JP4541832B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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Description

この発明は、プラズマディスプレイパネルの構成に関する。
面放電方式交流型プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、放電ガスが封入されている放電空間を挟んで互いに対向される二枚のガラス基板のうち、一方のガラス基板に行方向に延びる行電極対が列方向に並設され、他方のガラス基板に列方向に延びる列電極が行方向に並設されていて、放電空間の行電極対と列電極がそれぞれ交差する部分に、マトリックス状に単位発光領域(放電セル)が形成されている。
そして、このPDPには、行電極や列電極を被覆するために形成された誘電体層上の単位発光領域内に面する位置に、誘電体層の保護機能と単位発光領域内への2次電子放出機能とを有する酸化マグネシウム(MgO)膜が蒸着によって形成されている。
このようなPDPの製造工程における酸化マグネシウム膜の形成方法としては、酸化マグネシウム粉末を混入したペーストを誘電体層上に塗布することによって酸化マグネシウム膜を形成するスクリーン印刷法が、簡便な手法であることから、その採用が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1のように、水酸化マグネシウムを熱処理して精製した多結晶片葉形の酸化マグネシウムを混入したペーストを、スクリーン印刷法によって塗布することによりPDPに酸化マグネシウム膜を形成した場合には、そのPDPの放電特性は、蒸着法によって酸化マグネシウム膜を形成する場合とほとんど同じかまたは僅かに向上する程度に過ぎない。
このため、放電特性をより一層向上させることが出来る酸化マグネシウム膜(保護膜)をPDPに形成出来るようにすることが強く要望されて来ている。
特開平6−325696号公報
この発明は、上記のような従来の酸化マグネシウム膜が形成されるPDPにおける問題点を解決することをその解決課題の一つとしている。
この発明(請求項1に記載の発明)によるプラズマディスプレイパネルは、放電空間を介して前面基板と背面基板が対向配置され、この前面基板と背面基板との間に、複数の行電極対と、この行電極対に対して交差する方向に延びて行電極対との各交差部分の放電空間に単位発光領域を形成する複数の列電極と、蛍光体層が設けられて、放電空間内に放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、放電ガスから放射される紫外線により励起されることにより230〜250nmにピーク波長を有する紫外線を放射する粒子径を有する酸化マグネシウム結晶体が、前記前面基板と前記背面基板との間の少なくとも単位発光領域に面する部分に形成された結晶酸化マグネシウム層が設けられ、この結晶酸化マグネシウム層から放射される紫外線および放電ガスから放射される紫外線によって励起されることにより蛍光体層が発光することを特徴としている。
この発明によるPDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間に、行方向に延びる行電極対と、列方向に延びて行電極対との交差部分の放電空間に放電セル(単位発光領域)を形成する列電極と、蛍光体層が設けられ、さらに、酸化マグネシウム結晶体を含むペーストをスクリーン印刷やオフセット印刷,ディスペンサ法,ロールコート法などによって行電極対を被覆する誘電体層の放電セルに対向する部分に塗布したり、または、酸化マグネシウム結晶体の粉末をスプレ法や静電塗布法などによって誘電体層の放電セルに対向する部分に付着させて粉末層を形成したりするなどの方法によって、放電セルに面する結晶酸化マグネシウム層が設けられており、行電極と列電極によって放電セル内において発生される放電によって、放電空間内に充填された放電ガス中のキセノンガスから放射される紫外線によって励起されることにより、結晶酸化マグネシウム層から230〜250nmにピーク波長を有する紫外線が放射されるPDPをその最良の実施形態としている。
この実施形態におけるPDPは、放電セルに面する部分に設けられた結晶酸化マグネシウム層が、放電によって発生する電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソードルミネッセンス発光を行うことにより、PDPにおける放電遅れなどの放電特性が改善されて、良好な放電特性を得ることが出来る。
そして、蛍光体層が、放電セル内において発生される放電により放電ガス中のキセノンガスから放射される紫外線によって励起されて発光するのに加えて、このキセノンガスから放射される紫外線により結晶酸化マグネシウム層から放射される230〜250nmのピーク波長を有する紫外線によっても励起されて発光するので、画像の輝度が増加する。
そしてさらに、この結晶酸化マグネシウム層から放射される230〜250nmのピーク波長を有する紫外線による励起効率は、BAM系青色蛍光材がキセノンガスから放射される真空紫外線によって劣化した場合でもほとんど低下することがないので、青の蛍光体層の発光効率が維持されて、常に高輝度な画像を表示することが出来るようになる。
図1ないし3は、この発明によるPDPの実施形態の一実施例を示しており、図1はこの実施例におけるPDPを模式的に示す正面図、図2は図1のV−V線における断面図、図3は図1のW−W線における断面図である。
この図1ないし3に示されるPDPは、表示面である前面ガラス基板1の背面に、複数の行電極対(X,Y)が、前面ガラス基板1の行方向(図1の左右方向)に延びるように平行に配列されている。
行電極Xは、T字形状に形成されたITO等の透明導電膜からなる透明電極Xaと、前面ガラス基板1の行方向に延びて透明電極Xaの狭小の基端部に接続された金属膜からなるバス電極Xbとによって構成されている。
行電極Yも同様に、T字形状に形成されたITO等の透明導電膜からなる透明電極Yaと、前面ガラス基板1の行方向に延びて透明電極Yaの狭小の基端部に接続された金属膜からなるバス電極Ybとによって構成されている。
この行電極XとYは、前面ガラス基板1の列方向(図1の上下方向)に交互に配列されており、バス電極XbとYbに沿って並列されたそれぞれの透明電極XaとYaが、互いに対となる相手の行電極側に延びて、透明電極XaとYaの幅広部の頂辺が、それぞれ所要の幅の放電ギャップgを介して互いに対向されている。
前面ガラス基板1の背面には、列方向において隣接する行電極対(X,Y)の互いに背中合わせになったバス電極XbとYbの間に、このバス電極Xb,Ybに沿って行方向に延びる黒色または暗色の光吸収層(遮光層)2が形成されている。
さらに、前面ガラス基板1の背面には、行電極対(X,Y)を被覆するように誘電体層3が形成されており、この誘電体層3の背面には、互いに隣接する行電極対(X,Y)の背中合わせに隣り合うバス電極XbおよびYbに対向する位置およびこの隣り合うバス電極XbとYbの間の領域部分に対向する位置に、誘電体層3の背面側に突出する嵩上げ誘電体層4が、バス電極Xb,Ybと平行に延びるように形成されている。
そして、この誘電体層3と嵩上げ誘電体層4の背面側には、後述するような立方体の結晶構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む酸化マグネシウム層(以下、結晶酸化マグネシウム層という)5が形成されている。
この結晶酸化マグネシウム層5は、誘電体層3と嵩上げ誘電体層4の全面または一部、例えば、後述する放電セルに面する部分に形成されている。
なお、図示の例では、結晶酸化マグネシウム層5が誘電体層3と嵩上げ誘電体層4の全面に形成されている例が示されている。
一方、前面ガラス基板1と放電空間Sを介して平行に配置された背面ガラス基板6の表示側の面上には、列電極Dが、各行電極対(X,Y)の互いに対になっている透明電極XaおよびYaに対向する位置において行電極対(X,Y)と直交する方向(列方向)に延びるように、互いに所定の間隔を開けて平行に配列されている。
背面ガラス基板6の表示側の面上には、さらに、列電極Dを被覆する白色の列電極保護層(誘電体層)7が形成され、この列電極保護層7上に、隔壁8が形成されている。
この隔壁8は、各行電極対(X,Y)のバス電極XbとYbに対向する位置においてそれぞれ行方向に延びる一対の横壁8Aと、隣接する列電極Dの間の中間位置において一対の横壁8A間を列方向に延びる縦壁8Bとによって略梯子形状に形成されており、各隔壁8が、隣接する他の隔壁8の互いに背中合わせに対向する横壁8Aの間において行方向に延びる隙間SLを挟んで、列方向に並設されている。
そして、この梯子状の隔壁8によって、前面ガラス基板1と背面ガラス基板6の間の放電空間Sが、各行電極対(X,Y)において互いに対になっている透明電極XaとYaに対向する部分に形成される放電セルC毎に、それぞれ方形に区画されている。
放電空間Sに面する隔壁8の横壁8Aおよび縦壁8Bの側面と列電極保護層7の表面には、これらの五つの面を全て覆うように蛍光体層9が形成されており、この蛍光体層9の色は、各放電セルC毎に赤,緑,青の三原色に色分けされて、これらが行方向に順に並ぶように配列されている。
嵩上げ誘電体層4は、この嵩上げ誘電体層4の表面を被覆している結晶酸化マグネシウム層5(または、結晶酸化マグネシウム層5が嵩上げ誘電体層4の放電セルCに対向する部分にのみ形成されている場合には、嵩上げ誘電体層4)が隔壁8の横壁8Aの表示側の面に当接される(図2参照)ことによって、放電セルCと隙間SLの間をそれぞれ閉じているが、縦壁8Bの表示側の面には当接されておらず(図3参照)、その間に隙間rが形成されて、行方向において隣接する放電セルC間がこの隙間rを介して互いに連通されている。
放電空間S内には、キセノンガスを10体積パーセント以上含む放電ガスが封入されている。
上記結晶酸化マグネシウム層5は、前述したような酸化マグネシウム結晶体が、スプレ法や静電塗布法などの方法によって誘電体層3および嵩上げ誘電体層4の背面側の表面に付着されることによって形成される。
この結晶酸化マグネシウム層5を形成する酸化マグネシウム結晶体は、電子線によって励起されることにより波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光を行うとともに、放電によってキセノンから発生する波長142nmおよび172nmの真空紫外線によって励起されて230〜250nmにピーク波長を有する紫外線を放射する。
この酸化マグネシウム結晶体には、例えば、マグネシウムを加熱して発生するマグネシウム蒸気を気相酸化して得られるマグネシウムの単結晶体(以下、このマグネシウムの単結晶体を気相法酸化マグネシウム単結晶体という)が含まれる。
そして、この気相法酸化マグネシウム単結晶体には、例えば、図4のSEM写真像に示されるような、立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体と、図5のSEM写真像に示されるような、立方体の結晶体が互いに嵌り込んだ構造(すなわち、立方体の多重結晶構造)を有する酸化マグネシウム単結晶体が含まれる。
なお、この立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体と立方体の多重結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体は、通常、混在して存在している。
この気相法酸化マグネシウム単結晶体の合成については、『材料』昭和62年11月号,第36巻第410号の第1157〜1161頁の『気相法によるマグネシア粉末の合成とその性質』等に記載されている。
この酸化マグネシウム結晶体は、後述するように、PDPにおける放電遅れ時間の短縮などの放電特性の改善と、画像の輝度の向上に寄与する。
そして、気相法酸化マグネシウム単結晶体は、他の方法によって得られるものと比較すると、高純度であるとともに微粒子が得られ、さらに、粒子の凝集が少ないなどの特徴を備えている。
この実施例においては、BET法によって測定した平均粒径が500オングストローム以上、好ましくは、2000オングストローム以上の粒径を有する気相法酸化マグネシウム単結晶体が用いられる。
図6は、結晶酸化マグネシウム層5が、気相法酸化マグネシウム単結晶体pを含むペーストを、スクリーン印刷またはオフセット印刷,ディスペンサ法、ロールコート法などの方法によって誘電体層3(および嵩上げ誘電体層4)の表面に塗布することにより形成されている場合の構成を示している。
図7は、結晶酸化マグネシウム層5が、気相法酸化マグネシウム単結晶体pをスプレ法または静電塗布法などの方法によって誘電体層3(および嵩上げ誘電体層4)の表面に付着させることにより形成された粉末層によって構成されている例を示している。
この場合には、例えば、気相法酸化マグネシウム単結晶体pを媒体(例えば特定のアルコール等)に分散させた懸濁液を、エアースプレ法により、スプレ・ガンを用いて誘電体層3(および嵩上げ誘電体層4)の表面に吹き付けて気相法酸化マグネシウム単結晶体pを付着させることにより、粉末層が形成される。
なお、上記は、誘電体層3および嵩上げ誘電体層4の表面に結晶酸化マグネシウム層5のみが形成されている例であるが、図8に示されるように、先ず、誘電体層3(および嵩上げ誘電体層4)の表面に蒸着酸化マグネシウム層5Aを形成し、この蒸着酸化マグネシウム層5A上に、気相法酸化マグネシウム単結晶体pをスプレ法または静電塗布法などによって付着させて結晶酸化マグネシウム層5を形成した二層構造に構成しても良い。
また、図8において、蒸着酸化マグネシウム層5Aと結晶酸化マグネシウム層5を逆にして、結晶酸化マグネシウム層5上に蒸着酸化マグネシウム層5Aを形成するようにしても良い。
上記のPDPは、画像形成のためのリセット放電およびアドレス放電,維持放電が放電セルC内において行われる。
すなわち、リセット期間に行電極対(X,Y)の対になっている各透明電極Xa,Ya間で一斉にリセット放電が行われて、誘電体層3の各放電セルCに隣接している部分の壁電荷が全て消去(または、全ての部分に壁電荷が形成)され、次のアドレス期間において、行電極Yの透明電極Yaと列電極Dとの間で選択的にアドレス放電が発生されて、形成しようとする画像に対応して誘電体層3に壁電荷が形成されている発光セルと誘電体層3の壁電荷が消去された消灯セルがパネル面に分布され、この後、次の維持放電期間において、発光セル内において行電極対(X,Y)の対になっている透明電極Xa,Ya間で維持放電が行われる。
そして、この維持放電によって、放電ガス中のキセノンから波長142nm(共鳴線)および172nm(分子線)の真空紫外線が放射され、この真空紫外線によって、赤,緑,青の三原色に色分けされた蛍光体層7が励起されて発光することにより、パネル面に画像が形成される。
結晶酸化マグネシウム層5は、これに含まれる酸化マグネシウム結晶体が、放電セルC内において行われる放電によって放電ガスから発生する電子線によって励起されることにより、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光を行うとともに、この放電セルC内における放電によって放電ガス中のキセノンから発生する波長142nmおよび172nmの真空紫外線によって励起されて、図9に示されるように、230〜250nmにピーク波長を有する紫外線を放射する。
なお、この230〜250nmにピーク波長を有する紫外線は、235nm紫外線発光強度を示す図10および単結晶酸化マグネシウム(気相法酸化マグネシウム単結晶体)の発光スペクトルを示す図11に示されるように、通常の蒸着法によって形成される酸化マグネシウム層(例えば、図8の蒸着酸化マグネシウム層5A)からは励起されない。
図12は、PDPが通常の蒸着法によって形成される酸化マグネシウム層(例えば、図8の蒸着酸化マグネシウム層5A)のみを備えている場合(グラフa)と、結晶酸化マグネシウム層5のみを備えている場合(グラフb)と、通常の蒸着法によって形成される酸化マグネシウム層(例えば、図8の蒸着酸化マグネシウム層5A)と結晶酸化マグネシウム層5の二層構造を備えている場合(グラフc)の放電遅れ時間を、所定の休止時間毎に計測して比較したものである。
この図12において、通常の蒸着法によって形成される酸化マグネシウム層のみを備えている場合(グラフa)と比較すると、結晶酸化マグネシウム層5のみを備えている場合(グラフb)、および、通常の蒸着法によって形成される酸化マグネシウム層と結晶酸化マグネシウム層5の二層構造を備えている場合(グラフc)の何れの場合も、放電遅れ時間が著しく短くなっている。
このことから、この放電遅れ時間の短縮は、結晶酸化マグネシウム層5を形成している酸化マグネシウム結晶体(具体的には、気相法酸化マグネシウム単結晶体)に起因していることが分かる。
この酸化マグネシウム結晶体による放電遅れ時間の短縮のメカニズムは、以下のように推測される。
すなわち、この結晶酸化マグネシウム層5による放電特性の改善は、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光を行う気相法酸化マグネシウム単結晶体が、そのピーク波長に対応したエネルギ準位を有し、そのエネルギ準位によってリセット放電時に発生する電子を長時間(数msec以上)トラップすることができ、この電子がアドレス電圧の印加によって形成される電界により取り出されることで、放電開始に必要な初期電子が迅速かつ十分に得られて放電開始が早められ、これによって、放電遅れ時間が短縮されると推定される。
この酸化マグネシウム結晶体による放電特性の改善効果(放電遅れ時間の短縮)は、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光の強度が大きくなるほど大きくなる。
図13は、酸化マグネシウム結晶体のCL発光強度と放電遅れとの相関関係を示すグラフである。
なお、この図13のデータは、結晶酸化マグネシウム層5を形成する酸化マグネシウム結晶体に1kV程度の電子線を直接照射して測定したものである。
この図13から、結晶酸化マグネシウム層5から励起される235nmのCL発光の強度が強いほど、放電遅れ時間が短縮されることが分かる。
この酸化マグネシウム結晶体のCL発光による放電遅れ時間の短縮効果は、酸化マグネシウム結晶体の粒径との間にも相関関係を有しており、この酸化マグネシウム結晶体の粒径が大きいほどCL発光強度が大きくなって、放電遅れ時間が短縮される。
これは、例えば、大きな粒径の気相法酸化マグネシウム単結晶体を形成しようとする場合には、マグネシウム蒸気を発生させる際の加熱温度を高くする必要があるため、マグネシウムと酸素が反応する火炎の長さが長くなって、この火炎と周囲との温度差が大きくなり、これによって、粒径の大きい気相法酸化マグネシウム単結晶体ほど上述したようなCL発光のピーク波長に対応したエネルギ準位が多数形成されるからと考えられる。
また、立方体の多重結晶構造の気相法酸化マグネシウム単結晶体については、結晶面欠陥を多く含んでいて、その面欠陥エネルギ準位の存在が放電特性の改善に寄与しているとも推測される。
前述したように、維持放電によって、放電ガス中のキセノン(Xe)から146nm(共鳴線)または172nm(分子線)の真空紫外線が放射され、この真空紫外線によって、PDPの赤,緑,青の蛍光体層9が励起されて、それぞれの色の蛍光体層9からの発光が行われる。
このとき、この維持放電によって放電ガス中のキセノン(Xe)から放射される真空紫外線によって、前述したように、結晶酸化マグネシウム層5から、230〜250nmの範囲にピーク波長を有する紫外線が放射される(図9ないし11参照)。
この単結晶酸化マグネシウム層5から放射される230〜250nmのピーク波長を有する紫外線は、図14に示されるように、赤,緑,青の各蛍光体層9をそれぞれ効率良く励起して発光させるのに最適の波長域であり、蛍光体層9が、放電ガス中のキセノン(Xe)から放射される真空紫外線に加えて、この結晶酸化マグネシウム層5から放射される230〜250nmのピーク波長を有する紫外線によっても励起されて発光することにより、その分、PDPの画像の輝度が増加する。
なお、図14中、グラフAが、赤色蛍光体((Y,Gd)BO:Eu3+)の相対発光速度を示し、グラフBが、緑色蛍光体(ZnSiO:Mn2+)の相対発光速度を示し、グラフCが、青色蛍光体(BaMgAl1017:Eu2+)の相対発光速度を示し、さらに、グラフDが、酸化マグネシウム単結晶の発光特性を示している。
図15は、上記のような蛍光体層9が発光される仕組みを図にしたもので、この図からも、PDPに230〜250nmのピーク波長を有する紫外線を放射する結晶酸化マグネシウム層5が設けられていることによって、従来のように蛍光体層9が放電ガス中のキセノン(Xe)から放射される真空紫外線のみによって発光する場合と比較して、蛍光体層9からの発光量が増加してPDPの輝度が増大されることが分かる。
図16は、青の蛍光体層9を形成するBAM系青色蛍光材における紫外線の励起波長と相対発光効率との関係を示したグラフである。
この図16において、グラフEが、紫外線照射開始時におけるBAM系青色蛍光材の相対発光効率を示しており、グラフFが、紫外線を所定時間照射した後におけるBAM系青色蛍光材の相対発光効率を示している。
この図16から分かるように、放電ガス中のキセノン(Xe)から放射される146nmおよび172nmの真空紫外線では、キセノンから放射される真空紫外線照射によるBAM系青色蛍光材の劣化によって発光効率が低下するが、結晶酸化マグネシウム層5から放射される230〜250nmの波長の紫外線では、キセノンから放射される真空紫外線照射によってBAM系青色蛍光材が劣化した場合でも、このBAM系青色蛍光材の発光効率はほとんど低下しない。
このように、このPDPは、結晶酸化マグネシウム層5が設けられたことによって青の蛍光体層9の発光効率が維持されるので、常に高輝度な画像を表示することが出来るようになる。
なお、結晶酸化マグネシウム層5は、前述したように、必ずしも薄膜酸化マグネシウム層4の全面を覆うように形成する必要はなく、例えば行電極X,Yの透明電極Xa,Yaに対向する部分や逆に透明電極Xa,Yaに対向する部分以外の部分などのように、部分的にパターン化して形成するようにしても良い。
なお、上記においては、この発明を、前面ガラス基板に行電極対を形成して誘電体層によって被覆し背面ガラス基板側に蛍光体層と列電極を形成した反射型交流PDPに適用した例について説明を行ったが、この発明は、前面ガラス基板側に行電極対と列電極を形成して誘電体層によって被覆し、背面ガラス基板側に蛍光体層を形成した反射型交流PDPや、前面ガラス基板側に蛍光体層を形成し背面ガラス基板側に行電極対および列電極を形成して誘電体層によって被覆した透過型交流PDP,放電空間の行電極対と列電極の交差部分に放電セルが形成される三電極型交流PDP,放電空間の行電極と列電極の交差部分に放電セルが形成される二電極型交流PDPなどの種々の形式のPDPに適用することが出来る。
この発明の実施形態の実施例を示す正面図である。 図1のV−V線における断面図である。 図1のW−W1線における断面図である。 立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体のSEM写真像を示す図である。 立方体の多重結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体のSEM写真像を示す図である。 同実施例において酸化マグネシウム単結晶体粉末を含むペーストの塗布によって形成された単結晶酸化マグネシウム層の状態を示す断面図である。 同実施例において酸化マグネシウム単結晶体粉末の付着による粉末層によって形成された単結晶酸化マグネシウム層の状態を示す断面図である。 同実施例において単結晶酸化マグネシウム層が蒸着によって形成された酸化マグネシウム層上に形成されている変形例を示す断面図である。 酸化マグネシウム単結晶体の紫外線発光強度を示すグラフである。 酸化マグネシウム単結晶体と蒸着酸化マグネシウムの紫外線発光強度の比較を示すグラフである。 酸化マグネシウム単結晶体の発光スペクトルを示すグラフである。 同実施例における放電遅れの改善の状態を示すグラフである。 酸化マグネシウム単結晶体からの235nmのCL発光のピーク強度と放電遅れとの関係を示すグラフである。 蛍光体層の色毎の紫外線による相対発光速度を示すグラフである。 同実施例において蛍光体層が発光される仕組みを示す説明図である。 青色蛍光材の相対発光効率を示すグラフである。
符号の説明
1 …前面ガラス基板(前面基板)
3 …誘電体層
5 …結晶酸化マグネシウム層
5A …蒸着酸化マグネシウム層
6 …背面ガラス基板(背面基板)
9 …蛍光体層
C …放電セル(単位発光領域)
X,Y …行電極
D …列電極(電極)
p …気相法酸化マグネシウム単結晶体

Claims (9)

  1. 放電空間を介して前面基板と背面基板が対向配置され、この前面基板と背面基板との間に、複数の行電極対と、この行電極対に対して交差する方向に延びて行電極対との各交差部分の放電空間に単位発光領域を形成する複数の列電極と、蛍光体層が設けられて、放電空間内に放電ガスが封入されているプラズマディスプレイパネルにおいて、
    放電ガスから放射される紫外線により励起されることにより230〜250nmにピーク波長を有する紫外線を放射する粒子径を有する酸化マグネシウム結晶体が、前記前面基板と前記背面基板との間の少なくとも単位発光領域に面する部分に形成された結晶酸化マグネシウム層が設けられ、
    この結晶酸化マグネシウム層から放射される紫外線および放電ガスから放射される紫外線によって励起されることにより蛍光体層が発光することを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
  2. 前記放電ガスがキセノンガスを含み、放電ガス中で発生される放電によってキセノンガスから放射される紫外線により励起されて、酸化マグネシウム結晶体が230〜250nmの波長を主とする紫外線を放射する請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記放電ガスが、キセノンガスを10体積パーセント以上含んでいる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記蛍光体層が、赤色蛍光体層および緑色蛍光体層,青色蛍光体層からなり、この青色蛍光体層がBaMgAl 10 17 :Eu 2+ を含んでいる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記酸化マグネシウム結晶体が、マグネシウムが加熱されて発生される蒸気が気相酸化されることによって生成される単結晶体である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. 前記酸化マグネシウム結晶体が、粒径が2000オングストローム以上の単結晶体を含んでいる請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  7. 前記酸化マグネシウム結晶体が、電子線によって励起されることによって波長域200〜300nm内にピークを有するカソードルミネッセンス発光を行う請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  8. 前記結晶酸化マグネシウム層が、行電極対を被覆する誘電体層上に形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  9. 前記結晶酸化マグネシウム層が、行電極対を被覆する誘電体層上に蒸着によって形成された他の酸化マグネシウム層上に形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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