JP2010043415A - 制震デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】地震により建物に作用する水平方向の力に対して、安定したエネルギー吸収能力を発揮することが可能な制震デバイスを提供すること。
【解決手段】曲げ降伏可能な複数本のH形鋼16aにより構成されるダンパー部材12を、建物の柱と梁44とで囲まれた面内の梁44間に配置し、H形鋼16aの上、下端部を、梁44に取付されたL形鋼26aにより面内の両側からそれぞれ挟持するとともに、H形鋼16aの下端部とL形鋼26aとの間に、両部材間の摩擦力を低減する低摩擦材を介在させることにより、H形鋼16aの軸方向と面外方向にH形鋼16aの下端部を摺動可能とし、ダンパー部材12の下端部を、面内の水平方向は拘束し、その軸方向および面外方向は拘束しないようにした制震デバイス10とする。
【選択図】図3
【解決手段】曲げ降伏可能な複数本のH形鋼16aにより構成されるダンパー部材12を、建物の柱と梁44とで囲まれた面内の梁44間に配置し、H形鋼16aの上、下端部を、梁44に取付されたL形鋼26aにより面内の両側からそれぞれ挟持するとともに、H形鋼16aの下端部とL形鋼26aとの間に、両部材間の摩擦力を低減する低摩擦材を介在させることにより、H形鋼16aの軸方向と面外方向にH形鋼16aの下端部を摺動可能とし、ダンパー部材12の下端部を、面内の水平方向は拘束し、その軸方向および面外方向は拘束しないようにした制震デバイス10とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、制震デバイスに関し、さらに詳しくは、地震により建物に発生した水平方向への変形に対して曲げ降伏することにより水平方向への地震エネルギーを吸収して地震による建物の揺れを低減させる制震デバイスに関するものである。
近年、建物に作用する地震エネルギーを低減して建物の安全性を向上できる免震構造や制震構造が注目されている。なかでも、制震構造は、免震構造に比べて特別なスペースが小さく、コストも低減できる可能性が高いため、広く普及させやすい利点を有する。
制震構造における制震デバイスとしては、鋼材等の弾塑性による履歴減衰により地震エネルギーを吸収・消費させる履歴型のものが良く知られている。履歴型の制震デバイスとしては、軸力に対して降伏して地震エネルギーを吸収・消費させる軸降伏型のものや、水平方向の力に対して曲げ降伏して地震エネルギーを吸収・消費させる曲げ降伏型のものなどがあり、性能に応じて使い分けられている。
曲げ降伏型の制震デバイスとしては、例えば特許文献1には、鋼材を枠組み加工して形成され上下方向に対向配置させたフレーム間に、フレームを接続する形で、ベースプレートを介して板状の鋼板からなる弾塑性部材を固定して構成したものが開示されている。この制震デバイスは、建物の上下の梁間に配設されている。
また、特許文献2には、建物の上下の梁にそれぞれ固定される上下フランジを備え、上下フランジ間に鋼棒を差し込んで形成され、鋼棒の上下フランジ間の差し渡し部分を弾塑性ダンパー部として水平荷重を吸収するようにした曲げ降伏型の制震デバイスが開示されている。この制震デバイスは、鋼棒の一方の端部がフランジで支承され、他方の端部がフランジに対し上下摺動自在になっている。
しかしながら、従来の曲げ降伏型の制震デバイスには、以下の問題があった。すなわち、特許文献1に記載される制震デバイスは、板状の弾塑性部材が建物の上下の梁間に固定されているため、例えば、施工段階で発生する長期軸力や、地震力を受けて制震デバイスが変形する際の幾何学的な軸力の作用を弾塑性部材が受ける。また、面外方向への変形が発生したときにも、弾塑性部材はその力の作用を受ける。そのため、軸力や面外方向の力による履歴への影響によって、本来吸収すべき水平方向への変形に対して十分なエネルギー吸収能力を発揮することができないおそれがあった。
一方、特許文献2に記載される制震デバイスは、曲げ降伏する鋼棒の他方の端部がフランジに対し上下摺動自在になっているため、鋼棒に対する軸力の負荷は回避されるようになっている。しかしながら、面外方向への変形による力が発生したときには、鋼棒に対する面外方向の力の負荷は回避されず、本来吸収すべき水平方向への変形に対して十分なエネルギー吸収能力を発揮することができないおそれがあった。
本発明が解決しようとする課題は、地震により建物に作用する水平方向への変形に対して、安定したエネルギー吸収能力を発揮することが可能な制震デバイスを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る制震デバイスは、建物の柱と梁とで囲まれた面内に設置される制震デバイスであって、上梁と下梁との間を橋渡しするように設置される曲げ降伏可能なダンパー部材と、前記上梁と下梁のそれぞれに取付され、前記ダンパー部材の軸方向と略直交する一方向の両側から前記ダンパー部材の端部をそれぞれ挟持する挟持部材とを備えるとともに、前記ダンパー部材の一方の端部と前記挟持部材との間に、両部材間の摩擦力を低減する低摩擦材が介在され、前記ダンパー部材の軸方向と、前記ダンパー部材の前記軸方向および前記一方向の両方向と略直交する他方向に、前記ダンパー部材の一方の端部を摺動可能としたことを要旨とするものである。
この際、前記ダンパー部材は、1本または2本以上の鋼材により構成されていることが望ましい。そして、前記鋼材は、H形鋼であると良い。このとき、前記H形鋼の端部のフランジ部間に、補強用鋼板が取付されていることが望ましい。
本発明に係る制震デバイスによれば、建物の柱と梁とで囲まれた面内の水平方向両側から、上梁と下梁のそれぞれに取付された挟持部材がダンパー部材の端部をそれぞれ挟持するように設置することにより、ダンパー部材の他方の端部は、面内の水平方向には、挟持部材により拘束されるとともに、面外方向およびダンパー部材の軸方向には、挟持部材により摩擦接合される。これにより、ダンパー部材の他方の端部は梁に固定される。そして、ダンパー部材の一方の端部は、挟持部材との間に、両部材間の摩擦力を低減する低摩擦材が介在され、面外方向およびダンパー部材の軸方向に摺動可能になっている。すなわち、ダンパー部材の一方の端部は、面内の水平方向には拘束されるが、面外方向およびダンパー部材の軸方向には拘束されない。
そのため、地震により建物に水平方向への変形が発生したときには、ダンパー部材が曲げ降伏することにより、水平方向への地震エネルギーを吸収して地震による建物の揺れを低減させることができる。そして、例えば、本発明に係る制震デバイスを施工する段階で発生する長期軸力や、地震力を受けて制震デバイスが変形する際の幾何学的な軸力、面外方向への変形による力が制震デバイスに作用するのを抑えることができる。これにより、軸力や面外方向の力による履歴への影響が抑えられ、制震デバイスが本来吸収すべき面内の水平方向への変形に対して安定してエネルギー吸収能力を発揮することができる。
この際、ダンパー部材が2本以上の鋼材により構成されていると、例えば、鋼材の数量を変化させて、建物の規模等に応じて制震デバイスの剛性や耐力を調整することができる。そして、制震デバイスを間柱として用いたり、壁内に用いるなど、バリエーションに富んだ制震建物の設計が可能になる。
このとき、鋼材がH形鋼であると、曲げ降伏によるエネルギー吸収能力に優れる。また、既製のH形鋼を材料とすることができるため、入手が容易で低コストであり、汎用性に優れ、広く普及させやすい。
この際、H形鋼の端部のフランジ部間に補強用鋼板が取付されると、H形鋼の端部の剛性が強化されるため、端部がへたることによるエネルギー吸収能力の低下を防止することができる。これにより、より高いエネルギー吸収能力を発揮することができる。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る制震デバイス10は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などの建物の柱42と梁44とで囲まれた面内に設置されるものである。制震デバイス10は、大規模な建物に好適に適用されるが、住宅などにも適用可能である。
制震デバイス10は、曲げ降伏可能なダンパー部材12と、ダンパー部材の端部を挟持する挟持部材14とを備えている。ダンパー部材12は、建物の柱42と梁44とで囲まれた面内の上梁44と下梁44との間を橋渡しするように配置される。挟持部材14は、上梁44と下梁44のそれぞれに取付される。挟持部材14は、ダンパー部材12の軸方向と略直交する面内水平方向の両側から、ダンパー部材12の端部をそれぞれ挟持している。
制震デバイス10は、履歴減衰により地震エネルギーを吸収・消費させる履歴型の制震デバイスであり、地震により建物に発生する面内水平方向への変形に対しダンパー部材12が曲げ降伏することにより、地震エネルギーを吸収・消費させることができる。
ダンパー部材12としては、例えば、1本または2本以上の鋼材により構成されるものを示すことができる。ダンパー部材12を形成する鋼材としては、H形鋼、溝形鋼、リップ溝形鋼、山形鋼などの形鋼や、円筒や角筒などの鋼管、鋼板、または鋼棒などが挙げられる。好ましくは形鋼であり、より好ましくはH形鋼である。H形鋼は、曲げ強度に比較的優れており、曲げ降伏する際のエネルギー吸収能力に優れる点などから好ましい。既製のH形鋼を材料とすることができるため、入手が容易で低コストであり、汎用性に優れ、広く普及させやすいという利点も有する。
ダンパー部材12が2本以上の鋼材により構成される場合には、例えば、鋼材の数量を変化させて、建物の規模等に応じて制震デバイス10の剛性や耐力を調整することができる。これにより、制震デバイス10を間柱として用いたり、壁内に用いるなど、バリエーションに富んだ制震建物の設計が可能になる。
曲げに対する降伏点を調整するなどの観点から、鋼材のサイズや板厚、材質などを適宜定めることができる。鋼材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、鋼、アルミニウム、ステンレス、またはこれらの合金などを示すことができる。また、鋼材は、一般的な構造用鋼材であっても良いし、構造用鋼材よりも降伏点の低い鋼材であっても良い。一般的な構造用鋼材としては、例えば設計基準強度が235,325,355,385,440(N/mm2 )からなる鋼材などを例示することができる。一方、低降伏点鋼材としては、例えば設計基準強度が80,100,120,160,225(N/mm2 )からなる鋼材などを例示することができる。
図2には、ダンパー部材12を構成する鋼材の一例を示している。図示される鋼材は、H形鋼よりなる。図2(a)は、H形鋼16aのフランジ面側を見た図であり、図2(b)は、H形鋼16aのウェブ面側を見た図である。H形鋼16aの両端部は、それぞれ、補強用鋼板22、24が取付され、補強されている。補強用鋼板22は、フランジ部18間を橋渡しするように、H形鋼16aのウェブ部20から立設されている。補強用鋼板24は、ウェブ面20を覆うように、フランジ部18間を橋渡ししている。補強用鋼板22、24により、H形鋼16aの端部は剛性が高まるとともにへたりにくくなり、ダンパー部材として高いエネルギー吸収能力を発揮することができる。
次いで、図3および図4に、上記図2に示すH形鋼16aを用いた第一実施形態に係る制震デバイス10の取付構造を示す。図3および図4に示す構造は、梁44より突出された突部46間に制震デバイス10を取付した例について示している。突部46は、建物の梁44の製作時にあらかじめ梁44に形成されたものであっても良いし、既存の建物を後から補強する際に梁44に取付けしたものであっても良い。
図3に示すように、上梁44に取付される挟持部材14は、略L字型をした一対のL形鋼26aと、L形鋼26aとL形鋼26aとを連結する4本の鋼棒28とにより構成されている。
L形鋼26aは、突部46とフランジ面が合わせられ、ボルト締めにより突部46と一体化されている。また、L形鋼26aの互いに向き合ったフランジ面間には、ダンパー部材12を構成する複数本のH形鋼16aの上端部が配置され、一対のL形鋼26aにより、面内の水平方向両側から、H形鋼16aの上端部が挟持されている。そのため、H形鋼16aの上端部は、面内の水平方向には、一対のL形鋼26aにより拘束され、面外方向およびH形鋼16aの軸方向には、一対のL形鋼26aとの間の摩擦接合により拘束されている。これにより、ダンパー部材12の上端部は梁44に固定されている。
また、H形鋼16aの上端部の面外方向両外側には、4本の鋼棒28が配置されており、鋼棒28の端部は、L形鋼26aの互いに向き合ったフランジ面に、ボルト締めにより固定されている。これにより、L形鋼26aとL形鋼26aとが連結されている。そして、4本の鋼棒28は、H形鋼16aの上端部と接触した状態で取付されており、H形鋼16aの上端部は、鋼棒28によっても挟持され、面内の水平方向、面外方向およびH形鋼16aの軸方向には、摩擦接合により拘束されている。
下梁に取付される挟持部材14も、一対のL形鋼26aと、4本の鋼棒28とにより構成されている。上梁44側と同様、L形鋼26aは、突部46とフランジ面が合わせられ、ボルト締めにより突部46と一体化されている。また、L形鋼26aの互いに向き合ったフランジ面間には、ダンパー部材12を構成する複数本のH形鋼16aの下端部が配置され、一対のL形鋼26aにより、面内の水平方向両側から、H形鋼16aの下端部が挟持されている。
H形鋼16aの下端部の面外方向両外側には、4本の鋼棒28が配置されており、鋼棒28の端部は、L形鋼26aの互いに向き合ったフランジ面に、ボルト締めにより固定されている。これにより、L形鋼26aとL形鋼26aとが連結されている。4本の鋼棒28は、図5、6に示すように、H形鋼16aの下端部とは間隔をあけて配置されている。この間隔は、面外方向への変形に対し、H形鋼16a下端部がある程度動くことができるような遊びとなっており、面外方向への変形による力がH形鋼16a下端部に作用しないようになっている。すなわち、ダンパー部材12の下端部を面外方向で拘束するものにはなっていない。
さらに、H形鋼16aの下端部とL形鋼26aとの間には、両部材間の摩擦力を低減する低摩擦材が介在されている。これにより、面外方向およびH形鋼16aの軸方向には、H形鋼16aの下端部が摺動可能となっている。低摩擦材としては、例えば、グリースや、フッ素樹脂材などが挙げられる。低摩擦材は、液状、ゲル状、シート状等の種々の形状にすることができる。
そして、このような構成としたため、H形鋼16aの下端部は、面内の水平方向には、一対のL形鋼26aにより拘束されているが、面外方向およびH形鋼16aの軸方向には、拘束されていない。そのため、水平方向への変形による力のみがダンパー部材12に作用し、面内の垂直方向(軸方向)への軸力や面外方向への変形による力がダンパー部材12に作用するのが抑えられる。すなわち、軸力や面外方向の力による履歴への影響が抑えられ、制震デバイス10が本来吸収すべき面内の水平方向への変形に対して安定してエネルギー吸収能力を発揮することができる。
H形鋼16a間には、大変形時に発生するH形鋼16a同士の接触や密着による耐力上昇や耐力低下を防ぐためのフィラー板30が配置されている。下端部側のフィラー板30とH形鋼16aとの間には、上記低摩擦材が介在されていることが好ましい。
図4には、図3に示す挟持部材14とは形態の異なる挟持部材14を用いた例を示している。すなわち、挟持部材14は、一対のH形鋼26bと、H形鋼26bとH形鋼26bとを連結する4本の鋼棒28とにより構成されている。その他の構成については、図3に示す取付構造における制震デバイス10と同様であり、説明を省略する。なお、図3に示すL形鋼26aを用いる場合、施工性に富む利点がある。
次いで、図7および図8に、ダンパー部材12を構成する鋼材の他の例を示す。図示される鋼材は、それぞれH形鋼よりなる。図7(a)は、H形鋼16bのフランジ面側を見た図であり、図7(b)は、図7(a)図におけるA−A断面図である。
H形鋼16bの上端部のフランジ部18には、ウェブ部20を挟んで対称となる位置に貫通孔32が形成されている。貫通孔32には、H形鋼16bの上端部を挟持する挟持部材14の一対の鋼材(L形鋼26aやH形鋼26bなど)を連結する鋼棒28が挿通される。貫通孔32の内径は鋼棒28の外径と略同一になっており、H形鋼16bの上端部とL形鋼26aが鋼棒28によって摩擦接合される。貫通孔32の上下の位置には、H形鋼16bの強度を補強するための補強用鋼板22がフランジ部18間を橋渡しするように、H形鋼16bのウェブ部20から立設されている。また、ウェブ面20を覆うように、補強用鋼板24がフランジ部18間を橋渡ししている。補強用鋼板22、24により、H形鋼16bの上端部はへたりにくくなり、ダンパー部材として高いエネルギー吸収能力を発揮することができる。
H形鋼16bは、下端部のフランジ部18にも貫通孔34が形成されている。貫通孔34にも、H形鋼16bの下端部を挟持する挟持部材14の一対の鋼材(L形鋼26aやH形鋼26bなど)を連結する鋼棒28が挿通される。また、H形鋼16bの下端部にも補強用鋼板22、24が設けられ、H形鋼16bの下端部もへたりにくくされている。
図9には、H形鋼16bを用いた制震デバイス10の取付構造における下端部を面内の水平方向から見たときの拡大図を示す。また、図10には、その下端部を面内の垂直方向の上から見たときの拡大図を示す。H形鋼16bを用いた制震デバイス10においても、H形鋼16bの下端部は、面内の水平方向両側から、低摩擦材を介在し、挟持部材14により挟持されている。そして、挟持部材14の一対の鋼材を連結する鋼棒28は、H形鋼16bの下端部のフランジ部18に挿通されている。この際、貫通孔34は、鋼棒28の外径よりも大きい径を有する過大孔となっている。そのため、H形鋼16bの下端部は鋼棒28により拘束されないようになっている。これにより、H形鋼16bの下端部は、挟持部材14により面内の水平方向には拘束されるが、面外方向およびH形鋼16bの軸方向には拘束されない。
したがって、建物に軸力や面外方向への変形が発生したときには、鋼棒28は過大孔34の遊び内を動くだけで、H形鋼16bに発生する軸力を除去するとともに、面外方向の力が作用しないようになる。これにより、例えば、制震デバイス10を施工する段階で発生する長期軸力や、地震力を受けて制震デバイス10が変形する際の幾何学的な軸力、面外方向の力が制震デバイス10に作用するのを抑えることができる。
図8には、H形鋼の過大孔34に関する他の形態を示している。過大孔34以外の部分については、図7に示すH形鋼16bと同じ構成であるため、説明を省略する。図8に示すH形鋼16cの過大孔34は、H形鋼の軸方向に長径となる略楕円形をしている。図8に示すH形鋼16cは、より一層、上下方向へ伸縮自在になっており、より一層、軸力の負荷が回避されるようになっている。
H形鋼16b、16cを用いる場合、H形鋼16b、16cの端部を挟持する挟持部材14の一対の鋼材を連結する鋼棒28が、H形鋼16b、16cの貫通孔34、32を挿通される点が、図2に示すH形鋼16aを用いた場合と異なるのみである。H形鋼16b、16cの下端部とL形鋼26aとの間には、それぞれ、両部材間の摩擦力を低減する低摩擦材が介在される。これ以外の点については図2に示すH形鋼16aを用いた制震デバイス10と同様であるため、説明を省略する。
制震デバイス10のダンパー部材12が複数本のH形鋼16aなどを備える場合、H形鋼16a等の配置例としては、例えば、図11(a)に示すように、幅方向(矢印xで示す面内の水平方向)および厚さ方向(矢印yで示す面外方向)にそれぞれH形鋼16aを複数個配置させた間柱配置とすることができる。この場合、図12に示すように、制震デバイス10は、既存の柱42と柱42との間に間柱として設置される。また例えば、図11(b)に示すように、幅方向に複数個配置させた配置とすることができる。この場合、図12に示すように、制震デバイス10は、柱42と柱42との間に壁として設置される。例えば、住居系建物の桁行き方向の壁内に配置することができる。
以上の構成を有する制震デバイス10を、図1のように建物の柱42と梁44とで囲まれた面内の梁44間に設置すると、地震により建物に水平方向の力が作用し、建物に層間変形(変形による上の層と下の層との差)が発生したときには、制震デバイス10に曲げ変形が発生し、構造体である柱42や梁44が崩壊する前に制震デバイス10のH形鋼16aが曲げ降伏して、地震エネルギーを吸収・消費させることができる。
このとき、地震により建物には、面内の水平方向への変形だけでなく、面外方向への変形も作用する。水平方向への変形だけでなく、幾何学的な軸力や面外方向への変形も合わせて制震デバイス10に作用すると、ダンパー部材12はこれらすべての力を吸収しようとする。そうなると、軸力や面外方向の力による履歴によって、本来吸収すべき水平方向への変形に対して十分なエネルギー吸収能力を発揮することができなくなる。
この点、制震デバイス10では、ダンパー部材12の下端部は面内の垂直方向(軸方向)や面外方向には拘束されていない。したがって、水平方向への変形による力のみがダンパー部材12に作用し、面内の垂直方向(軸方向)への軸力や面外方向への変形による力がダンパー部材12に作用するのが抑えられる。すなわち、軸力や面外方向の力による履歴への影響が抑えられ、制震デバイス10が本来吸収すべき面内の水平方向への変形に対して安定してエネルギー吸収能力を発揮することができる。
本発明は、地震等による面内の水平方向への変形に対して、確実に、安定したエネルギー吸収能力を発揮するようにするものであり、この面の面外方向への変形に対しては、この面と直交する他の面の面内に制震デバイス10を設置することで対処することができる。すなわち、面外方向への変形に対しては、図12に示すように、この面と直交する方向の面内に設置した制震デバイス10によりエネルギーを吸収させるようにすると良い。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、制震デバイス10の形鋼として、H形鋼を示して説明しているが、H形鋼に限定されないのは勿論である。
本発明に係る制震デバイスは、例えば、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などの建物に設置される制震デバイスとして好適に使用することができる。
10 制震デバイス
12 ダンパー部材
14 挟持部材
16a、16b、16c H形鋼
22、24 補強用鋼板
26a L形鋼
26b H形鋼
28 鋼棒
42 柱
44 梁
12 ダンパー部材
14 挟持部材
16a、16b、16c H形鋼
22、24 補強用鋼板
26a L形鋼
26b H形鋼
28 鋼棒
42 柱
44 梁
Claims (4)
- 建物の柱と梁とで囲まれた面内に設置される制震デバイスであって、
上梁と下梁との間を橋渡しするように設置される曲げ降伏可能なダンパー部材と、
前記上梁と下梁のそれぞれに取付され、前記ダンパー部材の軸方向と略直交する一方向の両側から前記ダンパー部材の端部をそれぞれ挟持する挟持部材とを備えるとともに、
前記ダンパー部材の一方の端部と前記挟持部材との間に、両部材間の摩擦力を低減する低摩擦材が介在され、
前記ダンパー部材の軸方向と、前記ダンパー部材の前記軸方向および前記一方向の両方向と略直交する他方向に、前記ダンパー部材の一方の端部を摺動可能としたことを特徴とする制震デバイス。 - 前記ダンパー部材は、1本または2本以上の鋼材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の制震デバイス。
- 前記鋼材は、H形鋼であることを特徴とする請求項2に記載の制震デバイス。
- 前記H形鋼の端部のフランジ部間に、補強用鋼板が取付されていることを特徴とする請求項3に記載の制震デバイス。
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2008
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