキャスト法などによって塗布する。その後、可塑剤を揮発させ、完全に除去した後、上記と同様に封止材によって封止する。この封止は、真空シーラーなどを用いて、不活性ガス雰囲気下、もしくは減圧中で行うことが好ましい。封止を行った後、電解質層24の電解液が半導体電極層23に十分に浸透するように、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1では、まず、実施の形態1で説明した半導体電極層1を作製し、その特性を調べた。
<塗液の調製>
金属酸化物半導体微粒子2として酸化チタンTiO2微粒子を用いた。酸化チタンの第1の微粒子2Aおよび第2の微粒子2Bの粉末を、それぞれ、酸化チタン含有率が20質量%になるようにエタノールと混合し、ペイントシェイカーと直径0.65mmのジルコニアビーズとを用いて15〜48時間ビーズ分散処理を行い、2つの酸化チタン微粒子分散液を調製した。
次に、上記2つの分散液を所定の比率で混合し、この分散液に所定量の第1の化合物および第2の化合物を加え、攪拌して均一に混合し、濃度調整のためエタノールを追加し、酸化チタン微粒子、第1の化合物および第2の化合物を含有する塗液を調製した。このとき、第1の化合物の添加によって分散液の粘度が増加することが観察された。
実施例1−1〜1−6では、第1の微粒子2AとしてP25(商品名;デグサ社製、アナターゼ型結晶(80%)とルチル型結晶(20%)の混合物)、一次粒子の平均粒径 約21nm)、またはST−21(商品名;石原産業(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒子の平均粒径 約20nm)を用いた。また、第2の微粒子2BとしてTA−300(商品名;富士チタン工業(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒子の平均粒径 約390nm)、またはST−41(商品名;石原産業(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒子の平均粒径 約200nm)を用いた。一方、比較例1−1では第2の微粒子2Bを用いなかった。また、比較例1−2および1−3では、第2の微粒子2BとしてPT−501A(商品名;石原産業(株)製、アナターゼ型結晶、一次粒子の平均粒径 約100nm)を用いた。
すべての実施例および比較例で、第1の化合物としてブトキシチタンダイマー(DBT;三菱ガス化学(株)製)を用い、第2の化合物としてテトラメトキシシラン(TMOS;純正化学(株)製)を用いた。塗液における配合量は、DBTが2.5質量%、TMOSが0.1質量%で一定とした。溶媒は、いずれの例でもエタノールを用いた。
<半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)の作製>
上記塗液を支持体上にコイルバーを用いてバーコート法によって塗布した後、80℃で2分間溶媒を蒸発させた。その後、150℃で30分間焼成した。支持体5として、厚さ125μmのPETフィルム(商品名 0300E;三菱樹脂(株)製)を用いた。
<半導体電極層に残留有機物がないことの確認>
半導体電極層には、有機物が残留していないことが好ましい。有機物が残留している場合、その半導体電極層を用いた色素増感型太陽電池の性能が低下するおそれがある。そこで、Nicolet Magna 550(商品名;サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)を用い、DuraSampl II ATRアタッチメント上に、半導体電極層が形成された支持体を固定して、半導体電極層のFT−IRスペクトルを測定し、炭素−水素結合の伸縮振動(2800〜3000cm-1)に基づく吸収の有無を調べた。実施例1および比較例1のいずれにおいても、炭素−水素結合の伸縮振動は測定されず、半導体電極層に残留有機物がないことが確認された。
<評価方法>
(半導体電極層の厚さ)
半導体電極層1の厚さは、層1の一部を支持体5から削りとり、層1表面から支持体5表面までの段差を触針式表面粗さ測定器サーフコーダET4000(商品名;(株)小阪研究所製)を用いて測定することにより求めた。
(半導体微粒子層におけるクラックの有無)
半導体微粒子層におけるクラックの有無は、デジタルマイクロスコープVHX−100(商品名;(株)キーエンス製)を用いて、半導体微粒子層の表面を倍率150〜750倍で10視野以上観察して評価した。
(内部HAZEと全光線透過率の評価)
半導体電極層1の内部HAZEは、透明粘着シートを介して半導体電極層表面に上記PETフィルムを貼り付け、HM−150(商品名;(株)村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136に従って評価した。半導体電極層1の全光線透過率は、HM−150(商品名;(株)村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7361に従って評価した。
(硬度)
硬度は、マルテンス硬度および擦り試験により評価した。マルテンス硬度は、PICODENTOR HM500(商品名;(株)フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて評価した。荷重は3mNとした。擦り試験は、ベンコットM−3IIを用い、5cm程度の長さで、1方向に1回、表面を力強く擦り、以下の基準で評価した。
○:傷なし
△:傷10本以下
×:傷11本以上
(密着特性)
密着特性は、PETまたはガラス基板上に作製した半導体電極層を試験片とし、JIS K5400の碁盤目(1mm間隔×100マス)セロハンテープCT24(商品名;ニチバン(株)製)剥離試験により評価した。
表1は、実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−3による塗液中の、酸化チタンTiO2微粒子2の配合量を示す表である。表中、配合量の比は、第2の微粒子2Bの配合質量の、第1の微粒子2Aの配合質量に対する比(=(第2の微粒子2Bの配合質量)/(第1の微粒子2Aの配合質量))である。表2は、それらの塗液を用いて作製された半導体電極層の評価を示す表である。
Figure 2011165469
Figure 2011165469
次に、実施の形態2で説明した色素増感型太陽電池20を作製し、その性能を評価した(Adv.Mater.(2003),15,2101 参照。)。
<色素増感型太陽電池の作製>
(1)上述した塗液をFTO層付き導電性ガラス基板(日本板硝子(株)製、表面抵抗 13Ω/□)上にバーコート法によって塗布した後、80℃で2分間溶媒を蒸発させた。次に、ガラス板のエッジを用いて、得られた半導体電極層から不要部分を削り落とし、5mm×5mmの大きさの正方形に成形した後、150℃で30分間焼成し、半導体電極層を作製した。
(2)次に、室温にて10時間半導体電極層をZ907色素溶液に浸漬し、半導体電極層に色素を吸着させた。Z907は、シス−ビス(イソチオシアナト)(H2dcbpy)(dnbpy)ルテニウム錯体(ここで、H2dcbpyは4,4'-ジカルボキシ-2,2'-ビピリジンであり、dnbpyは4,4'-ジノニル-2,2'-ビピリジンである。)である。次に、アセトニトリルを用いてこの半導体電極を洗浄した後、アセトニトリルを自然蒸発させ、半導体電極を乾燥させた。
(3)対向電極として、ガラス基板に予めスパッタリング法によって厚さ50nmのクロムCr層と厚さ100nmの白金Pt層とを順次積層して形成したものを用いた。
(4)次に、半導体電極層と対向電極とが向かい合うように、上記2枚のFTO層つきガラス基板を配置し、厚さ30μmのシリコンゴムシートを介して貼り合わせた。次に、毛管通入試現象を利用して電極間に電解液を導入し、色素増感型太陽電池20を作製した。電解液として、3-メトキシプロピオニトリルに0.6Mのヨウ化(1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム)と0.1Mのヨウ素とを溶解させた溶液を用いた。
<色素増感型太陽電池の評価>
4.5mm×4.5mmの角孔のあいた正方形マスクを用いて擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm2)を照射しながら、作製した色素増感太陽電池の短絡電流、開放電圧、フィルファクタ、および光電変換効率を24℃にて評価した。
表3は、実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−3で作製した色素増感型太陽電池の性能の測定結果を示す表である。表3には、N=3の評価結果の平均値を記載した。
Figure 2011165469
表1〜3から、第2の微粒子2Bを用いなかった比較例1−1、および第2の微粒子2BとしてPT−501A(一次粒子の平均粒径 約100nm)を用いた比較例1−2および1−3では、クラックが発生したこと、および内部HAZEが十分大きくないことから、光電変換効率が0.9%未満と低いことがわかる。また、一次粒子の平均粒径が十分大きい第2の微粒子2Bを用いた実施例1−5および1−6でも、第2の微粒子2Bの配合質量の、第1の微粒子2Aの配合質量に対する比(=(第2の微粒子2Bの配合質量)/(第1の微粒子2Aの配合質量))が好ましい範囲0.06〜6をはずれているため、この条件を満たしている実施例1−1〜1−4と比べると、光電変換効率が劣ることがわかる。この理由として、実施例1−5では、金属酸化物半導体多孔質層1の比表面積の低下を招いたことが挙げられる。一方、実施例1−6では、クラックの発生を抑える効果が十分ではなかったこと、および、入射光を散乱する性能が十分ではなく、内部HAZEが十分大きくなかったことが挙げられる。
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
本発明は、軽量、安価で、フレキシブルなプラスチックフィルムなどを用いて生産性よく製造できる色素増感型太陽電池などの電気化学装置を提供し、その普及に寄与する。
1…半導体電極層、2…金属酸化物半導体微粒子、2A…第1の微粒子、
2B…第2の微粒子、3…第1酸化物層、4…第2酸化物層、5…支持体、
6…密着補助層、20…光増感型太陽電池、21…透明基板、
22…透明導電層(負極集電体)、23…光増感色素を保持した半導体電極層(負極)、
24…電解質層、25…対向電極(正極)、26…対向基板、27…封止材、
100…光増感型太陽電池、101…透明基板、102…透明導電層(負極集電体)、
103…光増感色素を保持した半導体電極層(負極)、104…電解質層、
105…対向電極(正極)、106…対向基板
特許3671183号公報(第3−8及び10−14頁、図2)
Z-S.Wang,T.Yamaguchi,H.Sugihara,H.Arakawa,Langmuir,21,p.4272-4276(2005),(第4273頁、左欄) M.K.Nazeeruddin,A.Kay,I.Rodicio,R.Humphry-Baker,E.Mueller,P.Liska,N.Vlachopoulos,M.Graetzel,J.Am.Chem.Soc.,115(14),p.6382-6390(1993),(第6384頁、左欄)
平成15年度(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 受託研究(委託業務)成果報告書、「太陽光発電技術研究開発 革新的次世代太陽光発電システム技術研究開発 高性能色素増感太陽電池技術の研究開発」(平成16年3月)、(第67、88及び89頁、図2−3−1)

Claims (23)

  1. 一次粒子の平均粒子径が100nm以下の第1の微粒子と、一次粒子の平均粒子径が 100nmより大きく、10000nm以下である第2の微粒子との、少なくとも2種 類の大きさの微粒子を含有し、支持体上に配置された金属酸化物半導体微粒子と、
    主として直接、前記金属酸化物半導体微粒子及び前記支持体に結着している第1酸化 物層と、
    前記第1酸化物層を形成している第1の酸化物よりも硬度の高い第2の酸化物からな り、主として前記第1酸化物層を介して、前記金属酸化物半導体微粒子及び前記支持体 に結着している第2酸化物層と
    を含有し、前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記金属酸化物半導体微粒子間、及び前記金属酸化物半導体微粒子と前記支持体との間が結着されてなる、半導体電極層。
  2. 前記第2の微粒子の一次粒子の平均粒子径が、200nm〜5000nmである、請求項1に記載した半導体電極層。
  3. 前記第2の微粒子の配合質量の、前記第1の微粒子の配合質量に対する比が、0.06〜6である、請求項1に記載した半導体電極層。
  4. 前記金属酸化物半導体微粒子が、酸化チタンTiO2、酸化亜鉛ZnO、酸化タングステンWO3、酸化ニオブNb25、チタン酸ストロンチウムSrTiO3、及び酸化スズSnO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物からなる、請求項1に記載した半導体電極層。
  5. 前記第1酸化物層を構成している元素が、前記金属酸化物半導体微粒子を構成している金属元素と同一の元素である、請求項1に記載した半導体電極層。
  6. 前記の硬度の高い第2酸化物層を構成している酸化物が、酸化ケイ素SiO2、酸化ホウ素B23、酸化アルミニウムAl23、及び酸化ジルコニウムZrO2からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸化物である、請求項1に記載した半導体電極層。
  7. 前記支持体の材料がプラスチック材料である、請求項1に記載した半導体電極層。
  8. 表面に光増感色素を保持し、色素増感型太陽電池の半導体電極層として構成されている、請求項1に記載した半導体電極層。
  9. 前記支持体が、一方の表面に光透過性導電層が設けられている光透過性支持体であり、この光透過性導電層に接して設けられている、請求項8に記載した半導体電極層。
  10. 前記支持体が、一方の表面に光透過性導電層と密着補助層とが積層して設けられている光透過性支持体であり、この密着補助層に接して設けられている、請求項8に記載した半導体電極層。
  11. 前記支持体が絶縁性の光透過性支持体であり、前記支持体と接している面とは反対側の面に、多孔性の導電層が設けられている、請求項8に記載した半導体電極層。
  12. 一次粒子の平均粒子径が100nm以下の第1の微粒子と、一次粒子の平均粒子径 が100nmより大きく、10000nm以下である第2の微粒子との、少なくとも 2種類の大きさの微粒子を含有する金属酸化物半導体微粒子と、
    加水分解すると第1の酸化物を生じる第1の化合物と、
    前記第1の化合物より加水分解しにくく、かつ加水分解すると前記第1の酸化物よ り硬度の高い第2の酸化物を生じる第2の化合物と
    を、有機溶媒に分散又は溶解させた塗液を調製する工程と、
    前記塗液の層を支持体に被着させる工程と、
    前記塗液の層から前記有機溶媒を蒸発させる蒸発工程と、
    前記蒸発工程後、温度を上昇させ、加熱処理する焼成工程と
    を有し、
    前記第1の酸化物の層が、主として直接、前記金属酸化物半導体微粒子及び前記支持 体に結着し、
    前記第2の酸化物の層が、主として前記第1の酸化物の層を介して、前記金属酸化物 半導体微粒子及び前記支持体に結着し、
    前記第1酸化物層と前記第2酸化物層とによって、前記金属酸化物半導体微粒子間、 及び前記金属酸化物半導体微粒子と前記支持体との間が結着されている金属酸化物半導 体多孔質層
    を作製する、半導体電極層の製造方法。
  13. 前記第1の化合物として塩又はアルコキシドを用いる、請求項12に記載した半導体電極層の製造方法。
  14. 前記第1の化合物は、チタンTi、アルミニウムAl、ケイ素Si、バナジウムV、ジルコニウムZr、ニオブNb、及びタンタルTaからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の化合物である、請求項13に記載した半導体電極層の製造方法。
  15. 前記第1の化合物として、前記金属酸化物半導体微粒子及び/又は前記有機溶媒に通常含まれる少量の水分と室温において反応し、一部又は全部が前記塗液中で加水分解される化合物を用いる、請求項12に記載した半導体電極層の製造方法。
  16. 前記第2の化合物として、ケイ素Si、ホウ素B、アルミニウムAl、及びジルコニウムZrからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素のアルコキシドを用いる、請求項12に記載した半導体電極層の製造方法。
  17. 前記蒸発工程中及び/又は前記蒸発工程後の温度を25〜200℃に保つ、請求項12に記載した半導体電極層の製造方法。
  18. 前記焼成工程中の温度を40〜200℃に保つ、請求項12に記載した半導体電極層の製造。
  19. 前記支持体の材料としてプラスチック材料を用いる、請求項12に記載した半導体電極層の製造方法。
  20. 前記支持体上に形成された前記半導体電極層のカレンダー処理を行う、請求項19に記載した半導体電極層の製造方法。
  21. 少なくとも、請求項1〜11のいずれか1項に記載した半導体電極層と、対向電極と、これらの間に挟持された電解質層とを有する、電気化学装置。
  22. 前記半導体電極層が光増感色素を保持しており、光が入射すると、この光を吸収して励起された前記光増感色素の電子が前記半導体電極層へ取り出されるとともに、前記電子を失った前記光増感色素は、前記電解質層中の還元剤によって還元され、この結果、前記電解質層中に生じた酸化剤は、前記対向電極から電子を受け取り還元される色素増感型太陽電池として構成されている、請求項21に記載した電気化学装置。
  23. 前記半導体電極層が請求項9〜11のいずれか1項に記載した半導体電極層である、請求項22に記載した電気化学装置。
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