JP2014163000A - 炭素繊維束、及びそれを用いた炭素繊維強化複合材料 - Google Patents

炭素繊維束、及びそれを用いた炭素繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、形態保持性とマトリクス樹脂との接着性に優れ、機械的強度の優れた炭素繊維強化複合材料を形成し得る炭素繊維束を提供することにある。
【解決手段】上記課題は、サイジング剤を付着されてなる炭素繊維束であって、前記サイジング剤がポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤であり、前記ポリエポキシ化合物(A)がポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物であり、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が加熱によりブロック基が外れイソシアネートを生じる官能基を分子中に2つ以上有するブロックポリイソシアネート化合物(B)であることを特徴とする炭素繊維束により解決される。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維強化複合材料に好適に用いられる炭素繊維、およびそれを用いた炭素繊維強化複合材料に関するものである。
炭素繊維は、軽量で比強度および比弾性率に優れ、しかも耐熱性や耐薬品性にも優れていることから、種々のマトリクス樹脂と組合わせた繊維強化複合材料として、航空機部材、宇宙機部材、自動車部材、船舶部材、土木建築材およびスポーツ用品等の多くの分野に用いられている。このように用途が多岐に広がるにつれ、炭素繊維の高性能化の要望はますます高まってきており、特にスポーツ用や航空機用の炭素繊維には、より高い強度、より高い弾性率が求められている。
炭素繊維を用いた複合材料において、炭素繊維の優れた特性を活かすには、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が優れることが重要である。しかし、炭素繊維は、マトリクス樹脂との接着性が必ずしも十分ではなく、その表面を活性化させるため、薬剤酸化処理、気相酸化処理、電解酸化処理等の表面酸化処理が施されている。しかし、炭素繊維の弾性率が高くなるに伴って、このような表面酸化処理による炭素繊維表面の活性化反応は起こりにくくなる傾向があり、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性の改善が求められている。
ところで、炭素繊維は伸度が小さくかつ脆い性質を有するために、炭素繊維長繊維の集合体である炭素繊維束は、機械的摩擦等によって毛羽が発生しやすい。そのため、このような毛羽の発生の抑制等を目的として、炭素繊維強化複合材料の製造工程において、炭素繊維束にサイジング剤を付与するサイジング処理が施されている。このサイジング処理によって、炭素繊維束に集束性を付与することにより毛羽の発生を抑えることが可能となる。このように、従来、毛羽の発生抑制などを目的に施されていたサイジング処理に対して、近年、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性を高める効果を付与する検討が行なわれている。
例えば、特許文献1には、ポリアセタール樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂からなるマトリックス樹脂と炭素繊維との結合性の向上を目的とし、低分子量のイソシアネート再生体(イソシアネート化合物の−NCO基をブロッキング剤で安定化したもの)を含むサイジング剤を付着させた炭素繊維束が開示されている。
しかし、低分子量のイソシアネート再生体を単独で用いた場合、イソシアネート化合物の大きさに対してイソシアネート基の占める割合が多く架橋点が密になりすぎるため、炭素繊維の界面でイソシアネート基が十分に反応せず、マトリクス樹脂と繊維との十分な接着性を得ることができない。
特許文献2には、炭素繊維表面官能基との反応性を有するイソシアネート基を有するビニルエステル樹脂化合物とマトリクス樹脂との反応性を有するエポキシ化合物で処理してなる炭素繊維束が例示されている。しかし、この方法は、また、化合物の反応性が高いため、水系の処理系での処理ができず、環境負荷の面で問題となる上、個々の化合物と炭素繊維を別々に処理する必要があり、特定のマトリクス樹脂とサイジング剤を組合わせた場合にのみ効果が発現されるという限定されたものであった。
そのため、マトリクス樹脂、特にエポキシ樹脂との接着性に優れ、機械的強度の優れた炭素繊維強化複合材料を形成しうる炭素繊維束が望まれている。
特開平2−84558号公報 特開2004−316021号公報
本発明の目的は、形態保持性とマトリクス樹脂との接着性に優れ、機械的強度の優れた炭素繊維強化複合材料を形成し得る炭素繊維束を提供することにある。
本発明は、サイジング剤を付着されてなる炭素繊維束であって、前記サイジング剤がポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤であり、前記ポリエポキシ化合物(A)がポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物であり、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が加熱によりブロック基が外れイソシアネートを生じる官能基を分子中に2つ以上有するブロックポリイソシアネート化合物(B)であることを特徴とする炭素繊維束である。本発明において、前記サイジング剤が、ガラス転移点が30℃以下の熱可塑性樹脂(C)を含むサイズ剤であることが好ましい。本発明において、前記サイジング剤がポリエポキシ化合物(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)を含む場合、その割合は(A)/(B)=1/20〜1/1が好ましく、(C)/{(A)+(B)}=100/1〜100/50の範囲で有ることが好ましい。
さらに、本発明は、炭素繊維束にサイジング剤を付着させる複合材料用炭素繊維束の製造方法であって、炭素繊維束に、ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤であり、前記ポリエポキシ化合物(A)がポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物であり、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が加熱によりブロック基が外れイソシアネートを生じる官能基を分子中に2つ以上有するブロックポリイソシアネート化合物(B)であるサイジング剤を付与した後、ブロックポリイソシアネート化合物(B)のブロック解離温度以上かつ250℃以下の温度で加熱する複合材料用炭素繊維束の製造方法を包含し、上記炭素繊維束とマトリクス樹脂からなる炭素繊維強化複合材料も包含する。
本発明の炭素繊維束は、マトリクス樹脂の浸透性が高く、接着性も良好な複合材料用炭素繊維束とすることができ、機械的強度の優れた炭素繊維強化複合材料を形成することができる。
本発明の複合材料用炭素繊維束の製造方法によれば、マトリクス樹脂の浸透性にすぐれ、接着性の良好な複合材料用炭素繊維束を得ることができる。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、炭素繊維とマトリクス樹脂との接着性が良好であり、また、マトリクス樹脂が炭素繊維の繊維間に十分に浸透しているため、機械的強度に優れている。
本発明は、サイジング剤を付着されてなる炭素繊維束であって、前記サイジング剤がポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤であり、前記ポリエポキシ化合物(A)がポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物であり、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が加熱によりブロック基が外れイソシアネートを生じる官能基を分子中に2つ以上有するブロックポリイソシアネート化合物(B)であることを特徴とする炭素繊維束である。
本発明で用いるサイジング剤は、ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤である。
本発明で用いるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネートを、ブロック基で保護した化合物であり、加熱によりブロック成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生じるものである。
かかるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、加熱により遊離したイソシアネート化合物が、炭素繊維表面の官能基、およびポリエポキシ化合物(A)と反応し、強固な架橋構造を形成する。そのため、ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する本発明のサイジング剤を、炭素繊維束のサイジング剤として用いると、熱処理によって炭素繊維表面にサイジング剤の架橋構造を生じさせることができる。以降、本発明の炭素繊維束を熱処理し、炭素繊維の単繊維表面に架橋構造を有するサイジング剤被膜を形成させた炭素繊維束を、複合材料用炭素繊維束と記述する。
炭素繊維表面に架橋構造を有するサイジング剤被膜が形成されることで、炭素繊維とサイジング剤との界面相を強固に形成することができ、炭素繊維とマトリクス樹脂との高い接着性が得られる。さらに、炭素繊維束に対して適度な硬さを付与することができるため、複合材料用炭素繊維束の形態安定性が向上し、加工性に優れた複合材料用炭素繊維束を得ることができる。また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネートを生じる官能基を分子中に3つ以上有する場合、架橋反応により架橋構造が網目状に形成され、複合材料用炭素繊維束の形態安定性がより向上するため好ましい。ブロックポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネートを生じる官能基の数の上限はとくに限定されないが10以下であることが好ましい。
本発明において、サイジング剤に含まれるポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)との割合(重量比)は(A)/(B)=1/20〜1/1であることが好ましく、更に好ましくは1/15〜1/2である。ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)の重量比が(A)/(B)=1/20〜1/1の範囲であると、良好な密度の架橋構造を形成することが出来き、マトリクス樹脂との接着性に優れた複合材料用炭素繊維束とすることができる。
本発明で用いるポリエポキシ化合物(A)は、ポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物である。このようなポリエポキシ化合物(A)に用いられるポリアルキレンジオールとしては、例えばエチレングリコールやこの重合物、プロピレンジグリコールやこの重合物、あるいは、これらの共重合物であるアルキレンジオールとエピクロルヒドリンとの反応生成物が挙げられる。中でも、重合度が1〜10のポリエチレングリコールであることが好ましい。
ポリエポキシ化合物(A)において、アルキレンジオール鎖が含まることで、ポリエポキシ化合物とブロックポリイソシアネート化合物(B)からなる架橋構造中に熱可塑性樹脂を取り込むことが出来き、マトリクス樹脂との接着性を向上させることができる。また、アルキレンジオールの重合度が1〜10であることで、ポリエポキシ化合物とイソシアネートの架橋点間の距離が保たれるため、架橋密度を最適にすることができる。また、ポリアルキレングリコール鎖の自己凝集を抑えることができ、熱可塑性樹脂との相容性を向上させ、マトリクス樹脂との接着性を向上させることができる。アルキレンジオールの重合度は3〜10であることがより好ましく、5〜9であることがさらに好ましい。
本発明に用いるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤により保護処理することにより得ることができる。
本発明で用いるブロックポリイソシアネート化合物(B)の前駆体となるポリイソシアネート化合物としては、特に制限はないが、例えば、ジメチルジフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、取扱い性の点から、ジメチルジフェニルジイソシアネートが特に好ましい。また、長い分子鎖を有する高分子量のポリイソシアネート化合物、例えばヘキサメチレンジイソシアネートなどの炭素数6以上20以下の脂肪族分子鎖骨格を有するイソシアネートのオリゴマー、ポリオールアダクトポリイソシアネートを用いると、架橋反応後の分子鎖の自由度が高く、炭素繊維単糸間に適度な拘束力を与え、複合材料用炭素繊維束の取扱い性とマトリクス樹脂の含浸性を両立させやすいため好ましい。
また、ブロック化剤としては、加熱によりイソシアネート基から遊離するものであれば制限はない。本発明で用いるブロック化剤としては、例えばフェノール,チオフェノール,クレゾール,レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類,フタル酸イミド類、カプロラクタム,バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類及び酸性亜硫酸ソーダ等が挙げられる。本発明においてブロック化剤としては、50〜250℃でイソシアネート基から遊離するものであることが、サイジング処理において処理剤の安定性を確保できるとともに、炭素繊維上でイソシアネート基の保護を比較的簡便な条件で外すことができるため好ましい。より好ましくは90〜200℃で、更に好ましくは110〜180℃でイソシアネート基から遊離するブロック化剤である。比較的簡便な条件で外すことができるブロック化剤としては、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類が特に好ましく用いられる。
また、該ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、炭素繊維に付与する前のサイジング剤中では、イソシアネート基がブロック基で保護されているため、水系処理剤においても安定に存在できる。そのため、環境負荷の大きい有機溶剤を使用せずに、環境負荷の少ない水系処理剤でサイジング処理することができる。
加えて、本発明の炭素繊維束は、ブロック解離温度以上に加熱されて初めて炭素繊維上に活性なイソシアネート基が発生する。そして、炭素繊維上で活性なイソシアネート基がポリエポキシ化合物(A)との反応を起こすことで、炭素繊維上でサイジング剤が架橋反応により強固に固定化する。また、架橋反応過程において、他の添加剤成分と分子の絡まりを生じさせることもできるため、反応性を有しない各種添加成分を効果的に炭素繊維表面に固定化することもできる。
本発明で用いるサイジング剤には、ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)に加え、熱可塑性樹脂成分(C)が含まれていることが好ましい。熱可塑性樹脂成分は、ブロックポリイソシアネート化合物(B)が架橋反応により繊維状に固定化される際に、炭素繊維表面に固定化され、炭素繊維表面に保護層を形成し、炭素繊維束の収束性・擦過性を改善することができる。
本発明で用いる熱可塑性樹脂成分としては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)と相容性が良好である熱可塑性樹脂を用いることが、炭素繊維表面に安定して固定化されやすいため好ましい。また炭素繊維と組合わせるマトリクス樹脂との接着性が良好な熱可塑性樹脂成分であることが、複合材料を形成した際にマトリクス樹脂との接着性に優れる為好ましい。このような熱可塑性樹脂成分としては、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂もしくはポリウレタン樹脂など挙げられ、中でも柔軟性の高い不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、柔軟な構造を持つブロックポリイソシアネート化合物(B)との相容性や、これらの剤で表面処理された炭素繊維の物性の面から、ガラス転移点が30℃以下である熱可塑性樹脂(C)が好ましく用いられる。
また、本発明において、サイジング剤がポリエポキシ化合物(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)に加え熱可塑性樹脂(C)を含む場合、その割合は、重量分率としては(C)/{(A)+(B)}が100/1〜100/50の範囲で有ることが好ましく、更に好ましくは100/5〜100/40が用いられる。熱可塑性樹脂(C)の割合が上記範囲であれば、マトリクス樹脂との接着性がより向上すると共に、十分な炭素繊維保護機能を得ることができる。
本発明の炭素繊維束は、上記サイジング剤が付着されてなる炭素繊維束である。
本発明の炭素繊維束としては、ポリアクリロニトリル系やピッチ系、レーヨン(セルロース)系等の種々の炭素繊維束を用いることができるが、高強度の所望の炭素繊維を得やすいポリアクリロニトリル系炭素繊維束をより好適に用いることが好ましい。本発明の炭素繊維としては、引張弾性率が250GPa以上の中高弾性タイプの炭素繊維を用いることが好ましく、引張弾性率が350GPa以上の高弾性タイプの炭素繊維を用いることがより好ましく、350〜600GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが特に好ましい。本発明の炭素繊維束は、このような中弾性以上の弾性率の高いの炭素繊維であっても、マトリクス樹脂に対する優れた接着性を有しているため、高性能の炭素繊維強化複合材料を形成することができる。
本発明で用いる炭素繊維束のフィラメント数は、好ましくは1000〜100000本
、さらに好ましくは3000〜50000本である。また、製造効率の面からは、120
00本以上がより好ましく、24000本以上がさらに好ましい。また、単位幅当たりの
フィラメント数は5000本/mm以下であることが好ましく、3000本/mm以下が
さらに好ましい。5000本/mmを超えると、サイズ剤付与のバラツキが大きくなる傾
向がある。
本発明においては、サイジング剤の付着量は炭素繊維ストランド全質量に対して0.3〜5.0質量%とすることが好ましい。サイズ剤の付着量が0.3質量%以上あれば、炭素繊維ストランドを複合材料とした場合にマトリックス樹脂との良好な接着性を得ることができ、また集束性に優れた炭素繊維束とすることができる。一方、サイズ剤の付着量が5.0質量%以下であれば、サイジング剤を付着による炭素繊維束の開繊性の低下が起こりにくく、マトリックス樹脂の含浸性に優れた炭素繊維束とすることができる。
また、本発明に用いる炭素繊維束は、その表面に酸素を含む官能基(x)を有するものであることが好ましい。炭素繊維表面の官能基(x)は、炭素繊維束に対して、適宜、電解酸化処理などの表面酸化処理を行うことにより形成・増加させることができる。官能基(x)の例としては、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基などが挙げられる。
炭素繊維束の表面の官能基(x)の量は、炭素繊維のX線光電子分光法により測定される表面酸素濃度比O/Cにより定量することができる。本発明に用いる炭素繊維束のO/Cは0.05〜0.3であることが好ましい。表面酸素濃度O/Cが0.05以上あればマトリックス樹脂との接着性に優れるため、複合材料の物性が向上する傾向がある。一方、表面酸素濃度O/Cが0.3を超える場合は炭素繊維自体の強度が低下しやすい傾向がある。炭素繊維の表面酸素濃度比O/Cを上記範囲とするため、炭素繊維の製造工程において、炭素化終了後、表面処理を施すことが好ましい。
炭素繊維の表面処理方法としては、液相処理、気相処理等を挙げることができる。本発明においては、生産性、処理の均一性、安定性等の観点から、液相電解表面処理が好ましい。
本発明のもう一つの態様である複合材料用炭素繊維束の製造方法は、本発明の炭素繊維束をブロックポリイソシアネート化合物(A)のブロック解離温度以上かつ250℃以下の温度で加熱する複合材料用炭素繊維束の製造方法である。すなわち、本発明の複合材料用炭素繊維束の製造方法は、炭素繊維束にサイジング剤を付着させる複合材料用炭素繊維束の製造方法であって、炭素繊維束に、ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤であり、前記ポリエポキシ化合物(A)がポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物であり、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が加熱によりブロック基が外れイソシアネートを生じる官能基を分子中に2つ以上有するブロックポリイソシアネート化合物(B)であるサイジング剤を付与した後、ブロックポリイソシアネート化合物(B)のブロック解離温度以上かつ250℃以下の温度、好ましくは100〜210℃、より好ましくは120〜190℃で加熱する複合材料用炭素繊維束の製造方法である。
かかる処理をすることで、繊維表面にサイジング剤が固定された複合材料用炭素繊維束を製造することができる。より詳しくは、炭素繊維束に上記のサイジング剤を付着させた本発明の炭素繊維束を、ブロックポリイソシアネート化合物(B)のブロック解離温度以上かつ250℃以下の温度で加熱することで、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の解離・重合反応が起き、炭素繊維上にサイジング剤が固定化され、炭素繊維とサイジング剤との界面相を強固に形成することができ、マトリクス樹脂との高い接着性を有する、複合材料用炭素繊維を製造することができる。本発明は、ブロックポリイソシアネート化合物(B)を用いることで、温和な条件でも炭素繊維表面でポリエポキシ化合物とイソシアネート化合物を反応させることができるため、炭素繊維単繊維の表面に効率よく架橋構造を有するサイジング剤被膜を形成させることができる。
本発明の複合材料用炭素繊維束の製造方法によって得られる熱処理後の複合材料用炭素繊維束は、マトリクス樹脂との親和性に優れており、形態安定性と取扱い性に優れた複合材料用炭素繊維束である。
複合材料用炭素繊維束とマトリクス樹脂との親和性は、例えば、炭素繊維束とマトリクス樹脂の濡れ性によって評価することができるが、一般的にマトリクス樹脂自体は常温において高粘度である、もしくは固体である場合が多いため、マトリクス樹脂と同等の表面張力を有する液体に対する炭素繊維束の濡れ性により評価される。マトリクス樹脂の表面張力は、用いる樹脂の種類や組成により異なるが、一般的に25〜55mN/mであり、例えば、エポキシ樹脂組成物であれば、39〜46mN/mである。
マトリクス樹脂と同等の表面張力を有する液体に対する炭素繊維束の濡れ性の評価方法は種々あるが、例えば、一定の繊度の繊維束が一定時間に吸い上げる液量を多さを評価する方法が挙げられる。本発明の炭素繊維束を熱処理して得られる複合材料用炭素繊維束は、炭素繊維と結合したポリエポキシ化合物とポリイソシアネート化合物の反応物が炭素繊維とサイジング剤との界面相を強固に形成するため、マトリクス樹脂との高い接着性が得られ、例えば、総繊度800Texに対して15分間で、JIS K 6768に記載の方法で調整された表面張力41mN/mの試験用混合液を、0.3g以上吸い上げることのできる、マトリクス樹脂との親和性に優れた複合材料用炭素繊維束を得ることができる。
炭素繊維束の形態安定性、取扱い性、開繊性は、例えば、後述の方法によって炭素繊維束の風合い度を測定することによって評価することができる。風合い度は20〜60であることが、形態安定性と、開繊性の両立の点から望ましい。風合い度が60よりも大きいと炭素繊維束が硬く形態安定性には優れるものの、開繊性と取扱い性が悪くなり、一方、20よりも小さいと、開繊性には優れるものの形態安定性が低下し取扱い性が悪くなる。本発明の炭素繊維束は、ポリエポキシ化合物とブロックイソシアネート化合物を共に用いているため、炭素繊維上に形成されるサイジング剤分子の架橋点の架橋密度を最適にすることができ、炭素繊維単糸間に適度な拘束力を生じさせることができ、形態安定性、取扱い性、開繊性にすぐれた風合い度が20〜60の範囲にある複合材料用炭素繊維束を得ることができる。
また、繊維束の開繊性は、走行時の繊維束の幅によっても評価され、繊維束の繊度1000Texに対して繊維幅が6〜10mmであることが繊維束への樹脂の含浸性の点から好ましい。
本発明において、炭素繊維束へのサイジング剤溶液の付与方法は、特に限定されないが、ローラーサイジング法、ローラー浸漬法、スプレー法およびその他公知の方法を用いることができる。中でも、一束あたりの単繊維数が多い炭素繊維束についても、サイジング剤溶液を均一に付与しやすい、ローラー浸漬法が好ましく用いられる。サイズジング剤溶液の液温は、溶媒蒸発によるサイジング剤濃度変動を抑えるため10〜50℃の範囲が好ましい。また、サイジング剤溶液を付与した後に、余剰のサイジング剤を絞り取る絞り量の調整することでも、サイジング剤の付着量を調整できる。
また、炭素繊維束の加熱方法としては、特に制限はなく、加熱ローラー、ゾーン加熱などの公知の方法により熱処理することができる。かかる熱処理は、本発明の炭素繊維をマトリクス樹脂と組み合わせ複合材料を成形する際の前処理として行っても良いし、サイジング工程における乾燥処理と同時に行っても良い。
このようにして得られた複合材料用炭素繊維束をマトリックス樹脂と組み合わせ、例えば、オートクレーブ成形、プレス成形、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング成形など、公知の手段・方法により成形することで、本発明のさらなる態様である炭素繊維強化複合材料を得ることができ、繊維束の取扱性、開繊性、および樹脂含浸性に優れているため、特にフィラメントワインディング成形に好ましく用いることができる。オートクレーブ成形、プレス成形、樹脂トランスファー成形により炭素繊維強化複合材料を製造する場合、炭素繊維束は、シート状の強化繊維材料として用いることが好ましい。シート状の材料としては、繊維材料を一方向にシート状に引き揃えたもの、繊維材料を織編物や不織布等の布帛に成形したもの、多軸織物等が挙げられる。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、上記の本発明の炭素繊維束と、マトリクス樹脂からなる炭素繊維強化複合材料である。本発明の炭素繊維強化複合材料において、本発明の炭素繊維束は、マトリクス樹脂と組み合わされる前に、ブロックポリイソシアネート化合物(A)のブロック解離温度以上かつ250℃以下の温度で加熱されていることが好ましい。マトリクス樹脂と組み合わされる前に、本発明の炭素繊維束を加熱処理することで、サイジング剤成分がマトリクス樹脂中に拡散することなく、炭素繊維単繊維の表面に効率よく架橋構造を有するサイジング剤被膜を形成させることができ、炭素繊維とマトリクス樹脂の接着性をより向上させることができる。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。マトリクス樹脂として用いる熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂としては、引張弾性率が20MPa以上の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用いることがより好ましく、引張弾性率が50MPa以上10GPa以下の樹脂であることが更に好ましい。マトリクス樹脂の引張弾性率が20MPaより低い場合、補強繊維である炭素繊維との弾性率の差が大きすぎるため、繊維と樹脂の界面への応力集中が顕著となり、界面での接着性が不十分となりやすい傾向がある。また、マトリクス樹脂の引張弾性率が高すぎる場合、樹脂としての硬さが十分高いため、炭素繊維による補強効果が得られにくい傾向がある。本発明で言うマトリクス樹脂の引張弾性率は、JIS K 7161に準拠し測定される、マトリクス樹脂単独の引張弾性率であり、マトリクス樹脂が硬化性樹脂である場合には、硬化後の樹脂の引張弾性率を言う。
熱硬化性マトリックス樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
複合材料中に占める樹脂組成物の含有率は、10〜90重量%、好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは25〜45重量%である。
このような炭素繊維複合材料は、機械物性に優れ、そのばらつきも小さいため、スポー
ツ用途、レジャー用途、一般産業用途、航空・宇宙用途、自動車用途などに広く利用でき
る。
(評価方法)
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における繊維の物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
<表面酸素濃度比O/C>
日本電子株式会社製X線光電子分光器ESCA JPS−9000MXを用いて測定を行った。炭素繊維をカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90度に設定し、X線源としてMgKαを用い、試料チャンバー内を1×10−6Paの真空度に保った。測定時の帯電に伴うピークの補正として、まずC1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVに合わせる。O1sピーク面積は、528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求め、C1sピーク面積は、282〜292eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。炭素繊維表面の表面酸素濃度O/Cは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比で計算して求められる。
<Fuzz測定>
直径2mmのクロムめっきされたステンレス棒を15mm間隔で、かつその表面をサイジングされた炭素繊維ストランドが120°の接触角で接触しながら通過するようにジグザクに5本配置した。このステンレス棒間にサイジングされた炭素繊維ストランドをジグザグにかけ、ボビンからのCFストランド解舒テンションを200に設定して擦過させた。
擦過後の炭素繊維ストランドをウレタンスポンジ(底面32mm×64mm、高さ10mm、重さ約0.25g)2枚の間にはさみ、125gの重りをウレタンスポンジ全面に荷重がかかるようにのせ、炭素繊維ストランドを15m/分の速度で2分間通過させたときのスポンジに付着した毛羽の重量を擦過毛羽量とした。
<風合い度測定>
風合い度は大栄科学精器製作所製ハイドロメーター型式:HOM−2を用いて以下の条件で測定した。
測定サンプル:20cm長の炭素繊維ストランド
スリット幅:10mm
測定方法:サンプルをサンプル中央部がスリット上になるように試料台に載せた。このとき、スリットの幅方向がサンプルの長さ方向になるようにした。次に厚さ2mm、長さ200mmの金属プレートでこのサンプルをスリット間に深さ10mmまで10mm/secの速さで垂直に押し込み、このときの金属プレートに負荷する最大荷重を測定した。測定は異なるサンプルについて5回行い、その平均値を測定値(F)とした。風合い度は15〜55であることが、形態安定性と開繊性の両立の点から望ましく、20〜50であることがより望ましい。
<吸上げ液量>
総繊度が800Texになるよう炭素繊維束を引きそろえ、内径6mm長さ210mmの樹脂製の管の中に通した。引き続き、炭素繊維束の樹脂製の管から露出した部分をカットした後に、垂直に立てた状態で炭素繊維束の端部が液面下30mmの深さまで浸るように、表面張力が41mN/mに調整した液の中に浸した。表面張力41mN/mの液体としては、JIS K 6768に記載の試験用混合液を用いた。15分後にサンプルを取り出し、浸漬前後の重量変化から吸上げた液量を算出した。吸上げ液量が多いほど、マトリクス樹脂との親和性に優れている。
<接着性評価>
下記組成で樹脂を混合し、マトリクス樹脂とした。
ビスフェノールAエポキシ jER 828 三菱化学株式会社製 100部
無水ハイミック酸 日立化成工業株式会社製 85部
N,N Dimethyl benzylamine 東京化成株式会社製 1部
金属ローラー上の該マトリクス樹脂厚みを一定に保ち、この上に炭素繊維を接触させることにより下式2で表される樹脂含有量(RC)を25%に調整した。
RC(%)=マトリクス樹脂重量(g)÷(マトリクス樹脂重量(g)+炭素繊維重量(g))×100 (2)
この繊維を2枚積層させ室温から、2℃/min昇温させながら80℃で1時間加熱し、次いで130℃で1時間加熱した後、さらに180℃で2時間加熱を行い、マトリクス樹脂の硬化させ得られた炭素繊維強化複合材料を試験片とした。
得られた試験片の積層させた繊維束の境目を、20mm/minの速度で引き剥がし、剥離界面を電子顕微鏡観察して、樹脂・繊維との接着性の評価を行った。判定は下記のように行った。
剥離界面において、炭素繊維表面のマトリクス樹脂に被覆されている面積の割合により、下記のような判定を行った。
90〜100%の炭素繊維表面がマトリクス樹脂に被覆されている:◎
70〜 90%の炭素繊維表面がマトリクス樹脂に被覆されている:○
50〜 70%の炭素繊維表面がマトリクス樹脂に被覆されている:△
50%未満の炭素繊維表面がマトリクス樹脂に被覆されている :×
<炭素繊維束の幅(L)>
繊度1000Texあたり100gの張力を付与しながら、5m/minの速度で走行させている繊維束の幅を、株式会社キーエンス製イメージセンサー(センサーヘッドVG−035、コントローラーVG−300)を用いて20cm置きに5箇所測定し、平均値を求めた。
<Tg測定方法>
サイジング剤有効成分10mgをサンプルパンに入れ、示差走査熱量計(株式会社マックスサイエンス製DSC 3100S)を用い窒素雰囲気下、10℃/分で昇温を行い、測定した。
<実施例1>
ポリエポキシ化合物(A)としてEX−832(ポリエチレングリコール(重合度平均値9)ジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス株式会社製)、ブロックイソシアネート化合物(B)としてDM−6400 (メチルエチルケトオキシムブロック−ジメチルジフェニルジイソシアネート、イソシアネート基の含有量2、ブロック解離温度150℃、明成化学工業株式会社製)を有効成分比1/3で混合しA液とした。
無水マレイン酸とビスフェノールAのエチレンオキシド3モル付加物をモル比でビスフェノールAのエチレンオキシド3モル付加物/無水マレイン酸=1.8で反応させて得られた不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対しPO/EOポリエーテル(レオコンED274R、ライオン株式会社製)を15重量部添加し乳化した。
該不飽和ポリエステル乳化物とA液を混合し、該不飽和ポリエステル有効成分とA液有効成分との重量比が5/1になるように混合しサイジング剤とした。
ポリアクリロニトリル繊維を、空気中250℃で耐炎化処理を行い、次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度650℃で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1500℃で高温炭素化させて製造した炭素繊維を、10.0質量%の硫酸アンモニウム水溶液を用い、電解溶液温度40℃、20C/gの電気量で電解酸化により表面処理を行い、未サイジング処理炭素繊維束(引張強度:5000MPa、引張弾性率:250GPa、フィラメント数:24000、総繊度:1600Tex、O/C:0.2)を得た。得られた未サイジングの炭素繊維束をサイジング処理剤中に連続的に浸漬させ、ローラーにて余分な水分を除去し、炭素繊維束にサイジング剤を付着させた。引き続き、サイジング剤を付着させた炭素繊維束を160℃で2分間乾燥し、連続的に炭素繊維束の熱処理を行った。この際、サイジング処理剤浴濃度を調整することにより、付着量が1.5重量%になるよう調節した。
得られた熱処理後のサイジング剤付着炭素繊維束は、樹脂の吸上げ量が高くマトリクス樹脂との親和性に優れていた。また、炭素繊維束幅が11mmと広く保たれ、フィラメントワインディングなどの複合材料製造工程において効率よく成型物を作成可能であった。さらにFUZZ値が低く、風合いも望ましい範囲にある、形態安定性と取扱い性に優れた炭素繊維であった。接着性評価においては、得られた複合材料用炭素繊維束は、マトリクス樹脂との接着性に非常に優れており、炭素繊維とマトリクス樹脂の接着性のよい炭素繊維強化複合材料が得られることが確かめられた。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表1に示した。
<実施例2〜5>
エポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)の比率を表1に示す値に変更した以外、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。得られたサイジング剤付着炭素繊維束は、いずれも樹脂の吸上げ量が高くマトリクス樹脂との親和性に優れており、樹脂との接着性に優れた複合材料用炭素繊維束であった。また、炭素繊維束幅が広く保たれ、フィラメントワインディングなどの複合材料製造工程において効率よく成型物を作成可能であった。さらに風合い度の値が望ましい範囲にあり、FUZZの値も低い取扱い性に優れた炭素繊維であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表1に示した。
Figure 2014163000
<実施例6>
ポリエポキシ化合物(A)としてEX−811(ポリエチレングリコール(主成分の重合度1)ジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束は、樹脂の吸上げ量が高くマトリクス樹脂との親和性に優れており、樹脂との接着性に優れた炭素繊維であった。また、炭素繊維束幅が広く保たれ、複合材料製造工程において効率よく成型物を作成可能であった。さらに風合い度の値が望ましい範囲にあり、FUZZの値も低い取扱い性に優れた炭素繊維であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表2に示した。
<実施例7>
ポリエポキシ化合物(A)としてEX−821(ポリエチレングリコール(重合度平均値4)ジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束は、樹脂の吸上げ量が高くマトリクス樹脂との親和性に優れており、樹脂との接着性に優れた炭素繊維であった。また、炭素繊維束幅が広く保たれ、複合材料製造工程において効率よく成型物を作成可能であった。さらに風合い度の値が望ましい範囲にあり、FUZZの値も低い取扱い性に優れた炭素繊維であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表2に示した。
<実施例8>
ブロックポリイソシアネート化合物(B)としてNBP−211(メチルエチルケトオキシム基でブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマーとエチレングリコール骨格を有するポリオールアダクトポリイソシアネート化合物、イソシアネート基の含有量4、ブロック解離温度150℃ 明成化学工業株式会社製)を用いた以外、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束は、樹脂の吸上げ量が高くマトリクス樹脂との親和性に優れており、樹脂との接着性に優れた炭素繊維であった。また、炭素繊維束幅が広く保たれ、複合材料製造工程において効率よく成型物を作成可能であった。さらに風合い度の値が望ましい範囲にあり、FUZZの値も低い取扱い性に優れた炭素繊維であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表2に示した。
<実施例9>
熱可塑性樹脂(C)として、ボンディック 2210(Tg<0℃、ポリウレタン、DIC株式会社製)を用いた以外、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束は、樹脂の吸上げ量が高くマトリクス樹脂との親和性に優れており、樹脂との接着性に優れた炭素繊維であった。また、炭素繊維束幅が広く保たれ、複合材料製造工程において効率よく成型物を作成可能であった。さらに風合い度の値が望ましい範囲にあり、FUZZの値も低い取扱い性に優れた炭素繊維であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表2に示した。
Figure 2014163000
<比較例1>
ポリエポキシ化合物(A)としてEX614B(ソルビトールポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス株式会社製)を用い、ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)の有効成分比率が1/10とした以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束は、得られた炭素繊維束は、樹脂との接着性が悪く、また、風合いが高すぎ、取扱い性の悪い炭素繊維束であった。また、炭素繊維束幅が8.8mmと狭く、複合材料製造工程において効率よく成型物を作成することができなかった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表3に示した。
<比較例2>
ポリエポキシ化合物(A)としてjER 828(液状ビスフェノールAジグリシジルエーテル、三菱化学株式会社製)を用いた以外、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束は、風合いが低く形態安定性の悪い炭素繊維束であった。また、炭素繊維束幅が8.5mmと狭く、複合材料製造工程において効率よく成型物を作成することができなかった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表3に示した。
<比較例3>
ブロックポリイソシアネート化合物(B)を添加しなかったことを以外、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束は、マトリクス樹脂との親和性が低く、樹脂との接着性が悪い炭素繊維束であった。また、FUZZの値も高く、加工性の悪い炭素繊維であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表3に示した。
<比較例4>
サイジング剤付与後の熱処理温度を120℃に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
熱処理温度がブロック解離温度よりも低かったため、得られた熱処理後のサイジング剤付着炭素繊維束は、マトリクス樹脂との親和性が低く、樹脂との接着性が悪い炭素繊維束であった。また、FUZZの値も高く、加工性の悪い炭素繊維であった。得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を表3に示した。
Figure 2014163000
本発明の範囲内においては、得られたサイジング剤付着炭素繊維束は、炭素繊維束幅が9.5mm以上に広く保たれ、フィラメントワインディングなどの後加工工程において効率よく成型物を作成可能であった。また、風合いの値も望ましい範囲にあり、糸の取り回し時に撚りなどがかかることなく、安定的に取り扱うことが可能である。FUZZの値も25μg/ft以下と低く安定しており、糸道での毛羽の蓄積が押さえられ、加工性に優れる。
マトリクス樹脂との濡れ性に関しては、吸上げ量並びに接着評価の値が高く、良好であることが分かる。

Claims (5)

  1. サイジング剤を付着されてなる炭素繊維束であって、前記サイジング剤がポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤であり、前記ポリエポキシ化合物(A)がポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物であり、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が加熱によりブロック基が外れイソシアネートを生じる官能基を分子中に2つ以上有するブロックポリイソシアネート化合物(B)であることを特徴とする炭素繊維束。
  2. 前記サイジング剤が、ガラス転移点が30℃以下の熱可塑性樹脂(C)を含有するサイジング剤である請求項1に記載の炭素繊維束。
  3. 前記サイジング剤に含まれるポリエポキシ化合物(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)、熱可塑性樹脂(C)の割合が(A)/(B)=1/20〜1/1であり、(C)/{(A)+(B)}=100/1〜100/50の範囲で有る請求項2記載の炭素繊維束。
  4. 炭素繊維束にサイジング剤を付着させる複合材料用炭素繊維束の製造方法であって、炭素繊維束に、ポリエポキシ化合物(A)とブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有するサイジング剤であり、前記ポリエポキシ化合物(A)がポリアルキレンジオールのジグリシジルエーテルであって、ポリアルキレンジオールの重合度が1〜10であるポリエポキシ化合物であり、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)が加熱によりブロック基が外れイソシアネートを生じる官能基を分子中に2つ以上有するブロックポリイソシアネート化合物(B)であるサイジング剤を付与した後、ブロックポリイソシアネート化合物(B)のブロック解離温度以上かつ250℃以下の温度で加熱することを特徴とする複合材料用炭素繊維束の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素繊維束と、マトリクス樹脂からなる、炭素繊維強化複合材料。
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