JP6742109B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、塩素含有量およびナトリウム含有量を低減したポリアリーレンスルフィド樹脂、オレフィン系共重合体および有機アルカリ金属塩からなる樹脂組成物であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂が有する優れた特性を保持しつつ、優れた靭性、ウエルド強度および耐湿熱性を併せ持つ樹脂組成物に関する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂は、耐薬品性、耐熱性、機械的特性などに優れるエンジニアリングプラスチックである。このため、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、電気電子部品、車両関連部品、航空機部品、住設機器部品として広く利用されている。近年、デジタルカメラ、タブレット等の電子機器では製品の小型化に伴い、使用する製品筐体において筐体の薄肉化が進んでおり、また自動車などの車両関連部品においては省エネ化に伴う車両の軽量化および化石燃料の削減を目的としたハイブリッド車や電気自動車などを初めとする自走車両の電化が進んでいる。これら関連用途においては、製品の薄肉化や軽量化を目的に従来の金属からの樹脂化が検討されており、金属代替となる樹脂材料には高い材料強度や耐熱性、耐薬品性を有するのはもちろんのこと、優れた靭性とウエルド部の強度向上および使用環境を想定した耐湿熱性の向上が求められている。しかしながら、ポリアリーレンサルファイド樹脂はポリアミド樹脂等のエンジニアリングプラスチックと比較し、靭性が大きく劣るためスマートフォン、タブレット等の電子機器やハイブリッド車や電気自動車など車両関連部品(インバーターなど)の筐体用途への使用が限定されていた。また、ポリアリーレンスルフィド樹脂自身は耐熱性、耐薬品性には優れるものの、ウエルド強度、耐湿熱性は十分ではなく、これは一般的なポリマー重合方法において除去が困難な不純物(残留ナトリウム、残留クロルなど)による耐湿熱性の低下および不純物由来の発生ガスによるウエルド部の樹脂同士の接着を阻害することが要因として考えられている。
この問題を解決する手段として、靭性を向上させるためポリアリーレンスルフィド樹脂に各種熱可塑性エラストマー等を配合した樹脂組成物が提案されている。特許文献1〜3には、エチレン−α−オレフィン共重合体および金属微粒子や極性基含有ポリエチレン系共重合体およびシランカップリング剤、そしてエチレン系共重合体およびMg/Al酸化物固溶体と強化用充填剤からなる各種樹脂組成物が提案されている。特許文献4〜5には、金属イオンで中和されたカルボキシル基含有オレフィン共重合体およびエポキシ樹脂、シラン化合物からなる樹脂組成物が提案されている。また、特許文献6には、ナトリウム含有量を規定したポリフェニレンスルフィド樹脂にα−オレフィン系共重合体を配合した樹脂組成物が提案されている。しかしながら、いずれの特許文献においても求められる靭性向上効果を得るには十分に満足できるものではなく、またウエルド強度および耐湿熱性に与える影響に関して記載されていない。
WO2010/058748号公報 特開2009−143991号公報 特開平6−287450号公報 特開平7−82484号公報 特開平5−202291号公報 特開昭62−172057号公報
本発明は、塩素含有量およびナトリウム含有量を低減したポリアリーレンスルフィド樹脂、オレフィン系共重合体および有機アルカリ金属塩からなる樹脂組成物であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂が有する優れた特性を保持しつつ、優れた靭性、ウエルド強度および耐湿熱性を併せ持つ樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、塩素含有量およびナトリウム含有量を低減したポリアリーレンスルフィド樹脂、オレフィン系共重合体および有機アルカリ金属塩からなる樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂が有する優れた特性を保持しつつ、優れた靭性、ウエルド強度および耐湿熱性を有することを見出し本発明に至った。
具体的には、上記課題は、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)オレフィン系共重合体(B成分)1〜20重量部および(C)有機アルカリ金属塩(C成分)0.01〜10重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であり、樹脂組成物の総塩素含有量が500ppm以下であり、かつ総ナトリウム含有量が39ppm以下であることを特徴とする樹脂組成物により達成される。
本発明の好適な態様の1つは、(2)A成分が、総塩素含有量が500ppm以下であり、かつ総ナトリウム含有量が39ppm以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする上記構成1の樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の1つは、(3)A成分が、総塩素含有量が50ppm以下であり、かつ総ナトリウム含有量が8ppm以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする上記構成1または2の樹脂組成物である。
以下、本発明の詳細について説明する。
(A成分:ポリアリーレンスルフィド樹脂)
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができ、その中でも、p−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらに、ポリ(p−フェニレンスルフィド)がより好ましい。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総塩素含有量は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。総塩素含有量が500ppmを超える場合には、発生ガス量が増加しウエルド強度を低下させる場合がある。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総ナトリウム含有量は、好ましくは39ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスの増加によるウエルド強度を低下させるだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)は好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、さらに好ましくは2.9以上である。分散度が2.7未満の場合は、成形時のバリ発生が多くなる場合がある。なお、分散度(Mw/Mn)の上限は特に規定されないが、10以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)はゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出された値である。なお、溶媒には1−クロロナフタレンを使用し、カラム温度は210℃とした。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、既知の方法で重合されるが、特に好適な重合方法としては、米国登録特許第4,746,758号、第4,786,713号、特表2013−522385、特開2012−233210および特許5167276等に記載された製造方法が挙げられる。これらの製造方法は、ジヨードアリール化合物と固体硫黄を、極性溶媒なしに直接加熱して重合させる方法である。
前記製造方法はヨウ化工程および重合工程を含む。該ヨウ化工程ではアリール化合物をヨードと反応させて、ジヨードアリール化合物を得る。続く重合工程で、重合停止剤を用いてジヨードアリール化合物を固体硫黄と重合反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する。ヨードはこの工程で気体状で発生し、これを回収して再びヨウ化工程に用いられる。実質的にヨードは触媒である。
前記製造方法で用いられる代表的な固体硫黄としては、室温で8個の原子が連結されたシクロオクタ硫黄形態(S)が挙げられる。しかしながら重合反応に用いられる硫黄化合物は限定されるものではなく、常温で固体または液体であればいずれの形態でも使用し得る。
前記製造方法で用いられる代表的なジヨードアリール化合物としては、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードビスフェノールおよびジヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、またアルキル基やスルホン基が結合していたり、酸素や窒素が導入されたりしているヨードアリール化合物の誘導体も使用される。ヨードアリール化合物はそのヨード原子の結合位置によって異なる異性体に分類され、これらの異性体のうち好ましい例は、p−ジヨードベンゼン、2,6−ジヨードナフタレン、及びp,p’−ジヨードビフェニルのようにヨードがアリール化合物の分子両端に対称的に位置する化合物である。該ヨードアリール化合物の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し500〜10,000重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
前記製造方法で用いられる代表的な重合停止剤としては、モノヨードアリール化合物、ベンゾチアゾール類、ベンゾチアゾールスルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバメート類、芳香族スルフィド化合物などが挙げられる。モノヨードアリール化合物のうち好ましい例としては、ヨードビフェニル、ヨードフェノール、ヨードアニリン、ヨードベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾール類のうち好ましい例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビスベンゾチアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ベンゾチアゾールスルフェンアミド類のうち好ましい例としては、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−モルホリノチオベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールスルフェンアミド、ジベンゾチアゾールジスルファイド、N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール2−スルフェンアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。チウラム類のうち好ましい例としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。ジチオカルバメート類のうち好ましい例としては、ジメチルジチオカルバメート酸亜鉛、ジエチルジチオカルバメート酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。芳香族スルフィド化合物のうち好ましい例としては、ジフェニルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルエーテル、ビフェニル、ベンゾフェノンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。重合停止剤の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し1〜30重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
前記製造方法では重合反応触媒を使用しても良く、代表的な重合反応触媒としては、ニトロベンゼン系触媒が上げられる。ニトロベンゼン系触媒のうち好ましい例としては、1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン、1−ヨード−4−ニトロベンゼン、2,6−ジヨード−4−ニトロフェノール、ヨードニトロベンゼン、2,6−ジヨード−4−ニトロアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。重合反応触媒の含有量は前記固体硫黄100重量部に対し0.01〜20重量部であることが好ましい。この量はジスルフィド結合の生成を考慮して決定される。
この重合方法を使うことにより、実質的に塩素含有量およびナトリウム含有量を低減させる必要が無く、コストパフォーマンスに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂を得ることができる。
また本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂は、その他の重合方法によって得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を含んでいてもよい。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂は、より高い靭性およびウエルド強度を得ることができることから、カルボキシル基やカルボキシル基誘導体基、チオール基、スルホン基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基等の反応性官能基を末端に有するポリアリーレンスルフィド樹脂であることが好ましい。該反応性官能基を末端に有するポリアリーレンスルフィド樹脂を用いることで、他の高分子素材(特に反応性官能基を有するオレフィン系エラストマー)や、充填材などとの優れた相溶性を示し、より向上した靭性およびウエルド強度を有する樹脂組成物を得ることができる。該反応性官能基を末端に有するポリアリーレンスルフィド樹脂のうちより好ましい例としては、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂が挙げられる。前記カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂とは、FT−IR分光法のFT−IRスペクトルにて、カルボキシル基由来の約1600〜1800cm−1またはアミノ基由来の約3300〜3500cm−1のピークを示し、かつ1400〜1600cm−1で現れる芳香環伸縮ピークの高さ強度を100%としたとき、前記約1600〜1800cm−1または約3300〜3500cm−1のピークの相対的高さ強度が0.001〜10%であるポリアリーレンスルフィド樹脂である。
前記カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂のうち特に好ましい例としては、カルボキシル基の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂であり、下記一般式(1)で表される構造単位で示される。
Figure 0006742109
(式中、Ar基はアリーレン基である。)
ここで、前記アリーレン基は、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、および、置換されたフェニレン基などを使用することができる。具体的に、置換されたフェニレン基は、一つ以上のF、Cl、Br、C1〜C3のアルキル、トリフルオロメチル、C1〜C3のアルコキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、ジメチルアミノ、シアノ、(C1〜C3アルキル)SO−、(C1〜C3アルキル)NHSO−、(C1〜C3アルキル)2NSO−、NHSO−により任意に置換されたフェニレン基である。
ポリアリーレンスルフィド樹脂に前記反応性官能基を導入する方法としては特に限定されるものではなく、既知の方法で重合されるが、共役芳香環骨格上に一つまたは複数の一般式(2)で表される基を有する重合停止剤を使用する方法が挙げられる。前記重合停止剤で用いられる共役芳香環骨格としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、モノヨードベンゼン、チオフェノール、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、N,N’−ジシクロヘキシル−1,3−ベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドなどが挙げられる。
Figure 0006742109
(式中、Rは水素原子またはアルカリ金属原子である)
カルボキシル基の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法の好適な重合方法としては、ジヨード芳香族化合物と硫黄元素を含む反応物を重合反応させる段階、前記重合反応段階を進行しながら、カルボキシル基を有する化合物を添加してポリアリーレンスルフィド主鎖の末端基中をカルボキシル基で置換する製造方法が挙げられる。前記カルボキシル基を有する化合物で用いられる代表的な例は、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、4−ヨード安息香酸、および2,2’−ジチオ安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。前記カルボキシル基を有する化合物は、ジヨード芳香族化合物100重量部を基準に約0.0001〜5重量部添加することができる。
(B成分:オレフィン系共重合体)
本発明で使用されるオレフィン系共重合体としては特に制限はないが、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基等の反応性官能基を含有していることが靭性向上の点から好ましい。具体的にはα−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のアルキルエステルを主成分とするオレフィン系共重合体が好ましく使用され、中でもα−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの共重合体が好適である。α−オレフィンとしては例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられるが、中でもエチレンが好適に用いられる。また、これらα−オレフィンは2種以上を用いることもできる。α、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステルなどが挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどのα、β−不飽和酸カルボン酸およびそのアルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン等を共重合しても良い。これらのα−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとの共重合体の中でも、エチレングリシジルメタクリレート共重合体およびメチルアクリレート−エチレングリシジルメタクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種のエポキシ基含有オレフィン系共重合体が特に好適に用いられる。
このようなオレフィン系共重合体の市販品としては、例えば住友化学(株)社製のボンドファーストE、ボンドファースト7M、アルケマ(株)社製のLOTADER AX8900、LOTADER AX8840等が挙げられる。
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、1〜20重量部であり、好ましくは3〜18重量部、より好ましくは5〜15重量部である。B成分の含有量が1重量部未満では衝撃強度が劣り、20重量部を超えると発生ガス量が増大する。
(C成分:有機アルカリ金属塩)
本発明の樹脂組成物はC成分として有機アルカリ金属塩を含有することにより、機械強度を保持しつつ引張破断伸度を向上することができる。この効果は有機アルカリ金属塩から放出される金属イオンがポリアリーレンスルフィド樹脂とオレフィン系共重合体間の反応触媒として機能し、反応が促進された結果オレフィン系共重合体がポリアリーレンスルフィド樹脂中に微分散することで得られるものと考えられる。そのため有機アルカリ金属塩としては、有機スルホン酸のアルカリ金属塩が好適に使用される。また有機スルホン酸としては電子吸引性が高く金属イオンを放出しやすいことが好ましく、例えばパーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸等のアルカリ金属塩を使用すると効果が高く好ましい。
このような金属化合物の市販品としては、DIC(株)社製のメガファックF−114P、三菱マテリアル電子化成(株)社製のEF−32、KFBS等が挙げられる。
C成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜7重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。C成分の含有量が0.01重量部未満の場合および10重量部を超えた場合、引張破断伸度が低下する。
(その他の添加剤について)
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー成分を含むことができる。好適なエラストマー成分としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)およびシリコーン・アクリル複合ゴム系グラフト共重合体などのコア−シェルグラフト共重合体樹脂、あるいはシリコーン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を含むことができる。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂などに代表される汎用プラスチックス、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、液晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂(非晶性ポリアリレート、液晶性ポリアリレート)等に代表されるエンジニアリングプラスチックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、などのいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものを挙げることができる。
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、リン酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
本発明における樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で、充填材を含むことができる。その材料は特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤を使用することができる。具体的には例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、およびエポキシ化合物などのカップリング剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
本発明の樹脂組成物には導電性を付与するために充填材として、導電性フィラーを含有することができる。その材料は特に限定されるものではないが、導電性フィラーとして、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。金属繊維の金属種の具体例としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示できる。かかる金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。金属酸化物の具体例としてはSnO(アンチモンドープ)、In(アンチモンドープ)、ZnO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO(アンチモンドープ)、In(アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。カーボン粉末はその原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネスブラックが特に好適に用いられる。
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物は上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは2軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第2供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。上記の如く押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜4mmである。
本発明の樹脂組成物の総塩素含有量は、500ppm以下であり、好ましくは300ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。総塩素含有量が500ppmを超える場合には、発生ガス量が増加しウエルド強度を低下する。
本発明の樹脂組成物の総ナトリウム含有量は、39ppm以下であり、好ましくは10ppm以下、より好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスが増加し、ウエルド強度が低下するだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性が低下する。
(成形品について)
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出し成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。
本発明の樹脂組成物は、総塩素含有量および総ナトリウム含有量を低減したポリアリーレンスルフィド樹脂、オレフィン系共重合体および有機アルカリ金属塩よりなる樹脂組成物であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂が有する優れた特性を保持しつつ、優れた靭性、ウエルド強度および耐湿熱性を併せ持つ樹脂組成物であることから、パソコン(ノートブック、ウルトラブック)、タブレット、携帯電話用ハウジング、ハイブリッド自動車や電気自動車用のインバータハウジング、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などにおいて幅広く有用であり、特に靭性に優れることから各種シール材、電池ガスケット等に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
[樹脂組成物の評価]
(1)引張破断伸度
ISO527−1およびISO527−2(測定条件23℃)に準拠して測定した。測定には島津製作所製のオートグラフAG−X plus 50kNを使用し、引張速度は5mm/min、標線間距離は50mm、グリップ間距離は115mmで測定した。なお、この数値が大きいほど樹脂組成物の靭性が優れていることを意味する。
(2)シャルピー衝撃強度(ノッチ無)
ISO179(測定条件23℃)に準拠して測定した。なお、試験片は、前記(1)と同条件で成形した。この数値が大きいほど樹脂組成物の衝撃が優れていることを意味する。なお、NB(Non−Break)は未破壊であり、衝撃強度が非常に優れていることを示す。
(3)ウエルド強度
曲げ弾性率(ウエルド有)を幅13mm、長さ160mm、厚み1.5mmtの試験片を使用し測定した。ウエルドを有する試験片は、試験片の両側に設けたサイドゲートから充填させ試験片中央部にウエルドを作成した。得られた試験片をテンシロン万能試験機((株)オリエンテック 製 UCT−1T)にて支点間距離24mm、試験速度1mm/minの条件にて曲げ弾性率を測定した。この数値が大きいほど樹脂組成物のウエルド強度が優れていることを意味する。
(4)耐湿熱性
ISO527−1およびISO527−2に準拠した引張試験片を、超加速寿命試験装置((株)平山製作所製 PC−305III/V)に入れ、温度120℃、湿度100%RH、処理時間500時間にて処理を行った。得られた試験片の引張破断応力をISO527−1およびISO527−2(測定条件23℃)に準拠して測定した。測定した湿熱処理前の引張破断応力および湿熱処理後の引張破断応力より下記式を用いて、湿熱処理後の保持率を算出した。この数値が大きいほど樹脂組成物の耐湿熱性が優れていることを意味する。
湿熱処理後の保持率(%)=[(湿熱処理後の引張破断応力)/(湿熱処理前の引張破断応力)]×100
(5)発生ガス量
示差熱天秤((株)リガク製 TG−DTA8121)にて、ペレットを窒素雰囲気下320℃で30分間保持した際の重量減少率を測定した。この数値が小さいほど発生ガス量が少ないことを意味する。
[実施例1〜8、比較例1〜7]
ポリアリーレンスルフィド樹脂、オレフィン系共重合体および有機アルカリ金属塩を表1記載の各配合量で、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX−30XSST(完全かみ合い、同方向回転)を使用した。押出条件は吐出量12kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第一供給口からダイス部分まで300℃とした。得られたペレットを130℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度300℃、金型温度150℃の条件で評価用の試験片を成形した。樹脂組成物の総塩素含有量は、ペレットをAr/O気流中にて900℃にて燃焼処理し、発生したガスを吸収液に吸収させ、イオンクロマトグラフ法(IC法)により定量した。樹脂組成物の総ナトリウム含有量は、ペレットに硫酸を添加して灰化後、硫酸水素カリウムで融解し、希硝酸に溶解させ純水で定容した後、ICP発光分析法(ICP−AES法)により定量分析を行った。測定装置はバリアン製、ICP−AES VISTA−MPXを使用した。
表1中の記号表記の各成分は下記の通りである。
<A成分>
PPS−1:製造方法1で得られたカルボキシル基末端ポリフェニレンスルフィド樹脂
[製造方法1]
パラジヨードベンゼン5130g及び硫黄450gに、反応開始剤としてメルカプトベンゾチアゾール4gを含む反応物を180℃に加熱して完全に溶融および混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を350Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度および圧力が各々300℃および1Torr以下となるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、重合反応を進行した。前記重合反応が80%進行した時(重合反応の進行程度は粘度による相対比率((現在粘度/目標粘度)×100%)の方法で確認した。)、重合停止剤としてメルカプトベンゾチアゾールを25g添加して反応を行った。1時間後、4−ヨード安息香酸51g添加して窒素雰囲気下で10分間反応を行い、0.5Torr以下に徐々に真空度を上げてさらに1時間反応を行った後反応を終了し、カルボキシル基を主鎖末端に含むポリアリーレンスルフィド樹脂を製造した。得られたポリアリーレンスルフィドのFT−IRスペクトルにて、1600〜1800cm−1のカルボキシル基ピークの存在を確認した。また、1400〜1600cm−1で現れる芳香環伸縮ピークの高さ強度を100%としたとき、前記1600〜1800cm−1のピークの相対的高さ強度は3.4%であった。総塩素含有量は20ppm以下(検出限界以下)、総ナトリウム含有量は7ppmであった。
PPS−2:製造方法2で得られたポリフェニレンスルフィド樹脂
[製造方法2]
パラジヨードベンゼン300g及び硫黄27gに、重合停止剤としてジフェニルジスルフィド0.6g(最終的に重合されたPPSの重量に基づいて0.65重量%の含量)を投入して180℃に加熱して完全にそれらを溶融及び混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を200Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度及び圧力が夫々320℃及び1Torrとなるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、8時間重合反応させてポリフェニレンスルフィド樹脂を製造した。総塩素含有量は20ppm以下(検出限界以下)、総ナトリウム含有量は7ppmであった。
PPS−3:ポリフェニレンスルフィド樹脂(DIC製 DIC−PPS MA−505、総塩素含有量2200ppm、総ナトリウム含有量160ppm)
PPS−4:PPS−2 80wt%およびPPS−3 20wt%を上記2軸押出し機にて溶融混練しポリフェニレンスルフィド樹脂を得た。総塩素含有量は330ppm、総ナトリウム含有量は26ppmであった。
PPS−5:PPS−2 60wt%およびPPS−3 40wt%を上記2軸押出し機にて溶融混練しポリフェニレンスルフィド樹脂を得た。総塩素含有量は870ppm、総ナトリウム含有量は67ppmであった。
<B成分>
B−1:エチレングリシジルメタクリレート共重合体(住友化学(株)製 ボンドファースト BF−E)
B−2:メチルアクリレート−エチレングリシジルメタクリレート共重合体(住友化学(株)製 ボンドファースト BF−7M)
<C成分>
C−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(DIC(株)製 メガファック F−114P)
Figure 0006742109

Claims (10)

  1. (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)エチレングリシジルメタクリレート共重合体およびメチルアクリレート−エチレングリシジルメタクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種のエポキシ基含有オレフィン系共重合体(B成分)1〜20重量部および(C)有機アルカリ金属塩(C成分)0.01〜10重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であり、樹脂組成物の総塩素含有量が500ppm以下であり、かつ総ナトリウム含有量が39ppm以下であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. A成分が、総塩素含有量が500ppm以下であり、かつ総ナトリウム含有量が39ppm以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. A成分が、総塩素含有量が50ppm以下であり、かつ総ナトリウム含有量が8ppm以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. A成分が、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)で表される分散度(Mw/Mn)が2.7以上であるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. A成分が、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の末端基構造を有するポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. C成分が、有機スルホン酸アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. C成分が、パーフルオロアルキルスルホン酸カリウム金属塩であることを特徴とする請求項記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
  9. (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)エチレングリシジルメタクリレート共重合体およびメチルアクリレート−エチレングリシジルメタクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種のエポキシ基含有オレフィン系共重合体(B成分)1〜20重量部および(C)有機アルカリ金属塩(C成分)0.01〜10重量部を含有し、総塩素含有量が500ppm以下であり、かつ総ナトリウム含有量が39ppm以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  10. A成分が、ジヨードアリール化合物、固体硫黄、並びに重合停止剤および/または重合反応触媒を、極性溶媒を使用せずに直接加熱して重合させる方法よって得られるポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項記載の樹脂組成物の製造方法。
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