JP6742132B2 - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
ポリアリーレンスルフィド樹脂の熱伝導率を改良する試みとしては、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂、特定の引張弾性率を有する炭素繊維および黒鉛、金属粉、アルミナ、マグネシア、チタニア、ドロマイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウムから選択される1種以上からなる樹脂組成物(特許文献1)が提案されている。しかしながら該樹脂組成物は、熱伝導率が不十分であり、また機械的強度と剛性については記載されていない。
本発明の好適な態様の1つは、(2)B成分が、レーザーフラッシュ法で測定された繊維軸方向の熱伝導率が15〜120W/mKであるPAN系炭素繊維であることを特徴とする上記構成1の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記構成1または2のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物で成形された成形体である。
本発明の好適な態様の1つは、(4)(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)引張弾性率が350〜500GPa、サイズ剤付着量が1.0〜2.0重量%であるPAN系炭素繊維(B成分)10〜150重量部を含有する樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、(5)B成分が、2000〜3000℃で黒鉛化処理したPAN系炭素繊維であることを特徴とする上記構成4の樹脂組成物の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、(6)A成分が、ジヨードアリール化合物、固体硫黄、並びに重合停止剤および/または重合反応触媒を、極性溶媒を使用せずに直接加熱して重合させる方法よって得られるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする上記構成4または5の樹脂組成物の製造方法である。
(A成分:ポリアリーレンスルフィド樹脂)
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができ、その中でも、p−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらに、ポリ(p−フェニレンスルフィド)がより好ましい。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総ナトリウム含有量は、好ましくは39ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスの増加によるウエルド強度を低下させるだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
前記製造方法で用いられる代表的な固体硫黄としては、室温で8個の原子が連結されたシクロオクタ硫黄形態(S8)が挙げられる。しかしながら重合反応に用いられる硫黄化合物は限定されるものではなく、常温で固体または液体であればいずれの形態でも使用し得る。
但し、重合反応の条件は、反応器の構造設計および生産速度に依存し、当業者に知られているため、特に制限されない。反応条件は、当業者がプロセス条件を考慮して適宜設定することができる。
本発明のB成分として使用される炭素繊維は、引張弾性率が350〜500GPaであるPAN系炭素繊維である。B成分の引張弾性率は、好ましくは360〜490GPa、より好ましくは370〜480GPaである。B成分の引張弾性率が350GPa未満では、熱伝導率が劣り、500GPaを超えると機械的強度が低下する。なお、引張弾性率は、JIS R 7608に準拠して測定した。また、B成分はPAN系炭素繊維であることが必要であり、PAN系炭素繊維でない場合には機械的強度が著しく低下する。
B成分のサイズ剤付着量は、1.0〜2.0重量%であり、好ましくは1.1〜1.9重量%、より好ましくは1.2〜1.8重量%である。B成分のサイズ剤付着量が1.0重量%未満では、生産または成形加工性が低下し、2.0重量%を超えるとアウトガス量が増える。
B成分であるPAN系炭素繊維は、例えば以下の方法により製造することができる。
前駆体繊維は、アクリロニトリルを90重量%以上、好ましくは95重量%以上含有し、その他の単量体を10重量%以下含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸して製造される、アクリル系前駆体繊維が好ましい。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。このとき、トータル延伸倍率が5〜15倍になるようスチーム延伸する。前駆体繊維のフィラメント数は、製造効率の面では1000フィラメント以上が好ましく、12000フィラメント以上がより好ましい。
得られた前駆体繊維は、200〜260℃、延伸比0.90〜1.00で耐炎化処理前に予備熱処理され、引き続き加熱空気中、200〜260℃で10〜100分間耐炎化処理される。この時の処理は、一般的に、延伸倍率0.85〜1.15の範囲で処理されるが、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、0.95以上がより好ましい。この耐炎化処理は、前駆体繊維を繊維密度1.34〜1.38g/cm3の酸化された繊維とするものであり、耐炎化時の張力(延伸配分)は特に限定されるものでは無い。
耐炎化処理された繊維は、従来の公知の方法を採用して炭素化する。例えば、窒素雰囲気下300〜800℃で第一炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、耐炎化繊維の張力を制御して緊張下で1段目の第一炭素化を行う。
より炭素化を進め且つグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下800〜2000℃で第二炭素化炉で徐々に温度を高めると共に、第一炭素化繊維の張力を制御して焼成する。
なお、各炭素化炉において、炉の入り口付近からに急激な温度変化、例えば最高温度に急激に繊維を導入することは、表面欠陥、内部欠陥を多く発生させるため好ましくない。また、炉内の高温部で必要以上に滞留時間が長くなると、グラファイト化が進み過ぎ、脆性化した炭素繊維が得られることになるので好ましくない。上記第一炭素化処理〜第二炭素化処理工程は、張力をコントロールすると共に、必要に応じて、複数の炉で所定の物性となるように処理を行っても良い。
より高い弾性率を得るために、さらに2000〜3000℃の高温で黒鉛化処理を行う。炭素化処理および黒鉛化処理の温度は、目的とする炭素繊維の弾性率に応じて適宜調整すればよく、処理温度が高くなるほど、また、処理時間が長くなるほど、炭素繊維の弾性率が高くなる傾向がある。
上記炭素繊維ストランドは、電解液中で表面酸化処理を施す。表面処理で炭素繊維にかかる電気量は、目的の表面官能基量になるよう適時調節すればよいが、炭素繊維1gに対して50〜500クーロンになる範囲とすることが好ましい。炭素繊維1gにかかる電気量をこの範囲で調節すると、繊維としての力学的特性に優れ、かつ、樹脂との接着性の向上した炭素繊維を得やすい。一方、炭素繊維1gにかかる電気量が50クーロン未満では、樹脂との接着性が低下しやすい傾向にあり、500クーロンを越えると、過剰な処理により、繊維強度が低下しやすい傾向にある。
電解液の電解質濃度は0.1規定以上が好ましく、0.1〜1規定がより好ましい。電解質濃度が0.1規定未満であると、電気伝導度が低いために、電解に適さない傾向があり、一方で、電解質濃度が高すぎる場合は、電解質が析出し、濃度の安定性が低くなる傾向がある。
電解液の温度は、高いほど電気伝導性を向上させるため、処理を促進させることができる。一方で、電解液の温度が40℃を超えると、水分の蒸発による濃度の変動等により、時間変動なく均一な条件を提供するのが難しくなるため、15〜40℃の間が好ましい。
表面処理された炭素繊維ストランドは、サイジング液に通され、サイズ剤が付与される。サイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10〜25重量%が好ましく、サイズ剤の付着量は、0.4〜1.7重量%が好ましい。炭素繊維ストランドに付与されるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリックス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。サイズ剤付与処理は、通常、乳化剤等を用いて得られる水系エマルジョン中に炭素繊維ストランドを浸漬するエマルジョン法が用いられる。また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。
サイジング処理後の炭素繊維ストランドは、サイジング処理時の分散媒であった水等を蒸散させるため乾燥処理が施され、複合材料製造用炭素繊維ストランドが得られる。乾燥にはエアドライヤーを用いることが好ましい。乾燥温度は特に限定されるものではないが、汎用的な水系エマルジョンの場合は通常100〜180℃に設定される。また、本発明においては、乾燥工程の後、200℃以上の熱処理工程を経ることも可能である。
炭素繊維チョップドストランドは、上記炭素繊維束を所定の長さに切断することにより製造される。炭素繊維チョップドストランドの長さは、3〜15mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。長さが3mm未満の炭素繊維チョップドストランドは、チョップドストランドの嵩密度が小さくなるため、チョップドストランドの取扱い性が低下しやすい傾向がある。15mmを超える炭素繊維チョップドストランドは、射出成型機やペレット製造用の押出機等にチョップドストランドを供給する際の供給安定性が低下しやすい傾向がある。切断方法としては、ロービングカッター等のロータリー式カッターや、ギロチンカッター等の通常用いられているカッターを適宜用いることが出来る。炭素繊維チョップドストランドの嵩密度は高い方が、複合材料を製造する際に成形機に安定して供給しやすいため好ましく、好ましくは500g/L以上である。
加熱処理は空気中250〜330℃で行う。加熱処理温度が250℃未満では、炭素繊維チョップドストランドのサイズ付着量が多く残り樹脂組成物とした場合、アウトガス性が低下する。加熱処理温度が330℃を超えてしまうと開繊し易くなり定量供給性が悪化する。加熱処理時間は加熱処理温度に影響するので、その都度調整する必要があるが、加熱処理温度が250〜300℃の場合、加熱処理時間は10〜25時間、加熱処理温度が300〜330℃の場合、加熱処理時間は5〜15時間が好ましい。
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、10〜150重量部であり、好ましくは15〜120重量部、より好ましくは20〜100重量部である。B成分の含有量が10重量部未満では、機械的強度、剛性及び熱伝導率が劣り、150重量部を超えると生産または成形加工性が低下する。
本発明における樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー成分を含むことができる。好適なエラストマー成分としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)およびシリコーン・アクリル複合ゴム系グラフト共重合体などのコア−シェルグラフト共重合体樹脂、あるいはシリコーン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは二軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第二供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出し成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。
(1)引張破断強度
ISO527(測定条件23℃)に準拠して測定した。なお、試験片は、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度320℃、金型温度140℃で成形した。この数値が大きいほど樹脂組成物の機械的強度が優れていることを意味する。
ISO178(測定条件23℃)に準拠して測定した。なお、試験片は、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度320℃、金型温度140℃で成形した。この数値が大きいほど樹脂組成物の機械的強度が優れていることを意味する。
ISO178(測定条件23℃)に準拠して測定した。なお、試験片は、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度320℃、金型温度140℃で成形した。この数値が大きいほど樹脂組成物の機械的剛性が優れていることを意味する。
前記(1)と同条件で成形した厚み4mmの試験片から3mm×10mmの短冊状にサンプルを切り出し、横に並べて一体化させ、NETZSCH社製LFA−447を用いてレーザーフラッシュ法にてサンプルの流動方向の熱伝導率を求めた。この数値が大きいほど樹脂組成物の熱伝導率が優れ、放熱性に優れていることを意味する。
ペレットを熱重量解析装置(株式会社リガク製 Thermo plus EVO2 差動型示差熱天秤 TG8121)により、窒素ガス雰囲気中、室温から昇温し130℃で1時間保持した後、昇温速度20℃/minで320℃まで昇温した。320℃で30分加熱前後の重量減少率(重量%)をアウトガス量として算出した。この数値が小さいほど樹脂組成物のアウトガス性に優れ、低アウトガス性であることを意味する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂および炭素繊維を表1記載の各配合量で、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX−30XSST(完全かみ合い、同方向回転)を使用した。押出条件は吐出量16kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第一供給口からダイス部分まで320℃とした。なお、炭素繊維は上記押出機のサイドフィーダーを使用し第二供給口から供給し、ポリアリーレンスルフィド樹脂は第一供給口から押出機に供給した。ここでいう第一供給口とはダイスから最も離れた供給口であり、第二供給口とは押出機のダイスと第一供給口の間に位置する供給口である。得られたペレットを130℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業(株)製 SG−150U)によりシリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で評価用の試験片を成形した。表1中の記号表記の各成分は下記の通りである。
PPS−1:以下の製造方法で得られたポリフェニレンスルフィド樹脂
[製造方法]
パラジヨードベンゼン300.00g及び硫黄27.00gに、重合停止剤としてジフェニルジスルフィド0.60g(最終的に重合されたPPSの重量に基づいて0.65重量%の含量)を投入して180℃に加熱して完全にそれらを溶融及び混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を200Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度及び圧力が夫々320℃及び1Torrとなるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、8時間重合反応させてポリフェニレンスルフィド樹脂を製造した。総塩素含有量は20ppm以下(検出限界以下)、総ナトリウム含有量は7ppmであった。
[製造方法]
パラジヨードベンゼン5130g及び硫黄450gに、反応開始剤としてメルカプトベンゾチアゾール4gを含む反応物を180℃に加熱して完全に溶融および混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を350Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度および圧力が各々300℃および1Torr以下となるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、重合反応を進行した。前記重合反応が80%進行した時(重合反応の進行程度は粘度による相対比率((現在粘度/目標粘度)×100%)の方法で確認した。)、重合停止剤としてメルカプトベンゾチアゾールを25g添加して反応を行った。1時間後、4−ヨード安息香酸51g添加して窒素雰囲気下で10分間反応を行い、0.5Torr以下に徐々に真空度を上げてさらに1時間反応を行った後反応を終了し、カルボキシ基を主鎖末端に含むポリアリーレンスルフィド樹脂を製造した。総塩素含有量は20ppm以下(検出限界以下)、総ナトリウム含有量は7ppmであった。
CF−1:以下の製造方法で得られたPAN系炭素繊維
[製造方法]
PAN系炭素繊維「テナックス」(製品名)UMS40(東邦テナックス(株)製、引張強度:4,700MPa、引張弾性率:390GPa、サイジング剤:ポリウレタン系、サイズ剤付着量:1.3重量%)の炭素繊維ストランドを3個/mの撚り数となるよう加撚し、連続的にポリウレタン樹脂(DIC(株)製 クリスボン 6216SL)のポリエーテルケトン溶液からなるサイズ剤浴に導入して集束処理を施し、150℃で2分間乾燥した。炭素繊維ストランドのサイズ剤付着量は2.5重量%であった。集束処理後の炭素繊維ストランドを6mmの長さにカットして、さらに270℃で24時間加熱処理を行い、PAN系炭素繊維(引張弾性率:390GPa、サイズ剤付着量:1.5重量%)を製造した。
CF−3:PAN系炭素繊維「テナックス」(製品名)UMS40をPAN系炭素繊維「テナックス」製品名)UMS55(東邦テナックス(株)製、引張強度:4,000MPa、引張弾性率:550GPa、サイジング剤:ポリウレタン系、サイズ剤付着量:0.7重量%)に変更した以外はCF−1と同じ製造方法で得られたPAN系炭素繊維(引張弾性率:550GPa、サイズ剤付着量:1.5重量%)
CF−4:PAN系炭素繊維(東邦テナックス(株)製「テナックス」(製品名)HTC432 6mm、引張強度:4,200MPa、引張弾性率:240GPa、カット長:6mm、サイジング剤:ポリウレタン系、サイズ剤付着量:2.3重量%)
[製造方法]
合成メソフェーズピッチをプリカーサーとして溶融紡糸し、ピッチ繊維40000本で構成される炭素繊維ストランドを得た。この炭素繊維ストランドを空気雰囲気中で不融化、さらに窒素雰囲気中で炭素化、黒鉛化した後、表面処理、サイジング処理を施し、6mmの長さにカットし、ピッチ系炭素繊維(引張強度:2,600MPa、引張弾性率:450GPa、サイジング剤:エポキシ系、サイズ剤付着量:1.8重量%)を製造した。
CF−6:加熱処理をしなかったこと以外はCF−1と同じ製造方法で得られたPAN系炭素繊維(引張弾性率:425GPa、サイズ剤付着量:2.5重量%)
CF−7:加熱温度を350℃に変更した以外はCF−1と同じ製造方法で得られたPAN系炭素繊維(引張弾性率:425GPa、サイズ剤付着量:0.8重量%)
[炭素繊維の熱伝導率]
CF−1:29W/mK
CF−2:50W/mK
CF−3:132W/mK
CF−4:9W/mK
CF−5:100W/mK
CF−6:28W/mK
CF−7:30W/mK
Claims (6)
- (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)引張弾性率が350〜500GPa、サイズ剤付着量が1.0〜2.0重量%であるPAN系炭素繊維(B成分)10〜150重量部を含有し、A成分およびB成分を押し出し機により溶融混錬することにより得られる樹脂組成物であって、サイズ剤がウレタン樹脂またはその変性物であることを特徴とする樹脂組成物。
- B成分が、レーザーフラッシュ法で測定された繊維軸方向の熱伝導率が15〜120W/mKであるPAN系炭素繊維であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物で成形された成形体。
- (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)引張弾性率が350〜500GPa、ウレタン樹脂またはその変性物であるサイズ剤の付着量が1.0〜2.0重量%であるPAN系炭素繊維(B成分)10〜150重量部を含有し、A成分およびB成分を押し出し機により溶融混錬することにより得られる樹脂組成物の製造方法。
- B成分が、2000〜3000℃で黒鉛化処理したPAN系炭素繊維であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
- A成分が、ジヨードアリール化合物、固体硫黄、並びに重合停止剤および/または重合反応触媒を、極性溶媒を使用せずに直接加熱して重合させる方法によって得られるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項4または5に記載の樹脂組成物の製造方法。
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