図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、カラーレーザ複写機とプリンタとの複合機であるが、他のタイプの複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置100は、この画像形成装置100で読み取った原稿の画像データ、または外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行なうことが可能である。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての潜像担持体である感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを平行配設したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式を採用している。
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、画像形成装置100の本体99の図示しないフレームに回転自在に支持され、像担持体である転写媒体としての転写ベルト11の移動方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための画像形成ユニット画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、本体99の内部の中央部よりもやや上方に配設された無端のベルトである中間転写体としての転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に位置している。
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体であり転写媒体である転写紙に一括転写されるようになっている。転写紙の図示は省略している。
転写ベルト11は、その上側の部分が各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向しており、この対向した部分が、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上のトナー像を転写ベルト11に転写する1次転写部98を形成している。
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向する位置に配設された1次転写手段としての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
転写ベルト11は、体積抵抗10^5〜10^11Ω・cmの導電性を示すものである。体積抵抗が10^5Ω・cmを下回る場合には、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKから転写ベルト11上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、10^11Ω・cmを上回る場合には、転写ベルト11から用紙へトナー像を転写した後に、転写ベルト11上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
転写ベルト11は、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独または併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成型したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により上述の導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成型を行い、無端ベルト状の転写ベルト11を得ることもできる。
転写ベルト11に表面層を設ける際には、後述の感光体ドラム20Yの表面層に使用する表面層材料のうち、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
転写ベルト11は、その縁部にそれぞれ、寄り止め部材としての図示しない寄り止めガイドを有している。寄り止めガイドは、転写ベルト11がA1方向に回転するときに、図1における紙面と垂直な何れかの方向に偏倚することを防止するために配設されている。寄り止めガイドは、ウレタンゴム製であるが、その他、シリコンゴムなど各種ゴム材料により構成することができる。
画像形成装置100は、本体99内に、4つの画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの上方に対向して配設され、転写ベルト11を備えた転写装置である中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に従動し、連れ回りする転写部材としての2次転写バイアスローラである2次転写手段たる2次転写ローラ5と、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKの上方に対向して配設された潜像形成手段としての潜像形成装置たる光書込みユニットである光走査装置8とを有している。
画像形成装置100はまた、本体99内に、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと転写ベルト11との間に向けて搬送される転写紙を多数枚積載可能な給紙カセットとしての給紙機構であるシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた転写紙を、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、転写ベルト11と2次転写ローラ5との間の2次転写部97に向けて繰り出すレジストローラ対4と、転写紙の先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
画像形成装置100はまた、本体99内に、トナー像を転写された転写紙に同トナー像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての定着手段である定着装置6と、定着済みの転写紙を本体99の外部に排出する排紙ローラ対としての排紙ローラ7と、排出ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙を積載する排紙トレイ17とを有している。
画像形成装置100はまた、本体99上方に、原稿の画像を読み取る読取装置14と、読取装置14の上方に配設され読取装置14に原稿を給送する自動原稿給送装置(いわゆるADF)15とを有している。
画像形成装置100はまた、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを回転駆動する図示しない駆動装置と、2次転写ローラ5に2次転写バイアスを印加する図示しないバイアス印加手段としての電源とバイアス制御手段と、種々の検知手段による検知結果等に基づき画像形成装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む図示しない制御手段とを有している。
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写バイアスローラとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、転写ベルト11を巻き掛けられた、駆動部材である駆動ローラ72と、クリーニング対向ローラ74と、駆動ローラ72及びクリーニング対向ローラ74とともに転写ベルト11を張架する張架ローラ75、77と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングするベルトクリーニング装置としてのクリーニング装置13とを有している。
転写ベルトユニット10はまた、駆動ローラ72を回転駆動する図示しない駆動系と、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKにトナーの帯電極性と逆極性の電位を印加して1次転写バイアスを印加し、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上の可視像であるトナー像を転写ベルト11側へ剥離帯電させ1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKを転写器として機能させる図示しないバイアス印加手段としての電源とバイアス制御手段とを有している。
1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは、転写ベルト11をその裏面から感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて押圧してそれぞれ1次転写ニップを形成する。1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは
各1次転写ニップには、1次転写バイアスの影響により、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとの間に1次転写電界が形成される。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に形成された各色のトナー像は、この1次転写電界やニップ圧の影響によって転写ベルト11上に1次転写される。1次転写手段は、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとして構成されるのみならず、適宜、コロナ放電によるコロナ転写器、粘着転写器等として構成されても良い。
駆動ローラ72は、転写ベルト11を介して2次転写ローラ5を当接されており、2次転写ニップを形成している。
張架ローラ75は、転写ベルト11に、転写に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラたる機能を有している。
クリーニング装置13は、詳細な図示を省略するが、転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有しており、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするクリーニング工程を行なうようになっている。
シート給送装置61は、転写紙を複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体99の下部において多段で配設されている。シート給送装置61は、所定のタイミングで、転写紙をレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。
シート給送装置61から送り出された転写紙は、給紙経路を経てレジストローラ対4に至り、レジストローラ対4のローラ間に挟まれる。
定着装置6は、ベルトユニット62と、ベルトユニット62に圧接された加圧ローラ63とを有している。ベルトユニット62は、無端状の定着ベルト64と、定着ベルト64を張架しながら無端移動させる定着ローラ65と、定着ローラ65とともに定着ベルト64を巻き掛け内部に図示しない熱源を有する加熱ローラ66とを有している。熱源は通常、加熱ローラ66を80〜200℃に加熱することが好ましい。
定着装置6は、トナー像を担持した転写紙をベルトユニット62と加圧ローラ63との圧接部である定着部に挟み込む態様で通すことで、熱と圧力との作用により、担持したトナー像からなる可視像を転写紙の表面に定着する定着工程を行うようになっている。なお、定着工程は、本形態ではすべての色のトナー像が転写紙に転写されてから行うが、画像形成装置100の構成によっては、各色のトナー像が転写紙に転写されるごとに行われることもある。また、定着装置6の構成は、ローラ定着方式すなわち加熱ローラと加圧ローラとの組合せによるものであっても良い。
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKについて、そのうちの一つの、感光体ドラム20Yを備えた画像形成ユニット60Yの構成を代表して構成を説明する。なお、他の画像形成ユニットの構成に関しても実質的に同一であるので、以下の説明においては、便宜上、画像形成ユニット60Yの構成に付した符号に対応する符号を、他の画像形成ユニットの構成に付すかこれを省略し、詳細な説明についても適宜省略することとする。
図2に示すように、感光体ドラム20Yを備えた画像形成ユニット60Yは、感光体ドラム20Yの周囲に、図中反時計方向であるその回転方向B1に沿って、1次転写ローラ12Yと、クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置であるクリーニング機構たるクリーニング装置70Yと、感光体ドラム20Yに保護剤42Yを塗布する保護剤塗布手段としての保護層形成手段である保護層形成装置40Yと、図示しない除電手段としての除電ランプを備えた除電装置と、帯電手段としての帯電装置90Yと、現像手段としての現像ユニットである現像器たる現像装置80Yとを有している。
感光体ドラム20Yと、クリーニング装置70Yと、保護層形成装置40Yと、除電装置と、帯電装置90Yと、現像装置80Yとは一体化されており、プロセスカートリッジ68Yを構成している。プロセスカートリッジ68Yは本体99に対して着脱自在となっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことができるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。
感光体ドラム20Yは、導電性支持体の上に感光層が設けられた構成であって、有機光導電層を有するOPC感光体である。その詳細については後述する。
クリーニング装置70Yは、その先端が感光体ドラム20Yに当接し感光体ドラム20Y上の転写残トナー、キャリア、紙粉等の異物を掻き取って回収しクリーニングするクリーニング部材としてのクリーニングブレード78Yと、クリーニングブレード78Yを感光体ドラム20Yに所定の弾性力で押し当てるばね79Yと、クリーニングブレード78Yによって感光体ドラム20Yから除去された転写残トナー等を回収する図示しない回収室とを有している。
クリーニングブレード78Yは、いわゆるカウンタータイプ言い換えるとリーディングタイプに類する角度で感光体ドラム20Yに当接している。クリーニング装置70Yはかかる異物を感光体ドラム20Yから除去するクリーニング工程を行う。クリーニング装置70Yは、転写残トナー、その他の異物を除去することができるものであれば、クリーニングブレード78Yのようなブレードを用いたブレードクリーナ方式に限らず、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等の他の方式によるものであっても良い。クリーニング装置70Yで除去した異物はイエロートナーを含んでいるため、これを現像装置80Yに搬送する搬送手段であるリサイクル手段を用いて現像装置80Yに供給して現像に供するリサイクル工程を行なうようにしても良い。
帯電装置90Yは、感光体ドラム20Yの表面を一様に帯電する一様帯電手段であって、感光体ドラム20Yの表面に近接して配設された帯電部材としての帯電ローラ91Yと、帯電ローラ91Yに接触配置され帯電ローラ91Yをクリーニングするクリーニングローラ92Yと、帯電ローラ91Yに直流電圧と交流電圧とを重畳させた電圧を印加する電圧印加手段としての高電圧電源93Yとを有している。
感光体ドラム20Yを帯電する方法としては、本形態の帯電装置90Yのように、帯電ローラ91Yを感光体ドラム20Yに非接触に配置する近接方式のほかに、帯電ローラ91Yのような帯電部材を感光体ドラム20Yに接触させて配置する接触帯電方式すなわち接触方式とがある。高電圧電源93Yは直流電圧のみを帯電ローラ91Yに印加するものであってもよいが、交流成分を少なくとも含む電圧を印加することが望ましい。
帯電装置90Yは、高電圧電源93Yによる電圧印加によって、帯電ローラ91Yと感光体ドラム20Yとの間の微小空隙での放電により、感光体ドラム20Yの帯電を行う。よって、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロン、スコロトロンといわれるコロナ放電を利用した非接触帯電器と比して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制したものとなっているが、かかる帯電器の他、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触帯電器であってもよい。また帯電ローラ91Yは本形態では導電性の材質であるが、半導電性の材質であってもよい。
光走査装置8は、感光体ドラム20Yに帯電装置90Yが対向した帯電領域と現像装置80Yが対向した現像領域との間の領域に、光変調及び偏向されたレーザー光Lを走査しながら照射して、帯電装置90Yにより帯電された後の感光体ドラム20Yの表面の被走査面をスポット照射によって、感光体ドラム20Yの回転軸方向に露光し、現像装置80Yによってイエロートナー像として可視像化される、画像情報に応じた静電潜像を書き込むようになっている。そのため、図1に示すように、光走査装置8は、光源31、高速で回転する多角柱の多面鏡であるポリゴンミラー32、fθレンズ33、反射ミラー34等を有している。かかる静電潜像形成工程により、露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる。このようにして、光走査装置8は静電潜像形成手段、静電潜像形成装置として機能する。
光走査装置8は、レーザ光学系の他、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、液晶シャッタ光学系などの各種の態様で露光を行う露光器とすることができる。また、光走査装置8は、感光体ドラム20Yの裏面側言い換えると内側から露光を行う光背面方式を採用したものであっても良い。
図2に示すように、現像装置80Yは、感光体ドラム20Yに近接対向して配設された現像ローラ81Yと、現像ローラ81Y上の現像剤を一定の高さに規制するドクターブレード82Yと、互いに対向するように配設され、現像剤を攪拌するとともに現像ローラ81Yに現像剤を供給するための第1搬送スクリュ83Y及び第2搬送スクリュ84Yと、第1搬送スクリュ83Yと第2搬送スクリュ84Yとの間に設けられた仕切り壁87Yと、イエロートナーを収容したトナーボトル88Yと、直流成分の現像バイアスを現像ローラ81Yに印加する図示しないバイアス印加手段としての電圧印加機構等とを有している。
現像ローラ81Yは、その表面に現像剤を担持する現像剤担持体である図示しない現像スリーブと現像スリーブ内部に位置するマグネットローラとを有している。バイアス印加手段は現像スリーブに、感光体ドラム20Yの、露光部と非露光部との間の適当な大きさの現像バイアスを印加する。マグネットローラは固定であり、現像スリーブがマグネットローラに対して回転する。
現像装置80Y内には、仕切り壁87Yにより、現像ローラ81Yと第1搬送スクリュ83Yとを収容した第1供給部と、第2搬送スクリュ84Yを収容した第2供給部とが分かれた状態で形成されている。
第1搬送スクリュ83Yは、駆動手段によって回転駆動されることで、第1供給部内の現像剤を図2における紙面奥側から手前側へと搬送しながら現像ローラ81Yに供給する。第1搬送スクリュ83Yによって第1供給部内の端部付近まで搬送された現像剤は、仕切り壁87Yに形成された図示しない開口部を通って第2供給部内に進入する。
第2供給部内において、第2搬送スクリュ84Yは、駆動手段によって回転駆動されることで第1供給部から送られてくる現像剤を第1搬送スクリュ83Yとは逆方向に搬送する。第2搬送スクリュ84Yによって第2供給部の端部付近まで搬送された現像剤は、仕切壁87Yに設けられたもう一方の図示しない開口部を通って第1供給部内に戻る。
現像ケース85Y内の現像剤は、磁性キャリアと、イエロートナーとを含む二成分現像剤であって、この現像剤には、トナーボトル88Yからイエロートナーが補給、供給され、第1搬送スクリュ83Y及び第2搬送スクリュ84Yによって、供給されたイエロートナーと現像剤とが攪拌搬送されながら攪拌混合され、摩擦帯電され、現像ローラ81Yに供給され担持される。
ドクターブレード82Yによって現像剤の担持量を規制され層厚を規制された現像ローラ81Yは、その現像スリーブの回転及びバイアス印加手段による現像バイアスにより、現像ローラ81Yと感光体ドラム20Yとの間の現像領域に、ドクターブレード82Yによって量を適量とされた、マグネットローラの磁力によって現像スリーブ上に穂立ちした状態で保持された磁気ブラシ状の現像剤を運び、現像剤中のイエロートナーが感光体ドラム20Yの表面に形成された静電潜像に電気的な吸引力によって静電的に移行して、静電潜像をイエロートナー像として可視像化するようになっている。
現像によりイエロートナーを消費した現像剤は、現像ローラ81Yの回転に伴って現像装置80Y内に戻される。
本形態では、バイアス印加手段により、現像スリーブに、感光体ドラム20Yの露光部と非露光部との間にある所定の大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスを印加するが、現像バイアスは交流成分であっても良い。また現像スリーブを備えずマグネットローラが回転し、マグネットローラ上に磁気ブラシが形成される構成であっても良い。また2成分現像剤でなく1成分現像剤を用いる方式であっても良いし、乾式現像方式でなく湿式現像方式を採用しても良いし、現像剤またはトナーが感光体ドラム20Yに接触するのでなく非接触で現像を行うものであっても良い。
保護層形成装置40Yは、バー状に成形された固形の潤滑剤である像担持体保護剤としての成形体たる保護剤42Yと、感光体ドラム20Yを保護するために保護剤42Yを掻き取り感光体ドラム20Yに供給する保護剤供給部材である掻き取り部材としてのファーブラシたるブラシローラ47Yとを有している。
保護層形成装置40Yはまた、保護剤42Yをブラシローラ47Yに押圧し圧接させる圧接部材である弾性部材としての押圧力付与機構たる加圧バネであるバネ48Yと、ブラシローラ47Yによって感光体ドラム20Yに塗布され供給された保護剤42Yを感光体ドラム20Y表面上に薄層化して保護層を形成するための保護層形成機構49Yとを有している。
保護剤42Yとブラシローラ47Yとは、その幅方向すなわち図2における紙面に垂直な方向における長さが一致しているとともに、幅方向における配設範囲が互いに一致している。よって、保護剤42Yはブラシローラ47Yにより、幅方向において全体が均一に掻き取られ、消費されるようになっている。
保護剤42Yとブラシローラ47Yとは、その幅方向における長さが少なくとも同方向における感光体ドラム20Yの画像形成領域の長さ以上であって、同方向において保護剤42Yとブラシローラ47Yとの配設位置が感光体ドラム20Yの画像形成領域を含むように構成されている。よって、保護剤42Yはブラシローラ47Yにより、幅方向において均一に感光体ドラム20Yの画像形成領域に供給される。
保護層形成機構49Yは、その先端が感光体ドラム20Yに当接した皮膜形成部材としての保護層形成部材である塗布ブレード43Yと、塗布ブレード43を感光体ドラム20Yに所定の弾性力で押し当てる弾性部材としてのバネ44Yとを有している。
塗布ブレード43Yは、感光体ドラム20Yに当接するブレード45Yと、ブレード45Yを支持しバネ44Yによって付勢されたブレード支持体46Yとを有している。ブレード45Yとブレード支持体46Yとは、接着によって互いに固定されているが、融着等の他の任意の方法で互いに固定してもよい。
塗布ブレード43Yは、その幅方向における長さが同方向における感光体ドラム20Yの画像形成領域の長さ以上であって、同方向においてその配設位置が感光体ドラム20Yの画像形成領域を含むように構成されている。よって、塗布ブレード43Yは幅方向において少なくとも感光体ドラム20Yの画像形成領域に均一に当接し、幅方向において均一に少なくとも感光体ドラム20Y上の画像形成領域に皮膜を形成する。
このような構成の保護層形成装置40Yは、ブラシローラ47Yを、その軸を中心に、感光体ドラム20Yの回転速度と所定の線速差を持って、感光体ドラム20Yの回転方向B1に対しカウンター方向となるD1方向に回転させて、保護剤42Yを掻き削って一旦汲み上げ、掻き削った保護剤42Yを感光体ドラム20Y表面との当接位置まで担持搬送して感光体ドラム20Yに塗布して供給するようになっている。
感光体ドラム20Yを保護するために感光体ドラム20Y表面に供給され塗布された保護剤42Yは、保護剤42Yの物質種によっては感光体ドラム20Y上において十分な保護層を形成するに至らないことがありうるが、塗布ブレード43Yによって、感光体ドラム20Y表面に押圧され、引き伸ばされることで薄層化言い換えると皮膜化され、保護剤の皮膜形成が確実かつ均一に施される。
経時で保護剤42Yがブラシローラ47Yに掻き削られて減少しても、バネ48Yが所定の圧力で保護剤42Yをブラシローラ47Yに押圧しているので、保護剤42Yは微量となっても適量がブラシローラ47Yに汲み上げられ、保護剤42Yは完全に消費されるまでブラシローラ47Yに接触する。
保護剤42Yによって感光体ドラム20Y表面に形成される皮膜は、近接放電による感光体ドラム20Y表面の劣化を防止する機能を有しており、保護層形成装置40Yは放電劣化防止手段として機能するものである。ここでいう劣化とは、放電すなわち帯電工程における電気的ストレスによる感光体ドラム20Yの磨耗及びこの磨耗の加速、ならびに感光体ドラム20Y表面の活性化の両方を指している。
また、かかる皮膜は、感光体ドラム20Yとクリーニングブレード78Yとが互いに摩擦しあうことによって生じる磨耗等の機械的ストレスによる劣化も防止し、保護層形成装置40Yは摩擦劣化防止手段として機能するものである。
このように、保護層形成装置40Yは、保護剤42Yを感光体ドラム20Y表面に塗布して保護層を形成することにより、電気的ストレス、機械的ストレスによる劣化のすべてを解消している。
ただし、感光体ドラム20Y上の保護層の一部は、感光体ドラム20Yの帯電を行うための、帯電ローラ91Yと感光体ドラム20Yとの間の微小空隙での放電により分解や酸化し、また保護層表面への気中放電生成物の付着が生じることなどにより、劣化する。劣化した保護剤は、クリーニングブレード78Yによって、感光体ドラム20Y上の転写残トナー等とともに感光体ドラム20Y上から除去される。このような劣化保護剤のクリーニングは、塗布ブレード43Yによって行っても良いが、保護層を形成するための感光体ドラム20Yへの当接状態あるいは摺擦状態と、クリーニングを行うための感光体ドラム20Yへの当接状態あるいは摺擦状態とは異なることがあるため、塗布ブレード43Yをクリーニングに兼用するよりも、本形態のように塗布ブレード43Yとクリーニングブレード78Yとを別個の構成とするほうが好ましい。
また、本形態のように、クリーニング装置70Yによって感光体ドラム20Yをクリーニングする位置を、B1方向において、保護層形成装置40Yによって感光体ドラム20Yに保護剤が供給される位置よりも上流側とすることが好ましい。感光体ドラム20Yがクリーニングされ清浄となった状態で保護層を形成することで、保護層に不純物が混入することが抑制され、保護層が所期の目的を良好に果たすためである。
ブレード45Yの材料としては、特に制限はなく、クリーニングブレード78Y等のクリーニングブレード用材料として公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらブレードは、像担持体との接点部分を低摩擦係数材料で、コーティングや含浸処理してもよい。また、弾性体の硬度を調整するために、有機フィラー、無機フィラー等の充填材を分散させてもよい。
ブレード45Yは、先端部が感光体ドラム20Y表面へ押圧当接できるように、ブレード支持体46Yに対し、接着や融着等の任意の方法によって固定される。ブレード45Yの厚みについては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に規定できるものではないが、0.5〜5mmが好ましく、1〜3mmがより好ましい。
また、ブレード支持体46Yから突き出し、たわみを持たせることができる部分のブレード45Yの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える力との兼ね合いで一義的に規定できるものではないが、1〜15mmが好ましく、2〜10mmがより好ましい。
ブレード45Yの他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要に応じてカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の被覆層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いてもよい。
ブレード45Yの被覆層は、少なくともバインダー樹脂及び充填剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばPFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂;フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマーなどが挙げられる。
ブレード45Yを弾性金属ブレードとした場合の厚みは、0.05〜3mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましい。弾性金属ブレードでは、そのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施してもよい。
塗布ブレード43Yが保護剤を感光体ドラム20Yに押圧する力は、保護剤が延展し保護層の状態になる力で十分であり、塗布ブレード43Yが感光体ドラム20Yを押圧する線圧として5〜80gf/cmが好ましく、10〜60gf/cmがより好ましい。
ブラシローラ47Yによる感光体ドラム20Y表面への機械的ストレスを抑制するためにはブラシローラ47Yを構成するブラシ繊維は可撓性を有することが好ましい。可撓性のブラシ繊維の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル系樹脂又はポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂)などが挙げられる。
なお、撓みの程度を調整するため、例えばジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合してもよい。
ブラシローラ47Yは、保護剤の供給の均一性、供給の安定性の面から、ブラシ密度の高いものを使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作製することが好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することが好適である。
また、ブラシローラ47Y表面には必要に応じてブラシの表面形状や環境安定性等を安定化することを目的として、被覆層を設けてもよい。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましい。被覆層成分としては、可撓性を保持し得る材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等による変性品);パーフルオロアルキルエーテル、ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、又はこれらの複合樹脂などが挙げられる。
ブラシローラ47Yの支持体としては、固定型と回動可能なロール状のものがある。ロール状の支持体を用いた構成としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものなどが挙げられる。ブラシ繊維としては繊維径10〜500μm程度、ブラシの繊維の長さは1〜15mm、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107〜4.5×108本)が好適である。
その他、保護層形成装置40Yの詳細については後述する。
このような画像形成ユニット60Yにおいては、ネガ−ポジプロセスで画像形成を行う。感光体ドラム20Yは、B1方向への回転に伴い、帯電装置90Yにより表面を一様にマイナス帯電され、光走査装置8からのレーザー光Lの露光走査によりイエロー色に対応した静電潜像を形成される。このとき、露光の走査方向は感光体ドラム20Yの回転軸方向であり、また露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位となる。
この静電潜像を現像装置80Yにより現像剤中のイエロー色のトナーにより現像され、現像により得られたイエロー色のトナー像を1次転写ローラ12YによりA1方向に移動する転写ベルト11に1次転写されて1次転写工程が行われ、転写後に残留した転写残トナーをクリーニング装置70Yにより除去され、保護層形成装置40Yによって保護剤42Yが供給され、除電装置により除電バイアスが印加され除電工程が行われ、残留電荷が除去されて帯電装置90Yによる次の帯電工程に供される。
このとき、クリーニング装置70Yは、感光体ドラム20Y上の、部分的あるいは全面的に劣化した保護剤も、転写残トナー等の他成分とともに除去する。保護層形成装置40Yは、クリーニング後の感光体ドラム20Y表面に保護剤による保護層を形成する保護層形成工程を行う。
上述のように、クリーニング装置70Yは、保護層形成機構49Yまたはこれに備えられた塗布ブレード43Yに同様の機能を持たせることによって、省略することも可能である。しかしながら、感光体ドラム20Yをクリーニングする機能と、保護層を形成する機能とは、感光体ドラム20Yに当接させる部材の材料、その当接力など、感光体ドラム20Yに対するかかる部材の摺擦状態を異ならせる必要があることがある。そのため、本形態のように、これらの機能を分離し、B1方向において上流側にクリーニング装置70Yを配設し、下流側に保護層形成機構49Yを配設することが好ましい。
他の感光体ドラム20M、20C、20BKにおいても同様に各色のトナー像が形成等され、形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ12M、12C、12BKにより、A1方向に移動する転写ベルト11上の同じ位置に順次1次転写され1次転写工程が行われる。転写ベルト11上に重ね合わされたトナー像は、転写ベルト11のA1方向の回転に伴い、2次転写ローラ5との対向位置である2次転写ニップまで移動して転写紙に密着し、2次転写バイアスやニップ圧の作用によって転写紙に2次転写されて2次転写工程が行われ、転写紙上にフルカラー画像が形成される。
転写ベルト11と2次転写ローラ5との間に搬送されてきた転写紙は、シート給送装置61から給送ローラ3によって繰り出されてフィードされ、レジストローラ対4によって、センサによる検出信号に基づいて、転写ベルト11上のトナー像の先端部が2次転写ローラ5に対向するタイミングで送り出されたものである。
2次転写ローラ5には、バイアス印加手段により、トナー帯電の極性と逆極性の電位が印加され、転写ベルト11上の可視像であるトナー像を転写紙側へ剥離帯電させる転写器として機能する。2次転写手段は、1次転写手段と同様、2次転写ローラ5として構成されるのみならず、適宜、コロナ放電によるコロナ転写器、粘着転写器等として構成されても良い。
転写紙は、すべての色のトナー像を転写され、担持すると、定着装置6に進入し、加圧ローラ63とベルトユニット62との間の定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を定着され、転写紙上にフルカラー画像が定着される。定着装置6を通過した定着済みの転写紙は、排紙ローラ7を経て、本体99の上部の排紙トレイ17上にスタックされる。一方、2次転写を終えた2次転写ニップ通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニングブラシ及びクリーニングブレードによってその表面をクリーニングされ、次の現像工程に備える。
制御手段は、これらの工程が適時的確に行なわれるように各構成を制御する制御工程を行なう。制御手段としてはシークエンサーを用いても良い。
保護層形成装置40Yについて詳細に述べる。なお、画像形成ユニット60M、60C、60BKに備えられた保護層形成装置についても同様であるので、それらについての説明は省略する。
すでに述べたように、保護層形成装置40Yは、保護剤42Yを感光体ドラム20Y表面に塗布して保護層を形成することにより、電気的ストレス、機械的ストレスによる劣化のすべてを解消している。
このことは、固体状の整形体である保護剤42Yが、少なくとも、3点曲げ試験による破壊強度をワイルドプロットして求められる尺度パラメータη、形状パラメータmにおいてそれぞれ、1.20≦η≦3.20[N/mm2]、5≦m≦15を満たし、空隙率φにおいて3≦φ≦15[体積%]を満たす多孔質体である構成であることによって、達成されている。
この構成の意義について以下説明する。
保護剤42Yは、画像形成工程における保護層形成過程で、感光体ドラム20Y表面上に付着と同時もしくは付着後に、皮膜化され均一な保護層とされるが、この皮膜化が不十分であると、引き続き行われる帯電工程における電気的なストレスから感光体ドラム20Y表面を保護することができない。
保護層の形成を確実になすには、保護剤42Yを、感光体ドラム20Yに、必要十分な量、安定して供給する必要があるが、本形態のように、保護剤42Yを掻きとって感光体ドラム20Y表面に供給する構成では、供給量は保護剤42Yの硬さに、強く依存する。この場合の供給量は使用する保護剤の材料自体の機械的性質によるところが大きいため、保護剤をソリッド状のものとして用いた場合には、供給量を十分に確保しようとすると、保護剤を軟質にせざるを得ない。
ところが、保護剤が軟質になると、供給源の保護剤表面、本形態で言うところの保護剤42Yに転写残トナー等の異物が付着もしくは埋没し、保護剤の供給量が経時で変動する場合や、供給不良が発生する場合がある。
この点につき、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、供給量を確保するには、ソリッドで用いるには硬い素材を、多孔質体に成形すると良いことが分かった。これは、ソリッドの状態で使用した場合と比較して、保護剤が小さな力で掻き取られ、像担持体表面へ適切な量が供給されるためである。また、ソリッドで用いるには硬い素材を多孔質体に成形すると、同時に、本形態におけるブラシローラ47Yに対応する保護剤供給部材を、保護剤に押圧する力を小さくできるため、供給量の経時的な安定性も向上するという利点もある。
ところが、硬質な素材を保護剤42Yのような棒状の多孔質体にすると、保護剤自体に粘り気がなくなってくるため脆性が強く現れると共に、長手方向で素材の粗密や強度のバラツキが生じ易くなる。保護剤供給部材がこのような状態で保護剤に均等に押圧されると、素材の粗密や強度のバラツキの影響を受けて、像担持体へ保護剤の供給が不均一になり、ひいては像担持体を均一性に保護することができず、画像品質を低下させてしまうおそれがある。特に、保護剤に対する保護剤供給部材の押圧力を小さくした場合には、この傾向が強くなる。
したがって、多孔質の保護剤を用いる場合には、ソリッド状の場合と比較して、強度並びに強度バラツキに対し、より厳密に均一化する必要がある。
このような事情に鑑み、本発明者らはさらに鋭意研究したところ、上述の構成、すなわち、3点曲げ試験による破壊強度をワイルドプロットして求められる尺度パラメータη、形状パラメータmにおいてそれぞれ、1.20≦η≦3.20[N/mm2]、5≦m≦15を満たし、空隙率φにおいて3≦φ≦15[体積%]を満たす多孔質体である保護剤を用いると、保護剤の供給量が幅方向によらず確保されるとともに供給量のバラツキが十分に抑制され、像担持体表面上に保護層が十分な厚さで均一に形成され、これによって像担持体が機械的ストレスのみならず電気的ストレスにも十分に対抗し、像担持体が長期間にわたって劣化することなく維持され、像担持体を含む画像形成装置は、長期間にわたって、良好な状態に維持しつづけられ、安定した画像品質が確保されることが分かったものである。このことは、プロセスカートリッジ68Yにおいても同様である。
尺度パラメータη、形状パラメータm、空隙率φがかかる範囲を満たすことの意義を説明すると次のとおりである。
尺度パラメータηが、1.20[N/mm2]を下回る場合には、保護剤42Yが脆すぎるため、供給過多が生じがちとなり、感光体ドラム20Y表面への安定した供給が困難になり、また、作像環境などの僅かな影響によって、感光体ドラム20Y表面上における保護剤の過不足が生じ、感光体ドラム20Yの保護や画像品質の維持が困難となる。逆に3.20[N/mm2]を超えるような場合、保護剤42Yの強度が大きくて供給量が不足しがちとなり、感光体ドラム20Y、クリーニングブレード78Yに対しての保護効果が不足する傾向となるため、保護剤42Yの供給を十分に行うには、ブラシローラ47Yの押圧力を大きく設定する必要があり、同時に、ブラシローラ47Yに移った保護剤を、感光体ドラム20Y上へ移し保護層を形成するには、ブラシローラ47Yによる感光体ドラム20Yの摺擦力が大きくなるため、機械的ストレスが大きくなり、実用的でなくなってくる。
なお尺度パラメータηは、1.60≦η≦2.60[N/mm2]を満たすことがより好ましい。
形状パラメータmが5を下回るような場合には、保護剤42Yは、幅方向で脆性に大きな差異が生じているおそれがあり、供給量が場所によってまちまちとなり、そのために感光体ドラム20Y上に形成される保護層にムラが出来、均等な保護が困難となる。更には、この保護層のムラは、画像濃度の濃淡ムラとして画像上に影響を及ぼすこともある。
逆に、形状パラメータmが15を上回る場合には、場所による供給量のばらつきは抑制されるが、形状パラメータmが15を上回るような、曲げ強度の均一性を確保するには、保護剤42Yの疎密状態を均一にする必要がある。疎密状態の均一化には、例えば、保護剤42Yの空隙率φを非常に小さくすれば良いが、空隙率φを小さくすると、保護剤42Y自体が硬くなり、供給性の良さを確保することが困難となる。
なお形状パラメータmは、8≦m≦12を満たすことがより好ましい。
形状パラメータmは、保護剤42Yの空隙率φやそのバラツキと密接に関連しており、空隙率φが3%を下回ると、保護剤42Yが均質になってくるため、形状パラメータmを15以下に抑制することが困難となる。逆に、空隙率φが15%を上回ると、保護剤42Y内に局所的な疎密が生じはじめ、形状パラメータmを5以上にすることが困難となる。
ここで3点曲げ試験は、JIS K 7211−1による「硬質発泡プラスチック −曲げ試験− 第1部:曲げ試験」に準拠して行った。ただし、試験片は厚さ=8±0.2mm、幅=8±0.2mm、長さ=60±6mmとした。また、支点間距離=40mm、加圧くさびの半径=3±0.2mmにそれぞれ設定した。計測された破壊荷重を用いて、ワイブル分布式に基づき、尺度パラメータηおよび形状パラメータmを算出し、評価値とした。
ここで、尺度パラメータηおよび形状パラメータmは、それぞれ、サンプルの強度および強度バラツキに関する指標であり、同一条件のサンプルに対して、少なくとも10点以上の破壊荷重データを採取し、次の式(1)で示されるワイブル分布式に基づいて、Kaplan−Meier法(積−極限法)により得ることができる。
S(t)=exp(−(t/η)m) 式(1)
ここで、上述のように、ηは尺度パラメータ[N/mm2]、mは形状パラメータを示しているとともに、tは破壊強度[N/mm2]、S(t)は破壊強度tまでの存在率を、それぞれ示すものである。
また、破壊強度tは、次の式(2)で算出される。
t=3×9.8×10−3×F×L/(2×w×d2) 式(2)
ここで、Fは破壊荷重[g]、Lは支点間距離[mm]、wは試片の幅[mm]、dは試片の厚み[mm]を示す。
保護剤42Yは、上述の構成に加え、その成分として、少なくとも、飽和炭化水素ワックス、脂肪酸金属塩、個数平均粒子径D1が0.1≦D1≦2.0[μm]の微粒子を含んでいる。以下これらの要件について説明する。
・飽和炭化水素ワックス
保護剤42Yに用いる飽和炭化水素ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80〜130℃の範囲にシャープな融解熱のピークを持ち、融解後の融液粘度が低いものが好適である。
上述の構成の保護剤42Yによれば、融点が高い硬質のワックス成分を用いたとしても、感光体ドラム20Y表面へ保護剤を必要十分な量供給することは可能であるが、融点が130℃より高い場合には、感光体ドラム20Y表面でワックス成分が伸ばされて膜化し、保護層を形成する際の、延展性が十分でないことがあり、均質な保護層形成のために、やや強い摺擦等の動作が必要になることがある。この場合、感光体ドラム20Yに対する機械的なストレスは大きくなりがちであるため、機械的な劣化を抑制しつつ、電気的なストレスから感光体ドラム20Yを保護するための均質な保護層を調整するための、保護層形成条件の調整範囲が狭くなる。融点が80℃より低い場合には、保護剤42Yが画像形成装置100内で軟化して変形し、十分な供給精度をもって、感光体ドラム20Y上に供給できなくなり得るため、一定の保護層を形成することが困難となる場合がある。
一般的なワックスの例としては、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素や芳香族炭化水素に分類される炭化水素、カルナウバロウ、米ぬかロウ、キャンデリラロウ等の植物性天然ワックス類、蜜ロウ、雪ロウ等の動物性天然ワックス類が例として挙げられる。特に、分子内の結合が、反応性が低く安定した飽和結合のみからなる、脂肪族飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素が好ましく、中でもノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびシクロパラフィンといった炭化水素ワックスが、付加反応が生じ難く化学的に安定であり、実使用の大気中で酸化反応を生じにくいため、経時安定性の面で好ましく用いられる。
また特に、比較的硬質なワックスとして、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックスの少なくとも1種を含む炭化水素ワックスを用いることにより、保護層自体の耐久性を高めることができるため、感光体ドラム20Y表面に形成する保護層の厚みを過剰にすることなく、感光体ドラム20Yの保護が実現されるため、より好ましい。
また、すでに述べたように感光体ドラム20Y表面に形成された保護剤層は電気的ストレスに曝され、劣化するため、ワックスの分子量が小さすぎると、十分な保護効果が発現しなくなることがある。一方で、ワックスの分子量が大きすぎると、保護剤成分を感光体ドラム20Y上に膜化させる際に、大きなずり力が必要となるため、均等な保護膜が形成されない場合がある。
ワックスの分子量は、重量平均分子量Mw基準で、350〜850の範囲とすることにより、保護効果が確実に発現されるため好ましく、400〜800であることが更に好ましい。
保護剤42Y中に占める飽和炭化水素ワックスの量としては、全構成物に対して、20〜95体積%であることが好ましい。
・脂肪酸金属塩
脂肪酸金属塩の例としては、ラウリン酸塩、ミリスチン酸、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、リグノセリン酸塩、セロチン酸塩、モンタン酸塩、メリシン酸塩等の長鎖アルキルカルボン酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン等が結合した化合物が挙げられる。
具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
これらの脂肪酸金属塩は複数種類を併用しても良い。
これらの脂肪酸金属塩を、上述の飽和炭化水素ワックスの粉末原料などと共に使用することにより、ワックス粉末の流動性が向上し、保護剤42Y形成時の空隙率φのばらつきが抑制され、尺度パラメータηと形状パラメータmとが、精度良く制御される。
保護剤に占める脂肪酸金属塩の量としては、全構成物に対して、2〜50体積%であることが好ましい。
・個数平均粒子径D1が0.1≦D1≦2.0[μm]の微粒子
かかる微粒子の使用は、保護剤42Yにより形成された保護層が、電気的ストレス等の影響で劣化した場合に、劣化成分が適度に除去され、新たな保護層の形成を促進するために好適であり、特に、微粒子の個数平均粒子径D1が0.1≦D1≦2.0[μm]を満たすことにより、感光体ドラム20Y表面に擦過傷をつけることなく、劣化した保護層成分のみが除去される。
かかる微粒子としては、個数平均粒子径D1をかかる規定の範囲とする限り、有機微粒子、無機微粒子、複合微粒子のいずれも制限なく、目的に応じて適宜選択することができる。例としては、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、クレイ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子や、その表面疎水化処理微粒子、ポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリスチレン微粒子、シリコーン樹脂微粒子、α−オレフィン−ノルボルネン共重合樹脂微粒子などの有機微粒子が挙げられる。
・その他の配合物
この他に、保護剤と感光体ドラム20Y表面との親和性を高め、保護剤層形成の補助をする配合物として、界面活性剤のような両親媒性の有機化合物を、添加物として併用しても良い。
両親媒性の有機化合物は、主材料の持つ表面特性を大きく変化させることがあるため、その添加量は、像担持体用保護剤の総重量に対して、0.01〜3重量%程度であることが好ましく、0.05〜2重量%程度であることがより好ましい。
保護剤42Yを、一定の形状、例えば角柱状や円柱状に成型するためには、粉末成型方法のひとつである、乾式成形法を用いる。これにより、保護剤42Yは、粉末状の材料を加圧成型して形成された粉末圧密体となっている。
乾式成型法の代表的な例として、一軸加圧成形法があり、この成形法は、概ね以下の手順によって行われる。
1.予め、それぞれの比重を計測した各種の保護剤の原材料の粉体を、所望の割合で十分に混合して、所望の充填率となる重量を計量する。
2.所定形状の型枠中に、計量した保護剤原材料粉末を投入する。
3.押し型により投入した粉末を加圧し、特定の空隙率を持つ粉末圧密体を作成するとともにこの粉末圧密体を型枠から外し、保護剤の多孔質成形体である保護剤42Yを得る。
4.その後、切削加工などにより、形状を整えて保護剤42Yとしてもよい。
型枠としては、熱伝導性の良さ、寸法精度の良さから鋼材、ステンレス、アルミニウム等の金属製型枠が好ましい。また、型枠内壁面には、離型性を良くするために、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの離型剤をコーティングしても良い。
以上のような保護剤42Yは、比較的硬質の原材料を用いた場合にでも、多孔質構造になっているため、脆性で欠け落ち易い構造となっており、ブラシローラ47Yで容易に掻き取られ、速やかに感光体ドラム20Y表面へ供給される。そして、かかる保護剤42Yを用いる保護層形成装置40Yにより、感光体ドラム20Y表面には、適度な被膜強度を持つ保護層が速やかに形成される。
画像形成装置100は、かかる保護層形成装置40Yを有しているので、感光体ドラム20Yを極めて長期間交換することなく使用し続けることができる。特に、感光体ドラム20Yが最表面層に熱硬化性樹脂を含む場合には、電気的ストレスによる感光体ドラム20Yの劣化を保護剤42Yで防止することにより、感光体ドラム20Yの機械的ストレスに対する耐久性を長期間に亘って持続的に発現させることが可能となる。これにより、感光体ドラム20Yは実質無交換で使用できるレベルまで耐久性を引き上げることが可能となる。
また、感光体ドラム20Y表面に接触又は近接して配設された帯電装置90Yでは、放電領域が感光体ドラム20Yのごく近傍に存在するため電気的ストレスが大きくなりがちであるが、画像形成装置100であれば、感光体ドラム20Yを電気的ストレスに曝すことなく使用できる。
保護剤42Yに含まれる金属成分は十分に抑制されているため、接触又は近接して配設された帯電装置90Yを、金属酸化物等で汚染することなく、耐久性が向上する。
また、感光体ドラム20Yの表面は形成された保護層の効果により、表面状態の変化が極めて小さくされているため、クリーニングの良否が感光体ドラム20Yの状態変化に対して敏感に変動してしまうような、平均円形度が大きなトナーや平均粒径が小さなトナーであっても、長期間に亘って安定したクリーニングが行われる。
プロセスカートリッジ68Yは、かかる保護層形成装置40Yを有しているので、その交換間隔を極めて長く設定することが可能となるため、ランニングコストが低減され、廃棄物量も大幅に削減される。特に、保護層形成装置40Yが最表面層に熱硬化性樹脂を含む場合には、電気的ストレスによる保護層形成装置40Yの劣化を保護剤42Yで防止することにより、保護層形成装置40Yの機械的ストレスに対する耐久性を長期間に渉り持続的に発現させることが可能となる。
保護剤42Yに含まれる金属成分は十分に抑制されているため、接触又は近接して配設された帯電装置90Yを、金属酸化物等で汚染することなく、帯電装置90Yの耐久性も向上する。このため、保護層形成装置40Yや帯電装置90Y等のプロセスカートリッジ68Yの構成部品の再使用も容易となり、更なる廃棄物量の削減も可能となる。
感光体ドラム20Yの構成について詳細に述べる。なお、画像形成ユニット60M、60C、60BKに備えられた感光体ドラム20M、20C、20BKについても同様の構成であるので、感光体ドラム20M、20C、20BKの説明は省略する。
感光体ドラム20Yは、導電性支持体の上に感光層を設けた構成となっている。
感光層の構成は電荷発生材と電荷輸送材を混在させた単層型、あるいは電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、あるいは電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。
感光体ドラム20Yの機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層の上に最表面層を設けることもできる。感光層と導電性支持体の間には下引き層が設けられていてもよい。また各層には必要により可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
導電性支持体としては、体積抵抗10^10Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
導電性支持体のドラム形状は、直径が20〜150mm、好ましくは、24〜100mm、さらに好ましくは28〜70mmである。直径が20mm未満では、感光体ドラム20Y周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に難しく、直径が150mmを超えると画像形成装置100が大きくなってしまい好ましくない。
特に、本形態の画像形成装置100のように画像形成装置がタンデム型の場合には、複数の感光体ドラムを搭載する必要があるため、直径は70mm以下、好ましくは60mm以下であることが好適である。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
下引層は一層であっても、複数の層で構成してもよく、樹脂、あるいは白色顔料と樹脂を主成分としたもの、及び導電性基体表面を化学的あるいは電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が例示できるが、白色顔料と樹脂とを主成分とするものが好ましい。白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、中でも導電性基体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンを含有させることが最も好ましい。
下引層に用いる樹脂としてはポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂、アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂、これらの中の一種あるいは複数種の混合物を例示することができる。
下引層の厚みは、目的に応じて適宜選択されるものであり、0.1〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料を使用することができ、電荷発生物質は一種あるいは複数種混合して使用することができる。
電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等の一種あるいは複数種を混合して使用することができる。
感光層を形成するのに使用する結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができ、適当な結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられ、これらのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
酸化防止剤としては、例えば以下のものが使用される。
・フェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
・パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
・ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
・有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
・有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%が好ましい。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
感光層中にレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
最表面層は前述のように、感光体ドラム20Yの機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため設けられる。最表面層としては、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが例示できる。最表面層に用いる樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れであっても良いが、熱硬化性樹脂は機械的強度が高く、クリーニングブレード78Yとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高いため特に好ましい。最表面層は薄い厚みであれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない最表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、最表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させ、また、保護層に用いる高分子に電荷輸送能力を有するものを用いることが好ましい。
感光層と最表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニングブレード78Yとの摩擦により最表面層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうことから、最表面層を設ける場合には、最表面層は十分な膜厚とすることが重要であり、0.1〜12μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは2〜8μmとすることが好ましい。最表面層の膜厚が0.1μm未満では、薄すぎてクリーニングブレード78Yとの摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうため好ましくない。表面層の膜厚が12μmを超えると、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうため好ましくない。
最表面層に用いる高分子としては、画像形成時の書き込み光に対して透明で、絶縁性、機械的強度、接着性に優れた物が望ましく、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの高分子は熱可塑性樹脂であっても良いが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることで、最表面層の機械的強度は増大し、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
前述のように、最表面層は電荷輸送能力を有していることが好ましく、最表面層に電荷輸送能力を持たせるためには、最表面層に用いる高分子と前述の電荷輸送物質とを混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する高分子を最表面層に用いる方法が考えられ、後者の方法が、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができ好ましい。
電荷輸送層能力を有する高分子としては、高分子中に電荷輸送能力を有する基として次の構造式(1)で表される基を有するものが好適に挙げられる。
構造式(1)において、Ar1は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わす。また、Ar2、Ar3は置換基を有していてもよいアリール基を表わし、互いに同一であっても異なっていてもよい。
この電荷輸送能力を有する基は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の機械的強度の高い高分子の側鎖に付加することが好ましく、モノマーの製造が容易で、塗工性、硬化性にも優れるアクリル樹脂を用いることが好ましい。
電荷輸送能力を有するアクリル樹脂は、構造式(1)の基を有する不飽和カルボン酸を重合させることにより機械的強度が高く、透明性にも優れ、電荷輸送能力も高い最表面層を形成することができ、単官能の構造式(1)の基を有する不飽和カルボン酸に多官能の不飽和カルボン酸、好ましくは3官能以上の不飽和カルボン酸を混合することで、アクリル樹脂は架橋構造を形成し、熱硬化性高分子となり、最表面層の機械的強度は極めて高いものとなる。
多官能の不飽和カルボン酸に、構造式(1)の基を付加しても良いが、モノマーの製造コストが高くなってしまうため、多官能の不飽和カルボン酸には、構造式(1)の基を付加せず、光硬化性多官能モノマーを用いることが好ましい。
構造式(1)で表される基を有する単官能不飽和カルボン酸をしては、次の構造式(2)、又は構造式(3)を例示することができる。
構造式(2)、(3)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、−COOR7(ただし、R7は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)、ハロゲン化カルボニル基、CONR8R9(ただし、R8及びR9は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表す。
構造式(2)、(3)中、Ar1、Ar2は置換基を有していてもよいアリーレン基を表わし、互いに同一であっても異なっていてもよい。
構造式(2)、(3)中、Ar3、Ar4は置換基を有していてもよいアリール基を表わし、互いに同一であっても異なっていてもよい。
構造式(2)、(3)中、Xは単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
構造式(2)、(3)中、Zは置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。
m、nは0〜3の整数を表わす。
構造式(2)、(3)中、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などにより置換されていてもよい。これらR1の置換基のうち、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
構造式(2)、(3)中、Ar3及びAr4のアリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、又は複素環基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えばペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
非縮合環式炭化水素基としては、例えばベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基;ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基;9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基などが挙げられる。
複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
多官能の不飽和カルボン酸の割合は最表面層全体の、5〜75重量%、好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは、20〜60重量%である。多官能不飽和カルボン酸の割合が5重量%未満では、表面層の機械的強度が不十分であり、75%を超えると、最表面層に強い力が加わったときにクラックが発生しやすく、感度劣化も生じやすいため好ましくない。
最表面層にアクリル樹脂を用いる場合には、上記不飽和カルボン酸を感光体に塗工後、電子線照射あるいは、紫外線等の活性光線を照射してラジカル重合を生じさせ、最表面層を形成することができる。活性光線によるラジカル重合を行う場合には、不飽和カルボン酸に光重合開始剤を溶解したものを用いる。光重合開始剤は通常、光硬化性塗料に用いられる材料を用いることができる。
最表面層中には最表面層の機械的強度を高めるために金属微粒子、金属酸化物微粒子、その他の微粒子を分散させることが好ましい。金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他の微粒子としては、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂に無機材料を分散したものなどが挙げられる。
画像形成装置100において現像に用いるトナーについて詳細に述べる。
トナーの平均円形度SRAは0.93≦SRA≦1.00を満たしている。
次の式(3)より得られた円形度SRの平均値が平均円形度SRAである。
円形度SR=粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長 式(3)
このように、円形度SRは、トナー粒子の投影面積と同じ面積の円の周囲長を同トナー粒子の投影像の周囲長で除した値であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度SRは小さな値となる。
平均円形度SRAはトナー粒子の凹凸の度合いの指標である。
平均円形度SRAが0.93≦SRA≦1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。
平均円形度SRAが1.00に近いほどトナー粒子に角がないため、現像装置80Y等の現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しにくい。
ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子が少ないと、転写で転写媒体に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。
トナー粒子が角張っていないと、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり、磨耗させたりしにくい。
平均円形度SRAは0.95≦SRA≦0.99の範囲であることがより好ましい。
円形度SRの測定方法について説明する。
円形度SRは、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定することができる。
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
トナーの質量平均粒径D4は3〜10μmが好ましく4〜8μmがさらに好ましい。
この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。
質量平均粒径D4が3μm未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすい。
質量平均粒径D4が10μmを超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい。
トナーは、質量平均粒径D4と個数平均粒径D1との比、言い換えると質量平均粒径D4を個数平均粒径D1で除した値D4/D1が1.00≦D4/D1≦1.40を満たしている。D4/D1の値が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味する。
1.00≦D4/D1≦1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。
トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。
トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密に整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
値D4/D1は1.00≦D4/D1≦1.30を満たすことがより好ましい。
トナー粒子の質量平均粒径D4、粒度分布の測定方法について説明する。
かかる測定方法としては、たとえばコールターカウンター法が挙げられる。コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。以下に測定方法について述べる。
まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加える。電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2〜20mg加える。
試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの質量平均粒径D4、個数平均粒径D1を求める。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上乃至40.30μm未満の粒子を対象とする。
このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させることにより作製することができる。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットが抑制されるため、定着装置6の汚れとなりそれが画像上に表れるのが抑えられる。
トナー作成に使用できる変性ポリエステル系樹脂からなるプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、該プレポリマーと伸長または架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルを更にポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)、3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独又は(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。
ジオール(1−1)としては、例えばアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、これと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用が特に好ましい。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)及び3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、これらの中でも、(2−1)単独、及び(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、例えばアルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が特に好ましい。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]は、2/1〜1/1が好ましく、1.5/1〜1/1がより好ましく、1.3/1〜1.02/1が更に好ましい。
ポリイソシアネート(3)としては、例えば脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]は、5/1〜1/1が好ましく、4/1〜1.2/1がより好ましく、2.5/1〜1.5/1が更に好ましい。[NCO]/[OH]が5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、[NCO]のモル比が1未満であると、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。含有量が0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、平均1個以上が好ましく、平均1.5〜3個がより好ましく、平均1.8〜2.5個が更に好ましい。1分子当たり1個未満であると、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]は、1/2〜2/1が好ましく、1.5/1〜1/1.5がより好ましく、1.2/1〜1/1.2が更に好ましい。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満であると、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が更に好ましい。ウレア結合のモル比が10%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
これらの反応により、トナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作製できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の質量平均分子量は、1万以上が好ましく、2万〜1000万がより好ましく、3万〜100万が更に好ましい。質量平均分子量が1万未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、質量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、20,000以下が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が更に好ましい。平均分子量が20,000を超えると、低温定着性及びフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が悪化することがある。
トナーには、かかるウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上するので、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の質量比は、5/95〜80/20が好ましく、5/95〜30/70がより好ましく、5/95〜25/75が更に好ましく、7/93〜20/80が特に好ましい。(i)の質量比が5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。
(ii)のピーク分子量は、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が更に好ましい。ピーク分子量が1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、10,000を超えると低温定着性が悪化することがある。(ii)の水酸基価は5以上が好ましく、10〜120がより好ましく、20〜80が更に好ましい。水酸基価が5未満であると、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。(ii)の酸価は1〜30が好ましく、5〜20がより好ましい。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜70℃が好ましく、55〜65℃がより好ましい。ガラス転移温度が50℃未満であると、トナーの高温保管時のブロッキングが悪化することがあり、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明に用いるトナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10,000dyne/cm2となる温度(TG’)が、100℃以上が好ましく、110〜200℃がより好ましい。温度(TG’)が100℃未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が、180℃以下が好ましく、90〜160℃がより好ましい。温度(Tη)が、180℃を超えると、低温定着性が悪化する。即ち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。なお、差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましく、20〜80℃が更に好ましい。
結着樹脂は、以下の方法などで製造することができる。
まず、ポリオール(1)と、ポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで、40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。更に(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。使用可能な溶剤としては、例えば芳香族溶剤(トルエン、キシレン等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エステル類(酢酸エチル等);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。なお、ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを前記(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
本発明に用いるトナーは、以下の方法で製造することができる。ただしこれに限定されることはない。
かかるトナーは、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成してもよいし、予め製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いてもよい。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下、トナー原料と称することもある)、着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、予めトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、及び帯電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)などが挙げられる。
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、50〜2000質量部が好ましく、100〜1000質量部がより好ましい。使用量が50質量部未満であると、トナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2000質量部を超えると、経済的でない。
また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするためには高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、1000〜30000rpmが好ましく、5000〜20000rpmがより好ましい。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分間である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させてもよいし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしてもよい。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
かかる反応においては、必要に応じて、分散剤を用いることが好ましい。
分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。該フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子社製);フロラードFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。
難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。
酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。
分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
分散液の調製においては、伸長反応ないし架橋反応の触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート等が挙げられる。
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いた方が粒度分布がシャープになる点で好ましい。溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。
プレポリマー(A)100質量部に対する溶剤の使用量は、0〜300質量部が好ましく、0〜100質量部がより好ましく、25〜70質量部が更に好ましい。溶剤を使用した場合は、伸長及び/又は架橋反応後、常圧又は減圧下にて加温し除去する。
伸長及び/又は架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。反応温度は0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。さらに必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。また、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発させて除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよいが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、又は粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際、不要の微粒子又は粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、(1)高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、(2)高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
また、トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
さらに必要に応じて、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、例えばフェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類;鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独又は混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用することもできる。
トナー中の着色剤の個数平均粒径は0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。個数平均粒径が0.5μmを超えると、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。一方、個数平均粒径が0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって、個数平均粒径が0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方、個数平均粒径が0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。更に、0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こすことがある。個数平均粒径が0.7μmより大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下が好ましく、5個数%以下がより好ましい。
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行われ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得ることができる。
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤、水が、着色剤の分散性の面から好ましい。これらの中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から特に好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、該粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層よくなる。
トナー中には、結着樹脂及び着色剤とともに離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックス等);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが特に好ましい。
カルボニル基含有ワックスとしては、例えばポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミド等);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミド等);ジアルキルケトン(ジステアリルケトン等)などが挙げられる。これらの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。
離型剤の融点は、40〜160℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、60〜90℃が更に好ましい。融点が40℃未満であると、耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすくなることがある。
離型剤の溶融粘度は、融点より20℃高い温度で、5〜1000cpsが好ましく、10〜100cpsがより好ましい。溶融粘度が1000cpsを超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が乏しくなることがある。
離型剤のトナー中における含有量は、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有させてもよい。帯電制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色又は白色に近い材料が好ましい。
帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
帯電制御剤としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(いずれも、日本カ一リット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
帯電制御剤の添加量は、バインダー樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法などによって異なり、一義的に規定できるものではないが、バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。添加量が10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、有機溶剤に直接溶解し、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後、固定化させてもよい。
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
樹脂微粒子は、水性分散体を形成し得る樹脂であればいかなる樹脂も使用することができ、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、又はそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合又は共重合したポリマーが用いられ、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子が好適である。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また、無機微粒子のBET法による比表面積は20〜500m2/gが好ましい。無機微粒子のトナーにおける添加量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.01〜2.0質量%がより好ましい。
その他の高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
また、トナーには流動化剤を添加することもできる。流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。流動化剤としては、例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
また、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKや転写ベルト11に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合などによって製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。前記ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好ましい。
このようなトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。
また、画像形成装置100は、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成の重合法トナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、この場合にも、装置寿命を大幅に延ばすことができる。このような粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
粉砕法トナーに使用される結着樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体又はその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が、電気特性、コスト面等から好ましく、更には、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が特に好ましい。
粉砕法トナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作製すればよく、また、必要に応じて前記外添成分を、適宜添加し混合すればよい。
トナーがかかる構成であることにより、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKが長期にわたって良好な状態に保たれることと併せて、画像形成装置100では、極めて高画質な画像が長期にわたって安定に形成される。このことはプロセスカートリッジ68Y、68M、68C、68BKにおいても同様である。
〔実施例〕
以下、実施例を用い、各表を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各表において、「実施例」とあるのは本発明を適用した例であり、「比較例」とあるのは、それ以外の例である。また実施例1〜16は、本形態における保護剤42Y等の成型体である保護剤に対応する保護剤の構成例であり、比較例1〜4は成型体である保護剤の他の構成例である。また実施例17〜32、比較例5〜8はぞれぞれ、実施例1〜16、比較例1〜4の保護剤を組み込んだ画像形成装置の構成例であり、実施例33〜36は実施例17と比べて画像形成装置の構成を一部変化させた構成例である。
(実施例1)
この保護剤1の作製にあたっては、表1に示す保護剤処方の組成物1、組成物2の粉体を、同表中の混合比に従って混合した。なお、同表の体積比並びに表2の原材料の真比重より、保護剤1に用いる組成物の重量比を算出した。これは他の実施例、比較例についても同様である。
混合は、ワンダーブレンダー(WB−1、販売元:大阪ケミカル株式会社)を用い、25000rpmの回転速度で、5秒間の混合を2度行った。
表1に示す保護剤処方の組成物3を加え、更に、25000rpmの回転速度で、5秒間の混合を1度行い、試料の混合物粉体とした。
予め測定した各原材料の比重、配合比および、所望の充填率から、型枠へ投入する混合物の量を算出した。本実施例1では、充填率の目安として90体積%(空隙率φの目安10体積%)となるように、表1記載の保護材処方の混合物の25.2gを計量し、保護剤の成形体を以下の手順で作成した。
内寸法が、深さ20mm×幅8mm×長さ350mmのアルミニウム製の金型に、計量した同表記載の保護剤処方の組成物を投入し、原材料が漏れないように蓋をした上で振動を加え、充填粉体を均等にした。次に、金型の蓋を外し、充填物の高さが8mmとなるように、押し型で加圧圧縮して、粉末圧密体を成形した。
この粉末圧密体を型から外し、8mm×8mm×310mmに整形した。
金属製支持体に両面テープで貼り付け、実施例1の保護剤を作製した。
(実施例2〜16及び比較例1〜4)
実施例2〜9、16、比較例1、3にそれぞれ対応する保護剤2〜9、16、17、19の作製にあたっては、実施例1の保護剤1の作製と比べ、保護剤の原材料種類、混合比、混合物投入量を、表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にし、保護剤2〜9、16、17、19を作製した。
実施例10に対応する保護剤10の作製にあたっては、実施例1の保護剤1の作製と比べ、組成物3の混合操作を行わず、保護剤の原材料種類、混合比、混合物投入量を、表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にし、保護剤10を作製した。
実施例11、12にそれぞれ対応する保護剤11、12の作製にあたっては、実施例1の保護剤1の作製と比べ、組成物1、2の混合操作を行わず、組成物1、2の何れかと組成物3との混合操作を行い、保護剤の原材料種類、混合比、混合物投入量を、表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にし、保護剤11、12を作製した。
実施例13、比較例2にそれぞれ対応する保護剤13、18の作製にあたっては、実施例1の保護剤1の作製と比べ、保護剤の原材料種類、混合比、混合物投入量を、表1に記載の通りとし、成形した粉末圧密体を金型ごと、ホットプレートを用いて95℃に昇温後、94〜96℃の温度範囲で20分間保持して加熱焼結した後、室温まで放冷した以外は、実施例1と同様にし、保護剤13、18を作製した。
実施例14、15にそれぞれ対応する保護剤14、15の作製にあたっては、実施例1の保護剤1の作製と比べ、組成物1、2の何れか1つのみを用い、混合操作を行わず、保護剤の原材料種類、投入量を、表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にし、像保護剤14、15を作製した。
比較例4に対応する保護剤20の作製にあたっては、実施例1の保護剤1の作製と比べ、空隙率を0となるようにし、実施例1と同じ、保護剤の原材料種類、混合比にて、溶融成形を行い、保護剤20を作成した。
<保護剤特性の測定>
得られた保護剤1〜20について、以下のようにして特性を測定した。
保護剤1〜20の粉末圧密体の曲げ強度を、以下の手順で測定した。
1.各保護剤1〜20を2本用い、それぞれを5本に切断して、約6cm×8mm×8mmのサンプル試片を10本用意する。
2.各サンプル試片について、ノギスを用い、厚みおよび幅を各3点ずつ測定し、平均を取ってサンプル試片の厚みd[mm]、幅w[mm]とする。
3.サンプル試片を、支点間距離L=40mmの3点曲げ試験機に設置し、サンプル試片が破断するまで、徐々に荷重をかけ、破断したときの荷重F[g]を記録する。
ただし、荷重が8000gを超えた場合には、打ち切りデータとして扱う。
計測した幅w、厚みd、破壊荷重Fおよび、支点間距離Lを、式(2)に代入し、各サンプル試片の破壊強度t[N/mm2]を算出する。
4.サンプル試片10本について、2、3を行い、得られたデータから、尺度パラメータη[N/mm2]、形状パラメータmを算出する。
(実施例17)
表面に熱硬化性樹脂として熱ラジカル反応型多官能アクリル樹脂を含む厚み5μmの最表面層を有する像担持体である感光体(上述の形態における感光体ドラム20Y等に相当)の周りに、転写工程に引き続き、カウンタータイプのクリーニングブレード(上述の形態におけるクリーニングブレード78Y等に相当)、ブラシ状の保護剤供給部材(上述の形態におけるブラシローラ47Y等に相当)、トレーリングブレードタイプの保護層形成部材(上述の形態における塗布ブレード43Y等に相当)を、感光体の回転方向(上述の形態における方向B1に相当)において上流からこの順で設け、保護剤1を用いた保護層形成装置(上述の形態における保護層形成装置40Y等に相当)を有するプロセスカートリッジ(上述の形態におけるプロセスカートリッジ68Y等に相当)を作製した。
得られたプロセスカートリッジを、該プロセスカートリッジが搭載可能なように改造した画像形成装置(株式会社リコー製、カラーMFP imagio Neo C600;上述の形態における画像形成装置100に相当)に搭載し、A4サイズ版、画像面積率6%原稿10万枚の連続画像出図試験を行った。試験前後における画像の異常の有無を、20℃、50%RHの常温常湿環境、10℃、25%RHの低温低湿環境、及び35℃、80%RHの高温高湿環境にて確認した。
トナーとしては、質量平均粒径D4=5.2μm、個数平均粒径D1=4.5μm、D4/D1=1.16、平均円形度=0.98の、重合法により作製したトナーを用いた。
(実施例18〜32)
実施例18〜32は、実施例17と比べ、保護剤1を保護剤2〜16に変えた以外は、実施例17と同様の条件にして評価を行ったものである。
(比較例5〜8)
比較例5〜8は、実施例17と比べ、保護剤1を保護剤17〜20に変えた以外は、実施例17と同様の条件にして評価を行ったものである。
(実施例33)
実施例33は、実施例17と比べ、プロセスカートリッジがブラシ状の保護剤供給部材とカウンタータイプのクリーニングブレードとの兼用となる保護層形成部材を備え、またこのプロセスカートリッジを搭載した画像形成装置が、株式会社リコー製、カラーMFP imagio Neo C455であること以外は、実施例17と同様の条件にして評価を行なったものである。
(実施例34)
実施例34は、実施例17と比べ、最表面層に熱硬化性樹脂としての熱ラジカル反応型多官能アクリル樹脂を含まない感光体を用いた以外は、実施例17と同様の条件にして評価を行なったものである。
(実施例35)
実施例35は、実施例17と比べ、トナーとして、質量平均粒径D4=6.0μm、個数平均粒径D1=5.3μm、D4/D1=1.13、平均円形度=0.90の重合法により作製したトナーを用いた以外は、実施例17と同様の条件にして評価を行なったものである。
(実施例36)
実施例36は、実施例17と比べ、トナーとして、質量平均粒径D4=5.4μm、個数平均粒径D1=3.5μm、D4/D1=1.54、平均円形度=0.98の重合法により作製したトナーを用いた以外は、実施例17と同様の条件にして評価を行ったものである。
実施例17〜36及び比較例5〜8について、クリーニング性能の良否に関係する画像の異常、具体的にはスジ状の画像欠陥、ハーフトーン画像ムラ、地肌部のカブリ、及び画像ボケについて、以下の基準により評価したところ、表3、表4に示すようになった。なお、表3は初期、表4は10万枚出力時における評価結果である。
<スジ状の画像欠陥の評価基準>:表3、表4における「スジ」の項目
◎:極めて優れている
○:実用上問題ないレベル
△:実用上許容できるレベル
×:使用不可
<ハーフトーン画像ムラの評価基準>:表3、表4における「画像ムラ」の項目
◎:極めて優れている
○:実用上問題ないレベル
△:実用上許容できるレベル
×:使用不可
<地肌カブリの画像欠陥の評価基準>:表3、表4における「地肌カブリ」の項目
◎:極めて優れている
○:実用上問題ないレベル
△:実用上許容できるレベル
×:使用不可
<画像ボケの画像欠陥の評価基準>:表3、表4における「画像ボケ」の項目
◎:極めて優れている
○:実用上問題ないレベル
△:実用上許容できるレベル
×:使用不可
また、実施例17〜36及び比較例5〜8について、10万枚出力時点での、各保護剤1〜20の削れ方の均一性を目視観察し、消費の均一性を、下記基準で評価したところ、表4に示すようになった。
<像担持体用保護剤の状態の評価基準>:表4における「像担持体用保護剤消費均一状態」の項目
◎:均等な削れ方
○:ごく一部に深い削れあり(1〜2箇所)
△:深い削れが点在(5箇所以下、実使用可能レベル)
×:削れが不均一
また、像担持体(上述の形態における感光体ドラム20Y等に相当)、クリーニングブレード(上述の形態におけるクリーニングブレード78Y等に相当)、及び帯電部材(上述の形態における帯電ローラ91Y等に相当)の劣化が画像へ及ぼす影響の大きさを評価するため、初期、及び10万枚出力時点でのそれぞれの部材の状態を観察し、初期における観察結果と10万枚出力時点での観察結果とを比較して、異常の有無を確認し、下記基準で評価したところ表5に示すようになった。
<各部材の状態の評価基準>
○:初期と同等レベル
△:やや変化している(実使用可能レベル)
×:劣化している
表5から分かるように、各部材とも、出図枚数の増加に伴う劣化は認められず、また、初期、10万枚出力後共に良好な画像品質が得られ、ヒートサイクル後の画像にも異常は認められなかった。これにより本発明の適用が画像形成装置の画像品質、寿命の両面で有用であることが判った。
なお、実施例17の画像形成装置について、連続画像出図試験に引き続いて、合計50万枚まで、通紙試験を行ったところ、画像への影響は全く見られず、像担持体、クリーニング部材、及び帯電部材の劣化もほとんど認められなかった。
また、像担持体用保護剤が通紙試験中に枯渇することは無かった。
表1〜表5から、尺度パラメータη、形状パラメータm、および充填率が本発明の規定範囲内にある実施例17〜36は、これらのうち尺度パラメータη等が規定範囲を外れた比較例5〜8に比べて、保護剤の消費が安定し、場所によるバラツキが抑制され、スジ、画像ムラ、地肌カブリ、画像ボケ等の画像品質が良好であり、また、出図枚数の増加による像担持体、クリーニング部材、及び帯電部材の劣化が極めて少ないことが認められる。
保護剤の消費が安定し、場所によるバラツキが抑制されることについて補足すると次のとおりである。
すなわち、たとえば、尺度パラメータη、形状パラメータmがともに規定範囲より小さい比較例5、7(表1参照)について解析すると、表4における「像担持体用保護剤消費均一状態」の項目から、形状パラメータmが規定範囲より小さいと供給量のばらつきが生じることが確認され、また、表5において像担持体、帯電部材の劣化が示されていることから、保護剤の供給過多が生じていると推測され、これにより、尺度パラメータηが規定範囲より小さいと保護剤の供給過多が生じることが確認された。
また、尺度パラメータηが規定範囲より大きい比較例6(表1参照)、尺度パラメータη、形状パラメータmがともに規定範囲より大きい比較例8(表1参照)について解析すると、表4における「像担持体用保護剤消費均一状態」の項目から、形状パラメータmが規定範囲より大きいと供給量のばらつきが問題となることはないことが確認され、一方、表5において像担持体、クリーニング部材の劣化が示されていることから、保護剤の供給不足が生じていると推測され、これにより、尺度パラメータηが規定範囲より大きいと保護剤の供給不足が生じることが確認された。なお像担持体、クリーニング部材等に対する保護剤の供給不足による保護不足は最終的に画像上の不具合となって現れるため問題である。
その他、組成物3の微粒子に関し、保護剤1を用いた実施例17と、粒子径が異なる微粒子を用いた、保護剤2を用いた実施例18、保護剤6を用いた実施例22〜保護剤9を用いた実施例25との対比、及び、微粒子を用いない保護剤10を用いた実施例26、保護剤14を用いた実施例30、保護剤15を用いた実施例31との対比より、使用する微粒子の粒子径が大きくなると、やや像担持体表面に擦過傷が生じ始め、逆に、使用する微粒子の粒子径が小さくなる或いは使用しなくなると、劣化保護層の除去と保護剤の供給を、長期にわたりバランスよく、行いづらくなると考えられる。
組成物2に関し、保護剤1を用いた実施例17、保護剤10を用いた実施例26(保護剤10)と比較して、脂肪酸金属塩を用いない、保護剤11を用いた実施例27、保護剤14を用いた実施例30おいては、原材料混合粉末の流動性が劣り、保護剤成形体の部分的な充填率のバラツキが生じがちとなるため、尺度パラメータηを一定範囲以下に保ちつつ、形状パラメータmを大きく制御しにくくなっていると考えられる。
組成物1に関し、保護剤1を用いた実施例17、保護剤10を用いた実施例26と比較して、飽和炭化水素ワックスを用いない、保護剤12を用いた実施例28、保護剤15を用いた実施例31においては、保護剤の劣化物の影響が大きく現れ、保護層としての効果が十分ではなくなることがあると考えられる。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、プロセスカートリッジは、少なくとも像担持体と、保護層形成装置とを一体に含んでいるとともに画像形成装置本体に着脱自在であればよく、プロセスカートリッジを構成する他の構成部品の選択は、像担持体、当該構成部品の寿命、コスト、プロセスカートリッジ化の構造上の容易性等を考慮して適宜行なわれるものである。
像担持体は、上述のものに限らず、その材質、形状、構造、大きさ等について種々のものを用いることができるが、潜像担持体はドラム状が好適であり、また、その材質としてはアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体等を適宜採用することが可能である。
像担持体は、潜像担持体でなく、上述の形態における転写ベルト11のような中間転写体であってもよく、保護剤は中間転写体に供給されるものであっても良い。この構成は、保護剤が潜像担持体に供給されるのと併用されても良い。
いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することができる。また、カラー画像形成装置でなく、モノクロ画像形成装置にも適用することができる。いずれのタイプの画像形成装置でも、中間転写体を用いず、各色のトナー像を転写紙等に直接転写しても良い。この場合の構成は、たとえば、図2を参照して、転写ベルト11が転写紙に相当することとなる。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。