JP4782942B2 - ゴルフボールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン材料をカバー材料として用いたゴルフボールの製造方法に関し、さらに詳しくは、リサイクル成形が可能であるとともに、反発性が高く、しかも耐擦過傷性に優れた熱可塑性ポリウレタン材料をカバーに用いたゴルフボールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴルフボールのカバー材料としてポリウレタン材料を用いることが注目されている。ポリウレタン材料は、成形物の成形方法の観点から、熱硬化性ポリウレタン材料と熱可塑性ポリウレタン材料に大きく分けられている。前者の熱硬化性ポリウレタン材料の成形物は、イソシアネート末端基を持つウレタンプレポリマーと、ポリオール、ポリアミンといった硬化剤の液状原料とを加熱混合し、これを直接金型に流し込み加熱してウレタン硬化反応を生じさせることで得ることができる。
【0003】
上記のような熱硬化性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールの提案は数多くなされており、例えば米国特許第5334673号公報、同6117024号公報、同6190268号公報などに記載されている。また、熱硬化性ポリウレタン材料の成形方法については、例えば米国特許5006297号公報、同5733428号公報、同5888437号公報、同5897884号公報、同5947843号公報などに記載されている。
【0004】
熱硬化性ポリウレタン材料の成形物は、加熱による可塑性がないために、原料および成形品のリサイクルを行うことができない。また、熱硬化性ポリウレタン材料の成形物は、加熱硬化工程および冷却工程が長時間であること、原料の加熱反応性が高く不安定なため、成形時間のコントロールが非常に困難であることから、ゴルフボールカバーのような特殊な成形物(芯材の周囲に被覆する成形物)に適用した場合の生産性は効率的ではない。
【0005】
一方、後者の熱可塑性ポリウレタン材料の成形物は、直接原料を反応させて成形物を得るのではなく、前述の熱硬化性ポリウレタン材料の成形物とはやや異なった原料と製造法を用いることで合成された線状ポリウレタン材料を成形に用いる。このようなポリウレタン材料は熱可塑性があり、熱可塑化したポリウレタン材料は冷却することで固まる性質を持つ。よって、このようなポリウレタン材料は射出成形機を用いた成形が可能である。熱可塑性ポリウレタン材料の射出成形は、成形時間が熱硬化性リウレタン材料の成形時間に比べて非常に短く、また精密成形に適しているので、ゴルフボールカバーの成形法として最適である。また、熱可塑性ポリウレタン材料はリサイクルが可能であり、地球環境にも優しい。米国特許3395109号公報、同4248432号公報、同4442282号公報などでは、熱可塑性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールの提案がなされている。
【0006】
しかしながら、従来の熱可塑性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールカバーは、打感、コントロール性、反発性、アイアン打撃時の耐擦過傷性の全てを満足させるものではなかった。
【0007】
これに対し、特開平9−271538号公報には、反発性の高い熱可塑性ポリウレタン材料を用いたゴルフボールカバーが記載されている。しかし、このゴルフボールカバーは、アイアン打撃時の耐擦過傷性が充分ではなかった。
【0008】
また、特開平11−178949号公報には、熱可塑性ポリウレタン材料とイソシアネート化合物との反応生成物を主成分とし、アイアン打撃時の耐擦過傷性が比較的良好なゴルフボールカバーが記載されている。このカバーでは、添加剤としてジイソシアネート、ブロックイソシアネート二量体といったイソシアネート化合物を熱可塑性ポリウレタン材料に添加するもので、添加方法としては押出機を用いた加熱溶融混合時や射出成形時に添加することで、成形時に反応させるようにしている。
【0009】
しかし、上記特開平11−178949号公報のカバーの成形においては、イソシアネート化合物の取り扱いが水分による失活のために難しく、安定した反応生成物を得ることは困難であった。また、吸湿に強いブロックイソシアネートは熱により解離した際のブロック剤の臭気が強く、カバーの成形に不向きであった。さらに、イソシアネート化合物がパウダー状や溶液状である場合、熱可塑性ポリウレタン材料への添加量のコントロールが難しく、カバー物性のコントロールが困難であった。また、熱可塑性ポリウレタン材料とイソシアネート化合物との融点の差、溶融粘度の差から成形機内でのすべり現象が生じ、充分な混練ができないことがあった。そして、上記公報記載の技術では、以上のことが原因でカバー材料における水分の影響や添加剤添加量のコントロールが不充分となり、その結果、耐擦過傷性の改良効果の点で充分に満足できるゴルフボールカバーを得ることはできなかった。
【0010】
さらに、上記特開平11−178949号公報に記載されている好ましい熱可塑性ポリウレタン材料は、脂肪族イソシアネートをベースとしたものであるが、この熱可塑性ポリウレタン材料は、イソシアネートとの反応性が非常に大きく反応のコントロールが困難であるために、射出成形に用いる前にゲル化を生じやすく充分な可塑性を確保できないという問題、成形中にゲル化することがあるという問題、リサイクル樹脂がゲル化のために再生不能になることがあるという問題などの多くの問題を有していた。そして、以上のような問題のために、実用化は困難であった。
【0011】
また、特公昭58−2063号公報(米国特許4347338号公報)には、二個以上のイソシアネート基を持つ化合物をイソシアネート基と反応しない熱可塑性樹脂と混和し、得られた混和物を熱可塑性ポリウレタン材料に配合し、成形機に供して成形する熱硬化性ポリウレタン成形品の製造法が記載されている。しかし、上記公報記載の技術は、溶剤性と連続的な繰返し磨耗に対しての改良のみを目的としており、該公報には、上記成形材料をゴルフボールのカバー材料として使用することは示されていない。ゴルフボールのカバー材料としては、反発性、飛距離、スピン性、コントロール性、打感、耐擦過傷性、対カット性、耐変色性といったゴルフボールに必要な種々の特性を満たす材料が要望され、またそれらの材料の特性を活かすゴルフボールの製造方法が要望されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、リサイクル成形が可能であるとともに、反発性が高く、しかも耐擦過傷性に優れた熱可塑性ポリウレタン材料をカバー材料として用いたゴルフボールの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、下記(1)〜(6)に示すゴルフボールの製造方法を提供する。
【0014】
(1)コアにカバーを被覆してなるゴルフボールの製造方法において、下記成分(A)に下記成分(B)を(A):(B)の質量比100:5〜100:20の配合比で常温にてドライ配合してカバー成形材料(C)を調製する工程と、前記カバー成形材料(C)をコアの周囲に射出成形して、射出成形後の表面硬度がデュロメータD型硬度で47〜58、反発弾性率が45〜50%であるカバーをコアに被覆する工程とを具備することを特徴とするゴルフボールの製造方法。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
(B)1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたイソシアネート混合物
【0015】
(2)熱可塑性ポリウレタン材料(A)がポリエーテルポリオールと芳香族ジイソシアネートを用いて合成される熱可塑性ポリウレタン材料である(1)のゴルフボールの製造方法。
【0017】
(3)芳香族ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである(2)のゴルフボールの製造方法。
【0018】
(4)イソシアネート化合物(b−1)が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである(1)〜(3)のゴルフボールの製造方法。
【0019】
(5)熱可塑性樹脂(b−2)がポリエステルエラストマーである(1)〜(4)のゴルフボールの製造方法。
【0023】
(6)射出成形後のカバー成形材料のリサイクル成形が可能な(1)〜(5)のゴルフボールの製造方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。まず、成分(A)〜(C)について説明する。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
熱可塑性ポリウレタン材料の構造は、高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する鎖延長剤およびジイソシアネートからなる。ここで、原料となる高分子ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、ポリエステル系とポリエーテル系があり、反発弾性率が高く、低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタン材料を合成できる点で、ポリエーテル系の方がポリエステル系に比べて好ましい。ポリエーテルポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられるが、反発弾性率と低温特性の点でポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。また、高分子ポリオールの平均分子量は1000〜5000であることが好ましく、特に反発弾性の高い熱可塑性ポリウレタン材料を合成するためには2000〜4000であることが好ましい。
【0025】
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら鎖延長剤の平均分子量は20〜15000であることが好ましい。
【0026】
ジイソシアネートとしては、従来の熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明では、後述するイソシアネート混合物(B)との反応性の安定性から、芳香族ジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0027】
本発明において最も好ましい熱可塑性ポリウレタン材料は、ポリエーテルポリオールと芳香族ジイソシアネートを用いて合成される熱可塑性ポリウレタン材料であって、上記ポリエーテルポリオールが平均分子量2000以上のポリテトラメチレングリコール、上記芳香族ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのものである。
【0028】
上述した材料からなる熱可塑性ポリウレタン材料としては、市販品を好適に用いることができ、例えばディーアイシーバイエルポリマー(株)製パンデックスT−8290、T−8295、T8260や、大日精化工業(株)製レザミン2593、2597などが挙げられる。
【0029】
(B)イソシアネート混合物
イソシアネート混合物(B)は、1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたものである。ここで、上記イソシアネート化合物(b−1)としては、従来の熱可塑性ポリウレタン材料に関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、反応性、作業安全性の面から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最適である。
【0030】
また、前記熱可塑性樹脂(b−2)としては、吸水性が低く、熱可塑性ポリウレタン材料との相溶性に優れた樹脂が好ましい。このような樹脂として、例えばポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエラストマー(ポリエーテル・エステルブロック共重合体、ポリエステル・エステルブロック共重合体等)が挙げられるが、反発弾性、強度の点からポリエーテル・エステルブロック共重合体が特に好ましい。
【0031】
イソシアネート混合物(B)における熱可塑性樹脂(b−2):イソシアネート化合物(b−1)の配合比は、質量比で100:5〜100:100、特に100:10〜100:40であることが好ましい。熱可塑性樹脂(b−2)に対するイソシアネート化合物(b−1)の配合量が少なすぎると(A)との架橋反応に充分な添加量を得るためにはより多くの(B)を添加しなくてはならず、(b−2)の影響が大きく作用することで(C)の物性が不充分となり、多すぎると(b−1)が混練り中にすべり現象を起こし混合物(B)の合成が困難となる。
【0032】
イソシアネート混合物(B)は、例えば、熱可塑性樹脂(b−2)にイソシアネート化合物(b−1)を配合し、これらを温度130〜250℃のミキシングロールまたはバンバリーミキサーで充分に混練して、ペレット化または冷却後粉砕することにより得ることができる。イソシアネート混合物(B)としては、市販品を好適に用いることができ、例えば大日精化工業(株)製クロスネートEM30などが挙げられる。
【0033】
(C)カバー成形材料
カバー成形材料(C)は、前述した熱可塑性ポリウレタン材料(A)にイソシアネート混合物(B)を配合したものである。カバー成形材料(C)における熱可塑性ポリウレタン材料(A):イソシアネート混合物(B)の配合比は、質量比で100:5〜100:20であることが好ましい。熱可塑性ポリウレタン材料(A)に対するイソシアネート混合物(B)の配合量が少なすぎると架橋効果が充分に発現せず、多すぎると未反応のイソシアネートが成形物に着色現象を起こさせるので好ましくない。
【0034】
本発明においては、カバー成形材料(C)に、上述した成分(A)、(B)に加えて他の成分を配合することができる。このような他の成分として、例えば熱可塑性ポリウレタン材料以外の熱可塑性高分子材料を挙げることができ、例えばポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレンブロックエラストマー、ポリエチレン、ナイロン樹脂等を配合することができる。この場合、熱可塑性ポリウレタン材料以外の熱可塑性高分子材料の配合量は、必須成分である熱可塑性ポリウレタン材料100質量部に対して0〜100質量部、好ましくは10〜75質量部、さらに好ましくは10〜50質量部であり、カバー材の硬度の調整、反発性の改良、流動性の改良、接着性の改良などに応じて適宜選択される。さらに、カバー成形材料(C)には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0035】
本発明におけるカバーの成形では、熱可塑性ポリウレタン材料(A)にイソシアネート混合物(B)を添加してドライミキシングし、この混合物を用いて射出成形機によりコアの周囲にカバーを成形することができる。成形温度は熱可塑性ポリウレタン材料(A)の種類によって異なるが、通常150〜250℃の範囲で行われる。
【0036】
上記のようにして得られたゴルフボールカバーの反応形態、架橋形態としては、熱可塑性ポリウレタン材料の残存OH基にイソシアネート基が反応してウレタン結合を形成したり、熱可塑性ポリウレタン材料のウレタン基にイソシアネート基の付加反応が生じ、アロファネート、ビュレット架橋形態を形成したりすると考えられる。この場合、カバー成形材料(C)の射出成形直後は架橋反応が充分に進んでいないが、成形後にアニーリングを行うことにより架橋反応が進行し、ゴルフボールカバーとして有用な特性を保持するようになる。アニーリングとは、カバーを一定温度、一定時間で加熱熟成したり、室温で一定期間熟成したりすることを言う。
【0037】
本発明のゴルフボールの製造方法において、射出成形後のカバー成形材料の表面硬度はJIS−K6253に準拠したデュロメータD型硬度で47〜58であることが適当である。カバー材の表面硬度が低すぎるとアイアンショットでバックスピンがかかり過ぎ、コントロール性が悪くなる。また、カバー材の表面硬度が高すぎると、アイアンショットでのバックスピン性能が不充分となり、コントロール性が低下すると共に打感が悪くなる。
【0038】
また、本発明のゴルフボールの製造方法においては、射出成形後のカバー成形材料のJIS−K7311に準拠した反発弾性率が45〜50%であることが適当である。熱可塑性ポリウレタン材料はもともとそれ程反発性に優れた材料ではないため、上記反発弾性率は厳密に選択することが好ましい。カバー材の反発弾性率が低すぎるとゴルフボールの飛距離が大幅に低下する。また、カバー材の反発弾性率が高すぎると100ヤード以内のコントロールを必要とするショットやパッティングで初速度が高くなりすぎ、ゴルファーのフィーリングに合わないことがある。
【0039】
本発明のゴルフボールに使用されるコアについては特に制限はなく、通常用いられるあらゆるコアを使用することができ、例えばツーピースボール用ソリッドコア、複数の加硫ゴム層を持つソリッドコア、複数の樹脂層を持つソリッドコア、糸ゴム層を有する糸巻きコアといった種々のコアが使用可能である。コアの外径、質量、硬度、材質等についても制限はない。また、本発明のゴルフボールのカバーの厚さは0.1〜5.0mmの範囲にあることが好ましい。なお、カバーは一層に限らず、多層構造に形成することができるが、多層構造に形成する場合はカバー全体の厚さが上記範囲内であればよい。
【0040】
本発明のゴルフボールは、ゴルフ規則に従った直径および質量に形成され、通常、直径42.67mm以上、質量45.93g以下に形成されるが、直径は42.67〜42.9mmであることが好ましく、また980N(100kg)荷重時のボールの変形量が2.0〜4.0mm、特に2.2〜3.8mmであることが適当である。
【0041】
【実施例】
以下に実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例、比較例)
コア組成
ポリブタジエンゴム 100質量部
アクリル酸亜鉛 21.5質量部
酸化亜鉛 12質量部
ジクミルパーオキサイド 1質量部
【0043】
上記組成のコア材料を混練した後、155℃で20分間加硫成形することにより、直径38.5mmのツーピースソリッドゴルフボール用ソリッドコアを得た。なお、ポリブタジエンゴムとしては日本合成ゴム(株)製BR01を用いた。得られたコアの比重は1.07、980N(100kg)荷重を加えた時の変形量は3.4mm、USGA(R&A)の測定方法に準拠して測定した初速度は78.1m/sであった。
【0044】
また、表1および表2に示した熱可塑性ウレタン材料(単位:質量部)をスクリュー式二軸押出機により混練温度190℃で混練りし、(A)熱可塑性ウレタン材料を得た。表1および表2中の成分としては下記のものを用いた。
【0045】
実施例と比較例の違いは次のとおりである。実施例1〜5は本発明の製造方法に従い、下記成分(A)に下記成分(B)をドライ配合(加熱混練ではなく、両者を常温にてタンブラー等を使用して混ぜること)する工程の後に、前記ドライ配合物をコアの周囲に射出成形してコアにカバーを被覆する工程を具備するゴルフボールの製造方法である。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
(B)1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたイソシアネート混合物
【0046】
これに対して、比較例1〜3は本発明の製造方法には従わずに、下記成分(A)に下記成分(B)を加熱配合(加熱混練、両者をスクリュー式二軸押出機にて加熱混練こと)する工程の後に、前記加熱配合物をコアの周囲に射出成形してコアにカバーを被覆する工程を具備するゴルフボールの製造方法である。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
(B)1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたイソシアネート混合物
【0047】
また、比較例4は本発明の製造方法には従わずに、下記成分(B)を下記成分(A)に添加をせず、下記成分(A)を、コアの周囲に射出成形してコアにカバーを被覆する工程を具備するゴルフボールの製造方法である。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
(B)1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的にまた、最後に実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたイソシアネート混合物
【0048】
比較例5は本発明の製造方法と同じではあるが、下記成分(B)が本発明の範囲外のものである。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
(B)1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的にまた、最後に実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたイソシアネート混合物ではない。
【0049】
・ポリウレタン1(熱可塑性ポリウレタン材料)
パンデックスT8290:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のMDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン材料、表面硬度JIS−A93、反発弾性率52%。
・ポリウレタン2(熱可塑性ポリウレタン材料)
パンデックスT8295:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のMDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン材料、表面硬度JIS−A97、反発弾性率44%。
・ポリウレタン3(熱可塑性ポリウレタン材料)
パンデックスT8260:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製のMDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン材料、デュロメータD型表面硬度56、反発弾性率45%。
・ポリウレタン4(熱可塑性ポリウレタン材料)
パンデックスT7298:ディーアイシーバイエルポリマー(株)製の脂肪族イソシアネートを用いた無黄変タイプ熱可塑性ポリウレタン材料、表面硬度JIS−A98、反発弾性率54%。
・イソシアネート1(イソシアネート混合物)
クロスネートEM30:大日精化工業(株)製のイソシアネートマスターバッチ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート30%含有(JIS−K1556によるアミン逆滴定イソシアネート測定濃度5〜10%)、マスターバッチベース樹脂はポリエステルエラストマー。
・イソシアネート2(イソシアネート化合物)
デスモジュールTT:住友バイエル(株)製のTDI(トリレンジイソシアネート)二量体、有効NCO含量24〜24.6質量%、イソシアネート種TDI。
【0050】
次に、射出成形用金型内に前記ソリッドコアを配し、このコアの周囲に前記カバー材料(A)と(B)をドライブレンドしたものを射出成形することにより、厚さ2.1mmのカバーを有する実施例、比較例のツーピースゴルフボールを得た。得られたゴルフボールを1週間室温にて放置した後、ボール特性を評価した。その評価方法は下記のとおりである。また、カバー物性については、射出成形により得られた厚さ2mmのシートを1週間室温にて放置した後に測定した。さらに、成形性としてカバー材のリサイクル性を調べた。結果を表1および表2に示す。
【0051】
(カバー物性)
表面硬度
JIS−K6253に準拠したデュロメータD型硬度を測定した。
反発弾性
JIS−K7311に準拠した反発弾性率を測定した。
【0052】
(ボール特性)
硬度
980N(100kg)荷重を加えた時の変形量を測定した。
初速度
USGA(R&A)の測定方法に準拠して測定した。
飛距離
スウィングロボットマシンを用い、クラブは1番ウッド(ドライバー)を使用して、ヘッドスピード45m/sで打撃した時のトータル飛距離を測定した。
【0053】
アイアン耐擦過傷性
ボールを23℃、13℃、0℃に各々保温するとともに、スウィングロボットマシンを用い、クラブはピッチングウェッジを使用して、ヘッドスピード33m/sで各ボールを打撃し、打撃傷を以下の基準で目視にて評価した。
5点:傷がついていないか、ほとんど傷が目立たない。
4点:やや傷が見られるものの、ほとんど気にならない。
3点:表面がやや毛羽立っている。
2点:表面が毛羽立ったり、ディンプルが欠けたりしている。
1点:ディンプルが完全に削り取られてしまっている。
【0054】
(成形性)
カバー材のリサイクル性
射出成形時に発生するランナーを粉砕して再利用できるかできないかで評価した。ランナーとは、溶融樹脂を射出成形時に均一に送り込むための通り道に固まってできた余分な樹脂であり、通常、熱可塑性樹脂成形品では粉砕して樹脂に混ぜ込み、再利用する。
可能:ランナー粉砕樹脂を最大50%までバージン樹脂に混ぜ込んで成形しても偏芯等の問題は生じなかった。
不可:ランナー樹脂がゲル化してしまっており、加熱しても溶融しないために成形に再利用できない状態であった。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1および表2の結果から明らかなように、実施例のゴルフボールはいずれも反発性が高く、良好な飛び性能を示した。また、アイアン打撃時の耐擦過傷性も非常に優れていることが認められた。これに対し、比較例のゴルフボールはいずれもカバーが本発明のカバー材配合、製造方法にて形成されていないため、反発性が劣り、アイアン打撃時の耐擦過傷性も満足できるものではなかった。また、比較例5はボール特性は比較的良好であったものの、成形後の樹脂の反応性が大き過ぎ、再度熱を加えても溶融しないようなゲル化現象を起こしてしまい、成形時に発生する余剰部分のリサイクルができないという問題を有していた。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、リサイクル成形が可能であるとともに、反発性が高く、しかも耐擦過傷性に優れた熱可塑性ポリウレタン材料をカバーに用いたゴルフボールを製造することができる。
Claims (6)
- コアにカバーを被覆してなるゴルフボールの製造方法において、下記成分(A)に下記成分(B)を(A):(B)の質量比100:5〜100:20の配合比で常温にてドライ配合してカバー成形材料(C)を調製する工程と、前記カバー成形材料(C)をコアの周囲に射出成形して、射出成形後の表面硬度がデュロメータD型硬度で47〜58、反発弾性率が45〜50%であるカバーをコアに被覆する工程とを具備することを特徴とするゴルフボールの製造方法。
(A)熱可塑性ポリウレタン材料
(B)1分子中に官能基として2つ以上のイソシアネート基を持つイソシアネート化合物(b−1)を、イソシアネートと実質的に反応しない熱可塑性樹脂(b−2)中に分散させたイソシアネート混合物 - 熱可塑性ポリウレタン材料(A)がポリエーテルポリオールと芳香族ジイソシアネートを用いて合成される熱可塑性ポリウレタン材料である請求項1に記載のゴルフボールの製造方法。
- 芳香族ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである請求項2に記載のゴルフボールの製造方法。
- イソシアネート化合物(b−1)が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフボールの製造方法。
- 熱可塑性樹脂(b−2)がポリエステルエラストマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフボールの製造方法。
- 射出成形後のカバー成形材料のリサイクル成形が可能な請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴルフボールの製造方法。
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