JP5228458B2 - 固体酸化物型燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Description
上記電極層を形成する方法としては、電極材料となるセラミックス粉とバインダーとを溶剤に加えることによりペーストを調製し、このペーストをスクリーン印刷法やドクターブレード法などを用いて基板上に塗布し、これらを1000〜1500℃の温度で焼成する方法がある。この方法では、セラミックス粉の粒度や焼結条件を制御することにより、多孔質な電極層を形成することができる。また、多孔質燃料極基板を形成する方法として、例えばセラミックス粉末に、アセチレンブラック等のカーボン材料を数%添加し、これらをエタノール中で混合・粉砕した後、1400℃で5時間焼結する方法がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、多孔質電極基板上に直接電解質層を設けた後に、電解質層側から加熱して電解質膜を緻密化させる固体酸化物型燃料電池、及び、その製造方法を提供する。
加熱は、多孔質電極基板と電解質層の積層体の、電解質層側を加熱して緻密化できればどのようなレーザー照射等の方法でもよいが、プラズマジェットの照射による加熱が好ましい。これは短時間で緻密化することが可能なだけでなく、ピンホールを生じないためである。
ここで、結晶粒界がないとは、電解質層が加熱されて焼結する課程において、自然発生的に観察されるような結晶粒界がないという意味である。
れた部分は結晶粒界がなくなるが、直接照射されなかった周辺部には結晶粒界が残ることがある。このような場合も含めて、本発明においては「結晶粒界が実質的にない」といい、SEM観察によれば、結晶粒界が残った部分は全表面の20%以下であった。また、ガスや液が膜を透過しなければ結晶粒界が実質的にないと判断することができる。
また、本発明における電解質層の作製方法は、セラミック膜形成方法であればどのような方法でも良い。セラミック膜形成方法として、ディップ法、印刷法、ゾルゲル法、蒸着法、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法等を挙げることができる。
また、「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、基板上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属塩、金属錯体である金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって異なる。
この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)により得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)により得られた結果から判断する。
1.多孔質電極基板
本発明において、多孔質電極基板は、固体酸化物型燃料電池の電極層を構成するものである。したがって、燃料極または空気極として利用できる材料であればいかなるものでも良い。燃料極として、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化コバルト等や、貴金属(白金、ルテニウム、パラジウム等)等を含むものが好ましい。また、また、空気極としては電子と酸素イオンが伝導する混合伝導性材料が好ましく、例えば、(Sm,Sr)CoO3、(La,Sr)MnO3、(La,Sr)CoO3、(La,Sr)(Fe,Co)O3、(La,Sr)(Fe,Co,Ni)O3などの酸化物が挙げられ、好ましくは、(Sm,Sr)CoO3である。
また、上記多孔質母材内の気孔は、平均径が0.1μm以上100μm以下であること
が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましい。上記気孔の平均径が0.1μm未満の場合、上記一方の多孔質電極層のガス透過性が低下する。一方、上記気孔の平均径が、100μmを超える場合、上記一方の多孔質電極層の強度が低下する。
本発明において、多孔質電極基板上に設ける電解質層は酸化物イオン伝導材料であることが好ましい。特に、蛍石型、ペロブスカイト型の結晶構造を有するものが好ましい。蛍石型の結晶構造を有する酸化物イオン伝導体としては、例えばサマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物等を挙げることができる。また、上記ペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物イオン伝導体としては、ストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物を挙げることができる。このような材料を付与することができれば、いかなる方法を用いても良い。
本発明に用いる金属酸化物膜形成用溶液は、金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を、加熱した基板に接触させること等により、金属酸化物膜を得る。
本発明に用いられる金属源は、金属塩または有機金属化合物である。
金属源を構成する金属元素としては特に限定されないが、例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、およびWからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することが好ましい。これらの化合物はセラミック膜を形成し易いためである。
また、上記金属元素の酸化物は常温常圧で固体として存在し、結晶性を有し、かつ結晶粒界を作りやすいからである。中でも遷移金属元素であるTi、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、Ce、Sm、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Cr、Nb、Mo、Pd、およびWが特に好ましい。遷移金属元素は、多様な機能を有するからである。
セチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナート)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルスズ、酸化ジブチルスズ(IV)、トリシクロヘキシルスズ(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、クロム(III)アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート、五塩化ニオブ、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、塩化アンチモン(III)、テルル酸ナトリウム、塩化バリウム二水和物、塩化タングステン(VI)等を挙げることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液における金属源の濃度は、0.001〜1mol/lの範囲であり、なかでも0.01〜0.5mol/lの範囲であることが好ましい。濃度が上記範囲内にあれば、比較的短時間で金属酸化物膜を形成することができる。
本発明に用いられる溶媒は、上記金属源等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール;トルエン;アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類;アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類;およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、セラミックス微粒子、補助イオン源、及び界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。
セラミックス微粒子を用いることにより、セラミックス微粒子を取り囲むように多孔質金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや多孔質金属酸化物膜の体積増加を図ることができる。なお、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択される。
補助イオン源は、還元剤の熱分解等により生じる電子と反応し水酸化物イオンを発生するものである。上記補助イオン源を用いることにより、多孔質金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、多孔質金属酸化物膜の発生しやすい環境とし、より低い基板加熱温度で多孔質金属酸化物膜を得ることができる。なお、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用する。
本発明における基板と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法としては、基板と金属酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されないが、金属酸化物膜形成用溶液と基板を接触させた際に、基板の温度を低下させない方法であることが好ましい。基板の温度が低下すると成膜反応が起こらず所望の金属酸化物膜を得ることができない。
また、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基板を通過させる方法においては、液滴の径は0.1〜300μmの範囲、なかでも1〜100μmの範囲であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基板温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。
本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、上述した接触方法等により得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記多孔質金属酸化物膜の洗浄は、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
本発明において、多孔質電極基板と電解質層の積層体を、電解質層側から加熱して緻密化することができれば、レーザー照射等のいかなる加熱方法を用いてもよいが、とくにプラズマジェットを照射することが好ましい。これにより、多孔質電極基板への熱負荷を最小限にしながらも、表面が溶解するような温度まで瞬間的に加熱することができる。プラズマジェットの発生方法も特に限定されないが、陰極と陽極間に電圧をかけ直流アークを発生させ、後方から送給されるガス(アルゴンなど)を電離させるプラズマ発生方式、いわゆるアーク放電形式が好ましい。これは、電子温度が低いにもかかわらず電子密度が高いためである。一般的に、村田ボーリング技研株式会社、日本コーティング工業株式会社、富士岐工産株式会社、エアロプラズマ株式会社等の装置を使用することができる。
本発明により得られる固体酸化物型燃料電池について説明する。
本発明の固体酸化物型燃料電池は、電解質層を挟持する一対の多孔質電極層を有する固体酸化物型燃料電池であって、電解質層が、結晶性を有しており、かつ結晶粒界が実質的にないことを特徴とする。結晶性はXRDによって、結晶粒界がないことはSEMによって確認することができる。本発明によれば、電解質層として結晶性を有する緻密で結晶粒界のないセラミック膜が存在することから、ガスバリア性が良好で、特にイオン伝導性に優れた固体酸化物型燃料電池を得ることができる。
ここで、結晶粒界がないとは、図1、図2のように、本来セラミック膜が加熱されて焼結する課程において、自然発生的に観察されるような結晶粒界がないという意味である。
れた部分は結晶粒界がなくなるが、直接照射されなかった周辺部には結晶粒界が残ることがある。このような場合も含めて、本発明においては「結晶粒界が実質的にない」セラミック膜という。SEM観察によれば、結晶粒界が残った部分は全表面の20%以下であった。また、ガスや液が膜を透過しなければ結晶粒界が実質的にないと判断することができる。
本実施例では多孔質電極基板として、燃料極を作製した。まず、NiO粉末(粒径範囲:0.01〜10μm、平均粒径:1μm)、SDC(Ce:Sm:O=0.8:0.2:1.9)粉末(粒径範囲:1〜10μm、平均粒径:0.1μm)及びアセチレンブラックを、質量比(NiO:SDC:アセチレンブラック)が45:50:5となるようにエタノールに加え、これらをエタノール中で粉砕しながら混合した。次に、これらを乾燥して充分にエタノールを揮発させた後、一軸プレスにて成形し、セラミックスカッターにより所定の寸法に切断(トリミング)した。そして、これを1400℃で5時間焼結して、多孔質電極基板となる多孔質燃料極基板(厚み:0.5mm)を作製した。
続いて、前記多孔質燃料極基板上に設けた電解質層に対して、アーク放電プラズマジェット(株式会社エアロプラズマ社製)を照射した。このとき、ノズルー基板距離は33cm、照射時間は4秒、陰極ガスはアルゴン(1.5l/min)と炭酸ガス(4.5l/min)、2つの陽極を流れるガスはアルゴン(0.8l/min)で、電力は65Aの125Vであった。このようにして図3に示すように、多孔質燃料極基板の一方の面に、緻密電解質を得た。
本比較例においては、プラズマジェットによって電解質層を加熱するのに代えて、焼成炉によって加熱した。加熱方法以外は、実施例1と同様に行った。
マッフル炉によって1450℃で10時間焼成(昇温速度100℃/min)したところ、多孔質燃料極基板上に作製した電解質層を緻密化することができなかった。
Claims (6)
- 電解質層を挟持する一対の多孔質電極層を有する固体酸化物型燃料電池の製造方法であって、多孔質電極基板の少なくとも一方の面に電解質層を設け、その後に電解質層側から加熱することとし、前記加熱を、多孔質電極基板への熱負荷を最小限にしながら電解質層表面が溶解する温度まで瞬間的に加熱するプラズマジェットの照射により行うことを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。
- 前記電解質層を、金属源としての金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した多孔質電極基板とを接触させることにより、前記基板上に設けることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより、前記金属酸化物膜形成用溶液と前記基板とを接触させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
- 前記電解質層を、金属源としての金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を多孔質電極基板に塗布し、その後に金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱することにより、前記基板上に設けることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記金属源が、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、およびWからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記一対の多孔質電極層は、燃料極層及び空気極層である請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
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