JP6495679B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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この問題を解決する手段として、特許文献1および特許文献2にはリン酸のアルカリ土類金属塩や芳香族基含有オリゴマーを使用してバリの発生を抑制する方法が開示されている。該方法においてはバリ発生を抑制する効果はあるが、抑制効果を十分発揮しようとした場合、添加剤の量を増やす必要があり、ポリアリーレンスルフィド樹脂の機械強度が低下するという問題が生じる。
(A成分:ポリアリーレンスルフィド樹脂)
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いてもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、その構成単位として、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位、等よりなるものを挙げることができ、その中でも、p−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましく、さらに、ポリ(p−フェニレンスルフィド)がより好ましい。
本発明のA成分として使用されるポリアリーレンスルフィド樹脂の総ナトリウム含有量は、好ましくは39ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは8ppm以下である。39ppmを超える場合には、発生ガスの増加によるウエルド強度を低下させるだけではなく、高温高湿環境下において、ナトリウム金属と水分子の配位結合による樹脂の吸水量の増加によって耐湿熱性を低下させる場合がある。
前記製造方法で用いられる代表的な固体硫黄としては、室温で8個の原子が連結されたシクロオクタ硫黄形態(S8)が挙げられる。しかしながら重合反応に用いられる硫黄化合物は限定されるものではなく、常温で固体または液体であればいずれの形態でも使用し得る。
但し、重合反応の条件は、反応器の構造設計および生産速度に依存し、当業者に知られているため、特に制限されない。反応条件は、当業者がプロセス条件を考慮して適宜設定することができる。
本発明で使用される充填剤は、繊維状、板状、粉末状、粒状などが挙げられる。具体的には例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウムおよびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。
導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO2(アンチモンドープ)、In2O3(アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、10〜300重量部であり、好ましくは15〜200重量部、より好ましくは20〜150重量部である。B成分の含有量が10重量部未満では強度が劣り、300重量部を超えると、混練押出時にストランド切れやサージングなどが起こり生産性が低下するという問題が生ずる。
本発明の樹脂組成物はC成分として亜リン酸亜鉛を含有することにより機械強度を保持しつつバリを低減することができる。なお、この効果は亜鉛以外の亜リン酸金属塩では発現しない。亜リン酸亜鉛としては、主成分が下記一般式(1)で表される二塩基酸の亜鉛塩が挙げられる。
亜リン酸亜鉛の市販品としては、例えばキクチカラー(株)社製のLFボウセイ ZP−600等が挙げられる。
C成分の含有量はA成分100重量部に対し、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。B成分の含有量が0.01重量部未満ではバリ抑制効果が十分でなく、10重量部を超えると、曲げ強度が低下するという問題が生ずる。
本発明における樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー成分を含むことができる。好適なエラストマー成分としては、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)およびシリコーン・アクリル複合ゴム系グラフト共重合体などのコア−シェルグラフト共重合体樹脂、あるいはシリコーン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は上記各成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。好ましくは二軸押出機による溶融混練が好ましく、必要に応じて、任意の成分をサイドフィーダー等を用いて第二供給口より、溶融混合された他の成分中に供給することが好ましい。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
溶融混練機としては二軸押出機の他にバンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機などを挙げることができる。
本発明の樹脂組成物を用いてなる成形品は、上記の如く製造されたペレットを成形して得ることができる。好適には、射出成形、押出し成形により得られる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体を注入する方法を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、多色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等を挙げることができる。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また押出成形では、各種異形押出成形品、シート、フィルム等が得られる。シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等により成形品とすることも可能である。
(1)曲げ強さ
ISO178(測定条件23℃)に準拠して測定した。なお、試験片は、射出成形機(東芝機械工業(株)製 IS150EN)によりシリンダー温度320℃、金型温度130℃で成形した。この数値が大きいほど樹脂組成物の機械強度が優れていることを意味する。
前記(1)と同条件で成形したISO527に準拠した試験片の中央付近から5〜6mg切り出し、測定サンプルとした。測定にはTAインスツルメント・ジャパン(株)製の熱分析システム DSC−2910を用い、室温から20℃/分の速度で昇温し、330℃で3分間保持した後、20℃/分の速度で降温し、降温の際に認められる結晶化ピーク温度を測定した。一般に降温結晶化ピーク温度が高いほど結晶化が速く進行し、低バリに優れていることを意味する。なお、結晶化ピーク温度は220℃以上であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂、充填剤および亜リン酸亜鉛を表1および表2記載の各配合量で、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練してペレットを得た。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX−30XSST(完全かみ合い、同方向回転)を使用した。押出条件は吐出量16kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第一供給口からダイス部分まで320℃とした。なお、充填剤は上記押出機のサイドフィーダーを使用し第二供給口から供給し、ポリアリーレンスルフィド樹脂および亜リン酸亜鉛は第一供給口から押出機に供給した。ここでいう第一供給口とはダイスから最も離れた供給口であり、第二供給口とは押出機のダイスと第一供給口の間に位置する供給口である。得られたペレットを130℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)製 IS150EN)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度130℃にて評価用の試験片を成形した。各評価結果を表1および表2に示した。
(A成分)
PPS−1:以下の製造方法で得られたポリフェニレンスルフィド樹脂
[製造方法]
パラジヨードベンゼン300.00g及び硫黄27.00gに、重合停止剤としてジフェニルジスルフィド0.60g(最終的に重合されたPPSの重量に基づいて0.65重量%の含量)を投入して180℃に加熱して完全にそれらを溶融及び混合した後、温度を220℃に昇温し、且つ、圧力を200Torrに降圧した。得られた混合物を、最終温度及び圧力が夫々320℃及び1Torrとなるように温度及び圧力を段階的に変化させつつ、8時間重合反応させてポリフェニレンスルフィド樹脂を製造した。総塩素含有量は20ppm以下(検出限界以下)、総ナトリウム含有量は7ppmであった。
PPS−2:ポリフェニレンスルフィド樹脂(DIC(株)製 DIC−PPS MA−510、総塩素含有量2200ppm、総ナトリウム含有量160ppm)
(B成分)
B−1:炭素繊維(東邦テナックス(株)製:HT C432 6mm、長径7μm、カット長6mm、ウレタン系集束剤)
B−2:ニッケルコート炭素繊維(東邦テナックス(株)製:HT C903 6mm、長径7μm、カット長6mm、エポキシ・ウレタン系集束剤)
B−3:円形断面チョップドガラス繊維(日本電気硝子(株)製:T−760H、長径10.5μm、カット長3mm、エポキシ・ウレタン系集束剤)
B−4:扁平断面チョップドガラス繊維(日東紡(株)製:CSG 3PA−830、長径27μm、短径4μm、カット長3mm、エポキシ系集束剤)
B−5:全芳香族アラミド繊維(帝人(株)製:パラ系アラミド繊維 T322EH、長径12μm、カット長3mm、ポリエステル系集束剤)
B−6:全芳香族アラミド繊維(帝人(株)製:メタ系アラミド繊維 ST2.2、長径12μm、カット長1mm、集束剤無)
B−7:全芳香族アラミド繊維(帝人(株)製:ポリパラフェニレンテレフタルアミド 1488、長径12μm、カット長6mm、ポリエステル系集束剤)
B−8:炭酸カルシウム(三共製粉(株)製:エスカロン2300)
B−9:マイカ((株)ヤマグチマイカ製:41PUS)
(C成分)
C−1:亜リン酸亜鉛(キクチカラー(株)製:ZP−600、式(1)においてx=0、y=1である二塩基酸の亜鉛塩)
C−2:亜リン酸カルシウム(キクチカラー(株)製:CP−200B)
C−3:亜リン酸マグネシウム(キクチカラー(株)製:MGPA)
Claims (6)
- (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)充填剤(B成分)10〜300重量部および(C)亜リン酸亜鉛(C成分)0.01〜1重量部を含有するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- A成分が、直鎖状または分岐状ポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- B成分が繊維状充填剤、板状充填剤および粒状充填剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の充填剤であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- B成分が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ウォラストナイト、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウムおよびガラスビーズからなる群より選ばれる少なくとも1種の充填剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- B成分が、ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の充填剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物で成形された成形体。
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