JP2008300232A - プラズマディスプレイパネルおよびその駆動方法 - Google Patents

プラズマディスプレイパネルおよびその駆動方法 Download PDF

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Abstract


【課題】PDPの放電特性の向上および製造コストの低廉化を図る。
【解決手段】前面ガラス基板1の背面に設けられた行電極対(X,Y)を被覆する誘電体層2または隔壁6が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含むMgO結晶体cが混合された誘電材料によって形成され、MgO結晶体cが誘電体層2の放電空間Sに面する位置に配置されている。
【選択図】図2

Description

この発明は、プラズマディスプレイパネルの構成およびその駆動方法に関する。
従来の面放電方式交流型プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)には、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間に、行方向に延びる行電極対と、列方向に延びて行電極対との交差部分の放電空間に放電セルを形成する列電極が設けられ、縦壁と横壁を備えて略格子形状に成形された隔壁によって放電空間が各放電セル毎に区画され、行電極対を被覆する誘電体層の表面が保護層によって被覆されていて、この保護層が、蒸着法またはスパッタリング法によって形成された薄膜酸化マグネシウム層と、電子線によって励起されることにより波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光(CL発光)を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む結晶酸化マグネシウム層とが積層された二層構造になっているものがある(例えば、特許文献1参照)。
この従来のPDPは、誘電体層の保護層を構成する結晶酸化マグネシウム層が酸化マグネシウム結晶体を含んでいることにより、PDPにおける放電確率や放電遅れが改善されて、良好な放電特性を得ることが出来るという特徴を備えている。
しかしながら、この従来のPDPでは、保護層が薄膜酸化マグネシウム層のみによって構成されていたそれまでのPDPに比べて、この薄膜酸化マグネシウム層上にさらに結晶酸化マグネシウム層が追加された構造になるので、前面ガラス基板側の形成層が増加して、放電セル内での放電による発光の透過率が減少し、これによって、PDPの輝度の低下を招くという問題が発生する虞がある。
さらに、この従来のPDPでは、製造工程において、それまでのPDPに比べて、この薄膜酸化マグネシウム層上にさらに結晶酸化マグネシウム層を形成するための工程が増加するため、生産コストの増加を招くという問題が生じる。
特開2006−59780号公報
この発明は、上記のような従来のPDPが有する問題点を解決することをその技術的課題の一つとしている。
第1の発明(請求項1に記載の発明)によるPDPは、上記課題を解決するために、放電空間を介して対向する一対の基板と、この一対の基板の一方の基板側に設けられた複数の行電極対およびこの行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に設けられて行電極対に対して交差する方向に延びるとともに行電極対と交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域を形成する複数の列電極と、一対の基板の間に設けられて放電空間を各単位発光領域毎に区画する隔壁とを備えているPDPにおいて、前記誘電体層と隔壁のうちの少なくとも一方が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されていることを特徴としている。
第2の発明(請求項12に記載の発明)によるPDPの駆動方法は、前記課題を解決するために、放電空間を介して対向する一対の基板と、この一対の基板の一方の基板側に設けられた複数の行電極対およびこの行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に設けられて行電極対に対して交差する方向に延びるとともに行電極対と交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域を形成する複数の列電極と、一対の基板の間に設けられて放電空間を各単位発光領域毎に区画する隔壁とを備え、誘電体層と隔壁のうちの少なくとも一方が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されているPDPの駆動方法であって、前記行電極対を構成する一方の行電極に電圧パルスが印加されるとともに、この電圧パルスが印加された一方の行電極に対して列電極の電位が相対的に負極側に設定されることによって、単位発光領域内において列電極と一方の行電極との間に対向放電が発生させる行程が含まれていることを特徴としている。
この発明によるPDPは、放電空間を介して対向する前面基板および背面基板と、前面基板側に設けられた複数の行電極対およびこの行電極対を被覆する誘電体層と、背面基板側に設けられて行電極対に対して交差する方向に延びるとともに行電極対と交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域を形成する複数の列電極と、一対の基板の間に設けられて放電空間を各単位発光領域毎に区画する隔壁とを備え、誘電体層と隔壁のうちの少なくとも一方が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されているPDPをその最良の実施形態としている。
この実施形態によるPDPは、行電極対を被覆する誘電体層を形成する誘電材料と隔壁を形成する誘電体材料の少なくとも一方に、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合されて、この誘電体層または隔壁の少なくとも一方が初期電子と二次電子放出機能を保持するようになっていることによって、従来のように誘電体層上に設けられた二次電子放出層を省略することが可能になり、これによって、PDPの製造工程における工程数を削減して製品の低廉化を図ることが出来るようになるとともに、誘電体層と隔壁の少なくとも一方に混合された酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材によって、単位発光領域内で発生される各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性を大幅に向上させることが出来る。
上記実施形態のPDPにおいて、誘電体層の隣接する単位発光領域の間の境界部分に対向する位置に、この誘電体層から他方の基板側に突出する嵩上げ誘電体層を、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成するのが好ましい。
これによって、単位発光領域内で発生される各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性をさらに大幅に向上させることが出来る。
さらに、前記実施形態のPDPにおいて、誘電体層と隔壁の双方を、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成するのが好ましい。
これによって、単位発光領域内で発生される各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性をさらに大幅に向上させることが出来る。
さらに、前記実施形態のPDPにおいて、単位発光領域内の蛍光体層を、それぞれ、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された蛍光材料によって形成したり、また、誘電体層の放電空間側の面上に、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材によって、誘電体層の放電空間側の面を被覆する保護層を形成するようにするのが好ましい。
これによって、単位発光領域内で発生される各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性をさらに大幅に向上させることが出来る。
前記実施形態のPDPにおいて、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が、誘電体層や嵩上げ誘電体層,隔壁の放電空間に面する位置に配置されるようにするのが好ましい。
これによって、二次電子放出材によるPDPの放電特性の向上効果が、さらに大きくなる。
前記実施形態のPDPにおいて、二次電子放出材に混合される酸化マグネシウム結晶体は、230nm〜250nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する気相酸化法によって生成された酸化マグネシウム単結晶体が好ましく、さらに、2000オングストローム以上の粒径を有していることが好ましい。
さらに、前記実施形態のPDPにおいて、二次電子放出材として酸化マグネシウムを用いるのが好ましい。
この発明によるPDPの駆動方法は、前記実施形態のPDPにおいて、行電極対を構成する一方の行電極に電圧パルスを印加し、この電圧パルスが印加された一方の行電極に対して列電極の電位を相対的に負極側に設定することによって、単位発光領域内において列電極と一方の行電極との間に陰列電極放電による対向放電を発生させる行程を含んでいるPDPの駆動方法を最良の実施形態としている。
この実施形態のPDPの駆動方法によれば、単位発光領域内で対向放電によって発生されるリセット放電やアドレス放電が陰列電極放電によって行われることにより、隔壁に混合された酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材による単位発光領域内への初期電子と二次電子の放出効率が向上される。
図1ないし3は、この発明によるPDPの実施形態の一実施例を示しており、図1はこの実施例におけるPDPを模式的に示す正面図、図2は図1のV−V線における断面図、図3は図1のW−W線における断面図である。
この図1ないし3に示されるPDPは、表示面である前面ガラス基板1の背面に、複数の行電極対(X,Y)が、前面ガラス基板1の行方向(図1の左右方向)に延びるように平行に配列されている。
この行電極対(X,Y)を構成する行電極X,Yは、それぞれ、T字形状に形成されたITO等の透明導電膜からなる透明電極Xa,Yaと、前面ガラス基板1の行方向に延びて透明電極Xa,Yaの狭小の基端部に接続された金属膜からなるバス電極Xb,Ybとによって構成されている。
この行電極XとYは、前面ガラス基板1の列方向(図1の上下方向)に交互に配列されており、バス電極XbとYbに沿って並列されたそれぞれの透明電極XaとYaが、互いに対となる相手の行電極側に延びて、この透明電極XaとYaの幅広部の頂辺が、それぞれ所要の幅の放電ギャップgを介して互いに対向されている。
前面ガラス基板1の背面には、行電極対(X,Y)を被覆するように誘電体層2が形成されており、この誘電体層2の背面には、互いに隣接する行電極対(X,Y)の背中合わせに位置するバス電極Xb,Ybおよびこの背中合わせに位置するバス電極Xbとバス電極Ybの間の領域部分に対向する位置に、誘電体層2の背面側に突出する嵩上げ誘電体層3が、バス電極Xb,Ybと平行に延びるように形成されている。
この誘電体層2と嵩上げ誘電体層3には、後述するような電子線によって励起されることにより波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光(CL発光)を行う構造を有するCL発光MgO結晶体を含むMgO結晶体cが混合されている。
そして、このMgO結晶体cは、その一部が誘電体層2および嵩上げ誘電体層3の背面側に露出されていて、この誘電体層2および嵩上げ誘電体層3の背面が発光MgO結晶体cによって覆われている。
前面ガラス基板1には、所要の間隔を開けて背面ガラス基板4が平行に対向されており、この背面ガラス基板4の前面ガラス基板1に対向する表示側の面上には、列電極Dが、各行電極対(X,Y)の互いに対になった透明電極XaおよびYaに対向する位置において行電極対(X,Y)と直交する方向(列方向)に延びるように、互いに所定の間隔を開けて平行に配列されている。
さらに、この背面ガラス基板4の表示側の面上には、列電極Dを被覆する白色の列電極保護層5が形成されて、列電極Dが被覆されており、この列電極保護層5上に隔壁6が形成されている。
この隔壁6は、各行電極対(X,Y)のバス電極XbとYbに対向する位置においてそれぞれ行方向に延びる一対の横壁6Aと、隣接する列電極Dの間の中間位置において一対の横壁6A間を列方向に延びる縦壁6Bとによって、略梯子形状に成形されており、各隔壁6が、隣接する他の隔壁6の背中合わせに対向する横壁6Aとの間において行方向に延びる隙間SLを介して、列方向に平行に並設されている。
そして、この略梯子形状の隔壁6によって、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の間に形成された放電空間Sが、各行電極対(X,Y)において対になっている透明電極Xa,Yaに対向する部分毎に区画されて、それぞれ方形の放電セルCが形成されている。
この隔壁6には、誘電体層2および嵩上げ誘電体層3の場合と同じ電子線によって励起されることにより波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光を行う構造を有するCL発光MgO結晶体を含むMgO結晶体cが混合されている。
そして、このMgO結晶体cは、その一部が隔壁6の表面に露出されていて、この隔壁6の表面がMgO結晶体cによって覆われている。
各放電セルCに面する隔壁6の横壁6Aおよび縦壁6Bの側面と列電極保護層5の表面には、これらの五つの面を全て覆うようにそれぞれ赤,緑,青の蛍光体層7が形成されて、この赤,緑,青の三原色が行方向に順に並ぶように配列されている。
嵩上げ誘電体層3は、隔壁6の横壁6Aの頂面に当接(図2参照)されることによって、放電セルCと隙間SLの間がそれぞれ閉じられているが、縦壁6Bの頂面と誘電体層2との間には隙間rが形成されて、行方向において隣接する放電セルCがこの隙間rを介して互いに連通されている(図3参照)。
放電空間S内には、キセノンを含む放電ガスが封入されている。
上述した誘電体層2および嵩上げ誘電体層3,隔壁6に混合されたMgO結晶体cに含まれるCL発光MgO結晶体としては、例えば、マグネシウムを加熱して発生するマグネシウム蒸気を気相酸化して得られるマグネシウムの単結晶体(以下、このマグネシウムの単結晶体を気相法酸化マグネシウム単結晶体という)が挙げられ、この気相法酸化マグネシウム単結晶体には、例えば、図4のSEM写真像に示されるような、立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体と、図5のSEM写真像に示されるような、立方体の結晶体が互いに嵌り込んだ構造(立方体の多重結晶構造)を有する酸化マグネシウム単結晶体が含まれる。
この気相法酸化マグネシウム単結晶体は、後述するように、PDPの放電遅れの減少および放電確率の向上等の放電特性の改善に寄与する。
そして、この気相法酸化マグネシウム単結晶体は、他の方法によって得られる酸化マグネシウムと比較すると、高純度であるとともに微粒子が得られ、さらに、粒子の凝集が少ないなどの特徴を備えている。
この実施例においては、BET法によって測定した平均粒径が2000オングストローム以上の気相法酸化マグネシウム単結晶体が用いられる。
この粒径の大きな気相法酸化マグネシウム単結晶体は、300〜400nmにピークを有するCL発光に加えて、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光が励起される特性を備えている。
そして、図6および7から分かるように、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm)にピークを有するCL発光は、気相法酸化マグネシウム単結晶体の粒径が大きくなるほどそのピーク強度が大きくなる。
この気相法酸化マグネシウム単結晶体に対して、図8は、図9に示されるような柱状MgO結晶によって形成された膜厚約8000オングストロームのMgO蒸着膜からのCL強度を示しており、この図8に示されるように、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光は、通常の蒸着MgOからは励起されず、300〜400nmにピークを有するCL発光のみが励起される。
なお、気相法酸化マグネシウム単結晶体の粒径(DBET)は、窒素吸着法によってBET比表面積(s)が測定され、この値から次式によって算出される。
BET=A/s×ρ
A:形状計数(A=6)
ρ:マグネシウムの真密度
図10は、気相法酸化マグネシウム単結晶体が有するCL発光強度とPDPの放電遅れとの相関関係を示すグラフである。
この図10から、気相法酸化マグネシウム単結晶体が235nmのCL発光特性を有していることにより、PDPの放電セルに対向する位置に気相法酸化マグネシウム単結晶体を含むMgO結晶体が配置されることによって、放電セル内で発生される放電の遅れが短縮されることが分かり、さらに、この235nmのCL発光強度が強いほどこの放電遅れが短縮されることが分かる。
以上のことから、BET法による測定値2000オングストローム以上の平均粒径を有する気相法酸化マグネシウム単結晶体は、PDPの放電セルに面した部分に用いられることによって、PDPの放電確率や放電遅れなどの放電特性の改善(放電遅れの減少および放電確率の向上)に寄与することが出来ることが分かる。
図11は、PDPにおいて、放電セルに面する部分に配される気相法酸化マグネシウム単結晶体の粒径と放電確率の関係を示すグラフである。
この図11から、気相法酸化マグネシウム単結晶体の粒径が大きいほどPDP放電確率が高く、上記したような235nmにピークを有するCL発光が励起される粒径(図示の例では、2000オングストロームと3000オングストローム)の気相法酸化マグネシウム単結晶体によって、放電確率が大幅に向上されることが分かる。
上記のように、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光を行う気相法酸化マグネシウム単結晶体がPDPの放電特性の改善に寄与するのは、気相法酸化マグネシウム単結晶体が、そのピーク波長に対応したエネルギ準位を有し、そのエネルギ準位によって電子を長時間(数msec以上)トラップすることができ、この電子が電界によって取り出されることで、放電開始に必要な初期電子が得られことによるものと推測される。
そして、この気相法酸化マグネシウム単結晶体による放電特性の改善効果が、波長域200〜300nm内(特に、230〜250nm内,235nm付近)にピークを有するCL発光の強度が大きくなるほど大きくなるのは、前述したように、CL発光強度と気相法酸化マグネシウム単結晶体の粒径との間に相関関係(図7参照)があるためである。
すなわち、大きな粒径の気相法酸化マグネシウム単結晶体を形成しようとする場合には、マグネシウム蒸気を発生させる際の加熱温度を高くする必要があり、このため、マグネシウムと酸素が反応する火炎の長さが長くなり、この火炎と周囲との温度差が大きくなることによって、粒径の大きい気相法酸化マグネシウム単結晶体ほど上述したようなCL発光のピーク波長(例えば、230〜250nm内,235nm付近)に対応したエネルギ準位が多数形成されるためである。
さらに、一般的な気相酸化法に比べて、単位時間当たりのMgの蒸発量を増加させてMgとO2との反応領域を増大させ、より多くのO2と反応させることによって生成された気相法酸化マグネシウム単結晶体は、上述したようなCL発光のピーク波長に対応したエネルギ準位が形成され、また、立方体の多重結晶構造の気相法酸化マグネシウム単結晶体については、結晶面欠陥を多く含んでいるおり、この面欠陥エネルギ準位の存在が放電確率の改善に寄与しているためと推測される。
このPDPの誘電体層2および嵩上げ誘電体層3,隔壁6は、誘電材料であるガラスと溶剤にMgO結晶体を含むMgO結晶体cが混合された誘電体ペーストによって形成される。
すなわち、誘電体層2は、PDPの製造工程において、行電極対(X,Y)の形成工程が終了した前面ガラス基板1の背面に、上記のMgO結晶体cが混合された誘電体ペーストが、印刷法等によって行電極対(X,Y)を被覆するように所望の厚さに塗布されて誘電材料層が形成され、この後に、焼成が行われる。
このとき、焼成によって誘電体ペースト中の溶剤が蒸発し、これによって、誘電体ペースト内に混合されているMgO結晶体cが誘電材料層の表面から露出し、このMgO結晶体cによって背面側が覆われた状態で誘電体層2が成形される。
嵩上げ誘電体層3は、その形成工程において、同様に、誘電体層2の背面上に誘電体ペーストが印刷法等によって所要のパターンに塗布され、この後に、焼成が行われる。
このとき、焼成によって誘電体ペースト中の溶剤が蒸発し、これによって、誘電体ペースト内に混合されているMgO結晶体cがパターニングされた誘電材料層の表面から露出し、このMgO結晶体cによって背面側が覆われた状態で嵩上げ誘電体層3が成形される。
隔壁6は、その形成工程において、列電極Dを被覆している列電極保護層5の表面上に誘電体ペーストが印刷法やダイレクトコート法等の方法によって所要の厚さに塗布されて誘電材料層が形成され、この後に、焼成が行われる。
このとき、焼成によって誘電体ペースト中の溶剤が蒸発し、これによって、誘電体ペースト内に混合されているMgO結晶体cが露出して、誘電材料層の表面がこのMgO結晶体cによって覆われる。
この後、フォトリソ工程およびサンドブラスト工程等を経て誘電材料層がパターニングされることにより、それぞれ略梯子形状の隔壁6が形成される。
次に、このPDPの駆動方法について説明を行う。
このPDPは、サブフィールド法によって行われ、1フィールドの表示期間が複数個に分割された各サブフィールドは、全放電セルを一斉に初期化するリセット放電が行われるリセット放電期間と、発光させる放電セルCを選択するアドレス放電が行われるアドレス放電期間と、画像形成のための発光を行うサステイン放電が行われるサステイン放電期間とから構成されている。
そして、このPDPは、各サブフィールドの最初のリセット放電期間において行われるリセット放電が、行電極Yと列電極Dとの間で対向放電によって行われる。
図12は、このリセット放電時に行電極Yと列電極Dに印加される電圧パルスを示すパルス波形図である。
この図12において、行電極Yに、矩形パルスではなく、立ち上がりが緩やかな時定数の大きい正極の行電極リセット・パルスRyが印加され、列電極Dに、行電極リセット・パルスRyの印加と同時に、負極の列電極リセット・パルスRdが印加される。
この負極の列電極リセット・パルスRdと正極の行電極リセット・パルスRyの印加によって、陰極となる列電極Dと陽極となる行電極Yとの間で、行電極Yからアドレス電極Dの方向(電子の流れは列電極Dから行電極Yの方向)の放電が発生される(以下、この列電極Dが陰極側に設定され行電極Yが陽極に設定されて発生される放電を、陰列電極放電と総称する)。
なお、図12中、SPは、アドレス放電期間に行電極Yに印加されるスキャン・パルスであり、DPは、同じくアドレス放電期間に列電極Dに選択的に印加されるデータ・パルスであり、このスキャン・パルスSPが印加された行電極Yとデータ・パルスDPが印加された列電極Dとの間で、アドレス放電が発生される。
上記PDPは、リセット放電が放電セルCを挟んで対向する行電極Yと列電極Dとの間で陰列電極放電によって行われることにより、リセット放電時に、行電極Yと列電極D間に形成される電界によって誘電体層2および嵩上げ誘電体層3,隔壁6に混合されてそれぞれの表面に配置されたMgO結晶体cから放電セルC内に初期電子が放出される。
さらに、上記PDPは、リセット放電が陰列電極放電によって行われ、放電ガスから生成される放電セルC内の陽イオンが負極となる列電極Dの側へ向かい、隔壁6の表面に配置されている二次電子放出材でもあるMgO結晶体cと衝突して、このMgO結晶体cから、蛍光体層7を形成する蛍光体粒子の間を通って放電セルC内に二次電子が放出されるので、この二次電子の放電セルC内への放出効率が、従来に比べて高くなる。
そして、二次電子が効率よく放電セルC内に放出されることによって、次に行われるアドレス放電の放電開始電圧を低下させることができる。
なお、上記においては、列電極Dに負極の列電極リセット・パルスRdが印加される例(図12)について説明を行ったが、行電極Yと列電極D間でリセット放電を発生させるためには、行電極Yに正極の行電極リセット・パルスRyが印加された際に、この正極となる行電極Yに対して、列電極Dが相対的に負極側に設定されていれば良く、例えば、図13に示されるように、列電極Dが接地(GND)電位に設定される場合でもよく、また、列電極Dに、行電極Yに印加される行電極リセット・パルスRyよりも電位が小さく、行電極Yと列電極Dとの間で放電が発生するような正極の電圧パルスが印加される場合であっても良い。
以下においては、陰列電極放電は、リセット放電の際に、列電極Dが接地(GND)電位に設定される場合や、列電極Dに行電極リセット・パルスRyよりも電位が小さい正極の電圧パルスが印加される場合等のように、列電極Dの電位が行電極Yに対して相対的に負極側に設定される全ての場合を含むものとする。
また、このリセット放電の際に、行電極Yと行電極対を構成する行電極Xは、リセット放電期間の間、接地(GND)電位を保持するようにしても良いが、図14に示されるように、Y電極に印加される行電極リセット・パルスRyと同極で、行電極Yとの間に放電を発生させるような電位差を生じさせない電位の電圧パルスRxを印加するようにしても良い。
これによって、リセット放電が発生される間、行電極対を構成する行電極XとY間に放電を発生させるような電位差が生じるのが防止されて、確実に、リセット放電を行電極Yと列電極D間での対向放電のみにすることができ、表示映像の暗コントラストを向上させることが出来るようになる。
上記PDPにおいて、誘電体層2および嵩上げ誘電体層3,隔壁6に混合されるMgO結晶体cが、前述したような電子線によって励起されることにより波長域200〜300nm内にピークを有するCL発光を行う構造を有するCL発光MgO結晶体を含む場合には、このCL発光MgO結晶体が有する図6ないし11に基づいて説明したような特性によって、リセット放電時にCL発光MgO結晶体から放電セルC内に初期電子が放出されて、この初期電子によってリセット放電の放電遅れが短縮されるとともに、二次電子の放出によってプライミング効果が長く持続するので、リセット放電の次に発生されるアドレス放電の高速化と放電開始電圧の減少が図られる。
なお、上記においては、リセット放電の際に行電極Yに印加される行電極リセット・パルスを、図12および13に示されるように、その立ち上がりの傾きを変化させながら滑らかに増加してゆく形態の電圧パルスとした例について説明を行ったが、この他に、行電極リセット・パルスを、図15に示されるような立ち上がりの傾きが一定の状態で直線状に増加してゆく形態の電圧パルスR1yとしても良い。
この場合も、行電極リセット・パルスを図12および13に示されるような形態の電圧パルスとする場合とほぼ同様の、暗コントラストの向上効果を得ることが出来る。
そして、図14の場合と同様に、行電極Yへの行電極リセット・パルスの印加と同時に行電極対を構成する他方の行電極Xにも電圧パルスを印加する場合には、図16に示されるように、行電極Yに印加される行電極リセット・パルスR1yと同極で同じは波形の電圧パルスR1xを印加するようにするのが好ましい。
これによって、行電極Yと列電極D間のみにおいて、確実にリセット放電が発生されるようにすることが出来る。
なお、上記においては、行電極Yと列電極Dとの間でリセット放電が行われる構成を例に挙げて説明を行ったが、PDPを、X電極に行電極リセット・パルスを印加して、この行電極Xと列電極Dの間でリセット放電が行われる構成にしても良い。
さらに、上記においては、リセット放電が陰列電極放電によって行われる場合を例に挙げて説明を行ったが、このリセット放電と同様に行電極Yと列電極Dとの間の対向放電によって行われるアドレス放電を、図12ないし16に示されるような形態の陰列電極放電によって行うようにしても良く、これによって、リセットの場合と同様に、アドレス放電の放電遅れの短縮やアドレス放電の次に発生されるサステイン放電の高速化,放電開始電圧の低下等の技術的効果を図ることが出来る。
上記においては、誘電体層2および嵩上げ誘電体層3,隔壁6の何れにもMgO結晶体cが含まれる実施例が示されているが、誘電体層2のみ、または、隔壁6のみ、誘電体層2と嵩上げ誘電体層3のみにMgO結晶体cが含まれるようにしても良い。
また、上記の実施例において、誘電体層2の背面上にさらにCL発光MgO結晶体を含むMgO結晶体cを散布するようにしても良く、この場合には、放電セルCに面するMgO結晶体の総量が増えるので、各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性の向上をさらに図ることが出来るようになる。
また、上記の実施例において、蛍光体層7にもCL発光MgO結晶体を含むMgO結晶体cを混合するようにしても良く、この場合にも、放電セルCに面するMgO結晶体の総量が増えるので、各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性の向上をさらに図ることが出来るようになる。
上記PDPによれば、誘電体層2と嵩上げ誘電体層3、さらには、隔壁6にMgO結晶体cが混合されてこの誘電体層2と嵩上げ誘電体層3,隔壁6に二次電子放出機能が保持していることによって、従来のようにMgO結晶体を含む二次電子放出層を別途設ける必要が無くなり、これによって、PDPの製造工程における工程数を削減して、製品の低廉化を図ることが出来るようになるとともに、誘電体層2と嵩上げ誘電体層3,隔壁6に混合されたMgO結晶体cによって、放電セルC内で発生される各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性が大幅に向上される。
そして、前面ガラス基板1側においては、MgO結晶体cが放電セルC内に露出されていることによって、初期電子および二次電子の放出効率が向上され、背面ガラス基板4においては、放電セルC内において発生される対向放電が陰列電極放電によって行われることによって、隔壁6に混合されたMgO結晶体cによる放電セルC内への初期電子と二次電子の放出効率が向上される。
上記実施例によるPDPは、放電空間を介して対向する一対の基板と、この一対の基板の一方の基板側に設けられた複数の行電極対およびこの行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に設けられて行電極対に対して交差する方向に延びるとともに行電極対と交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域を形成する複数の列電極と、一対の基板の間に設けられて放電空間を各単位発光領域毎に区画する隔壁とを備えているPDPにおいて、前記誘電体層と隔壁のうちの少なくとも一方が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されているPDPを、その上位概念の実施形態としている。
この実施形態によるPDPは、行電極対を被覆する誘電体層を形成する誘電材料と隔壁を形成する誘電材料の少なくとも一方に、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合されて、この誘電体層と隔壁の少なくとも一方が二次電子放出機能を保持するようになっていることにより、従来のように誘電体層上に設けられた二次電子放出層を省略することが可能になり、これによって、PDPの製造工程における工程数を削減して製品の低廉化を図ることが出来るようになるとともに、誘電体層と隔壁の少なくとも一方に混合された酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材によって、単位発光領域内で発生される各放電の放電遅れや放電確率等の放電特性を大幅に向上させることが出来る。
この発明の実施形態の一実施例を示す正面図である。 図1のV−V線における断面図である。 図1のW−W線における断面図である。 立方体の単結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体のSEM写真像を示す図である。 立方体の多重結晶構造を有する酸化マグネシウム単結晶体のSEM写真像を示す図である。 酸化マグネシウム単結晶体の粒径とCL発光の波長および強度との関係を示すグラフである。 酸化マグネシウム単結晶体の粒径と235nmのCL発光のピーク強度との関係を示すグラフである。 蒸着法による酸化マグネシウム層からのCL発光の波長の状態を示すグラフである。 図8の蒸着法による酸化マグネシウム層の膜厚を示す図である。 酸化マグネシウム単結晶体からの235nmのCL発光のピーク強度と放電遅れとの関係を示すグラフである。 酸化マグネシウム単結晶体の粒径と放電確率との関係を示すグラフである。 同例において、行電極と列電極に印加される電圧パルスの形態を示すパルス波形図である。 同電圧パルスの他の例を示すパルス波形図である。 同電圧パルスのさらに他の例を示すパルス波形図である。 同例において、行電極に印加される電圧パルスの他の形態を示すパルス波形図である。 同電圧パルスの他の例を示すパルス波形図である。
符号の説明
1 …前面ガラス基板(一方の基板)
2 …誘電体層
3 …嵩上げ誘電体層
4 …背面ガラス基板(他方の基板)
6 …隔壁
7 …蛍光体層
C …放電セル(単位発光領域)
D …列電極
Rx,R1x …電圧パルス
Ry,R1y …行電極リセット・パルス(電圧パルス)
Rd …列電極リセット・パルス(電圧パルス)
S …放電空間
X,Y …行電極
c …MgO結晶体(二次電子放出材)

Claims (12)

  1. 放電空間を介して対向する一対の基板と、この一対の基板の一方の基板側に設けられた複数の行電極対およびこの行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に設けられて行電極対に対して交差する方向に延びるとともに行電極対と交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域を形成する複数の列電極と、一対の基板の間に設けられて放電空間を各単位発光領域毎に区画する隔壁とを備えているプラズマディスプレイパネルにおいて、
    前記誘電体層と隔壁のうちの少なくとも一方が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
  2. 前記酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が、誘電体層の放電空間に面する位置に配置されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記酸化マグネシウム結晶体が、230nm〜250nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有している請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記酸化マグネシウム結晶体が、気相酸化法によって生成された酸化マグネシウム単結晶体である請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  5. 前記酸化マグネシウム結晶体が、2000オングストローム以上の粒径を有している請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  6. 前記二次電子放出材が酸化マグネシウムである請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  7. 前記誘電体層の隣接する単位発光領域の間の境界部分に対向する位置に、この誘電体層から他方の基板側に突出する嵩上げ誘電体層が形成され、この嵩上げ誘電体層が、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  8. 前記酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が、嵩上げ誘電体層の放電空間に面する位置に配置されている請求項7に記載のプラズマディスプレイパネル。
  9. 前記誘電体層と隔壁の双方が、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  10. 前記単位発光領域内の他方の基板上にそれぞれ蛍光体層が設けられ、この蛍光体層が、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された蛍光材料によって形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  11. 前記誘電体層の放電空間側の面上に、酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材によって、誘電体層の放電空間側の面を被覆する保護層が形成されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  12. 放電空間を介して対向する一対の基板と、この一対の基板の一方の基板側に設けられた複数の行電極対およびこの行電極対を被覆する誘電体層と、他方の基板側に設けられて行電極対に対して交差する方向に延びるとともに行電極対と交差する部分の放電空間にそれぞれ単位発光領域を形成する複数の列電極と、一対の基板の間に設けられて放電空間を各単位発光領域毎に区画する隔壁とを備え、誘電体層と隔壁のうちの少なくとも一方が、電子線によって励起されて波長域200〜300nm内にピークを有するカソード・ルミネッセンス発光を行う構造を有する酸化マグネシウム結晶体を含む二次電子放出材が混合された誘電材料によって形成されているプラズマディスプレイパネルの駆動方法であって、
    前記行電極対を構成する一方の行電極に電圧パルスが印加されるとともに、この電圧パルスが印加された一方の行電極に対して列電極の電位が相対的に負極側に設定されることによって、単位発光領域内において列電極と一方の行電極との間に対向放電が発生させる行程が含まれていることを特徴とするプラズマディスプレイパネルの駆動方法。
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