しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術による場合、建物高さ方向を長手方向とされた外壁パネルに適用すると、地震等の外力の影響を受けて外壁パネルに発生したモーメントによって取付ボルトに負荷がかかる。そして、取付プレートの長孔内における取付ボルトの軸部の円滑な移動が阻害され、ひいては外壁パネルと柱との相対変位を吸収することが困難となる。
一方、上記特許文献2に開示された先行技術による場合、建物高さ方向と直交する方向に長い外壁パネルに適用すると、外壁パネルが建物躯体に対して相対回転したときの外壁パネルの支持部と建物躯体との相対変位量が大きくなる。このため、地震等の外力入力時に外壁パネルが建物躯体に対して相対回転すると、外壁パネルがその周囲の部材に干渉する等の影響を及ぼすことが考えられる。つまり、上述した2つの先行技術は、何れも適用し得る外壁材の形状が制限されており、外壁材の大型化を図ることが困難となる。
本発明は上記事実を考慮し、外壁材の大型化を図りつつ、地震等の外力による外壁材への影響を抑制することができる外壁材の取付構造を得ることが目的である。
第1の態様に係る外壁材の取付構造は、複数枚並べて配置されて建物の外壁を構成する外壁材の下部を当該建物の躯体を構成する柱の下部に対して支持する支持部と、前記外壁材の上部に外壁材の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられた第1取付部と、前記柱の上部に支持されかつ当該上部の屋内側に配置された梁に直接又は部材を介して当該外壁材の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられた第2取付部と、を含んで構成され、当該梁と当該上部との間に配置された連結手段と、前記梁又は前記部材の前記上部に沿う壁部に形成され、前記第2取付部と当該壁部とを連結する締結部材の軸部が挿通されると共に、当該壁部と当該軸部との前記梁の長手方向の相対変位を許容する相対変位手段と、を有している。
第1の態様に係る外壁材の取付構造では、外壁材が複数並べて配置されて建物の外壁を構成しており、支持部によって当該外壁材の下部が建物の躯体を構成する柱の下部に対して支持されている。一方、外壁材の上部の屋内側には、柱の上部に支持された梁が配置されており、当該上部と当該梁との間には、連結手段が配置されている。そして、連結手段を構成する第1取付部が外壁材の上部に取り付けられると共に、同じく連結手段を構成する第2取付部が直接又は部材を介して梁に取り付けられることで、当該上部と当該梁とが連結されている。
ところで、建物に地震等の外力が入力されると建物の躯体を構成する柱の下部が変位する一方で、梁は慣性でその位置に留まろうとするため、当該梁を支持する柱の上部と当該柱の下部とで変位量にずれが生じる。また、外壁材は柱の下部に追従して変位するため、梁に取り付けられた外壁材の上部と当該梁とが相対変位する。このため、外壁材の上部側と下部側とで相対変位が生じることとなり、当該外壁材に負荷がかかることが考えられる。
ここで、本態様では、梁又は部材における外壁材の上部に沿う壁部に相対変位手段が形成されており、連結手段の第2取付部と当該壁部とを連結する締結部材の軸部が相対変位手段に挿通されている。そして、相対変位手段が形成された壁部と締結部材の軸部との梁の長手方向の相対変位が相対変位手段によって許容されている。このため、相対変位手段が形成された壁部と連結手段とを梁の長手方向に相対変位させることができ、その結果、建物に地震等の外力が入力されて外壁材の上部と梁との間に梁の長手方向の相対変位が生じても当該相対変位を吸収することができる。
しかしながら、外壁材の上部と梁とが建物上下方向にも相対変位する場合、締結部材の軸部が相対変位手段の形成された壁部から負荷を受け、その結果、当該軸部と当該壁部との相対変位が阻害されることが考えられる。従って、この場合、外壁材の上部と梁との間の相対変位を吸収することが困難となる。
ここで、本態様では、連結手段の第1取付部が外壁材の上部に当該外壁材の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられると共に、当該連結手段の第2取付部が梁に直接又は部材を介して当該外壁材の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられている。このため、外壁材の上部と梁とが建物上下方向に相対変位しても、連結手段が当該上部及び当該梁に対して回動することで当該相対変位を吸収することができる。しかも、外壁材はその下部が建物の躯体に支持されることでその回動が抑制されているため、当該外壁材を大型化しても、地震等の外力入力時において、当該外壁材がその周囲の部材に及ぼす影響を抑制することができる。
第2の態様に係る外壁材の取付構造は、第1の態様に係る外壁材の取付構造において、前記第2取付部は、前記部材を介して前記梁に取り付けられている。
第2の態様に係る外壁材の取付構造では、第2取付部が部材を介して梁に取り付けられているため、梁の形状に関わらず、第2取付部を梁に取り付けることができる。
第3の態様に係る外壁材の取付構造は、第1の態様又は第2の態様に係る外壁材の取付構造において、前記相対変位手段は、前記梁の長手方向に延びる長孔とされている。
第3の態様に係る外壁材の取付構造では、相対変位手段が梁の長手方向に延びる長孔とされているため、相対変位手段で相対変位のみでなく組付誤差の吸収もすることができる。
第4の態様に係る外壁材の取付構造は、第3の態様に係る外壁材の取付構造において、前記長孔の建物高さ方向の寸法は、前記軸部の直径寸法よりも大きい寸法に設定されている。
第4の態様に係る外壁材の取付構造では、長孔の建物高さ方向の寸法が軸部の直径寸法よりも大きい寸法に設定されているため、当該軸部と当該長孔における当該軸部の建物上下方向側の周縁部との間は間隔があけられた状態となっている。
第5の態様に係る外壁材の取付構造は、第1の態様〜第4の態様の何れか1態様に係る外壁材の取付構造において、前記連結手段は、前記上部に対向して配置された前記第1取付部としての第1取付壁部と、前記梁に対向しかつ当該第1取付壁部に対して建物高さ方向にずれた位置に配置された前記第2取付部としての第2取付壁部と、当該第1取付壁部と当該第2取付壁部とを前記外壁材の厚さ方向に繋ぐ連結壁部と、を含んで構成されている。
第5の態様に係る外壁材の取付構造では、連結手段が外壁材の上部に対向して配置された第1取付壁部と、梁に対向しかつ当該第1取付壁部に対して建物高さ方向にずれた位置に配置された第2取付壁部と、を含んで構成されている。このため、連結手段によって外壁材を建物上下方向に支持することができる。また、連結手段は、第1取付壁部と第2取付壁部とを外壁材の厚さ方向に繋ぐ連結壁部を備えている。このため、連結手段が伸び変形することによっても外壁材の上部と梁との間の相対変位を吸収することができる。
以上説明したように、第1の態様に係る外壁材の取付構造では、外壁材の大型化を図りつつ、地震等の外力による外壁材への影響を抑制することができるという優れた効果を有する。
第2の態様に係る外壁材の取付構造では、種々の形状の梁に対応することができるという優れた効果を有する。
第3の態様に係る外壁材の取付構造では、地震等の外力による外壁材への影響を抑制しつつ組立性を確保することができるという優れた効果を有する。
第4の態様に係る外壁材の取付構造では、外壁材の上部と梁との建物上下方向の相対変位が小さい場合には、長孔で当該相対変位を吸収することができるという優れた効果を有する。
第5の態様に係る外壁材の取付構造では、通常時において安定して外壁材を支持することができると共に、外壁材の上部と梁との相対変位の許容量を大きく設定することができるという優れた効果を有する。
以下、図1〜図12を用いて、本発明の実施形態に係る外壁材の取付構造が適用された建物10の一例について説明する。
まず、建物10の概略構成について説明する。図9に示されるように、建物10は、基礎12、一階部分14、二階部分16及び屋根部分18、20を含んで、2階建住宅として構成されている。この建物10は、図1及び図2にも示されるように、鉄骨軸組み工法により構築されており、当該建物10の躯体22は、柱24、26及び梁28を含んで構成されている。詳しくは、柱24は、基礎12上に所定の間隔で立設されると共に、一階部分14を構成している。また、梁28は、柱24の上部24A間に架け渡されると共に当該上部24Aに支持されており、当該梁28上には、二階部分16を構成する柱26が所定の間隔で立設されている。
柱24は、建物上下方向に延在する四角筒状の本体部30と、平面視で矩形の板状とされると共に当該本体部30の上端部及び下端部に溶接等の接合手段で接合されたベースプレート32と、を含んで構成されている。ベースプレート32の長手方向両端部における中央部には、図示しない挿通孔が形成されており、当該ベースプレート32の四隅には雌ねじ部34が形成されている。
上記のように構成された柱24は、ベースプレート32の長手方向が梁28の長手方向とされた状態で基礎12上に載置されている。そして、柱24は、ベースプレート32の挿通孔に基礎12から建物上方側に突出されたアンカーボルト36が挿通されると共に、当該アンカーボルト36に建物上方側からナット38が二つ螺合されること(ダブルナット)により基礎12に取り付けられている。
一方、梁28は、I型鋼で構成されると共に、その建物上方側を構成する上側フランジ部28Aと、その建物下方側を構成する下側フランジ部28Bと、上側フランジ部28Aと下側フランジ部28Bとを繋ぐウェブ部28Cと、を備えている。なお、ウェブ部28Cには、図示しない円形の貫通孔が梁28の長手方向に適宜形成されている。
また、図5にも示されるように、上側フランジ部28A及び下側フランジ部28Bには、梁28の短手方向に間隔をあけて当該梁28の長手方向に延びる2本の直線上に所定のピッチで挿通孔40が形成されている。さらに、梁28は、下側フランジ部28Bの挿通孔40と柱24の建物上方側のベースプレート32の雌ねじ部34とが位置合わせされた状態で配置されている。そして、ベースプレート32の建物上方側から図示しないボルトが雌ねじ部34に螺合されることで、梁28が柱24に取り付けられている。
ここで、本実施形態では、支持部としての支持ブラケット46、連結手段としての連結ブラケット48及び部材としての取付ブラケット50を含んで、建物10の外壁42を構成する外壁材44の取付構造が構成されている。以下、本実施形態の要部である外壁材44の取付構造について詳細に説明する。
図1及び図2に示されるように、外壁材44は、矩形の板状に形成されると共に、一例として、軽量気泡コンクリート(ALC)で構成されており、当該外壁材44が梁28の長手方向に複数枚並べて配置されることで外壁42の一階部分14側が構成されている。この外壁材44の上部44Aにおける梁28の長手方向に離間した2箇所及び当該外壁材の下部44Bにおける梁28の長手方向に離間した2箇所には、それぞれ図示しないアンカーナットが埋設されている。そして、これらのアンカーナットを用いて外壁材44の上部44Aに後述するように連結ブラケット48が取り付けられると共に、当該外壁材44の下部44Bに支持ブラケット46が取り付けられている。なお、外壁材44は、押出成形セメント板等で構成されていてもよい。
図3にも示されるように、支持ブラケット46は、支持部材52と、取付部材54と、水切下地材56と、を含んで構成されている。支持部材52は、梁28の長手方向に延在すると共に当該長手方向から見てL字状に形成されている。詳しくは、支持部材52は、外壁材44の屋内側の面44Cに沿って配置された矩形板状の側壁部52Aと、当該側壁部52Aの下端部から屋外側に延出した矩形板状の底壁部52Bと、を含んで構成されている。また、側壁部52Aの建物上方側の部分には、外壁材44のアンカーナットに対応する挿通孔58が側壁部52Aの長手方向に間隔をあけて2つ形成されている。そして、外壁材44の下面部44Dが底壁部52Bに載置された状態で、ボルト60が屋内側から挿通孔58に挿通されると共に外壁材44のアンカーナットに螺合されることで外壁材44の下部44Bに支持ブラケット46が取り付けられている。
一方、取付部材54は、支持部材52の長手方向の両端部に設けられており、屋内側から見てL字状に形成されている。詳しくは、取付部材54は、梁28の長手方向を板厚方向とされた矩形板状の縦壁部54Aと、縦壁部54Aの下端部から支持部材52の端部側に延出されると共に支持部材52の底壁部52Bよりも建物下方側に配置された底壁部54Bと、を含んで構成されている。この取付部材54は、支持部材52の側壁部52Aの屋内側に配置されると共に、縦壁部54Aの屋外側の端部が側壁部52Aの屋内側の面に溶接等の接合手段で接合されることにより、支持部材52に取り付けられている。一方、底壁部54Bの屋内側の端部には、柱24のベースプレート32の雌ねじ部34に対応する挿通孔62が形成されている。また、支持ブラケット46は、挿通孔62が屋外側の雌ねじ部34に位置合わせされた状態で、隣り合う柱24のベースプレート32に架け渡されている。そして、ボルト64が建物上方側から挿通孔62に挿通されると共に、雌ねじ部34に螺合されることでベースプレート32に支持ブラケット46が取り付けられている。つまり、外壁材44の下部44Bは、支持ブラケット46によって柱24の下部24Bに対して支持されている。なお、図3では支持ブラケット46の構成が理解し易いように、ボルト60、64を図示していない。
また、水切下地材56は、L型アングル材で構成されると共に、支持部材52の底壁部52Bにおける長手方向中央部及び長手方向両端部の建物下方側の面に設けられており、当該水切下地材56に図示しない水切材が設けられている。
一方、柱24同士の間隔が広い箇所では、図4に示されるように、支持ブラケット46の固定に支持プレート66が用いられる。この支持プレート66は、矩形板状に形成されており、その中央部にアンカーボルト36が挿通される図示しない挿通孔が形成されると共に、その長手方向の両端部に雌ねじ部34が形成されている。上記構成の支持プレート66は、その挿通孔にアンカーボルト36が挿通されると共に長手方向を梁28の長手方向と直交する方向とされて基礎12上に載置されており、当該アンカーボルト36に建物上方側からナット38が二つ螺合されることより固定されている。そして、支持ブラケット46は、柱24のベースプレート32と当該ベースプレート32と隣り合う支持プレート66に架け渡されると共に、ボルト64によってベースプレート32及び支持プレート66に取り付けられている。
図1に戻り、外壁42における二階部分16側を構成する外壁材68の下部68Aは、支持部としての支持ブラケット70で梁28の上側フランジ部28Aに支持されている。つまり、二階部分16側では、外壁材68の下部68Aが、支持ブラケット70及び梁28を介して、柱26の下部26Aに対して支持された状態となっている。また、図5にも示されるように、支持ブラケット70は、支持部材72及び取付部材74を含んで、基本的に支持ブラケット46と同様の構成とされているものの、支持部材72の長手方向の長さが支持部材52の長手方向の長さよりも短い長さに設定されている。そして、支持部材72がボルト60で外壁材68の下部68Aに取り付けられると共に、取付部材74が梁28の上側フランジ部28Aにおける屋外側の列の挿通孔40にボルト64及びナット38によって取り付けられている。この状態において、隣り合う外壁材68の境界部における隣り合う支持部材72の間隔は、隣り合う外壁材44の境界部における隣り合う支持部材52の間隔よりも広くなっている。これにより、隣り合う外壁材68の境界部において隣り合う支持部材72の間に、耐火目地材76の一部や止水役物78の一部を配置し、これらの部材を外壁材44と外壁材68とによって挟持できるようになっている。
図6〜図8に示されるように、外壁材44の上部44Aは、それぞれ1つずつで組とされた連結ブラケット48及び取付ブラケット50によって梁28の長手方向の2箇所で梁28の下側フランジ部28Bに取り付けられている。つまり、外壁材44が梁28に取り付けられた状態において、梁28は外壁材44の上部44Aの屋内側に配置された状態となる。
取付ブラケット50は、梁28の長手方向を長手方向とされると共に、上壁部50Aと壁部としての側壁部50Bとを含んで、梁28の長手方向から見てL字状に形成されている。上壁部50Aは、建物上下方向を板厚方向とされた矩形板状とされると共に下側フランジ部28Bの下面に当接されており、梁28の長手方向の2箇所に下側フランジ部28Bの挿通孔40と同じピッチで挿通孔80が形成されている。また、側壁部50Bは、上壁部50Aの屋外側の端部から建物下方側に延出されると共に長手方向を梁28の長手方向とされた矩形板状とされており、当該側壁部50Bには屋外側から見て梁28の長手方向に延びる相対変位手段としての長孔82が形成されている。そして、挿通孔80が下側フランジ部28Bの挿通孔40に位置合わせされた状態で、ボルト64が建物下方側から挿通孔40、80に挿通されると共に、当該ボルト64に建物上方側からナット38が螺合されている。これにより、取付ブラケット50が下側フランジ部28Bに取り付けられている。なお、取付ブラケット50は、下側フランジ部28Bに取り付けられた状態において、側壁部50Bが外壁材44の上部44Aに沿うように配置されている。
一方、連結ブラケット48は、第1取付部としての第1取付壁部48Aと、第2取付部としての第2取付壁部48Bと、連結壁部48Cと、を含んで、2箇所が屈曲された板材で構成されている。詳しくは、第1取付壁部48Aは、矩形の板状とされると共にその一端部に挿通孔84が形成されており、第2取付壁部48Bは、第1取付壁部48Aの長手方向に延在すると共にその一端部に挿通孔86が形成されている。そして、第1取付壁部48Aの他端部と第2取付壁部48Bの他端部とが、第1取付壁部48A及び第2取付壁部48Bに直交して延在する連結壁部48Cによって繋がれている。
上記構成の連結ブラケット48は、第1取付壁部48Aが建物上方側でかつ屋外側とされた状態で配置されており、当該第1取付壁部48Aは、外壁材44の上部44Aに対向して当接されている。そして、第1取付壁部48Aの挿通孔84と外壁材44の上部44A側のアンカーナットとが位置合わせされた状態で、ボルト60が屋内側から当該挿通孔84に挿通されると共に当該アンカーナットに螺合されている。これにより、第1取付壁部48Aが外壁材44の上部44Aに外壁材44の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられている。
一方、第2取付壁部48Bは、第1取付壁部48Aに対して建物下方側にずれた位置に配置されて、取付ブラケット50の側壁部50Bに対向して当接されている。なお、上述したように、取付ブラケット50は、梁28に取り付けられているため、第2取付壁部48Bは、梁28に対向して配置されていると捉えることもできる。そして、第2取付壁部48Bの挿通孔86が取付ブラケット50の長孔82の中央部に位置合わせされた状態で、締結部材としてのボルト88の軸部88Aが屋外側から挿通孔86及び長孔82に挿通されると共に、当該軸部88Aに屋内側からナット90が螺合されている。これにより、第2取付壁部48Bは、梁28に取付ブラケット50を介して外壁材44の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられている。また、長孔82の建物高さ方向の寸法(幅寸法)は、ボルト88の軸部88Aの直径寸法よりも大きい寸法に設定されており、軸部88Aと長孔82の建物上下方向側の周縁部82Aとの間には所定の隙間が設けられた状態となっている。このため、長孔82が形成された範囲において、取付ブラケット50の側壁部50Bとボルト88の軸部88Aとの梁28の長手方向の相対変位が許容されると共に、側壁部50Bと軸部88Aとの建物上下方向の所定量の相対変位が許容されている。なお、外壁材68の図示しない上部も外壁材44の上部44Aと同様に建物10の躯体22に取り付けられている。
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
本実施形態では、図1に示されるように、外壁材44が複数並べて配置されて建物10の外壁42を構成しており、支持ブラケット46によって外壁材44の下部44Bが建物10の躯体22を構成する柱24の下部24Bに対して支持されている。一方、外壁材44の上部44Aの屋内側には、柱24の上部24Aに支持された梁28が配置されており、上部44Aと梁28との間には、連結ブラケット48が配置されている。そして、連結ブラケット48を構成する第1取付壁部48Aが外壁材44の上部44Aに取り付けられると共に、同じく連結ブラケット48を構成する第2取付壁部48Bが取付ブラケット50を介して梁28に取り付けられている。これにより、外壁材44の上部44Aと梁28とが連結されている。
ところで、建物10は、図10(A)に示される定常状態において、地震等の外力が入力されると、建物10の躯体22を構成する柱24の下部24Bが建物10を支持する基礎12に追従して変位する。一方で、梁28は慣性でその位置に留まろうとするため、図10(B)に示されるように、梁28を支持する柱24の上部24Aと当該柱24の下部24Bとで変位量にずれが生じる。また、外壁材44は柱24の下部24Bに追従して変位するため、梁28に取り付けられた外壁材44の上部44Aと当該梁28とが相対変位する。このため、外壁材44の上部44A側と下部44B側とで相対変位が生じることとなり、当該外壁材44に負荷がかかることが考えられる。なお、図10は、外力入力時における各部材の挙動が理解しやすいように、各部材の変位量を実際よりも大きくして図示している。
ここで、本実施形態では、取付ブラケット50における外壁材44の上部44Aに沿う側壁部50Bに長孔82が形成されており、連結ブラケット48の第2取付壁部48Bと側壁部50Bとを連結するボルト88の軸部88Aが長孔82に挿通されている。そして、長孔82が形成された側壁部50Bと軸部88Aとの梁28の長手方向の相対変位が長孔82によって許容されている。このため、図11(A)に示されるように、側壁部50Bと連結ブラケット48とを梁28の長手方向に相対変位させることができる。その結果、建物10に地震等の外力が入力されて外壁材44の上部44Aと梁28との間に梁28の長手方向の相対変位が生じても当該相対変位を吸収することができる。
しかしながら、外壁材44の上部44Aと梁28とが建物上下方向にも相対変位する場合、ボルト88の軸部88Aが長孔82の形成された側壁部50Bから負荷を受け、その結果、軸部88Aと側壁部50Bとの相対変位が阻害されることが考えられる。従って、この場合、外壁材44の上部44Aと梁28との間の相対変位を吸収することが困難となる。
ここで、本実施形態では、連結ブラケット48の第1取付壁部48Aが外壁材44の上部44Aに当該外壁材44の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられている。また、連結ブラケット48の第2取付壁部48Bが梁28に取付ブラケット50を介して当該外壁材44の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けられている。このため、外壁材44の上部44Aと梁28とが建物上下方向に相対変位しても、図11(B)に示されるように、連結ブラケット48が当該上部44A及び当該梁28に対して回動することで当該相対変位を吸収することができる。そして、図11(C)に示されるように、連結ブラケット48が回動すると、側壁部50Bと連結ブラケット48との梁28の長手方向の相対変位が許容される状態が維持される。しかも、外壁材44はその下部44Bが建物10の躯体22に支持されることでその回動が抑制されているため、当該外壁材44を大型化しても、地震等の外力入力時において、当該外壁材44がその周囲の部材に及ぼす影響を抑制することができる。従って、本実施形態では、外壁材44の大型化を図りつつ、地震等の外力による外壁材44への影響を抑制することができる。
また、本実施形態では、第2取付壁部48Bが取付ブラケット50を介して梁28に取り付けられているため、梁28の形状に関わらず、第2取付壁部48Bを梁28に取り付けることができる。具体的には、梁28をI型鋼以外で構成しても取付ブラケット50の形状を梁28の形状に合わせて適宜変更することで、第2取付壁部48Bを梁28に取り付けることが可能となる。このため、本実施形態では、種々の形状の梁に対応することができる。
また、本実施形態では、相対変位手段が梁28の長手方向に延びる長孔82とされているため、相対変位のみでなく組付誤差の吸収もすることができる。従って、本実施形態では、地震等の外力による外壁材44への影響を抑制しつつ組立性を確保することができる。
また、本実施形態では、長孔82の建物高さ方向の寸法がボルト88の軸部88Aの直径寸法よりも大きい寸法に設定されているため、軸部88Aと長孔82における軸部88Aの建物上下方向側の周縁部82Aとの間は間隔があけられた状態となっている。従って、本実施形態では、外壁材44の上部44Aと梁28との建物上下方向の相対変位が小さい場合には、長孔82で当該相対変位を吸収することができる。つまり、本実施形態では、外壁材44の上部44Aと梁28との3自由度の相対変位が許容されている。
加えて、本実施形態では、連結ブラケット48が外壁材の上部44Aに対向して配置された第1取付壁部48Aと、梁28に対向しかつ第1取付壁部48Aに対して建物高さ方向にずれた位置に配置された第2取付壁部48Bと、を含んで構成されている。このため、連結ブラケット48によって外壁材44を建物上下方向に支持することができる。
ところで、外壁材44の上部44Aと梁28との相対変位が、連結ブラケット48の側壁部50Bとボルト88の軸部88Aとの相対変位及び連結ブラケット48の回動で吸収しきれない場合も考えられる。ここで、本実施形態では、連結ブラケット48が第1取付壁部48Aと第2取付壁部48Bとを外壁材44の厚さ方向に繋ぐ連結壁部48Cを備えている。このため、連結ブラケット48が伸び変形することによっても外壁材44の上部44Aと梁28との間の相対変位を吸収することができる。
具体的には、図12(A)、(B)に示されるように、連結ブラケット48は、地震等の外力の入力によって、連結壁部48Cが第1取付壁部48A及び第2取付壁部48Bの長手方向に沿うように変形する。その結果、屋外側から見て第1取付壁部48Aの挿通孔84と第2取付壁部48Bの挿通孔86との距離が長くなる。すなわち、挿通孔84と挿通孔86との距離の延長分が外壁材44の上部44Aと梁28との相対変位の吸収代となる。この場合、取付ブラケット50は変形するものの、外壁材44への地震等の外力による影響は抑制されるため、外壁42の補修は連結ブラケット48の交換のみを行えばよい。従って、本実施形態では、通常時において安定して外壁材44を支持することができると共に、外壁材44の上部44Aと梁28との相対変位の許容量を大きく設定することができる。なお、上述した本実施形態の作用並びに効果は、外壁42における二階部分16側を構成する外壁材68であっても同様である。
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、I型鋼で構成された梁28に取り付けられた取付ブラケット50に長孔82を形成したが、これに限らない。一例として、梁28を溝型鋼で構成し、梁28の外壁材44の上部44Aに沿うウェブ部に長孔82を形成する構成としてもよい。つまり、本発明の適用対象は、鉄骨軸組み工法で構築された建物に限らず、建物躯体の梁を溝型鋼で構成するユニット工法等で構築された建物も含まれる。
(2) また、上述した実施形態では、連結ブラケット48が屈曲された板材で構成されていたが矩形の板材で構成してもよい。すなわち、連結ブラケット48を第1取付壁部48Aと第2取付壁部48Bとで構成してもよい。このような構成によっても、連結壁部48Cによる作用並びに効果を除き、上述した実施形態と同様の作用並びに効果を奏する。また、連結ブラケット48と取付ブラケット50との取付や連結ブラケット48と外壁材44との取付に適宜リベット等を用いてもよい。
また、連結ブラケット48を当該連結ブラケット48と同様に屈曲された丸棒材で構成すると共に、丸棒材で構成された連結ブラケット48をゴム製のブシュによって取付ブラケット50及び外壁材44に取り付ける構成としてもよい。
(3) さらに、上述した実施形態では、連結ブラケット48を第1取付壁部48Aと第2取付壁部48Bとが建物高さ方向にずれた位置になるように配置したが、これに限らない。すなわち、連結ブラケット48を第1取付壁部48Aと第2取付壁部48Bとが梁28の長手方向にずれた位置となるように配置してもよい。このような構成とすることで、外壁材44の上部44Aと梁28との種々の方向の相対変位に対して連結ブラケット48を円滑に回動させることが可能となる。
(4) 加えて、上述した実施形態では、相対変位手段を長孔82で構成したが、これに限らない。一例として、円形の挿通孔を形成すると共に、当該挿通孔から梁28の長手方向に延びる脆弱部を形成する構成としてもよい。
(5) 更に補足すると、下記のような構成によっても、上述した実施形態と同様の作用並びに効果を奏し得る。すなわち、梁28を溝型鋼で構成し、梁28のウェブ部に挿通孔が形成された構成とする。また、外壁材44の上部44Aに当該上部44Aに沿いかつ長孔82が形成された壁部を有するブラケットを配置する。そして、このブラケットの長孔82に連結ブラケット48の第1取付壁部48Aを外壁材44の厚さ方向を軸として回動可能に取り付けると共に、梁28のウェブ部の挿通孔に第2取付壁部48Bを外壁材44の厚さ方向を軸として回動可能に取り付ける。なお、この構成は、現在の本発明の範囲には含まれていない。