JP4511122B2 - 燃料電池セル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質形燃料電池セルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
次世代エネルギーとして、近年、燃料電池セルのスタックを収納容器内に収容した燃料電池が種々提案されている。このような燃料電池には、固体高分子形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体電解質形など、各種のものが知られているが、中でも固体電解質形の燃料電池は、作動温度が800〜1000℃と高いものの、発電効率が高く、また排熱利用ができるなどの利点を有しており、その研究開発が推し進められている。
【0003】
固体電解質形燃料電池を構成するセルとして、本出願人は、先に平板状の電極支持基板に、内側電極層、固体電解質層、外側電極層及びインターコネクタを設けた構造のものを提案した(特願2002−156284号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の固体電解質形燃料電池セルは、電極支持基板及び固体電解質層を同時焼成により容易に製造することができるというものであるが、固体電解質層とインターコネクタとの間での接合が充分でなく、ガスリークを生じたり、作動の繰り返しによる昇降温の繰り返しによって界面剥離を生じるなどの問題があった。一方、円筒型の燃料電池に関するものではあるが、インターコネクタと固体電解質層との接合力を高めるために、固体電解質層とインターコネクタとの界面に、希土類元素とZrを含有する複合酸化物から形成された中間層を設けることが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】
特開平9−97621号公報(特許請求の範囲)
【0005】
しかしながら、上記特許文献1で提案されているような中間層を固体電解質層とインターコネクタとの界面に設けることにより、固体電解質層とインターコネクタとの接合強度はある程度は向上するが、未だ満足し得るものではなく、さらに、その向上が求められている。
【0006】
従って、本発明の目的は、固体電解質層とインターコネクタとの接合強度が向上し、ガスリークが有効に防止され、さらには昇降温の繰り返しによる両者間での界面剥離が抑制された固体電解質形燃料電池セルを提供することにある。
【0007】
本発明によれば、ガス通路を備えた電極支持基板上に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物から形成されたインターコネクタが設けられ、前記電極支持基板上の前記インターコネクタが設けられていない部分に、内側電極層、固体電解質層及び外側電極層がこの順に積層されている燃料電池セルにおいて、
前記固体電解質層は、希土類元素が固溶したジルコニアから形成され、前記インターコネクタが設けられていない部分の前記電極支持基板表面を覆うように形成され且つ前記インターコネクタに接合されているとともに、少なくとも前記固体電解質層と前記インターコネクタとの接合界面には、NiもしくはNiOと、希土類元素が固溶したジルコニアもしくは希土類元素酸化物とから形成された中間層が介在していることを特徴とする燃料電池セルが提供される。
【0008】
本発明の燃料電池セルでは、固体電解質層とインターコネクタとの界面部分に、NiもしくはNiOと、希土類元素が固溶したジルコニアもしくは希土類元素酸化物とから形成された中間層を介在させることにより、固体電解質層とインターコネクタとの間の接合強度を顕著に向上させることが可能となったものである。この理由は明確ではないが、本発明者等は次のように推定している。
【0009】
即ち、希土類元素が固溶したジルコニア或いは希土類酸化物は、反応拡散成分であり、前述した特許文献1にも記載されているように、固体電解質層やインターコネクタ中の成分と反応して拡散するものであり、両者の接合強度の向上に直接的に寄与する。一方、NiもしくはNiOは反応拡散促進成分であり、固体電解質層やインターコネクタ中には拡散しにくいが、これが上記の反応拡散成分と混在していることにより、固体電解質層やインターコネクタ中への反応拡散が促進され、この結果として、固体電解質層とインターコネクタとの接合強度が著しく向上するものと思われる。事実、後述する実施例及び比較例から明らかな通り、反応拡散成分(希土類元素が固溶したジルコニア或いは希土類酸化物)と反応拡散促進成分(Ni,NiO)とを含有する層を固体電解質層とインターコネクタとの間に介在させた場合には、反応拡散成分のみからなる層を拡散した場合に比して、その接合強度は飛躍的に向上している。
【0010】
また、本発明において、最も重要な特徴は、上記の中間層は、実質的に燃料極と同じ組成を有するものであってよいということである。即ち、燃料極は、通常、Ni或いはNiOと、希土類元素が固溶したジルコニア(安定化ジルコニアと呼ばれる)とから形成されるものである。従って、上記のような中間層は、燃料極と同じ組成であってもよく、例えば燃料極形成用のスラリー乃至ペーストなどは、そのまま、上記の中間層の形成のために使用することができ、また、場合によっては、燃料極を形成する層自体が、固体電解質層とインターコネクタとの界面に介在するような層構成を採用することもでき、生産性や製造コストの点で極めて有利である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明を、以下、添付図面に示す具体例に基づいて説明する。
図1は、本発明の燃料電池セルの代表的な構造を示す横断面図であり、図2は、本発明の他の例の燃料電池セルの構造を示す横断面図であり、図3は、本発明の更に他の例の燃料電池セルの要部を示す図であり、図4は、図1の燃料電池セルから形成されるセルスタックの構造を示す横断面図である。
【0012】
図1において、全体として1で示す燃料電池セルは、電極支持基板10と、内側電極層である燃料極層11と、固体電解質層12と、外側電極層である酸素極層13と、インターコネクタ14とから形成されている。
【0013】
電極支持基板10は、図1から明らかな通り、両面がフラットで且つ厚みが均一の平板部10aと、平板部10aの両端部分に形成されている曲率部10bとからなっており、平板部10aの内部には、複数のガス通路16が形成されている。
【0014】
また、インターコネクタ14は、中間層18を介して電極支持基板10の平板部10aの一方の表面に設けられており、燃料極層11は、平板部10aの他方の表面に積層されており、図1に示されているように、平板部10aの一方の表面まで延びており、中間層18を介してインターコネクタ14の両側端部に接合している。さらに、固体電解質層12は、燃料極層11を覆うように設けられるものであり、図1に示されているように、燃料極層11の全面に積層されており、中間層18を介してインターコネクタ14の両側端部に接合されている。即ち、固体電解質層12の両端部にはインターコネクタ14の両端部が重畳して端部同士が接合されている。酸素極層13は、固体電解質層12上に積層され、燃料極層11と対面すると同時に、インターコネクタ14と対面するように、電極支持基板10の平板部10aのインターコネクタ14が形成されていない側の表面上に位置している。
【0015】
かかる燃料電池セルでは、電極支持基板10内のガス通路16内に燃料ガス(水素)を供給し、且つ酸素極層13の外側に空気等の酸素含有ガスを供給し、所定の作動温度まで加熱することにより発電が行われる。即ち、酸素極層13で下記式(1)の電極反応を生じ、また燃料極層11では、下記式(2)の電極反応を生じることによって発電する。
【0016】
酸素極: 1/2O2+2e− → O2− (固体電解質) …(1)
燃料極: O2− (固体電解質)+ H2 → H2O+2e− …(2)
【0017】
かかる発電によって生成した電流は、電極支持基板10に設けられているインターコネクタ14を介して集電される。
【0018】
(電極支持基板10)
電極支持基板10は、燃料ガスを燃料極層まで透過させるためにガス透過性であること、及びインターコネクタ14を介して集電を行うために導電性であることが要求され、このような要求を満足する多孔質の導電性セラミック(もしくはサーメット)から形成されるが、燃料極層11や固体電解質層12との同時焼成により基板10を製造する上では、鉄属金属成分と特定の希土類酸化物とから電極支持基板10を形成することが好ましい。
【0019】
上記の鉄族金属成分は、電極支持基板10に導電性を付与するためのものであり、鉄族金属単体であってもよいし、また鉄族金属酸化物、鉄族金属の合金もしくは合金酸化物であってもよい。鉄族金属には、鉄、ニッケル及びコバルトがあり、何れをも使用することができるが、安価であること及び燃料ガス中で安定であることからNi及び/またはNiOを鉄族成分として含有していることが好ましい。
【0020】
また鉄族金属成分と共に使用される希土類酸化物成分は、電極支持基板10の熱膨張係数を、固体電解質層12と近似させるために使用されるものであり、高い導電率を維持し且つ固体電解質層12等への元素の拡散を防止し、また、元素拡散による影響をなくすため、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,Prからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む酸化物が好適である。このような希土類酸化物の例としては、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、Pr2O3を挙げることができ、特に安価であるという点で、Y2O3,Yb2O3が好適である。
【0021】
上述した鉄族成分は、電極支持基板10中に35〜65体積%の量で含まれ、希土類酸化物は、電極支持基板10中に35〜65体積%の量で含まれていることが好適である。勿論、電極支持基板10中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
【0022】
上記のような鉄族金属成分と希土類酸化物とから構成される電極支持基板10は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35乃至50%の範囲にあることが好適である。また、その導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
【0023】
上記電極支持基板10の平板部10aの長さdは、通常、15〜35mmで厚みは、2.5〜5mm程度であることが望ましい。また曲率部10bの曲率半径は、1.25〜2.5mm程度であるのがよい。
【0024】
(燃料極層11)
内側電極層である燃料極層11は、前述した式(2)の電極反応を生じせしめるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスから形成される。例えば、希土類元素が固溶しているZrO2と、Ni及び/またはNiOとから形成される。この希土類元素が固溶しているZrO2(安定化ジルコニア)としては、以下に述べる固体電解質層12の形成に使用されているものと同様のものを用いるがよい。
【0025】
燃料極層11中の安定化ジルコニア含量は、35乃至65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65乃至35体積%であるのがよい。さらに、この燃料極層11の開気孔率は、15%以上、特に20乃至40%の範囲にあるのがよく、その厚みは、1〜30μmであることが望ましい。例えば、燃料極層11の厚みがあまり薄いと、集電性能が低下するおそれがあり、またあまり厚いと、固体電解質層12と燃料極層11との間で熱膨張差による剥離等を生じるおそれがある。
【0026】
(固体電解質層12)
燃料極層11上に設けられている固体電解質層12は、電極間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有するものでなければならず、一般に3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrO2(通常、安定化ジルコニアと呼ばれる)から形成されている。この希土類元素としては、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luを例示することができるが、安価であるという点からY、Ybが望ましい。
この固体電解質層12を形成する安定化ジルコニアセラミックスは、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましく、且つその厚みが10〜100μmであることが望ましい。
【0027】
(酸素極層13)
本発明の燃料電池セルでは、図1から明らかな通り、外側電極層である酸素極層13が、電極支持基板10の平板部10aのインターコネクタ14が設けられていない側の表面に対面するように形成されている。即ち、酸素極層13とインターコネクタ14とは、平板部10aを介して対峙している。
【0028】
酸素極層13は、所謂ABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成される。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物の少なくとも1種が好適であり、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaFeO3系酸化物が特に好適である。尚、上記ペロブスカイト型酸化物においては、AサイトにLaと共にSrなどが存在していてもよいし、さらにBサイトには、FeとともにCoやMnが存在していてもよい。
【0029】
また、酸素極層13は、ガス透過性を有していなければならず、従って、上記の導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30乃至50%の範囲にあることが望ましい。また、酸素極層13の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
【0030】
(インターコネクタ14)
上記の酸素極層13に対面するように、電極支持基板10の平板部10aの一方の表面に設けられているインターコネクタ14は、ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物(LaCrO 3 系酸化物)から形成されるが、燃料ガス(水素)及び酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。また、電極支持基板10の内部を通る燃料ガス及び電極支持基板10の外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかるペロブスカイト型酸化物は緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。
【0031】
かかるインターコネクタ14は、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜200μmであることが望ましい。即ち、この範囲よりも厚みが薄いと、ガスのリークを生じやすく、またこの範囲よりも厚みが大きいと、電気抵抗が大きく、電位降下により集電機能が低下してしまうおそれがあるからである。
【0032】
また、インターコネクタ14の外面(上面)には、P型半導体層(図示せず)を設けることもできる。即ち、この燃料電池セル1から組み立てられるセルスタック(後述する図4参照)では、インターコネクタ14には、導電性の集電部材20が接続されるが、集電部材20を直接インターコネクタ14に直接接続すると、非オーム接触により、電位降下が大きくなり、集電性能が低下するおそれがある。しかるに、集電部材20を、P型半導体層を介してインターコネクタ14に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし、集電性能の低下を有効に回避することが可能となる。このようなP型半導体としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物を例示することができる。具体的には、インターコネクタ14を構成するLaCrO3系酸化物よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層の厚みは、一般に、30乃至100μmの範囲にあることが好ましい。
【0033】
(中間層18)
上述した構造の燃料電池セル1においては、ガスのリークを防止するために、インターコネクタ14の両端部には、緻密質の固体電解質層12の両端部を接合する必要があるが、本発明においては、図1から明らかなように、インターコネクタ14が中間層18を介して電極支持基板10上に設けられており、固体電解質層12とインターコネクタ14との接合界面には、この中間層18が介在していることが重要である。
【0034】
この中間層18は、NiもしくはNiOからなる反応拡散促進成分と、希土類元素が固溶したジルコニアもしくは希土類元素酸化物とからなる反応拡散成分とから形成されている。既に述べたように、このような組成の中間層18をインターコネクタ14と固体電解質層12の界面に介在させることにより、電池セル1の製造工程での焼成に際して、反応拡散成分の固体電解質層12及びインターコネクタ14への反応拡散が促進され、固体電解質層12とインターコネクタ14との接合強度が高められることとなる。尚、反応拡散成分としての希土類酸化物としては、例えばY2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、並びに、Pr2O3などを例示することができ、特に安価であるという点で、Y2O3,Yb2O3が好適である。
【0035】
このような中間層18において、その反応拡散促進成分(Ni、NiO)は、35乃至80体積%の割合で含有しているのがよく、反応拡散成分(安定化ジルコニア、希土類酸化物)は、20乃至65体積%の割合で含有しているのが、固体電解質層12とインターコネクタ14との接合強度を高める上で好適である。さらに、中間層18の厚みは10μm以下、特に2乃至7μmの範囲にあるのがよい。即ち、必要以上に中間層18を厚く設けても、それ以上の接合強度の向上は得られず、逆に中間層18を介してのガスリークを生じるおそれがある。また、あまり薄いと、接合強度の向上効果が希薄となるおそれがある。
【0036】
本発明において、上記中間層18は、前述した燃料極層11と同じ組成であってよいという利点がある。即ち、反応拡散促進成分として、希土類元素が固溶したジルコニアを用いた場合、中間層18の組成は燃料極層11と同じ組成となり得る。このため、燃料極層11の形成用材料を、そのまま中間層18の形成用材料として用いることができ、生産効率上及びコスト低減の面で極めて有利である。
【0037】
上述した本発明の燃料電池セル1は、図1に示す構造に限定されるものではなく、種々の構成を採り得る。
【0038】
例えば、図1の例では、インターコネクタ14の端部の下側部分に中間層18を間に挟んで固体電解質層12が接合されているが、図2の他の例に示されているように、インターコネクタ14の端部側面部分に中間層18を介して、固体電解質層12を接合することができる。
【0039】
また、図1及び図2の例では、燃料極層11が、固体電解質層12と一体となってインターコネクタ14の端部に接合されているが、燃料極層11は、少なくとも酸素極層13に対面している限り、インターコネクタ14の端部にまで延びていなくともよい。
【0040】
さらに、中間層18が燃料極層11と同じ組成であってよいことを利用し、例えば図3の例に示すように、燃料極層11と固体電解質層12との積層体をインターコネクタ14の端部上に重ねてしまうこともできる。この場合には、燃料極層11が前述した中間層18としての機能を果たすことが理解されよう。
【0041】
さらにまた、上述した燃料極層11と酸素極層13との位置関係を逆にすることができる。即ち、内側電極層として酸素極層を設け、外側電極層として燃料極層を設けることができる。この場合には、電極支持基板10の平板部10aに形成されているガス通路16内には、空気等の酸素含有ガスが供給され、セル1の外側(燃料極層の外側)に燃料ガスが供給されて発電されることとなり、電流の流れは、図1の構造の燃料電池セルとは逆になる。
【0042】
(燃料電池セルの製造)
以上のような構造を有する燃料電池セルは、図1の構造のものを例にとると、以下のようにして製造される。
【0043】
先ず、Ni等の鉄族金属或いはその酸化物粉末と、Y2O3などの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いての押出成形により、電極支持基板成形体を作製し、これを乾燥する。
【0044】
次に、安定化ジルコニア粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いて固体電解質層用シートを作製する。
【0045】
さらに、燃料極層形成用材料(Ni或いはNiO粉末と安定化ジルコニア粉末)をアルコール等の溶媒中に分散したペーストを、上記で形成された固体電解質層用シートに塗布し乾燥して、燃料極層用のコーティング層を形成する。また、燃料極層形成用材料を用いて形成されたスラリーを使用して燃料極層用のシートを作製し、この燃料極層用シートを固体電解質層用シートに積層してもよい。
【0046】
上記のようにして形成された電極支持基板成形体の平坦部において固体電解質層用シートの両端部が所定間隔をおくように離間して、図1に示すような層構造となるように積層し、乾燥する。その後、固体電解質シートの両端面を研磨し、面取りする。
【0047】
この後、インターコネクタ用材料(例えば、LaCrO3系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、インターコネクタ用シートを作製する。このインターコネクタ用シートに、中間層形成用材料を分散したペースト(これは、前述した燃料層形成用材料を分散したペーストであってよい)を塗布し、これをインターコネクタシートが外側になるようにし、これを露出した電極支持基板成形体表面に積層し、焼成用積層体を作製する。
【0048】
次いで、上記の焼成用積層体を脱バインダ処理した後に、酸素含有雰囲気中で、1300〜1600℃で同時焼成する。かかる焼成により、燃料極層中の反応拡散成分が固体電解質層やインターコネクタに拡散し、両者の接合強度が高められる。
【0049】
このようにして得られた焼結体の所定の位置に、酸素極形成用材料(例えば、LaFeO3系酸化物粉末)と溶媒を含有するペースト、及び必要により、P型半導体層形成用材料(例えば、LaFeO3系酸化物粉末)と溶媒を含むペーストを、ディッピング等により塗布し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、図1に示す構造の本発明の燃料電池セル1を製造することができる。
【0050】
尚、電極支持基板10や燃料極層11の形成にNi単体を用いた場合には、酸素含有雰囲気での焼成により、Niが酸化されてNiOとなっているが、必要により、還元処理することにより、Niに戻すことができる。また、発電中に還元雰囲気に曝されるため、この時にもNiに還元されることになる。
【0051】
層構成の異なる燃料電池セルは、上記の方法に準拠して容易に製造することができる。例えば図2の燃料電池セルは、インターコネクタ用シートの所定位置に中間層形成用のスラリーを塗布した後、該シートを電極支持基板成形体に積層し、その両端を研磨し、その後、燃料極層用のコーティング層が形成された固体電解質用シートを、その両端部がインターコネクタ用シートの両側端部に重畳するように積層することにより、作製される。さらに図3の燃料電池セルは、電極支持成形体にインターコネクタ用シートを積層した後、その両側端面を覆うようにして燃料極層用のコーティング層が形成された固体電解質用シートを積層することにより作製することができる。
【0052】
(セルスタック)
セルスタックは、図4に示すように、上述した燃料電池セル1が複数集合して、上下に隣接する一方の燃料電池セル1aと他方の燃料電池セル1bとの間に、金属フェルト及び/又は金属板からなる集電部材20を介在させ、両者を互いに直列に接続することにより構成されている。即ち、一方の燃料電池セル1の電極支持基板10は、インターコネクタ14及び集電部材20を介して、他方の燃料電池セル1bの酸素極層13に電気的に接続されている。また、このようなセルスタックは、図4に示すように、サイドバイサイドに配置されており、隣接するセルスタック同士は、導電部材22によって直列に接続されている。
【0053】
このようなセルスタックを、所定の収納容器内に収容することにより燃料電池が構成される。この収納容器には、外部から水素等の燃料ガスを燃料電池セル1に導入する導入管、及び空気等の酸素含有ガスを燃料電池セル1の外部空間に導入するための導入管が設けられており、燃料電池セルが所定温度(例えば600乃至900℃)に加熱されることにより発電し、使用された燃料ガス、酸素含有ガスは、収納容器外に排出される。
【0054】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.8〜1.0μmの表1に示す希土類酸化物粉末を、焼成後におけるNi換算の体積比率がそれぞれ50%になるように混合した。この混合粉末に、ポアー剤、PVAからなる有機バインダーと、水からなる溶媒とを混合して形成した支持基板材料を押出成形し、扁平状の支持基板成形体を作製し、これを乾燥し、1000℃まで昇温し、脱脂、仮焼し、支持基板成形体を作製した。
【0055】
次に、0.8μmの8モル%Y2O3を含有するZrO2(YSZ)粉末と、上記した平均粒径0.5μmのNiO粉末と、アクリル樹脂からなる有機バインダーと、トルエンからなる溶媒とを混合した燃料極となるスラリーを作製し、また、上記YSZ粉末と、アクリル樹脂からなる有機バインダーと、トルエンからなる溶媒とを混合した固体電解質材料を用いてシート状成形体を作製し、このシート状成形体に燃料極となるスラリーを印刷し、これを、固体電解質成形体側が外側になるように、かつ支持体成形体の平坦部で所定間隔をおいて離間するように、支持基板成形体にまき付け、乾燥した。
【0056】
次に、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.8μmの表1に示す希土類元素を8モル%含有するZrO2粉末、平均粒径0.8μmの希土類元素酸化物粉末を、焼成後における体積比率が表1に示す含有量になるように混合した。この混合粉末と、アクリル樹脂からなる有機バインダーと、トルエンからなる溶媒とを混合して中間層用のスラリを作製した。
また、平均粒径0.9μmのLa(MgCr)O3系材料と、アクリル樹脂からなる有機バインダーと、トルエンからなる溶媒とを混合したインターコネクタ材料を用いてシート状成形体を作製し、このインターコネクタシート状成形体に、上記中間層用のスラリを塗布し、露出した支持基板成形体の表面に、中間層用の成形体側が支持基板成形体側になるように、かつ、固体電解質成形体の両端部の上面に、中間層用の成形体を介してインターコネクタシート状成形体の両端部が積層されるように積層し、支持基板成形体に燃料極成形体、固体電解質成形体、中間層用の成形体、インターコネクタ成形体が積層された積層成形体を作製した。
次に、この積層成形体を脱脂処理し、さらに、大気中にて1500℃で同時焼成した。
【0057】
次に、平均粒径1.2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3粉末と、イソプロピルアルコールからなる混合液を作製し、前記積層成形体の固体電解質の表面、および、インターコネクタの表面にそれぞれ噴霧塗布し、酸素極成形体とP型半導体用成形体を形成し、1150℃で焼き付け、酸素極とP型半導体を形成し、燃料電池セルを作製した。
次に、この燃料電池セルの支持基板側から、水素ガスを流し、850℃で還元処理を施した。
尚、支持基板の幅は26mm、厚みは3.5mm、長さは200mmで、酸素極は、幅24mm、長さ130mmとした。燃料極の厚みは10μm、固体電解質の厚みは30μm、酸素極の厚みは50μm、インターコネクタの厚みは50μm、P型半導体の厚みは50μmであった。中間層の厚みを表1に示す。
なお、燃料極、固体電解質、酸素極、中間層、インターコネクタ、P型半導体の厚さは断面のSEM観察から求めた。
また、比較例(試料No.13)として、平均粒径0.8μmの表1に示す希土類元素を8モル%含有するZrO2粉末を用いて中間層用のスラリを作製する以外は、上記と同様にして、燃料電池セルを作製した。
【0058】
このようにして作製した燃料電池セルの酸素極とP型半導体にPt製の集電部材と電圧線を取り付けると同時に、ガス通路にPt線を差し込み、参照電極とし、燃料電池セルを850℃に加熱し、酸素極に酸素含有ガスを供給し、燃料極に燃料ガスを供給し、発電させ、電流を取り出し、0.4A/cm2の電流密度の時の参照電極と集電部材との間の電位降下を測定し、測定結果を表1に記載した。
【0059】
また、酸素極に酸素含有ガスを供給し、燃料極に燃料ガスを供給し、燃料電池セルを、室温から850℃/hの昇温速度で850℃まで昇温し、850℃で1時間維持し、100℃までの降温速度を850℃/hの降温速度で降温し、その後室温まで放置して冷却する工程を50回繰り返し、インターコネクタの端部と固体電解質の端部との接合状態をリーク試験で確認した。リーク試験は、水中に浸漬した燃料電池セル内にHeガスを1kg/cm2の圧力で供給し、インターコネクタの端部と固体電解質の端部との間からのリークを確認することにより行った。その結果を表1に記載する。
【0060】
【表1】
表1から、インターコネクタの端部と固体電解質の端部間に、中間層を形成していない本発明の範囲外である試料No.1は、0.4A/cm2の電流密度の時の電位降下が110mVと大きく、リーク試験でガスリークが発生した。
【0061】
一方、本発明の試料No.3〜12、14〜29では、固体電解質とインターコネクタの間に、Niと希土類元素を含有するZrO2、Niと希土類元素酸化物からなる中間層を形成させることで、0.4A/cm2の電流密度の時の電位降下を56mV以下と小さくすることができ、しかもリーク試験でガスリークを防止できることが判る。
【0062】
さらに、中間層中のNi化合物のNi換算量が35〜80体積%の試料No.4〜11は、さらに0.4A/cm2の電流密度の時の電位降下を33mV以下と小さくでき、さらに、Ni化合物のNi換算量が50〜70体積%の試料No.5〜8では、0.4A/cm2の電流密度の時の電位降下を27mV以下に小さくすることができた。
【0063】
中間層に含有されるNi化合物のNi換算量を65体積%とし、中間層の厚さを5〜30μmの範囲で変化させた試料No.14〜17についてみると、中間層の厚さが20μmを超える試料No.17では電位降下が53mVとやや大きくなっていることから、中間層の厚さは20μm以下が好ましいことが判る。
また、支持基板中の希土類元素をYに固定し、中間層中の希土類元素を変更した試料No.18〜No.22、支持基板中と中間層中の希土類元素を変更した試料No.23〜No.27はいずれも0.4A/cm2の電流密度の時の電位降下が37mV以下と小さくなった。
【0064】
一方、比較例の周期律表第3a族元素を含有するZrO2を含まないNi単独の中間層を持つ試料No.2は、中間層に亀裂が観察され、ガスリークが発生し、0.4A/cm2の電流密度の時の電位降下が123mVと大きくなった。
また、比較例のNiを含まない希土類元素を含有するZrO2単独の中間層を持つ試料No.13は、中間層の抵抗が大きくなるために、0.4A/cm2の電流密度の時の電位降下が244mVと非常に大きくなり、しかも、リーク試験でガスリークが発生した。
【0065】
【発明の効果】
本発明の固体電解質形燃料電池セルは、インターコネクタと固体電解質層との接合強度が著しく向上しており、両者の接合界面からのガスリークが有効に防止され、且つ発電及び発電の停止に由来する昇降温を繰り返した場合にも、両者の接合界面での剥離を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池セルの代表的な構造を示す横断面図。
【図2】本発明の他の例の燃料電池セルの構造を示す横断面図。
【図3】本発明の更に他の例の燃料電池セルの要部を示す図。
【図4】図1の燃料電池セルから形成されるセルスタックの構造を示す横断面図。
【符号の説明】
1:燃料電池セル
10:電極支持基板
11:燃料極層
12:固体電解質層
13:酸素極層
14:インターコネクタ
Claims (6)
- ガス通路を備えた電極支持基板上に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物から形成されたインターコネクタが設けられ、前記電極支持基板上の前記インターコネクタが設けられていない部分に、内側電極層、固体電解質層及び外側電極層がこの順に積層されている燃料電池セルにおいて、
前記固体電解質層は、希土類元素が固溶したジルコニアから形成され、前記インターコネクタが設けられていない部分の前記電極支持基板表面を覆うように形成され且つ前記インターコネクタに接合されているとともに、少なくとも前記固体電解質層と前記インターコネクタとの接合界面には、NiもしくはNiOと、希土類元素が固溶したジルコニアもしくは希土類元素酸化物とから形成された中間層が介在していることを特徴とする燃料電池セル。 - 前記内側電極層が燃料極であり、前記外側電極層が酸素極である請求項1に記載の燃料電池セル。
- 前記固体電解質層と前記インターコネクタとの界面部分に介在する前記中間層が前記内側電極層と同じ組成である請求項2に記載の燃料電池セル。
- 前記電極支持基板が、平板部と、該平板部の両端部分に位置する曲率部とからなっている請求項1乃至3の何れかに記載の燃料電池セル。
- 前記電極支持基板が、鉄族金属成分と、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,及びPrからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む酸化物成分とから形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の燃料電池セル。
- 請求項1乃至5の何れかに記載の燃料電池セルの複数を、集電部材を介して互いに電気的に接続してなるセルスタック。
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