JP4660722B2 - 制振装置 - Google Patents
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Description
すなわち、従来の金属ダンパは、単にブロック状のものを設置しただけであり、高い制振効果を得る上では決して十分な構成であるとはいえなかった。
又、従来の金属ダンパは、ある種の塑性を有する金属体を使用しただけの構成であり、その場合、その塑性を有する金属体からなる金属ダンパの剛性、降伏点等については、その塑性を有する金属体が有する履歴特性によって一義的に決定されてしまい、そのため、金属ダンパとしての効果には限界があると共に適用範囲が限定されてしまうという問題があった。
より具体的に説明すると、例えば、大きな降伏点を備えた単一の材料から金属ダンパを構成した場合には、地震により発生した振動エネルギによる荷重がその降伏点を越えない限りは金属ダンパが塑性変形することはない。したがって、それまでは地震によって発生した振動エネルギは吸収されることはなく建築物に作用してしまうことになる。
逆に、例えば、小さな降伏点を備えた単一の材料から金属ダンパを構成した場合には、地震により発生した振動エネルギによる荷重がその降伏点を越えることにより金属ダンパが早々に塑性変形する。それによって、地震によって発生した振動エネルギは吸収されることになる。しかしながら、それ以上の振動エネルギが作用することに対しては最早何等ダンパ機能を発揮することができなくなってしまうものである。
又、請求項2による制振装置は、請求項1記載の制振装置において、上記S字ダンパは両端と中心位置にピン孔を備えていて、これらピン孔を介して隣接・配置された別のS字ダンパに連結されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項3による制振装置は、請求項1記載の制振装置において、構造物の任意箇所に複数個のS字ダンパを連結・設置したことを特徴とするものである。
又、請求項4による制振装置は、請求項3記載の制振装置において、上記複数個のS字ダンパは夫々異なる履歴特性を備えていて、連結・設置されることにより全体として任意の新たな履歴特性を備えるものとして構成されたことを特徴とするものである。
又、請求項5による制振装置は、請求項4記載の制振装置において、降伏点が異なる複数種類のS字ダンパを組み合わせることにより複数個の降伏点を有する任意の新たな履歴特性を備えるものとして構成されたことを特徴とするものである。
又、請求項6による制振装置は、請求項5記載の制振装置において、降伏点が小さなS字ダンパから降伏点が大きなS字ダンパを順次組み合わせることにより複数個の降伏点を有する任意の新たな履歴特性を備えるものとして構成されたことを特徴とするものである。
又、請求項7による制振装置は、請求項1〜請求項6の何れかに記載の制振装置において、上記S字ダンパはアルミ合金製であることを特徴とするものである。
尚、本発明による制振装置は、1個のS字ダンパによって構成する場合もあれば、複数個のS字ダンパによって構成する場合もある。
又、上記S字ダンパは点対称の形状になっていて、且つ、中心点からの各X方向寸法と各Y方向寸法が等しくなるように設定した場合には、上記効果をより高めることができる。
又、上記S字ダンパの両端と中心位置にピン孔を設けて、これらピン孔を介して隣接・配置された別のS字ダンパに連結されるように構成した場合には、S字ダンパを複数個使用する場合に好都合である。
又、構造物の任意箇所に複数個のS字ダンパを連結・設置し、その際、上記複数個のS字ダンパは夫々異なる履歴特性を備えていて、連結・設置されることにより全体として任意の新たな履歴特性を備えるものとして構成するようにした場合には、任意の履歴特性を備えた制振装置を容易に得ることができる。
又、上記S字ダンパをアルミ合金製とした場合には、優れた制振効果を得ることができると共に加工も容易である。
l1=l2---(I)
但し、
l1:中心点7とピン支点3、5とのY方向距離
l2:中心点7と頂点9、11とのX方向距離
尚、アルミ合金(Al−Mg−Si系合金等)製に限定されるものではなく他の種類の金属から構成することも考えられる。
尚、上記横断面形状を特に限定するものではないが、例えば、正方形や長方形等の四角形、円形、楕円形等、様々な形状が想定される。
まず、図3(a)に示す例であるが、柱部材21と梁部材23との間にS字ダンパ1を1個介在させた構成を示している。これが基本形である。
又、図3(b)に示すように、柱部材21と梁部材23との間に3個のS字ダンパ1−1、1−2、1−3を連結・配置する構成も考えられる。これが高耐力型である。
さらに、図3(c)に示すように、柱部材21、21、梁部材23、床部材25との間にn個(この例の場合には16個)のS字ダンパ1−1〜1−16を連結・配置する構成も考えられる。これがラチスパネル型である。
因みに、一例として、nを「3」として、3種類のS字ダンパ1−1、1−2、1−3を使用した例が図3(b)に示す構成であり、nを
「16」として、16種類のS字ダンパ1−1〜1−16を使用した例が図3(c)に示す構成である。
設定することができる。これは、次の式(VI)に示すように、変位に応じて任意の等価周期(iTeq)を 設定できることを意味するものである。
iTeq=2π√(M/iKeq)―――(VI)
但し、
M::建築物の質量
以下、地震によって発生した荷重の大小によって復帰する原点位置は異なるが上記と同様の作用がなされることになり、それによって、地震により発生した振動エネルギを効果的に吸収することができると共に、建築物が受ける振動エネルギの影響を大幅に軽減させることができる。
又、振動エネルギが収束した後には再度次の事態に備えることができる。
まず、S字形状をなすS字ダンパ1を使用して制振装置を構成しているので、剛性と耐力を確保しつつその履歴減衰によって地震による振動エネルギを効果的に吸収して構造物への影響を軽減させることができ、特に、S字形状をなしているので、地震によって発生する振動エネルギによって降伏する箇所が略全長にわたることになり、それによって、疲労による繰り返しを分散させることができるものである。そして、柱部材21や梁部材23に過度の力が作用することを防止することができる。このように優れた制振機能を発揮することができるものである。
又、S字ダンパ1のS字形状を適宜設定することにより、所望の剛性、耐力を提供することができる。それによって、上記効果をより確実なものとすることができる。本実施の形態の場合には、S字ダンパ1が中心点7を中心にして点対称の形状に形成されていると共に、X方向の寸法とY方向の寸法をみてみると、前記式(I)に示すような関係が成立しているので、X方向とY方向の剛性と耐力を同じにすることができる。又、X方向から荷重が作用した場合には中心点7が降伏し、Y方向から荷重が作用した場合には頂点9、11が降伏する。そして、地震により作用する荷重の方向は任意であり、よって、既に説明したように、一回の地震に対して降伏する箇所が略全長にわたることになり、それによって、疲労による繰り返しを分散させることができるものである。
又、任意の履歴特性を備えた制振装置を得ることができる。そして、剛性のコントロール、降伏点のコントロール、固有周期のコントロールが可能になる。すなわち、組み合わせるS字ダンパ1−1〜1−nの個数、各S字ダンパ1−1〜1−nの履歴特性によって、任意の新たな履歴特性を備えた制振装置を得ることができるからである。
そして、このような制振装置によれば、地震により発生した振動エネルギを効果的に吸収することができ、建築物が受ける影響を最小限に止めることが可能になる。
因みに、組み合わせるS字ダンパ1−1〜1−nの個数が多ければ多い程図5(b)に示す特性は細かな折れ線状のものとなり、より効果的な振動エネルギの吸収が可能になる。
又、地震が発生して建築物に振動エネルギにより荷重が作用して変形しても、降伏前の制振装置の剛性によって原点近傍に復帰することが可能になり、それによって、繰り返しの使用が可能になる。
又、本実施の形態によるS字ダンパ1−1〜1−nはアルミ合金(Al−Mg−Si系合金等)製であり、加工が容易であるという利点がある。
まず、図示したS字ダンパは一例として示したものであり、実際の構造としては様々な形態が考えられる。
又、使用するS字ダンパの個数、各S字ダンパの履歴特性の内容、等についてはこれを特に限定するものではない。
又、S字ダンパの横断面形状についてはこれを特に限定するものではなく、例えば、正方形や長方形等の四角形、円形、楕円形等、様々な形状が想定される。
又、前記一の実施の形態の場合には、S字ダンパをアルミ合金(Al−Mg−Si系合金等)製としたが、それに限定されるものではなく、様々な材質が想定される。
1−1〜1−n S字ダンパ
3 ピン支点
5 ピン支点
7 中心点
9 頂点
11 頂点
21 柱部材
23 梁部材
Claims (7)
- 構造物の任意箇所に配置されS字形状をなす1個又は複数個のS字ダンパから構成され所定の制振機能を発揮し、
上記S字ダンパは点対称の形状になっていて中心点と両端の支点とそれぞれの頂点を備えていて、
上記中心点から頂点までの寸法と両端の支点から頂点までの寸法が等しく設定されていて、
上記中心点からの両端までのY方向寸法は共に(l 1 )であり、
上記中心点から各頂点までのX方向寸法は共に(l 2 )であり、
上記Y方向寸法(l 1 )と上記X方向寸法(l 2 )は等しく設定されていることを特徴とする制振装置。 - 請求項1記載の制振装置において、
上記S字ダンパは両端と中心位置にピン孔を備えていて、これらピン孔を介して隣接・配置された別のS字ダンパに連結されるものであることを特徴とする制振装置。 - 請求項1記載の制振装置において、
構造物の任意箇所に複数個のS字ダンパを連結・設置したことを特徴とする制振装置。 - 請求項3記載の制振装置において、
上記複数個のS字ダンパは夫々異なる履歴特性を備えていて、連結・設置されることにより全体として任意の新たな履歴特性を備えるものとして構成されたことを特徴とする制振装置。 - 請求項4記載の制振装置において、
降伏点が異なる複数種類のS字ダンパを組み合わせることにより複数個の降伏点を有する任意の新たな履歴特性を備えるものとして構成されたことを特徴とする制振装置。 - 請求項5記載の制振装置において、
降伏点が小さなS字ダンパから降伏点が大きなS字ダンパを順次組み合わせることにより複数個の降伏点を有する任意の新たな履歴特性を備えるものとして構成されたことを特徴とする制振装置。 - 請求項1〜請求項6の何れかに記載の制振装置において、
上記S字ダンパはアルミ合金製であることを特徴とする制振装置。
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