JP2003331937A - 光電変換素子の製造方法 - Google Patents

光電変換素子の製造方法

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JP2003331937A
JP2003331937A JP2002137604A JP2002137604A JP2003331937A JP 2003331937 A JP2003331937 A JP 2003331937A JP 2002137604 A JP2002137604 A JP 2002137604A JP 2002137604 A JP2002137604 A JP 2002137604A JP 2003331937 A JP2003331937 A JP 2003331937A
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Japan
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layer
photoelectric conversion
conversion element
hole transport
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JP2002137604A
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Yukio Kasahara
幸雄 笠原
Yuji Fujimori
裕司 藤森
Tsutomu Miyamoto
勉 宮本
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Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
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Publication date
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    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Abstract

(57)【要約】 【課題】安価に製造ができ、光電変換効率に優れる固体
型色素増感型光電変換素子を提供すること。 【解決手段】図1に示す太陽電池1Aは、電解質溶液を
必要としない、いわゆる乾式太陽電池と呼ばれるもので
あり、第1の電極3と、第1の電極3と対向して設置さ
れた第2の電極6と、これらの間に位置する電子輸送層
4と、電子輸送層4と接触する色素層Dと、電子輸送層
4と第2の電極6との間に位置し、色素層Dに接触する
正孔輸送層5と、バリヤ層8とを有し、これらは、基板
2上に設置されている。前記正孔輸送層は、正孔輸送層
材料を塗布法により、前記色素層上に塗布して形成され
たものであり、前記塗布法は、減圧状態で行われる光電
変換素子の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光電変換素子に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、環境にやさしい電源として、
シリコンを用いた太陽電池(光電変換素子)が注目を集
めている。シリコンを用いた太陽電池の中には、人工衛
星等に用いられる単結晶シリコン型の太陽電池もある
が、実用的なものとしては、特に多結晶シリコンを用い
た太陽電池や、アモルファスシリコンを用いた太陽電池
が、産業用や家庭用として実用化が始まっている。
【0003】しかしながら、これらのシリコンを用いた
太陽電池は、いずれも、製造コストが高く、また、製造
に多大なエネルギーを必要とし、必ずしも省エネルギー
な電源とは言えなかった。
【0004】また、特開平01−220380号公報、
特開平05−504023号公報や特開平06−511
113号公報に示されるような色素増感型湿式太陽電池
は、蒸気圧の高い電解液を用いているため、電解液が揮
発するという問題があった。
【0005】また、このような欠点を補うものとして、
完全固体型色素増感型太陽電池の発表(K. Tennakone,
G.R.R.A. Kumara, I.R.M. Kottegoda, K.G.U. Wijiayan
tha,and V.P.S. Perera: J. Phys. D: Appl. Phys. 31
(1998)1492)がされている。
【0006】この太陽電池は、TiO2層が積層された
電極と、TiO2層上に設けられたp型半導体層とを有
する構成とされている。しかしながら、このような太陽
電池は、p型半導体層が、TiO2層を突き抜けて前記
電極とショートしてしまうという欠点があった。
【0007】また、この発表では、p型半導体層の構成
材料としてCuIが用いられている。このCuIを用い
た太陽電池は、CuIの結晶粒の増大等を理由とする劣
化により発生電流が低下するという問題があった。
【0008】さらに、この発表に用いられるp型半導体
層の構成材料であるCuIの塗布方法は、溶媒であるア
セトニトリル20mLに0.6gのCuIを溶解した溶
液(不溶物が残る場合には上澄み部分の溶液)を、Ti
2層上に塗布する方法が用いられている。
【0009】しかしながら、この塗布方法では、CuI
溶液の溶媒として用いられているアセトニトリルの蒸気
圧が高いので、CuIがナノポーラス状態に形成したT
iO 2層に十分に浸透する前に溶媒であるアセトニトリ
ルが揮発してしまうので、ナノポーラス状態に形成した
TiO2層にCuIが十分浸透しないで、CuIがTi
2層の上面に堆積してしまうという問題があった。
【0010】すなわち、CuIがナノポーラス状態に形
成したTiO2層に十分に浸透しないということは、膨
大な表面積を有するナノポーラス状態に形成したTiO
2層との接触面積が十分に取れず、光電変換の効率が向
上しないと言うことにほかならず、色素増感型ナノポー
ラス構造光電変換素子の特徴を十分に活かしていないこ
とになる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、安価
に製造ができ、光電変換効率に優れる固体型色素増感型
光電変換素子を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(16)の本発明により達成される。 (1)第1の電極と、該第1の電極と対向して設置さ
れ、表面に触媒層を有する第2の電極と、前記第1の電
極と前記第2の電極との間に位置し、その少なくとも一
部が多孔質な電子輸送層と、該電子輸送層と接触する色
素層と、前記電子輸送層と前記第2の電極の表面に形成
された触媒層に接して位置してなる正孔輸送層とを有す
る光電変換素子の製造方法であって、前記正孔輸送層
は、正孔輸送層材料を塗布法により、前記色素層上に塗
布して形成されたものである光電変換素子の製造方法。
【0013】(2)前記塗布法は、減圧状態で行われる
請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【0014】(3)前記減圧状態は、13.3Pa〜1.
33×10-4Pa(1×10−1〜1×10-6torr)であ
る請求項2に記載の光電変換素子の製造方法。
【0015】(4)前記塗布法は、減圧チャンバー内で
行われる請求項3に記載の光電変換素子の製造方法。
【0016】(5)前記塗布法における、正孔輸送材料
の前記色素層上への滴下の量は、1cm2の面積に対
し、1〜0.001mL毎分である請求項3に記載の光
電変換素子の製造方法。
【0017】(6)前記塗布法によるは正孔輸送材料の
前記色素層上への滴下の開始は、前記減圧チャンバー内
が減圧状態になった後、0.5〜5分経過後に開始され
ることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子の製
造方法。
【0018】(7)前記塗布法は、前記光電変換素子に
加熱処理を施して行われる請求項3に記載の光電変換素
子の製造方法。
【0019】(8)前記加熱処理は、5〜60分なされ
ることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子の製
造方法。
【0020】(9)前記加熱処理は、50〜150℃の
温度でなされることを特徴とする請求項3に記載の光電
変換素子の製造方法。
【0021】(10)前記減圧状態においては、前記電
子輸送層の多孔質層内の空隙中の気体を奪気する処理で
ある請求項3に記載の光電変換素子の製造方法。
【0022】(11)前記塗布法における正孔輸送層材
料の前記色素層Dが形成された電子輸送層4の上面に滴
下は、前記滴下する工程と乾燥する工程が交互または同
時に行われる請求項5記載の光電変換素子の製造方法。
【0023】(12)前記塗布法によって形成される正
孔輸送層の平均厚さは、1〜500μmである請求項3
に記載の光電変換素子の製造方法。
【0024】(13)前記減圧チャンバーは、減圧弁と
減圧室を有する請求項4に記載の光電変換素子の製造方
法。
【0025】(14)前記減圧チャンバーの前記塗布法
における、正孔輸送材料の注入口には、逆止弁が設置さ
れてなる請求項4に記載の光電変換素子の製造方法。
【0026】(15)前記逆止弁は、シリコンゴムであ
る請求項4に記載の光電変換素子の製造方法。
【0027】(16)太陽電池である請求項1ないし1
5のいずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光電変換素子を添
付図面に示す好適な実施形態について詳細に説明する。
【0029】<第1実施形態>図1は、本発明の光電変
換素子を太陽電池に適用した場合の第1実施形態を示す
部分断面図、図2は、第1実施形態の太陽電池の厚さ方
向の中央部付近の断面を示す拡大図、図3は、色素層が
形成された電子輸送層の断面を示す部分拡大図、図4
は、電子輸送層および色素層の構成を示す模式図、図5
は、太陽電池の原理を示す模式図、図6は、図1に示す
太陽電池回路の等価回路を示す図である。
【0030】図1に示す太陽電池1は、電解質溶液を必
要としない、いわゆる完全固体型色素増感太陽電池と呼
ばれるものであり、第1の電極3と、第1の電極3と対
向して設置された第2の電極6と、これらの間に位置す
る電子輸送層4と、電子輸送層4と接触する色素層D
と、電子輸送層4と第2の電極6との間に位置し、色素
層Dに接触する正孔輸送層5と、バリヤ層8とを有し、
これらは、基板2上に設置されている。
【0031】以下、各構成要素について説明する。な
お、以下の説明では、図1および図2中、各層(各部
材)の上側の面を「上面」、下側の面を「下面」と言
う。
【0032】基板2は、第1の電極3、バリヤ層8、電
子輸送層4、色素層D、正孔輸送層5および第2の電極
6を支持するためのものであり、平板状の部材で構成さ
れている。
【0033】本実施形態の太陽電池1Aでは、図1に示
すように、基板2および後述する第1の電極3側から、
例えば、太陽光等の光(以下、単に「光」と言う。)を
入射させて(照射して)使用するものである。このた
め、基板2および第1の電極3は、それぞれ、好ましく
は実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)と
される。これにより、光を、後述する色素層Dに効率よ
く到達させることができる。
【0034】この基板2の構成材料としては、例えば、
各種ガラス材料、各種セラミックス材料、ポリカーボネ
ート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)
のような各種樹脂材料、または、アルミニウムのような
各種金属材料等が挙げられる。
【0035】基板2の平均厚さとしては、材料、用途等
により適宜設定され、特に限定されないが、例えば、次
のようにすることができる。
【0036】基板2を、例えばガラス材料のような硬質
材料で構成する場合、その平均厚さとしては、0.1〜
1.5mm程度であるのが好ましく、0.8〜1.2m
m程度であるのがより好ましい。
【0037】また、基板2を、例えばポリエチレンテレ
フタレート(PET)のようなフレキシブル素材(可撓
性材料)で構成する場合、その平均厚さとしては、0.
5〜150μm程度であるのが好ましく、10〜75μ
m程度であるのがより好ましい。
【0038】なお、基板2は、必要に応じて、省略する
こともできる。
【0039】基板2の上面には、層状(平板状)の第1
の電極3が設置されている。換言すれば、第1の電極3
は、後述する色素層Dが形成された電子輸送層4の受光
面側に、この受光面を覆うようにして設置されている。
この第1の電極3は、後述する色素層Dで発生した電子
を、電子輸送層4およびバリヤ層8を介して受け取り、
これに接続された外部回路100へ伝達する。
【0040】第1の電極3の構成材料としては、例え
ば、インジウムティンオキサイド(ITO)、フッ素ド
ープした酸化錫(FTO)、酸化インジウム(IO)、
酸化錫(SnO2)のような金属酸化物、アルミニウ
ム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデ
ン、チタン、タンタルのような金属またはこれらを含む
合金、あるいは、黒鉛のような各種炭素材料等が挙げら
れ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて
用いることができる。
【0041】第1の電極3の平均厚さとしては、材料、
用途等により適宜設定され、特に限定されないが、例え
ば、次のようにすることができる。
【0042】第1の電極3を前記の金属酸化物(透明導
電性金属酸化物)で構成する場合、その平均厚さとして
は、0.05〜5μm程度であるのが好ましく、0.1
〜1.5μm程度であるのがより好ましい。
【0043】また、第1の電極3を前記の金属またはこ
れらを含む合金、あるいは、各種炭素材料で構成する場
合、その平均厚さとしては、0.01〜1μm程度であ
るのが好ましく、0.03〜0.1μm程度であるのが
より好ましい。
【0044】なお、第1の電極3は、図示の構成のよう
なものに限定されず、例えば、複数の櫛歯を有する形状
のもの等であってもよい。この場合、光は、複数の櫛歯
同士の間を通過して、色素層Dに到達するので、第1の
電極3は、実質的に透明でなくてもよい。これにより、
第1の電極3の構成材料や形成方法(製造方法)等の選
択の幅を拡大することができる。また、この場合、第1
の電極3の平均厚さとしては、特に限定されないが、例
えば、1〜5μm程度とするのが好ましい。
【0045】また、第1の電極3としては、このような
櫛歯状の電極と、ITO、FTO等からなる透明な電極
とを組み合わせて(例えば、積層等して)用いることも
できる。
【0046】第1の電極3の上面には、膜状(層状)の
バリヤ層(短絡防止手段)8が設置されている。なお、
このバリヤ層8の詳細については、後述する。
【0047】バリヤ層8の上面には、多孔質な電子輸送
層4と、この電子輸送層4と接触する色素層Dとが設置
されている。
【0048】電子輸送層4は、少なくとも色素層Dで発
生した電子を輸送する機能を有するものである。
【0049】電子輸送層4の構成材料としては、例え
ば、二酸化チタン(TiO2)、一酸化チタン(Ti
O)、三酸化二チタン(Ti23)等の酸化チタン、酸
化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)のようなn型
酸化物半導体材料や、その他のn型半導体材料等が挙げ
られ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせ
て用いることができるが、この中でも、酸化チタン、特
に、二酸化チタンを用いるのが好ましい。すなわち、電
子輸送層4は、主として二酸化チタンで構成されている
のが好ましい。
【0050】二酸化チタンは、特に、電子の輸送能力に
優れ、また、光に対する感受性が高いので、電子輸送層
4自体でも、電子を発生することができる。その結果、
太陽電池1Aでは、光電変換効率(発電効率)をより向
上することができる。
【0051】また、二酸化チタンは、その結晶構造が安
定しているので、二酸化チタンを主とする電子輸送層4
では、過酷な環境下に曝された場合でも、経年変化(劣
化)が少なく、安定した性能が長期間継続して得られる
という利点を有する。
【0052】さらに、二酸化チタンとしては、結晶構造
がアナターゼ型の二酸化チタンを主とするもの、ルチル
型の二酸化チタンを主とするもの、アナターゼ型の二酸
化チタンとルチル型の二酸化チタンとの混合物を主とす
るもののいずれであってもよい。
【0053】結晶構造がアナターゼ型の二酸化チタン
は、電子をより効率よく輸送することができるという利
点を有する。
【0054】なお、ルチル型の二酸化チタンとアナター
ゼ型の二酸化チタンとを混合する場合、ルチル型の二酸
化チタンとアナターゼ型の二酸化チタンとの混合比は、
特に限定されないが、例えば、重量比で95:5〜5:
95程度であるのが好ましく、80:20〜20:80
程度であるのがより好ましい。
【0055】電子輸送層4は、複数の孔(細孔)41を
有している。図3は、電子輸送層4に、光が入射してい
る状態を模式的に示している。図3に示すように、バリ
ヤ層8を通過した光(図3中の矢印)は、電子輸送層4
の内部まで侵入し、電子輸送層4内を透過、または、孔
41内で任意の方向に反射(乱反射、拡散等)する。こ
のとき、光は、色素層Dと接触することになり、色素層
Dにおいて高い頻度で電子および正孔を発生させること
ができる。
【0056】この電子輸送層4の空孔率としては、特に
限定されないが、例えば、5〜90%程度であるのが好
ましく、15〜50%程度であるのがより好ましく、2
0〜40%程度であるのがさらに好ましい。
【0057】電子輸送層4の空孔率を、このような範囲
内とすることにより、電子輸送層4の表面積を十分大き
くすることができる。したがって、電子輸送層4の外面
および孔41の内面に沿って形成される色素層D(後述
参照)の形成面積(形成領域)も十分に大きくすること
ができる。このため、色素層Dでは、十分な電子を発生
させることができるとともに、この電子を効率よく電子
輸送層4へ受け渡すことができる。その結果、太陽電池
1Aでは、発電効率(光電変換効率)をより向上するこ
とができる。
【0058】また、電子輸送層4は、比較的厚さの大き
なものであってもよいが、膜状をなすものが好ましい。
これにより、太陽電池1Aの薄型化(小型化)、製造コ
ストの削減を図ることができ有利である。
【0059】この場合、電子輸送層4の平均厚さ(膜
厚)としては、特に限定されないが、例えば、0.1〜
300μm程度であるのが好ましく、0.5〜100μ
m程度であるのがより好ましく、1〜25μm程度であ
るのがさらに好ましい。
【0060】このような電子輸送層4には、色素を、例
えば吸着、結合(共有結合、配位結合)等させることに
より、色素層Dが接触するようにして形成されている。
【0061】この色素層Dは、受光により、電子と正孔
とを発生する受光層であり、図4に示すように、電子輸
送層4の外面および孔41の内面に沿って形成されてい
る。これにより、色素層Dで発生した電子を効率よく電
子輸送層4に受け渡すことができる。
【0062】この色素層Dを構成する色素としては、特
に限定されないが、例えば、顔料、染料等が挙げられ、
これらを単独または混合して使用することができるが、
経時的変質、劣化がより少ないという点で顔料を、電子
輸送層4への吸着性(電子輸送層4との結合性)がより
優れるという点で染料を用いるのが好ましい。
【0063】また、顔料としては、特に限定されない
が、例えば、フタロシアニングリーン、フタロシアニン
ブルー等のフタロシアニン系顔料、ファストイエロー、
ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ペンゾイミダゾ
ロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ペンズイミ
ダゾロンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカ
ーミン、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合
アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミ
ダゾロンブラウン等のアゾ系顔料、アントラピリミジン
イエロー、アントラキノニルレッド等のアントラキノン
系顔料、銅アゾメチンイエロー等のアゾメチン系顔料、
キノフタロンイエロー等のキノフタロン系顔料、イソイ
ンドリンイエロー等のイソインドリン系顔料、ニッケル
ジオキシムイエロー等のニトロソ系顔料、ペリノンオレ
ンジ等のペリノン系顔料、キナクリドンマゼンタ、キナ
クリドンマルーン、キナクリドンスカーレット、キナク
リドンレッド等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッ
ド、ペリレンマルーン等のペリレン系顔料、ジケトピロ
ロピロールレッド等のピロロピロール系顔料、ジオキサ
ジンバイオレット等のジオキサジン系顔料のような有機
顔料、カーボンブラック、ランプブラック、ファーネス
ブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン等の
炭素系顔料、黄鉛、モリブデートオレンジ等クロム酸塩
系顔料、カドミウムイエロー、カドミウムリトポンイエ
ロー、カドミウムオレンジ、カドミウムリトポンオレン
ジ、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムリトポンレッ
ド、硫化等の硫化物系顔料、オーカー、チタンイエロ
ー、チタンバリウムニッケルイエロー、べんがら、鉛
丹、アンバー、褐色酸化鉄、亜鉛鉄クロムブラウン、酸
化クロム、コバルトグリーン、コバルトクロムグリー
ン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、セルリ
アンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー、鉄
黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライト
ブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラッ
ク等の酸化物系顔料、ビリジアン等の水酸化物系顔料、
紺青等のフェロシアン化物系顔料、群青等のケイ酸塩系
顔料、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等
のリン酸塩系顔料、その他(例えば硫化カドミウム、セ
レン化カドミウム等)のような無機顔料等が挙げられ、
これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用い
ることができる。
【0064】また、染料としては、特に限定されない
が、例えば、RuL2(SCN)2、RuL2Cl2、RuL2CN2、Rutenium
535-bisTBA(Solaronics社製)、[RuL2 (NCS2]2H2Oのよ
うな金属錯体色素、シアン系色素、キサンテン系色素、
アゾ系色素、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、
ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素等
が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み
合わせて用いることができる。なお、前記組成式中のL
は、2,2'ーbipyridine、または、その誘導体を示す。
【0065】色素層Dが形成された電子輸送層4の上面
には、層状(平板状)の正孔輸送層5が設置されてい
る。換言すれば、正孔輸送層5は、色素層Dが形成され
た電子輸送層4を介して第1の電極3と対向して設置さ
れている。この正孔輸送層5は、色素層Dで発生した正
孔を捕捉し、輸送する機能を有する。換言すれば、この
正孔輸送層5は、後述する第2の電極6を介して、また
は、正孔輸送層5自体が電極となり外部回路100へ正
孔を輸送する機能を有する。
【0066】正孔輸送層5の平均厚さとしては、特に限
定されないが、例えば、1〜500μm程度であるのが
好ましく、10〜300μm程度であるのがより好まし
く、10〜30μm程度であるのがさらに好ましい。
【0067】正孔輸送層5の構成材料としては、例え
ば、各種イオン伝導特性を有する物質、トリフェニルジ
アミン(モノマー、ポリマー等)、ポリアニリン、ポリ
ピロール、ポリチオフェン、フタロシアニン化合物(例
えば、銅フタロシアニン)またはこれらの誘導体のよう
な各種p型半導体材料、または、アルミニウム、ニッケ
ル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタ
ン、タンタルのような金属またはこれらを含む合金等が
挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合
わせて用いることができるが、特に、イオン伝導特性を
有する物質が好ましく用いられる。すなわち、正孔輸送
層5は、主としてイオン伝導特性を有する物質で構成さ
れているのが好ましい。これにより、正孔輸送層5は、
色素層Dで発生した正孔(ホール)をより効率よく輸送
することができる。
【0068】また、このイオン伝導特性を有する物質と
しては、例えば、CuI、AgIのようなヨウ化金属化
合物、AgBrのような臭化金属化合物等のハロゲン化
金属化合物、CuSCNのようなチオシアン酸金属塩
(ロダン化金属化合物)等が挙げられ、これらのうちの
1種または2種以上を組み合わせて用いることができ
る。
【0069】これらの中でも、イオン伝導特性を有する
物質としては、ヨウ化金属化合物、臭化金属化合物等の
ハロゲン化金属化合物が好ましい。ハロゲン化金属化合
物は、イオン伝導特性に特に優れている。
【0070】さらに、イオン伝導特性を有する物質とし
ては、CuI、AgIのようなヨウ化金属化合物のうち
の1種または2種以上を組み合わせて用いるのが、特に
好ましい。ヨウ化金属化合物は、イオン伝導特性に極め
て優れている。このため、正孔輸送層5の主材料とし
て、ヨウ化金属化合物を用いることにより、太陽電池1
Aの光電変換効率(エネルギー変換効率)をより向上す
ることができる。
【0071】また、正孔輸送層5は、図2に示すよう
に、色素層Dが形成された電子輸送層4の孔41内に入
り込んで形成されている。これにより、色素層Dと正孔
輸送層5との接触面積を増大することができるので、色
素層Dで発生した正孔(ホール)を、より効率よく正孔
輸送層5へ伝達することができる。その結果、太陽電池
1Aは、発電効率をさらに向上することができる。
【0072】正孔輸送層5の上面には、層状(平板状)
の第2の電極6が設置されている。
【0073】第2の電極6の平均厚さとしては、材料、
用途等により適宜設定され、特に限定されない。
【0074】また、第2の電極6の構成材料としては、
例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、
銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタルのような金
属またはこれらを含む合金、あるいは、黒鉛のような各
種炭素材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2
種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】また、本発明の光電変換素子は、光化学素
子であるため、第2の電極6と正孔輸送層5との間には
界面を形成し、この界面には触媒層が形成されている。
【0076】従来の色素増感湿式光電変換素子は、正孔
輸送層にヨウ素溶液等からなる電解液が用いられている
ため、第2の電極6と色素を吸着した電子輸送層4との
間には、スペーサー等を用いてある距離の間隙を形成
し、この間隙には、正孔輸送層である電解液が充填され
ている構造であった。
【0077】このような、従来の色素増感湿式太陽電池
やK. Tennakone, G.R.R.A. Kumara,I.R.M. Kottegoda,
K.G.U. Wijiayantha, and V.P.S. Perera: J. Phys. D:
Appl. Phys. 31(1998)1492 等に発表されている従来の
完全固体型色素増感型太陽電池等は、第2の電極が形成
された基板と色素が吸着された電子輸送層4が形成され
た基板とをクリップ等で狭持して、正孔輸送層と第2の
電極を押し当てて、押圧により物理的に接触させている
ものであり、接触抵抗が大きい等の問題があった。
【0078】しかしながら、本発明の完全固体型色素増
感光電変換素子は、第2の電極6と正孔輸送層5の間に
は界面を形成しており、この界面には、触媒層が形成さ
れている点で、上述した従来の色素増感型太陽電池等と
は異なる。
【0079】また、本発明の完全固体型色素増感光電変
換素子の正孔輸送層5と触媒層とからなる界面の界面準
位は0.1〜0.0001eVであることが好ましく、
さらに好ましい界面準位は0.01〜0.001eVで
ある。
【0080】本発明においては、正孔輸送層5上の触媒
層の形成は、スピンコート、印刷法、スプレーコート、
塗布等のウェットプロセス(湿式)法が用いられ、正孔
輸送層5と触媒層との間には界面を形成している。これ
らのウェットプロセス(湿式)の後工程には、触媒層を
乾燥、焼成してもよい。
【0081】また、本発明においては、正孔輸送層5上
の触媒層の形成は、スパッタ、蒸着、CVD法等のドラ
イプロセス(乾式)法が用いられて、正孔輸送層5と触
媒層との間には界面を形成している。
【0082】触媒層としては、Pt(白金)、Pt−R
u(白金−ルテニウム)、Au(金)等が用いられる
が、本発明にいては、黒鉛のような各種炭素材料等が最
適である。
【0083】炭素材料の例としては、黒鉛、グラファイ
ト、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、フラーレン
(C60)等のいずれか1つ以上が用いられる。
【0084】炭素材料の強度を上げるために、これらの
炭素材料中には炭素繊維が織り込まれていてもよい。炭
素繊維としては、レーヨンやポリアクリロニトリルなど
の有機繊維や精製した石油ピッチを紡糸して作った繊維
を、不活性ガス中で熱処理して炭化して作った繊維が用
いられる。
【0085】特に、ポリアクリロニトリルで作った炭素
繊維は高弾性、高強度であり、これを上述した炭素材料
と樹脂などで固めた複合剤は、本発明の触媒層として最
適である。
【0086】炭素繊維および樹脂は導電性を有してい
る。
【0087】さらに、第2の電極6と正孔輸送層5との
間には、より密着した界面を形成するために、正孔輸送
層をより平滑に形成することが必要である。
【0088】正孔輸送層の触媒層と界面をなす側の表面
は、平坦であることが望ましく、正孔輸送層の触媒層と
界面をなす側の表面の表面荒さは、Rmax(最大表面荒
さ)が10μm以下であることが望ましく、Ra(平均
表面荒さ)は5μm以下であることが望ましい。
【0089】また、形成された触媒層の表面荒さも、R
max(最大表面荒さ)が10μm以下であることが望ま
しく、Ra(平均表面荒さ)は5μm以下であることが
望ましい。
【0090】このような太陽電池1Aでは、図5に示す
ように、光が入射すると、主に色素層Dにおいて、電子
が励起され、電子(e-)と正孔(h+)とが発生する。
このうち、電子は、電子輸送層4へ、正孔は、正孔輸送
層5へ移動し、第1の電極3と第2の電極6との間に、
電位差(光起電力)が生じて、外部回路100に、電流
(光励起電流)が流れる。
【0091】なお、図5に示すVaccum Energyの値は、
電子輸送層4およびバリヤ層8が二酸化チタンで構成さ
れ、正孔輸送層5がCuIで構成される場合の一例であ
る。
【0092】この様子を等価回路で表すと、図6に示す
ようなダイオード200を有する電流の循環回路が形成
されているものとなる。
【0093】なお、光の照射(受光)により、色素層D
では、電子および正孔が同時に発生するが、以下の説明
では、便宜上、「電子が発生する」と記載する。
【0094】さて、本発明では、第1の電極3と正孔輸
送層5との間での短絡(リーク)を防止または抑制する
短絡防止手段を設けたことに特徴を有している。
【0095】以下、この短絡防止手段について、詳述す
る。
【0096】本実施形態では、短絡防止手段として、膜
状(層状)をなし、第1の電極3と電子輸送層4との間
に位置するバリヤ層8が設けられている。このバリヤ層
8は、電子輸送層4の空孔率より、その空孔率が小さく
なるよう形成されたものである。
【0097】太陽電池1Aを製造する際には、後述する
ように、例えば、正孔輸送層材料を塗布法により、色素
層Dが形成された電子輸送層4の上面に塗布することが
行われる。
【0098】この場合、仮に、バリヤ層8が設けられな
い太陽電池では、電子輸送層4の空孔率を大きくする
と、正孔輸送層材料が色素層Dが形成された電子輸送層
4の孔41内を浸透していき、第1の電極3に到達して
しまうことがある。すなわち、バリヤ層8を有さない太
陽電池では、第1の電極3と正孔輸送層5との間で接触
(短絡)が生じることにより、漏れ電流が多くなり、発
電効率(光電変換効率)の低下を招く場合がある。
【0099】これに対し、バリヤ層8が設けられた太陽
電池1Aでは、前述のような不都合が防止され、発電効
率の低下が好適に防止または抑制される。
【0100】また、バリヤ層8の空孔率をA[%]と
し、電子輸送層4の空孔率をB[%]としたとき、B/
Aが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5
以上程度であるのがより好ましく、10以上程度である
のがさらに好ましい。これにより、バリヤ層8と電子輸
送層4とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮
することができる。
【0101】より具体的には、バリヤ層8の空孔率Aと
しては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、
5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度で
あるのがさらに好ましい。すなわち、バリヤ層8は、緻
密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をより
向上することができる。
【0102】さらに、バリヤ層8と電子輸送層4との厚
さの比率は、特に限定されないが、例えば、1:99〜
60:40程度であるのが好ましく、10:90〜4
0:60程度であるのがより好ましい。換言すれば、バ
リヤ層8と電子輸送層4との全体におけるバリヤ層8の
占める厚さの割合は、1〜60%程度であるのが好まし
く、10〜40%程度であるのがより好ましい。これに
より、バリヤ層8は、第1の電極3と正孔輸送層5との
接触等による短絡を、より確実に防止または抑制するこ
とができるとともに、色素層Dへの光の到達率が低下す
るのを好適に防止することができる。
【0103】より具体的には、バリヤ層8の平均厚さ
(膜厚)としては、例えば、0.01〜10μm程度で
あるのが好ましく、0.1〜5μm程度であるのがより
好ましく、0.5〜2μm程度であるのがさらに好まし
い。これにより、前記効果をより向上することができ
る。
【0104】このバリヤ層8の構成材料としては、特に
限定されないが、例えば、電子輸送層4の主たる構成材
料である酸化チタンの他、例えば、SrTiO3、Zn
O、SiO2、Al23、SnO2のような各種金属酸化
物、CdS、CdSe、TiC、Si34、SiC、B
4N、BNのような各種金属化合物等の1種または2種
以上を組み合わせて用いることができるが、この中で
も、電子輸送層4と同等の電気伝導性を有するものであ
るのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがよ
り好ましい。バリヤ層8をこのような材料で構成するこ
とにより、色素層Dで発生した電子をより効率よく、電
子輸送層4からバリヤ層8へ伝達することができ、その
結果、太陽電池1Aの発電効率をより向上することがで
きる。
【0105】このバリヤ層8および電子輸送層4の厚さ
方向の抵抗値は、それぞれ、特に限定されないが、バリ
ヤ層8と電子輸送層4との全体における厚さ方向の抵抗
値、すなわち、バリヤ層8と電子輸送層4との積層体の
厚さ方向の抵抗値は、100Ω/cm2以上程度である
のが好ましく、1kΩ/cm2以上程度であるのがより
好ましい。これにより、第1の電極3と正孔輸送層5と
の間でのリーク(短絡)をより確実に防止または抑制す
ることができ、太陽電池1Aの発電効率の低下を防ぐこ
とができるという利点がある。
【0106】また、バリヤ層8と電子輸送層4との界面
は、明確でなくても、明確であってもよいが、明確でな
い(不明確である)のが好ましい。すなわち、バリヤ層
8と電子輸送層4とは、一体的に形成され、互いに部分
的に重なっているのが好ましい。これにより、バリヤ層
8と電子輸送層4との間での電子の伝達を、より確実に
(効率よく)行うことができる。
【0107】さらに、バリヤ層8と電子輸送層4とは、
同一の組成の材料(例えば、二酸化チタンを主とする材
料)を用いて作成し、それらの空孔率のみが異なる構
成、すなわち、電子輸送層4の一部が、前記バリヤ層8
として機能するような構成であってもよい。
【0108】この場合、電子輸送層4は、その厚さ方向
に、密な部分と粗な部分とを有し、このうち、密な部分
がバリヤ層8として機能する。
【0109】また、この場合、密な部分は、電子輸送層
4の第1の電極3側に形成されているのが好ましいが、
厚さ方向の任意の位置に形成することもできる。
【0110】また、この場合、電子輸送層4は、密な部
分で粗な部分を挟んだ部分を有する構成のものや、粗な
部分で密な部分を挟んだ部分を有する構成のもの等であ
ってもよい。
【0111】このような太陽電池1Aでは、色素層D
(色素層Dが形成された電子輸送層4)への光の入射角
が90°での光電変換効率をR90とし、光の入射角が5
2°での光電変換効率をR52としたとき、R52/R90
0.8以上程度となるような特性を有しているのが好ま
しく、0.85以上程度であるのがより好ましい。この
ような条件を満たすということは、色素層Dが形成され
た電子輸送層4が光に対する指向性が低い、すなわち、
等方性を有するということである。したがって、このよ
うな太陽電池1Aは、太陽の日照時間のほぼ全域に渡っ
て、より効率良く発電することができる。
【0112】さらに、太陽電池1Aでは、第1の電極3
が正、第2の電極6(正孔輸送層5)が負となるように
して、0.5Vの電圧を印加したとき、その抵抗値が、
例えば、100Ω/cm2以上程度となる特性を有する
のが好ましく、1kΩ/cm2以上程度となる特性を有
するのがより好ましい。このような特性を有するという
ことは、太陽電池1Aでは、第1の電極3と正孔輸送層
5との間での接触等による短絡(リーク)が好適に防止
または抑制されていることを示すものである。よって、
このような太陽電池1Aでは、発電効率(光電変換効
率)をより向上することができる。
【0113】このような太陽電池1Aは、例えば、次の
ようにして製造することができる。
【0114】まず、例えばソーダガラス等で構成された
基板2を用意する。この基板2には、厚さが均一で、た
わみのないものが好適に用いられる。
【0115】<1> まず、第1の電極3を基板2の上
面に形成する。第1の電極3は、例えばFTO等で構成
される第1の電極3の材料を、例えば、蒸着法、スパッ
タリング法、印刷法等を用いることにより、形成するこ
とができる。
【0116】<2> 次に、バリヤ層8を第1の電極3
の上面に形成する。バリヤ層8は、例えば、ゾル・ゲル
法、蒸着(真空蒸着)法、スパッタリング法(高周波ス
パッタリング、DCスパッタリング)、スプレー熱分解
法、ジェットモールド(プラズマ溶射)法、CVD法等
により形成することができるが、この中でも、ゾル・ゲ
ル法により形成するのが好ましい。
【0117】このゾル・ゲル法は、その操作が極めて簡
単であり、例えば、ディッピング、滴下、ドクターブレ
ード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロール
コーター等の各種塗布法と組み合わせて用いることによ
り、大掛かりな装置も必要とせず、好適にバリヤ層8を
膜状(厚膜および薄膜)に形成することができる。
【0118】また、塗布法によれば、例えばマスク等を
用いて、マスキングを行うことにより、所望のパターン
形状のバリヤ層8を容易に得ることができる。
【0119】このゾル・ゲル法としては、バリヤ層材料
中での後述するチタン化合物(有機または無機)の反応
(例えば、加水分解、重縮合等)を許容しない(防止す
る)方法(以下、「MOD(Metal Organic Deposition
またはMetal Organic Decomposition)法」と言
う。)、あるいは、これを許容する方法が挙げられる
が、特に、MOD法を用いるのが好ましい。
【0120】このMOD法によれば、バリヤ層材料中で
のチタン化合物(有機または無機)の安定性が維持さ
れ、また、バリヤ層8をより容易かつ確実に(再現性よ
く)、緻密なもの(前記範囲内の空孔率)とすることが
できる。
【0121】特に、チタンテトライソプロポキシド(T
PT)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキ
シド、チタンテトラブトキシドのような化学的に非常に
不安定な(分解しやすい)チタンアルコキシド(金属ア
ルコキシド)等の有機チタン化合物を用いて、緻密なT
iO2層(本発明のバリヤ層8)を形成する場合には、
このMOD法は最適である。
【0122】以下、バリヤ層8のMOD法による形成方
法について説明する。
【0123】[バリヤ層材料の調製]例えば、チタンテ
トライソプロポキシド(TPT)、チタンテトラメトキ
シド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシ
ドのようなチタンアルコキシド(金属アルコキシド)等
の有機チタン化合物のうちの1種または2種以上組み合
わせたものを用いる場合には、まず、この有機チタン化
合物(またはこの溶液)を、例えば、無水エタノール、
2−ブタノール、2−プロパノール、2−n−ブトキシ
エタノール等の有機溶媒(またはこれらの混合溶媒)に
溶解する。
【0124】これにより、有機チタン化合物の前記溶液
中の濃度(含有量)を調製(例えば0.1〜10mol
/L程度)して、得られるバリヤ層材料の粘度を調製す
る。このバリヤ層材料の粘度としては、前記塗布法の種
類等により、適宜設定され、特に限定されないが、スピ
ンコートを用いる場合には、好ましくは高粘度(例えば
0.5〜20cP(常温)程度)とされ、スプレーコー
トを用いる場合には、好ましくは低粘度(例えば0.1
〜2cP(常温)程度)とされる。
【0125】次に、この溶液に、例えば、四塩化チタ
ン、酢酸、アセチルアセトン、トリエタノールアミン、
ジエタノールアミン等の前記チタンアルコキシド(金属
アルコキシド)を安定化する機能を有する添加物を添加
する。
【0126】これらの添加物を加えることにより、これ
らの添加物がチタンアルコキシド中のチタン原子に配位
するアルコキシド(アルコキシル基)と置換して、チタ
ン原子に配位する。これにより、チタンアルコキシドの
加水分解を抑止して、安定化させる。すなわち、これら
の添加物は、チタンアルコキシドの加水分解を抑止する
加水分解抑止剤として機能するものである。この場合、
この添加物とチタンアルコキシドとの配合比は、特に限
定されないが、例えば、モル比で1:2〜8:1程度と
するのが好ましい。
【0127】より具体的には、チタンアルコキシドにジ
エタノールアミンを配位させた場合、チタンアルコキシ
ドのアルコキシド(アルコキシル基)に換わり(置換し
て)、チタン原子にジエタノールアミンが2分子配位す
る。このジエタノールアミンにより置換された化合物
は、チタンアルコキシドよりも二酸化チタンを生成する
上で安定化した化合物となる。
【0128】他の場合の組み合わせでも同様である。
【0129】これにより、バリヤ層材料(バリヤ層形成
用のゾル液:MOD用ゾル液)を得る。
【0130】また、四塩化チタン(TTC)等の無機チ
タン化合物を用いる場合には、この無機チタン化合物
(またはこの溶液)を、無水エタノール、2−ブタノー
ル、2−プロパノール、2−n−ブトキシエタノール等
の有機溶媒(またはこれらの混合溶媒)に溶解すること
により、有機溶媒がチタンに配位し、添加物を加えない
で安定した化合物となる。
【0131】さらに、チタンオキシアセチルアセトナー
ト(TOA)等の有機チタン化合物を用いる場合には、
この有機チタン化合物(またはこの溶液)が単独で安定
なものであるので、前記有機溶媒に溶解することで安定
したバリヤ層材料を得ることができる。
【0132】なお、本発明において、MOD法でバリヤ
層8を形成する場合には、上述した3つの溶液のうち、
次の方法により調整された溶液を用いるのが最適であ
る。すなわち、チタンテトライソプロポキシド(TP
T)、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシ
ド、チタンテトラブトキシドのようなチタンアルコキシ
ド等の有機チタン化合物(またはこの溶液)を溶媒で溶
解(または希釈)し、この溶液に、四塩化チタン、酢
酸、アセチルアセトン、トリエタノールアミン、ジエタ
ノールアミン等の添加物を添加する方法により調整され
た溶液を用いるのが最適である。この方法によれば、チ
タンアルコキシドのチタン原子に、前記添加物を配位さ
せ、二酸化チタンを生成する上で安定化した化合物を得
ることができる。
【0133】これによって、化学的に不安定なチタンア
ルコキシドを、化学的に安定な化合物にすることができ
る。かかる化合物は、本実施形態のバリヤ層8、すなわ
ち、二酸化チタンを主材料とする緻密なバリヤ層8を形
成する場合において、極めて有用である。
【0134】[バリヤ層8の形成]第1の電極3の上面
に、塗布法(例えば、スピンコート等)により、バリヤ
層材料を塗布して膜状に形成する。塗布法としてスピン
コートを用いる場合、回転数を500〜4000rpm
程度で行うのが好ましい。
【0135】次いで、かかる塗膜に対して、熱処理を施
す。これにより、有機溶媒を揮発、除去する。この熱処
理条件としては、好ましくは50〜250℃程度で1〜
60分間程度、より好ましくは100〜200℃程度で
5〜30分間程度とされる。
【0136】かかる熱処理は、例えば、大気中、窒素ガ
ス中で行うことができる他、例えば、各種不活性ガス、
真空、減圧状態[例えば、13.3Pa〜1.33×10-4
Pa(1×10-1〜1×10-6Torr)]のような非酸化性
雰囲気中で行うようにしてもよい。
【0137】なお、バリヤ層材料の第1の電極3の上面
への塗布は、第1の電極3を加熱しつつ行うようにして
もよい。
【0138】さらに、塗膜に対して、前記熱処理より高
温で熱処理を施す。これにより、塗膜中に残存する有機
成分を除去するとともに、二酸化チタン(TiO2)を
焼結させ、アモルファスまたはアナターゼ型の結晶構造
の二酸化チタンからなるバリヤ層8を形成する。この熱
処理条件としては、好ましくは300〜700℃程度で
1〜70分間程度、より好ましくは400〜550℃程
度で5〜45分間程度とされる。
【0139】なお、かかる熱処理の雰囲気は、前記熱処
理と同様の雰囲気とすることができる。
【0140】以上のような操作を、好ましくは1〜20
回程度、より好ましくは1〜10回程度行って、前述し
たような平均厚さのバリヤ層8を形成する。
【0141】この場合、1回の前記操作により得られる
塗膜の厚さ(膜厚)は、100nm以下程度とするのが
好ましく、50nm以下程度とするのがより好ましい。
このような薄膜を積層してバリヤ層8を形成することに
より、バリヤ層8をより均一で密度の高いものとするこ
とができる。また、1回の前記操作により得られる膜厚
の調整は、バリヤ層材料の粘度を調製することで、容易
に行うことができる。
【0142】なお、バリヤ層8の形成に先立って、第1
の電極3の上面には、例えば、O2プラズマ処理、EB
処理、有機溶剤(例えばエタノール、アセトン等)での
洗浄処理等を行うことにより、第1の電極3の上面に付
着した有機物を除去するようにしてもよい。この場合、
バリヤ層8を形成する部分を残し、第1の電極3の上面
にマスク層を形成し、マスキングしておく。また、この
マスク層は、バリヤ層8の形成後に除去するようにして
もよく、太陽電池1Aの完成後に除去するようにしても
よい。
【0143】<3> 次に、バリヤ層8の上面に、電子
輸送層4を形成する。電子輸送層4は、例えば、ゾル・
ゲル法、蒸着法、スパッタリング法等により形成するこ
とができるが、この中でも、ゾル・ゲル法により形成す
るのが好ましい。
【0144】このゾル・ゲル法は、その操作が極めて簡
単であり、例えば、ディッピング、滴下、ドクターブレ
ード、スピンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロール
コーター等の各種塗布法と組み合わせて用いることによ
り、大掛かりな装置も必要とせず、好適に電子輸送層4
を膜状(厚膜および薄膜)に形成することができる。
【0145】また、塗布法によれば、例えばマスク等を
用いて、マスキングを行うことにより、所望のパターン
形状の電子輸送層4を容易に得ることができる。
【0146】この電子輸送層4の形成には、電子輸送層
材料の粉末を含有するゾル液を用いるのが好ましい。こ
れにより、電子輸送層4をより容易かつ確実に多孔質と
することができる。
【0147】電子輸送層材料の粉末の平均粒径として
は、特に限定されないが、例えば、1nm〜1μm程度
であるのが好ましく、5〜50nm程度であるのがより
好ましい。電子輸送層材料の粉末の平均粒径を前記の範
囲内とすることにより、電子輸送層材料の粉末のゾル液
中での均一性を向上することができる。また、このよう
に電子輸送層材料の粉末の平均粒径を小さくすることに
より、得られる電子輸送層4の表面積(比表面積)をよ
り大きくすることができるので、色素層Dの形成領域
(形成面積)をより大きくすることができ、太陽電池1
Aの発電効率の向上に寄与する。
【0148】以下に、電子輸送層4の形成方法の一例に
ついて説明する。
【0149】[酸化チタン粉末(電子輸送層材料の粉
末)の調製] <3−A0> ルチル型の二酸化チタン粉末とアナター
ゼ型の二酸化チタン粉末とを所定の配合比(アナターゼ
型の二酸化チタン粉末のみ、ルチル型の二酸化チタン粉
末のみの場合も含む)にて、配合し混合しておく。
【0150】これらのルチル型の二酸化チタン粉末の平
均粒径と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末の平均粒径
とは、それぞれ異なっていてもよいし、同じであっても
よいが、異なっている方が好ましい。
【0151】なお、酸化チタン粉末全体としての平均粒
径は、前述の範囲とする。
【0152】[ゾル液(電子輸送層材料)の調製] <3−A1> まず、例えば、チタンテトライソプロポ
キシド(TPT)、チタンテトラメトキシド、チタンテ
トラエトキシド、チタンテトラブトキシドのようなチタ
ンアルコキシド、チタンオキシアセチルアセトナート
(TOA)等の有機チタン化合物や、四塩化チタン(T
TC)等の無機チタン化合物のうちの1種または2種以
上組み合わせたものを、例えば、無水エタノール、2−
ブタノール、2−プロパノール、2−n−ブトキシエタ
ノール等の有機溶媒(またはこれらの混合溶媒)に溶解
する。
【0153】このとき、チタン化合物(有機または無
機)の溶液中の濃度(含有量)としては、特に限定され
ないが、例えば、0.1〜3mol/L程度とするのが
好ましい。
【0154】次に、必要に応じて、この溶液中に各種添
加物を添加する。有機チタン化合物として、例えばチタ
ンアルコキシドを用いる場合には、チタンアルコキシド
は、化学的安定性が低いので、例えば、酢酸、アセチル
アセトン、硝酸等の添加物を添加するようにする。これ
により、チタンアルコキシドを化学的に安定な化合物と
することができる。この場合、この添加物とチタンアル
コキシドとの配合比は、特に限定されないが、例えば、
モル比で1:2〜8:1程度とするのが好ましい。
【0155】<3−A2> 次に、この溶液に、例え
ば、蒸留水、超純水、イオン交換水、RO水等の水を混
合する。この水とチタン化合物(有機または無機)との
配合比は、モル比で1:4〜4:1程度とするのが好ま
しい。
【0156】<3−A3> 次いで、かかる溶液に、前
記工程<3−A0>で調製した酸化チタン粉末を混合し
て懸濁(分散)液を得る。
【0157】<3−A4> さらに、この懸濁液を前記
の有機溶媒(または、混合溶媒)で希釈する。これによ
り、ゾル液を調製する。この希釈倍率としては、例え
ば、1.2〜3.5倍程度が好ましい。
【0158】また、酸化チタン粉末(電子輸送層材料の
粉末)のゾル液中の含有量としては、特に限定されない
が、例えば、0.1〜10wt%(重量%)程度である
のが好ましく、0.5〜5wt%程度であるのがより好
ましい。これにより、電子輸送層4の空孔率を好適に前
記範囲内とすることができる。
【0159】[電子輸送層(酸化チタン層)4の形成] <3−A5> バリヤ層8を好ましくは加熱しつつ、バ
リヤ層8の上面に、塗布法(例えば、滴下等)により、
ゾル液を塗布して膜状体(塗膜)を得る。この加熱温度
としては、特に限定されないが、例えば、80〜180
℃程度であるのが好ましく、100〜160℃程度であ
るのがより好ましい。
【0160】以上のような操作を、好ましくは1〜10
回程度、より好ましくは5〜7回程度行って、前述した
ような平均厚さの電子輸送層4を形成する。
【0161】次いで、この電子輸送層4に、必要に応じ
て、例えば、温度250〜500℃程度で0.5〜3時
間程度、熱処理(例えば、焼成等)を施してもよい。
【0162】<3−A6> 前記工程<3−A5>で得
られた電子輸送層4には、必要に応じて、後処理を行う
ことができる。
【0163】この後処理としては、例えば、形状を整え
るための、研削、研磨等のような機械加工(後加工)
や、その他、洗浄、化学処理のような後処理等が挙げら
れる。
【0164】また、電子輸送層4は、例えば、次のよう
にして形成することもできる。以下、電子輸送層4の他
の形成方法について説明する。なお、以下の説明では、
前記の形成方法との相違点を中心に説明し、同様の事項
については、その説明を省略する。
【0165】[酸化チタン粉末(電子輸送層材料の粉
末)の調製] <3−B0> 前記工程<3−A0>と同様の工程を行
う。
【0166】[塗布液(電子輸送層材料)の調製] <3−B1> まず、前記工程で調製した酸化チタン粉
末を適当量の水(例えば、蒸留水、超純水、イオン交換
水、RO水等)に懸濁する。
【0167】<3−B2> 次に、かかる懸濁液に、例
えば硝酸等の安定化剤を添加し、メノウ製(またはアル
ミナ製)の乳鉢内で十分に混練する。
【0168】<3−B3> 次いで、かかる懸濁液に、
前記の水を加えてさらに混練する。このとき、前記安定
化剤と水との配合比は、体積比で好ましくは10:90
〜40:60程度、より好ましくは15:85〜30:
70程度とし、かかる懸濁液の粘度を、例えば0.2〜
30cP(常温)程度とする。
【0169】<3−B4> その後、かかる懸濁液に、
例えば、最終濃度が0.01〜5wt%程度となるよう
に界面活性剤を添加して混練する。これにより、塗布液
(電子輸送層材料)を調製する。
【0170】なお、界面活性剤としては、カチオン性、
アニオン性、両イオン性、非イオン性のいずれであって
もよいが、好ましくは非イオン性のものが用いられる。
【0171】また、安定化剤としては、硝酸に代わり、
酢酸やアセチルアセトンのような酸化チタンの表面修飾
試薬を用いることもできる。
【0172】また、塗布液(電子輸送層材料)中には、
必要に応じて、例えばポリエチレングリコールのような
バインダー、可塑剤、酸化防止剤等の各種添加物を添加
してもよい。
【0173】[電子輸送層(酸化チタン層)4の形成] <3−B5> 第1の電極3の上面に、塗布法(例え
ば、ディッピング等)により、塗布液を塗布・乾燥して
膜状体(塗膜)を形成する。また、塗布・乾燥の操作を
複数回行って積層するようにしてもよい。これにより、
電子輸送層4を得る。
【0174】次いで、この電子輸送層4に、必要に応じ
て、例えば、温度250〜500℃程度で0.5〜3時
間程度、熱処理(例えば、焼成等)を施してもよい。こ
れにより、単に接触するのに止まっていた酸化チタン粉
末同士は、その接触部位に拡散が生じ、酸化チタン粉末
同士がある程度固着(固定)するようになる。なお、こ
の状態で、電子輸送層4が多孔質となる。
【0175】<3−B6> 前記工程<3−A6>と同
様の工程を行う。以上のような工程を経て、電子輸送層
4が得られる。
【0176】<4> 次いで、電子輸送層4と、前述し
たような色素を含む液(例えば、色素を溶媒に溶解した
溶液、色素を溶媒に懸濁した懸濁液)とを、例えば、浸
漬、塗布等により接触させることにより、色素を電子輸
送層4の外面および孔41の内面に、例えば吸着、結合
等して色素層Dを形成する。
【0177】より具体的には、基板2、第1の電極3、
バリヤ層8および電子輸送層4の積層体を、色素を含む
液に浸漬することにより、容易に、色素層Dを電子輸送
層4の外面および孔41の内面に沿って形成することが
できる。
【0178】色素を溶解または懸濁(分散)する溶媒
(液体)としては、特に限定されないが、例えば、各種
水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコー
ル、アセトニトリル、酢酸エチル、エーテル、塩化メチ
レン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等が挙げ
られ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせ
て用いることができる。
【0179】この後、前記積層体を前記溶液(懸濁液)
中から取り出し、例えば、自然乾燥による方法や、空
気、窒素ガス等の気体を吹き付ける方法等により溶媒を
除去する。
【0180】さらに、必要に応じて、この積層体を、例
えば60〜100℃程度の温度で、0.5〜2時間程
度、クリーンオーブン等で乾燥してもよい。これによ
り、色素をより強固に電子輸送層4に吸着(結合)させ
ることができる。
【0181】<5> 次に、色素層D(色素層Dが形成
された電子輸送層4)の上面に、正孔輸送層5を形成す
る。
【0182】正孔輸送層5は、例えばCuI等のイオン
伝導特性を有する物質を含む正孔輸送層材料(電極材
料)を、色素層Dが形成された電子輸送層4の上面に、
例えば、ディッピング、滴下、ドクターブレード、スピ
ンコート、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコーター等
の各種塗布法により、塗布して形成するのが好ましい。
【0183】このような塗布法によれば、正孔輸送層5
を色素層Dが形成された電子輸送層4の孔41内により
確実に浸透するようにして形成することができる。
【0184】また、これらの塗布法は、色素層Dが電子
輸送層4上に形成された基板2を、少なくとも、大気圧
よりも減圧された容器内に入れられた状態で、上記色素
層Dの上面に上記各種塗布法によって正孔輸送層5が塗
布されるのが望ましい。
【0185】より具体的には、図7に示す減圧チャンバ
ーを用いる。この減圧チャンバーは、図7に示すよう
に、例えば、上部構造80と、下部構造79からなり、
位置決め口76と位置決めピン77によって、位置決め
され、シリコンゴム等からなるシーリング部材81で上
部構造と下部構造がナットとボルトなどによってかしめ
られることによって密着される構造になっている。
【0186】この減圧チャンバーは、吸引口78、減圧
バルブ(弁)74、減圧室75を有し、吸引口78は真
空ポンプにつながれている。減圧バルブ(弁)74を開
放した状態で、真空ポンプを稼働させると減圧室75内
が、減圧され、上述したように、1×10-1〜1×10
-6torr程度の真空状態になる。
【0187】この密閉されたチャンバー内に、色素層D
が電子輸送層4上に形成された基板2を入れ、このチャ
ンバーを減圧にする。その後、チャンバーの基板2上に
設けられたシリコンゴムに、正孔輸送材料を入れたシリ
ンジ73の針71を刺し、気密状態が破られない状態
で、電子輸送層4上に形成された色素層D上に、シリン
ジ内の正孔輸送材料をゆっくりと滴下して、塗布する。
【0188】このときの正孔輸送材料の前記基板への滴
下の量は、1cm2の面積に対し、1〜0.001mL
毎分である。
【0189】また、前記塗布法によるは正孔輸送材料の
前記色素層上への滴下の開始は、前記減圧チャンバー内
が減圧状態になった後、1〜5分経過後に開始される。
【0190】このように、色素層Dが電子輸送層4上に
形成された基板2上に、正孔輸送層を塗布する場合にお
いて、上記塗布処理を減圧下で行えば、電子輸送層中に
形成された多孔質層内の空隙中にある空気(気体)を脱
気することが出来る。
【0191】したがって、ナノポーラス状態に形成した
TiO2層中へのCuIの浸透をより助成することが出
来る。
【0192】このときの、減圧状態は、大気圧よりも低
い状態で行われるが、より具体的には、13.3Pa〜
1.33×10-4Pa(1×10-1〜1×10-6torr)で
あることが望ましく、さらに望ましくは、13.3Pa〜
1.33×10-1Pa(1×10- 1〜1×10-3torr)で
あることがより望ましい。
【0193】前記塗布法によって形成される正孔輸送層
5の平均厚さとしては、特に限定されないが、例えば、
1〜500μm程度であるのが好ましく、10〜300
μm程度であるのがより好ましく、10〜30μm程度
であるのがさらに好ましい。
【0194】その後、チャンバーの減圧室75内に置か
れた基板2上に設けられたシリコンゴム等からなる逆止
弁72に、正孔輸送材料を入れたシリンジ73の針71
を刺し、真空チャンバーの気密状態が破られない状態
で、電子輸送層4上に形成された色素層D上に、シリン
ジ71内の正孔輸送材料をゆっくりと滴下して、塗布す
る。
【0195】また、塗膜形成後に、かかる塗膜に熱処理
を施すようにしてもよいが、正孔輸送層材料の色素層D
が形成された電子輸送層4の上面への塗布は、色素層D
(色素層Dが形成された電子輸送層4)を加熱しつつ行
うのが好ましい。これにより、より迅速に正孔輸送層5
を形成すること、すなわち、太陽電池1Aの製造時間の
短縮に有利である。
【0196】この加熱温度としては、好ましくは温度5
0〜150℃程度とされ、この加熱処理は、5〜60分
なされる。なお、塗膜形成後、熱処理を行う場合には、
かかる熱処理の前に、塗膜の乾燥を行ってもよい。
【0197】また、以上のような操作は、複数回繰り返
して行うようにしてもよい。
【0198】より具体的には、80℃程度に加熱したホ
ットプレート上に、基板2、第1の電極3、バリヤ層8
および色素層Dが形成された電子輸送層4の積層体を設
置し、正孔輸送層材料を、色素層Dが形成された電子輸
送層4の上面に滴下して、乾燥する。この操作を複数回
行って、前述したような平均厚さの正孔輸送層5を形成
する。
【0199】また、上述したように、真空チャンバーを
用いて減圧状態で正孔輸送材料を塗布する場合には、8
0℃程度に加熱したホットプレート上に、前記減圧チャ
ンバーを設置して、塗布工程を行う。
【0200】正孔輸送層材料に用いる溶媒としては、特
に限定されないが、例えば、アセトニトリル、エタノー
ル、メタノール、イソプロピルアルコール等の有機溶
剤、あるいは、各種水等の1種または2種以上を組み合
わせて用いることができる。
【0201】なお、イオン伝導特性を有する物質を溶解
する溶媒としては、アセトニトリルが好適に使用され
る。
【0202】このとき、本発明では、正孔輸送層材料の
溶液は、溶媒10mLに対し、200〜1mgの正孔輸
送材料を溶解して調製された低濃度のCuI溶液を用い
る。
【0203】さらに好ましくは、正孔輸送層材料の溶液
は、溶媒10mLに対し、100〜10mgの正孔輸送
材料を溶解して調製された低濃度のCuI溶液を用い
る。
【0204】例えば、溶媒にアセトニトリルを用いた場
合には、アセトニトリル10mL(7.8g)に対し
て、重量比で2.5〜0.05%のCuIを溶解した低
濃度のCuI溶液を用いる。
【0205】さらに好ましくは、アセトニトリル10m
L(7.8g)に対して、重量比で1.5〜0.1%の
範囲のCuIを溶解した低濃度のCuI溶液を用いる。
【0206】より具体的には、アセトニトリル10mL
(7.8g)に対して、100mg(重量比で1.28
%)のCuIを溶解した低濃度のCuI溶液を用いる。
【0207】なお、この塗布方法は、この低濃度CuI
溶液を前記色素層上に2〜100回に分けて浸透させて
塗布され、低濃度CuI溶液の塗布間隔は、低濃度Cu
I溶液の溶媒が揮発後または、揮発する直前に連続して
塗布する。
【0208】このように、本発明においては、低濃度の
CuI溶液を用いているので、一回の塗布工程における
CuIの量を減らすことが出来るので、アセトニトリル
の揮発によりCuIがTiO2層の上面に堆積してしま
うという問題を解決できる。
【0209】また、本発明のように、低濃度のCuI溶
液を複数回(2〜100回程度)連続して塗布すること
により、溶媒であるアセトニトリルがTiO2層の上面
に堆積したCuIを再溶解し、ナノポーラス状態に形成
したTiO2層中へのCuIの浸透することを助成する
ことが出来る。
【0210】また、本発明のように低濃度CuI溶液を
用いれば、ある単位溶液中の溶媒量を増やすことが出来
るので、溶媒であるアセトニトリルが揮発する時間を長
くすることが出来る。
【0211】さらに、本発明においては、イオン伝導特
性を有する物質のアセトニトリル溶液中には、バインダ
ーとして、例えばシアノレジン等のシアノエチル化物を
添加するとよい。この場合、イオン伝導特性を有する物
質に対しシアノエチル化物を、質量比(重量比)で、5
〜0.5wt%で混合(配合)するのが好ましい。
【0212】また、正孔輸送層材料は、正孔の輸送効率
を向上させる機能を有する正孔輸送効率向上物質を含有
しているのが好ましい。正孔輸送層材料がこの正孔輸送
効率向上物質を含有していると、正孔輸送層5は、イオ
ン伝導特性の向上により、キャリア移動度がより大きく
なる。その結果、正孔輸送層5は、その電気伝導性が向
上する。
【0213】正孔輸送効率向上物質としては、特に限定
されないが、例えば、ハロゲン化アンモニウム等のハロ
ゲン化物が挙げられ、特に、テトラプロピルアンモニウ
ムヨーダイド(TPAI)等のハロゲン化アンモニウム
を用いるのが好ましい。正孔輸送効率向上物質として、
ハロゲン化アンモニウム、特に、テトラプロピルアンモ
ニウムヨーダイドを用いることにより、正孔輸送層5
は、イオン伝導特性がより向上することにより、キャリ
ア移動度がさらに大きくなる。その結果、正孔輸送層5
は、その電気伝導性がさらに向上する。
【0214】この正孔輸送効率向上物質の正孔輸送層材
料中の含有量は、特に限定されないが、1×10-4〜1
×10-1wt%(重量%)程度であるのが好ましく、1
×10-4〜1×10-2wt%程度であるのがより好まし
い。このような数値範囲内において、前記の効果がさら
に顕著となる。
【0215】また、正孔輸送層5を、イオン伝導特性を
有する物質を主材料として構成する場合には、正孔輸送
層材料は、イオン伝導特性を有する物質が結晶化する際
に、その結晶サイズが増大するのを抑制する結晶サイズ
粗大化抑制物質を含有しているのが好ましい。
【0216】この結晶サイズ粗大化抑制物質としては、
特に限定されないが、例えば、前述したシアノエチル化
物、正孔輸送効率向上物質の他、チオシアン酸塩(ロダ
ン化物)等が挙げられる。また、結晶サイズ粗大化抑制
物質は、これらのうちの1種または2種以上を組み合わ
せて用いることができる。
【0217】なお、チオシアン酸塩としては、例えば、
チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、チオシアン酸
カリウム(KSCN)、チオシアン酸銅(CuSC
N)、チオシアン酸アンモニウム(NH4SCN)等が
挙げられる。
【0218】また、結晶サイズ粗大化抑制物質として、
正孔輸送効率向上物質を用いる場合には、ハロゲン化ア
ンモニウムが好適である。正孔輸送効率向上物質の中で
も、ハロゲン化アンモニウムは、イオン伝導特性を有す
る物質の結晶サイズが増大するのを抑制する機能が、特
に優れている。
【0219】ここで、正孔輸送層材料が、この結晶サイ
ズ粗大化抑制物質を含有していないと、イオン伝導特性
を有する物質の種類、前述した加熱温度等によっては、
イオン伝導特性を有する物質が結晶化する際に、その結
晶サイズが大きくなり過ぎ、結晶の体積膨張が過度に進
む場合がある。特に、かかる結晶化がバリヤ層8の孔
(微少孔)内で生じると、バリヤ層8にクラックが発生
し、その結果、正孔輸送層5と第1の電極3との間で、
部分的に接触等による短絡が生じる場合がある。
【0220】また、イオン伝導特性を有する物質の結晶
サイズが大きくなると、イオン伝導特性を有する物質の
種類等によっては、色素層Dが形成された電子輸送層4
との接触性が低下してしまう場合がある。その結果、色
素層Dが形成された電子輸送層4から、イオン伝導特性
を有する物質、すなわち、正孔輸送層5が剥離してしま
う場合ある。
【0221】よって、このような太陽電池は、光電変換
効率等のデバイスとしての特性が低下してしまうことが
ある。
【0222】これに対し、正孔輸送層材料が、この結晶
サイズ粗大化抑制物質を含有していると、イオン伝導特
性を有する物質は、結晶サイズの増大が抑制され、結晶
サイズが極小または比較的小さいものとなる。
【0223】例えば、CuIのアセトニトリル溶液中
に、チオシアン酸塩を添加すると、飽和状態で溶解して
いるCuIのうちのCu原子のまわりにチオシアン酸イ
オン(SCN-)が吸着し、Cu−S(硫黄、Sulfor)
結合が生じる。これにより、飽和状態で溶解しているC
uI分子同士の結合が著しく阻害され、結果として、C
uIの結晶成長を防止することができるので、微細に成
長したCuI結晶を得ることができる。
【0224】このようなことから、太陽電池1Aは、前
述したようなイオン伝導特性を有する物質の結晶サイズ
の粗大化による不都合を好適に抑制することができる。
【0225】また、この結晶サイズ粗大化抑制物質の正
孔輸送層材料中の含有量としては、特に限定されない
が、1×106〜10wt%(重量%)程度であるのが
好ましく、1×10-4〜1×10-2wt%程度であるの
がより好ましい。このような数値範囲内において、前記
の効果がさらに顕著となる。
【0226】また、正孔輸送層5を、前述したようなp
型半導体材料で構成する場合には、このp型半導体材料
を、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール(IP
A)、エタノール等の各種有機溶媒(またはこれらを含
む混合溶媒)に溶解(または懸濁)して、正孔輸送層材
料を調製するようにする。この正孔輸送層材料を用い
て、前記と同様にして、正孔輸送層5を成膜(形成)す
る。
【0227】<6> 次に、第2の電極6を、正孔輸送
層5の上面に形成する。第2の電極6は、例えば白金等
で構成される第2の電極6の材料を、例えば、蒸着法、
スパッタリング法、印刷法等を用いることにより、形成
することができる。
【0228】<7>次に、第1の電極と第2の電極6で
狭持された光電変換素子を、熱または光により可塑処理
する。
【0229】この処理は、CuIからなる正孔輸送層と
可塑性バインダー(導電性樹脂)および色素を吸着した
TiO2層をより強固に結びつけ、さらには、なじませ
るための処理である。
【0230】すなわち、CuI等からなる正孔輸送層中
に含有された可塑性バインダー(導電性樹脂)を可塑処
理することにより、正孔輸送層をナノポーラス状態に形
成したTiO2層に十分に浸透、密着させる。
【0231】このとき用いる可塑性バインダー(導電性
樹脂)の粘度(20℃)は、150〜7000cPのも
のが用いられ、外観は、粒状または粘液状のものが用い
られ、さらに好ましくは、可塑性バインダー(導電性樹
脂)の粘度(20℃)は、240〜1200cPのもの
が特に好適である。
【0232】また、可塑性バインダー(導電性樹脂)の
軟化温度は、25〜200℃のものが用いられ、さらに
好ましくは、可塑性バインダー(導電性樹脂)の軟化温
度は、40〜120℃のものが特に好適である。
【0233】可塑性バインダー(導電性樹脂)の軟化温
度は、バインダーの可塑処理の熱で吸着させた色素が破
壊されない程度の温度である必要がある 次に、CuI等からなる正孔輸送層中に含有された可塑
性バインダー(導電性樹脂)の可塑処理方法について、
具体的に説明する。
【0234】第1の可塑処理方法は、熱可塑処理であ
る。この熱可塑処理は、25〜250℃の温度でなさ
れ、5〜300分程度の時間継続される。
【0235】第2の可塑処理は、光可塑処理である。こ
の光可塑処理は、ハロゲンまたはキセノン光源でなさ
れ、25〜250℃の温度で、5〜300分程度の時間
継続される。
【0236】以上のような工程を経て、太陽電池1Aが
製造される。
【0237】以上、本発明の光電変換素子を図示の各実
施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定
されるものではない。光電変換素子を構成する各部は、
同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換するこ
とができる。
【0238】本発明の光電変換素子は、前記第1および
第2実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わ
せたものであってもよい。
【0239】なお、本発明の光電変換素子は、太陽電池
のみならず、例えば、光センサー、光スイッチのよう
な、光を受光して電気エネルギーに変換する各種素子
(受光素子)に適用することができるものである。
【0240】また、本発明の光電変換素子では、光の入
射方向は、図示のものとは異なり、逆方向からであって
もよい。すなわち、光の入射方向は、任意である。
【0241】
【実施例】次に、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0242】(実施例1)次のようにして、図1に示す
太陽電池(光電変換素子)を製造した。
【0243】−0− まず、寸法:縦30mm×横35
mm×厚さ1.0mmのソーダガラス基板を用意した。
次に、このソーダガラス基板を85℃の洗浄液(硫酸と
過酸化水素水との混合液)に浸漬して洗浄を行い、その
表面を清浄化した。
【0244】−1− 次に、ソーダガラス基板の上面
に、蒸着法により、寸法:縦30mm×横35mm×厚
さ1μmのFTO電極(第1の電極)を形成した。
【0245】−2− 次に、形成したFTO電極の上面
の縦30mm×横30mmの領域に、バリヤ層を形成し
た。これは、次のようにして行った。
【0246】[バリヤ層材料の調製]まず、チタンテト
ライソプロポキシド(有機チタン化合物)を、2−n−
ブトキシエタノールに0.5mol/Lとなるように溶
解した。
【0247】次いで、この溶液に、ジエタノールアミン
(添加物)を添加した。なお、ジエタノールアミンとチ
タンテトライソプロポキシドとの配合比は、2:1(モ
ル比)となるようにした。
【0248】これにより、バリヤ層材料を得た。なお、
バリヤ層材料の粘度は、3cP(常温)であった。
【0249】[バリヤ層の形成]バリヤ層材料をスピン
コート(塗布法)により塗布し、塗膜を得た。なお、こ
のスピンコートは、回転数を1500rpmで行った。
【0250】次いで、ソーダガラス基板、FTO電極お
よび塗膜の積層体を、ホットプレート上に設置して、1
60℃で10分間、熱処理を施すことにより塗膜を乾燥
した。
【0251】さらに、かかる積層体を、480℃で30
分間、オーブン内で熱処理を施すことにより、塗膜中に
残存する有機成分を除去した。
【0252】かかる操作を10回繰り返して積層するよ
うにした。
【0253】これにより、空孔率が1%未満のバリヤ層
を得た。なお、このバリヤ層の平均厚さは、0.9μm
であった。
【0254】−3− 次に、バリヤ層の上面(全体)に
酸化チタン層(電子輸送層)を形成した。これは、次の
ようにして行った。
【0255】[酸化チタン粉末の調製]ルチル型の二酸
化チタン粉末と、アナターゼ型の二酸化チタン粉末との
混合物からなる酸化チタン粉末を用意した。なお、酸化
チタン粉末の平均粒径は、40nmであり、ルチル型の
二酸化チタン粉末とアナターゼ型の二酸化チタン粉末と
の配合比は、重量比で60:40とした。
【0256】[ゾル液(酸化チタン層材料)の調製]ま
ず、チタンテトライソプロポキシドを、2−プロパノー
ルに1mol/Lとなるように溶解した。
【0257】次いで、この溶液に、酢酸(添加物)と、
蒸留水とを混合した。なお、酢酸とチタンテトライソプ
ロポキシドとの配合比は、1:1(モル比)となるよう
に、また、蒸留水とチタンテトライソプロポキシドとの
配合比は、1:1(モル比)となるようにした。
【0258】次いで、かかる溶液に、調製した酸化チタ
ン粉末を混合した。さらに、この懸濁液を2−プロパノ
ールで2倍に希釈した。これにより、ゾル液(酸化チタ
ン層材料)を調製した。
【0259】なお、酸化チタン粉末のゾル液中の含有量
を、3wt%とした。
【0260】[酸化チタン層の形成]ソーダガラス基
板、FTO電極およびバリヤ層の積層体を、140℃に
加熱したホットプレート上に設置し、バリヤ層の上面
に、ゾル液(酸化チタン層材料)を滴下(塗布法)し、
乾燥した。この操作を7回繰り返し行って積層するよう
にした。
【0261】これにより、空孔率が34%の酸化チタン
層を得た。なお、この酸化チタン層の平均厚さは、7.
2μmであった。
【0262】なお、バリヤ層と酸化チタン層との全体に
おける厚さ方向の抵抗値は、1kΩ/cm2以上であっ
た。
【0263】−4− 次いで、ソーダガラス基板、FT
O電極、バリヤ層および酸化チタン層の積層体を、ルテ
ニウムトリスビピジル(有機染料)の飽和エタノール溶
液に浸漬した後、かかるエタノール溶液から取り出し、
自然乾燥により、エタノールを揮発した。さらに、80
℃、0.5時間、クリーンオーブンで乾燥した後、一晩
放置した。これにより、酸化チタン層の外面および孔の
内面に沿って色素層を形成した。
【0264】−5− 次いで、ソーダガラス基板、FT
O電極、バリヤ層および色素層Dが形成された酸化チタ
ン層の積層体を少なくとも、大気圧よりも減圧された図
7に示す減圧チャンバーに入れた状態で、上記色素層D
の上面に上記各種塗布法によって正孔輸送層5を塗布す
る。
【0265】より具体的には、図7に示す密閉されたチ
ャンバー内に、色素層Dが電子輸送層4上に形成された
基板2を入れ、このチャンバーを減圧にする。
【0266】次に減圧チャンバーの減圧バルブ(弁)7
4を開放した状態で、真空ポンプを稼働させ、減圧室7
5内を減圧し、1×10-2torr程度の真空状態にする。
【0267】その後、チャンバーの基板2上に設けられ
たシリコンゴムに、正孔輸送材料を入れたシリンジ73
の針71を刺し、気密状態が破られない状態で、電子輸
送層4上に形成された色素層D上に、シリンジ内の正孔
輸送材料をゆっくりと滴下して、塗布する。
【0268】このときの正孔輸送材料の前記基板への滴
下の量は、1cm2の面積に対し、0.01mL毎分で
ある。
【0269】なお、前記塗布法によるは正孔輸送材料の
前記色素層上への滴下の開始は、前記減圧チャンバー内
が減圧状態になった後、1〜5分経過後に開始した。
【0270】前記塗布法によって形成される正孔輸送層
5の平均厚さとしては、20μm程度であった。
【0271】また、減圧チャンバーは80℃に加熱した
ホットプレート上に設置し、CuIのアセトニトリル溶
液(正孔輸送層材料)を、色素層Dが形成された酸化チ
タン層の上面に滴下し、乾燥しながら行った。
【0272】この操作を2〜100回程度繰り返し行っ
て、CuI溶液がナノポーラス状態に形成したTiO2
層に十分に浸透するようにして、寸法:縦30mm×横
30mm×厚さ20μmのCuI層(正孔輸送層)を形
成した。
【0273】なお、アセトニトリル溶液中には、正孔輸
送効率向上物質として、テトラプロピルアンモニウムヨ
ーダイドを1×10-3wt%となるように添加した。
【0274】また、アセトニトリル溶液中には、CuI
のバインダーとして、シアノレジン(シアノエチル化
物)を添加した。なお、CuIとシアノレジンとが、質
量比(重量比)で、97:3となるように配合した。
【0275】さらに、アセトニトリル溶液中には、結晶
サイズ粗大化抑制物質として、チオシアン酸ナトリウム
(NaSCN)を1×10-3wt%となるように添加し
た。
【0276】−6− 次いで、CuI層の上面に、蒸着
法により、寸法:縦30mm×横30mm×厚さ0.1
mmの白金電極(第2の電極)を形成した。
【0277】−7− 次いで、第1の電極と第2の電極
6で狭持された光電変換素子を、キセノン光源で光アニ
ールした。このときの温度は110℃、時間は180分
間である。の温度でなされる。
【0278】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、第
1の電極と第2の電極6で狭持された光電変換素子にお
いて、前記正孔輸送層は、正孔輸送層材料を塗布法によ
り、前記色素層上に塗布して形成されたものであり、前
記塗布法は、減圧状態で行われるので、光電変換素子の
劣化が少なく、かつ光電変換効率が向上するという効果
を有する。
【0279】また、本発明の光電変換素子は、製造が容
易であり、安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光電変換素子を太陽電池に適用した
場合の第1実施形態を示す部分断面図である。
【図2】 第1実施形態の太陽電池の厚さ方向の中央部
付近の断面を示す拡大図である。
【図3】 色素層が形成された電子輸送層の断面を示す
部分拡大図である。
【図4】 電子輸送層および色素層の構成を示す模式図
である。
【図5】 太陽電池の原理を示す模式図である。
【図6】 図1に示す太陽電池回路の等価回路を示す図
である。
【図7】 本発明の実施例を示す図である。
【符号の説明】
1A、1B……太陽電池 2……基板 3……第1の電
極 4……電子輸送層 41……孔 5……正孔輸送層 51……凸部 6……
第2の電極 7……スペーサ 8……バリヤ層 11A
……積層体 12A……積層体 11B……積層体 1
2B……積層体 100……外部回路 200……ダイ
オード D……色素層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮本 勉 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 Fターム(参考) 5F051 AA14 5H032 AA06 AS06 AS16 BB02 BB05 BB10 EE04 EE16 EE18 HH00 HH04 HH06

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の電極と、 該第1の電極と対向して設置され、表面に触媒層を有す
    る第2の電極と、 前記第1の電極と前記第2の電極との間に位置し、その
    少なくとも一部が多孔質な電子輸送層と、 該電子輸送層と接触する色素層と、 前記電子輸送層と前記第2の電極の表面に形成された触
    媒層に接して位置してなる正孔輸送層とを有する光電変
    換素子の製造方法であって、 前記正孔輸送層は、正孔輸送層材料を塗布法により、前
    記色素層上に塗布して形成されたものであることを特徴
    とする光電変換素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記塗布法は、減圧状態で行われる請求
    項1に記載の光電変換素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記減圧状態は、13.3Pa〜1.33
    ×10-4Pa(1×10-1〜1×10-6torr)である請求
    項2に記載の光電変換素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記塗布法は、減圧チャンバー内で行わ
    れる請求項3に記載の光電変換素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記塗布法における、正孔輸送材料の前
    記色素層上への滴下の量は、1cm2の面積に対し、1
    〜0.001mL毎分である請求項3に記載の光電変換
    素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記塗布法によるは正孔輸送材料の前記
    色素層上への滴下の開始は、前記減圧チャンバー内が減
    圧状態になった後、0.5〜5分経過後に開始されるこ
    とを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 前記塗布法は、前記光電変換素子に加熱
    処理を施して行われる請求項3に記載の光電変換素子の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 前記加熱処理は、5〜60分なされるこ
    とを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記加熱処理は、50〜150℃の温度
    でなされることを特徴とする請求項3に記載の光電変換
    素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記減圧状態においては、前記電子輸
    送層の多孔質層内の空隙中の気体を脱気する処理である
    請求項3に記載の光電変換素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記塗布法における正孔輸送層材料の
    前記色素層Dが形成された電子輸送層4の上面に滴下
    は、前記滴下する工程と乾燥する工程が交互または同時
    に行われる請求項5記載の光電変換素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記塗布法によって形成される正孔輸
    送層の平均厚さは、1〜500μmである請求項3に記
    載の光電変換素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記減圧チャンバーは、減圧弁と減圧
    室を有する請求項4に記載の光電変換素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記減圧チャンバーの前記塗布法にお
    ける、正孔輸送材料の注入口には、逆止弁が設置されて
    なる請求項4に記載の光電変換素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記逆止弁は、シリコンゴムである請
    求項4に記載の光電変換素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 太陽電池である請求項1ないし15の
    いずれかに記載の光電変換素子の製造方法。
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