JP2020002631A - 柱梁接合構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】建物の構面を形成する梁と付加制震体を形成する柱による柱梁接合構造を提供すること。【解決手段】鉄骨梁1と鉄骨柱2とにより形成される建物の構面10の鉄骨梁1に対して、付加制震体20を構成する付加制震柱3が接合されてなる柱梁接合構造50であって、付加制震柱3の柱頭には接合金物30が取り付けられ、接合金物30に鉄骨梁1が取り付けられており、接合金物30は、鉄骨梁1に当接して鉄骨梁1にボルト接合される天端プレート31と、天端プレート31の下方において天端プレート31に対して直交する方向に延出する第一鉛直プレート32とを有し、第一鉛直プレート32は第一孔34を有し、付加制震柱3は第二孔3cを有し、第一孔34と第二孔3cの少なくともいずれか一方は鉛直方向に延出する長孔であり、第一孔34と第二孔3cにボルト42が挿通され、接合金物30と付加制震柱3とがボルト接合されている。【選択図】図2
Description
本発明は柱梁接合構造に関する。
建物の構面内に取り付けられる制震パネルは、構造部材となる場合と非構造部材となる場合がある。制震パネルが構造部材とされる場合は、制震パネルが構造部材として建物の架構に組み込まれた状態で建物の設計が行われる。従って、構造部材である制震パネルは、積載荷重や建物の自重といった鉛直荷重を負担することになる。
一方、制震パネルが非構造部材とされる場合、制震パネルは建物の鉛直荷重を負担しない部材である必要がある。また、この鉛直荷重を負担しないことと関連するが、建物の構面を形成する梁の撓みを吸収できること、言い換えれば、梁の撓みの影響によって梁から荷重を受けない構造を備えていることを要する。そのため、制震パネルが、このように構造躯体に影響を及ぼさない非構造部材である、「付加制震(体)」として、例えば一般財団法人日本建築センター(BCJ:The Building Center of Japan)による性能評価(評定)を得るには、上記する2つの条件を満たすことが必要になる。
ここで、特許文献1には、一対の縦フレーム材の間に、耐力要素となる横フレーム材が接合された耐力壁フレームを有する耐力壁設置構造が提案されている。より具体的には、耐力壁フレームの一対の縦フレーム材のうちの一方の縦フレーム材を、その下端が基礎と接合される柱とし、もう一方の縦フレーム材を、その下端が基礎に非接合される柱としている。そして、各縦フレーム材を構成する形鋼の上端に対して溶接等により接合された接合金物を、梁の下フランジの下面にボルト等で接合することにより縦フレーム材と梁とが接合され、耐力壁設置構造が構成される(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の耐力壁設置構造によれば、2枚の耐力壁フレームを梁の下に間隔を置いて設置し、2枚の耐力壁フレームにおいて互いの対向側の縦フレーム材の下端を基礎及び土台のいずれに対しても非接合としたことにより、耐力壁フレームの幅を狭めて耐力壁間の間隔を広げ、梁下に大空間を形成することができる。しかしながら、縦フレーム材を構成する形鋼の上端に溶接等により接合された接合金物を、梁の下フランジの下面にボルト等で接合すると記載されていることから、特許文献1に記載の耐力壁フレームは建物の鉛直荷重を負担する部材となり得る。そのため、この耐力壁フレームを、建物の架構に対して上記する付加制震体として組み込むことは難しい。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、建物の構面を形成する梁と付加制震体を形成する柱による柱梁接合構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による柱梁接合構造の一態様は、
鉄骨梁と鉄骨柱とにより形成される建物の構面の該鉄骨梁に対して、付加制震体を構成する付加制震柱が接合されてなる、柱梁接合構造であって、
前記付加制震柱の柱頭には接合金物が取り付けられ、該接合金物に前記鉄骨梁が取り付けられており、
前記接合金物は、前記鉄骨梁に当接して該鉄骨梁にボルト接合される天端プレートと、該天端プレートの下方において該天端プレートに対して直交する方向に延出する第一鉛直プレートと、を有し、
前記第一鉛直プレートは第一孔を有し、前記付加制震柱は第二孔を有し、該第一孔と該第二孔の少なくともいずれか一方は鉛直方向に延出する長孔であり、
前記第一孔と前記第二孔にボルトが挿通され、前記接合金物と前記付加制震柱とがボルト接合されていることを特徴とする。
鉄骨梁と鉄骨柱とにより形成される建物の構面の該鉄骨梁に対して、付加制震体を構成する付加制震柱が接合されてなる、柱梁接合構造であって、
前記付加制震柱の柱頭には接合金物が取り付けられ、該接合金物に前記鉄骨梁が取り付けられており、
前記接合金物は、前記鉄骨梁に当接して該鉄骨梁にボルト接合される天端プレートと、該天端プレートの下方において該天端プレートに対して直交する方向に延出する第一鉛直プレートと、を有し、
前記第一鉛直プレートは第一孔を有し、前記付加制震柱は第二孔を有し、該第一孔と該第二孔の少なくともいずれか一方は鉛直方向に延出する長孔であり、
前記第一孔と前記第二孔にボルトが挿通され、前記接合金物と前記付加制震柱とがボルト接合されていることを特徴とする。
本態様によれば、建物の構面を形成する鉄骨梁に取り付けられている接合金物に開設されている第一孔と、接合金物に接合される付加制震柱に開設されている第二孔と、の少なくともいずれか一方が長孔であり、この長孔にボルトが挿通されて双方が固定されることにより、建物の鉛直荷重を負担することなく付加制震体を構面に接合することができる。
本態様の柱梁接合構造は、建物の構面を形成する梁(鉄骨梁)と、付加制震体を形成する付加制震柱とが接合金物を介して接合される構造のことである。ここで、建物の構面は、例えば角形鋼管やH形鋼等の形鋼材により形成される複数の鉄骨柱と、各鉄骨柱を繋ぐ鉄骨梁により形成される。建物の構面を形成する架構は、ブレース架構(鉄骨梁と鉄骨柱の接合部がピン接合構造)とラーメン架構(鉄骨梁と鉄骨柱の接合部が剛接合構造)のいずれであってもよい。付加制震体は、付加制震柱と各種のダンパーとを有しており、建物の鉛直荷重を負担せず、強風時や地震時における水平力に対してダンパーが機能する。付加制震柱の柱頭には接合金物が取り付けられ、接合金物が鉄骨梁に接合されている。付加制震体は、既述するように、建物の鉛直荷重を負担しないこと、建物の構面を形成する梁(ここでは鉄骨梁)の撓みを吸収できることを要する。
この2つの要件を満たす手段として、本態様の柱梁接合構造では、接合金物に開設されている第一孔と、付加制震柱に開設されている第二孔の少なくともいずれか一方を鉛直方向に延出する長孔とし、第一孔及び第二孔にボルトを挿通して双方を接合する接合構造を適用している。第一孔、第二孔のいずれか一方が鉛直方向に延出する長孔であることから、建物の構面を形成する鉄骨梁から接合金物を介して鉛直荷重が付加制震柱に入力された際に、長孔に沿ってボルトが鉛直方向に摺動することが可能になる。そのため、付加制震柱に鉛直荷重が入力されたとしても、入力された鉛直荷重を付加制震柱が負担することはない。また、鉄骨梁が撓んだ場合、鉄骨梁の撓みにより接合金物が下方に変位され、接合金物から付加制震柱に下方への鉛直荷重が作用し得るが、長孔に沿ってボルトが鉛直方向に摺動することにより、付加制震柱がこの鉛直荷重を負担することもない。そのため、鉄骨梁の撓みを柱梁接合構造(を形成する長孔に沿うボルトの摺動)が吸収することができる。従って、本態様の柱梁接合構造を形成する付加制震体は、付加制震と見なすための上記2つの要件を、長孔に沿ってボルトが摺動することにより充足するものである。尚、「第一孔と第二孔の少なくともいずれか一方は鉛直方向に延出する長孔であ」るとは、第一孔のみが長孔である形態、第二孔のみが長孔である形態、及び第一孔と第二孔の双方が長孔である形態を包含する。また、接合部における長孔は、単数であっても複数であってもよい。例えば、接合金物の第一鉛直プレートに2つの長孔が間隔を置いて開設され、付加制震柱の柱頭にこの2つの長孔に対応する2つのボルト孔もしくは長孔が開設される形態を一例として挙げることができる。
また、本態様の柱梁接合構造は、新設の建物と既設の建物の双方に適用可能である。新設の建物の場合、設計当初から付加制震体を鉛直荷重を負担しない非構造部材として組み込んで設計が行われる。新設の建物では、例えば、付加制震体が建て込まれた後に建物の内部構成部材(間仕切壁等)の施工が行われ、屋根の施工が行われる。従って、本態様の柱梁接合構造を構成する付加制震柱に屋根等の上部構造の荷重が入力され得るが、柱梁接合構造の有する長孔に沿ってボルトが摺動自在であることにより、付加制震柱が上部構造の荷重を負担することはない。さらに、上部構造の荷重により、柱梁接合構造を形成する建物の鉄骨梁が撓み得るが、柱梁接合構造の有する長孔に沿ってボルトが摺動自在であることにより、付加制震柱は鉄骨梁の撓みを吸収することができる。また、既設の建物に付加制震体が後施工されて本態様の柱梁接合構造が形成される場合でも、柱梁接合構造の有する長孔に沿ってボルトが摺動自在であることにより、付加制震柱が建物の荷重を負担することはなく、さらに、既に撓んでいる鉄骨梁の撓みを吸収しながら(撓みの影響を受けることなく)付加制震体を後施工することができる。
また、接合金物を形成する天端プレートと鉄骨梁とのボルト接合は、複数の中ボルトによる接合形態、高力ボルト(ハイテンションボルト)による接合形態のいずれであってもよい。一方、接合金物と付加制震柱とのボルト接合は、接合金物と付加制震柱を繋ぐボルトが長孔内で摺動することを許容するべく、中ボルトによる接合形態が好ましい。
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様は、前記鉄骨梁と前記付加制震柱がいずれもH形鋼により形成され、前記第二孔が該H形鋼のウエブに開設されていることを特徴とする。
本態様によれば、H形鋼により形成される付加制震柱の2つのフランジの間に接合金物を形成する第一鉛直プレートが入り込み、付加制震柱のウエブに開設されている第二孔と第一鉛直プレートに開設されている第一孔をボルト接合することにより、双方の接合を容易に行うことができ、可及的にシンプルな接合構造を形成することができる。
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様において、前記第一鉛直プレートは、H形鋼により形成される前記付加制震柱のウエブに当接される正面視が略矩形を呈し、該略矩形の下方の隅角部が面取り部であることを特徴とする。
本態様によれば、鉄骨梁と付加制震柱の接合部に曲げモーメントが作用した際に、H形鋼からなる付加制震柱の両フランジとこの両フランジ間に配設されている接合金物の第一鉛直プレートの特に下方の隅角部との干渉を、面取り部により解消することができる。ここで、「正面視」とは、H形鋼により形成される付加制震柱のウエブの側面から視ることを意味しており、付加制震柱の両フランジ内に配設されている第一鉛直プレートの広幅面を正面から視ることを意味している。
建物の構面がラーメン架構を有し、このラーメン架構を形成する鉄骨梁に対して付加制震柱が接合される場合、この鉄骨梁を構成要素とする柱梁接合構造には曲げモーメントが作用し得る。H形鋼により形成される付加制震柱の両フランジ内に接合金物の第一鉛直プレートが配設されて双方が接合されている構造において、この接合部には長孔があることから、ここに曲げモーメントが作用することにより、鉄骨梁にボルト接合されている接合金物が付加制震柱に対して回動する。この接合金物の回動の際に、接合金物の第一鉛直プレートの特に下端が、付加制震柱の両フランジの内側面に干渉することが懸念される。第一鉛直プレートと付加制震柱の両フランジとが干渉することにより、長孔に沿ったボルトの摺動が阻害される恐れがある。そこで、本態様のように第一鉛直プレートの下方の隅角部が面取りされて面取り部となっていることにより、このように付加制震柱の両フランジと接合金物の第一鉛直プレートの下方の隅角部との干渉を効果的に解消することができる。
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様において、前記接合金物は、前記天端プレートの下方において、該天端プレートと前記第一鉛直プレートの双方に直交する第二鉛直プレートをさらに有していることを特徴とする。
本態様によれば、接合金物が天端プレートと第一鉛直プレートの双方に直交する第二鉛直プレートを有することにより、この第二鉛直プレートが天端プレートを補強する補強リブとして機能し、より一層強度の高い接合金物を形成することができる。そして、このことは、より一層高剛性の柱梁接合構造の形成に繋がる。
また、本発明による柱梁接合構造の他の態様において、前記付加制震体は、前記付加制震柱と、ダンパーと、を少なくとも有する制震パネルであることを特徴とする。
本態様によれば、接合金物もしくは付加制震柱の少なくとも一方に設けられた鉛直方向の長孔にボルトが摺動することにより、建物の鉛直荷重を負担せず、鉄骨梁の撓みを吸収できる付加制震体からなる制震パネルを形成することができる。ここで、ダンパーには、溝形鋼やH形鋼等の形鋼材や(極)低降伏点鋼板によるダンパーの他、断面形状がΣ形の鋼材からなるΣ形ダンパー、鋼材と鋼材の間に摩擦材が一定の締付け力で挟持されてなる摩擦ダンパーなど、多様な形態のダンパーが適用できる。また、本態様の制震パネルには、様々な形態がある。例えば、建物の構面を形成する上下の鉄骨梁の間に配設される、2本の付加制震柱と、その間にあるダンパーとにより形成される制震パネルが一例として挙げられる。また、建物の構面を形成する上下の鉄骨梁の間に配設される、2本の付加制震柱と、そのうちの一方に取り付けられているダンパーと、ダンパーと他方の付加制震柱とを繋ぐブレースと、より形成される制震パネルが他の例として挙げられる。さらに、建物の構面を形成する鉄骨柱に対して直接取り付けられているダンパーと、建物の構面を形成する上下の鉄骨梁とダンパーに取り付けられている付加制震柱と、により形成される制震パネルがさらに他の例として挙げられる。
以上の説明から理解できるように、本発明の柱梁接合構造によれば、建物の構面を形成する梁と付加制震体を形成する柱による柱梁接合構造を提供することができる。
以下、実施形態に係る柱梁接合構造について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[実施形態に係る柱梁接合構造]
図1乃至図3を参照して、実施形態に係る柱梁接合構造について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る柱梁接合構造の正面図である。また、図2は、図1のII部の拡大図であって、鉛直荷重が作用した際の柱梁接合構造の作用、及び曲げモーメントが作用した際の柱梁接合構造の作用を共に示した図である。さらに、図3は、接合金物と付加制震柱を取り外した分解斜視図である。
図1乃至図3を参照して、実施形態に係る柱梁接合構造について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る柱梁接合構造の正面図である。また、図2は、図1のII部の拡大図であって、鉛直荷重が作用した際の柱梁接合構造の作用、及び曲げモーメントが作用した際の柱梁接合構造の作用を共に示した図である。さらに、図3は、接合金物と付加制震柱を取り外した分解斜視図である。
図1には、建物の構面の一例に対して、実施形態に係る付加制震体20が組み込まれることにより形成される柱梁接合構造50の一例を示している。図示する建物の構面10は、鉄骨柱2と鉄骨梁1とにより形成される架構を有する。鉄骨柱2と鉄骨梁1の接合部が剛接合である場合、架構10はラーメン架構を形成する。また、鉄骨柱2と鉄骨梁1の接合部がピン接合である場合、架構10はブレース架構を形成する。ブレース架構の場合は、例えば1P幅(1Pは910mm程度)の耐力壁(図示せず)が構面内に組み込まれていてもよい。鉄骨柱2と鉄骨梁1との剛接合は、例えば、複数のハイテンションボルトにより双方を接合する形態、鉄骨柱2に鉄骨梁1を溶接接合する形態、複数の中ボルトを相互に所定間隔を置いて双方を接合する形態、などにより形成される。一方、鉄骨柱2と鉄骨梁1とのピン接合は、例えば、複数の中ボルトを相互に比較的狭い間隔を置いて双方を接合することにより形成される。尚、本明細書において、「溶接」とは、開先溶接(完全溶け込み溶接、部分溶け込み溶接)や隅肉溶接など、接続部に要求される強度や接合態様(剛接続、ピン接続)に応じて選択される適宜の溶接を示す。
基礎Kに対してベースプレート2aがアンカーボルト(図示せず)等により固定され、ベースプレート2aに溶接等により接合されている鉄骨柱2が立設される。尚、図示例の鉄骨柱2はH形鋼により形成されているが、角形鋼管により形成される鉄骨柱であってもよい。また、図示例の構面10は1階の構面の一部を示しているが、柱梁接合構造50が形成される建物の構面は、2階以上の上階であってもよく、この場合は基礎Kの代わりに下階の床梁が配設されることになる。
構面10の内部に組み込まれている付加制震体20は、付加制震柱3と、構面10を形成する鉄骨柱2に直接取り付けられているダンパー5と、付加制震柱3の上下とダンパー5を斜めに繋ぐ2本のブレース4と、を有する制震パネルである。
付加制震柱3はH形鋼により形成され、基礎Kにアンカーボルト(図示せず)等により固定されているベースプレート3dに対して、溶接等により接合されている。付加制震柱3の一方のフランジの上下位置にはそれぞれ、鋼製のガセットプレート21が溶接にて接合されており、それぞれのガセットプレート21に対して例えば溝形鋼により形成されるブレース4の一端が溶接にて接合されている。
H形鋼により形成される連結材22の一方のフランジの上下位置にはガセットプレート23が溶接にて接合されており、それぞれのガセットプレート23に対して対応するブレース4の他端が溶接にて接合されている。
構面10を形成する鉄骨柱2の一方のフランジと、連結材22の他方のフランジと、のそれぞれに対して鋼製の補強プレート24が溶接接合もしくはボルト接合されており、各補強プレート24に対してダンパー5を形成する鋼製プレート25が接合されている。
図示例のダンパー5は摩擦ダンパーであり、2つの鋼製プレート25の一方の面、もしくは双方の面に締付け鋼板26が配設され、鋼製プレート25と締付け鋼板26の間に摩擦材(図示せず)が介層され、締付け鋼板26を所定の締付け力で締付け固定することによりダンパー5が形成されている。尚、ダンパー5は、図示例の摩擦ダンパー以外にも、溝形鋼やH形鋼等の形鋼材や(極)低降伏点鋼板によるダンパー、断面形状がΣ形の鋼材からなるΣ形ダンパー等であってもよい。また、鉄骨柱2と連結材22の間に介在する図示例のダンパー5は1基であるが、複数基のダンパー5を有する形態であってもよい。
図示例は、鉄骨柱2に対して2本のブレース4が離れた位置で連結材22とダンパー5を介して接合されており、正面視で略K型の耐力壁(偏心K型耐力壁)を形成している。例えば、鉄骨柱2に対して低降伏点鋼板等により形成されるダンパーが取り付けられ、ダンパーに2本のブレースが直接取り付けられる場合は、正面視K型のK型耐力壁を形成することになる。
図2に示すように、柱梁接合構造50は、建物の構面10の鉄骨梁1と、付加制震体20を形成する付加制震柱3と、これらを繋ぐ接合金物30と、により構成される。図2及び図3に明りょうに示すように、接合金物30は、鉄骨梁1にボルト接合される天端プレート31と、天端プレート31の下方において天端プレート31に対して直交する方向に延出する第一鉛直プレート32と、さらに第一鉛直プレート32に対して直交する方向に延出する第二鉛直プレート33とを有する。第一鉛直プレート32は、天端プレート31の下面の略中央位置において溶接接合されている。一方、第二鉛直プレート33は第一鉛直プレート32の広幅面の中央位置に位置決めされ、天端プレート31と第一鉛直プレート32の双方に溶接接合されている。
第一鉛直プレート32は、図2に示す正面視において略矩形を呈し、略矩形の下方の隅角部は面取り加工されることにより面取り部35を有する。
天端プレート31は、4つのボルト孔36を有し(図3参照)、各ボルト孔36は、鉄骨梁1の下方フランジ11に開設されている4つの対応するボルト孔(図示せず)に位置決めされ、中ボルト41にてボルト接合される。尚、天端プレート31と下方フランジ11の接合をハイテンションボルトにて接合してもよい。
第一鉛直プレート32は、その広幅面が付加制震柱3のウエブ3aに当接され、付加制震柱3に対してボルト接合されるプレートである。一方、第二鉛直プレート33は、天端プレート31及び接合金物30の全体を補強する補強リブとしての機能を有する。
第一鉛直プレート32は、中央に位置する第二鉛直プレート33の左右位置において、鉛直方向に延出する長孔34(第一孔の一例)を有する。一方、付加制震柱3のウエブ3aの上端近傍において2つの長孔34に対応する位置には、2つのボルト孔3c(第二孔の一例)が開設されている。
図3に示すように、付加制震柱3の両フランジ3bの間に接合金物30の第一鉛直プレート32を配設してウエブ3aに当接させ、それぞれの長孔34とボルト孔3cに中ボルト42を挿通し、ボルト孔3cの背面側でナット締めすることにより、付加制震柱3と接合金物30が接合される。そして、接合金物30と鉄骨梁1の下方フランジ11が中ボルト41にてボルト接合されることにより、柱梁接合構造50が形成される。
図2に示すように、接合金物30の第一鉛直プレート32において鉛直方向に延出する長孔34が開設され、この長孔34に沿って付加制震柱3にボルト接合されている中ボルト42が鉛直方向であるX1方向に摺動自在に(フリーな態様で)挿通されている。特に、長孔34に挿通されるボルトが中ボルト42であることにより、長孔34に沿う摺動が可能になる。このような構成により、鉄骨梁1を介して建物荷重(建物における積載荷重や建物の自重の一部)が接合金物30に入力された際に、接合金物30は鉛直方向であるX1方向にスライドする。このように鉄骨梁1に接合されている接合金物30が長孔34に沿って鉛直方向にスライドすることにより、付加制震体20を形成する付加制震柱3には鉛直荷重が入力されず、従って付加制震柱3が接合金物30に入力される鉛直荷重を負担することはない。
また、図1に示すように、水平方向に延設する鉄骨梁1は、その中央位置において最大の撓み量を有する態様で下方に撓む。例えば、低層階の鉄骨造建物において、中央位置に2cm程度の撓みが認められる場合がある。構面10を有する建物が新設の建物の場合、最終的に屋根が施工された段階では、既に付加制震体20が構面10内に組み込まれているが、屋根が施工された段階において鉄骨梁1は一般に下方に撓んでいる。また、構面10を有する建物が既設の建物の場合であって、付加制震体20を後付けで構面10内に組み込む場合においても、この付加制震体10を組み込む際に鉄骨梁1は下方に撓んでいる。
このように鉄骨梁1が下方に撓んでいる場合においても、鉄骨梁1に接合される接合金物30が長孔34に沿って鉛直方向にスライドすることにより、付加制震体20を形成する付加制震柱3にはこの鉄骨梁1の撓みに起因する鉛直荷重は入力されない。従って、付加制震柱3が鉄骨梁1の撓みを吸収する態様で、付加制震体20を構面10内に組み込むことができる。特に、既設の建物の構面10に対して付加制震体20を組み込む後施工においては、既設の鉄骨梁1の撓みを吸収しながら(撓みに関係なく)付加制震体20を組み込むことができるため、良好な施工性を享受できる。
このように、付加制震体20は、建物の鉛直荷重を負担することなく、その構成要素であるダンパー5により、強風時や地震時における水平力を負担して水平荷重を減衰させることができる。
柱梁接合構造50を構成する付加制震柱3を有する付加制震体20は、建物の鉛直荷重を付加制震柱3が負担せず、鉄骨梁1の撓みを吸収しながら構面10内に組み込むことができることにより、構造躯体に影響を及ぼさない非構造部材である、「付加制震」となり得る。尚、図示例の柱梁接合構造50では、接合金物30の第一鉛直プレート32に長孔34を開設し、付加制震柱3と接合金物30を接合する中ボルト42をこの長孔34に沿って摺動自在としているが、接合金物がボルト孔を有し、付加制震柱が長孔を有する形態であってもよい。また、接合金物の第一鉛直プレートと付加制震柱の双方が長孔を有し、双方の長孔に中ボルトが挿通されて双方を接合する形態であってもよい。
また、図1に示す建物の架構10がラーメン架構の場合、図2に示すように、柱梁接合部構造50には曲げモーメントMが生じ得る。そして、作用する曲げモーメントMにより、付加制震柱3に対して鉄骨梁1に接合される接合金物30はX2方向に回動し得る。接合金物30が回動することにより、特に接合金物30の第一鉛直プレート32の下方の隅角部が付加制震柱3の一方のフランジ3bの内側面に干渉する恐れがある。そして、この接合金物30と付加制震柱3の干渉により、接合金物30の長孔34に沿う中ボルト42(及び付加制震柱3)の摺動が阻害される可能性がある。
しかしながら、図示例の接合金物30の第一鉛直プレート32は、その下方の隅角部が面取り加工されてなる面取り部35を有していることにより、付加制震柱3のフランジ3bとの干渉を効果的に回避することができる。図示例と反対方向への曲げモーメントに対しても、X2方向と反対方向に接合金物30が回動した際に、同様に面取り部35によって第一鉛直プレート32とフランジ3bとの干渉が回避される。
次に、図4(a)及び図4(b)を参照して、実施形態に係る柱梁接合構造を形成する付加制震体の他の実施形態について説明する。各図共に、図1に対応する態様で、建物の一方の鉄骨柱の図示を省略して示している。
図4(a)に示す付加制震体20Aは、2本の付加制震柱3と、これら2本の付加制震柱3に対して直接取り付けられているダンパー5と、を有する。各付加制震柱3は、鉄骨梁1の下方フランジ11との間で、それぞれに固有の接合金物30を介して柱梁接合構造50を構成する。この付加制震体20Aによれば、建物の架構10を構成する鉄骨柱2にダンパーの取り付け等を行うことなく、可及的に幅(鉄骨柱2の並び方向の長さ)の狭い付加制震体を構成することができる。
一方、図4(b)に示す付加制震体20Bは、建物の構面10を形成する一方の鉄骨柱2に直接取り付けられているダンパー5と、1本の付加制震柱3と、を有し、最も構成要素数の少ない付加制震体である。この付加制震体20Bによれば、建物の架構10を構成する鉄骨柱2にダンパー5を直接取り付け、ブレース等の部材を省略することにより、従って少ない部品点数により製作コストを削減しながら、極めて幅の狭い付加制震体を構成することができる。
[実証実験]
本発明者等は、図1に示す建物の架構内に付加制震体を組み込んだ試験体を製作し、鉄骨梁の側方から油圧ダンパーにて水平力を付与する面内せん断試験を行った。この面内せん断試験の目的は、接合金物の第一鉛直プレートに設けられている長孔が付加制震体(のフレーム性能)に与え得る影響を確認することである。2種類の試験体を製作し、実施例に係る試験体では、接合金物の第一鉛直プレートにM12で長さ33mmの長孔を設け、付加制震柱にはφ13のボルト孔を設け、これらに挿通される中ボルトにはM12強力ボルトを使用した。一方、比較例に係る試験体では、接合金物の第一鉛直プレートと、付加制震柱の双方にφ13のボルト孔を設け(従って、長孔を設けていない)、これらに挿通される中ボルトにはM12強力ボルトを使用した。
本発明者等は、図1に示す建物の架構内に付加制震体を組み込んだ試験体を製作し、鉄骨梁の側方から油圧ダンパーにて水平力を付与する面内せん断試験を行った。この面内せん断試験の目的は、接合金物の第一鉛直プレートに設けられている長孔が付加制震体(のフレーム性能)に与え得る影響を確認することである。2種類の試験体を製作し、実施例に係る試験体では、接合金物の第一鉛直プレートにM12で長さ33mmの長孔を設け、付加制震柱にはφ13のボルト孔を設け、これらに挿通される中ボルトにはM12強力ボルトを使用した。一方、比較例に係る試験体では、接合金物の第一鉛直プレートと、付加制震柱の双方にφ13のボルト孔を設け(従って、長孔を設けていない)、これらに挿通される中ボルトにはM12強力ボルトを使用した。
面内せん断試験の結果、実施例と比較例の初期剛性(横軸:水平変位、縦軸:水平荷重の変位−荷重グラフにおける近似直線の傾斜角度)に関し、双方の初期剛性が同程度であることが実証されている。すなわち、柱梁接合構造において長孔にボルトを摺動させる構成を適用した場合において、付加制震体の基本性能が低下しないことが確認されており、この構成が水平力を負担する制震パネルにおいても有効な構成であることが確認されている。
このように、長孔にボルトを摺動させる構成を適用した柱梁接合構造は、建物の鉛直荷重を負担せず、鉛直荷重に起因する建物の架構を形成する梁の撓みを吸収可能な「非構造部材」である付加制震体を内包し、水平力のみを負担して建物の強風時もしくは地震時の揺れを低減することを可能にする。
また、柱梁接合構造が適用される付加制震体が組み込まれる建物の構面は、ブレース架構、ラーメン架構のいずれに対しても有効となる。
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
1:鉄骨梁、2:鉄骨柱、3:付加制震柱、3a:ウエブ、3b:フランジ、3c:ボルト孔(第二孔)、4:ブレース、5:ダンパー(摩擦ダンパー)、10:架構(構面)、11:下方フランジ、20,20A,20B:付加制震体、21:ガセットプレート、22:連結材、23:ガセットプレート、24:補強プレート、25:鋼板、26:締付け鋼板、31:天端プレート、32:第一鉛直プレート、33:第二鉛直プレート、34:長孔(第一孔)、35:面取り部、36:天端ボルト孔、41:ボルト(中ボルト)、42:ボルト(中ボルト)、50:柱梁接合構造、K:基礎
Claims (5)
- 鉄骨梁と鉄骨柱とにより形成される建物の構面の該鉄骨梁に対して、付加制震体を構成する付加制震柱が接合されてなる、柱梁接合構造であって、
前記付加制震柱の柱頭には接合金物が取り付けられ、該接合金物に前記鉄骨梁が取り付けられており、
前記接合金物は、前記鉄骨梁に当接して該鉄骨梁にボルト接合される天端プレートと、該天端プレートの下方において該天端プレートに対して直交する方向に延出する第一鉛直プレートと、を有し、
前記第一鉛直プレートは第一孔を有し、前記付加制震柱は第二孔を有し、該第一孔と該第二孔の少なくともいずれか一方は鉛直方向に延出する長孔であり、
前記第一孔と前記第二孔にボルトが挿通され、前記接合金物と前記付加制震柱とがボルト接合されていることを特徴とする、柱梁接合構造。 - 前記鉄骨梁と前記付加制震柱がいずれもH形鋼により形成され、前記第二孔が該H形鋼のウエブに開設されていることを特徴とする、請求項1に記載の柱梁接合構造。
- 前記第一鉛直プレートは、H形鋼により形成される前記付加制震柱のウエブに当接される正面視が略矩形を呈し、該略矩形の下方の隅角部が面取り部であることを特徴とする、請求項2に記載の柱梁接合構造。
- 前記接合金物は、前記天端プレートの下方において、該天端プレートと前記第一鉛直プレートの双方に直交する第二鉛直プレートをさらに有していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の柱梁接合構造。
- 前記付加制震体は、前記付加制震柱と、ダンパーと、を少なくとも有する制震パネルであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の柱梁接合構造。
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