図1は、本発明の一実施形態を採用した保護層形成装置を示している。同図において、像担持体としての感光体ドラム1に対向配置された保護層形成装置2は、像担持体保護剤21、保護剤供給部材22、押圧力付与部材23、保護層形成部材24等を有している。
像担持体保護剤21は押圧力付与部材23によってブラシ状の保護剤供給部材22に圧接され、保護剤供給部材22は感光体ドラム1と線速差をもって回転しつつ感光体ドラム1に摺擦し、この際に保護剤供給部材22の表面に保持された像担持体保護剤21が感光体ドラム1の表面に供給される。感光体ドラム1の表面に供給された像担持体保護剤21は、構成される物質の種類によっては供給時に十分な保護層とはならない場合があるため、より均一な保護層を形成するためにブレード状の保護層形成部材24によって薄層化されて保護層となる。
保護層が形成された感光体ドラム1は、その周面に接触あるいは近接して配置され図示しない高圧電源により直流電圧またはこれに交流電圧を重畳させた電圧が印加された帯電装置3からの放電により帯電され、この帯電時において保護層の一部では電気的ストレスを受けて分解や酸化が生じ、また保護層表面への気中放電生成物の付着が生じて保護層が劣化する。保護層の劣化に伴い劣化した像担持体保護剤は、通常のクリーニング機構により感光体ドラム1に残存したトナー等の成分と共に除去される。このクリーニング機構は保護層形成部材24と兼用としてもよいが、感光体ドラム1表面の残存物を除去する機能と保護層を形成する機能とは適切な部材の摺擦状態が異なる場合があるため機能を分離することが好ましく、図1に示すように保護剤供給部材22よりも感光体ドラム1の回転方向上流側にクリーニング部材41、クリーニング押圧機構42等を有するクリーニング手段としてのクリーニング機構4を設けることが好ましい。
感光体ドラム1の表面保護のためには、保護剤供給部材22により像担持体保護剤21の一定量を十分に大きさが揃った状態で供給する必要がある。そのため、供給量や粒径の分布状態は像担持体保護剤21の材料特性に依存しないことが好ましく、像担持体保護剤21としては粉末状の保護剤原材料を加圧成形した粉末圧密体であることが好ましい。また、像担持体保護剤21としては脂肪酸金属塩を含むことが好ましく、この保護剤粉体を大きさが揃った粒子として感光体ドラム1の表面に供給することにより、良好な潤滑性を有する保護被膜を均一かつ速やかに形成することができ、トナーとの離型性も良好となる。
脂肪酸金属塩としては、特に限定されるものではないがステアリン酸、パルミチン酸、メリシン酸等の長鎖脂肪酸とナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン、アルミニウム、亜鉛等の金属イオン等が結合した化合物を挙げることができる。中でも、ステアリン酸亜鉛は結晶性が高い分子構造を有し、粒子径の揃った原料粉末を容易に得られるため好ましく用いられる。
像担持体保護剤21は、保護層形成過程や保護層除去過程での補助的な役割を担う構成物として、個数平均粒子形D1=0.1〜1.5μmの微粒子を含むことが好ましい。これらの微粒子は、感光体ドラム1上で保護剤粉体が延展して保護層を形成する際に、自身で転動したり滑りながら移動したりすることにより保護剤粉体を薄く引き延ばし、均等な保護剤層が素早く形成されることを補助するために好ましく併用される。また保護剤層中で電気的なストレスを受けた保護剤は、できるだけ速やかに除去されてストレスを受けていない新たな保護剤と置き換えられることが好ましい。上述した微粒子を併用することにより、ストレスにより劣化した保護剤成分を微粒子によって絡め取り速やかに系外へと除去することもでき、保護剤粉体の安定した供給と相俟って非常に安定した保護剤層の代謝が行われ、感光体ドラム1の保護をより一層安定して行うことができる。
上述した微粒子としては特にその種類は制限されないが、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の金属酸化物微粒子や金属複酸化物微粒子、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、フッ化カルシウム等に代表される固体潤滑剤粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子等の有機微粒子等を用いることができる。
上述した像担持体保護剤21を一定の形状、例えば角柱状や円柱状に成形するためには、粉末成形方法の一つである乾式成形法を用いる。この乾式成形法の代表的な例としてあげられる一軸加圧成形法は、概ね以下の2通りの手順によって行うことができる。
粉末圧密体成形後平滑性出し
1.予め一定の粒子径となるように粉末化して分級した保護剤原材料粉末を所定量計測する。
2.所定形状の型枠中に計量した像担持体保護剤原材料粉末を投入する。
3.押し型により投入した粉末を加圧して粉末圧密体を作成する。この粉末圧密体を型枠から外し、像担持体保護剤の多孔質成形体とする。
4.切削加工等により像担持体保護剤の形状を整える。
5.押圧力付与部材との接着面に発熱体を押圧して表面の平滑性を増す。
溶融成形後粉末圧密体形成
1.予め一定量の保護剤原材料粉末から溶融成形体を作成する。
2.一定の粒子径となるように粉末化して分級した保護剤原材料粉末を所定量計量する。
3.所定形状の型枠中に1の溶融成形体を敷き、その上に計量した保護剤原材料粉末を投入する。
4.押し型により投入した粉末を加圧し、溶融成形体と粉末圧密体の2層像担持体保護剤を作成し、これを型枠から外す。
5.切削加工等により2層像担持体保護剤の形状を整える。
必要に応じ、粉末圧密体を所定温度下で一定時間養生後、放冷または徐冷により冷却して原材料粉末界面の結合力を調節してもよい。ただし、過剰な温度や時間による養生は粒子間の結合を強固にし、過度の焼結状態に移行してしまうために好ましくない。焼結が進みすぎると保護剤成形体内部では連続気泡の周りが封鎖されて独立気泡へと変化する。よって、上述のように独立気泡の割合を規定することにより粒子間結合力の程度を見積もることができ、過剰な焼結を防止して保護剤のほぐれ易さを確実に維持した成形体を作成することができる。上述した枠体としては、寸法精度の良さ及び熱伝導性の良さから鋼材、ステンレス、アルミニウム等の金属製型枠が好ましい。また型枠内壁面には離型性をよくするため、微量のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等の離型剤をコーティングしてもよい。
保護層形成部材24に用いられるブレードの材料としては特に制限はなく、クリーニングブレード用材料として公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばウレタンゴム、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよく、また感光体ドラム1との接点部分を低摩擦係数材料によってコーティングや含浸処理を施してもよい。さらに弾性体の硬度を調整するため、有機フィラや無機フィラ等の充填剤を分散させてもよい。
保護層形成部材24は、その先端部が感光体ドラム1の表面に圧接するように接着や融着等の任意の方法によって支持体に固定されており、その厚みは押圧力との兼ね合いで一義的に規定できるものではないが0.5〜5mm程度が好ましく、1〜3mm程度がより好ましい。また、支持体から突出して撓みを持たせることが可能な長さである自由長についても厚みと同様であり、押圧力との兼ね合いで一義的に規定できるものではないが1〜15mm程度が好ましく、2〜10mm程度がより好ましい。保護層形成部材24により感光体ドラム1を押圧する押圧力は、像担持体保護剤21が延展し保護層の状態となる力で十分であり、線圧として5〜80gf/cm程度が好ましく、10〜60gf/cm程度がより好ましい。
保護層形成部材24の他の構成としては、ばね板等の弾性金属ブレード表面に、必要に応じてカップリング剤やプライマ成分等を介して樹脂、ゴム、エラストマ等の被覆層をコーティングあるいはディッピング等の方法により形成し、必要に応じて熱硬化処理等を行い、さらに必要に応じて表面研磨処理等を施して構成してもよい。被覆層は少なくともバインダ樹脂及び充填剤を含有してなり、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。バインダ樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えばPFA、PTFE、FEP、PVdF等のフッ素樹脂;フッ素系ゴム、メチルフェニルシリコーンエラストマ等のシリコーン系エラストマ等が挙げられる。弾性金属ブレードの厚みは0.05〜3mm程度が好ましく、0.1〜1mm程度がより好ましく、ブレードのねじれを抑止するため取り付け後に支軸とほぼ平行となる方向に曲げ加工等の処理を施してもよい。
保護剤供給部材22としてはブラシ状の部材が好ましく用いられ、この場合には感光体ドラム1の表面に対する機械的ストレスを抑制するため、ブラシ繊維が可撓性を有することが好ましい。可撓性のブラシ繊維の材料としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、例えばポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン);ポリビニル系樹脂またはポリビニリデン系樹脂(例えばポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン);塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−ブタジエン樹脂;フッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン);ポリエステル;ナイロン;アクリル;レーヨン;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;アミノ樹脂(例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂)等が挙げられる。なお撓みの程度を調整するため、例えばジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、ノルボルネンゴム等を複合してもよい。
保護剤供給部材22の支持体としては、固定型部材と回動可能なロール状部材とが挙げられる。ロール状部材としては、例えばブラシ繊維をパイル地にしたテープを金属製の芯金に対してスパイラル状に巻き付けてロールブラシとしたもの等が挙げられる。ブラシ繊維としては、繊維径10〜500μm程度、長さ1〜15mm程度、密度1平方インチ当たり1万〜30万本(1m2当たり1.5×107〜4.5×108本)程度が好適である。
保護剤供給部材22は、供給の均一性及び安定性の面から、ブラシ密度の高いものを用いることが好ましく、1本の繊維を数本〜数百本の微細な繊維から作成することが好ましい。例えば、333デシテックス=6.7デシテックス×50フィラメント(300デニール=6デニール×50フィラメント)のように、6.7デシテックス(6デニール)の微細な繊維を50本束ねて1本の繊維として植毛することが好適である。
ブラシ表面には、必要に応じてブラシの表面形状や環境安定性等を安定化させることを目的として被覆層を設けてもよい。この被覆層を形成する成分としては、ブラシ繊維の撓みに応じて変形することが可能な被覆層成分を用いることが好ましい。被覆層成分としては、可撓性を保持し得る材料であれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択可能であるが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニルまたはポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変性品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等による変性品);パーフルオロアルキルエーテル、ポリフルオロビニル、ポリフルオロビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、またはこれらの複合樹脂等が挙げられる。
上述した像担持体保護剤21は押圧力付与部材23に接着保持されており、本発明では押圧力付与部材23と接着する像担持体保護剤21の面の表面粗さの上限を規定している。本発明の像担持体保護剤は、画像形成装置における画像形成過程中の保護層形成過程で、感光体ドラム1の表面に付着すると同時あるいは付着後に皮膜化されて均一な保護層を形成する。この皮膜化が不十分であると引き続き行われる帯電過程における電気的ストレスから感光体ドラム1の表面を保護することができない。保護層の形成を確実化するためには、感光体ドラム1に対して必要十分な量の像担持体保護剤21を供給する必要があるが、本実施形態で示すように保護剤供給部材22等の摺擦部材によって像担持体保護剤21を掻き取って感光体ドラム1の表面に供給する場合には、像担持体保護剤21を板状の押圧力付与部材23に接着し、剛性を得た状態で摺擦部材に押圧する必要がある。像担持体保護剤21と押圧力付与部材23との接着強度は所望以上の強度が望ましく、強度不足の場合には使用環境や保管状態または輸送中に剥がれる虞がある。従って、像担持体保護剤21の押圧力付与部材23に接着する面は、所望の接着強度を得るために表面粗さを小さくする必要がある。
そこで、像担持体保護剤21と押圧力付与部材23とを、温度を変化させた発熱体で一定時間押圧して得られた像担持体保護剤21の接着面の表面粗さと発熱体温度との関係、並びに像担持体保護剤21と押圧力付与部材23との接着強度と前記接着面の表面粗さとの関係を調査した。接着強度は、180°引き剥がし強度にて測定した。発熱体の温度が高いほど表面粗さは小さくなるが、深さ方向にも溶融してしまうため発熱体との接触時間管理は注意が必要である。
実験に先立ち、実験用の像担持体保護剤を作製した。以下に例を示すが、本発明はこれらの例には限定されない。
(実施例1)
ステアリン酸亜鉛(堺化学工業社製SZ−2000)を酸化アルミニウム微粒子(住友化学社製AA−05;平均粒径0.5μm)と共に図2に示す混合比(重量基準)に従って混合した。混合はワンダーブレンダ(WB−1 販売元:大阪ケミカル株式会社)を用い、25000r.p.m.の回転速度で10秒間の混合を2度行い、試料の混合物粉体とした。予め測定した各原材料の比重、配合比及び所望の充填率から、型枠へ投入する量を算出した。深さ20mm×幅8mm×長さ350mmのアルミニウム製の金型に計量した保護剤処方の組成物を投入し、ヘラで表面を均した後に充填物の高さが8mmとなるように押し型で加圧圧縮し、粉末圧密体を成形した。保護剤処方の固形物を型から外し、押圧力付与部材である金属製支持体への貼り付け面を140℃の発熱体に5分間押圧して加熱成形後、表面粗さRaを測定し、8mm×8mm×310mmに整形し、金属支持体に両面テープ(日東社製#5000NS)で貼り付けた。
(実施例2〜7)
実施例1において、脂肪酸金属塩及び微粒子の種類及び配合量、発熱体の温度を図2に記載の通りとした以外は実施例1と同様に作製した。
(実施例8)
実施例1と同一の処方を用いて高さ2mm×幅8mm×長さ350mmの溶融成形体を作成後、金型に敷きその上に所望の量を投入後は実施例1と同様に作製した。
各実施例1〜8の各像担持体保護剤を金属支持体に接着させ、図3に示すヒートサイクルを10サイクルかけて金属支持体からの剥がれを以下の基準により評価した。剥がれ評価の結果を図4に示す。
<剥がれの評価基準>
○:剥がれていない
△:所々剥がれている
×:軽く剥がれる
また、像担持体保護剤の接着面の表面粗さと発熱体温度との関係は図5に、像担持体保護剤と押圧力付与部材との接着強度と前記接着面の表面粗さとの関係は図6に示すようにそれぞれ判明した。各図から明らかなように、表面粗さRa5μmがほぼ境界線となっている。像担持体保護剤を溶融成形で作製すれば十分な接着強度が得られるが像担持体への供給に関する課題がある。また像担持体保護剤を圧縮成形した場合には接着性に課題があるため接着面の表面性状を上げる手段が必要である。
上述より、本発明によれば削り取られ方にバラツキが生じ易い材料を含む像担持体保護剤を像担持体上へ安定して供給でき、耐電等による電気的ストレス及びクリーニング部材の摺擦等による機械的ストレスから像担持体を保護することが可能な像担持体保護剤を提供することができる。
次に、本発明の一実施形態を採用したプロセスカートリッジについて説明する。プロセスカートリッジは、像担持体と保護層形成装置とを少なくとも有しており、必要に応じて帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等の手段を有して構成され、各種電子写真装置本体に対して着脱自在に構成される。以下、図7を用いて具体例を説明する。
プロセスカートリッジは、感光体ドラム1に対向配置された保護層形成装置2、帯電装置3、クリーニング機構4、現像装置5等を有しており、保護層形成装置2は像担持体保護剤21、保護剤供給部材22、押圧力付与部材23、保護層形成部材24等を有している。感光体ドラム1の表面は、転写工程後において部分的に劣化した像担持体保護剤21やトナー成分等が残存しているが、クリーニング機構4のクリーニング部材41によってこれらが清掃されてクリーニングされる。クリーニング部材41は、カウンタタイプ(リーディングタイプ)に類する角度で感光体ドラム1の表面に当接されている。
クリーニング機構4により表面の残留トナーや劣化した像担持体保護剤が除去された感光体ドラム1に対し、保護剤供給部材22から像担持体保護剤21が供給され、感光体ドラム1の表面には保護層形成部材24により皮膜状の保護層が形成される。この際に、本発明の像担持体保護剤は必要十分な量を制御よく安定して供給できるため、感光体ドラム1の表面を効率よく保護して長期間にわたって感光体ドラム1の劣化を抑制することができる。また、本発明の像担持体保護剤21は押圧力付与部材23との接着面において表面粗さが小さく所望の接着強度が得られるため、使用環境、保管環境、保管状態によらず剥がれの信頼性が向上する。
保護層が形成された感光体ドラム1は、帯電装置3による帯電後、レーザ等の露光Lによって静電潜像を形成される。形成された静電潜像は現像装置5によって可視像化され、プロセスカートリッジ外に設けられた転写装置としての転写ローラ6によって記録媒体7へと転写される。このプロセスカートリッジによれば、像担持体表面状態の変動に対しての許容範囲に優れ、像担持体への帯電性能変動等を高度に抑制した構成であるため、極めて高画質な画像を長期にわたって安定して形成することができる。
また本発明のプロセスカートリッジによれば、像担持体保護剤を有する保護層形成装置を有しているので、プロセスカートリッジの交換間隔を極めて長く設定することが可能となるため、ランニングコストが低減されると共に廃棄物量も大幅に削減することができる。特に、像担持体が最表面層に熱硬化性樹脂を含む場合には電気的ストレスによる像担持体の劣化を保護剤で防止することができ、像担持体の機械的ストレスに対する耐久性を長期にわたり持続的に発現させることができる。また、本発明の像担持体保護剤は金属成分を含まないため、接触あるいは近接して配設された帯電部材を金属酸化物等により汚染することがなく、帯電装置の経時変化を小さくすることができる。このため像担持体や帯電部材等のプロセスカートリッジ構成部品の再使用が容易となり、更なる廃棄物量の削減が可能となる。
次に、本発明の一実施形態を採用した画像形成装置及び画像形成方法を説明する。画像形成装置は、像担持体、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、保護層形成装置、定着手段を少なくとも有し、好ましくはクリーニング手段を有して構成され、さらに必要に応じて適宜選択した他の手段、例えば除電手段、リサイクル手段、制御手段等を有して構成される。画像形成方法は、静電潜像形成手段により行うことが可能な静電潜像形成工程、現像手段により行うことが可能な現像工程、転写手段により行うことが可能な転写工程、保護層形成装置により行うことが可能な保護層形成工程、定着手段により行うことが可能な定着工程を少なくとも含み、好ましくはクリーニング手段により行うことが可能なクリーニング工程を含み、さらに必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば除電手段により行うことが可能な除電工程、リサイクル手段により行うことが可能なリサイクル工程、制御手段により行うことが可能な制御工程を含む。
静電潜像形成工程は像担持体である感光体上に静電潜像を形成する工程であり、感光体としてはその材質、形状、構造、大きさ等について特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することが可能であるが、その形状としてはドラム形状が好適に挙げられ、材質としては例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体等が挙げられる。感光体は、導電性支持体と、この導電性支持体の上に設けられた感光層とを有しており、さらに必要に応じてその他の層を有している。
感光層としては、電荷発生材と電荷輸送材とを混在させた単層型、電荷発生層の上に電荷輸送層を設けた順層型、電荷輸送層の上に電荷発生層を設けた逆層型がある。また、感光体の機械的強度、耐摩耗性、耐ガス性、クリーニング性等を向上させるため、感光層の上に最表面層を設けることも可能である。さらに感光層と導電性支持体との間には下引き層を設けてもよい。各層には必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することも可能である。
導電性支持体としては、体積抵抗1.0×1010Ω・cm以下の導電性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属や、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を蒸着またはスパッタリングによりフィルム状または円筒状のプラスチックや紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びこれらを押し出しや引き抜き等の工法でドラム状に素管化した後に切削、超仕上げ、研磨等の表面処理を施した管等を使用することができる。
ドラム状の支持体としては、直径20〜150mmのものが好ましく、直径24〜100mmのものがより好ましく、直径28〜70mmのものがさらに好ましい。ドラム状支持体の直径が20mm未満であると、ドラム周辺に帯電、露光、現像、転写、クリーニングの各工程を行う構成を配置することが物理的に困難となることがあり、直径が150mmを超えると画像形成装置が大型化してしまう。特に画像形成装置がタンデム型の場合には複数の感光体を搭載する必要があるため、直径70mm以下が好ましく直径60mm以下がより好ましい。また、特開昭52−36016号公報に開示されているようなエンドレスニッケルベルトやエンドレスステンレスベルトも導電性支持体として使用可能である。
感光体の下引き層は一層で構成しても複数の層で構成してもよく、例えば樹脂を主成分としたもの、白色顔料と樹脂を主成分としたもの、導電性基体表面を化学的又は電気化学的に酸化させた酸化金属膜等が挙げられる。これらの中でも白色顔料と樹脂を主成分とするものが好ましい。下引き層の厚みは、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10μmが好ましく1〜5μmがより好ましい。
白色顔料としては、例えば酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられ、これらの中でも導電性支持体からの電荷の注入防止性が優れる酸化チタンが特に好ましい。樹脂としては、例えばポリアミド、ポリビニルアルコール、カゼイン、メチルセルロース等の熱可塑性樹脂;アクリル、フェノール、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層における電荷発生物質としては、例えばモノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキスアゾ顔料等のアゾ顔料、トリアリールメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサンテン系染料、シアニン系色素、スチリル系色素、ピリリウム系染料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、多環キノン系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料、インダスロン系顔料、スクアリリウム系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機系顔料または染料;セレン、セレン−ヒ素、セレン−テルル、硫化カドミウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アモルファスシリコン等の無機材料等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層における電荷輸送物質としては、例えばアントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、テトラゾール誘導体、メタロセン誘導体、フェノチアジン誘導体、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチリルヒドラゾン化合物、エナミン化合物、ブタジエン化合物、ジスチリル化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、チアゾール化合物、イミダゾール化合物、トリフェニルアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリフェニルメタン誘導体等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層を形成するために使用する結着樹脂としては、電気絶縁性でありそれ自体公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂及び光導電性樹脂等を使用することができる。この結着樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネ−ト、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、例えばフェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類等が挙げられる。フェノール系化合物としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類等が挙げられる。
パラフェニレンジアミン類としては、例えばN−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
ハイドロキノン類としては、例えば2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等が挙げられる。
有機硫黄化合物類としては、例えばジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。有機燐化合物類としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等が挙げられる。これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類等の酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%が好ましい。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般的な樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。また、感光層中にはレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤としては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマ、またはオリゴマが使用される。レベリング剤の使用量は、バインダ樹脂100質量部に対して0〜1質量部が好ましい。
静電潜像の形成は、例えば像担持体の表面を一様に帯電させた後、形成したい画像と同様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。静電潜像形成手段は、例えば像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、像担持体の表面を露光する露光器とを少なくとも有する。
帯電は、例えば帯電器を用いて像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。帯電器としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば導電性または半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。帯電器としては、交流成分を有する電圧を印加する電圧印加手段を有するものが好ましい。
露光は、例えば露光器を用いて像担持体の表面を露光することにより行うことができる。露光器としては、帯電器により帯電された像担持体の表面に形成すべき画像と同様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系等の各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては像担持体の裏面側から露光を行う光背面方式を採用してもよい。
現像工程は、静電潜像をトナーを含む現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。この可視像の形成は、現像剤を用いて静電潜像を現像することにより行うことができ、この可視像化は現像手段により行うことができる。この現像手段は、現像剤を用いて現像することができる限り特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば現像剤を収容して静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられる。
現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし湿式現像方式のものであってもよく、また単色用現像器であってもよいし多色用現像器であってもよく、例えば現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの等が好適に挙げられる。現像器内では、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持されて磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、感光体近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって感光体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて感光体の表面にトナーによる可視像が形成される。現像器に収容する現像剤は、1成分現像剤であってもよいし2成分現像剤であってもよい。
転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用いてこの中間転写体上に可視像を1次転写した後、1次転写された可視像を記録媒体上に2次転写する態様が好ましく、トナーとして2色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する1次転写工程と、この複合転写像を記録媒体上に転写する2次転写工程とを含む態様がより好ましい。
転写は、可視像を転写帯電器を用いて像担持体を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する1次転写手段と、この複合転写像を記録媒体上に転写する2次転写手段とを有する態様が好ましい。なお中間転写体としては特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば転写ベルト等が好適に挙げられる。また像担持体は、感光体上に形成されたトナー像を1次転写して色重ねを行った後にさらに記録媒体へ転写を行う、いわゆる中間転写方式による画像形成を行う際に使用する中間転写体であってもよい。
中間転写体としては、体積抵抗1.0×105〜1.0×1011Ω・cmの導電性を示すものが好ましい。体積抵抗が1.0×105Ω・cmを下回る場合には、感光体から中間転写体上へトナー像の転写が行われる際に、放電を伴いトナー像が乱れるいわゆる転写チリが生じることがある。また、体積抵抗が1.0×1011Ω・cmを上回る場合には、中間転写体から紙等の記録媒体へトナー像を転写した後に中間転写体上へトナー像の対抗電荷が残留し、次の画像上に残像として現れることがある。
中間転写体としては、例えば酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物やカーボンブラック等の導電性粒子や導電性高分子を単独または併用して熱可塑性樹脂と共に混練した後、押し出し成型したベルト状または円筒状のプラスチック等を使用することができる。この他、熱架橋反応性のモノマやオリゴマを含む樹脂液に必要により上述した導電性粒子や導電性高分子を加え、加熱しつつ遠心成形を行い無端ベルト上の中間転写体を得ることもできる。中間転写体に表面層を設ける場合には、上述の感光体表面層に使用した表面層材料のうち電荷輸送材料を除く組成物に適宜導電性物質を併用して抵抗調整を行い使用することができる。
転写手段(1次転写手段、2次転写手段)は、像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写手段は1つであってもよいし2つ以上であってもよい。転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器等が挙げられる。なお、前記記録媒体としては特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
保護層形成工程は、転写後の像担持体表面に本発明の像担持体保護剤を付与して保護層を形成する工程である。保護層形成手段としては、上述した本発明の保護層形成装置を用いることができる。
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着手段を用いて定着させる工程であり、各色のトナーを記録媒体に転写した後にそれぞれ行ってもよいし、各色のトナーを積層した状態で一度に記録媒体に転写した後に行ってもよい。定着手段としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。加熱加圧手段における加熱は通常80℃〜200℃が好ましい。なお本発明においては、目的に応じて定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて公知の光定着器を用いてもよい。
除電工程は、像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。除電手段としては特に制限はなく、像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば除電ランプ等が好適に挙げられる。
クリーニング工程は、像担持体上に残留する前記電子写真用トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。クリーニング手段は、転写手段より下流側かつ保護層形成手段より上流側に設けられることが好ましい。クリーニング手段としては特に制限はなく、像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。リサイクル手段としては特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
制御工程は前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。制御手段としては前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばシーケンサ、コンピュータ等の機器が挙げられる。
次に、本発明の保護層形成装置を具備する画像形成装置を図8を用いて説明する。同図において画像形成装置100は、ドラム状の像担持体である感光体ドラム1Y,1M,1C,1Kの周囲に、それぞれ保護層形成装置2、帯電装置3、潜像形成装置8、現像装置5、転写装置6、及びクリーニング機構4が配置され、以下の動作で画像形成が行われる。
有機光導電層を有する感光体(OPC)に代表される各感光体ドラム1は、図示しない除電ランプ等で除電され、帯電装置3で均一にマイナスに帯電される。帯電装置3による感光体ドラム1の帯電が行われる際には、図示しない電圧印加機構から帯電装置3に各感光体ドラム1を所望の電位に帯電させるに適した適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
帯電された各感光体ドラム1は、レーザ光学系等の潜像形成装置8から照射されるレーザ光で潜像形成(露光部電位の絶対値は非露光部電位の絶対値より低電位となる)が行われる。レーザ光は半導体レーザから発せられ、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等により各感光体ドラム1の表面をその回転軸方向に走査する。
このようにして形成された静電潜像は、現像装置5に設けられた現像剤担持体である現像スリーブ上に供給されたトナー粒子またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、トナー可視像が形成される。静電潜像の現像時には、図示しない電圧印加機構から現像スリーブに対して、各感光体ドラム1の露光部と非露光部との間にある適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
各色に対応した各感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、転写装置6によって中間転写体60上に転写された後、給紙機構200から給送された紙等の記録媒体上に転写される。このとき転写装置6には、転写バイアスとしてトナー帯電の極性とは逆極性の電位が印加されることが好ましい。その後、中間転写体60は感光体ドラム1から分離されて転写像が得られる。また、各感光体ドラム1上に残存するトナー粒子は、クリーニング部材によってクリーニング機構4内のトナー回収室へと回収される。
画像形成装置としては、上述の現像装置が複数配置されたものを用い、複数の現像装置によって順次作製された色が異なる複数トナー像を順次記録媒体上へ転写した後に定着機構へ送り、熱等によってトナーを定着する装置であってもよく、あるいは同様に作製された複数のトナー像を一旦中間転写体上に順次転写した後、これを一括して記録媒体に転写後に定着する装置であってもよい。
また帯電装置3は、感光体ドラム1の表面に接触または近接して配設された帯電装置であることが好ましく、本実施形態では放電ワイヤを用いた。これにより、いわゆるコロトロンやスコロトロンと言われるコロナ放電器に比して帯電時に発生するオゾン量を大幅に抑制することが可能となる。
このような帯電部材を感光体ドラムの表面に接触または近接して帯電を行う帯電装置では、上述のように放電が感光体ドラム表面近傍の領域で行われるため、感光体ドラムへの電気的ストレスが大きくなりがちである。しかし、本発明の像担持体保護剤を用いた保護層形成装置を用いることにより、長期間に渡り感光体ドラムを劣化させることなく維持できるため、経時的な画像の変動や使用環境による画像の変動を大幅に抑制でき、安定した画像品質の確保が可能となる。
本発明の画像形成装置によれば、上述したように像担持体の表面状態の変動に対しての許容範囲に優れ、像担持体への帯電性能の変動等を高度に抑制した構成であるため、後述するトナーと併用することにより極めて高画質な画像を長期にわたって安定に形成することができる。
上述の構成により本発明の画像形成装置によれば、像担持体保護剤を有する保護層形成装置を有しているので、像担持体を極めて長期間交換することなく使用し続けることができる。特に像担持体が最表面層に熱硬化性樹脂を含む場合には、電気的ストレスによる像担持体の劣化を像担持体保護剤で防止することにより熱硬化性樹脂を含む像担持体の機械的ストレスに対する耐久性を長期間にわたって持続的に発現させることが可能となり、像担持体の耐久性を実質無交換で使用できるレベルまで引き上げることが可能となる。
また、像担持体表面に接触または近接して配設された帯電装置では、放電領域が像担持体のごく近傍に存在するため電気的ストレスが大きくなりがちであるが、像担持体保護層を形成した本発明の画像形成装置であれば像担持体を電気的ストレスに曝すことなく使用できる。さらに、本発明の像担持体保護成分に含まれる金属成分は十分に抑制されているため、接触または近接して配設された帯電装置を金属酸化物等で汚染することがなく、帯電装置の耐久性も向上させることができる。
また、像担持体の表面は形成された保護層の効果により表面状態の変化を極めて小さくできるため、クリーニングの良否が像担持体の状態変化に対して敏感に変動してしまうような、平均円形度が大きなトナーや平均粒径が小さなトナーであっても、長期間にわたって安定したクリーニングを行うことができる。
次に、本発明の画像形成装置に好適に使用されるトナーについて説明する。
トナーとしては、下記式で表される円形度SRの平均値である平均円形度が0.93〜1.00のものが好ましく、0.95〜0.99のものがより好ましい。この平均円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合に1.00を示し、表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
円形度SR=(トナー粒子の投影面積と同じ面積の円の周囲長)/(トナー粒子の投影像の周囲長)
平均円形度が0.93〜1.00の範囲ではトナー粒子の表面は滑らかであり、トナー粒子同士及びトナー粒子と感光体との接触面積が小さいために転写性に優れる。またトナー粒子に角がないため、現像装置内での現像剤の攪拌トルクが小さく、攪拌の駆動が安定するために異常画像が発生しない。またドットを形成するトナー中に角張ったトナー粒子がないため、転写工程で記録媒体に圧接する際に圧がドットを形成するトナー全体に対して均一にかかり、転写中抜けが生じにくい。さらにトナー粒子が角張っていないことから、トナー粒子そのものの研磨力が小さく、像担持体の表面を傷つけたり磨耗させたりしない。
円形度SRは、例えばフロー式粒子像分析装置(東亜医用電子社製FPIA−1000)を用いて測定することができる。
先ず、予め不純固形物を除去した容器中の水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩)を0.1〜0.5ml加え、さらに測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器で約1〜3分間の分散処理を行い、分散液濃度を3000〜10000個/μlとして前記装置によりトナーの形状、粒度を測定する。
トナーの質量平均粒径(D4)は3〜10μmが好ましく、4〜8μmがより好ましい。この範囲では、微小な潜像ドットに対して十分に小さい粒径のトナー粒子を有していることからドット再現性に優れる。質量平均粒径が3μm未満では転写効率の低下やブレードクリーニング性の低下といった現象が発生しやすいことがあり、質量平均粒径が10μmを超えると文字やラインの飛び散りを抑えることが難しい場合がある。
また、質量平均粒径と個数平均粒径(D1)の比(D4/D1)は1.00〜1.40の範囲が好ましく、1.00〜1.30の範囲がより好ましい。この比(D4/D1)が1に近づくほどそのトナーの粒度分布がシャープであることを意味し、(D4/D1)が1.00〜1.40の範囲ではトナー粒径による選択現像が起きないため画質の安定性に優れる。また、トナーの粒度分布がシャープであることから摩擦帯電量分布もシャープとなり、カブリの発生が抑えられる。さらにトナー粒径が揃っていると、潜像ドットに対して緻密かつ整然と並ぶように現像されるので、ドット再現性に優れる。
トナーの質量平均粒径(D4)及び粒度分布の測定は、例えばコールターカウンタ法により測定可能である。コールターカウンタ法によるトナー粒子の粒度分布の測定装置としては、コールターカウンタTA−IIやコールターマルチサイザII(いずれもコールター社製)が挙げられる。
先ず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加える。ここで、電解液とは1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調製したものであり、例えばISOTON−II(コールター社製)が使用できる。さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間の分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いてトナー粒子またはトナーの体積及び個数を測定し、体積分布と個数分布とを算出する。得られた分布からトナーの質量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)とを求めることができる。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上ないし40.30μm未満の粒子を対象とする。
このようなほぼ球形の形状のトナーとしては、窒素原子を含む官能基を有するポリエステルプレポリマ、ポリエステル、着色剤、離型剤を含むトナー組成物を水系媒体中で樹脂微粒子の存在下で架橋及び/または伸長反応させることにより作製することができる。この反応で製造されたトナーは、トナー表面を硬化させることでホットオフセットを少なくすることができ、定着装置の汚れとなってそれが画像上に表れる不具合の発生を抑えることができる。
変性ポリエステル系樹脂からなるプレポリマとしては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマ(A)が挙げられ、また、このプレポリマと伸長または架橋する化合物としてはアミン類(B)が挙げられる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマ(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルを更にポリイソシアネート(3)と反応させた物等が挙げられる。ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。これらの中でもアルコール性水酸基が特に好ましい。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)、3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。
ジオール(1−1)としては、例えばアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物等が挙げられる。これらの中でも炭素数2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、これと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用が特に好ましい。
3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等);3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)及び3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、これらの中でも(2−1)単独及び(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2−1)としては、例えばアルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸等);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)等が挙げられる。これらの中でも炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸が特に好ましい。
3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)等が挙げられる。なおポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]で2/1〜1/1が好ましく、当量比1.5/1〜1/1がより好ましく、当量比1.3/1〜1.02/1がさらに好ましい。
ポリイソシアネート(3)としては、例えば脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたもの;等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]との当量比[NCO]/[OH]で5/1〜1/1が好ましく、当量比4/1〜1.2/1がより好ましく、当量比2.5/1〜1.5/1がさらに好ましい。当量比[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化することがあり、[NCO]のモル比が1未満であると変性ポリエステル中のウレア含量が低くなって耐ホットオフセット性が悪化する。
末端にイソシアネート基を有するプレポリマ(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は0.5〜40質量%が好ましく、含有量1〜30質量%がより好ましく、含有量2〜20質量%がさらに好ましい。含有量が0.5質量%未満であると耐ホットオフセット性が悪化すると共に耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になり、含有量が40質量%を超えると低温定着性が悪化することがある。
イソシアネート基を有するプレポリマ(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は平均1個以上が好ましく、平均1.5〜3個がより好ましく、平均1.8〜2.5個がさらに好ましい。1分子当たり1個未満であるとウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、及びB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)等が挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタン等);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等);及び脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)等が挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)とから得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1及びB1と少量のB2の混合物である。
さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等)、またはそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)等が挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマ(A)中のイソシアネート基[NCO]とアミン類(B)中のアミノ基[NHx]との当量比[NCO]/[NHx]で1/2〜2/1が好ましく、当量比1.5/1〜1/1.5がより好ましく、当量比1.2/1〜1/1.2が更に好ましい。当量比[NCO]/[NHx]が2を超えた場合や1/2未満の場合には、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり耐ホットオフセット性が悪化する。
本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中にウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量とのモル比は100/0〜10/90が好ましく、モル比80/20〜20/80がより好ましく、モル比60/40〜30/70が更さらに好ましい。ウレア結合のモル比が10%未満であると、耐ホットオフセット性が悪化することがある。
これらの反応により、上述のトナーに用いられる変性ポリエステル、中でもウレア変性ポリエステル(i)が作製できる。これらウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマ法により製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の質量平均分子量は1万以上が好ましく、2万〜1000万がより好ましく、3万〜100万がさらに好ましい。質量平均分子量が1万未満であると耐ホットオフセット性が悪化することがある。
また、ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、質量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は20,000以下が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000がさらに好ましい。数平均分子量が20,000を超えると、低温定着性及びフルカラー画像形成装置に用いた場合の光沢性が悪化することがある。
本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に変性されていないポリエステル(ii)を結着樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上するため単独使用より好ましい。(ii)としては、(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物等が挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)とは少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。
従って、(i)のポリエステル成分と(ii)とは互いに類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)との質量比は5/95〜80/20が好ましく、質量比5/95〜30/70がより好ましく、質量比5/95〜25/75がさらに好ましく、質量比7/93〜20/80が特に好ましい。(i)の質量比が5質量%未満であると耐ホットオフセット性が悪化すると共に、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。
(ii)のピーク分子量は1,000〜30,000が好ましく、1,500〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000がさらに好ましい。ピーク分子量が1,000未満であると耐熱保存性が悪化することがあり、ピーク分子量が10,000を超えると低温定着性が悪化することがある。(ii)の水酸基価は5以上が好ましく、10〜120がより好ましく、20〜80がさらに好ましい。水酸基価が5未満であると耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になることがある。(ii)の酸価は1〜30が好ましく、5〜20がより好ましい。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は50〜70℃が好ましく、55〜65℃がより好ましい。ガラス転移温度が50℃未満であるとトナーの高温保管時のブロッキングが悪化することがあり、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステル樹脂の共存により、本発明に用いるトナーにおいては公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
結着樹脂の貯蔵弾性率としては、測定周波数20Hzにおいて10,000dyne/cm2となる温度(TG’)が100℃以上であることが好ましく、110〜200℃がより好ましい。温度(TG’)が100℃未満であると耐ホットオフセット性が悪化することがある。
結着樹脂の粘性としては、測定周波数20Hzにおいて1000ポイズとなる温度(Tη)が180℃以下であることが好ましく、90〜160℃がより好ましい。温度(Tη)が180℃を超えると低温定着性が悪化する。すなわち低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点からTG’はTηより高いことが好ましい。換言するとTG’とTηとの差(TG’−Tη)は0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。なお差の上限は特に限定されない。また耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、TηとTgとの差は0〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましく、20〜80℃がさらに好ましい。
上述の結着樹脂は、以下の方法等で製造することができる。
先ず、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)とを、テトラブトキシチタネート、ジブチルチンオキサイド等公知のエステル化触媒の存在下、150〜280℃に加熱し、必要により減圧しながら生成する水を溜去して水酸基を有するポリエステルを得る。次いで、40〜140℃にて、これにポリイソシアネート(3)を反応させ、イソシアネート基を有するプレポリマ(A)を得る。さらに(A)にアミン類(B)を0〜140℃にて反応させ、ウレア結合で変性されたポリエステルを得る。(3)を反応させる際及び(A)と(B)とを反応させる際には、必要により溶剤を用いることもできる。
使用可能な溶剤としては、例えば芳香族溶剤(トルエン、キシレン等);ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等);エステル類(酢酸エチル等);アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)等のイソシアネート(3)に対して不活性なものが挙げられる。なお、ウレア結合で変性されていないポリエステル(ii)を併用する場合は、水酸基を有するポリエステルと同様の方法で(ii)を製造し、これを(i)の反応完了後の溶液に溶解して混合する。
また、本発明に用いられるトナーは以下の方法で製造することができるが、もちろんこれらに限定されることはない。
上述のトナーは、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマ(A)からなる分散体を(B)と反応させて形成してもよいし、予め製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いてもよい。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマ(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマ(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。
プレポリマ(A)と他のトナー組成物である(以下、トナー原料と称することもある)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、未変性ポリエステル樹脂等は、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、予めトナー原料を混合した後に水系媒体中にその混合物を加えて分散させた方がより好ましい。また本発明においては、着色剤、離型剤、及び帯電制御剤等の他のトナー原料は、必ずしも水系媒体中で粒子を形成させるときに混合しておく必要はなく、粒子を形成させた後に添加してもよい。例えば着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
水系媒体としては、水単独でもよいが水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブ等)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)等が挙げられる。
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマ(A)を含むトナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、50〜2000質量部が好ましく、100〜1000質量部がより好ましい。使用量が50質量部未満であるとトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られないことがあり、使用量が2000質量部を超えると経済的でない。
また、必要に応じて分散剤を用いることもできる。分散剤を用いた方が粒度分布がシャープになると共に分散が安定である点で好ましい。分散の方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波等の公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするためには高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが1000〜30000rpmが好ましく、5000〜20000rpmがより好ましい。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は通常0.1〜5分間である。分散時の温度としては通常0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。高温である方がウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマ(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
プレポリマ(A)からウレア変性ポリエステル(i)を合成する工程は、水系媒体中でトナー組成物を分散する前にアミン類(B)を加えて反応させてもよいし、水系媒体中に分散した後にアミン類(B)を加えて粒子界面から反応を起こしてもよい。この場合、製造されるトナー表面に優先的にウレア変性ポリエステルが生成し、粒子内部で濃度勾配を設けることもできる。
上述の反応においては、必要に応じて分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイド等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも界面活性剤が好ましい。
界面活性剤としては、例えば陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でもフルオロアルキル基を有するものが好適に挙げられる。フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、例えば炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(炭素数6〜11)オキシ]−1−アルキル(炭素数3〜4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(炭素数6〜8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(炭素数11〜20)カルボン酸またはその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(炭素数7〜13)またはその金属塩、パーフルオロアルキル(炭素数4〜12)スルホン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(炭素数6〜16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。フルオロアルキル基を有する界面活性剤の市販品としては、例えばサーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製);フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製);ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製);メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、例えばアミン塩型界面活性剤、四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤等が挙げられる。アミン塩型界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等が挙げられる。四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。陽イオン界面活性剤の中でもフルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級又は三級アミン酸、パーフルオロアルキル(炭素数6〜10個)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤の市販品としては、例えばサーフロンS−121(旭硝子社製);フロラードFC−135(住友3M社製);ユニダインDS−202(ダイキン工業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ化学工業社製);エクトップEF−132(ト−ケムプロダクツ社製);フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタイン等が挙げられる。難水溶性の無機化合物分散剤としては、例えばリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。高分子系保護コロイドとしては、例えば酸類、水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、アミド化合物またはこれらのメチロール化合物、クロライド類、窒素原子またはその複素環を有するもの等のホモポリマまたは共重合体、ポリオキシエチレン系、セルロース類等が挙げられる。
酸類としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類としては、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等が挙げられる。ビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。アミド化合物またはこれらのメチロール化合物としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド酸、またはこれらのメチロール化合物等が挙げられる。
クロライド類としては、例えばアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等が挙げられる。窒素原子またはその複素環を有するもの等ホモポリマまたは共重合体としては、例えばビニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等が挙げられる。ポリオキシエチレン系としては、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等が挙げられる。セルロース類としては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
分散液の調製においては、必要に応じて分散安定剤を用いることができる。分散安定剤としては、例えばリン酸カルシウム塩等の酸、アルカリに溶解可能なもの等が挙げられる。分散安定剤を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後に水洗する方法、酵素により分解する方法等により、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。分散液の調製においては伸長反応ないし架橋反応の触媒を用いることができる。触媒としては、例えばジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート等が挙げられる。
さらに、トナー組成物の粘度を低くするため、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマ(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。粒度分布がシャープになる点から溶剤を用いた方が好ましい。この溶剤は、除去が容易である点から揮発性であることが好ましい。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましく、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒がより好ましい。プレポリマ(A)100質量部に対する溶剤の使用量は、0〜300質量部が好ましく、0〜100質量部がより好ましく、25〜70質量部がさらに好ましい。溶剤を使用した場合は、伸長及び/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
伸長及び/または架橋反応時間は、プレポリマ(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。反応温度は0〜150℃が好ましく、40〜98℃がより好ましい。さらに必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート等が挙げられる。
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温して液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。また、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧し、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発させて除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライヤ、ベルトドライヤ、ロータリーキルン等の短時間の処理で十分に目的とする品質が得られる。
乳化分散時の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄や乾燥処理が行われた場合には、所望の粒度分布に分級して粒度分布を整えることができる。分級操作は液中でサイクロン、デカンタ、遠心分離等を作動することにより行われ、これにより微粒子部分を取り除くことができる。乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよいが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。得られた不要の微粒子または粗粒子は、再び混練工程に戻して粒子の形成に用いることができる。その際、不要の微粒子または粗粒子はウェットの状態でも構わない。用いた分散剤は得られた分散液からできるだけ取り除くことが好ましいが、先に述べた分級操作と同時に行うことが好ましい。
得られた乾燥後のトナーの粉体を離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子等の異種粒子と共に混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えたりすることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入して加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等がある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エア圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
トナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料が使用でき、具体的にはカーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドンレッド、ベンジジンイエロー、ローズベンガル等を単独あるいは混合して用いることができる。さらに必要に応じて、トナー粒子自身に磁気特性を持たせるには、例えばフェライト、マグネタイト、マグヘマイト等の酸化鉄類;鉄、コバルト、ニッケル等の金属あるいはこれらと他の金属との合金等の磁性成分を単独または混合してトナー粒子へ含有させればよい。これらの成分は着色剤成分として使用することもできる。
本発明に用いられるトナー中の着色剤の個数平均粒径は0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。個数平均粒径が0.5μmを超えると顔料の分散性が充分なレベルには到らず、好ましい透明性が得られないことがある。一方個数平均粒径が0.1μmより小さい微小粒径の着色剤は可視光の半波長より十分小さいため、光の反射や吸収特性に悪影響を及ぼさないと考えられる。よって個数平均粒径が0.1μm未満の着色剤の粒子は良好な色再現性と定着画像を有するOHPシートの透明性に貢献する。一方個数平均粒径が0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在していると、入射光の透過が阻害されたり散乱されたりしてOHPシートの投影画像の明るさ及び彩かさが低下する傾向がある。さらに0.5μmより大きな粒径の着色剤が多く存在しているとトナー粒子表面から着色剤が脱離し、カブリ、ドラム汚染、クリーニング不良といった種々の問題を引き起こすことがある。個数平均粒径が0.7μmより大きな粒径の着色剤は全着色剤の10個数%以下が好ましく、5個数%以下がより好ましい。
また着色剤を結着樹脂の一部または全部と共に、予め湿潤液を加えたうえで混練しておくことにより、初期的に結着樹脂と着色剤とが十分に付着した状態となり、その後のトナー製造工程でのトナー粒子中における着色剤分散がより効果的に行われ、着色剤の分散粒径が小さくなり一層良好な透明性を得ることができる。予めの混錬に用いる結着樹脂としては、トナー用結着樹脂として例示した樹脂類をそのまま使用することができるが、これらに限定されるものではない。結着樹脂と着色剤との混合物を予め湿潤液と共に混練する具体的な方法としては、例えば結着樹脂及び着色剤及び湿潤液を、ヘンシェルミキサ等のブレンダにて混合した後、得られた混合物を二本ロール、三本ロール等の混練機によって結着樹脂の溶融温度よりも低い温度で混練してサンプルを得る。
また湿潤液としては、結着樹脂の溶解性や着色剤との塗れ性を考慮しながら一般的なものを使用できるが、アセトン、トルエン、ブタノン等の有機溶剤、あるいは水が着色剤の分散性の面から好ましい。これらの中でも水の使用は、環境への配慮及び後のトナー製造工程における着色剤の分散安定性維持の点から特に好ましい。この製法によると、得られるトナーに含有される着色剤粒子の粒径が小さくなるばかりでなく、粒子の分散状態の均一性が高くなるため、OHPによる投影像の色の再現性がより一層よくなる。
トナー中には、結着樹脂及び着色剤とともに離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックス等);カルボニル基含有ワックス等が挙げられる。これらの中でもカルボニル基含有ワックスが特に好ましい。
カルボニル基含有ワックスとしては、例えばポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミド等);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミド等);ジアルキルケトン(ジステアリルケトン等)等が挙げられる。これらの中でもポリアルカン酸エステルが特に好ましい。
離型剤の融点は40〜160℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。融点が40℃未満であると耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、60℃を超えると低温での定着時にコールドオフセットを起こし易くなることがある。離型剤の溶融粘度は、融点より20℃高い温度で5〜1000cpsが好ましく、10〜100cpsがより好ましい。溶融粘度が1000cpsを超えると、耐ホットオフセット性及び低温定着性への向上効果が乏しくなることがある。離型剤のトナー中における含有量は、0〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
また、トナー帯電量及びその立ち上がりを早くするため、必要に応じてトナー中に帯電制御剤を含有させてもよい。帯電制御剤として有色材料を用いると色の変化が起こるため、無色または白色に近い材料が好ましい。帯電制御剤としては特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えばトリフェニルメタン系染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及びサリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。
帯電制御剤としては市販品を用いることができ、市販品としては、例えば第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(何れもオリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(何れも保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(何れもヘキスト社製);LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(何れも日本カ一リット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
帯電制御剤の添加量は、バインダ樹脂の種類、添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法等によって異なり、一義的に規定できるものではないが、バインダ樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。添加量が10質量部を超えるとトナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させて現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。これらの帯電制御剤はマスターバッチや樹脂と共に溶融混練した後に溶解分散させることもできるし、有機溶剤に直接溶解して分散する際に加えてもよく、トナー表面にトナー粒子作製後に固定化させてもよい。
また、トナー製造過程で水系媒体中にトナー組成物を分散させる際に、主に分散安定化のために樹脂微粒子を添加してもよい。樹脂微粒子は、水性分散体を形成し得る樹脂であれば如何なる樹脂も使用することができ、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよく、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマ樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られ易い点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、またはそれらの併用が好ましい。ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマを単独重合または共重合したポリマが用いられ、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子が好適である。この無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。無機微粒子の一次粒子径は5nm〜2μmが好ましく、5nm〜500nmがより好ましい。また無機微粒子のBET法による比表面積は20〜500m2/gが好ましい。無機微粒子のトナーにおける添加量は0.01〜5質量%が好ましく、0.01〜2.0質量%がより好ましい。その他、高分子系微粒子、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロン等の重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
また、トナーには流動化剤を添加することもできる。この流動化剤の添加により表面処理を行って疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。流動化剤としては、例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
また、感光体や中間転写体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩;ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合などによって製造されたポリマ微粒子などが挙げられる。ポリマ微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1μmのものが好ましい。
上述したトナーを用いることにより、上述したように現像の安定性に優れた高画質なトナー像を形成することができる。また、本発明の画像形成装置は、上述のような高品質な画像を得るに適した構成の重合法トナーとの併用ばかりでなく、粉砕法による不定形のトナーに対しても適用でき、この場合にも装置寿命を大幅に延ばすことができる。このような粉砕法のトナーを構成する材料としては、通常電子写真用トナーとして使用されるものが特に制限なく適用可能である。
粉砕法トナーに使用される結着樹脂としては、例えばポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレンまたはその置換体の単重合体;スチレン/p−クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、スチレン/ビニルナフタレン共重合体、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ビニルメチルケトン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/イソプレン共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル系単重合体またはその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル誘導体;ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリオール系重合体、エポキシ系重合体、テルペン系重合体、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもスチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が、電気特性やコスト面等から好ましく、さらには良好な定着特性を有するものとして、ポリエステル系樹脂、ポリオール系樹脂が特に好ましい。
上述の粉砕法トナーでは、これらの樹脂成分と共に前述のような着色剤成分、ワックス成分、電荷制御成分等を必要により前混合後、樹脂成分の溶融温度近傍以下で混練してこれを冷却後、粉砕分級工程を経てトナーを作製すればよく、また必要に応じて前記外添成分を適宜添加し混合すればよい。
上述した構成では、画像形成装置として複写装置を用いた例を示したが、本発明が適用可能な画像形成装置はこれに限られず、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらの複合機等の他の画像形成装置にも本発明は適用可能である。