JP4650824B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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Description

この発明は、プラズマディスプレイパネルの構成に関する。
面放電方式交流型プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、一般的に、放電ガスが封入されている放電空間を挟んで互いに対向される二枚のガラス基板のうち、一方のガラス基板に行方向に延びる行電極対が列方向に並設され、他方のガラス基板に列方向に延びる列電極が行方向に並設されていて、放電空間の行電極対と列電極がそれぞれ交差する部分に、マトリックス状に単位発光領域(放電セル)が形成されている。
そして、このPDPには、行電極や列電極を被覆するために形成された誘電体層上の単位発光領域内に面する位置に、誘電体層の保護機能と単位発光領域内への2次電子放出機能とを有する酸化マグネシウム(MgO)膜が形成されている。
このような従来のPDPの酸化マグネシウム膜の形成は、スクリーン印刷法によって酸化マグネシウム粉末を混入したペーストを誘電体層上に塗布することにより行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この従来の酸化マグネシウム膜は、水酸化マグネシウムが熱処理されて精製された多結晶片葉形の酸化マグネシウムが混入されたペーストがスクリーン印刷法によって塗布されることにより形成されるものであって、PDPの放電特性を、蒸着法によって形成された酸化マグネシウム膜とほとんど同じかまたは僅かに向上させる程度に過ぎないものである。
このため、放電特性をより一層向上させることが出来る保護膜をPDPに形成するようにすることが強く要望されている。
特開平6−325696号公報
この発明は、上記のような従来の酸化マグネシウム膜が形成されるPDPにおける問題点を解決することをその解決課題の一つとしている。
第1の発明(請求項1に係る発明)によるプラズマディスプレイパネルは、上記課題を達成するために、放電空間を介して対向する一対の基板と、この一対の基板の何れかに形成された放電電極と、この放電電極を被覆する誘電体層と、この誘電体層を被覆する保護層を備えたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記保護層が、粒径が2000オングストローム以上であって、電子線によって励起されて波長200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う酸化マグネシウム結晶体を含む酸化マグネシウム層を有し、前記放電空間内に、ネオン・ガスおよびキセノン・ガス,前記ネオン・ガスに対する濃度比が0.5〜1.5であるヘリウム・ガスが混合された三元系放電ガスが封入されていることを特徴としている。
この発明によるPDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間に、行方向に延びる行電極対と、列方向に延びて行電極対との交差部分の放電空間に放電セルを形成する列電極が設けられ、この行電極対または列電極を被覆する誘電体層の表面の少なくとも放電セルに面する部分に、蒸着またはスパッタリングによって形成される薄膜酸化マグネシウム層と、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う酸化マグネシウム結晶体を含む酸化マグネシウム層とが積層された二重構造の保護層が形成され、さらに、放電空間内にネオン・ガスおよびキセノン・ガス,ヘリウム・ガスが混合された三元系放電ガスが封入されているPDPをその最良の実施形態としている。
この実施形態におけるPDPは、誘電体層の積層構造の保護層を構成する一方の酸化マグネシウム層が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う酸化マグネシウム結晶体を含んでいることにより、PDPにおける放電確率や放電遅れなどの放電特性が改善されて、良好な放電特性を得ることが出来る。
そして、さらに、放電空間内にネオン・ガスおよびキセノン・ガス,ヘリウム・ガスが混合された三元系放電ガスが封入されていることによって、上記のようなカソード・ルミネッセンス発光を行う酸化マグネシウム層による統計放電遅れ時間の短縮効果に加えて、形成遅れ時間も短縮することが出来る。
図1ないし3は、この発明によるPDPの実施形態の一実施例を示しており、図1はこの実施例におけるPDPを模式的に示す正面図、図2は図1のV−V線における断面図、図3は図1のW−W線における断面図である。
この図1ないし3に示されるPDPは、表示面である前面ガラス基板1の背面に、複数の行電極対(X,Y)が、前面ガラス基板1の行方向(図1の左右方向)に延びるように平行に配列されている。
行電極Xは、T字形状に形成されたITO等の透明導電膜からなる透明電極Xaと、前面ガラス基板1の行方向に延びて透明電極Xaの幅狭の基端部に接続された金属膜からなるバス電極Xbとによって構成されている。
行電極Yも同様に、T字形状に形成されたITO等の透明導電膜からなる透明電極Yaと、前面ガラス基板1の行方向に延びて透明電極Yaの幅狭の基端部に接続された金属膜からなるバス電極Ybとによって構成されている。
この行電極XとYは、前面ガラス基板1の列方向(図1の上下方向)に交互に配列されており、バス電極XbとYbに沿って並列されたそれぞれの透明電極XaとYaが、互いに対となる相手の行電極側に延びて、透明電極XaとYaの幅広部の頂辺が、それぞれ所要の幅の放電ギャップgを介して互いに対向されている。
前面ガラス基板1の背面には、列方向において隣接する行電極対(X,Y)の互いに背中合わせになったバス電極XbとYbの間に、このバス電極Xb,Ybに沿って行方向に延びる黒色または暗色の光吸収層(遮光層)2が形成されている。
さらに、前面ガラス基板1の背面には、行電極対(X,Y)を被覆するように誘電体層3が形成されており、この誘電体層3の背面には、互いに隣接する行電極対(X,Y)の背中合わせに隣り合うバス電極XbおよびYbに対向する位置およびこの隣り合うバス電極XbとYbの間の領域部分に対向する位置に、誘電体層3の背面側に突出する嵩上げ誘電体層3Aが、バス電極Xb,Ybと平行に延びるように形成されている。
そして、この誘電体層3と嵩上げ誘電体層3Aの背面側には、蒸着法またはスパッタリングによって形成された薄膜の酸化マグネシウム層(以下、薄膜酸化マグネシウム層という)4が形成されていて、誘電体層3と嵩上げ誘電体層3Aの背面の全面を被覆している。
この薄膜酸化マグネシウム層4の背面側には、後述するような、電子線によって励起されることにより波長域200〜300nm内(特に、235nm付近,230〜250nm内)にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光(CL発光)を行う酸化マグネシウム結晶体を含む酸化マグネシウム層(以下、結晶酸化マグネシウム層という)5が形成されている。
この結晶酸化マグネシウム層5は、薄膜酸化マグネシウム層4の背面の全面または一部、例えば、後述する放電セルに面する部分に形成されている(図示の例では、結晶酸化マグネシウム層5が薄膜酸化マグネシウム層4の背面の全面に形成されている例が示されている)。
一方、前面ガラス基板1と平行に配置された背面ガラス基板6の表示側の面上には、列電極Dが、各行電極対(X,Y)の互いに対となった透明電極XaおよびYaに対向する位置において行電極対(X,Y)と直交する方向(列方向)に延びるように、互いに所定の間隔を開けて平行に配列されている。
背面ガラス基板6の表示側の面上には、さらに、列電極Dを被覆する白色の列電極保護層(誘電体層)7が形成され、この列電極保護層7上に、隔壁8が形成されている。
この隔壁8は、各行電極対(X,Y)のバス電極XbとYbに対向する位置においてそれぞれ行方向に延びる一対の横壁8Aと、隣接する列電極Dの間の中間位置において一対の横壁8A間を列方向に延びる縦壁8Bとによって略梯子形状に形成されており、各隔壁8が、隣接する他の隔壁8の互いに背中合わせに対向する横壁8Aの間において行方向に延びる隙間SLを挟んで、列方向に並設されている。
そして、この梯子状の隔壁8によって、前面ガラス基板1と背面ガラス基板6の間の放電空間Sが、各行電極対(X,Y)において互いに対になっている透明電極XaとYaに対向する部分に形成される放電セルC毎に、それぞれ方形に区画されている。
放電空間Sに面する隔壁8の横壁8Aおよび縦壁8Bの側面と列電極保護層7の表面には、これらの五つの面を全て覆うように蛍光体層9が形成されており、この蛍光体層9の色は、各放電セルC毎に赤,緑,青の三原色が行方向に順に並ぶように配列されている。
嵩上げ誘電体層3Aは、この嵩上げ誘電体層3Aを被覆している結晶酸化マグネシウム層5(または、結晶酸化マグネシウム層5が薄膜酸化マグネシウム層4の背面の放電セルCに対向する部分にのみ形成されている場合には、薄膜酸化マグネシウム層4)が隔壁8の横壁8Aの表示側の面に当接される(図2参照)ことによって、放電セルCと隙間SLの間をそれぞれ閉じているが、縦壁8Bの表示側の面には当接されておらず(図3参照)、その間に隙間rが形成されて、行方向において隣接する放電セルC間がこの隙間rを介して互いに連通されている。
放電空間S内には、後述するようなネオン・ガスおよびキセノン・ガス,ヘリウム・ガスが混合された三元系放電ガスが封入されている。
上記結晶酸化マグネシウム層5の形成材料となる電子線によって励起されることにより波長域200〜300nm内(特に、235nm付近,230〜250nm内)にピークを有するCL発光を行う酸化マグネシウム結晶体とは、例えば、マグネシウムを加熱して発生するマグネシウム蒸気を気相酸化して得られるマグネシウムの単結晶体(以下、このマグネシウムの単結晶体を気相法酸化マグネシウム単結晶体という)を含み、この気相法酸化マグネシウム単結晶体には、例えば、図4のSEM写真像に示されるような、立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体と、図5のSEM写真像に示されるような、立方体の結晶体が互いに嵌り込んだ構造(すなわち、立方体の多重結晶構造)を有する酸化マグネシウム単結晶体が含まれる。
そして、このような気相法酸化マグネシウム単結晶体が、スプレ法や静電塗布法などの方法によって誘電体層3および嵩上げ誘電体層3Aを被覆している薄膜酸化マグネシウム層4の背面側の表面に付着されることによって、単結晶酸化マグネシウム層5が形成される。
この気相法酸化マグネシウム単結晶体は、後述するように、放電遅れの減少などの放電特性の改善に寄与する。
そして、この気相法酸化マグネシウム単結晶体は、他の方法によって得られる酸化マグネシウムと比較すると、高純度であるとともに微粒子が得られ、さらに、粒子の凝集が少ないなどの特徴を備えている。
この実施例においては、BET法によって測定した平均粒径が500オングストローム以上(好ましくは、2000オングストローム以上)の気相法酸化マグネシウム単結晶体が用いられる。
なお、気相法酸化マグネシウム単結晶体の合成については、『材料』昭和62年11月号,第36巻第410号の第1157〜1161頁の『気相法によるマグネシア粉末の合成とその性質』等に記載されている。
なお、この実施例においては、誘電体層3および嵩上げ誘電体層3Aの背面に薄膜酸化マグネシウム層4が形成され、この薄膜酸化マグネシウム層4の背面に結晶酸化マグネシウム層5が形成されている例について説明を行ってゆくが、誘電体層3および嵩上げ誘電体層3Aの背面に結晶酸化マグネシウム層5を形成した後、この結晶酸化マグネシウム層5の背面に薄膜酸化マグネシウム層4を形成するようにしても良い。
図6は、誘電体層3の背面に薄膜酸化マグネシウム層4が形成され、この薄膜酸化マグネシウム層4の背面に、気相法酸化マグネシウム単結晶体の粉末がスプレ法や静電塗布法などの方法によって付着されて結晶酸化マグネシウム層5が形成されている状態を示している。
また、図7は、誘電体層3の背面に気相法酸化マグネシウム単結晶体の粉末がスプレ法や静電塗布法などの方法によって付着されて結晶酸化マグネシウム層5が形成された後、薄膜酸化マグネシウム層4が形成されている状態を示している。
上記のPDPは、画像形成のためのリセット放電およびアドレス放電,維持放電が放電セルC内において行われる。
そして、アドレス放電の前に行われるリセット放電が発生される際に、放電セルC内に結晶酸化マグネシウム層5が形成されていることにより、リセット放電によるプライミング効果が長く持続して、これによりアドレス放電が高速化される。
上記PDPは、図8および9に示されるように、結晶酸化マグネシウム層5が、上述したように、気相法酸化マグネシウム単結晶体によって形成されていることにより、放電によって発生する電子線の照射によって、結晶酸化マグネシウム層5に含まれる粒径の大きな気相法酸化マグネシウム単結晶体から、300〜400nmにピークを有するCL発光に加えて、波長域200〜300nm内(特に、235nm付近,230〜250nm内)にピークを有するCL発光が励起される。
この235nmにピークを有するCL発光は、図10に示されるように、通常の蒸着法によって形成される酸化マグネシウム層(この実施例における薄膜酸化マグネシウム層4)からは励起されず、300〜400nmにピークを有するCL発光のみが励起される。
また、図8および9から分かるように、波長域200〜300nm内(特に、235nm付近,230〜250nm内)にピークを有するCL発光は、気相法酸化マグネシウム単結晶体の粒径が大きくなるほどそのピーク強度が大きくなる。
この波長域200〜300nmにピークを有するCL発光の存在によって、放電特性の改善(放電遅れの減少,放電確率の向上)がさらに図られるものと推測される。
すなわち、この結晶酸化マグネシウム層5による放電特性の改善は、波長域200〜300nm内(特に、235nm付近,230〜250nm内)にピークを有するCL発光を行う気相法酸化マグネシウム単結晶体が、そのピーク波長に対応したエネルギ準位を有し、そのエネルギ準位によって電子を長時間(数msec以上)トラップすることができ、この電子が電界によって取り出されることで、放電開始に必要な初期電子が得られることによって為されるものと推測される。
そして、この気相法酸化マグネシウム単結晶体による放電特性の改善効果が、波長域200〜300nm内(特に、235nm付近,230〜250nm内)にピークを有するCL発光の強度が大きくなるほど大きくなるのは、CL発光強度と気相法酸化マグネシウム単結晶体の粒径との間にも相関関係があるためである。
すなわち、大きな粒径の気相法酸化マグネシウム単結晶体を形成しようとする場合には、マグネシウム蒸気を発生させる際の加熱温度を高くする必要があるため、マグネシウムと酸素が反応する火炎の長さが長くなり、この火炎と周囲との温度差が大きくなることによって、粒径の大きい気相法酸化マグネシウム単結晶体ほど、上述したようなCL発光のピーク波長(例えば、235nm付近,230〜250nm内)に対応したエネルギ準位が多数形成されるものと考えられる。
また、立方体の多重結晶構造の気相法酸化マグネシウム単結晶体については、結晶面欠陥を多く含んでいて、その面欠陥エネルギ準位の存在が放電確率の改善に寄与しているとも推測される。
なお、結晶酸化マグネシウム層5を形成する気相法酸化マグネシウム単結晶体粉末の粒子径(DBET)は、窒素吸着法によってBET比表面積(s)が測定され、この値から次式によって算出される。
BET=A/s×ρ
A:形状計数(A=6)
ρ:マグネシウムの真密度
図11は、CL発光強度と放電遅れとの相関関係を示すグラフである。
この図11から、結晶酸化マグネシウム層5から励起される235nmのCL発光によって、PDPでの放電遅れが短縮されることが分かり、さらに、この235nmのCL発光強度が強いほど放電遅れが短縮されることが分かる。
図12は、上記のようにPDPが薄膜酸化マグネシウム層4と結晶酸化マグネシウム層5の二層構造を備えている場合(グラフa)と、従来のPDPのように蒸着法によって形成された酸化マグネシウム層のみが形成されている場合(グラフb)の放電遅れ特性を比較したものである。
この図12から分かるように、PDPが薄膜酸化マグネシウム層4と結晶酸化マグネシウム層5の二層構造を備えていることによって、放電遅れ特性が、従来の蒸着法によって形成された薄膜酸化マグネシウム層のみを備えているPDPに比べて、著しく改善されていることが分かる。
ここで、上記PDPにおいて、図13に示されるような統計放電遅れ時間(放電のばらつき時間)と形成放電遅れ時間(駆動パルス印加開始時点から放電が開始するまでの遅れ時間)について、結晶酸化マグネシウム層5が放電セルC内に面するように設けられることのみによっては、統計放電遅れ時間は短縮されるが、形成放電遅れ時間は、薄膜酸化マグネシウム層4のみが形成されている場合とあまり変化はない。
このため、この実施例におけるPDPは、従来のPDPの放電空間内に封入される放電ガスがキセノン・ガスとネオン・ガスの二元混合ガスであったのに対して、放電空間内に、ネオン・ガスおよびキセノン・ガス,ヘリウム・ガスが混合された三元系放電ガスが封入されている。
このように、放電ガス中にヘリウム・ガスが混合されていることによって、結晶酸化マグネシウム層5による統計放電遅れ時間の短縮効果が維持されたまま、形成放電遅れ時間が短縮され、発光効率の改善も図られる。
この放電ガス中のヘリウム・ガスのネオン・ガスに対する濃度比(He/Ne)は、0.5〜1.5、好ましくは、0.5〜1.0の範囲に設定される。
そして、放電ガス中のキセノン・ガスの比率をαとした場合に、放電ガスの最適な構成比率は、
Xe: α
Ne: (1−α)×2/3 〜 (1−α)×1/2
He: (1−α)×1/3 〜 (1−α)×1/2
となる。
図14は、ヘリウム・ガスのネオン・ガスに対する濃度比(He/Ne)と放電確率との関係を示すグラフである。
ここで、統計放電遅れと放電確率とは逆の関係にあり、放電確率大=統計放電遅れ小(放電のばらつきが小),放電確率小=統計放電遅れ大(放電のばらつきが大)という関係にある。
この図14中、a1は、ある規準値のキセノン濃度Aの場合を示し、b1は、Aの1.15倍のキセノン濃度の場合を示している。
図15は、ヘリウム・ガスのネオン・ガスに対する濃度比(He/Ne)と形成放電遅れ時間との関係を示すグラフである。
この図15中、a2は、ある規準値のキセノン濃度Aの場合を示し、b2は、Aの1.15倍のキセノン濃度の場合を示している。
この図14および15から、放電ガス中にヘリウム・ガスが所定量混合されていることによって、放電確率(統計放電遅れ時間)がさらに改善されるとともに、形成放電遅れ時間も短縮され、ヘリウム・ガスのネオン・ガスに対する濃度比(He/Ne)が0.5〜1.0の範囲の時に、放電確率が最大(統計放電遅れ時間が最短)で、形成放電遅れ時間も最短になることが分かる。
そして、この放電確率(統計放電遅れ時間)と形成放電遅れ時間が改善される結果、例えば、アドレス放電の高速化が実現される。
以上のように、上記PDPは、蒸着法等によって形成された従来の薄膜酸化マグネシウム層4に加えて、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う気相法酸化マグネシウム単結晶体によって形成された結晶酸化マグネシウム層5が積層されて形成されていることによって、放電遅れなどの放電特性の改善が図られて、良好な放電特性を備えることが出来る。
そして、放電ガスとして、放電空間S内に、従来のキセノン・ガスとネオン・ガスの二元混合ガスに替えて、ネオン・ガスおよびキセノン・ガス,ヘリウム・ガスが混合された三元系放電ガスが封入されていることによって、結晶酸化マグネシウム層5の形成による統計放電遅れ時間の短縮効果に加えて、形成放電遅れ時間も短縮することが出来る。
結晶酸化マグネシウム層5は、前述したように、必ずしも薄膜酸化マグネシウム層4の全面を覆うように形成する必要はなく、例えば行電極X,Yの透明電極Xa,Yaに対向する部分や逆に透明電極Xa,Yaに対向する部分以外の部分などように、部分的にパターン化して形成するようにしても良い。
この結晶酸化マグネシウム層5を部分的に形成する場合には、結晶酸化マグネシウム層5の薄膜酸化マグネシウム層4に対する面積比は、例えば、0.1〜85パーセントに設定される。
また、上記の例において、薄膜酸化マグネシウム層を形成することなく、保護層を、結晶酸化マグネシウム層5による単層構造にしても良い。
なお、上記においては、この発明を、前面ガラス基板に行電極対を形成して誘電体層によって被覆し背面ガラス基板側に蛍光体層と列電極を形成した反射型交流PDPに適用した例について説明を行ったが、この発明は、前面ガラス基板側に行電極対と列電極を形成して誘電体層によって被覆し、背面ガラス基板側に蛍光体層を形成した反射型交流PDPや、前面ガラス基板側に蛍光体層を形成し背面ガラス基板側に行電極対および列電極を形成して誘電体層によって被覆した透過型交流PDP,放電空間の行電極対と列電極の交差部分に放電セルが形成される三電極型交流PDP,放電空間の行電極と列電極の交差部分に放電セルが形成される二電極型交流PDPなどの種々の形式のPDPに適用することが出来る。
また、上記においては、結晶酸化マグネシウム層5をスプレ法や静電塗布法などの方法によって付着させることにより形成する例について説明を行ったが、結晶酸化マグネシウム層5は、気相法酸化マグネシウム単結晶体を含有するペーストを、スクリーン印刷法またはオフセット印刷法,ディスペンサ法,インクジェット法,ロールコート法などの方法によって塗布することによって形成するようにしても良く、または、酸化マグネシウム結晶体を含有するペーストを支持フィルム上に塗布した後に乾燥させることによってフィルム状にし、これを薄膜酸化マグネシウム層上または誘電体層上にラミネートするようにしても良い。
この発明の実施形態における一実施例を示す正面図である。 図1のV−V線における断面図である。 図1のW−W線における断面図である。 立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体のSEM写真像を示す図である。 立方体の多重結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体のSEM写真像を示す図である。 同実施例において薄膜マグネシウム層上に結晶マグネシウム層が形成されている状態を示す断面図である。 同実施例において結晶マグネシウム層上に薄膜マグネシウム層が形成されている状態を示す断面図である。 同実施例において酸化マグネシウム単結晶体の粒径とCL発光の波長との関係を示すグラフである。 同実施例において酸化マグネシウム単結晶体の粒径と235nmのCL発光の強度との関係を示すグラフである。 蒸着法による酸化マグネシウム層からのCL発光の波長の状態を示すグラフである。 酸化マグネシウム単結晶体からの235nmのCL発光のピーク強度と放電遅れとの関係を示すグラフである。 保護層が蒸着法による酸化マグネシウム層のみによって構成されている場合と結晶マグネシウム層と蒸着法による薄膜マグネシウム層の二層構造になっている場合との放電遅れ特性の比較を示す図である。 放電遅れ時間の説明図である。 放電ガス中のHe/Ne比と放電確率の関係を示すグラフである。 放電ガス中のHe/Ne比と形成放電遅れ時間の関係を示すグラフである。
符号の説明
1 …前面ガラス基板(前面基板)
3 …誘電体層
4 …薄膜酸化マグネシウム層
5 …結晶酸化マグネシウム層(酸化マグネシウム層)
6 …背面ガラス基板(背面基板)
7 …列電極保護層(誘電体層)
C …放電セル
X,Y …行電極(放電電極)
D …列電極(放電電極)

Claims (5)

  1. 放電電空間を介して対向する一対の基板と、この一対の基板の何れかに形成された放電電極と、この放電電極を被覆する誘電体層と、この誘電体層を被覆する保護層を備えたプラズマディスプレイパネルにおいて、
    前記保護層が、粒径が2000オングストローム以上であって、電子線によって励起されて波長200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う酸化マグネシウム結晶体を含む酸化マグネシウム層を有し、
    前記放電空間内に、ネオン・ガスおよびキセノン・ガス,前記ネオン・ガスに対する濃度比が0.5〜1.5であるヘリウム・ガスが混合された三元系放電ガスが封入されている、
    ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
  2. 前記三元系放電ガス中におけるヘリウム・ガスのネオン・ガスに対する濃度比が0.5〜1.である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記酸化マグネシウム結晶体が、マグネシウムが加熱されて発生されたマグネシウム蒸気が気相酸化されることにより生成される酸化マグネシウム単結晶体である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記酸化マグネシウム結晶体が、230ないし250nmにピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記酸化マグネシウム結晶体が、立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体、または立方体の多重結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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