JP5228458B2 - 固体酸化物型燃料電池の製造方法 - Google Patents

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本発明は、電解質層と、電解質層の少なくとも一部を挟持する一対の多孔質電極層とを有する固体酸化物型燃料電池の製造方法に関する。
固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、現在、第三世代の発電用燃料電池として開発が進んでおり、円筒型、モノリス型及び平板積層型の3種類が提案されている。そして、そのいずれもが、酸化物イオン伝導体からなる固体電解質(電解質層)を空気極層(カソード)と燃料極層(アノード)との間に挟んだ積層体を有する。通常、この積層体からなる単セルがセパレータと交互に積層されて、燃料電池スタックが構成されている(例えば特許文献1参照)。
固体酸化物型燃料電池においては、空気極層側に酸素(空気)が、燃料極層側に燃料ガス(H2、CO、CH4等)が供給される。空気極層及び燃料極層は、ガスが電解質層との界面に到達することができるように、いずれも多孔質の層からなる。また、空気極層側に供給された酸素は、空気極層内の気孔を通って電解質層との界面近傍に到達し、この部分で空気極層から電子を受け取って酸化物イオン(O2-)にイオン化される。この酸化物イオンは、燃料極層の方向に向かって電解質層内を移動(拡散)する。そして、燃料極層との界面近傍に到達した酸化物イオンは、この部分で燃料ガスと反応して反応生成物(H2O、CO2等)となり、同時に電子を放出する。この電子は、外部電気回路を通って電気的な仕事をした後、空気極層に到達する。
空気極層側で起こる電極反応、即ち酸素分子から酸化物イオンへのイオン化反応(1/2O2+2e-→O2-)は、酸素分子、電子及び酸化物イオンの三者が関与することから、酸化物イオンを運ぶ電解質層と、電子を運ぶ空気極層と、酸素分子を供給する気相(空気)との三相の界面で起こる。燃料極層側でも同様に、電解質層と、燃料極層と、気相(燃料ガス)との三相の界面で電極反応が起こる。したがって、この三相の界面を増大させることが電極反応の円滑な進行に有利であると考えられている。
電解質層は、酸化物イオンの移動媒体であると同時に、燃料ガスと空気とを直接接触させないための隔壁としても機能するので、ガス不透過性の緻密な構造となっている。この電解質層は、酸化物イオン伝導性が高く、空気極層側の酸化性雰囲気から燃料極層側の還元性雰囲気までの条件下で化学的に安定で、かつ、熱衝撃に強い材料から構成する必要があり、かかる要件を満たす材料として、イットリアを添加した安定化ジルコニア(以下、「YSZ」と略称する)、スカンジア安定化ジルコニア(以下、「ScSZ」と略称する)、サマリアドープドセリア(以下、「SDC」と略称する)、ガドリニウムドープドセリア(以下、「GDC」と略称する)、ランタン・ガレード等からなる金属酸化物膜が一般的に使用されている。
一方、空気極層及び燃料極層は、いずれも電子伝導性の高い材料から構成する必要がある。空気極層の材料は、1000℃前後の酸化性雰囲気中で化学的に安定でなければならないため、金属は不適当であり、例えば電子伝導性を持つペロブスカイト型酸化物材料、具体的にはLaMnO3やLaCoO3、又は、これらの材料におけるLaの一部をSr、Ca等に置換した固溶体が一般に使用されている。また、燃料極層の材料としては、Ni等の金属や、Ni−YSZ等のサーメットが一般的に使用されている。尚、Ni等の金属は、燃料極層の形成時には、通常、NiO等の酸化物の状態であるが、燃料電池の運転時(発電時)には金属(Ni等)に還元される。
この種の固体酸化物型燃料電池としては、例えば一方の電極層(燃料極層又は空気極層)を兼ねる多孔質支持基板上に、薄膜状の電解質層と他方の電極層(燃料極層又は空気極層)とを順次形成したものがある(例えば特許文献2参照)。
上記電極層を形成する方法としては、電極材料となるセラミックス粉とバインダーとを溶剤に加えることによりペーストを調製し、このペーストをスクリーン印刷法やドクターブレード法などを用いて基板上に塗布し、これらを1000〜1500℃の温度で焼成する方法がある。この方法では、セラミックス粉の粒度や焼結条件を制御することにより、多孔質な電極層を形成することができる。また、多孔質燃料極基板を形成する方法として、例えばセラミックス粉末に、アセチレンブラック等のカーボン材料を数%添加し、これらをエタノール中で混合・粉砕した後、1400℃で5時間焼結する方法がある。
特開2004−79332号公報 特開2004−158313号公報
多孔質電極基板上に電解質を直接設けることができれば、電解質を薄膜化することができて、低温作動のSOFCセルが作製可能となる。しかし、従来の方法を用いた場合、多孔質な基板上に緻密な層を設けると孔が埋めきれず、また、多孔質部分の凹凸に追従できずにクラックが発生するので、多孔質電極基板上に電解質を直接設けることは困難であった。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、多孔質電極基板上に直接電解質層を設けた後に、電解質層側から加熱して電解質膜を緻密化させる固体酸化物型燃料電池、及び、その製造方法を提供する。
本発明の固体酸化物型燃料電池は、電解質層を挟持する一対の多孔質電極層を有する構造であって、多孔質電極基板上に電解質層を作製し、その後に電解質層側を加熱して緻密化すことを特徴とする。
本発明の固体酸化物型燃料電池及びその製造方法によれば、電解質層が薄く緻密にすることができることから、電解質における酸素イオン伝導の抵抗を大幅に減少することができる。
本発明によれば、多孔質電極基板の少なくとも一方の面に電解質層を作製し、その後に電解質層側を加熱して緻密化させることにより、電解質が薄膜化でき、酸素イオン伝導の抵抗を大幅に減少させた固体酸化物型燃料電池を作製することができる。
加熱は、多孔質電極基板と電解質層の積層体の、電解質層側を加熱して緻密化できればどのようなレーザー照射等の方法でもよいが、プラズマジェットの照射による加熱が好ましい。これは短時間で緻密化することが可能なだけでなく、ピンホールを生じないためである。
加熱を施された電解質層は、結晶性を有しており、かつ結晶粒界が実質的にないことを特徴とする。
ここで、結晶粒界がないとは、電解質層が加熱されて焼結する課程において、自然発生的に観察されるような結晶粒界がないという意味である。
本発明によれば、プラズマジェットをスキャンニングすることにより、プラズマ照射さ
れた部分は結晶粒界がなくなるが、直接照射されなかった周辺部には結晶粒界が残ることがある。このような場合も含めて、本発明においては「結晶粒界が実質的にない」といい、SEM観察によれば、結晶粒界が残った部分は全表面の20%以下であった。また、ガスや液が膜を透過しなければ結晶粒界が実質的にないと判断することができる。
なお、本発明の方法によれば特に薄膜を得ることができ、膜厚が10nm以上5μm以下のものも製造することができる。
また、本発明における電解質層の作製方法は、セラミック膜形成方法であればどのような方法でも良い。セラミック膜形成方法として、ディップ法、印刷法、ゾルゲル法、蒸着法、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法等を挙げることができる。
なかでも、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した基板とを接触させることにより、基板上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法が好ましい。この手法で作製した膜は密着性が良く、柔軟な膜となる。さらに、セラミック膜としては金属酸化物膜が最も好ましい。これは、金属酸化物は高温環境下で安定して機能するためである。
一方、セラミック膜形成プロセスとして、金属源として金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を塗布し、その後に金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱することにより、前記多孔質電極基板上に金属酸化物膜を得る金属酸化物膜の製造方法であってもよい。この手法で作製した金属酸化物膜は、多孔質内部まで均一に付与されることとなる。
また、「金属酸化物膜形成温度」とは、金属源に含まれる金属元素が酸素と結合し、基板上に金属酸化物膜を形成することが可能な温度をいい、金属塩、金属錯体である金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって異なる。
金属酸化物膜形成温度は、以下の方法により測定することができる。すなわち、所望の金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を用意し、基板の加熱温度を変化させて接触させることにより、金属酸化物膜を形成することができる最低の基板加熱温度を測定する。
この最低の基板加熱温度を本発明における金属酸化物膜形成温度とすることができる。
この際、金属酸化物膜が形成したか否かは、通常、X線回折装置(リガク製、RINT−1500)により得られた結果から判断し、結晶性のないアモルファス膜の場合は、光電子分光分析装置(V.G.Scientific社製、ESCALAB 200i−XL)により得られた結果から判断する。
以下、本発明の金属酸化物膜(電解質層)の製造方法について詳細に説明する。
1.多孔質電極基板
本発明において、多孔質電極基板は、固体酸化物型燃料電池の電極層を構成するものである。したがって、燃料極または空気極として利用できる材料であればいかなるものでも良い。燃料極として、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化コバルト等や、貴金属(白金、ルテニウム、パラジウム等)等を含むものが好ましい。また、また、空気極としては電子と酸素イオンが伝導する混合伝導性材料が好ましく、例えば、(Sm,Sr)CoO3、(La,Sr)MnO3、(La,Sr)CoO3、(La,Sr)(Fe,Co)O3、(La,Sr)(Fe,Co,Ni)O3などの酸化物が挙げられ、好ましくは、(Sm,Sr)CoO3である。
本発明に使用する多孔質電極基板は、気孔率が20〜50%であり、好ましくは30〜40%である。また、その厚みは5〜50μmが好ましい。
また、上記多孔質母材内の気孔は、平均径が0.1μm以上100μm以下であること
が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましい。上記気孔の平均径が0.1μm未満の場合、上記一方の多孔質電極層のガス透過性が低下する。一方、上記気孔の平均径が、100μmを超える場合、上記一方の多孔質電極層の強度が低下する。
2.電解質の付与方法・金属酸化物膜形成溶液
本発明において、多孔質電極基板上に設ける電解質層は酸化物イオン伝導材料であることが好ましい。特に、蛍石型、ペロブスカイト型の結晶構造を有するものが好ましい。蛍石型の結晶構造を有する酸化物イオン伝導体としては、例えばサマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物等を挙げることができる。また、上記ペロブスカイト型の結晶構造を有する酸化物イオン伝導体としては、ストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物を挙げることができる。このような材料を付与することができれば、いかなる方法を用いても良い。
さらに、本発明で好適に用いられる金属酸化物膜の付与方法について説明する。
本発明に用いる金属酸化物膜形成用溶液は、金属源を含有する金属酸化物膜形成用溶液を、加熱した基板に接触させること等により、金属酸化物膜を得る。
(1)金属源
本発明に用いられる金属源は、金属塩または有機金属化合物である。
金属源を構成する金属元素としては特に限定されないが、例えば、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、およびWからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することが好ましい。これらの化合物はセラミック膜を形成し易いためである。
また、上記金属元素の酸化物は常温常圧で固体として存在し、結晶性を有し、かつ結晶粒界を作りやすいからである。中でも遷移金属元素であるTi、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、Ce、Sm、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Cr、Nb、Mo、Pd、およびWが特に好ましい。遷移金属元素は、多様な機能を有するからである。
上記金属塩としては、金属酸化物膜を形成することができるものであれば特に限定されないが、例えば、上記金属元素を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。なかでも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩を使用することが好ましく、これらの化合物は汎用品として入手が容易である。
上記有機金属化合物としては、金属酸化物膜を形成することができるものであれば特に限定されないが、例えば、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、カルシウムジ(メトキシエトキシド)、グルコン酸カルシウム一水和物、クエン酸カルシウム四水和物、サリチル酸カルシウム二水和物、チタンラクテート、チタンアセチルアセトネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ブチルチタネートダイマー、チタニウムビス(エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンペロキソクエン酸アンモニウム四水和物、ジシクロペンタジエニル鉄(II)、乳酸鉄(II)三水和物、鉄(III)アセチルアセトナート、コバルト(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、銅(II)アセチルアセトナート、銅(II)ジピバロイルメタナート、エチルアセト酢酸銅(II)、亜鉛ア
セチルアセトナート、乳酸亜鉛三水和物、サリチル酸亜鉛三水和物、ステアリン酸亜鉛、ストロンチウムジピバロイルメタナート、イットリウムジピバロイルメタナート、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、トリス(アセチルアセトナート)インジウム(III)、2−エチルヘキサン酸インジウム(III)、テトラエチルスズ、酸化ジブチルスズ(IV)、トリシクロヘキシルスズ(IV)ヒドロキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、トリ(メトキシエトキシ)ランタン、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、タンタル(V)エトキシド、セリウム(III)アセチルアセトナートn水和物、クエン酸鉛(II)三水和物、シクロヘキサン酪酸鉛、カルシウムアセチルアセトナート二水和物、クロム(III)アセチルアセトナート、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、ストロンチウムジピバロイルメタナート、五塩化ニオブ、モリブデニルアセチルアセトナート、パラジウム(II)アセチルアセトナート、塩化アンチモン(III)、テルル酸ナトリウム、塩化バリウム二水和物、塩化タングステン(VI)等を挙げることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液における金属源の濃度は、0.001〜1mol/lの範囲であり、なかでも0.01〜0.5mol/lの範囲であることが好ましい。濃度が上記範囲内にあれば、比較的短時間で金属酸化物膜を形成することができる。
(2)溶媒
本発明に用いられる溶媒は、上記金属源等を溶解することができるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール;トルエン;アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類;アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類;およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
(3)添加剤
本発明に用いられる金属酸化物膜形成用溶液は、セラミックス微粒子、補助イオン源、及び界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。
セラミックス微粒子を用いることにより、セラミックス微粒子を取り囲むように多孔質金属酸化物膜が形成され、異種セラミックスの混合膜を得ることや多孔質金属酸化物膜の体積増加を図ることができる。なお、上記セラミックス微粒子の含有量は、使用する部材の特徴に合わせて適宜選択される。
上記セラミックス微粒子として、例えばITO、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、セリウム酸化物、カルシウム酸化物、マンガン酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸バリウム等を挙げることができる。
補助イオン源は、還元剤の熱分解等により生じる電子と反応し水酸化物イオンを発生するものである。上記補助イオン源を用いることにより、多孔質金属酸化物膜形成用溶液のpHを上昇させ、プールベ線図における金属酸化物領域あるいは金属水酸化物領域へ誘導し、多孔質金属酸化物膜の発生しやすい環境とし、より低い基板加熱温度で多孔質金属酸化物膜を得ることができる。なお、上記補助イオン源の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用する。
上記イオンのとして、例えば、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、臭素酸イオン、次臭素酸イオン、硝酸イオン、及び亜硝酸イオンからなる群から選択されるイオン種を挙げることができる。
また、上記界面活性剤は、上記多孔質金属酸化物膜形成用溶液と上記基板表面との界面に作用するものである。上記界面活性剤を用いることにより、多孔質金属酸化物膜形成用溶液と基板表面との接触面積を向上させることができ、均一な多孔質金属酸化物膜を得ることができる。特に、多孔質金属酸化物膜形成用溶液を噴霧により接触させる場合、上記界面活性剤の効果により、多孔質金属酸化物膜形成用溶液の液滴と基板表面とを充分に接触させることができるため、好適に使用される。なお、上記界面活性剤の使用量は、使用する金属源や還元剤に合わせて適宜選択して使用する。
上記界面活性剤として、例えば、サーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノールGA、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104PPM、サーフィノール104E、サーフィノール104PA等のサーフィノールシリーズ(以上、全て日信化学工業(株)社製)、NIKKOL AM301、NIKKOL AM313ON(以上、全て日光ケミカル社製)等を挙げることができる。
4.基板と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法
本発明における基板と金属酸化物膜形成用溶液との接触方法としては、基板と金属酸化物膜形成用溶液とを接触させる方法であれば特に限定されないが、金属酸化物膜形成用溶液と基板を接触させた際に、基板の温度を低下させない方法であることが好ましい。基板の温度が低下すると成膜反応が起こらず所望の金属酸化物膜を得ることができない。
このような基板の温度を低下させない方法としては、例えば、金属酸化物膜形成用溶液を液滴として基板に接触させる方法等が挙げられ、なかでも上記液滴の径が小さいことが好ましい。上記液滴の径が小さければ、金属酸化物膜形成用溶液の溶媒が瞬時に蒸発し、基板温度の低下をより抑制することができ、さらに液滴の径が小さいことで、均一な膜厚の金属酸化物膜を得ることができるからである。
このような径が小さい金属酸化物膜形成用溶液の液滴を基板に接触させる方法は、特に限定されないが、具体的には、金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基板に接触させる方法、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基板を通過させる方法等が挙げられる。
上記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより基板に接触させる方法は、例えばスプレー装置等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。上記スプレー装置等を用いて噴霧する場合、液滴の径は0.1〜1000μmの範囲、なかでも0.5〜300μmの範囲であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基板温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができるからである。
また、上記スプレー装置の噴射ガスとしては、金属酸化物膜の形成を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等を挙げることができ、なかでも不活性な気体である窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましい。また、上記噴射ガスの噴射量としては、0.1〜50l/minの範囲、なかでも1〜20l/minの範囲であることが好ましい。
また、上記スプレー装置は固定されていているもの、可動式のもの、回転によって上記溶液を噴射させるもの、圧力によって上記溶液のみを噴射させるもの等であっても良い。このようなスプレー装置としては、一般的に用いられるスプレー装置を用いることができ、例えばハンドスプレー(スプレーガンNo.8012、アズワン社製)、超音波ネプライザー(NE−U17、オムロン社製)等を用いることができる。
また、金属酸化物膜形成用溶液をミスト状にした空間の中に基板を通過させる方法においては、液滴の径は0.1〜300μmの範囲、なかでも1〜100μmの範囲であることが好ましい。液滴の径が上記範囲内にあれば、基板温度の低下を抑制することができ、均一な金属酸化物膜を得ることができる。
本発明においては、上記金属酸化物膜形成用溶液と加熱された基板とを接触させるが、その際、基板は上述した「金属酸化物膜形成温度」以上の温度まで加熱される。このような「金属酸化物膜形成温度」は、金属塩、有機金属化合物といった金属源の種類、溶媒等の金属酸化物膜形成用溶液の組成によって異なるものであるが、一般的には150〜600℃の範囲内とすることができ、なかでも、250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
基板の加熱方法は、ホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機等の加熱方法を挙げることができ、なかでも基板温度を上記温度に保持しながら上記多孔質金属酸化物膜形成用溶液に接触できる方法が好ましく、具体的にはホットプレート等を使用することが好ましい。
さらに、上記金属酸化物膜を、金属源としての金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を基体に塗布し、その後に金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱することにより、前記基体上に設けることもできる。
5.後処理
本発明の金属酸化物膜の製造方法においては、上述した接触方法等により得られた金属酸化物膜の洗浄を行っても良い。上記多孔質金属酸化物膜の洗浄は、金属酸化物膜の表面等に存在する不純物を取り除くために行われるものであって、例えば、金属酸化物膜形成用溶液に使用した溶媒を用いて洗浄する方法等を挙げることができる。
6.加熱方法
本発明において、多孔質電極基板と電解質層の積層体を、電解質層側から加熱して緻密化することができれば、レーザー照射等のいかなる加熱方法を用いてもよいが、とくにプラズマジェットを照射することが好ましい。これにより、多孔質電極基板への熱負荷を最小限にしながらも、表面が溶解するような温度まで瞬間的に加熱することができる。プラズマジェットの発生方法も特に限定されないが、陰極と陽極間に電圧をかけ直流アークを発生させ、後方から送給されるガス(アルゴンなど)を電離させるプラズマ発生方式、いわゆるアーク放電形式が好ましい。これは、電子温度が低いにもかかわらず電子密度が高いためである。一般的に、村田ボーリング技研株式会社、日本コーティング工業株式会社、富士岐工産株式会社、エアロプラズマ株式会社等の装置を使用することができる。
7.固体酸化物型燃料電池
本発明により得られる固体酸化物型燃料電池について説明する。
本発明の固体酸化物型燃料電池は、電解質層を挟持する一対の多孔質電極層を有する固体酸化物型燃料電池であって、電解質層が、結晶性を有しており、かつ結晶粒界が実質的にないことを特徴とする。結晶性はXRDによって、結晶粒界がないことはSEMによって確認することができる。本発明によれば、電解質層として結晶性を有する緻密で結晶粒界のないセラミック膜が存在することから、ガスバリア性が良好で、特にイオン伝導性に優れた固体酸化物型燃料電池を得ることができる。
ここで、結晶粒界がないとは、図1、図2のように、本来セラミック膜が加熱されて焼結する課程において、自然発生的に観察されるような結晶粒界がないという意味である。
本発明によれば、プラズマジェットをスキャンニングすることにより、プラズマ照射さ
れた部分は結晶粒界がなくなるが、直接照射されなかった周辺部には結晶粒界が残ることがある。このような場合も含めて、本発明においては「結晶粒界が実質的にない」セラミック膜という。SEM観察によれば、結晶粒界が残った部分は全表面の20%以下であった。また、ガスや液が膜を透過しなければ結晶粒界が実質的にないと判断することができる。
なお、本発明の方法によればセラミック膜の中でも、特に薄膜を得ることができる。本発明の方法により、セラミック膜の膜厚が、10nm以上5μm以下のものも製造することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では多孔質電極基板として、燃料極を作製した。まず、NiO粉末(粒径範囲:0.01〜10μm、平均粒径:1μm)、SDC(Ce:Sm:O=0.8:0.2:1.9)粉末(粒径範囲:1〜10μm、平均粒径:0.1μm)及びアセチレンブラックを、質量比(NiO:SDC:アセチレンブラック)が45:50:5となるようにエタノールに加え、これらをエタノール中で粉砕しながら混合した。次に、これらを乾燥して充分にエタノールを揮発させた後、一軸プレスにて成形し、セラミックスカッターにより所定の寸法に切断(トリミング)した。そして、これを1400℃で5時間焼結して、多孔質電極基板となる多孔質燃料極基板(厚み:0.5mm)を作製した。
次に、多孔質燃料極基板上にYSZ電解質層を付与した。金属源としてジルコニウムアセチルアセトナート(マツモト交商)、硝酸イットリウム(関東化学)、溶媒としてエタノール40重量%、トルエン40重量%、アセチルアセトン20重量%の混合溶媒を用意した。その後、混合溶媒に、ジルコニウムアセチルアセトナート0.1mol/l、硝酸イットリウム0.08mol/lとなるように溶解させ、金属酸化物膜形成用溶液を得た。
次に、上記多孔質燃料極基板を、ホットプレート(アズワン社製)で、一方の面が500℃になるよう加熱し、この面に対し、上記金属酸化物膜形成用溶液を超音波ネプライザ(オムロン社製)にて500mLスプレーし、多孔質燃料極基板にYSZ電解質層を得た。
続いて、前記多孔質燃料極基板上に設けた電解質層に対して、アーク放電プラズマジェット(株式会社エアロプラズマ社製)を照射した。このとき、ノズルー基板距離は33cm、照射時間は4秒、陰極ガスはアルゴン(1.5l/min)と炭酸ガス(4.5l/min)、2つの陽極を流れるガスはアルゴン(0.8l/min)で、電力は65Aの125Vであった。このようにして図3に示すように、多孔質燃料極基板の一方の面に、緻密電解質を得た。
そして、最後に「緻密電解質層」側から空気極を塗布した。エチルカルピトールに、Sm0.5Sr0.5CoO3(平均粒径3μm)を加え、更にバインダーとしてエチルセルロースを加えた後、これらをボールミルで混合して空気極層を形成するための空気極ペースト(粘度:5×105mPa・s)を調製した。次に、スクリーン印刷法により、上記「緻密電解質層」面に上記空気極ペーストを印刷した。その後、これらをオーブンにて130℃で15分間乾燥させ、1200℃で1時間焼成を行い、電解質を有する基板上に空気極層(厚み:50μm)を形成し、単セルを得た。
[比較例1]
本比較例においては、プラズマジェットによって電解質層を加熱するのに代えて、焼成炉によって加熱した。加熱方法以外は、実施例1と同様に行った。
マッフル炉によって1450℃で10時間焼成(昇温速度100℃/min)したところ、多孔質燃料極基板上に作製した電解質層を緻密化することができなかった。
結晶粒界があることを示す写真。 結晶粒界がないことを示す写真。 実施例1にて作製した多孔質電極基板。

Claims (6)

  1. 電解質層を挟持する一対の多孔質電極層を有する固体酸化物型燃料電池の製造方法であって、多孔質電極基板の少なくとも一方の面に電解質層を設け、その後に電解質層側から加熱することとし、前記加熱を、多孔質電極基板への熱負荷を最小限にしながら電解質層表面が溶解する温度まで瞬間的に加熱するプラズマジェットの照射により行うことを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。
  2. 前記電解質層を、金属源としての金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液と、金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱した多孔質電極基板とを接触させることにより、前記基板上に設けることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属酸化物膜形成用溶液を噴霧することにより、前記金属酸化物膜形成用溶液と前記基板とを接触させることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記電解質層を、金属源としての金属塩または有機金属化合物が溶解した金属酸化物膜形成用溶液を多孔質電極基板に塗布し、その後に金属酸化物膜形成温度以上の温度まで加熱することにより、前記基板上に設けることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記金属源が、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Ce、Sm、Pb、La、Hf、Sc、Gd、Ta、Ca、Cr、Ga、Sr、Nb、Mo、Pd、Sb、Te、Ba、およびWからなる群から選択される少なくとも一つの金属元素を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記一対の多孔質電極層は、燃料極層及び空気極層である請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
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