以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
図1に示す画像形成装置1は、回転軸10aを中心にして時計回りに回転するドラム状の感光体10を備え、この感光体10の周囲には、帯電器20、露光器30、現像器40、転写ロール50、クリーニング装置70、および除電ランプ80も備えられている。
図1に示す感光体10は、円筒上の導電性支持体の上に、下引層、電荷発生層と電荷輸送層を含む感光層、および保護層101を積層してなるものである。保護層101は、この感光体10の最表層になる層であって、この図1では、この保護層101が模式的に示されている。感光体10が回転軸10aを中心にして回転することで、最表層(感光体10の表面110)は、回転軸10aの周りを循環移動する。ここでは感光体10についてのこれ以上の説明は省略し、詳細については後述する。
帯電器20は、感光体10の表面110に接触した状態で回転する帯電ロール21と、その帯電ロール21に電力を供給する電源22を備えている。この電源22は、帯電ロール21に、直流電圧に交流電圧を重畳させた帯電バイアスを印加する。帯電ロール21は、感光体10に接触して回転する半導電性のものであり、感光体10との接触部近傍の微小空隙で放電を発生させることにより感光体10を帯電させる。なお、帯電ロール21に代えてブレード状の帯電部材、ベルト状の帯電部材、ブラシ状の帯電部材、磁気ブラシ状の帯電部材などが適用可能である。これらの帯電部材は、電気抵抗が103Ω〜108Ωに調整された材料から構成されたものであり、単層又は複数の層から構成されていても構わない。材質としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合し、帯電部材として有効な電気抵抗を発現させ用いることができる。さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の任意の手法により、積層して用いる事ができる。また、帯電ロール21やブレード状の帯電部材については感光体10に対し、接触状態に限らずある程度の空隙(100μm以下)を有した近接状態として配置しても構わない。なお、帯電器20には、コロトロン帯電方式を採用したものを用いても良い。
露光器30は、感光体10の表面110に向けて、画像情報に基づくレーザ光を照射するものである。この画像情報は、画像読み取り装置31にて読み取った情報を処理部32で処理することにより得られたものである。
現像器40は、外添剤粒子が添加されたトナー粒子の集まりを収容した現像剤収容体41と、現像剤収容体41中のトナー粒子を担持して感光体10の表面に対向した状態で回転する現像ロール42を有する。現像剤収容体41に収容されたトナー粒子は、負極性に帯電される。外添剤粒子としては、感光体表面110と後述するクリーニングブレードとの間の摩擦を低下させる潤滑剤粒子や、トナー粒子の帯電性を向上させる帯電制御粒子や、転写性を向上させる離型剤粒子等があげられる。現像ロール42には現像バイアスが印加され、負極性に帯電したトナー粒子は、この現像バイアスの作用により感光体10の表面110に静電的に移行する。感光体表面110に移行してきたトナー母粒子の表面には外添剤粒子が付着している。
図1に示す画像形成装置1において画像形成が行われる際には、まず、感光体表面110にトナー像を形成するトナー像形成サイクルが実行される。このトナー像形成サイクルでは、感光体10の表面110が、帯電器20によって一様に帯電された後、露光器30によって画像情報に基づくレーザー光が照射され、感光体10の表面110に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器40によって現像され、感光体10の表面110にはトナー像が形成され、トナー像形成サイクルが終了する。
図1では、記録用紙Pが図の右から左に向かって搬送されてくる。搬送されてきた記録用紙Pは、感光体10と転写ロール50の間に送り込まれる。図1に示す画像形成装置1では、感光体10と転写ロール50によって挟み込まれた領域が転写領域になる。転写ロール50には、トナー粒子の帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加されており、トナー像形成サイクルによって感光体表面110に形成されたトナー像は、この転写領域において、感光体10の表面110から記録用紙Pに転写される。本実施形態の画像形成装置1では、記録用紙Pの表面が本発明にいう所定の被転写面に相当する。なお、図1に示す画像形成装置1では、転写ロール50を用いた直接転写方式が採用されているが、転写ロール50に代えて転写コロトロンを用いてもよい。また、記録用紙Pを静電的に吸着して搬送し感光体上のトナー像を転写する転写ベルト方式を採用してもよい。さらに、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体を用いた中間転写方式を採用してもよい。中間転写体を用いた場合、記録用紙Pへ直接転写することが無い為、感光体表面のクリーニング装置に回収される廃トナーの中に紙粉が混入することがなくなり、紙粉混入によるカブリやトナー飛散などの画質欠陥が回避される。
また、図1に示す画像形成装置1は、転写領域よりも用紙搬送方向下流側に定着器90を備えている。この定着器90は、加熱機構を有する定着ロール91と、定着ロール91に対向するように設けられた圧力ロール92とを備えている。互いに対向する定着ロール91と圧力ロール92の間には、転写領域を通過した記録用紙Pが搬送されてくる。記録用紙P上のトナー像を構成するトナーは、定着ロール91の加熱機構により溶融され圧力ロール92からの圧力を受けて記録用紙Pに定着し、定着トナー像からなる画像が形成される。
一方、感光体10の、転写領域を通過した表面110には、転写領域において記録用紙Pへ移行することができなかった残留トナー粒子や、帯電において生じた放電生成物など、複数種類の異物が残留している。図1に示すクリーニング装置70は、これらの残留物を除去するための装置であって、転写領域よりも感光体回転方向(感光体表面の循環移動方向)下流側であって帯電ロール21よりも感光体回転方向上流側の位置に配備されたものである。このクリーニング装置70は、板状のゴム弾性体であるクリーニングブレード71と、トナー回収手段72とを有する。
図1に示すクリーニングブレード71は、感光体10の表面110に先端エッジ部711を接触させた状態で、感光体10の回転軸10aの延在方向に延びるものである。このクリーニングブレード71は、感光体10の表面110に残留した残留トナー粒子を感光体10が回転することで機械的に掻き取る。この際、残留トナー粒子の表面に付着していた外添剤粒子のうちの潤滑剤粒子は、先端エッジ部711との摺擦により残留トナー粒子から離脱し、先端エッジ部711と感光体表面110との間をすり抜け、潤滑効果を発揮する。
図1に示すクリーニングブレード71の材質としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等を用いることができる。その中で耐摩耗性に優れていることからポリウレタン弾性体を用いる事が好ましい。ポリウレタン弾性体としては、一般にイソシアネートとポリオール及び各種水素含有化合物との付加反応を経て合成されるポリウレタンが用いられており、ポリオール成分として、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ポリオールや、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクタム系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等のポリエステル系ポリオールを用い、ポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、等の芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートを用いてウレタンプレポリマーを調製し、これに硬化剤を加えて、所定の型内に注入し、架橋硬化させた後、常温で熟成することによって製造されている。上記硬化剤としては、通常、1,4−ブタンジオール等の二価アルコールとトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三価以上の多価アルコールとが併用される。
図1に示すトナー回収手段72は、スクリューオーガ721と搬送路722とを有する。スクリューオーガ721は、クリーニング装置70の底部に設けられたものである。クリーニングブレード71によって感光体表面110から掻き落とされたトナー粒子(廃トナー)は、このスクリューオーガ721によって搬送路722まで送られる。搬送路722は、クリーニング装置70の底部と、現像器40の現像剤収容体41とを結ぶパイプ状のものであって、内部に回転するスクリュー状の搬送部材7221を有する。スクリューオーガ721によって搬送路722まで送られた廃トナーは、搬送部材7221が回転することにより搬送路722を通って現像器40の現像剤収容体41に戻される。図1に示す画像形成装置1では、このようにトナーのリサイクルが行われており、資源の有効活用が図られている。ところが、現像剤収容体41に戻された廃トナーのトナー母粒子の表面からは、潤滑剤粒子等の外添剤粒子が、すでに離脱しているか、あるいはトナー母粒子表面に埋没してしまっている。このため、廃トナーは、未使用トナーと比べて、少なくとも外添剤粒子が減った状態となっていることから、廃トナーでは、外添剤粒子が寄与する効果、例えば、潤滑剤粒子であればクリーニングブレード71の潤滑効果を得ることができず、クリーニングブレード71の歪は増大し、これによりブレードのびびりや捲れ、さらにはブレードの先端エッジ部711の欠けや磨耗等のブレードダメージなどの不具合が誘発され易くなる。そこで、図1に示す画像形成装置1では、クリーニングブレード71を工夫することにより、上記不具合が発生することを抑えている。以下、図2を用いて説明する。
図2は、図1に示すクリーニングブレードの先端エッジ部が感光体表面に圧接している様子を模式的に示す図である。
図2に示すクリーニングブレード71の先端エッジ部711は、23℃における100%モジュラスが4MPa以上18MPa以下の範囲に属し、かつ反撥弾性率が8%以上40%以下の範囲に属するゴム材料(以下、本件ゴム材料と称する)からなるものである。ここにいう100%モジュラスの値は、JIS規格K6254に準拠した値を言い、値が高ければ硬く弾性は低くなる。また、ここにいう反発弾性率とは、JIS規格K6301に準拠した常温23℃での値を言う。
100%モジュラスの値が4MPa未満であるゴム材料であると、先端エッジ部711が歪み易くなってしまう。先端エッジ部711が歪むと、トナー粒子がすり抜けやすくなってしまうばかりか、クリーニングブレード71のびびりが生じたり、先端エッジ部711が捲れてしまったりもする。また、特に球形トナーなどのクリーニングでは、先端エッジ部711にかかる圧接力の、感光体10の回転軸10a(図1参照)の延在方向(紙面に対して垂直方向)における分布ピーク値が不十分になる。一方、100%モジュラスの値が18MPaを越えるゴム材料であると、先端エッジ部711の硬度により感光体10の表面110を傷つけてしまう恐れがある。なお、クリーニングブレード71の先端エッジ部711が、23℃における100%モジュラスが5MPa以上10MPa以下の範囲に属するゴム材料からなるものであることがより好ましい。
また、ブレード鳴きやブレード捲れの観点から、クリーニングブレード71の、感光体10の表面110に圧接した先端エッジ部711の反発弾性率は、少なくとも40%以下に抑える必要がある。しかし、反発弾性率が小さ過ぎると、先端エッジ部711における回転する感光体10に対する追従性が低下してしまい、このためクリーニング性が低下してしまう懸念が生じる。そこで、反発弾性率を8%以上40%以下(望ましくは10%以上30%以下)にすることで、長期にわたり感光体表面110の良好なクリーニング性がより確実に維持される。
図2に示すクリーニングブレード71は、先端エッジ部711を構成する断面形状が三角形である部分71aのみを上記の本件ゴム材料で形成したものであるが、ここで、この図2に示すクリーニングブレード71の変形例について説明する。以下の説明では、図1に示す画像形成装置の構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
図3は、図2に示すクリーニングブレードの変形例を模式的に示す図である。
図3に示すクリーニングブレード71は、特性の異なる材料からなる複数の層7101,7102が厚さ方向(矢印t参照)に積層してなるものである。すなわち、図3に示すクリーニングブレード71は、感光体10側に位置し、先端エッジ部711を構成する高モジュラス層7101と、感光体10とは反対側に位置する低モジュラス層7102とを有する。高モジュラス層7101は、低モジュラス層7102に比べて、23℃における100%モジュラスの値が高い層であり、上記の本件ゴム材料からなる層である。なお、図3に示すクリーニングブレード71は、高モジュラス層7101と低モジュラス層7102との2層構造であるが、3層以上の構造であってもよく、3層以上の構造にする場合には、先端エッジ部711を構成する最も感光体10側の層を本件ゴム材料からなり、最も高い100%モジュラスの値を有する層にすればよい。
図2に示す、先端エッジ部711のみを本件ゴム材料で形成したクリーニングブレード71では、先端エッジ部711の歪を抑制することは可能ではあるが、その際ブレードの自由長部分の運動性は維持したままの状態となる。自由長部分の運動性は、クリーニングブレードの、先端エッジ部711以外の部分によって維持されている為、先端エッジ部711の振動が大きくなってブレード鳴きやブレード捲れにつながる恐れがある。
なお、クリーニングブレード全体に本件ゴム材料を用いてもよいが、このようにクリーニングブレード全体に用いると、感光体10に対するクリーニングブレード71の圧接力が大きくなりすぎてしまい、設定可能な喰い込み量が小さくなりすぎて、使用することができないという問題が生じる。また、先端エッジ部711が感光体10の表面110に常時圧接することにより、へたりも発生しやすくなり、特に低温下においてクリーニング不良が発生し易くなるといった問題も生じる。
以上のことから、先端エッジ部711を構成する最も感光体10側の高モジュラス層7101を本件ゴム材料からなる層にすることで、先端エッジ部711の振動をより確実に抑えるとともにへたりの発生も抑えられる。
図3に示す高モジュラス層7101の厚さは、クリーニングブレード全体の厚さの25%以下である。高モジュラス層7101の厚さが25%以上になると、先端エッジ部711の、感光体表面110への圧接力が高くなりすぎてしまい、先端エッジ部711自身の硬度により感光体表面110を傷つけてしまう恐れがある。
また、感光体10とは反対側に位置する低モジュラス層7102には、反発弾性率が40%以上の材料を用いることで、クリーニング性をより安定に保つことが可能となる。40%未満になると、全て異なる材料を持つ複数層としての効果が希薄となり、クリーニングブレードの追従性が悪化し、クリーニング性が低下してしまう。
さらに、図1に示す画像形成装置1は、制御部60も備えている。この制御部60は、トナー像非形成サイクル時などの所望のタイミングにおいて、感光体表面110の、トナー像を形成する領域を避けた領域に、感光体10の回転軸10aの延在方向に延びるトナーバンドを形成し、記録用紙Pに未転写のままクリーニングブレード71の先端エッジ部711に到達させるものである。図1に示す画像形成装置1では、廃トナーを有効活用することができるため、トナーの消費量に対する規制がなくなる。そこで、制御部60が未転写トナーをクリーニングブレード71へ積極的に供給することが出来るようになる。
また、制御部60は、トナーバンドに限らず、感光体表面110に形成したトナー像を、記録用紙Pに未転写のままクリーニングブレード71の先端エッジ部711に到達させるものであってもよい。例えば、制御部60は、トナー像形成サイクル実行時には、現像ロール42に直流電圧のみの現像バイアスを印加させるとともに転写ロール50にトナー粒子の帯電極性とは逆極性の転写バイアスを印加させ、トナー像形成サイクル実行時を避けたタイミングでは、現像ロール42に直流電圧と交流電圧が重畳された現像バイアスを印加させるとともに、転写ロール50にトナー粒子の帯電極性と同極性のバイアスを印加させる。こうすることで、感光体表面110に形成されたトナー像を記録用紙Pに転写させることなく、そのままクリーニングブレード71へ供給することが出来るようになる。
以上説明したような制御部60を設けることで、通常のトナー像形成時よりもさらに多くの未転写トナーをクリーニングブレード71へ供給することが出来、良好なクリーニング性をより安定して維持することができる。
続いて、図1に示す感光体に使用することができる感光体について詳述する。
上述の如く、図1に示す感光体10は、円筒上の導電性支持体の上に、下引層、電荷発生層と電荷輸送層を含む感光層、および保護層101を積層してなるものである。
導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルト、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、あるいはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等が挙げられる。感光体がレーザープリンターに使用される場合には、レーザーの発振波長としては350nmから850nmのものが好ましく、短波長のものほど解像度に優れるため好ましい。さらに、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、支持体表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm〜0.5μmに粗面化することが好ましい。粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、あるいは、回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化などが好ましい。中心線平均粗さRaが0.04μmより小さいと、鏡面に近くなるので干渉防止効果が得られなくなり、中心線平均粗さRaが0.5μmより大きいと、画質が粗くなって不適である。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基材の表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
陽極酸化処理はアルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
陽極酸化膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下の様に実施される。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が、10〜11質量%の範囲、クロム酸が3〜5質量%の範囲、フッ酸が0.5〜2質量%の範囲であって、これらの酸全体の濃度は、13.5〜18質量%の範囲が好ましい。処理温度は、42〜48℃であるが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
ベーマイト処理は、90〜100℃の純水中に5〜60分間浸漬するか、90〜120℃の加熱水蒸気に5〜60分間接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚については0.1〜5μmが好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などの皮膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
次に、下引層について説明する。下引層の材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物、とくに有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。さらに、従来より下引層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。また、下引層中には電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料が上げられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため95質量%以下、好ましくは90質量%以下で使用される。混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等をもちいる常法が適用される。混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有期金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。下引層の厚みは一般的には、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜25μmが適当である。また、下引層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布したものを乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った基材は、基材の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、下引層を形成することが好ましい。
次に電荷発生層について説明する。電荷発生層は、電荷発生材料と結着樹脂を含有して形成される。
電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、ジブロモアントアントロンなどの縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料や、三方晶セレン、酸化亜鉛などの無機顔料など既知のもの全て使用することができるが、特に380nm〜500nmの露光波長を用いる場合には無機顔料が好ましく、700nm〜800nmの露光波長を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましい。その中でも、特開平5−263007号公報、及び特開平5−279591号公報に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5−98181号公報に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472号公報、及び特開平5−140473号に公報開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873号公報、及び特開平5−43813号公報に開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は(質量比)は10:1〜1:10の範囲が好ましい。またこれらを分散させる方法としてはボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって結晶型が変化しない条件が必要とされる。さらにこの分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。またこれらの分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷発生層の厚みは一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2.0μmが適当である。また、電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
次いで、電荷輸送層について説明する。電荷輸送層としては、公知の技術によって形成されたものを使用できる。それらの電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は単独または2種以上混合して用いることができ、これらに限定されるものではないが、モビリティーの観点から、以下の構造のものが好ましい。
(式中、R14は、水素原子またはメチル基を示す。また、nは1又は2を意味する。Ar6及びAr7は置換又は未置換のアリール基、あるいは−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わし、置換基としてはハロゲン原子、炭素数が1〜5の範囲のアルキル基、炭素数が1〜5の範囲のアルコキシ基、又は炭素数が1〜3の範囲のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。R18、R19、R20は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。)
(式中R15、R15'は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、を表わす。R16、R16'、R17、R17'は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基、あるいは、−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わし、R18、R19、R20は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。mおよびnは0〜2の整数である。)
(式中R21は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換又は未置換のアリール基、または、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表す。Arは、置換又は未置換のアリール基を表す。R22、R23は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基を表す。)
さらに電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は10:1〜1:5が好ましい。
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
電荷輸送層の厚みは一般的には、5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。さらに電荷輸送層を設けるときに用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
また、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等をあげることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl, CN, NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
また、フッ素樹脂粒子を含有した保護層101を用いたり、あるいは保護層101を省略する場合であっても電荷輸送層にフッ素樹脂粒子を含有させたものを用いることで、クリーニングブレード71と感光体表面110の摺擦摩擦力が低減し、感光体摩耗を抑制し、球状のトナーを用いた場合に於いても良好なクリーニング性を維持することが可能である。
電荷輸送層にフッ素樹脂粒子を含有させる場合には、電荷輸送層中の、フッ素系樹脂の含量は、電荷輸送層全量に対し、0.1〜40質量%が適当であり、1〜30質量%がより好ましく、特には3〜10%が好ましい。含量が0.1質量%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による摩擦低減効果が接触型帯電器との組合せに於いては十分でなく、一方、40質量%を越えると光通過性及び電荷輸送性顕著に低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくる。黒用の感光体における電荷輸送層中の、フッ素系樹脂の含量は、カラー用の感光体のそれよりも少なく、且つ0〜3質量%が好適であり、0〜2質量%がより好適である。3質量%よりも多い場合は、高速画像形成時電荷移動速度が低下し易い。
フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。フッ素系樹脂の一次粒径は0.05〜1μmが良く、更に好ましくは0.1〜0.5μmが好ましい。一次粒径が0.05μmを下回ると分散時の凝集が進みやすくなる。又、1μmを上回ると画質欠陥が発生しやすくなる。
保護層としては、バインダー樹脂中にフッ素系樹脂粒子や導電性微粒子を分散させたもの、通常の電荷輸送層材料にフッ素樹脂、アクリル樹脂などの潤滑性微粒子を分散させたもの等を例示することができるが、感光体の耐久性を高めるため、保護層は架橋構造を有する樹脂を含有したものであることが好ましく、電気特性、画質維持性などの観点から電荷輸送性材料をさらに含む(電荷輸送能を有する構造単位を含む)ものであることがより好ましい。
架橋構造を形成するものとしては種々の材料を用いることが出来るが、特性上フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく、特にフェノール樹脂またはシロキサン系樹脂からなるものが好ましい。保護層には、架橋構造を有する樹脂の他に、フッ素樹脂やアクリル樹脂などからなる潤滑性微粒子が含まれており、さらに必要に応じて、架橋構造を有さないバインダー樹脂や、導電性微粒子等が含まれていてもよく、保護層の形成に際しては、必要に応じてシリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができる。また、保護層の形成には架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体を少なくとも含む保護層形成用溶液が用いられる。
次に、現像剤収容体41について詳述する。上述の如く、現像剤収容体41は、潤滑剤粒子が添加されたトナー粒子の集まりを収容したものである。
まず、潤滑剤粒子について詳述する。潤滑剤粒子としては単分散球形シリカが好適に使用される。単分散球形シリカを簡便にクリーニングブレード71の先端エッジ部711へ供給する為には、トナー(現像剤)に添加する事が最も有効であり、また安定してブレードの先端エッジ部711へ供給するにはトナー母粒子の表面に付着した状態で先端エッジ部711に供給することが有効である。トナー母粒子の表面に付着した単分散球形シリカはクリーニングブレード71との摺擦によるストレスでトナー母粒子表面から離脱し、ブレードの先端エッジ部711に有効に供給される。
この単分散球形シリカには、比重1.3〜1.9、一次平均粒径80〜300nm(好ましくは100〜200nm)の単分散球形シリカを使用する。粒径80nm以上の単分散球形シリカは、クリーニングブレード71の先端エッジ部711に供給されることにより、先端エッジ部711と感光体表面110との間に介在し易いと共に、転がることで潤滑剤となり先端エッジ部711の変形量増加及びスティック&スリップを抑制することができる。単分散球形シリカの粒径が80nmよりも小さい場合は先端エッジ部711に留まり難く安定的な潤滑効果が発揮できない。一方、粒径300nm以下の単分散球形シリカは、単分散かつ球形であることよりトナー母粒子の表面に均一分散が可能となる。すなわち、潤滑剤粒子の、現像器40内のメカニカルストレスによるトナー母粒子表面からの離脱を有効に抑制することが可能である。単分散球形シリカの粒径が300nmよりも大きくなると、単分散球形シリカが、現像器40内での攪拌ストレスでトナー母粒子表面から容易に離脱し、クリーニングブレード71への供給が有効にできなくなり長期に渡り安定してクリーニングブレード挙動安定効果を発揮させることができない。また、比重が、1.9より大きくなると現像器40内での攪拌ストレスで該粒子の剥がれが加速され有効にクリーニングブレード71への供給ができなくなり、1.3より小さくなると凝集分散が起こり、該粒子の穂立ちが不均一になり凸部分に選択的にストレスが加わることから該粒子の剥がれが加速され、やはり有効にクリーニングブレード61への供給ができなくなる。
また、単分散球形シリカは、屈折率が1.5前後であり、粒径を大きくしても光散乱による透明度の低下、特にOHPシート上への画像作成時のPE値等に影響を及ぼさないため好適である。
ここで、単分散の定義としては凝集体を含め一次平均粒径に対する標準偏差で議論することができ、標準偏差としてD50が0.22以下であることが望ましい。一次粒子径およびその標準偏差測定は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(HORIBA LA−910)を用いて行うことができる。
球形化度は、Wadellの真の球形化度を採用し、以下の式に準じて計算した。
球形化度Ψ=S’/S
上記式中、S’は、実際の粒子と同じ体積を有する球の表面積を表し、平均粒径の値から計算により求めた。また、Sは、実際の粒子の表面積であり、島津粉体比表面積測定装置SS−100型を用いて測定されるBET比表面積の値を代用させた。
この球形化度は0.6以上、好ましくは0.8以上であることが望ましい。
また、比重測定はルシャテリエ比重瓶を用いJIS K0061の5−2−1に準拠して比重を測定した。具体的な操作は、次の通り行う。
1)ルシャテリエ比重瓶に約250mlのエチルアルコールを入れ、メニスカスが目盛りの位置にくるように調整する。
2)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る(読み取り精度は0.025mlとする)。
3)試料を約100g量り取り、その質量をWとする。量り取った試料を比重瓶に入れ泡を除く。
4)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る(読み取り精度は0.025mlとする)。
5)次式により比重を算出する。
D=W/(L2−L1) ・・・式A
S=D/0.9982 ・・・式B
上記式AおよびB中、Dは試料の密度(20℃)(g/cm3)、Sは試料の比重(20℃)、Wは試料の見かけの質量(g)、L1は試料を比重瓶に入れる前のメニスカスの読み(20℃)(ml)、L2は試料を比重瓶に入れた後のメニスカスの読み(20℃)(ml)、0.9982は20℃における水の密度(g/cm3)である。
単分散球形シリカは湿式法であるゾルゲル法により得ることができる。比重は湿式法、且つ焼成することなしに作成するため、蒸気相酸化法に比べ低く制御することができる。また、疎水化処理工程での疎水化処理剤種、あるいは処理量を制御することにより更に調整することが可能である。粒径はゾルゲル法の加水分解、縮重合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の質量比、反応温度、攪拌速度、供給速度により自由に制御できる。単分散、球形形状も本手法にて作成することにより達成可能となる。
具体的にはテトラメトキシシランを水、アルコールの存在下、アンモニア水を触媒として温度をかけながら滴下、攪拌を行う。次に反応により作成されたシリカゾル懸濁液を遠心分離を行い湿潤シリカゲルとアルコール、アンモニア水に分離しを行う。湿潤シリカゲルに溶剤を加え再度シリカゾルの状態にし、疎水化処理剤を加え、シリカ表面の疎水化を行う。
疎水化剤としては一般的なシラン化合物を用いることができる。次にこの疎水化処理シリカゾルから溶媒を除去、乾燥、シーブすることにより狙いの単分散シリカを得ることができる。またこの様に得られたシリカを再度処理を行っても構わない。上記シラン化合物は、水溶性であるものが使用できる。このようなシラン化合物としては、化学構造式RaSiX(4−a)(式中、aは0〜3の整数であり、Rは水素原子、アルキル基及びアルケニル基等の有機基を表し、Xは塩素原子、メトキシ基及びエトキシ基等の加水分解性基を表す。)で表される化合物を使用することができ、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれのタイプを使用することも可能である。
具体的にはメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランを代表的なものとして例示することができる。処理剤は、特に好ましくは、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等である。
なお、潤滑剤粒子としては、グラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸等の固体潤滑剤;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス;ミツロウのような動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス;及びそれらの変性物も使用でき、これらは併用してもよい。
次に、トナー粒子について説明する。トナー粒子は、磁性材料を内包する磁性トナー、および磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。例えば、結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じてシリカや帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法,混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法,結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法,結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法,結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により得られるものが使用できる。
また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに被覆層を形成してコアシェル構造をもたせる製造方法など、公知の方法を使用することができるが、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
トナー粒子の体積平均粒径D50は、2〜12μmの範囲が好ましく、3〜9μmの範囲がより好ましい。また、平均形状指数SF=100×πML2/4A(MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す)が125以上145以下の範囲のトナー粒子を用いることにより、高い現像、転写性、及び高画質の画像を得ることができる。このような平均形状指数が125〜145のトナー粒子を用いても、上述のように高いクリーニング性能が長期に渡り維持することができる。
使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。
また、トナーの着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
また、トナー粒子には必要に応じて帯電制御剤が添加されてもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減との点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。
さらに、トナーには、感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機微粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機微粒子を付着させた複合微粒子などを加えることができるが、研磨性に優れる無機微粒子が特に好ましい。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。また、上記無機微粒子にテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などで処理を行っても良い。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩による疎水化処理も好ましく行うことができる。
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。これらの粒子径としては、小さすぎると研磨能力に欠け、また、大きすぎると電子写真感光体表面に傷を発生しやすくなるため、平均粒子径で5〜1000nmの範囲、好ましくは5〜800nmの範囲、より好ましくは5〜700nmの範囲のものが使用される。また、前記滑性粒子の添加量との和が、0.6質量%以上であることが好ましい。
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等のため、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を、更に付着力低減や帯電制御のため、それより大径の無機酸化物を挙げることができる。これらの無機酸化物微粒子は公知のものを使用することができるが、精密な帯電制御を行うためには、シリカと酸化チタンとを併用することが好ましい。また、小径無機微粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を向上させる効果が大きくなる。
トナーは、前記トナー粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー、あるいはVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
また、トナーをカラートナーとして用いる場合には、キャリアと混合して使用されることが好ましいが、キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、またはそれ等の表面に樹脂コーテイングを施したものが使用される。また、キャリアとトナーとの混合割合は、適宜設定することができる。
ここで、図1に示す現像剤収容体41は、外添剤粒子が、トナー粒子100質量部に対して2.0質量部以上3.0質量部以下の範囲で添加されたトナー粒子の集まりを収容したものである。このことは、外添剤粒子の添加量が増加していないことを意味する。従来は、潤滑剤粒子等の添加量が増加し、その結果、外添剤粒子全体の添加量が3.0質量部を越えると、廃トナーと未使用トナーとの特性の違いから画質低下の変化度合いも大きくなってしまっていたが、3.0質量部以下に抑えても、長期にわたり感光体表面110の良好なクリーニング性を維持することができるため、廃トナーと未使用トナーとの特性の違いを小さくし、より確実に画質維持を図ることができる。
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、トナーの組成物、キャリアの説明において、特に断りのない限り、「部」は全て「質量部」を意味する。
<潤滑剤粒子の調製>
[球形単分散シリカの調製]
ゾルゲル法で得られたシリカゾルにHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行い、乾燥、粉砕することにより、比重1.50、球形化度Ψ=0.85、平均粒子径D50=135nm(標準偏差=29nm<D50×0.22=29.7nm)の球形単分散シリカAを得た。
<現像剤の調整>
[現像剤A(無機微粒子4質量部)]
重合トナーであるFUJI XEROX製Docu Centre Color 500の黒のベーストナー100部に単分散球形シリカAを3部加え、ヘンシェルミキサーを用い周速32m/sで10分間ブレンドをおこなった後、シリカ(TS720:キャボット社製)D50=12nmを1部加え、周速20m/sで5分間ブレンドを行い、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナーを得た。Docu Centre Color 400CPキャリヤ100部と上記トナー6部をV−ブレンダーを用い40rpmで20分間攪拌し177μmの網目を有するシーブで篩うことにより、無機微粒子が4質量部添加された現像剤Aを得た。
[現像剤B(無機微粒子2質量部)]
重合トナーであるFUJI XEROX製Docu Centre Color 500の黒のベーストナー100部に単分散球形シリカAを1部加え、ヘンシェルミキサーを用い周速32m/sで10分間ブレンドをおこなった後、シリカ(TS720:キャボット社製)D50=12nmを1部加え、周速20m/sで5分間ブレンドを行い、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナーを得た。Docu Centre Color 400CPキャリヤ100部と上記トナー6部をV−ブレンダーを用い40rpmで20分間攪拌し177μmの網目を有するシーブで篩うことにより、無機微粒子が2質量部添加された現像剤Bを得た。
<感光体の作製>
[感光体A]
4質量部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170質量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30質量部および有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3質量部を添加、混合撹拌して下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された外径40mmのアルミニウム支持体の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。その後、熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥を行い下引層を形成した。
電荷発生材料として、塩化ガリウムフタロシアニンを用い、その15質量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10質量部およびn−ブチルアルコール300質量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、上記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40質量部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とをテトロヒドロフラン280質量部及びトルエン120質量部に十分に溶解混合した後、4フッ化エチレン樹脂粒子10質量部を加え、さらに混合した。このとき、室温を25℃に設定し、混合工程における液温度を25℃に保った。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにて分散し、4フッ化エチレン樹脂粒子分散液を作成した。このとき、サンドグラインダーのベッセルに24度の水を流し、分散液の温度を50℃に保持した。得られた塗布液を上記電荷発生層の上に浸漬塗布し、乾燥することにより、膜厚28μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層にはフッ素系樹脂は含有されており、これを感光体Aとする。
[感光体B]
N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60質量部とをテトロヒドロフラン235質量部及びモノクロロベンゼン100質量部に十分に溶解混合して得られた塗布液を、上記感光体Aの作製における手順と同様な手順で電荷発生層まで塗布したアルミニウム支持体上に浸漬塗布し、乾燥することにより、膜厚28μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層にはフッ素系樹脂は含有されておらず、これを感光体Bとする。
<クリーニングブレードの作製>
下記表1に示すようにブレードAからブレードHまでの8種類のクリーニングブレードを用意した。ブレードBは、単層構造のウレタンゴムからなるものであり、このブレードBを除いた残りのブレードはいずれも、図3に示すクリーニングブレードのような2層構造のウレタンゴムからなるものである。すなわち、ブレードBは、先端エッジ部を構成する当接層からなる単層構造のものであり、ブレードAおよびブレードC〜Iは、感光体側に位置し、先端エッジ部を構成する当接層と、感光体とは反対側に位置する非当接層とを有するものである。
表1中の当接層の欄に記載された‘厚さ’は、クリーニングブレード全体の中で当接層が占める厚さ方向の割合(厚さ比)を表す。
ここにいう100%モジュラスの値は、100%伸張時の応力を意味し、JIS K 6251(1993)(加硫ゴムの引張試験方法)に準拠した測定で、23°Cの環境下で求めた値(MPa)を言い、反発弾性率とは、JIS規格K6255(1996)に準拠した常温23℃での値を言う。また、硬度は、JIS K 6253(1997)に準拠して、
高分子計測機器(株)製 デュロメータ タイプA硬度計:ASKER A型で計測することができるJIS−A硬度の値を言う。表1に示すごとく、100%モジュラスの値が同じで厚さも同じであっても、反発弾性率の値や硬度の値が異なることがわかる。
(実施例1)
試験機として、ロータリ方式の現像器を備え、中間転写ベルト上で各色トナー像が重なり合うように順次に各色トナー像を転写しフルカラー画像を形成するタイプの富士ゼロックスDocu?Centre Color 500を改造したものを用いた。すなわち、帯電器を帯電ローラーに変更するとともに図1に示すようなトナー回収手段を設けた。また、クリーニングブレードには表1に示すブレードAを用い、自由長を9mmにして、ブレード線圧25.48mN/mm、ブレードクリーニング角度12.6度になるように設定した。ここにいうブレードクリーニング角度とは、クリーニングブレードと、感光体の、クリーニングブレードが当接した部位から感光体の回転方向下流側に延びる感光体ドラムの接線とで挟まれた角度をいう(以下、同じ。)。また、感光体には、フッ素系樹脂は含有していない最表面層を有する上記感光体Bを用いた。さらに、現像器の現像剤収容体には、無機微粒子が4質量部添加された上記現像剤Aを収容したものを用いた。以上のような改造を施した画像形成装置を用い、K(黒)色のみの単色モードにて高温高湿(28℃、80%RH)及び低温低湿(10℃、20%RH)で各3万枚、計6万枚の走行試験を行い、感光体表面に生じた傷の程度、ブレードエッジダメージ、ブレードビビリ、帯電器汚れ(クリーニング性)、トナー帯電性、および転写性ついて評価を行った。
なお、この実施例1では走行試験中、制御部にトナーバンド形成を行わさせず、通常のトナー像形成時よりもさらに多くの未転写トナーをクリーニングブレードへ供給することは行わなかった。
ここで用いた画像形成装置の特徴的な構成を表2に示し、各評価の結果を表3に示す。
〔感光体傷〕
感光体傷は、表面粗さ計(東京精密(株)製Surfcom1400A)を用いて10点平均粗さ(Rz)を測定し評価した。Rzの値が小さいほど、感光体の傷は少ない。判断基準は以下の通りである。
◎:Rzが1.5μm以下
○:Rzが1.5μmを超え2.5μm未満(画質的に問題ないレベル)
×:Rzが2.5μm以上(画像上に白筋発生)
[エッジダメージ]
ブレードエッジダメージは、レーザー顕微鏡により(キーエンス(株)VK8500)、クリーニングブレードの先端エッジ部のダメージ状態を観察し官能評価を行った。判断基準は以下の通りである。
◎:エッジ捲れ無、エッジ摩耗極小、
○:エッジ捲れ無、エッジ摩耗小
△:エッジ捲れ無、エッジ摩耗中
×:エッジ捲れ小、エッジ摩耗大、
××:エッジ捲れ大、エッジ摩耗極大、
[ブレードビビリ]
ブレードビビリは高温高湿下で走行中の音を官能評価にて判断した。
○:ビビリ音が全く聞こえない
△:軽微にビビリ音が聞こえる
×:ビビリ音が聞こえる
[帯電器汚れ]
帯電器汚れについては、帯電ロールの汚れを目視にて観察し、官能評価を行った。
○:問題なし
△:若干問題あり
×:問題あり
[トナー帯電性]
トナーの帯電性能の評価は、6万枚走行後の画像の背景部(非画像部)のカブリ濃度を測定し、その濃度のレベルを判定することで行った。判定基準は以下のとおり。また、カブリ濃度は、X−Rite社製の濃度測定器X−Rite404によって測定した。カブリレベルは、以下の判断基準において1.0以上になると実用上問題となる。
○:カブリ濃度<0.5
△:0.5<カブリ濃度<1.0
×:カブリ濃度>1.0
[転写性]
転写性については、走行に用いた上記改造機にて転写効率を測定し、初期時の転写効率と走行後の転写効率の変化分を指標にし、以下の判断基準に基づき評価を行った。
○:転写性変化率<10%
△:10%≦転写性変化率≦15%
×:転写性変化率>15%
(実施例2)
表2に示すように感光体を、最表面にフッ素系樹脂を含有した電荷輸送層を有する上記感光体Aに代えた以外は、実施例1と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例3)
表2に示すように現像剤収容体を、無機微粒子が2質量部添加された上記現像剤Bを収容したものに代えた以外は、実施例2と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例4)
表2に示すように実施例3と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な走行試験を行ったが、ここでは、走行試験中、制御部にトナーバンド形成を行わせた。トナーバンド形成は、40枚(A4)に1回の割合でCin60%の30mmのトナーバンドを形成させ、その際、バンド供給時の1次転写バイアスを切ることで未転写トナーのバンドとした。実施例1と同様な評価を行ったので、結果を表3に示す。
(実施例5〜9)
表2に示すようにクリーニングブレードを代えた以外は、実施例3と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例1)
表2に示すようにクリーニングブレードを、100%モジュラスの値が4MPaを下回る単層構造のブレードBに代えた以外は、実施例1と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例2)
表2に示すように現像剤収容体を上記現像剤Bを収容したものに代えた以外は、比較例1と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例3)
表2に示すように比較例2と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な素行試験を行ったが、走行試験中、制御部に実施例4と同様にトナーバンド形成を行わせた。実施例1と同様な評価を行ったので、結果を表3に示す。
(比較例4)
表2に示すように感光体を、最表面にフッ素系樹脂を含有した電荷輸送層を有する上記感光体Aに代えた以外は、比較例2と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例5)
表2に示すようにクリーニングブレードを、当接層の100%モジュラスの値が4MPaを下回る2層構造のブレードCに代えた以外は、実施例3と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例6)
表2に示すようにクリーニングブレードを、当接層の100%モジュラスの値が18MPaを上回るブレードFに代えた以外は、実施例3と同じ構成の画像形成装置を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表3に示す。
表3に示すように、先端エッジ部が100%モジュラスの値が4MPaを下回るゴム材料からなるクリーニングブレードを用いた比較例1〜5では、先端エッジ部が捲れてしまったり、ブレードのビビリ音が生じている。また、帯電器汚れの結果から見て、クリーニングが不十分であることもわかる。一方、先端エッジ部が100%モジュラスの値が18MPaを上回るゴム材料からなるクリーニングブレードを用いた比較例6では、先端エッジ部によって感光体表面が傷つけられている。
これらの比較例に対して、先端エッジ部が100%モジュラスの値が4MPa以上18MPa以下の範囲に属するゴム材料からなるクリーニングブレードを用いたいずれの実施例でも、感光体に生じる傷を抑えながら、長期にわたり感光体表面の良好なクリーニング性が維持されている。
次に、表3に示す結果を詳細に分析する。まず、実施例1と実施例2とを比較する。この2つの実施例の違いは感光体であり、最表面にフッ素系樹脂を含有した感光体Aを用いた実施例2の方が実施例1よりも感光体傷が抑えられており、クリーニングブレードと感光体表面との摩擦上昇が抑えられていることがわかる。次に、実施例2と実施例3とを比較する。この2つの実施例の違いは現像剤であり、無機微粒子の添加量を低減させた実施例3の方が実施例2よりもトナー帯電性や転写性が優れている。これは無機微粒子の添加量を低減させたことで廃トナーと未使用トナーとの特性の違いが抑えられたことによる結果と考える。次いで、実施例3と実施例4とを比較する。この2つの実施例の違いはトナーバンド形成の有無であり、トナーバンド形成を行った実施例4では、エッジダメージが抑えられており、クリーニングブレードへのトナー供給が十分であったと考える。続いて、100%モジュラスの値が4.4MPaのクリーニングブレードを用いた実施例5及び同値が17.2MPaのクリーニングブレードを用いた実施例6と、同値が3.6MPaのクリーニングブレードを用いた比較例5及び同値が18.2MPaのクリーニングブレードを用いた比較例6とを比較すると、長期にわたり感光体表面の良好なクリーニング性を維持するためには、クリーニングブレードの先端エッジ部における100%モジュラスの値は4MPa以上18MPa以下であることが必要であるといえる。
なお、記録用紙への直接転写方式を採用したFUJI XEROX製Docu Center707を図1に示す画像形成装置1のように改造し、同様な試験および評価も行ったが、先端エッジ部における100%モジュラスの値が4MPa以上18MPa以下であるクリーニングブレードを用いると、長期にわたり感光体表面の良好なクリーニング性が維持されることが確認された。