JP4519220B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なリチウム二次電池及びそれに使用されるリチウム遷移金属複合酸化物を主成分とする正極活物質に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、機器のポータブル化、コードレス化が進むにつれ、小型、軽量でかつ高エネルギー密度を有するリチウム二次電池に対する期待が高まっている。リチウム二次電池用の正極活物質には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2などの、リチウムと遷移金属の複合酸化物が知られている。その中で最近では特に、安全性が高く、かつ安価な材料として、リチウムとマンガンの複合酸化物の研究が盛んである。これらを正極活物質として用いて、負極活物質としてリチウムを吸蔵、放出することができる炭素材料等を用いた、高電圧、高エネルギー密度のリチウム二次電池の開発が進められている。
【0003】
一般に、リチウム二次電池に用いられる正極活物質は、主活物質であるリチウムにコバルト、ニッケル、マンガンをはじめとする遷移金属を固溶させた複合酸化物からなる。その用いられる遷移金属の種類によって、電池容量、可逆性、作動電圧、安全性などの電極特性が異なる。
【0004】
例えば、LiCoO2、LiNi0.8Co0.22のように、リチウムにコバルトやニッケルを固溶させた岩塩層状複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池は、それぞれ140〜160mAh/g及び190〜210mAh/gと比較的高い電池容量を達成できるとともに、2.5〜4.3Vの高い電圧領域で良好な可逆性を示す。しかし、充電時において、正極活物質と電解液溶媒との反応により、高温下で電池が発熱し易い問題がある。また、原料となるコバルトやニッケルが高価なためコストが高い、2.5〜3.5Vの電圧領域での電池容量が低い、等の問題もある。
【0005】
一方、比較的安価なマンガンを原料とするLiMn24からなるスピネル型複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池は、充電時の正極活物質と電解液溶媒との反応による発熱は比較的しにくいものの、電池容量が上述のコバルト系およびニッケル系活物質に比べて100〜120mAh/gと低い。また、充放電サイクル耐久性が乏しく、3V未満の低い電圧領域では急速に劣化が生じる。
【0006】
また、LiMn24からなるスピネル型複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池は、3.0〜3.5Vの電圧領域での電池容量が低い。同じく安価なマンガンを原料とするβ−NaMnO2型構造からなる斜方晶LiMnO2からなる複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池は、LiMn24に比べて2V前後の低い電圧領域まで作動できるので高い電池容量が期待できるが、充放電耐久性が乏しい。
【0007】
LiMnO2としては、β−NaMnO2型構造からなる斜方晶LiMnO2と、α−NaMnO2型構造からなる層状岩塩型構造の単斜晶LiMnO2 が知られている。どちらのLiMnO2も、充電時の正極活物質と電解液溶媒との反応による発熱は比較的しにくい。しかし、斜方晶LiMnO2は、充放電の繰り返しにより徐々に別の結晶相(スピネル相)に転移していくため、充放電サイクル耐久性が乏しい。
【0008】
一方、LiMnO2にFe、Ni、Co、CrまたはAlを添加した正極活物質が特開平10−134812号公報に開示されている。しかし、該公報に開示されたLiMnMO2は、そのX線回折結果がJCPDSの35−749と類似していることから判るように、いずれも斜方晶LiMnO2構造を有しており、充放電サイクルの耐久性は不十分なものであった。
【0009】
層状岩塩型単斜晶構造のLiMnO2は、通常の固相反応法で合成したα−NaMnO2をLiイオンを含む非水溶媒中で300℃以下の温度でイオン交換に供することにより合成されている(A.R.Armstrong and P.G.Bruce,NATURE,Vol.381,P499, 1996)。また、アルカリ金属水酸化物の共存下のリチウム塩水溶液中でマンガン酸化物を水熱処理することにより直接合成することが見出されている(田淵ら、特開平11−21128号公報)。かかる方法で合成された層状岩塩型単斜晶LiMnO2は、イオン交換法よりも工業的に製造し易く好ましい。
【0010】
しかしながら、水熱合成法で製造された層状岩塩型単斜晶LiMnO2を正極活物質に用いた場合、充放電サイクル耐久性は斜方晶LiMnO2に較べて改良されるものの、LiCoO2、LiNi0.8Co0.22のように、リチウムにコバルトやニッケルを固溶させた岩塩層状複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池より充放電サイクル耐久性がいまだ劣る問題があった。更に層状岩塩型単斜晶LiMnO2を正極活物質に用いた場合、LiCoO2、LiNi0.8Co0.22のようにコバルトやニッケルを固溶させた層状岩塩型複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池より大電流密度での電池容量発現性が劣る問題もある。
【0011】
これらの単独のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として使用する替わりに、斜方晶系のLiMnO2に、LiNiO2 、LiCoO2およびLiMn24からなる群より選択される少なくとも一種のリチウム遷移金属複合酸化物を混合することが特開平9−180718号公報に提案されている。しかし、かかる混合物を用いた電池は充放電サイクル耐久性が不足する問題がある。また、特開平11−3698号公報にはLiMn24、LiNiO2およびLiCoO2の3種混合物からなるリチウム二次電池が提案されている。かかるLiMn24、LiNiO2およびLiCoO2の3種混合物をもちいた電池は充放電電圧4.3〜3.0V範囲では単位重量当たりのLiMn24の放電容量が低いので必然的に混合物も放電容量が低い。また、4.3〜2.5Vの電圧領域で充放電を行うと充放電サイクルの進行とともにLiMn24の劣化により急速に電池容量低下が起きる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、広い電圧範囲での使用を可能とし、高電流密度下での電池容量が高く、充放電サイクル耐久性に優れ、高安全性、高エネルギー密度及び大電流放電特性の良いリチウム二次電池及びそれに使用される正極活物質を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、リチウム遷移金属複合酸化物を主成分とする正極活物質層を備えたリチウム二次電池において、リチウム遷移金属複合酸化物が、30〜80重量%の成分(A)と、20〜70重量%の成分(B)とからなることを特徴とするリチウム二次電池にある。
(A)層状岩塩型単斜晶構造を有し、LixMny1-y2で表される複合酸化物(B)LixCo1-h-iNihi2で表される複合酸化物。
【0014】
但し、式中の記号は下記の意味を示す。各式間で、Q及びxは独立して選ばれる。 M:Al、Fe、Co、Ni及びCrから選ばれる1種以上の元素、
Q: Al、Fe、Mn、Ti,Ca及びMgから選ばれる1種以上の元素。
【0015】
0<x≦1.1、 0.5≦y≦1、 0.6≦h≦1.0、0≦i≦0.10、 0≦1−h−i。
【0016】
以下に、本発明について、更に詳細に説明する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において、リチウム遷移金属複合酸化物の成分(A)である、LixMny1-y2で表される複合酸化物は、結晶構造が層状岩塩型単斜晶構造を有するものが使用されるが、斜方晶構造のものに比べて、充放電サイクル耐久性が高い性質を有することが見出された。
【0018】
成分(A)の複合酸化物における金属元素、Mは、Al、Fe、Co、Ni及びCrから選ばれる1種以上の元素が使用される。なかでも、充放電サイクル耐久性に優れることからFe、Crが好ましい。また、成分(A)の複合酸化物を表す上記の式において、xは、0<x≦1.1であり、yは、1である。yが0.5未満であると層状岩塩単斜晶構造を維持出来なくなる。特に好ましくは、yは、0.65≦y≦0.99が採用される。
【0019】
本発明において、リチウム遷移金属複合酸化物中の成分(A)の含有量は、30〜80重量%であるのが好ましい。30重量%未満であるとリチウム電池の安全性が乏しくなり、また、電圧領域3V未満での電池容量が低下する。一方、80重量%を超えると、大電流での放電容量が低下するので不適切である。特に好ましい成分(A)の含有量は、40〜70重量%である。
【0020】
本発明において、成分(B)の複合酸化物は、LixCo1-h-iNihi2で表されるが、Qは、Al、Fe、Mn、Ca及びMgから選ばれる1種以上の元素であり、Qの存在により、充放電サイクル、耐久性向上あるいは電池安全性が向上する。なかでも、Qは、Mn、Alが好ましい。
【0021】
成分(B)の式において、xは、0<x≦1.1であり、hは、0.6≦h≦1.0である。成分(B)におけるニッケルとコバルトの原子比は、上記hとiを調整することにより、70:30〜85:15になるようにするのが好ましい。コバルトがこの量比より多いと容量が低下するので好ましくない。コバルトがこの量比より少ないと充放電サイクル耐久性が乏しくなるので好ましくない。ニッケルとコバルトの原子比は80:20〜84:16であるのが特に好ましい。
【0022】
成分(B)の上記式における、iは、0≦i≦0.10であり、充放電サイクル、耐久性向上あるいは電池安全性が向上する。特に、iは、ニッケルとコバルトとの合計量に対して0.1〜5%程度固溶するように、0.001≦i≦ 0.05であるのが好ましい。
【0025】
本発明において、リチウム遷移金属複合酸化物中の成分(B)の含有量は、20〜70重量%であるのが好ましい。20重量%未満であるとリチウム二次電池の容量が低下したり、大電流充放電特性が低下するので好ましくない。成分(B)の含有量は、30〜60重量%であるのが特に好ましい
【0026】
本発明において、リチウム二次電池の好ましい代表例として、以下の(1)のものがあげられる。なお、本発明で使用される、上記成分(A)及び成分(B)は、それぞれに該当する複合酸化物の1種又は2種以上が使用される。
【0027】
(1)リチウム遷移金属複合酸化物を主成分とする正極活物質層を備えたリチウム二次電池において、リチウム遷移金属複合酸化物が、30〜80重量%の成分(A)と、20〜70重量%の成分(B)との混合物を含有するリチウム二次電池。なかでも、成分(B)の、LixCo1-h-iNihi2において、0.7≦h≦0.9、0≦i≦0.10、特には、0.75≦h≦0.85、0.001≦i≦0.05を満足するリチウム二次電池。
【0029】
本発明において、上記リチウム遷移金属複合酸化物を主成分とする正極活物質を使用する正極は、好ましくは、次のようにして製造される。即ち、上記複合酸化物の混合物の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラック等のカーボン系導電材、結合材及び結合材の溶媒または分散媒とを混合することにより正極合剤が形成される。
【0030】
上記の正極合剤は、スラリーまたは混練物とし、アルミニウム箔、ステンレス箔等の正極集電体に塗布又は担持し、プレス圧延して正極活物質層を正極集電体上に形成する。結合材には、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂等が用いられる。
【0031】
本発明において、正極活物質層の空隙率は27〜37%であることが好ましい。空隙率が27%未満であると電解液が含浸しにくくなる結果、電池の内部抵抗が高くなるので好ましくない。37%を超えると正極活物質層の体積が増加し単位体積あたりの充放電容量が低下するので好ましくない。空隙率は30〜35%が特に好ましい。正極活物質層の空隙率は、正極活物質層を正極集電体上に形成した正極電極体をプレス圧延する際のプレス条件、あるいはスラリーまたは混練物を形成する際の溶媒または分散媒の含量により制御される。なお、本発明で正極の空隙率は、見かけの密度と真密度から求めた。
【0032】
本発明に用いる成分(A)の複合酸化物は、マンガン化合物とリチウム化合物と金属元素Mを含む化合物から固相法により500〜1000℃焼成するなどの既知方法により合成される。なかでも、リチウム元素およびリチウム元素以外のアルカリ金属水酸化物を含有する水溶液中でマンガン化合物と金属元素Mを含む化合物とを、好ましくは130〜300℃にて、水熱処理することにより製造されたものであるのが適切である。
【0033】
上記水熱処理方法のうちでも、リチウム元素に加え高濃度の水酸化カリウムあるいは水酸化ナトリウムを含有する強塩基性水溶液中に、マンガン化合物と金属元素Mを含む化合物マンガンと金属元素、Mの共沈水酸化物、共沈酸化物または共沈オキシ水酸化物などの共沈物の少なくともいずれかを130〜300℃にて水熱処理することにより製造されるのが特に好ましい。
【0034】
上記におけるマンガン原料としては、Mn23、MnO、MnO2などの酸化物、これら酸化物の水和物、オキシ水酸化物などが例示される。マンガン原料としては、3価のマンガンの化合物がより好ましい。これらのマンガン原料は、単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
【0035】
上記の金属元素Mの原料化合物としては、単体金属、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物、塩化物、硝酸塩等が使用される。これらの原料は、単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
【0036】
本発明のリチウム二次電池において、電解質溶液の溶媒としては、炭酸エステルが好ましい。炭酸エステルは環状、鎖状いずれも使用できる。環状炭酸エステルとしてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(以下ECという)等が例示される。鎖状炭酸エステルとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(以下DECという)、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等が例示される。
【0037】
本発明では上記炭酸エステルを単独で又は2種以上を混合して使用でき、他の溶媒と混合して使用してもよい。また、負極活物質の材料によっては、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステルを併用すると、放電特性、サイクル耐久性、充放電効率が改良できる場合がある。
【0038】
また、本発明では、上記有機溶媒にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(例えば、カイナー:アトケム社商品名)、特開平10−294131号公報に開示されたフッ化ビニリデン−パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体を添加し、下記の溶質を加えることによりゲルポリマー電解質も使用することができる。
【0039】
本発明における電解質溶液を構成する溶質としては、ClO4 -、CF3SO3 -、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3CO2 -、(CF3SO22-等をアニオンとするリチウム塩のいずれか1種以上を使用することが好ましい。上記の電解質溶液またはポリマー電解質は、リチウム塩からなる電解質を前記溶媒または溶媒含有ポリマーに0.2〜2.0mol/リットルの濃度で添加するのが好ましい。この範囲を逸脱すると、イオン伝導度が低下し、電解質溶液又はポリマー電解質の電気伝導度が低下する。より好ましくは0.5〜1.5mol/リットルが選定される。セパレータには、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレンフィルムが好ましく使用される。
【0040】
本発明で使用される負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料である。これらの負極活物質を形成する材料は特に限定されないが、リチウム金属、リチウム合金、炭素材料、周期表14、15族の金属を主体とした酸化物、炭素化合物、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、炭化ホウ素化合物等がれる。上記炭素材料としては、種々の熱分解条件で有機物を熱分解したものや人造黒鉛、天然黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛、鱗片状黒鉛等が使用できる。また、酸化物としては、酸化スズを主体とする化合物が使用できる。負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔等が用いられる。
【0041】
本発明で使用される負極は、その活物質が炭素材料である場合は、有機溶媒と混練してスラリーとし、該スラリーを金属箔集電体に塗布、乾燥、プレスして得ることが好ましい。本発明のリチウム二次電池の形状には特に制約はない。シート状(いわゆるフィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒形、ボタン形等が用途に応じて選択される。
【0042】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、例7及び例13は、参考例であり、例11〜12及び14は、比較例である。
【0043】
[例1]
硝酸マンガンと硝酸アルミニウム(モル比0.85:0.15)混合水溶液に水酸化アンモニウム水溶液を加えて共沈させ、150℃で加熱、乾燥により、マンガン−アルミニウム共沈水酸化物(マンガン:アルミニウム原子比=0.85:0.15)を得た。
【0044】
水酸化カリウム41重量%と水酸化リチウム0.45重量%を含むアルカリ水溶液にマンガン−アルミニウム共沈水酸化物粉末を添加し、撹拌した。オートクレーブ内を窒素ガスで置換した後、225℃で10時間水熱処理した。反応終了後オートクレーブを冷却した後内容物を取り出し内容物スラリーを濾過し、エタノールで洗浄して水酸化リチウム、水酸化カリウム等を除去し、乾燥して粉末を取得した。
【0045】
該粉末のCuKαによるX線回折分析の結果、2θが18度、37度、39度、45度、62度、65度、67度に回折ピークが認められ、これらは層状岩塩型単斜晶構造を有するLiMnO2であることが判った。粉末の元素分析によりLiMn0.85Al0.152であることが判った。
【0046】
一方、ニッケルとコバルトの割合がモル比で82:18になるようにNiCl2・6H2OとCoCl2 ・6H2Oとを炭酸ガスを飽和した純水に溶解せしめ、この溶液にNaHCO3水溶液を加え、生成した沈殿物を水洗後窒素ガス中140℃で乾燥することによりニッケル−コバルト(原子比82:18)の共沈炭酸塩を得た。この炭酸塩を炭酸リチウムと混合し910℃で5時間焼成することによりLiNi0.82Co0.182を得た。
【0047】
上記で得られた、LiMn0.85Al0.152 とLiNi0.82Co0.182を重量比で50:50の割合で混合し、この混合物粉末とアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとを83/10/7の重量比でN−メチルピロリドン加えつつボールミル混合し、スラリーとした。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔正極集電体上に塗布し、150℃にて乾燥してN−メチルピロリドンを除去した。しかる後にロールプレス圧延をして正極体を得た。
【0048】
セパレータには厚さ25μmの多孔質ポリプロピレンを用い、厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い負極集電体にニッケル箔を使用し、電解液には、1MのLiPF6/EC+DEC(1:1)を用いてステンレス製簡易密閉セル(以下、電池という)をアルゴングローブボックス内で組立た。なお、1MのLiPF6/EC+DEC(1:1)とは、容量比1:1のECとDECとを含む溶媒に1Mの
LiPF6を溶質とする電解質溶液を意味する。
【0049】
上記電池の正極面積1cm2につき1mAの電流密度で4.3Vまで充電し、定電流2mA/cm2にて2.0Vまで放電して高電流密度かつ広い電圧領域で充放電サイクル試験を20回行い、3回充放電後の放電容量と20回充放電後の放電容量との比率から維持率を求めた。
【0050】
また、電池安全性評価のため、4.3V充電後のセルを解体し、正極を電解液溶媒と共に密閉容器に入れて試料となし、示差走査熱量測定装置を用い、昇温せしめた時の発熱開始温度を求めた。結果を表1に示す。
【0051】
[例2]
硝酸アルミニウムの替わりに硝酸コバルトを使用したほかは例1と同様にマンガンコバルト共沈水酸化物を合成し、ついで例1と同様にリチウム−マンガン−コバルト複合酸化物を合成した。X線回折分析により、生成した粉末は例1と同様に層状岩塩型単斜晶構造を有するLiMnO2であることが判った。粉末の元素分析によりLiMn0.85Co0.152であることが判った。
【0052】
例1において、LiMn0.85Al0.152の替わりにLiMn0.85Co0.152 を用い、LiNi0.82Co0.182と重量比で50:50の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
[例3]
硝酸アルミニウムの替わりに硝酸ニッケルを使用したほかは例1と同様にマンガン−ニッケル共沈水酸化物を合成し、ついで例1と同様にして、リチウム−マンガン−ニッケル複合酸化物を合成した。X線回折分析により生成した粉末は、例1と同様に層状岩塩型単斜晶構造を有するLiMnO2であることが判った。粉末の元素分析によりLiMn0.85Ni0.152であることが判った。
【0054】
例1において、LiMn0.85Al0.152の替わりにLiMn0.85Ni0.152を用い、LiNi0.82Co0.182と重量比で50:50の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
[例4]
硝酸アルミニウムの替わりに硝酸鉄を使用したほかは例1と同様にマンガン−鉄共沈水酸化物を合成し、例1と同様にリチウム−マンガン−アルミニウム複合酸化物を合成した。X線回折分析により生成した粉末は例1と同様に層状岩塩型単斜晶構造を有するLiMnO2であることが判った。粉末の元素分析によりLiMn0.85Fe0.152であることが判った。
【0056】
例1において、LiMn0.85Al0.152の替わりにLiMn0.85Fe0.152 を用い、LiNi0.82Co0.182と重量比で50:50の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
[例5]
硝酸アルミニウムの替わりに硝酸クロムを使用したほかは例1と同様にマンガン−クロム共沈水酸化物を合成した。X線回折分析により、生成した粉末は例1と同様に単斜晶を有する層状岩塩型LiMnO2構造であることが判った。粉末の元素分析によりLiMn0.85Cr0.152であることが判った。
【0058】
例1において、LiMn0.85Al0.152の替わりにLiMn0.85Cr0.152を用い、LiNi0.82Co0.182と重量比で50:50の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
[例6]
硝酸アルミニウムを使用しなかったほかは例1と同様にマンガン水酸化物を合成し、例1と同様にリチウム−マンガン複合酸化物を合成した。X線回折分析により生成した粉末は例1と同様に単斜晶を有する層状岩塩型LiMnO2構造であることが判った。粉末の元素分析によりLiMnO2であることが判った。
【0060】
例1において、LiMn0.85Al0.152の替わりにLiMnO2を用い、LiNi0.82Co0.182と重量比で50:50の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し特性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
[例7]
炭酸リチウムLi2CO3粉末と酸化コバルトCo34粉末を乾式混合し、900℃にて10時間大気中で焼成することによりLiCoO2を得た。
【0062】
例1で作製したLiMn0.85Al0.152と上記LiCoO2を、重量比で50:50の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
[例8]
LiMn0.85Al0.152とLiNi0.82Co0.182を重量比で40:60の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
[例9]
LiMn0.85Al0.152とLiNi0.82Co0.182を重量比で60:40の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
[例10]
LiMn0.85Al0.152とLiNi0.82Co0.182を重量比で75:25の割合で混合した他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0066】
[例11]
比較のため、LiNi0.82Co0.182のみを使用し、LiMn0.85Al0.152を混合しなかった他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し、特性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
[例12]
比較のため、LiMn0.85Al0.152のみを使用し、LiNi0.82Co0.182を混合しなかった他は例1と同様にして、正極体および電池を作製し特性を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
[例13]
参考のため、LiCoO2のみを使用し、LiMn0.85Al0.152を混合しなかった他は例7と同様にして、正極体および電池を作製し特性を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
[例14]
比較のため、LiMnO2のみを使用し、LiCoO2を混合しなかったほかは例6と同様に正極体および電池を作製し特性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
Figure 0004519220
【0071】
【発明の効果】
本発明では、広い電圧範囲での使用が可能であり、高電流密度での容量が大きいと共に、発熱温度が低いため安全性が高く、充放電サイクル耐久性が良好なリチウム二次電池及びその為の正極活物質を得ることができる。

Claims (5)

  1. リチウム遷移金属複合酸化物を主成分とする正極活物質層を備えたリチウム二次電池において、リチウム遷移金属複合酸化物が、30〜80重量%の成分(A)と、20〜70重量%の成分(B)とからなることを特徴とするリチウム二次電池。
    (A)層状岩塩型単斜晶構造を有し、LixMny1-y2で表される複合酸化物。
    (B)LixCo1-h-iNihi2で表される複合酸化物。
    し、式中の記号は下記の意味を示す。各式間で、Q及びxは独立して選ばれる。M :Al、Fe、Co、Ni及びCrから選ばれる1種以上の元素、Q: Al、Fe、M n、Ti、Ca及びMgから選ばれる1種以上の元素。
    0<x≦1.1、 0.5≦y≦1、 0.6≦h≦1.0、0≦i≦0.10、 0≦ 1−h−i。
  2. 成分(B)が、LixCo1-h-iNihi2において、0.7≦h≦0.9、0≦i≦0.05である複合酸化物である請求項1記載のリチウム二次電池。
  3. 成分(A)の複合酸化物が、リチウム元素およびリチウム元素以外のアルカリ金属水酸化物を含有する水溶液中で、マンガン化合物と金属元素Mを含む化合物との130〜300℃における水熱処理により製造されたものである請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
  4. リチウム遷移金属複合酸化物を主成分とする正極が、27〜37%の空隙率を有する請求項1〜のいずれかに記載のリチウム二次電池。
  5. 30〜80重量%の成分(A)と、20〜70重量%の成分(B)とからなるリチウム遷移金属複合酸化物を主成分とすることを特徴とするリチウム二次電池用の正極活物質。
    (A)層状岩塩型単斜晶構造を有し、LixMny1-y2で表される複合酸化物。
    (B)LixCo1-h-iNihi2で表される複合酸化物。
    し、式中の記号は下記の意味を示す。各式間で、Q及びxは独立して選ばれる。M:Al、Fe、Co、Ni及びCrから選ばれる1種以上の元素、Q: Al、Fe、Mn,Ti,Ca及びMgから選ばれる1種以上の元素。
    0<x≦1.1、 0.5≦y≦1、 0.6≦h≦1.0、0≦i≦0.10、 0≦1−h−i。
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