JP4575074B2 - 廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法 - Google Patents
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Description
1.(A)廃芳香族ポリカーボネートを炭素数1〜4のアルコール、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンおよびジクロロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩素化化合物有機溶媒、ならびに水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである金属水酸化物の存在下、エステル交換反応により分解反応させる工程(a工程)、(B)分解反応後の反応溶液に塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸の水溶液である酸水溶液を加える工程(b工程)、(C)有機溶媒相と水溶液相とを分液し、有機溶媒相を回収する工程(c工程)および(D)回収した有機溶媒相から固体の芳香族ジヒドロキシ化合物を得る工程(d工程)を含み、さらに、a工程で得られた分解反応後の反応溶液、b工程で得られた酸水溶液を加えた後の溶液およびc工程で得られた回収した有機溶媒溶液からなる群より選ばれた少なくとも1つの溶液をろ過する工程(z工程)を設けることを特徴とする廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法。
が提供される。
本発明において、使用される廃芳香族ポリカーボネートは、界面重合法や溶融重合法等公知の方法で製造されたものでよく、分子量は粘度平均分子量で1000〜100000のものが好ましい。廃芳香族ポリカーボネートの形状はパウダー、ペレット、シート、フィルム、成形品等特に限定されない。例えば、CD、CD−R、DVD等の光ディスクにおいて、廃棄されたものや成形不良のものなど不要になった廃光ディスクをそのままあるいは印刷膜や金属膜を剥離し除去したものを分解に使用することができる。また、分解に用いられる廃芳香族ポリカーボネートとして、ポリカーボネート製造途中に目標とする分子量に到達せず、パウダーあるいはペレット化されなかったポリカーボネートの溶液から溶媒を除去し、乾燥した固形物でもよい。ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
本発明において、まず、(A)廃芳香族ポリカーボネートを炭素数1〜4のアルコール、塩素化化合物有機溶媒および金属水酸化物の存在下、エステル交換反応により分解反応させる工程(a工程)が行われる。
不活性ガスの種類として、窒素、アルゴン等が挙げられる。窒素がコスト的に有利であり好ましい。
a工程の分解反応後、(B)分解反応後の反応溶液に酸水溶液を加える工程(b工程)が行われる。
分解反応後の反応溶液に酸水溶液を加えることにより、芳香族ジヒドロキシ化合物は塩素化化合物有機溶媒相に溶解する。酸水溶液としては塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸等の無機酸の水溶液が好ましく用いられる。加える酸水溶液の量は、水溶液相が中性〜酸性になるような量が必要であり、中性のpH6〜8の範囲になるような量が特に好ましい。酸を加えずに水を加えると炭酸ジアルキルの加水分解が起こり、さらに芳香族ジヒドロキシ化合物が金属水酸化物と反応して塩になり、芳香族ジヒドロキシ化合物の収率が低下することとなる。
b工程において、分解反応後の反応液に酸水溶液を加えることにより有機溶媒相と水溶液相との2つの相に分離する。そこで、(C)有機溶媒相と水溶液相とを分液し、有機溶媒相を回収する工程(c工程)が行われる。
c工程で回収された有機溶媒相から固体の芳香族ジヒドロキシ化合物を得る工程(d工程)が行われる。
回収された有機溶媒相から固体の芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法としては、蒸留により塩素化化合物有機溶媒、未反応アルコールおよびジアルキルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物とを分離する方法が好ましく採用される。
本発明においては、前記a工程で得られた分解反応後の反応溶液、前記b工程で得られた酸水溶液を加えた後の溶液および前記c工程で得られた回収した有機溶媒溶液からなる群より選ばれた少なくとも1つの溶液をろ過する工程(z工程)を設けることが必要である。
ろ過器は、好ましくは孔径1〜100μm、より好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜20μm、特に好ましくは1〜10μmのフィルターを備えている。この範囲の孔径を有するフィルターを使用することにより濾過時間が短く、またろ過されるべき印刷膜、金属膜、UV硬化膜、添加剤、充填剤等の異物がろ液と共に流出し難くなり好ましい。フィルターの材質はPET、ナイロン、セルロース等の樹脂製、もしくはセラミック、ステンレス等の金属製のものが好ましく用いられる。
また、ろ過時の差圧は好ましくは0.01〜0.5MPa、特に好ましくは0.1〜0.4MPaである。
なお、d工程の蒸留操作により分離して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物は微量の未反応アルコール、ジアルキルカーボネート、モノヒドロキシ化合物(末端停止剤)、ポリカーボネート由来の炭酸塩および金属水酸化物と酸水溶液が反応して生成した中性塩等の不純物を含んでおり、これらの化合物は除去することが好ましい。これらの不純物を除去するために、芳香族ジヒドロキシ化合物を塩素化化合物有機溶媒及び/又は水で洗浄する工程(e工程)を行ってもよい。
芳香族ポリカーボネートペレット1gを塩化メチレン100mLに溶解させ、微粒子測定器(ハイヤックロイコ社製He−Neレーザー光散乱方式)により0.5μm以上の微粒子数を測定した。
ポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形機(日本製鋼所(株)製:日鋼アンカー V−17−65型)を用い、シリンダー温度340℃で、厚さ2mmの50mm角板を成形した。その成形板を色差計(日本電色(株)製)を用いてb値を測定した。
ポリカーボネート樹脂ペレットを射出成形機(日本製鋼所(株)製:日鋼アンカー V−17−65型)を用い、シリンダー温度340℃で10分間滞留させたものとさせないものの試験片(厚さ2mmの50mm角板)をそれぞれ作成し、その色相の変化(△E)を測定した。色相の変化は、色差計(日本電色(株)製)でそれぞれのL、a、b値を測定し、下記式を用いて算出した。ΔEは値が小さいほど熱安定性に優れる。
ΔE=[(L′−L)2+(a′−a)2+(b′−b)2]1/2
(L、a、bは滞留させないもの、L′、a′、b′は10分間滞留させたもの)
Waters社製高速液体クロマトグラフを用い、サンプル(有機物)0.2gに内部標準としてo−クレゾールを添加したアセトニトリル1mLを加え、溶解し、アセトニトリル/0.2%酢酸水溶液を展開溶媒としてクロマトグラフィを得、あらかじめ作成した検量線により、ビスフェノールAの純度を求めた。
温度計、撹拌機及び還流冷却器、水浴付き反応器に、固体の水酸化ナトリウム4部(芳香族ポリカーボネートのカーボネート結合に対し20モル%)、メタノール80部(芳香族ポリカーボネートのカーボネート結合1モルに対し5モル)を投入し、25℃で攪拌して溶解した。次に、酸化防止剤としてハイドロサルファイトナトリウム2部、塩化メチレン200部、CD−Rの金属部分を剥離し、粉砕した樹脂(主成分ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量15200)127部を投入し、25℃で攪拌を継続した。投入直後は樹脂が団子状態になっていたが、内部の温度が上昇するにつれて固形分が溶解し、攪拌10分後に完全に溶解した。ここで、系内の濃度を測定するため溶液の一部をサンプリングして水分量を測定したところ、0.05重量%であった。その後、内温を40℃にするため、水浴を調節した。樹脂投入から4時間後、反応混合物中のポリカーボネート樹脂オリゴマーを1H−NMRで分析したところ、完全に消失しており、メタノール/ジメチルカーボネートのピーク面積比が1.5であり理論量のジメチルカーボネートが生成していることを確認できたので、0.5mol/L塩酸水溶液202部投入し、分解反応を停止させ、この分解反応液(有機相と水相との混合物)を攪拌しながら孔径5μmのステンレス製フィルターでろ過した。
実施例1において、分解反応液をろ過する代わりに、分液後の有機相を孔径5μmのステンレス製フィルターでろ過したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、固体のビスフェノールA107部を得た。ビスフェノールAの純度は99.8%であった。
実施例1において、分解反応液をろ過する代わりに、分解反応終了後、0.5mol/L塩酸水溶液202部投入する直前の反応混合液を孔径5μmのステンレス製フィルターでろ過したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、固体のビスフェノールA107部を得た。ビスフェノールAの純度は99.8%であった。
実施例1において、孔径5μmのステンレス製フィルターに代えて、孔径40μmのPET製バック式フィルターで濾過を行った後、孔径8μmのステンレス製フィルターで濾過をした以外は実施例1の操作を行ない固体のビスフェノールAを得た。ビスフェノールAの純度は99.8%であった。
実施例1において、ろ過を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、固体のビスフェノールAを得た。ビスフェノールAの純度は99.2%であった。
(A)温度計、撹拌機、還流冷却器、循環器付き反応器に、イオン交換水650部、25%水酸化ナトリウム水溶液252部を仕込み、これに購入した市販のビスフェノールA170部、塩化メチレン13部およびハイドロサルファイト0.34部を加え、循環しながら温度を30℃に保持し40分間で溶解し、ビスフェノールA水溶液を調製した。
参考例1(A)において、市販のビスフェノールAの代わりに実施例1で得られたビスフェノールAを使用すること以外は、参考例1と同様な操作を行いペレットを得た。得られたペレットを用いて異物量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
参考例1(A)において、市販のビスフェノールAの代わりに実施例2で得られたビスフェノールAを使用すること以外は、参考例1と同様な操作を行いペレットを得た。得られたペレットを用いて異物量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
参考例1(A)において、市販のビスフェノールAの代わりに実施例3で得られたビスフェノールAを使用すること以外は、参考例1と同様な操作を行いペレットを得た。得られたペレットを用いて異物量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
参考例1(A)において、市販のビスフェノールAの代わりに実施例4で得られたビスフェノールAを使用すること以外は、参考例1と同様な操作を行いペレットを得た。得られたペレットを用いて異物量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
参考例1(A)において、市販のビスフェノールAの代わりに、市販のビスフェノールAと実施例1で得られたビスフェノールAとを95:5の比率で混合したものを使用すること以外は、参考例1と同様な操作を行いペレットを得た。得られたペレットを用いて異物量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
参考例1(A)において、市販のビスフェノールAの代わりに比較例1で得られたビスフェノールAを使用すること以外は、参考例1と同様な操作を行いペレットを得た。得られたペレットを用いて異物量、色相(b値)および熱安定性(ΔE)を評価し、その結果を表1に示した。
Claims (6)
- (A)廃芳香族ポリカーボネートを炭素数1〜4のアルコール、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンおよびジクロロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩素化化合物有機溶媒、ならびに水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである金属水酸化物の存在下、エステル交換反応により分解反応させる工程(a工程)、(B)分解反応後の反応溶液に塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸の水溶液である酸水溶液を加える工程(b工程)、(C)有機溶媒相と水溶液相とを分液し、有機溶媒相を回収する工程(c工程)および(D)回収した有機溶媒相から固体の芳香族ジヒドロキシ化合物を得る工程(d工程)を含み、さらに、a工程で得られた分解反応後の反応溶液、b工程で得られた酸水溶液を加えた後の溶液およびc工程で得られた回収した有機溶媒溶液からなる群より選ばれた少なくとも1つの溶液をろ過する工程(z工程)を設けることを特徴とする廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法。
- さらに、(E)前記d工程で得られた固体の芳香族ジヒドロキシ化合物をジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタンおよびジクロロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩素化化合物有機溶媒及び/又は純水で洗浄する工程(e工程)を行う請求項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法。
- 前記z工程におけるろ過は、孔径1〜10μmのフィルターでろ過する請求項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法。
- 前記z工程におけるろ過は、孔径20μm以上のフィルターでろ過した後、孔径1〜10μmのフィルターでろ過する請求項1記載の廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法。
- 前記a工程およびe工程において使用する塩素化化合物有機溶媒がジクロロメタン、ジクロロエタンおよびクロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である請求項1または2に記載の廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法。
- 請求項1記載の方法で廃芳香族ポリカーボネートから芳香族ジヒドロキシ化合物を得、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物を芳香族ポリカーボネートの製造原料として用いる芳香族ポリカーボネートの製造方法。
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