JP4775609B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および光学式ピックアップ用パーツ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐熱性、耐薬品性等に加え、寸法安定性、放熱性が要求される電気・電子部品、光学部品等に適用される樹脂組成物に関するものである。本発明の樹脂組成物は、特に、ビデオディスクプレーヤー、デジタルオーディオプレーヤー等の光ディスク装置に装着される光学式ピックアップのパーツに適用される。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略す)樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、優れた機械的特性を有する熱可塑性樹脂であり、且つ優れた寸法精度、寸法安定性等も有すため、電気・電子分野や光学分野等の精密部品への適用が検討されている。特に近年、従来は金属材料のダイキャスト製法により製造されていた精密部品を、PAS樹脂組成物を原料として製造する検討が数多くなされるようになってきた。
【0003】
しかしながら、従来のPAS樹脂組成物は、熱伝導率が金属材料に比較して大幅に小さいため、金属に代替して機器部品に使用した場合、放熱し難く蓄熱し、温度上昇に起因した機器や素子の機能の低下を引き起こすという重大な欠点を有している。
【0004】
PAS樹脂組成物の熱伝導性の改良を試みた例としては、例えば、特開平2−163137号公報の実施例に黒鉛を配合した熱伝導率1.15kcal/hr・s・℃(単位換算して1.34W/mK)の組成物、及び黒鉛と炭素繊維とを配合した熱伝導率1.06kcal/hr・s・℃(単位換算して1.23W/mK)の組成物が記されている。しかしながら、該公報に記載の黒鉛化率30%以上の炭素繊維及び/又は黒鉛粉末を用いても、該炭素繊維の引張弾性率が小さい場合には、熱伝導性と溶融時流動性のバランスの良い組成物を得ることは困難である。例えば、黒鉛化率30%以上の炭素繊維及び/又は黒鉛粉末の充填量を多くして熱伝導性を改善しようとした場合、組成物の溶融時流動性が低下して、成形加工性が低下する等の問題が生じてしまう。
【0005】
また、特開平9−157403号公報の実施例には、PAS樹脂の代表例であるポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略す)樹脂に引張弾性率60ton/mm2(単位換算して、約600GPa)の炭素繊維を配合した、配向する繊維と平行方向の熱伝導率が13.5W/mKの組成物が記載されている。しかしながら、PAS樹脂に弾性率の高い炭素繊維を単独で用いた場合は、材料の異方性(即ち、繊維の配向に対して平行な方向と垂直な方向とで物性が異なること)が原因で、成形品の寸法精度が低下する等の不具合が発生しやすく、成形収縮率の異方性に起因して成形品にソリが発生しやすい。また、異方性の改善を目的として、炭酸カルシウムやタルク等の熱伝導率の低い充填材を配合した場合は、成形品の熱伝導率が不充分となり、蓄熱しやすくなり、機器や素子に悪影響を与えてしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、熱伝導性、寸法安定性に優れたPAS樹脂組成物を提供すると共に、該樹脂組成物を用いた光学式ピックアップのパーツを提供することである。また、これにより当該パーツを備えた光ピックアップ装置を提供することが可能となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このような事情に鑑み鋭意試験研究を重ねた結果、PAS樹脂に引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維と熱伝導性に優れる充填材の両方を配合することにより、熱伝導率が大きく、且つ、寸法安定性が良好な樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
1.成分(A)としてポリアリーレンスルフィド樹脂と、成分(B)として引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維と、成分(C)として黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を含有してなり、樹脂組成物100重量部中に、成分(A)としてポリアリーレンスルフィド樹脂を20〜50重量部、成分(B)として引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維を5〜45重量部、及び、成分(C)として黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を30〜60重量部、含有することを特徴とする樹脂組成物、
【0009】
2.成分(C)として、少なくとも黒鉛を含有することを特徴とする、上記1に記載の樹脂組成物、
【0010】
3.熱伝導率が2.0W/mK以上であることを特徴とする、上記1又は2に記載の樹脂組成物、
【0011】
4.ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、300℃、せん断速度500sec-1での溶融粘度が30Pa・s以下のポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする、上記1〜3の何れかに記載の樹脂組成物、
【0012】
5.ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)がポリフェニレンスルフィド樹脂である、上記1〜4の何れかに記載の樹脂組成物、
【0013】
6.上記1〜5の何れかに記載の樹脂組成物を用いてなる光学式ピックアップのパーツ、
を提供しようとするものである。
【0014】
本発明で使用するPAS樹脂(A)は、置換基を有してもよい芳香族環と硫黄原子が結合した構造の繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体、及びそれらの混合物あるいは単独重合体との混合物であってもよい。これらの樹脂の代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホンなどが挙げられる。一般にPAS樹脂の中でも、繰り返し単位の結合が芳香環に関してパラ位の構造のものが耐熱性や結晶性の面で優れている。
【0015】
特に、構造式[1]で示される構成単位(芳香族環に置換基を含まない構造の構成単位)を70モル%以上含むPPS樹脂が物性面及び経済性の面で好ましい。
【0016】
【化1】
【0017】
このPPS樹脂の重合方法としては、例えば、p−ジクロルベンゼンと、更に必要ならばその他の共重合成分とを、硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、p−ジクロルベンゼンと、更に必要ならばその他の共重合成分とを、極性溶媒中で硫化ナトリウム若しくは水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムの存在下又は硫化水素と水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノールと、更に必要ならばその他の共重合成分とを自己縮合させる方法、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系溶媒中で、硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンと、更に必要ならばその他の共重合成分とを反応させる方法等が挙げられる。それらの中でも極性溶媒中でp−ジクロルベンゼンと硫化ナトリウム若しくは水硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムの存在下又は硫化水素と水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法が好適である。
【0018】
また、反応時に重合度を調節する目的で、カルボン酸のアルカリ金属塩やスルホン酸のアルカリ金属塩等を添加したり、水酸化アルカリを添加することも出来る。
【0019】
ここでPPS樹脂中に含有される共重合成分としては、例えば、下記の構造式[2]で示されるメタ結合、構造式[3]で示されるエーテル結合、構造式で[4]示されるスルホン結合、構造式[5]で示されるスルフィドケトン結合、構造式[6]で示されるビフェニル結合、構造式[7]で示される置換フェニルスルフィド結合、構造式[8]で示される3官能フェニルスルフィド結合、構造式[9]で示されるナフチル結合等が挙げられ、その含有率は、好ましくは30モル%未満である。但し、3官能性以上の結合を含有させる場合の含有率は、通常5モル%以下、好ましくは3モル%以下である。
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
更に、本発明においては、カルボキシル基を有する重合性化合物(例えば、ジクロル安息香酸など)で変性された、即ち、カルボキシル基含有ポリアリ−レンスルフィド系樹脂(以下、CPAS系樹脂)を含有することが出来る。CPAS系樹脂には、例えば、繰り返し単位が下記の如き構造式[10]、[11]又は[12]で示されるカルボキシル基含有ポリアリーレンスルフィド(CPAS)系樹脂と、繰り返し単位が上述した構造式[1]で表されるポリアリーレンスルフィド(PAS)樹脂との共重合体等々が挙げられるが、共重合による製法に限定されるものではない。
【0029】
【化10】
【0030】
【化11】
【0031】
(式中、Yは−O−、−SO2−、−CH2−、−C(CH3)2−、−CO−、C(CF3)2−または単なる結合を示す。)
【0032】
【化12】
【0033】
上記の構造式[10]、[11]または[12]で示されるカルボキシル基含有アリーレンスルフィド構造単位の含有率は、使用する目的等々によって異なるため一概には規定出来ないが、通常、CPAS系樹脂中に0.5〜30モル%、好ましくは、0.8〜20モル%である。このような共重合によるCPAS系樹脂は、ランダムタイプでも、ブロックタイプでも、グラフトタイプでも特に限定されない。最も代表的な例を挙げれば、PAS部分がPPSでCPAS部分が構造式[10]で示されるCPPSである共重合体がある。
【0034】
共重合によるCPAS系樹脂の製造法は、例えば、ランダムタイプの場合には特開昭63−305131号公報のように、ジハロゲノ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とジハロゲノ芳香族カルボン酸及び/またはそのアルカリ金属塩とを用いる方法や該公報に記載された製造法において用いたアルカリ硫化物に代えて水硫化アルカリ金属化合物と水酸化アルカリ金属を用いる方法などがある。
【0035】
また、ブロックタイプの場合には、(1)PASプレポリマーの存在する極性溶媒中で、ジハロゲノ芳香族カルボン酸及び/またはそのアルカリ金属塩とスルフィド化剤(アルカリ硫化物;水硫化アルカリ金属化合物と水酸化アルカリ金属との併用)を反応させる方法、(2)CPASプレポリマーの存在する極性溶媒中で、ジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤を反応させる方法、(3)極性溶媒中で、PASプレポリマーとCPASプレポリマーを反応させる方法などがある。
【0036】
更に、本発明においては、アミノ基を有する重合性化合物(例えば、ジクロルアニリンなど)で変性された、即ち、アミノ基含有ポリアリ−レンスルフィド系樹脂(以下、APAS系樹脂)を含有することが出来る。本発明において含有することが出来るAPAS系樹脂中のアミノ基含有量は、0.1〜30モル%が好ましい。本発明に含有することが出来るAPAS系樹脂は、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロベンゼンとを反応させる際に、アミノ基含有芳香族ハロゲン化物を共存させて共重合する方法により得ることが出来るが、該共重合による方法に限定されるものではない。
【0037】
共重合によるAPAS系樹脂の製造に際して用いることが出来るアミノ基含有芳香族ハロゲン化物としては、一般的に構造式[13]で表す化合物を挙げることが出来る。
【0038】
【化13】
【0039】
(式中、Xはハロゲン、Zは水素、−NH2又はハロゲン、R1は炭素数1〜12の炭化水素基、mは0〜4の整数である。)
【0040】
その具体例としては、m−フルオロアニリン、m−クロルアニリン、3,5−ジクロルアニリン、2−アミノ−4−クロルトルエン、2−アミノ−6−クロルトルエン、4−アミノ−2−クロルトルエン、3−クロル−m−フェニレンジアミン、m−ブロムアニリン、3,5−ジブロムアニリン、m−ヨ−ドアニリン及びそれらの混合物を挙げることが出来る。
【0041】
本発明で使用するPAS樹脂(A)は、300℃、せん断速度500sec-1での溶融粘度が30Pa・s以下のPAS樹脂であることが好ましい。該溶融粘度のPAS樹脂を主成分として使用した場合、得られる樹脂組成物の溶融時の流動性が特に良好となる。
【0042】
本発明において、PAS樹脂(A)の含有量は樹脂組成物100重量部中に、好ましくは20〜50重量部であり、より好ましくは30〜40重量部である。PAS樹脂(A)の含有量が該範囲にある場合、特に溶融時の流動性と熱伝導性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることが出来る。
【0043】
次に、本発明の樹脂組成物に必須の成分(B)は、引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維である。炭素繊維には、大別してポリアクリロニトリル系(以下、PAN系と略す)、ピッチ系、レーヨン系、ポリビニルアルコール系等があるが、本発明には引張弾性率が500GPa以上であればこれらのいずれを用いても良いが、好ましくはピッチ系炭素繊維である。引張弾性率が500GPa未満の炭素繊維は引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維と比較して熱伝導率が小さい傾向にあるので好ましくない。この理由としては、炭素繊維中の黒鉛結晶の完全性が高い程、弾性率が大きくなるとともに熱の移動する機構が発達するためであると考えられる。従って、特に限定するものではないが、本発明に用いられる炭素繊維(B)は、黒鉛化処理により、黒鉛化率が高くなっているものが好ましい。
【0044】
また、本発明で用いられる炭素繊維(B)に灰分が多く含まれることは、熱伝導性に悪影響を与えるために好ましくなく、本発明においては灰分の含有量は100ppm以下であることが好ましい。
【0045】
本発明に用いられる成分(B)の形状は、特に限定するものではないが、直径5〜15μmのチョップドファイバーが好ましい。取り扱いを容易にするためにサイジング剤を含有せしめて収束させたものを用いても良い。
【0046】
本発明に用いられる炭素繊維(B)を限定する引張弾性率の測定方法としては、長繊維の引張弾性率を測定出来る試験方法が挙げられ、例えば、JIS R7601シングルフィラメントによる方法がある。チョップドファイバーを使用する場合においても、切削工程がない以外は同条件で製造された長繊維の引張弾性率試験により求めることが出来る。
【0047】
本発明の樹脂組成物中の炭素繊維(B)の具体例としては、三菱化学製のダイアリードK223QG、K223HG、X23B1M等が挙げられる。
【0048】
本発明の引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維(B)の含有量は、樹脂組成物100重量部中に、好ましくは5〜45重量部であり、より好ましくは15〜35重量部である。成分(B)の含有量が該範囲にある場合に、特に熱伝導性と異方性及び溶融時の流動性のバランスに優れる樹脂組成物を得ることが出来る。
【0049】
続いて、本発明の樹脂組成物の必須の成分(C)について以下に記述する。成分(C)は熱伝導性が良好な充填材であり、黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種であり、この中で特に好ましいのは黒鉛である。
【0050】
黒鉛には、大別して天然黒鉛と人造黒鉛があり、天然黒鉛には土状黒鉛、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛等があるが、本発明にはこれらのいずれを用いてもよい。本発明の樹脂組成物に用いられる黒鉛としては、固定炭素含有量が95%以上のものが好ましく、より好ましくは固定炭素含有量が98%以上のものである。また、黒鉛の結晶化度は80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。固定炭素含有量が大きく、結晶化度の高い黒鉛を用いることにより、特に熱伝導性が良好な樹脂組成物を得ることが出来る。
【0051】
本発明に用いられる成分(C)の粒径は、特に限定するものではないが、1次粒子での平均粒子径が0.5〜400μmであることが好ましい。成分(C)の粒子径が該範囲にある場合に、特に溶融時の流動性と機械的特性のバランスに優れる樹脂組成物を得ることが出来る。
【0052】
本発明に用いられる成分(C)の形状は、特に限定するものではなく、無定型、鱗状、鱗片状、球状、ビーズ状等のいずれを用いてもよい。また、必要に応じ、これらの形状の成分(C)を圧縮やバインダーを用いた方法等により凝集せしめて、フレーク状や玉状に加工した後、樹脂組成物に用いてもよい。
【0053】
本発明の樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、樹脂組成物100重量部中に、好ましくは30〜60重量部、より好ましくは40〜50重量部である。成分(C)の含有量が該範囲にある場合に、特に熱伝導性と溶融時の流動性のバランスに優れる樹脂組成物を得ることが出来るので好ましい。
【0054】
更に、本発明の樹脂組成物には、機械的特性の向上を図る目的で各種の強化材、充填剤を添加することが出来る。本発明で用いることが出来る強化材、充填材としては、例えば、ガラス繊維、チタン酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、窒化珪素、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、ウオラストナイト、アタパルジャイト、PMF、フェライト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄、ミルドガラス、ガラスビーズ、ガラスバルーン等がある。
【0055】
更に、本発明の組成物には、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン等の潤滑剤及びその安定化剤を含むことが出来る。又、本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、防錆剤、滑剤、結晶核剤、着色剤、シランカップリング剤等を添加することも出来る。
【0056】
更に、本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で熱硬化性樹脂、及び他の熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアリーレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等を1種類以上、ブレンドすることが出来る。
【0057】
本発明に用いられる組成物は、種々の公知の方法で調製することができる。例えば、成分(A)としてPAS樹脂と、成分(B)として引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維、及び成分(C)として黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を予めヘンシェルミキサー又はタンブラー等で混合後、1軸又は2軸押出混練機などに供給して200℃〜360℃で混練し、造粒することにより得ることが出来る。又、混合及び/混練に際し必要に応じて他の強化材、充填剤や各種添加剤を添加してもよい。
【0058】
本発明の組成物を調整する際、用いる成分の取り扱いを容易にする目的等のために、成分(B)及び/または成分(C)及び/または他の添加成分を、PAS樹脂に予め混ぜ込んだマスターバッチを用いても良い。該マスターバッチは、マスターバッチ化する成分とPAS樹脂を溶融混練後ペレット化したものでも良いし、マスターバッチ化する成分とPAS樹脂をドライブレンドした後に、必要な場合はサイジング剤等のバインダーとなる成分を加えて、圧縮することにより得られるフレークや玉状物でも良い。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、熱伝導率が2.0W/mK以上であることが好ましく、熱伝導率が2.0W/mK以上である場合には、特に、成形品の放熱性が良好となり、実用面でその用途範囲が広くなる。
【0060】
熱伝導率の測定方法としては、JIS R2618に準拠した熱線法、JIS R2616に準拠した熱流法、JIS R1611に準拠したレーザーフラシュ法等がある。一般に、炭素繊維を含む組成物の熱伝導率は、炭素繊維の配向に対する依存性が高く、炭素繊維の配向方向に対して平行な方向では、非平行な方向(例えば、炭素繊維の配向方向と垂直な方向や炭素繊維の分散がランダムで方向性が明確でない配向状態)と比較して値が大きくなる。本発明でいう熱伝導率が2.0W/mK以上の組成物とは、熱伝導率が最大となる方向において2.0W/mK以上の組成物のことである。例えば、炭素繊維の配向方向に平行な方向の熱伝導率が2.0W/mKであれば、本発明に記載の熱伝導率が2.0W/mK以上の組成物と見なされる。但し、炭素繊維の配向方向に平行な方向のみならず、炭素繊維の配向と非平行な方向でも熱伝導率が2.0W/mK以上となることが好ましい。より好ましくは、熱伝導率が最小となる方向において2.0W/mK以上となることである。また、熱伝導率の測定時の試料温度は、特に限定するものではなく熱伝導率の値が最大となる温度で測定することが出来るが、一般には常温(23℃)にて行われる。
【0061】
本発明の樹脂組成物によりなる光学式ピックアップのパーツは、前記の樹脂組成物を用いて射出成形法等により得ることが可能である。
【0062】
該光学式ピックアップのパーツの成形に際し、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の強化材、充填剤や各種添加剤を添加してもよい。
【0063】
光学式ピックアップのパーツとしては、実開平1−45315号公報に記載されている発光素子(半導体レーザ)、受光素子、ミラー等を固定する光フレームとの光学路を形成するベースフレーム(可動支持フレーム)あるいはこれらのフレームを一体化して成形する一体化フレーム等が挙げられる。
【0064】
【実施例】
以下に、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。尚、部及び%は、特にことわりのない限り、全て重量基準である。
【0065】
《参考例1》「PPSの製造」
攪拌機付5LオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン1696gと水硫化ナトリウム424g(5.5モル、使用した原料NaSHのNaSH換算濃度分析値=72.8%)、及び47.9%水酸化ナトリウム水溶液431gとを仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で205℃まで90分間で昇温し、水312gを含む留出液を441ml得た。
【0066】
次いで、窒素導入ラインと留出ラインを閉鎖して反応容器を密閉した後、220℃まで昇温した。220℃に到達後、p−ジクロルベンゼン813g(5.5モル)をN−メチル−2−ピロリドン500gに溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、次いで、220℃で3時間反応させた後、30分間かけて255℃まで昇温し、更に255℃で1時間反応させた後、冷却した。
【0067】
冷却後の内容物を取り出し、濾別し、次いでケーキ(濾取物)を熱水で3回撹拌洗浄・濾過を繰り返し、更に、アセトンで2回撹拌洗浄・濾過を繰り返した後、pH1の塩酸水溶液で30分間撹拌洗浄・濾過し、最後に、イオン交換水で撹拌洗浄・濾過し、得られたケーキを80℃で減圧乾燥し、523g(収率88%)のPPSを得た。
【0068】
ここに得られたPPSは、300℃、せん断速度500sec-1での溶融粘度が26Pa・sであった。尚、PPSの溶融粘度は、株式会社東洋精機製作所キャピログラフ 1B P−C型にて測定した。
【0069】
実施例及び比較例中に用いた、他の配合組成は次の通りである。
炭素繊維−1:ピッチ系炭素繊維、引張弾性率560GPa
炭素繊維−2:ピッチ系炭素繊維、引張弾性率900GPa
炭素繊維−3:PAN系炭素繊維、引張弾性率235GPa
黒鉛 :鱗片状黒鉛、固定炭素含有量99%
炭酸カルシウム:比表面積3000cm2/g、平均粒子径7μm
【0070】
《実施例1〜2》及び《比較例1〜3》
参考例で製造したPPS及びその他の原料を、表1に示す割合で均一に混合した後、40mmφの1軸押出機にて330℃で混練しペレットを得た。
このペレットを用い、インラインスクリュー式射出成形機によりシリンダー温度340℃、金型温度150℃、射出圧力80〜100MPa、射出スピード中速にて、フィルムゲートによる幅50mm×長さ100mm×厚さ2mmのシートを成形し、次の項目を評価した。その結果を表1に示した。
【0071】
〔熱伝導率の評価方法〕
京都電子工業製Kertherm QTM−D3(JISR2618に基づいた熱線法)にて、(長)方向に熱線を沿わせて、23℃で測定した。
【0072】
〔線熱膨張係数の評価方法〕
ASTM D648に従い、(長)方向と(幅)方向について、−30℃〜80℃で測定した。
【0073】
〔成形収縮率の評価方法〕
ASTM D955に従い、(長)方向と(幅)方向について、23℃で測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
《実施例3》
実施例1で得られた樹脂組成物を用いて、シリンダー温度340℃、金型温度150℃、射出圧力100MPa、射出スピード中速にて、光学式ピックアップのパーツであるCD−ROM用のベースフレームを成形し、半導体レーザー、受光部及びミラーを設置した。このミラー設置部を、23℃の環境下で小型ヒーターにより一方向から加熱しながら、レーザー受光部の光軸の変化を光学特性として評価した結果、50時間後の光軸の変化(角度)は1分であり、その変化は微小であった。
【0076】
《比較例4》
比較例1に記載の樹脂組成物を用いて、実施例3と同様の光学特性を評価した結果、50時間後の光軸の変化(角度)は6分であり、その変化は大きかった。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、熱伝導性、寸法安定性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供出来る。また、本発明の樹脂組成物を用いることにより、寸法安定性や放熱性に優れた光学式ピックアップのパーツおよび当該パーツを備えた光学式ピックアップ装置を提供することが可能となる。
Claims (6)
- 成分(A)としてポリアリーレンスルフィド樹脂と、成分(B)として引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維と、成分(C)として黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を含有してなり、樹脂組成物100重量部中に、成分(A)としてポリアリーレンスルフィド樹脂を20〜50重量部、成分(B)として引張弾性率が500GPa以上の炭素繊維を5〜45重量部、及び、成分(C)として黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種を30〜60重量部、含有することを特徴とする樹脂組成物。
- 成分(C)として、少なくとも黒鉛を含有することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
- 熱伝導率が2.0W/mK以上であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)が、300℃、せん断速度500sec−1での溶融粘度が30Pa・s以下のポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の樹脂組成物。
- ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)がポリフェニレンスルフィド樹脂である、請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜5の何れかに記載の樹脂組成物を用いてなる光学式ピックアップのパーツ。
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