JP5445935B2 - 画像形成装置及びこれに用いられる感光体の製造方法 - Google Patents

画像形成装置及びこれに用いられる感光体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電荷発生層とこれよりも表面側に位置する電荷輸送層とからなる感光層を円筒状の導電性支持体上に備えた感光体を用いて画像形成を行う、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置及びこれに用いられる感光体の製造方法に関するものである。
この種の画像形成装置は、一般に、光導電性物質等を含有する感光層を備える感光体上に静電荷による静電潜像を形成し、この静電潜像に対して帯電トナー(現像剤)を付着させて可視像を形成する。そして、この可視像を、最終的に、紙等の記録材に転移させた後、熱、圧力、溶剤気体等によって記録材に定着させ、出力画像を得る。このような画像形成装置では、可視像化のためのトナーを帯電させる方法により、トナーとキャリアの攪拌及び混合による摩擦帯電を用いる二成分現像方式を採用するものと、キャリアを用いずにトナーへの電荷付与を行う一成分現像方式を採用するものとに大別される。一成分現像方式は、更に、現像ローラによるトナーの保持に磁気力を使用するか否かにより、磁性一成分現像方式と非磁性一成分現像方式に分類される。一般に、高速性及び画像再現性が要求される複写機や複合機等の画像形成装置では、トナーの帯電安定性、立ち上がり性、画像品質の長期安定性等で有利な二成分現像方式が多く採用される。一方、省スペース性、低コスト化が要求される小型のプリンタやファクシミリ等の画像形成装置では、一成分現像方式が多く採用される。近年では、いずれの現像方式においても、出力画像のカラー化が進み、画像の高画質化や画像品質の安定化に対する要求が強くなっている。高画質化を図るため、トナーの平均粒径は小さくなり、その粒子形状は角張った部分がなくなり、より丸い形状になってきている。
感光体を用いた画像形成装置において高画質化を図る上では、感光体上に形成した静電潜像を現像ムラなく可視像化して、画像濃度ムラをなるべく軽減することが要求される。この要求に応えるためには、従来、以下に述べるように、感光体表面と現像剤担持体表面との最小距離である現像ギャップを一定に維持することが重要であると考えられてきた。
すなわち、現像ギャップに差異が存在すると、感光体表面上の静電潜像と現像剤担持体表面との間に形成される現像電界が、その現像ギャップの違いにより変化する。具体的には、現像ギャップが狭い箇所よりも現像ギャップが広い箇所の方が、現像電界が小さくなる。現像ギャップに違いが生じると、同じ静電潜像に対してのトナー付着量(現像量)が異なってくる現像ムラが発生し、最終的には可視像上において画像濃度ムラが生じる。よって、従来は、現像ムラを発生させる原因となる現像ギャップの変化が生じないように、現像ギャップを一定に維持することが重要であると考えられてきた。
しかしながら、現像ギャップを一定に維持しようとすると、以下の説明するように、部品コストや製造コストが高騰してしまう。そのため、低コスト化の要求が強い現状では、現像ギャップを一定に維持することが現実的には困難である。
すなわち、画像形成装置の小型化や低コスト化の要請から、感光体に使用される円筒状の導電性支持体は、径が小さくかつ肉厚が薄くなる傾向にあり、またその寸法精度もある程度幅(製造許容誤差)を持っている。そして、この導電性支持体をもつ感光体における感光体軸方向に対して直交する断面が真円とならない場合や、その断面が真円であってもその中心軸から回転軸がズレている場合(偏心している場合)には、回転軸を中心に回転したときの感光体の表面に振れが発生する。そのため、感光体回転軸と現像剤担持体の回転軸との軸間距離が一定である一般的な構成においては、感光体表面の振れに起因して、現像ギャップが感光体一回転周期で変動する。そのため、この現像ギャップの変動によって、感光体一回転周期をもつ周期的な現像ムラが発生する。
このような現像ムラを解消し得る画像形成装置としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。
これらの特許文献1,2に記載された画像形成装置では、現像剤担持体の回転軸が感光体の回転軸に対して変位可能に構成されている。そして、感光体表面の画像領域(静電潜像が形成され得る領域)の軸方向外側に存在する非画像領域に、現像剤担持体側に設けられた突き当て部材を当接させた状態で、感光体及び現像剤担持体が回転する。感光体表面の画像領域とこれに対向する現像剤担持体表面との間は、この突き当て部材によって離間状態が維持され、現像ギャップが形成される。この画像形成装置によれば、感光体の断面が真円でなくても、また感光体の回転軸が偏心していても、突き当て部材によって現像ギャップが一定に維持される。よって、上述したような感光体一回転周期に相当する周期的な現像ムラが発生しない。
しかしながら、これらの画像形成装置においては、突き当て部材の当接圧力により感光体が変形しないように、感光体の導電性支持体に十分な強度を与える必要がある。そのためには、感光体の導電性支持体の肉厚を厚くしたり、導電性支持体の材料強度を高める加工を施したりするなど、十分な強度を得るための方策が必要となる。よって、感光体の部品コストや製造コストが高騰してしまう。
一方、上記のような突き当て部材を用いる構成(現像剤担持体の回転軸が感光体の回転軸に対して変位可能な構成)ではなく、感光体回転軸と現像剤担持体の回転軸との軸間距離が一定である一般的な構成であれば、感光体に突き当て部材による当接圧力が加わることがない。よって、感光体の導電性支持体の肉厚を薄くでき、また必要以上の強度を得るための加工が不要となる。したがって、感光体の部品コストや製造コストの高騰を防ぎ、低コスト化を図ることができる。そして、この場合であっても、感光体の断面がほぼ真円となり、かつ、感光体の回転軸が偏心しないように、感光体を製造すれば、現像ギャップを概ね一定とすることができ、以下に説明するように、上述した現像ムラの発生を十分に抑制して画像濃度ムラを軽減することが可能である。
図8は、現像電界と現像量(トナー付着量)との関係を例示したグラフである。
このグラフに示すように、現像量は、現像電界が弱い領域では現像電界の強さが増すにつれて大きく増加する傾向にあるが、現像電界が強い領域では、静電潜像に付着したトナーが邪魔をして、トナーが静電潜像側へ移動しにくくなり、最終的にはトナーが静電潜像側へ移動できなくなって、現像量が飽和状態となる。また、現像量が飽和状態に近い状態であれば、記録材上に転移したトナー像はそのトナー層が十分に重なった状態となっているため、現像量に多少の違いがあっても、これを定着処理した後の画像濃度にほとんど違いが生じない。したがって、このように常に飽和現像が行われる状態で画像形成を行うことができれば、画像濃度ムラを十分に抑制できる。以下、このように画像濃度にほとんど違いが生じない範囲の現像量が得られる現像電界の下限値を、飽和現像電界値Aとし、この飽和現像電界値A[V/m]以上の現像電界で行われる現像を「飽和現像」という。
以上より、現像ギャップの変化により現像電界が変動する場合であっても、その現像電界が常に飽和現像電界値A以上の範囲内で変動するのであれば、常に飽和現像が行われる状態で画像形成を行うことができ、画像濃度ムラを十分に抑制できる。したがって、感光体回転軸と現像剤担持体の回転軸との軸間距離が一定である一般的な構成において、感光体の断面がほぼ真円となり、かつ、感光体の回転軸が偏心しないように、感光体を製造し、現像ギャップを概ね一定とすることができれば、現像電界が常に飽和現像電界値A以上の範囲内となるように現像ギャップを設定することで、飽和現像を利用して画像濃度ムラを十分に抑制することができる。
ところが、感光体の断面をほぼ真円とし、かつ、感光体の回転軸の偏心がほぼ無くなるようにする高い加工精度を実現するためには、感光体の部品コストや製造コストを高騰させることになる。そればかりか、製造過程での感光体の取り扱いに厳しい制限が課せられる結果、生産効率の低下を引き起こすことも懸念される。そのため、感光体回転軸と現像剤担持体の回転軸との軸間距離が一定である一般的な構成において、現像ギャップを一定に維持することは、低コスト化の要求が強い現状では現実的に困難である。
一方、低コスト化の要求に応えるべく、この一般的な構成において、感光体の断面が真円でなく、また感光体の回転軸が偏心しているような安価な構成を採用すると、感光体の表面に大きな振れが発生し、現像ギャップに大きな変動が生じる。このように現像ギャップが大きく変動する場合でも、現像バイアスを十分に高く設定するなどにより、現像電界が常に飽和現像電界値A以上の範囲内で変動するように調整することは可能である。したがって、このような安価な構成であっても、飽和現像を利用して画像濃度ムラを十分に抑制することは可能である。
しかしながら、このような安価な構成で現像電界が常に飽和現像電界値A以上の範囲内で変動するように調整する場合、現像電界を現像バイアスで調整するという従来の一般的な考え方では、現像バイアスを高く設定する必要がある。この場合、現像バイアスだけでなく、これに伴って帯電バイアスも高くする必要があり、画像形成装置全体の消費電力の増大を招き、近年の省エネルギーの要請に反する結果となる。
また、本発明者らは、研究の結果、次のような知見を得た。
一般に、感光体表面の振れ量は、感光体回転軸方向において均一でなくバラツキがある。すなわち、感光体には、感光体回転軸方向において振れ量が相対的に大きい部分と小さい部分とが存在する。このように振れ量が感光体回転軸方向で違いが出る理由は、主に、感光体の製造工程や、感光体製造時の感光体の取り扱いなどによるものである。
具体例を挙げて説明すると、感光体を製造する場合、感光層を構成する電荷発生層や電荷輸送層あるいはその他の層(保護層など)を、リングコート、浸漬コート(ディッピングコート)、スプレーコートなどのコーティング方法により形成することが多い。中でも生産性の高さから浸漬コートが広く用いられている。この浸漬コートにより層形成する場合、例えば、円筒状の導電性支持体の円筒内部に塗工液が入り込まないように、導電性支持体を立てた浸漬姿勢時に上端側となる導電性支持体の端部をエアチャックなどで閉じ、円筒内部の空気が上端側から漏れないようにした上で、浸漬姿勢の導電性支持体を所定の深さまで塗工液中に浸漬する。このような複数層の層形成工程において、導電性支持体は、浸漬姿勢のまま、その上端側のみで保持された状態で、複数回の塗工、乾燥工程を繰り返すことになる。そして、このような複数層の層形成工程時においては、通常、浸漬姿勢の導電性支持体をその上端側を保持したまま移動させるため、その上端側には移動開始時及び移動停止時の加減速により曲げ力が加わる。このため、浸漬姿勢の導電性支持体の上端側は、その下端側と比較して、真円度が悪化しやすい。特に、低コスト化あるいは軽量化のために導電性支持体の肉厚を薄くした場合や、装置の小型化のために感光体の口径を小さくした場合には、真円度の悪化が顕著となる。このように、浸漬コートで感光体の層形成を行う場合には、浸漬姿勢の導電性支持体の上端側がその下端側よりも真円度が悪化しやすいため、この上端側に対応する端部側の方が他端側よりも振れ量が大きくなる。
なお、この具体例とは別の理由で、例えば感光体回転軸方向の中央領域が端部領域よりも振れ量が大きくなる、あるいは、逆に小さくなるといったことも起こり得る。
本発明者らは、感光体の振れ量が回転軸方向で相違するという知見を得たため、上記のような安価な構成で現像電界が常に飽和現像電界値A以上の範囲内で変動するように調整する場合には、上述したような消費電力の増大という問題だけでなく、感光体の振れ量が小さい部分においてトナーを無駄に消費してしまうという問題が発生していることに気が付いた。
すなわち、感光体表面の振れによる現像ギャップの変化に起因した画像濃度ムラを、現像バイアスの調整により抑制しようとする従来の考え方では、振れ量が大きい部分でも現像電界が常に飽和現像電界値A以上となるように、高い現像バイアスを設定する必要がある。この場合、振れ量の小さい部分では、その現像電界が最低値であっても飽和現像電界値Aを大きく上回る過剰な現像電界が形成されることになる。そのため、振れ量の小さい部分では、常に必要以上のトナーが静電潜像に付着する事態が生じており、トナーの無駄な消費が定常的に発生しているのである。
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、消費電力の増大やトナーの無駄な消費を抑えつつ、感光体表面の振れに起因した周期的な現像ムラによる画像濃度ムラを低コストで軽減できる画像形成装置及びこれに用いられる感光体の製造方法を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、電荷発生層とこれよりも表面側に位置する電荷輸送層とからなる感光層を円筒状の導電性支持体上に備え、回転軸を中心に回転可能な感光体と、該感光体の表面を帯電手段により所定の帯電電位に一様に帯電させた後に露光し、これにより該感光体の感光層中の電荷発生層で電荷を発生させて当該露光部分の帯電電位を減衰させ、該露光部分を静電潜像として形成する静電潜像形成手段と、現像剤を表面に担持した現像剤担持体を該感光体表面に対して現像ギャップを介して対向させ、該現像ギャップを介して対向する感光体表面上の静電潜像部分と現像剤担持体表面部分との間に形成される現像電界により、該現像剤担持体上の現像剤を該感光体表面上の静電潜像に付着させて該静電潜像を現像する現像手段とを有し、該静電潜像を現像して得られる感光体表面上の可視像を最終的に記録材上に転移させることにより、該記録材に画像を形成する画像形成装置において、上記感光体における電荷輸送層の厚みを、上記回転軸を中心に回転したときの当該感光体の表面の振れ量が感光体回転軸方向で相対的に小さい部分よりも大きい部分の方が薄くなるようにしたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記感光体は、上記振れ量が回転軸方向一端側よりも他端側の方が大きくなっており、かつ、上記電荷輸送層の厚みが回転軸方向一端側よりも他端側の方が薄くなっていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、上記感光体が有する振れ量の範囲は、5[μm]以上30[μm]以下であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3の画像形成装置において、上記感光体は、上記感光層の厚みの最大値をDmax[μm]とし、該感光層の厚みの最小値をDmin[μm]としたとき、下記の式(1)〜(3)のすべてを満たすようにものであることを特徴とするものである。
3[μm]≦Dmax−Dmin≦10[μm]・・・(1)
20[μm]≦Dmin・・・(2)
Dmax≦50[μm]・・・(3)
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記静電潜像形成手段は、画像の濃淡を表現するために、単位面積当たりに静電潜像が占める面積を調整する面積階調方式を採用するものであることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記静電潜像形成手段は、上記感光体の表面を帯電手段により所定の帯電電位に一様に帯電させた後に露光し、その露光部分の帯電電位を減衰させることにより該露光部分を静電潜像とするものであり、上記帯電手段として、上記感光体の表面に所定の帯電バイアスが印加された帯電ローラを接触または近接させて帯電させるものであることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記感光体の表面上の不要な付着物をクリーニングブラシにより除去するクリーニング手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記感光体の表面を保護するための保護材を該感光体の表面に供給する保護材供給手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、電荷発生層とこれよりも表面側に位置する電荷輸送層とからなる感光層を円筒状の導電性支持体上に備え、回転軸を中心に回転可能な感光体を製造する感光体の製造方法において、上記導電性支持体上に上記電荷発生層を形成する電荷発生層形成工程と、該電荷発生層の上に上記電荷輸送層を浸漬法により形成する電荷輸送層形成工程とを有し、上記電荷輸送層形成工程では、上記回転軸を中心に回転したときの当該感光体の表面の振れ量が感光体回転軸方向で相対的に小さい部分よりも大きい部分の方が薄くなるように、上記電荷輸送層を形成することを特徴とするものである。
ここで、感光体の表面の「振れ量」とは、感光体の回転軸に直交する仮想面上において、感光体の回転軸中心と、その回転軸中心から引いた1つの仮想線が感光体の表面と交わる点との距離を、感光体全周について計測したときの最大値と最小値との差である。
本発明においては、感光体表面の振れ量が感光体回転軸方向で相対的に小さい部分よりも大きい部分の方が、感光体の電荷輸送層の厚みが薄くなっている。感光層における電荷輸送層の厚みが薄くなるほど、感光体の静電容量(導電性支持体と感光体表面との間の静電容量)は大きくなる。そして、感光体への露光量が同じである場合、その露光によって電荷発生層で発生する電荷量は同じであるが、その露光部分における感光体の表面電位(すなわち静電潜像の電位)は、その露光部分における感光体の静電容量によって変わってくる。具体的には、感光体の静電容量が大きいほど、静電潜像の電位の絶対値が小さくなる。よって、現像バイアスが一定であっても、感光体の静電容量が大きくすることで、静電潜像の電位と現像剤担持体表面電位との電位差を感光体回転軸方向において部分的に大きくとることが可能であり、現像電界を部分的に強くすることができる。本発明は、この知見を利用し、感光体表面の振れ量が小さい部分よりも大きい部分の電荷輸送層の方を薄くすることにより、振れ量が大きい部分の現像電界を振れ量が小さい部分よりも相対的に強くしようとするものである。
感光体回転軸方向で振れ量が小さい部分を基準に現像電界が常に飽和現像電界値A以上となるように現像バイアスを低めに設定した場合、電荷輸送層の厚みが感光体回転軸方向において均一である従来の感光体では、感光体の静電容量が感光体回転軸方向で均一であるため、振れ量が大きい部分において現像電界が飽和現像電界値Aを下回る事態が生じてしまう。
本発明によれば、このように現像バイアスを低めに設定する場合でも、振れ量が大きい部分における電荷輸送層の厚みを薄くし、この部分の感光体の静電容量を振れ量が小さい部分よりも大きくすることができる。これにより、振れ量が大きい部分の現像電界を振れ量が小さい部分よりも強くすることができるので、振れ量が小さい部分を基準に現像バイアスを低めに設定しても、振れ量が大きい部分で現像電界が飽和現像電界値Aを下回ってしまう事態を抑制することができる。その結果、感光体全域において画像濃度ムラを抑制することができる。
しかも、本発明によれば、上記のように振れ量が小さい部分を基準に現像バイアスを低めに設定することが可能となるので、振れ量が小さい部分で過剰な現像電界が形成されることがなくなるため、消費電力の増大やトナーの無駄な消費も抑制される。
以上、本発明によれば、振れ量が小さい部分を基準に現像バイアスを低めに設定しても振れ量が大きい部分における画像濃度ムラを抑制できるので、振れ量が大きい部分を基準に現像バイアスを高めに設定する場合に比べて消費電力の増大やトナーの無駄な消費を抑えつつ、感光体表面の振れに起因した周期的な現像ムラによる画像濃度ムラを低コストで軽減できるという優れた効果が得られる。
実施形態に係るプリンタの概略構成を示す模式図である。 同プリンタを構成する4つの作像ユニットのうちの1つについて概略構成を説明するための模式図である。 感光体と現像ローラとが対向した現像領域の周辺構成を示す説明図である。 実施例1における感光体の感光層厚みのプロファイルを表すグラフである。 実施例1における感光体の振れ量のプロファイルを表すグラフである。 実施例、比較例及び参考例における実験条件と評価結果を示す表である。 実施例1、6〜18及び比較例1〜4の2by2目視画像評価結果を感光層厚みと対応付けて布置した図である。 現像電界と現像量(トナー付着量)との関係を例示したグラフである。 感光体一周分に対応する現像ギャップ変動を例示したモデル図である。 感光体一周分に対応する現像電界強度変動を例示したモデル図である。 同感光体に対応する感光体一周分の現像量変動を例示したモデル図である。 同感光体に対応する感光体一周分の光学濃度(画像濃度)変動を例示したモデル図である。 図10の場合よりも感光層を薄くしたときの感光体一周分に対応する現像電界強度変動を例示したモデル図である。 同感光体に対応する感光体一周分の現像量変動を例示したモデル図である。 同感光体に対応する感光体一周分の光学濃度(画像濃度)変動を例示したモデル図である。
以下、本発明を、電子写真方式によって画像を形成する画像形成装置としてのプリンタに適用した一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明は、以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。特に、本プリンタ100による画像形成プロセスはネガ−ポジプロセスであるが、これに限られない。
図1は、本実施形態に係るプリンタ100の概略構成を示す模式図である。
図2は、本プリンタ100を構成する4つの作像ユニットのうちの1つについて概略構成を説明するための模式図である。
このプリンタ100は、ドラム状の感光体1Y,1C,1M,1Kの周囲に、それぞれ保護材供給手段としての保護材塗布装置2、静電潜像形成手段を構成する帯電装置3及び露光装置30、現像手段としての現像装置5、中間転写ベルト60、クリーニング装置4が配置されている。符号の後に付されるY、C、M、Kは、それぞれ、イエロー、シアン、マゼンタ、黒用の部材であることを示す色分け符号であるが、以下の説明では各色共通の説明については、色分け符号を省略する場合がある。
帯電装置3としては、帯電ローラ31が感光体表面に接触又は近接して配設された帯電装置であることが好ましく、放電ワイヤを用いた、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器と比して、帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。有機光導電層等の感光層を有する感光体は、除電ランプ(図示せず)等で除電され、帯電ローラ31を有する帯電装置3で一様にマイナスに帯電される。帯電装置3による感光体1の帯電が行われる際には、電圧印加機構(図示せず)から帯電ローラ31に、感光体1を所望の電位(地肌部電位)に帯電させるに適した、適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。帯電された各感光体1Y,1C,1M,1Kは、レーザー光学系等の露光装置30によって照射されるレーザー光Lで静電潜像が形成される。これにより、レーザー光Lが照射された感光体部分は、後述する電荷発生層で発生するプラス電荷によって帯電電位が落とされ、地肌部電位よりも0Vに近い電位(露光部電位)となる。レーザー光Lは半導体レーザーから発せられて、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により各感光体1Y,1C,1M,1Kの表面を、感光体の回転軸方向に走査する。
このようにして形成された静電潜像は、現像装置5に設けられた現像剤担持体である現像ローラ上に担持されたトナー又はトナー及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤によって現像され、可視像(トナー像)が形成される。本実施形態では、トナー及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤を利用する二成分現像方式を採用する。各プロセスカートリッジで使用されるトナーは、それぞれ別々の色のもので、イエロー、シアン、マゼンタ、黒である。現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像ローラに対し、感光体1の露光部電位(静電潜像の電位)と地肌部電位との中間に位置する適当な大きさの電圧又はこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。これにより、感光体1上の露光部(静電潜像部分)と現像ローラとの間ではマイナス帯電したトナーを露光部側へ移動させる現像電界が形成されるとともに、感光体1上の地肌部(非静電潜像部分)と現像ローラとの間ではトナーを現像ローラ側へ移動させる電界が形成される。その結果、感光体1上の露光部のみにトナーを付着させることができ、静電潜像をトナー像とすることができる。
各感光体1Y,1C,1M,1K上に形成された各色トナー像は、それぞれ転写装置6にて中間転写ベルト60上に互いが重なり合うように転写され、カラートナー像となる。このとき、転写装置6には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
転写後の感光体1の表面部分には、部分的に劣化した感光体用保護材や転写残トナー等が残存しているが、クリーニング部材41により清掃され、クリーニングされる。クリーニング部材41は、感光体回転方向に対して逆方向に摺擦するクリーニングブラシである。
感光体1に対向して配設された保護材塗布装置2は、感光体用保護材としての保護材21、保護材供給部材22、押圧力付与部材23、保護層形成部材24等から構成される。クリーニング装置4より表面の残留トナーや劣化した感光体用保護材が取り除かれた感光体表面へは、保護材供給部材22から、感光体用保護材21が供給され、保護層形成部材24により皮膜状の保護層が形成される。この際、感光体表面のうち電気的ストレスにより親水性が高くなっている部分に対して、感光体用保護材は、より良好な吸着性を持つため、一時的に大きな電気的ストレスが掛かり、感光体表面が部分的に劣化をし始めても、保護材の吸着により感光体自身の劣化の進行を防ぐことができる。
中間転写ベルト60上のカラートナー像は、二次転写部において給紙機構200から給送された紙などの記録材上に転写される。カラートナー像が転写された記録材は、その後、定着装置にて定着処理がなされた後、機外に排出される。
本プリンタとしては、現像装置が複数配置されたものを用い、複数の現像装置によって順次作製された色が異なる複数トナー像を順次転写材上へ転写した後、定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する装置であっても、あるいは同様に作製された複数のトナー像を順次一旦中間転写ベルト上に順次転写した後、これを一括して紙のような記録材に転写後に、同様に定着する装置であってもよい。
また、本実施形態では、感光体1と、保護材塗布装置2、帯電装置3、現像装置5、クリーニング装置4、除電装置などの感光体周囲に配置される装置の中から選択される1又は2以上の装置とを、プロセスカートリッジとして一体的にプリンタ本体から着脱自在に構成することができる。
〔感光体〕
次に、本実施形態で使用される感光体1について説明する。
感光体1としては、円筒状の導電性支持体上に、電荷発生層とこれよりも表面側に位置する電荷輸送層とからなる感光層を有し、回転軸を中心に回転可能な感光体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
導電性支持体としては、体積抵抗率が1.0×1010[Ω・cm]以下である導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、円筒状のプラスチック、強化ガラス等に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどを、押し出し、引き抜きなどの工法でドラム状に素管化後、切削、仕上げ、研摩などの表面処理した管などが挙げられる。これらは、ドラム状(円筒状)である。
導電性支持体の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20[mm]〜150[mm]が好ましく、24[mm]〜100[mm]がより好ましく、28[mm]〜70[mm]が特に好ましい。上記直径が20[mm]未満であると、感光体周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を配置することが物理的に困難となることがあり、150[mm]を超えると、本プリンタが大きくなってしまうことがある。特に、本プリンタはタンデム型であるため、複数の感光体を搭載する必要があり、直径は70[mm]以下が好ましく、60[mm]以下がより好ましい。
感光層としては、電荷発生物質を含有する電荷発生層の上に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する順層型であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のため、感光層上に最表面層を設けることもできる。
また、感光層と導電性支持体との間には下引き層が設けられていてもよい。
また、下引き層の電荷注入抑止機能をより確実に行うためのブロッキング層が設けられていてもよい。
また、各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。
感光層の厚みとしては、感光層厚みの最大値Dmax[μm]と、感光層厚みの最小値Dmin[μm]とが、下記の式(1)〜(3)のいずれも満たすことが好ましい。
3[μm] ≦ Dmax−Dmin ≦ 10[μm] ・・・(1)
20[μm] ≦ Dmin ・・・(2)
Dmax ≦ 50[μm] ・・・(3)
これらの関係を満たすと、長期間にわたり均等な可視像の形成を確実に安定して実現できるため、経時変動の小さい安定した画像形成機能を提供することができる。感光層厚みの差が3[μm]未満である場合には、感光層に使用する材料の誘電率によっては、十分に電界強度のばらつきを抑制することができない場合がある。一方、感光層厚みの差が10[μm]を超える場合には、露光部と非露光部(地肌部)との間の静電潜像コントラストを十分大きく取れないことがある。また、感光層の厚みが20[μm]未満の場合や50[μm]を超える場合であると、耐久性の低下や静電潜像解像度の低下を引き起こすことがある。
感光層の電荷発生層における電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料又は染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層の電荷輸送層における電荷輸送物質としては、例えば、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層における結着樹脂としては、電気絶縁性であり、それ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。
結着樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層における酸化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、などが挙げられる。
フェノール系化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類などが挙げられる。
パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
ハイドロキノン類としては、例えば、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
有機燐化合物類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
酸化防止剤の添加量としては、添加する層の総質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましい。
感光層における可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0質量部〜30質量部程度が適当である。
また、感光層中にはレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、又はオリゴマーが使用される。レベリング剤の使用量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0質量部〜1質量部が好ましい。
下引き層としては、特に制限はなく、一層であっても、複数の層で構成してもよく、例えば(1)樹脂を主成分としたもの、(2)白色顔料と樹脂を主成分としたもの、(3)導電性支持体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも、白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。
白色顔料としては、特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも、導電性支持体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンが特に好ましい。
樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
下引き層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1[μm]〜10[μm]が好ましく、1[μm]〜5[μm]がより好ましい。
最表面層は、感光体の機械的強度、耐磨耗性、耐ガス性、クリーニング性等の向上のために設けられる。
最表面層としては、特に制限はないが、例えば、感光層よりも機械的強度の高い高分子、高分子に無機フィラーを分散させたものが好ましい。
また、最表面層に用いる樹脂としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、機械的強度が高く、クリーニングブレードとの摩擦による磨耗を抑える能力が極めて高い熱硬化性樹脂が好ましい。
最表面層は薄い厚みであれば、電荷輸送能力を有していなくても支障はないが、電荷輸送能力を有しない最表面層を厚く形成すると、感光体の感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇を引き起こしやすいため、最表面層中に前述の電荷輸送物質を含有させたり、最表面層に用いる高分子として電荷輸送能力を有するものを用いたりすることが好ましい。
感光層と最表面層との機械的強度は一般に大きく異なるため、クリーニング部材との摩擦により最表面層が磨耗し、消失すると、すぐに感光層は磨耗していってしまうため、最表面層を設ける場合には、最表面層は十分な厚みとすることが重要である。
このような観点から、最表面層の厚みとしては、0.1[μm]〜12[μm]が好ましく、1[μm]〜10[μm]がより好ましく、2[μm]〜8[μm]が特に好ましい
厚みが0.1[μm]未満であると、薄すぎてクリーニング部材との摩擦により部分的に消失しやすくなり、消失した部分から感光層の磨耗が進んでしまうことがあり、12[μm]を超えると、感度低下、露光後電位上昇、残留電位上昇が生じやすく、特に電荷輸送能力を有する高分子を用いる場合には、電荷輸送能力を有する高分子のコストが高くなってしまうことがある。
最表面層に用いる樹脂としては、画像形成時の書き込み光に対して透明であり、絶縁性、機械的強度、接着性に優れたものが好ましく、例えばABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの高分子としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂であってもよいが、高分子の機械的強度を高めるため、多官能のアクリロイル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を持つ架橋剤により架橋し、熱硬化性樹脂とすることが好ましい。このようにすると最表面層の機械的強度は増大し、クリーニング部材との摩擦による磨耗を大幅に減少させることができる。
最表面層としては、電荷輸送能力を有していることが好ましい。
最表面層に電荷輸送能力を持たせる方法としては、特に制限はなく、最表面層に用いる高分子と電荷輸送物質を混合して用いる方法、電荷輸送能力を有する高分子を最表面層に用いる方法が挙げられるが、高感度で露光後電位上昇、残留電位上昇が少ない感光体を得ることができるため、後者の方法が好ましい。
電荷輸送層能力を有する高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、高分子中に電荷輸送能力を有する基として、下記構造式(i)で表される基を有するものが好ましい。
Figure 0005445935
ただし、構造式(i)中、Ar1は置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Ar2、及びAr3は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
このような電荷輸送能力を有する基としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の機械的強度の高い高分子の側鎖に付加することが好ましく、モノマーの製造が容易で、塗工性、硬化性にも優れるアクリル樹脂を用いることがより好ましい。
このような電荷輸送能力を有するアクリル樹脂としては、構造式(i)の基を有する不飽和カルボン酸を重合させることにより機械的強度が高く、透明性にも優れ、電荷輸送能力も高い表面層を形成することができる。
また、単官能の構造式(i)の基を有する不飽和カルボン酸に多官能の不飽和カルボン酸、好ましくは3官能以上の不飽和カルボン酸を混合することで、アクリル樹脂は架橋構造を形成し、熱硬化性高分子となり、表面層の機械的強度は極めて高いものとなる。
多官能の不飽和カルボン酸には、構造式(i)の基を付加してもよいが、モノマーの製造コストが高くなってしまうため、多官能の不飽和カルボン酸には、構造式(i)の基を付加せず、光硬化性多官能モノマーを用いることが好ましい。
構造式(i)で表される基を有する単官能不飽和カルボン酸としては、下記構造式(ii)、又は構造式(iii)を例示することができる。
Figure 0005445935
Figure 0005445935
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、−COOR(ただし、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)、ハロゲン化カルボニル基、CONR(ただし、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)を表す。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Ar1及びAr2は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Ar3及びAr4は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Xは、単結合、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、又は置換基を有していてもよいアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Zは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルキレンエーテル2価基、又は置換基を有していてもよいアルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、m及びnは、それぞれ0〜3の整数を表す。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Rの置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Rの置換基中、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
構造式(ii)及び構造式(iii)において、Rの置換基中、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などにより置換されていてもよい。
これらRの置換基のうち、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
Ar3及びAr4のアリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、又は複素環基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えばペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などが挙げられる。
非縮合環式炭化水素基としては、例えばベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基;ビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、ポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基;9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基などが挙げられる。
複素環基としては、例えばカルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、チアジアゾール等の1価基などが挙げられる。
多官能の不飽和カルボン酸の含有量としては、最表面層全体の5質量%〜75質量%が好ましく、10質量%〜70質量%がより好ましく、20質量%〜60質量%が特に好ましい。含有量が5質量%未満であると、最表面層の機械的強度が不十分であり、75質量%を超えると、最表面層に強い力が加わったときにクラックが発生しやすく、感度劣化も生じやすくなることがある。
最表面層にアクリル樹脂を用いる場合には、不飽和カルボン酸を感光体に塗工後、電子線照射あるいは、紫外線等の活性光線を照射してラジカル重合を生じさせ、表面層を形成することができる。活性光線によるラジカル重合を行う場合には、不飽和カルボン酸に光重合開始剤を溶解したものを用いる。光重合開始剤は通常、光硬化性塗料に用いられる材料を用いることができる。
最表面層中には最表面層の機械的強度を高めるために、金属微粒子、金属酸化物微粒子、その他の微粒子など含有することが好ましい。
金属酸化物としては、例えば酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。その他の微粒子としては、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂に無機材料を分散したものなどが挙げられる。
これらの組成物を用いて作製した感光体1の感光層の厚みは、導電性支持体の材質に応じて、電磁方式又は渦電流方式の膜厚計を用いて測定することができる。
〔振れ量の測定方法〕
次に、感光体1の表面の振れ量の測定方法について説明する。
なお、本実施形態では、後述する感光体製造工程を経るために、感光体は、回転軸方向一端側から他端側に向けて振れ量が大きくなってしまう。この感光体表面の振れ量の軸方向差は、概ね、以下のようにして知ることができる。
まず、フランジまで組み込み、回転軸が確定した感光体1を、その回転軸を中心にゆっくりと回転させつつ、感光体表面を接触式または非接触式の位置固定した変位計で、周方向にスキャンし、変位量のプロファイルを得る。このプロファイルから感光体一周分の表面変位データを取得して、その最大値から最小値を引き、これを振れ量として得る。このようにして得られる振れ量を、回転軸方向の画像領域(静電潜像が形成され得る領域)内でほぼ等間隔に複数点、好ましくは10点以上取得して、感光体1の振れ量の軸方向差及び振れ量の大きさを確認する。
〔静電潜像形成手段〕
次に、静電潜像形成手段について説明する。
静電潜像形成手段は、感光体1の表面を露光することによ該感光体の感光層中の電荷発生層で電荷を発生させ、その露光部分を静電潜像として形成するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本実施形態の静電潜像形成手段は、感光体1の表面を一様に帯電させる帯電装置3と、感光体1の表面を像様に露光する露光装置30とから構成されている。
帯電の方法としては、以下の帯電装置3を用いて感光体1の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電装置3としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電装置、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電装置、等が挙げられる。中でも、前述の理由から、導電性又は半導電性のロールを感光体1に対して、接触帯電及び近接帯電のいずれかを行う、帯電ローラを有する帯電装置が、好ましい。また、接触帯電及び近接帯電のいずれかの帯電ローラを有する帯電手段を用いる場合には、当接部分で大きな押圧力が加わらないように、軟質の接触帯電ローラの使用や、加圧部材を配設しない帯電手段構成をとる事がより好ましい。
また、帯電装置3としては、交流成分を有する電圧を印加する電圧印加手段を有するものが好ましい。
露光装置30としては、帯電装置3により帯電された感光体1の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系、等の各種露光装置が挙げられる。なお、感光体1の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
〔現像手段〕
現像手段は、感光体1に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像して可視像を形成する手段である。より詳しくは、現像剤を表面に担持した現像剤担持体としての現像ローラを感光体表面に対して現像ギャップを介して対向させ、その現像ギャップを介して対向する感光体表面上の静電潜像部分と現像ローラ表面部分との間に形成される現像電界により、現像ローラ上の現像剤(トナー)を感光体表面上の静電潜像に付着させて静電潜像を現像するものであれば、特に制限はない。
図3は、感光体1と現像ローラとが対向した現像領域の周辺構成を示す説明図である。
現像ローラは、現像剤を担持するとともに、感光体1との対向位置まで搬送する。感光体1と現像ローラとの間には隙間が形成されており、これが現像ギャップ11である。現像ギャップ11は、現像剤の汲み上げ量や、現像剤を現像ローラ上へ保持するための磁界の強さ、現像剤中のキャリアの磁化、現像ローラ回転速度等を考慮の上、略均等の間隙に調整して形成されるため、必ずしも特定できるものではないが、概ね、平均値として0.2〜0.4[mm]程度であることが好ましい。
上述のように現像ギャップ11は、略均等に調整されるため、感光体1の振れ量が小さい側から大きい側にかけて、現像ギャップ11の変化量も大きくなる。このため、均等な厚みの感光層を持つ感光体1では、現像ギャップの変化量に起因した現像電界の変動を吸収することができず、感光体1が一周する間の現像量の変動が画像濃度ムラとなって現れてしまい、画像品質を低下させる。本実施形態では、詳しくは後述するが、感光体1の振れ量が大きい部分の電荷輸送層を薄くすることにより、感光体1の振れ量が小さい部分と比較して、感光体1の露光部電位(静電潜像の電位)が0Vに近くなるため、一定の現像バイアスが印加された現像ローラの一定の表面電位と感光体1の露光部電位との間の電位差が広がり、その現像電界が強くなる。その結果、感光体1の振れにより現像ギャップ11が最大に広がった状態となった箇所においても、十分に大きな現像電界が得られ、飽和現像を実現できる。これにより、感光体1の振れにより現像ギャップ11が最大に広がった状態となった箇所において画像濃度が低下することがなくなるため、他の箇所との画像濃度の違いが出ず、画像濃度ムラが解消される。
現像ローラは、駆動手段(不図示)により図2中反時計回り方向に回転駆動される。この現像ローラは、キャリア粒子による磁気ブラシを形成するために、その内部に現像ローラ磁極固定軸56によって現像装置5に対して相対位置不変に配設された、磁界発生手段としての磁石(不図示)を有する。現像ローラの回転及び攪拌搬送機構の現像剤供給スクリュー52の回転により現像ローラ表面に現像剤が供給され、現像ローラの外周面との間に一定の隙間を保った規制部材54(ドクターブレード)により現像ローラ上の規定量の現像剤が保持されて、感光体1と現像ローラが対向した現像領域に搬送される。現像剤を保持するための現像ローラ50のスリーブ51の材質としては、アルミニウム等の非磁性金属を好ましく用いることができる。またその表面は、ブラスト処理などによる凹凸を有することが好ましい。
また、図3に示すように、感光体1は、胴部に感光層12を有する導電性支持体10を備え、回転軸14によりベアリング13を介して回転可能に軸支される。
現像ローラ50は、胴部にスリーブ51を有し、回転軸55によりベアリング13を介してスリーブ51が回転可能に支持され、他方、現像ローラ磁極固定軸56が軸支されている。
〔現像剤〕
現像剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、トナーとキャリアからなる二成分現像剤である。
トナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記の式(4)で表される円形度SRの平均値である平均円形度が0.93〜1.00のものが好ましく、0.95〜0.99がより好ましい。
この平均円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
円形度SR=(トナー粒子の投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(トナー粒子の投影像の周囲長) ・・・(4)
平均円形度が0.93〜1.00の範囲では、トナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士、トナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。また、トナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。また、ドットを形成するトナーの中に、角張ったトナー粒子がいないため、転写で記録材に圧接する際に、その圧がドットを形成するトナー全体に均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。また、トナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、感光体1の表面を傷つけたり、磨耗させたりしない。
円形度SRは、例えばフロー式粒子像分析装置(東亜医用電子社製、FPIA−1000)を用いて測定することができる。
まず、容器中の予め不純固形物を除去した水100[mL]〜150[mL]中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩)を0.1[mL]〜0.5[mL]加え、更に測定試料を0.1[g]〜0.5[g]程度加える。次いで、試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1分間〜3分間分散処理を行い、分散液濃度を3,000[個/μL]〜10,000[個/μL]として装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
トナーの質量平均粒径(D4)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3[μm]〜10[μm]が好ましく、4[μm]〜8[μm]がより好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して、十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることから、ドット再現性に優れる。質量平均粒径(D4)が3[μm]未満では、転写効率の低下、ブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすいことがあり、10[μm]を超えると、文字やラインの飛び散りを抑えることが難しいことがある。
また、トナーにおける質量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比(D4/D1)としては、1.00〜1.40が好ましく、1.00〜1.30がより好ましい。比(D4/D1)が1に近づくほど、そのトナーの粒度分布がシャープであることを意味し、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲では、トナー粒径による選択現像が起きないため、画質の安定性に優れる。また、トナーの粒度分布がシャープであることから、摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。また、トナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して、緻密にかつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
ここで、トナーの質量平均粒径(D4)、及び粒度分布の測定方法としては、例えば、コールターカウンター法が挙げられる。
コールターカウンター法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンターTA−IIやコールターマルチサイザーII(いずれもコールター社製)が挙げられる。
具体的には、次のように測定することができる。
まず、電解水溶液100[mL]〜150[mL]中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1[mL]〜5[mL]加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したもので、例えば、ISOTON−II(コールター社製)が使用できる。ここで、更に測定試料を2[mg]〜20[mg]加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間〜3分間分散処理を行い、測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子又はトナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナーの質量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)を求めることができる。
測定装置におけるチャンネルとしては、2.00[μm]〜2.52[μm]未満;2.52[μm]〜3.17[μm]未満;3.17[μm]〜4.00[μm]未満;4.00[μm]〜5.04[μm]未満;5.04[μm]〜6.35[μm]未満;6.35[μm]〜8.00[μm]未満;8.00[μm]〜10.08[μm]未満;10.08[μm]〜12.70[μm]未満;12.70[μm]〜16.00[μm]未満;16.00[μm]〜20.20[μm]未満;20.20[μm]〜25.40[μm]未満;25.40[μm]〜32.00[μm]未満;32.00[μm]〜40.30[μm]未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00[μm]以上乃至40.30[μm]未満の粒子を対象とする。
このような略球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマー、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/又は伸長反応させることにより作製することができる。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることで、ホットオフセットの少なくすることができ、定着装置の汚れとなって、それが画像上に表れるのを抑えることができる。
変性ポリエステル系樹脂からなるプレポリマーとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)が挙げられ、また、プレポリマーと伸長又は架橋する化合物としては、アミン類(B)が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルを更にポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらの中でも、アルコール性水酸基が特に好ましい。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)、3価以上のポリオール(1−2)が挙げられるが、ジオール(1−1)単独又はジオール(1−1)と少量の3価以上のポリオール(1−2)の混合物が好ましい。
ジオール(1−1)としては、例えば、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、これと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用が特に好ましい。
3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)及び3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、これらの中でも、(2−1)単独、及び(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、例えば、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)などが挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が特に好ましい。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率としては、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]について、2/1〜1/1が好ましく、1.5/1〜1/1がより好ましく、1.3/1〜1.02/1が特に好ましい。
ポリイソシアネート(3)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート(3)の比率としては、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]において、5/1〜1/1が好ましく、4/1〜1.2/1がより好ましく、2.5/1〜1.5/1が特に好ましい。[NCO]/[OH]が5を超えると、低温定着性が悪化することがあり、[NCO]のモル比が1未満であると、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量としては、0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜30質量%がより好ましく、2質量%〜20質量%が特に好ましい。含有量が0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になり、40質量%を超えると、低温定着性が悪化することがある。
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基としては、平均1個以上が好ましく、平均1.5個〜3個がより好ましく、平均1.8個〜2.5個が特に好ましい。1分子当たり1個未満であると、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)などが挙げられる。
3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。
伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、又はそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率としては、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]において、1/2〜2/1が好ましく、1.5/1〜1/1.5がより好ましく、1.2/1〜1/1.2が特に好ましい。[NCO]/[NHx]が2を超えたり、1/2未満であったりすると、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、100/0〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が特に好ましい。ウレア結合のモル比が10%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
これらの反応により、トナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作製できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の質量平均分子量は、1万以上が好ましく、2万〜1,000万がより好ましく、3万〜100万が特に好ましい。質量平均分子量が1万未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
また、ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、質量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、20,000以下が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が特に好ましい。数平均分子量が20,000を超えると、低温定着性及びフルカラー本プリンタに用いた場合の光沢性が悪化することがある。
ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上するので、単独使用より好ましい。
(ii)としては、(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。
また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。
(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。
従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の質量比は、5/95〜80/20が好ましく、5/95〜30/70がより好ましく、5/95〜25/75が更に好ましく、7/93〜20/80が特に好ましい。(i)の質量比が5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。
(ii)のピーク分子量としては、1,000〜30,000が好ましく、1,500〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000が特に好ましい。ピーク分子量が1,000未満であると、耐熱保存性が悪化することがあり、10,000を超えると低温定着性が悪化することがある。
(ii)の水酸基価としては、5以上が好ましく、10〜120がより好ましく、20〜80が特に好ましい。水酸基価が5未満であると、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。
(ii)の酸価としては1〜30が好ましく、5〜20がより好ましい。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、50[℃]〜70[℃]が好ましく、55[℃]〜65[℃]がより好ましい。ガラス転移温度が50[℃]未満であると、トナーの高温保管時のブロッキングが悪化することがあり、70[℃]を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20[Hz]において10,000[dyne/cm]となる温度(TG’)が、100[℃]以上が好ましく、110[℃]〜200[℃]がより好ましい。温度(TG’)が100[℃]未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
結着樹脂の粘性としては、測定周波数20[Hz]において1,000[poise]となる温度(Tη)が、180[℃]以下が好ましく、90[℃]〜160[℃]がより好ましい。温度(Tη)が、180[℃]を超えると、低温定着性が悪化する。即ち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、TG’はTηより高いことが好ましい。言い換えるとTG’とTηの差(TG’−Tη)は0[℃]以上が好ましく、10[℃]以上がより好ましく、20[℃]以上が特に好ましい。なお、差の上限は特に限定されない。また、耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgの差は0[℃]〜100[℃]が好ましく、10[℃]〜90[℃]がより好ましく、20[℃]〜80[℃]が特に好ましい。
結着樹脂は、以下の方法などで製造することができる。
まず、ポリオール(1)と、ポリカルボン酸(2)を、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイドなど公知のエステル化触媒の存在下、150[℃]〜280[℃]に加熱し、必要により減圧としながら生成する水を溜去して、水酸基を有するポリエステルを得る。次いで、40[℃]〜140[℃]にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)を得る。更に(A)にアミン類(B)を0[℃]〜140[℃]にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際及び(A)と(B)を反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。
反応において使用可能な溶剤としては、例えば、芳香族溶剤(トルエン、キシレン等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エステル類(酢酸エチル等);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)などのイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。
なお、ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様な方法で(ii)を製造し、これを(i)の反応完了後の溶液に溶解し、混合する。
また、トナーは、以下の方法で製造することができるが勿論これらに限定されることはない。
トナーは、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、(B)と反応させて形成してもよいし、予め製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いてもよい。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下、トナー原料と称することもある)、着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、予めトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、及び帯電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)などが挙げられる。
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量としては、50質量部〜2,000質量部が好ましく、100質量部〜1,000質量部がより好ましい。使用量が50質量部未満であると、トナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、経済的でない。
また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。
分散体の粒径を2[μm]〜20[μm]にするためには高速せん断式が好ましい。
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数としては、特に制限はないが、1,000[rpm]〜30,000[rpm]が好ましく、5,000[rpm]〜20,000[rpm]がより好ましい。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常、0.1分間〜5分間である。分散時の温度としては、通常、0[℃]〜150[℃]が好ましく、40[℃]〜98[℃]がより好ましい。高温な方が、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
プレポリマー(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させてもよいし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしてもよい。この場合製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
反応においては、必要に応じて、分散剤を用いることが好ましい。
分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸又はその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)又はその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸又はその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の中でも、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、などが挙げられる。カチオン界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフロンS−121(旭硝子社製);フロラードFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等が挙げられる。
難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト、等が挙げられる。
高分子系保護コロイドとしては、例えば、酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物又はこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子若しくはその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類、等が挙げられる。
酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
ビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。
ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
アミド化合物又はこれらのメチロール化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、又はこれらのメチロール化合物、などが挙げられる。クロライド類としては、例えば、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。
窒素原子若しくはその複素環を有するもの等ホモポリマー又は共重合体としては、例えば、ビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。
ポリオキシエチレン系としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。
セルロース類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。
分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗する方法、酵素により分解する方法等によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。
分散液の調製においては、伸長反応乃至架橋反応の触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、等が挙げられる。
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いた方が粒度分布がシャープになる点で好ましい。溶剤は揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。
プレポリマー(A)100質量部に対する溶剤の使用量は、0質量部〜300質量部が好ましく、0質量部〜100質量部がより好ましく、25質量部〜70質量部が特に好ましい。溶剤を使用した場合は、伸長及び/又は架橋反応後、常圧又は減圧下にて加温し除去する。
伸長及び/又は架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分間〜40時間が好ましく、2時間〜24時間がより好ましい。
反応温度としては0[℃]〜150[℃]が好ましく、40[℃]〜98[℃]がより好ましい。さらに必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。また、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発させて除去することも可能である。
乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。
分級操作は液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことができる。乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよいが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子、又は粗粒子は再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際、不要の微粒子又は粗粒子はウェットの状態でも構わない。
用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うのが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えたりすることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、(1)高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、(2)高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
また、トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。
さらに、必要に応じて、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、例えば、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類;鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいは、これらと他の金属との合金等の磁性成分を単独又は混合して、トナー粒子へ含有させればよい。また、これらの成分は、着色剤成分として使用することもできる。
また、トナー中の着色剤の個数平均粒径は0.5[μm]以下が好ましく、0.4[μm]以下がより好ましく、0.3[μm]以下が特に好ましい。個数平均粒径が0.5[μm]を超えると、顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。一方、個数平均粒径が0.1[μm]より小さい微小粒径の着色剤は、可視光の半波長より十分小さいため、光の反射、吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。
よって、個数平均粒径が0.1[μm]未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と、定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。
一方、個数平均粒径が0.5[μm]より大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり、散乱されたりして、OHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。
さらに、0.5[μm]より大きな粒径の着色剤が多く存在していると、トナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こすことがある。
個数平均粒径が0.7[μm]より大きな粒径の着色剤は、全着色剤の10個数%以下が好ましく、5個数%以下がより好ましい。
また、着色剤を結着樹脂の一部もしくは全部と共に、予め湿潤液を加えた上で混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤が十分に付着した状態となって、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行われ、着色剤の分散粒径が小さくなり、一層良好な透明性を得ることができる。
予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。
結着樹脂と着色剤の混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサー等のブレンダーにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機により、結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練して、サンプルを得る。
また、湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や、着色剤との塗れ性を考慮しながら、一般的なものを使用できるが、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤、水が、着色剤の分散性の面から好ましい。これらの中でも、水の使用は、環境への配慮及び、後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から特に好ましい。
この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層よくなる。
トナー中には、結着樹脂及び着色剤とともに離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックス等);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが特に好ましい。
カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミド等);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミド等);ジアルキルケトン(ジステアリルケトン等)などが挙げられる。これらの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。
離型剤の融点としては、40[℃]〜160[℃]が好ましく、50[℃]〜120[℃]がより好ましく、60[℃]〜90[℃]が特に好ましい。融点が40[℃]未満であると、耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160[℃]を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすくなることがある。
離型剤の溶融粘度としては、融点より20[℃]高い温度で、5[cps]〜1,000[cps]が好ましく、10[cps]〜100[cps]がより好ましい。溶融粘度が1,000[cps]を超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が乏しくなることがある。
離型剤のトナー中における含有量としては、0質量%〜40質量%が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするために、トナー中に、必要に応じて帯電制御剤を含有させてもよい。帯電制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色又は白色に近い材料が好ましい。
帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
帯電制御剤としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(いずれも、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(いずれも、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(いずれも、ヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(いずれも、日本カ一リット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
帯電制御剤の添加量としては、バインダー樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法などによって異なり、一義的に規定できるものではないが、バインダー樹脂100質量部に対して0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.2質量部〜5質量部がより好ましい。添加量が10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、有機溶剤に直接溶解し、分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後、固定化させてもよい。
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させるに際して、主に分散安定化のための樹脂微粒子を添加してもよい。
樹脂微粒子としては、水性分散体を形成可能な樹脂であれば、特に制限はなく、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えば、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、又はそれらの併用が好ましい。
ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合又は共重合したポリマーが用いられ、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子が好ましい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
無機微粒子の一次粒子径としては、5[nm]〜2[μm]が好ましく、5[nm]〜500[nm]がより好ましい。また、無機微粒子のBET法による比表面積としては20[m/g]〜500[m/g]が好ましい。
無機微粒子のトナーにおける添加量としては、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜2.0質量%がより好ましい。
その他の高分子系微粒子としては、例えば、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
また、トナーには流動化剤を添加することもできる。
流動化剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
流動化剤としては、例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
また、感光体や中間転写ベルトに残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合などによって製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01[μm]〜1[μm]のものが好ましい。
このようなトナーを用いることにより、上述の如く、現像の安定性に優れる、高画質なトナー像を形成することができる。
また、本発明の本プリンタは、上述のような、高品質な画像を得るに適した構成の重合法トナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、この場合にも、装置寿命を大幅に延ばすことができる。このような粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常、電子写真用トナーとして使用されるものが、特に制限なく、適用可能である。
粉砕法トナーに使用される結着樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体又はその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が、電気特性、コスト面等から好ましく、さらには、良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が特に好ましい。
粉砕法トナーでは、これらの樹脂成分と共に、前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を、必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練して、これを冷却後、粉砕分級工程を経て、トナーを作製すればよく、また、必要に応じて外添成分を、適宜添加し混合すればよい。
現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよく、例えば、トナー乃至現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの、等が好適に挙げられる。
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、感光体1(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって感光体1(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて感光体1(感光体)の表面にトナーによる可視像が形成される。
〔クリーニング手段〕
クリーニング手段としては、感光体1の表面をクリーニングする手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、中でも、感光体1表面をクリーニングするためのクリーニングブラシを有することが好ましい。
一般に、感光体1のクリーニング方法としては、クリーニングブレードを用いた方法のほかに、感光体1上に残存するトナーと逆極性となるように電圧を印加したブラシを用いた、静電クリーニング方式が挙げられる。
クリーニング部材を用いたクリーニング手段では、一般的にクリーニング部材を感光体1の回転方向に対してトレーリング方向(カウンター方向)に当接し、感光体1上に残ったトナーを主とする残存成分を除去するが、このときクリーニング部材は感光体1に対して比較的強く当接するため、感光体1の導電性支持体の肉厚が薄くなると部分的に変形する恐れがある。
これに対して、クリーニングブラシを有するクリーニング手段によれば、感光体1に対しての負荷が比較的小さいため、感光体1の導電性支持体の肉厚が薄い場合には好ましい。
クリーニングブラシとしては、感光体1表面への機械的ストレスを抑制するためにはブラシ繊維は可撓性を有することが好ましい。可撓性のブラシ繊維の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル系樹脂又はポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂)などが挙げられる。
なお、撓みの程度を調整するため、例えばジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合してもよい。
ロール状のクリーニングブラシは、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金にスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたものなどが挙げられる。ブラシ繊維としては繊維径10[μm]〜500[μm]程度、ブラシの繊維の長さは1[mm]〜15[mm]、ブラシ密度は1平方インチ当たり1万本〜30万本(1平方メートル当たり1.5×107本〜4.5×108本)が好適である。
クリーニングブラシは、ブラシ繊維の均一性に伴うクリーニングの安定性の面から、ブラシ密度の高いものを使用することが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作製することが好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することが好適である。
また、ブラシ表面には必要に応じてブラシの表面形状や環境安定性等を安定化することを目的として、被覆層を設けてもよい。被覆層を構成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましい。被覆層成分としては、可撓性を保持し得る材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等による変性品);パーフルオロアルキルエーテル、ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、又はこれらの複合樹脂などが挙げられる。
〔保護材供給手段〕
保護材供給手段としては、感光体表面を保護するための保護材を供給する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、本実施形態では保護材塗布装置2を用いている。
保護材供給手段を有することによって、クリーニングによる感光体表面維持を確実に行うばかりでなく、帯電時の電気的ストレスによる感光体表面劣化を保護材により抑制することができる。
感光体1に対向して配設された保護材塗布装置2は、感光体用保護材21、保護材供給部材22、押圧力付与部材23、保護層形成部材24等から主に構成される。感光体用保護材21は、押圧力付与部材23からの押圧力により、例えばブラシ状の保護材供給部材22へ接する。保護材供給部材22は感光体1と線速差をもって回転して摺擦し、この際に、保護材供給部材表面に保持された感光体用保護材を感光体1表面に供給する。感光体1表面に供給された感光体用保護材は、物質種の選択によっては供給時に十分な保護層にならない場合があるため、より均一な保護層を形成するために、例えば感光体1回転方向に対してトレーリング方向に緩やかに当接したブレード状の部材を持つ保護層形成部材24により薄層化されて保護層となる。
保護層が形成された感光体1に対しては、例えば、図示しない高電圧電源により直流電圧もしくはこれに交流電圧を重畳させた電圧を印加した帯電ローラ31を、接触又は近接させて、微小空隙での放電による感光体1の帯電が行われる。この際、保護層の一部は電気的ストレスにより分解や酸化が生じ、また、保護層表面への気中放電生成物の付着が生じて、劣化物となる。劣化した感光体用保護材は、クリーニング装置により、感光体1に残存したトナー等の成分と共にクリーニング装置により除去される。このようなクリーニング装置としては、保護材塗布部材と兼用にしてもよいが、感光体1表面残存物を除去する機能と、保護層を形成する機能とは、適切な部材の摺擦状態が異なることがあるため、機能を分離し、図2に示すように感光体用保護材供給部より上流側に、クリーニング部材41、フリッカー42、廃トナー搬送部材43等からなるクリーニング装置4を設けることが好ましい。
保護層形成部材に用いるブレードの材料としては、特に制限はなく、クリーニング部材等に用いられる材料として公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらブレードは、感光体1との接点部分を低摩擦係数材料で、コーティングや含浸処理してもよい。また、弾性体の硬度を調整するために、有機フィラー、無機フィラー等の充填材を分散させてもよい。
保護層形成用ブレードは、ブレード支持体に、先端部が感光体1表面へ押圧当接できるように、接着や融着等の任意の方法によって固定される。保護層形成用ブレードの厚みとしては、押圧で加える力との兼ね合いで一義的に規定できるものではないが、0.5[mm]〜5[mm]が好ましく、1[mm]〜2[mm]がより好ましい。また、支持体から突き出し、たわみを持たせることができるブレードの長さ、いわゆる自由長についても同様に押圧で加える力との兼ね合いで一義的に規定できるものではないが、1[mm]〜15[mm]が好ましく、2[mm]〜10[mm]がより好ましい。
保護層形成用ブレード部材の他の構成としては、バネ板等の弾性金属ブレード表面に、必要に応じてカップリング剤やプライマー成分等を介して、樹脂、ゴム、エラストマー等の被覆層をコーティング、ディッピング等の方法で形成し、必要により熱硬化等を行い、更に必要であれば表面研摩等を施して用いてもよい。
被覆層は、少なくともバインダー樹脂及び充填剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばPFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂;フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマー等のシリコーン系エラストマーなどが挙げられる。
弾性金属ブレードの厚みは、0.05[mm]〜3[mm]が好ましく、0.1[mm]〜0.5[mm]がより好ましい。弾性金属ブレードでは、ブレードのねじれを抑止するために、取り付け後に支軸と略平行となる方向に、曲げ加工等の処理を施してもよい。
保護層形成部材で感光体1を押圧する力は、感光体用保護材が延展し保護層の状態になる力で十分であり、線圧として5[gf/cm]〜70[gf/cm]が好ましく、10[gf/cm]〜30[gf/cm]がより好ましい。
保護材供給部材としては、前述のようにクリーニングブラシと兼用して用いられても良く、別途独立してクリーニングブラシの直後に配設しても良い。また、保護材供給部材に用いる材料としては、クリーニングブラシに用いられる材料と同等の材料を用いることができる。
感光体用保護材を構成する成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、脂肪酸金属塩、飽和炭化水素ワックス等が好ましい。
脂肪酸金属塩の例としては、ラウリン酸塩、ミリスチン酸、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ベヘン酸塩、リグノセリン酸塩、セロチン酸塩、モンタン酸塩、メリシン酸塩等の長鎖アルキルカルボン酸塩等の、疎水性部位の末端に陰イオン(アニオン)を有し、これと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン等が結合した化合物が挙げられる。具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウムなどが挙げられる。また、これらの脂肪酸金属塩は複数種類を併用してもよい。
飽和炭化水素ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80[℃]〜130[℃]の範囲にシャープな融解熱のピークを持ち、融解後の融液粘度が低いものが好ましい。
飽和炭化水素ワックスの例としては、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素、脂環式不飽和炭化水素や芳香族炭化水素に分類される炭化水素、カルナウバロウ、米ぬかロウ、キャンデリラロウ等の植物性天然ワックス類、蜜ロウ、雪ロウ等の動物性天然ワックス類が例として挙げられる。
特に、分子内の結合が、反応性が低く安定した飽和結合のみからなる、脂肪族飽和炭化水素、脂環式飽和炭化水素が好ましく、中でもノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびシクロパラフィンといった炭化水素ワックスが、付加反応が生じ難く化学的に安定であり、実使用の大気中で酸化反応を生じにくいため、経時安定性の面で好ましい。
また、特に比較的硬質な飽和炭化水素ワックスとして、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックスの少なくとも1種を含む炭化水素ワックスを用いることにより、保護層自体の耐久性を高めることができるため、感光体1表面に形成する保護層の厚みを過剰にすることなく、感光体1の保護を実現可能なことができるため、より好ましい。
この他に、感光体用保護材と感光体1表面との親和性を高め、保護材層形成の補助をする配合物として、界面活性剤のような両親媒性の有機化合物を、添加物として併用してもよい。
両親媒性の有機化合物は、主材料の持つ表面特性を大きく変化させることがあるため、その添加量としては、感光体用保護材の総質量に対して、0.01質量%〜3質量%程度であることが好ましく、0.05質量%〜2質量%程度であることがより好ましい。
感光体用保護材を、一定の形状、例えば角柱状や円柱状に成型するためには、熱溶融成形法のほかに、粉末成型方法のひとつである、乾式成形法を用いることもできる。
乾式成型法の代表的な例として、一軸加圧成形法は、概ね以下の手順によって行うことができる。
1.予め、それぞれの比重を計測した各種の感光体用保護材の原材料の粉体を、所望の割合で十分に混合して、所望の充填率となる重量を計量する。
2.所定形状の型枠中に、計量した感光体用保護材原材料粉末を投入する。
3.押し型により投入した粉末を加圧しつつ、必要により加熱し、保護材成形体を作成する。この成形体を型枠から外し、感光体用保護材を得る。
4.その後、切削加工などにより、感光体用保護材の形状を整えてもよい。
型枠としては、熱伝導性の良さ、寸法精度の良さから鋼材、ステンレス、アルミニウム等の金属製型枠が好ましい。また、型枠内壁面には、離型性を良くするために、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などの離型剤をコーティングしてもよい。
〔転写手段〕
転写手段は、可視像を記録材に転写する手段であるが、本実施形態のように、中間転写ベルト60を用い、中間転写ベルト上に可視像を一次転写した後、可視像を記録材上に二次転写する態様が好ましく、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写ベルト上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録材上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
中間転写ベルト60としては、体積抵抗率が1.0×10[Ω・cm]〜1.0×1011[Ω・cm]である導電性を示すものが好ましい。体積抵抗率が1.0×10[Ω・cm]を下回る場合には、感光体1から中間転写ベルト上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがあり、1.0×1011[Ω・cm]を上回る場合には、中間転写ベルト60から紙などの記録材へトナー像を転写した後に、中間転写ベルト上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
中間転写ベルト60の材料としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を、単独又は併用して熱可塑性樹脂と共に混練後、押し出し成型したベルト状もしくは円筒状のプラスチックなどを使用することができる。この他に、熱架橋反応性のモノマーやオリゴマーを含む樹脂液に、必要により導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成型を行い、無端ベルト上の中間転写ベルトを得ることもできる。中間転写ベルトに表面層を設ける際には、感光体表面層に使用した表面層材料の内、電荷輸送材料を除く組成物に、適宜、導電性物質を併用して抵抗調整を行い、使用することができる。
転写手段(一次転写手段、二次転写手段)は、感光体1上に形成された可視像を記録材側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
なお、記録材としては、特に制限はなく、公知の記録材(記録紙)の中から適宜選択することができる。
〔定着手段〕
定着手段は、記録材に転写された可視像を定着させる手段であり、各色のトナーに対し記録材に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
定着手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。
加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ、等が挙げられる。
加熱加圧手段における加熱温度としては、通常、80[℃]〜200[℃]が好ましい。
なお、目的に応じて、定着手段と共にあるいはこれに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
次に、実施例について説明する。
ただし、本発明は、以下に説明する実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて質量部を表わす。
[実施例1]
本実施例1で用いる感光体1は、導電性支持体として、外径40[mm]、肉厚0.8[mm]のアルミニウムシリンダーを用いた。このアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、浸漬塗布、乾燥を繰り返すことにより、3.5[μm]の下引き層、0.2[μm]の電荷発生層、最も薄い部分で約30[μm]かつ最も厚い部分で約35[μm]の電荷輸送層を形成して、感光層を有する感光体1を得た。
〔下引き層用塗工液〕
下記組成の下引き層用塗工液をアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布した後、120[℃]で25分間加熱乾燥して、3.5[μm]の下引き層を形成した。
<下引き層用塗工液組成>
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記組成の電荷発生層用塗工液を下引き層上に浸漬塗布した後、120[℃]で20分間加熱乾燥して、0.2[μm]の電荷発生層を形成した。
<電荷発生層用塗工液組成>
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール 0.2部
(エスレックBM−S、積水化学工業(株)製)
テトラヒドロフラン 50部
〔電荷輸送層用塗工液〕
下記組成の電荷輸送層用塗工液を電荷発生層上に浸漬塗布した後、135[℃]で20分間加熱乾燥して、電荷輸送層を形成した。浸漬塗布工程では、引き上げ速度を最初はゆっくりとし、徐々に上げることにより、塗工液の付着量が下端の方が多くなるように速度調整した。
<電荷輸送層用塗工液組成>
下記の化4にて示す構造式で表される電荷輸送物質(D−1) 10部
Figure 0005445935
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050:帝人化成社製)
シリコーンオイル 0.002部
(KF−50、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン 100部
続いて、得られた感光体1の感光層の厚み(下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層の合計)を、渦電流式の膜厚測定器(万能型膜厚計 LZ−200 (株)ケット科学研究所製、LHP−20(NFe)型プローブ)を用いて、感光体回転軸方向に沿って15箇所測定した。この測定結果は、図4に示すとおりである。これらの測定結果を、感光体軸方向中央部を境にして上端側と下端側に分けて、それぞれを平均したところ、感光層の厚みは上端側で30.0[μm]、下端側で35.2[μm]であった。
この感光体1の両端にフランジを設けた。引き続き、フランジ付きの感光体1の振れ量を測定するため、回転中心が振れないように回転可能に固定し、一定速度で回転しながら、予め距離と電圧の関係を採取した光ファイバー変位計(岩通計測株式会社製、ST−3711、プローブタイプ0702R、フロントスロープ測定)を用いて、測定プローブ先端から感光体表面までの距離プロファイルを採取した。感光体一周分のプロファイルについて、距離の最大値(プローブ先端と感光体1表面が最も離れた位置)と最小値(プローブ先端と感光体1表面が最も近づいた位置)の差を取り、感光体1の振れ量を算出した。同様の測定を、感光体1の画像領域中央部から両端に向かって回転軸方向に20mm間隔(中央部と両側に7点ずつの全15点)で行い、振れ量が大きい側を特定した。これにより、浸漬塗工時にエアチャックを施した側(塗工時の上端側)の振れ量が大きいことが確認された。感光体1の振れ量は、5.2[μm]から17.7[μm]であった。この振れ量の測定結果を、図5に示す。
このフランジ付き感光体1を、本プリンタ100に支持させた。次に、リコー製imagioMPC4500用作像ユニットに感光体1を組み込んで、現像ギャップを280[μm]に調整することにより、作像ユニットを作成した。ここで現像ギャップは、感光体1を一周させた時の平均値を用いた。なお、作像ユニットの改造は、シアン用の作像ユニットを用いた。
さらに、この作像ユニットを、リコー製imagioMPC4500に組み付け、実施例1のプリンタを作製し、画像評価を行った。
評価画像は、可視像の均一性を確認するために、600[dpi]、画素密度25%の2by2全面トーンのA4版プリント画像、並びに、600[dpi]、画素密度100%の全面ベタのA4版プリント画像とした。初期画像の均一性を目視で確認し、また、ドットの均一性を25倍のルーペで観察して、ランク評価を行った。
ここで、画素密度25%の2by2全面トーンとは、4×4画素で形成される方形領域において、2×2画素分を方形の画像領域、方形の画像領域以外を非画像領域として、これを全面に亘り画像形成することで、4/16=25%の画素密度の画像を形成することを意味する。
また、画素密度100%の全面ベタ画像とは、全面に画像を形成することを意味する。
その結果、極めて均一性に優れたトーン画像が作像できていることが確認された。評価結果を、図6に示す。
画像の均一性の評価基準としては、目視の場合(2by2画像、全面ベタ画像)、拡大しての観察の場合(2by2画像)のそれぞれについて、以下に示す各基準により評価した。
なお、拡大して観察する場合、画像幅方向(現像ローラ軸方向)における両端部及び中央の3箇所で測定したドット径(面積基準円相当径)の、各測定箇所における平均値について最大値Rmax[μm]と最小値Rmin[μm]の比Rr(Rr=Rmin/Rmax)を取り、以下の基準により評価した。
<目視による均一性の評価基準 2by2画像>
◎:極めて優れている(全面にわたってムラが感知できないレベル)
○:実用上問題ないレベル(◎と並べて見るとわずかに周期ムラが感知できるレベル)
△:実用上許容できるレベル(◎と並べて見ると周期ムラが感知できるレベル)
×:使用不可(単独で明らかに周期ムラが感知できる)
<目視による均一性の評価基準 全面ベタ画像>
◎:極めて優れている(全面にわたってムラが感知できないレベル)
○:実用上問題ないレベル(◎と並べて見るとわずかにムラが感知できるレベル)
△:実用上許容できるレベル(◎と並べて見るとムラが感知できるレベル)
×:使用不可(単独で明らかにムラが感知できる)
<拡大画像による均一性の評価基準 2by2画像のみ>
◎:極めて優れている(ドットが非常にそろっている;Rrが0.9以上)
○:実用上問題ないレベル(視野毎のドットの大きさに差異がある場所が少数ある;Rrが0.8以上0.9未満)
△:実用上許容できるレベル(視野毎のドットの大きさに差異がある場所がある;Rrが0.6以上0.8未満)
×:使用不可(複数領域のドットの大きさが明らかに異なる;Rrが0.6未満)
また、本実施例1のプリンタを、A4版5%チャート10000枚通紙試験を行った後、上記と同様の評価を行ったところ、初期の時点と同様の極めて均一性に優れたトーン画像が作像できていることが確認された。
なお、A4版5%チャートとは、全面の画素密度が5%となるよう略均等にテキスト画像(文字画像)で構成したA4版チャートを出力することを意味する。
[実施例2〜18、比較例1〜4]
実施例2〜18及び比較例1〜4については、感光体1の振れ量と、感光層厚みの大小関係、並びに、感光層厚みのより好適な範囲を確認するため、電荷輸送層の塗工条件(浸漬、引き上げの速度条件、並びに、感光体水平移動時の加減速条件)を調整して、図6に示す膜厚とした以外は、実施例1と同様である。これらについても、実施例1と同様の評価を行った。その評価結果も図6に示してある。
<実施例1〜3と実施例4との比較>
実施例1と同様に、振れ量のより良好な範囲である実施例2〜3と、この範囲を外れる実施例4との比較により、感光体1の最大振れ量が、一定値以下の場合、より顕著な効果を有することを確認した。
<実施例1、5〜13と実施例14〜18との比較>
実施例1と同様に、感光層厚みのより良好な範囲である実施例5〜13と、この範囲を外れる実施例14〜18との比較により、感光層厚みの上下限及びその差について、より画像品質が高い画像を安定して得られる、好ましい範囲が存在することを確認した。
<実施例と比較例との比較>
実施例と比較例との比較より、振れ量に差がある感光体1の振れ量に対応した感光層膜厚(電荷輸送層の厚さ)を設定しなかった場合には、顕著な画像の不具合が発生し、品質的に不適な画像となることが確認された。これは、振れ量が小さい下端側を基準に現像バイアスを低めに設定したためである。すなわち、下端側では現像電界が常に飽和現像電界値A以上となり、常に飽和現像が実現されるが、振れ量が大きい上端側では現像電界が最小値を示すときには飽和現像電界値Aを下回って画像濃度の低下を引き起こしたため、これが画像濃度ムラとなって現れたためである。
なお、上述したが、仮に振れ量が大きい上端側を基準に現像バイアスを高めに設定したとすれば、上端側でも現像電界が常に飽和現像電界値A以上となり、常に飽和現像を実現することは可能ではある。しかしながら、この場合には、消費電力の増大やトナーの無駄な消費を引き起こし、画像濃度ムラよりも深刻な問題となる。
以上より、画像濃度ムラに関する画像品質、消費電力の増大、トナーの無駄な消費の観点において、本発明の実施例に係るプリンタの比較例に対する優位性が示された。そして、本発明の実施例においては、感光体1の表面の振れ量に偏差があり、その振れ量の最大値が従来の許容範囲を超えるものであっても、電荷輸送層の層厚調整により、画像濃度ムラのない均等な画像が得られるため、生産工程内を簡素化でき、コストを引き下げることが可能である。
図7は、実施例1、6〜18及び比較例1〜4の2by2目視画像評価結果を感光層厚みと対応付けて布置した図である。
図中破線で示す直線は、振れ量が多い側と振れ量が小さい側の感光層の厚みが同じである地点を結んだものである。実施例は、すべて、振れ量が多い側の感光層の厚みが振れ量が小さい側よりも薄く形成されているため、すべての実施例は、図中破線よりも上側に布置される。一方、比較例は、振れ量が多い側の感光層の厚みが振れ量が小さい側と同じか又は厚く形成されているため、すべての比較例は図中破線以下に布置される。なお、図では、便宜上、実施例1、6〜18のみ記載してある。
図7において、評価結果が「○」以上となっている実施例は、図中直線Bで囲った範囲に集中していることが分かる。
[参考例1〜2]
本実施形態の感光体1は、電荷輸送層の厚みに偏差を持たせて感光層の厚みを感光体軸方向で偏らせている。参考例では、このような感光層の厚み偏差が画像品質に影響を与えないことを確認するためのものである。
本参考例では、感光体1の振れ量に偏差が無い場合における感光層厚さの左右差の画像品質への影響を確認するため、振れ量に偏りが無い感光体1を用い、図6に示した設定値としたこと以外は、実施例1と同様にして、参考例1〜2のプリンタを作製し、これらについて実施例1と同様の評価を行った。具体的には、参考例1〜2に係る感光体は、実施例1の感光体と同様の感光層厚みとなるように層形成を行う際に、上端のみを保持した状態では感光体を横方向に移動させずに、浸漬塗工が一工程終わるごとに、感光体の上下両端を支持した上で次工程に移動することを繰り返し、感光体保持部への横方向の力が極力かからないように、塗工、乾燥工程を繰り返して作成した。評価結果は、図6に示してある。
参考例1の結果より、感光体の振れ量に偏差が無い場合にも、実施例1と同様の低い現像バイアスで飽和現像を実現でき、画像濃度ムラを引き起こさないことが示された。
また、参考例2の結果より、現像ギャップを広めに調整して飽和現像にならないようにした場合には、感光層が厚い側で画像濃度がやや低く、画像品質の低下が生じた。
なお、振れ量に偏差が無い感光体1は、全く同じ条件で作成しても、その収率が50%以下であった。
以上、本実施形態に係るプリンタは、電荷発生層とこれよりも表面側に位置する電荷輸送層とからなる感光層を円筒状の導電性支持体上に備え、回転軸を中心に回転可能な感光体1と、感光体1の表面を露光することにより感光体1の感光層中の電荷発生層で電荷を発生させ、その露光部分を静電潜像として形成する静電潜像形成手段としての帯電装置3及び露光装置30と、現像剤を表面に担持した現像剤担持体としての現像ローラ50を感光体表面に対して現像ギャップ11を介して対向させ、現像ギャップ11を介して対向する感光体表面上の静電潜像部分(露光部)と現像ローラ表面部分との間に形成される現像電界により、現像ローラ上の現像剤を感光体表面上の静電潜像に付着させて静電潜像を現像する現像手段としての現像装置5とを有し、静電潜像を現像して得られる感光体表面上の可視像(トナー像)を最終的に記録材上に転移させることにより、記録材に画像を形成する画像形成装置である。そして、感光体1は、回転軸を中心に回転したときの当該感光体の表面の振れ量が感光体回転軸方向で相対的に大きい部分と小さい部分との間で、現像電界の最大偏差が小さくなるように、感光層における電荷輸送層の厚みが異なっている。
より詳しくは、上記静電潜像形成手段が、感光体1の表面を帯電装置3により所定の帯電電位に一様に帯電させた後に露光装置30で露光し、その露光部分の帯電電位を減衰させることにより当該露光部分を静電潜像としており、感光体1は、その振れ量が相対的に小さい部分の電荷輸送層よりも大きい部分の電荷輸送層の方が薄くなっている。
特に、本実施形態においては、その製造工程で感光体の一方の端部を保持した状態で移動、停止を繰り返しながら層形成を行っているため、当該端部側の真円度が悪い。そのため、感光体1は、振れ量が回転軸方向一端側から他端側(塗工時の上端側)に向けて大きくなっている。よって、本実施形態の感光体1は、電荷輸送層の厚みが回転軸方向一端側から他端側(塗工時の上端側)に向けて薄くなっている。
本実施形態では、感光体1の振れ量が大きい部分の電荷輸送層を薄くすることにより、感光体1の振れ量が小さい部分と比較して、感光体1の露光部電位(静電潜像の電位)が0Vに近くなる。そのため、一定の現像バイアスが印加された現像ローラの一定の表面電位と感光体1の露光部電位との間の電位差が広がり、その現像電界が強くなる。その結果、感光体1の振れにより現像ギャップ11が最大に広がった状態となった箇所においても、十分に大きな現像電界が得られ、飽和現像を実現できる。これにより、感光体1の振れにより現像ギャップ11が最大に広がった状態となった箇所において画像濃度が低下することがなくなるため、他の箇所との画像濃度の違いが出ず、画像濃度ムラが解消される。
以下、現像ギャップの変動とこれに起因する現像ムラによる画像濃度ムラとの関係について、図9〜図15に示すグラフを用いて、説明する。
なお、以下の説明では、上述した本実施形態の感光体における振れ量が大きい端部側の現像ギャップと同じように、現像ギャップが周期的に大きく変動しているものとし、その変動は図9に示すとおりであるとする。また、現像ローラに直流の現像バイアスを印加して現像を行うものとし、静電潜像の電位(露光部電位)と現像バイアスによる現像ローラ表面電位(現像バイアス電位)が変動しないものとする。
現像ギャップが図9に示すように周期的に変動すると、感光体表面の静電潜像と現像ローラ表面との距離が変わるため、感光体表面の静電潜像と現像剤担持体表面との間に形成される現像電界は、図10に示すように周期的に変動する。このとき、感光層の厚み(すなわち電荷輸送層の厚み)が、上述した本実施形態の感光体における振れ量が小さい端部側の感光層の厚みと同じように比較的厚いものである場合、図10に示すように、現像ギャップが広くなって現像電界が低くなったときに、図8に示した飽和現像電界値Aを下回る事態が生じ得る。飽和現像電界値Aを下回ると飽和現像を実現できなくなるので、図11に示すように飽和現像が実現できている飽和現像電界値A以上の時よりも現像量が少なくなる。その結果、図12に示すように、飽和現像電界値Aを下回って飽和現像を実現できない時には、飽和現像電界値A以上で飽和現像が実現できている時と比較して画像濃度(光学濃度)が低下してまし、画像濃度ムラが生じてしまう。
本実施形態では、このような画像濃度ムラが生じてしまう感光体の上端側(振れ量が大きい端部側)の電荷輸送層の厚みを薄くして感光層の厚みを薄くしている(電荷発生層の厚みは一定)。感光層における電荷輸送層の厚みが薄くなるほど、感光体の静電容量(導電性支持体と感光体表面との間の静電容量)は大きくなる。そして、感光体への露光量が同じである場合、その露光によって電荷発生層で発生する電荷量は同じであるが、その露光部分における感光体の表面電位(すなわち静電潜像の電位)は、その露光部分における感光体の静電容量によって変わってくる。したがって、感光体の電荷輸送層の厚みを薄くすることで、静電潜像の電位の絶対値を小さくする、すなわち、静電潜像の電位をよりゼロに近付けることができる。これにより、現像バイアスが一定であっても、静電潜像の電位と現像剤担持体表面電位との電位差が広がり、現像電界を大きくすることができる。その結果、このように感光層の厚みを薄くすることで、現像電界は、図13に示すように大きくなり、現像ギャップが広くなって現像電界が低くなったときでも、飽和現像電界値Aを下回る事態が生じない。よって、常に飽和現像を実現できるようになり、図14に示すように現像量が一定に維持され、図15に示すように画像濃度(光学濃度)も一定となり、画像濃度ムラが生じない。
また、本実施形態においては、感光体が有する振れ量の範囲が5[μm]以上30[μm]以下という広い範囲でも、上述したように画像濃度ムラを十分に抑制できるので、低コスト化が容易である。
また、本実施形態において、感光体1は、感光層の厚みの最大値をDmax[μm]とし、感光層の厚みの最小値をDmin[μm]としたとき、下記の式(1)〜(3)のすべてを満たすようにすることが、図7に示したように望ましい。この条件を満たすことで、より画像濃度ムラの無い高品質な画像を形成することができる。
3[μm] ≦ Dmax−Dmin ≦ 10[μm] ・・・(1)
20[μm] ≦ Dmin ・・・(2)
Dmax ≦ 50[μm] ・・・(3)
また、本実施形態における露光装置30は、画像の濃淡を表現するために、単位面積当たりに静電潜像が占める面積を調整する面積階調方式を採用している。これにより、常に飽和現像となるように現像を行う方式であっても、多階調の濃淡を適切に表現した画像を形成することができる。すなわち、画像の濃淡を多段階で表現する手法としては、画像の濃淡に応じて静電潜像の電位(露光部電位)を多段階で調整する濃度階調方式と、画像の濃淡に応じて単位面積当たりに静電潜像が占める面積を調整する面積階調方式とがある。濃度階調方式の場合、静電潜像の電位に応じてその静電潜像に付着するトナー量を調整するため、静電潜像の電位とトナー付着量(現像量)との関係が変化すると、画像の濃淡を適正に表現することができない。そのため、同じ電位の静電潜像に対してのトナー付着量が異なってしまう現像ムラが発生すると、その影響が直接的に画像の濃淡の違いに現れ、画像濃度ムラに直結する。これに対し、面積階調方式の場合、通常、画像の濃淡によらず静電潜像の電位が一定であるため、その静電潜像に対して常に飽和現像を維持できれば、現像ムラを発生させることなく、画像濃度ムラを十分に抑制することができる。
1 感光体
2 保護材塗布装置
3 帯電装置
4 クリーニング装置
5 現像装置
6 転写装置
10 導電性支持体
11 現像ギャップ
12 感光層
14 回転軸
30 露光装置
50 現像ローラ
60 中間転写ベルト
100 プリンタ
200 給紙機構
特開平9−211975号公報 特開2000−194191号公報

Claims (9)

  1. 電荷発生層とこれよりも表面側に位置する電荷輸送層とからなる感光層を円筒状の導電性支持体上に備え、回転軸を中心に回転可能な感光体と、
    該感光体の表面を帯電手段により所定の帯電電位に一様に帯電させた後に露光し、これにより該感光体の感光層中の電荷発生層で電荷を発生させて当該露光部分の帯電電位を減衰させ、該露光部分を静電潜像として形成する静電潜像形成手段と、
    現像剤を表面に担持した現像剤担持体を該感光体表面に対して現像ギャップを介して対向させ、該現像ギャップを介して対向する感光体表面上の静電潜像部分と現像剤担持体表面部分との間に形成される現像電界により、該現像剤担持体上の現像剤を該感光体表面上の静電潜像に付着させて該静電潜像を現像する現像手段とを有し、
    該静電潜像を現像して得られる感光体表面上の可視像を最終的に記録材上に転移させることにより、該記録材に画像を形成する画像形成装置において、
    上記感光体における電荷輸送層の厚みを、上記回転軸を中心に回転したときの当該感光体の表面の振れ量が感光体回転軸方向で相対的に小さい部分よりも大きい部分の方が薄くなるようにしたことを特徴とする画像形成装置。
  2. 請求項1の画像形成装置において、
    上記感光体は、上記振れ量が回転軸方向一端側よりも他端側の方が大きくなっており、かつ、上記電荷輸送層の厚みが回転軸方向一端側よりも他端側の方が薄くなっていることを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1又は2の画像形成装置において、
    上記感光体が有する振れ量の範囲は、5[μm]以上30[μm]以下であることを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項3の画像形成装置において、
    上記感光体は、上記感光層の厚みの最大値をDmax[μm]とし、該感光層の厚みの最小値をDmin[μm]としたとき、下記の式(1)〜(3)のすべてを満たすようにものであることを特徴とする画像形成装置。
    3[μm] ≦ Dmax−Dmin ≦ 10[μm] ・・・(1)
    20[μm] ≦ Dmin ・・・(2)
    Dmax ≦ 50[μm] ・・・(3)
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    上記静電潜像形成手段は、画像の濃淡を表現するために、単位面積当たりに静電潜像が占める面積を調整する面積階調方式を採用するものであることを特徴とする画像形成装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    上記静電潜像形成手段は、上記感光体の表面を帯電手段により所定の帯電電位に一様に帯電させた後に露光し、その露光部分の帯電電位を減衰させることにより該露光部分を静電潜像とするものであり、
    上記帯電手段として、上記感光体の表面に所定の帯電バイアスが印加された帯電ローラを接触または近接させて帯電させるものであることを特徴とする画像形成装置。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    上記感光体の表面上の不要な付着物をクリーニングブラシにより除去するクリーニング手段を有することを特徴とする画像形成装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    上記感光体の表面を保護するための保護材を該感光体の表面に供給する保護材供給手段を有することを特徴とする画像形成装置。
  9. 電荷発生層とこれよりも表面側に位置する電荷輸送層とからなる感光層を円筒状の導電性支持体上に備え、回転軸を中心に回転可能な感光体を製造する感光体の製造方法において、
    上記導電性支持体上に上記電荷発生層を形成する電荷発生層形成工程と、
    該電荷発生層の上に上記電荷輸送層を浸漬法により形成する電荷輸送層形成工程とを有し、
    上記電荷輸送層形成工程では、上記回転軸を中心に回転したときの当該感光体の表面の振れ量が感光体回転軸方向で相対的に小さい部分よりも大きい部分の方が薄くなるように、上記電荷輸送層を形成することを特徴とする感光体の製造方法。
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