JP4545014B2 - 燃料電池セル及びこれを用いた燃料電池セルスタック、燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、内側電極、固体電解質層、外側電極の積層構造からなる発電部を具備する細長平板状の燃料電池セル及びこれを用いた燃料電池セルスタック、燃料電池に関するものである。
次世代エネルギーとして、近年、燃料電池セルのスタック(複数の燃料電池セルを集電部材を介して直列に接続してなる束)を収納容器内に収容した燃料電池が種々提案されている。
従来の燃料電池セル3は、図に示すように、内部に複数のガス流路を備えた扁平で幅
広の多孔性内側電極(空気電極)31と、この多孔性内側電極31の外周面に一部を除き積層された固体電解質層32と、この固体電解質層32の外側に積層された外側電極(燃料電極)33と、露出する多孔性内側電極(空気電極)31を覆うように設けられた電子伝導性相互接続材料(インターコネクタ)34から構成されている。
そして、燃料電池セルスタックは、図に示すように、上記の燃料電池セル3(3a、3b)を複数個集合させ、一方の燃料電池セル3aと他方の燃料電池セル3bとの間に金属フェルトなどからなる集電部材35を介在させ、一方の燃料電池セル3aのインターコネクタ34と他方の燃料電池セル3bの外側電極(燃料電極)33とを電気的に接続して構成されている(例えば特許文献1参照)。
特開平1−169878号公報
ここで、支持板の一方側平坦部に設けられた固体電解質層32としては、ZrO系、CeO系、ランタンガレート系等の材料からなり、他方側平坦部に設けられたインターコネクタ34としては、一般にLaCrO系材料が採用されている。このインターコネクタ材料としてのLaCrO系材料は、酸化・還元に強く、緻密であり、導電性に優れることから、現在のところ、インターコネクタ34に最も適した材料として採用されているものである。
ところが、これらの材料を採用した燃料電池セルは、還元雰囲気において図に示すようにインターコネクタ34側を背に(インターコネクタ34側が凸となるように)燃料電池セル3が反ってしまうという問題が生じていた。つまり、燃料電池セル3は、通常、発電時には還元性ガスに晒されるが、このとき、ZrO系、CeO系、ランタンガレート系等からなる固体電解質層は還元雰囲気における寸法変化が小さいのに対し、インターコネクタは還元雰囲気において寸法変化が大きいため、上述のように反ってしまうのである。
このように、燃料電池セルが反り変形をおこしてしまうと、隣り合う燃料電池セルに介在された集電部材との接触が悪くなり、最悪の場合、電気的接続が解除され、複数の燃料電池セルから集電することができなくなるという問題があった。
本発明は、還元雰囲気における反り変形の抑制された燃料電池セル及びこれを用いた燃料電池セルスタック、燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、発電に寄与しない部位に補強材を固着することにより、上記目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、長手方向に沿って内部に複数のガス流路を有し、対向する両平坦部と該平坦部同士を接続する一対の円弧状部とからなる支持板を具備するとともに、該支持板の一方側平坦部少なくとも固体電解質層と外側電極とをこの順に積層してなり、前記支持体の他方側平坦部LaCrO 系酸化物を含んでなるインターコネクタを具備してなる細長平板状の燃料電池セル本体と、前記円弧状部上に、前記支持板の長手方向に沿って固着された補強材とからなることを特徴とする燃料電池セルである。
このように対向する両平坦部と該平坦部同士を接続する一対の円弧状部とからなる支持板を備える燃料電池セルの円弧状部上に、支持板の長手方向に沿って補強材を固着することにより、燃料電池セルが発電中に還元雰囲気に晒されたとしても、燃料電池セルが反ることを強制的に防ぐことができる。特に、酸化・還元雰囲気に晒されたり、振動や熱応力などの影響により、クラックが発生しやすい円弧状部補強材を固着することで、クラックの問題も解消することができる。
ここで、補強材の少なくとも表面が絶縁性セラミックスからなるのが好ましい。これにより、上述のように円弧状部に補強材が設けられる際の空気極とインターコネクタがショートするおそれがなくなる。
また本発明は、上記の燃料電池セルを、集電部材を介して直列に複数個接続してなることを特徴とする燃料電池セルスタックである。さらに本発明は、上記の燃料電池セルスタックを収納容器内に収納してなることを特徴とする燃料電池である。このような燃料電池セルスタック及び燃料電池により、電圧低下の少ない長期信頼性に優れた燃料電池を得ることができる。
本発明の燃料電池セルによれば、インターコネクター材料の還元時の寸法変化による反りを抑えることができる。また、補強材は発電部以外に固着されるため、発電効率は低下することなく維持することができる。
本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の燃料電池セルは、図1に示すように、長手方向に沿って内部に複数のガス流路211を有し、対向する両平坦部と該両平坦部同士を接続する一対の円弧状部とからなる支持板21を具備するとともに、該支持板21の一方側平坦部に内側から順次形成された内側電極(燃料極22)、固体電解質層23、外側電極(空気極24)の積層構造からなる発電部を具備し、前記支持板21の他方側平坦部LaCrO 系酸化物を含んでなるインターコネクタ25を具備してなる細長平板状の燃料電池セル本体20と、円弧状部上に、支持板21の長手方向に沿って固着された補強材11とからなることを特徴とするものである。
(支持板21)
支持板21は、図1及び図に示すように、細長平板状であって、その横断面形状からわかるように平坦部Aと、平坦部A両端の円弧状部Bとから構成されている。そして、支持板21の内部には、複数のガス流路211が適当な間隔で長手方向に沿って設けられており、本実施形態においてはガス流路211には燃料ガスが通過するようになっている。
ここで、支持板21には、燃料ガスを後述の燃料極22まで透過させるためにガス透過性であること、後述のインターコネクタ25を介しての集電を行うために導電性であること、同時焼成時の熱膨張差により固体電解質層23などのクラックや剥離を生じさせることのないこと等が要求される。さらに、このような要求に加え、還元・酸化サイクルにおける支持板21の体積膨張に起因した固体電解質層23などのクラックを抑制する必要もある。そこで、支持板21は、触媒金属及びその酸化物のいずれかと、触媒金属及びその酸化物との反応物を生成しない無機骨材、例えば、金属酸化物である固体電解質又は少なくとも一種の希土類元素を含有する希土類元素酸化物とを含有せしめて構成される。
触媒金属としてはFe、Co、Niなどの鉄族成分があり、金属単体であってもよいし、また酸化物、合金もしくは合金酸化物であってもよい。本発明では、何れをも使用することができるが、安価であること及び燃料ガス中で安定であることから、Ni及び/またはNiOを含有していることが好ましい。
また、無機骨材としては、所謂三相界面(固体電解質/触媒金属/気相の界面)を増やして後述の(2)式で示される電極反応を促進するために、固体電解質を形成している安定化ジルコニアやランタンガレート系ペロブスカイト型組成物等と同等の材料を用いても良いし、熱膨張係数を下げて固体電解質と近似させるために希土類酸化物を用いても良い。後者には特にSc、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む酸化物が使用される。このような希土類酸化物の具体例としては、Sc、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prを例示することができ、特に安価であるという点で、Y、Yb、さらにはYが好適である。
支持板21中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
そして、支持板21は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好適である。また、支持板21の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
尚、このような支持板の熱膨張係数は約11.5×10−6/℃であり、ヤング率は30〜50GPa程度である。
(燃料極22)
内側電極としての燃料極22は、図に示すように、支持板21の一部を残して被覆するように支持板21の外側に積層されている。具体的には、支持板21の平坦部Aの一方側とその両端の円弧状部Bを被覆するように燃料極22が積層され、支持板21の平坦部Aの他方側は被覆されずに露出している(ただし、露出する部分は、後述のインターコネクタ25で被覆され、図面上は燃料極22がインターコネクタ25の両サイドまで延びるように形成されている)。燃料極22は、後述の式(2)の電極反応を生じせしめるものであり、多孔質の導電性セラミックス、例えば、希土類元素が固溶しているZrOと、Ni及び/またはNiOとから形成される。この希土類元素が固溶しているZrO(安定化ジルコニア)としては、後述の固体電解質層23の形成に使用されているものと同様のものを用いるのがよい。燃料極22中の安定化ジルコニア含量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65〜35体積%であるのが好ましい。さらに、この燃料極22の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましい。尚、燃料極22の厚みは、固体電解質層23と燃料極22との間の熱膨張差による剥離のおそれや燃料極22の性能を考慮して、1〜30μmであることが望ましい。
尚、本例における燃料極22は、インターコネクタ25の両サイドにまで延びているが、支持板21の全周にわたって燃料極22を形成し、この外側にインターコネクタ25を積層するようにしてもよい。また、燃料極22は、後述の空気極24に対向する位置に存在していれば発電部としての機能を果たすため、空気極24が設けられている側の平坦部Aにのみ形成されてもよい。
また、燃料極22は支持板21と一体となっていてもよい。すなわち、支持板が燃料極を兼ねる(支持板が燃料極としての機能を有する)ようにしてもよい。
(固体電解質層23)
固体電解質層23は、燃料極22の外側にこれを被覆するように積層されている。具体的には、支持板21の平坦部Aの一方側主面とその両端の円弧状部Bを被覆するように積層された燃料極22の外側に、燃料極22と同様に固体電解質層23が積層され、支持板21の平坦部Aの他方側主面は被覆されずに露出している(ただし、露出する部分は、後述のインターコネクタ25で被覆され、図面上は固体電解質層23がインターコネクタ25の両サイドまで延びるように形成されている)。
この固体電解質層23は、一般に3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrO(通常、安定化ジルコニアと呼ばれる)からなる緻密質なセラミックスから形成されている。希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを例示することができるが、安価であるという点からY、Ybが望ましい。また、この固体電解質層23を形成する安定化ジルコニアセラミックスは、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましく、且つその厚みが10〜100μmであることが望ましい。尚、固体電解質層23の形成材料としては、安定化ジルコニア以外に、ランタンガレート系ペロブスカイト型組成物等から構成されていても良い。
尚、緻密質な固体電解質層で支持板の円弧状部Bを被覆することにより、燃料ガスのこの円弧状部Bからの漏れをなくすことができるが、多孔質の支持板と緻密質の固体電解質層が直接接触すると接合強度が弱い。そこで、本発明においては、支持板と固体電解質層の間の気孔率である燃料極が、支持板と固体電解質層の間に形成されることにより、この接合強度が高められている。
(空気極24)
外側電極としての空気極24は、一方側の平坦部Aに設けられている。これにより、この一方側の平坦部A、すなわち、空気極24と、燃料極22の固体電解質層23を介して空気極24に対向する部分との間で発電がなされる。
空気極24は、所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成される。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも1種が好適であり、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaFeO系酸化物が特に好適である。尚、上記ペロブスカイト型酸化物においては、AサイトにLaと共にSrなどが存在していてもよいし、さらにBサイトには、FeとともにCoやMnが存在していてもよい。
また、空気極24は、ガス透過性を有していなければならず、従って、空気極24を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが望ましい。さらに、このような空気極24の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
(インターコネクタ25)
インターコネクタ25は、支持板21の燃料極22及び固体電解質層23で被覆されていない露出部分(他方側の平坦部A)を被覆するように設けられている。このインターコネクタ25は、燃料ガス(水素)及び酸素含有ガスと接触するため(図面上はインターコネクタの外側をP型半導体で被覆しているがこのものは多孔質であるため、インターコネクタが酸素含有ガスと接触する)、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が使用される。また、支持板21の内部を通る燃料ガス及び支持板21の外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかるインターコネクタ25は緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。また、ガスのリーク防止と電気抵抗という観点から、厚みが10〜200μmであることが望ましい。一方、反り抑制という観点からは、100μm以下が望ましい。
また、図1から明らかな通り、ガスのリークを防止するために、インターコネクタ25の両サイドには、緻密質の固体電解質層23が密着しているが、シール性を高めるために、例えばYなどからなる接合層(図示せず)をインターコネクタ25の両側面と固体電解質層23との間に設けることもできる。
尚、多孔質の支持板と緻密質の固体電解質層の接合強度について前述したように、支持板とインターコネクタの間にも同様の接合強度の問題がある。したがって、支持板とインターコネクタの間に中間層、例えば熱膨張係数、導電率も考慮するとNi+YSZからなる中間層を介在させるのが好ましい。尚、この中間層は燃料極と配合比が異なるものである。
また、インターコネクタ25は、図のように、支持板21の平坦部Aの上に直接設けてもよいが、この部分にも燃料極22を設け、即ち、燃料極22を支持板21の全周にわたって設け、燃料極22上にインターコネクタ25を設けるようにしてもよい。この場合には、支持板21とインターコネクタ25との間の界面での電位降下を抑制することができる上で有利となる。
(P型半導体層26)
インターコネクタ25の外面(上面)には、P型半導体層26が設けられている。図に示す集電部材27を、P型半導体層26を介してインターコネクタ25に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし、集電性能の低下を有効に回避することが可能となり、例えば、一方の燃料電池セルの空気極24からの電流を、他方の燃料電池セルの支持板21に効率良く伝達できる。このようなP型半導体としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物を例示することができる。
具体的には、インターコネクタ25を構成するLaCrO系酸化物よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層26の厚みは、一般に、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。
(補強材11)
図1に示す補強材11は、燃料電池セル本体20に円弧状部Bに沿って固着されている。その形状は横断面が所定厚みの半円筒状若しくは長手方向に延びた瓦のような形状になっている。より具体的な形状は、図に示してある。
この補強材11は、燃料電池が650〜1000℃という高温下及び空気中で使用されることから、耐熱性、耐酸化性が要求される。また、燃料電池セルの反りを防止するためのものであるから、高強度、高剛性が要求される。特にヤング率が100GPa以上であるのが好ましい。支持板のヤング率が約30〜50GPaであるので、補強材11のヤング率が100GPa以上であれば補強としての機能を果たすことができるからである。さらに、図に示す形状のように、円弧状部Bをすべて覆いつくさずに所定の間隙を有して補強材11を固着させるのであればよいが、円弧状部Bをさらに被覆して空気極24とインターコネクタ25に接触してしまうような形状とする場合には、燃料電池セルがショートしないように上記特性に加えてさらに絶縁性が要求される。
このような要求を満足する材質として、好ましくはジルコニア、フォルステライト、チタニア、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックスが挙げられるが、これらに限らず、多孔質のセラミックスに金属を含浸させたものや耐熱金属の表面に、絶縁性セラミックスをコーティングしたものなども使用できる。
また補強材11は、主としてガラスなどの耐熱接着剤を用いて燃料電池セル本体20に接着されるので、補強材11と燃料電池セル本体20(特に支持板21)との熱膨張係数は近いものが良く、その熱膨張係数差が3×10−6/℃以下、望ましくは、2×10−6/℃以下、さらには1×10−6/℃以下であるのが望ましい。支持板の熱膨張係数が11.5×10−6/℃程度であるから、補強材の熱膨張係数は8.5〜14.5×10−6/℃程度であるのがよく、後述の長手方向に複数に分割した形状(図2)ではなく長手方向に連続する形状(図1)の場合には10.5〜12.5×10−6/℃程度であるのが望ましい。この熱膨張係数差が3×10−6/℃を超えると、起動時、使用時の温度変化で補強材11と燃料電池セル本体20との間に発生する熱応力により燃料電池セルが破壊するおそれがあるからである。そこで、熱膨張係数差の大きなセラミックス又は金属を補強材11として用いるときは、添加物としてのフィラーを含有させることにより熱膨張係数を調整して、燃料電池セル本体20と補強材11との熱膨張係数差を小さくしてもよい。尚、耐熱接着剤としてのガラスについては結晶化、非結晶化ガラスを限定するものではない。
このような補強材11としては、図1に示すように、燃料電池セル本体20と同じ長さのものを用いてもよいが、図2に示すように短い瓦状の部材を同列上に配置したような構成(長手方向に分割した形状)の補強材121、122、123を採用してもよい。この場合、それぞれの補強材121、122、123の長さが10mm以上であり、それぞれの部材間の間隙が5mm以下であるのが好ましい。このような長さの補強材と間隙であれば、反りを抑制することができるからである。
補強材のない細長平板状の燃料電池セルでは、酸化・還元雰囲気に晒されたり、振動や熱応力などの影響により、円弧状部Bにクラックが発生してしまうことがあるが、図1及び図2に示す本発明においては、円弧状部Bに補強材を固着する構成となっているので、クラックの問題も解消することができる。
(燃料電池セル)
本発明は、燃料電池セル本体20の長さが120mm以上、平坦部Aの長さが20〜35mm、弧状部Bの長さ(弧の長さ)が3〜8mm程度であり、燃料電池セル本体20の厚みが2.5〜8mmである場合に好適に用いることができる。このように細長く薄い(対向する平坦部A間の距離が短い)場合には、インターコネクタ25側を背にして弓なりに反り易いからである。
尚、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記形態では、それぞれの機能に適した材料、組織等とするために支持板と内側電極を別個に形成した(支持板21上に燃料極22を形成した)が、支持板自体に燃料極としての機能を付与してもよい。これにより簡易な構造となり製造上も有利となる。また、燃料極と空気極の配置を逆にしてもよい。
(発電について)
上記のような構造の燃料電池セルでは、燃料極22における空気極24と対向する部位が発電に寄与する。即ち、空気極24の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持板21内のガス流路211に燃料ガス(水素)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより、空気極24で下記式(1)の電極反応を生じ、また燃料極22の発電に寄与する部分では例えば下記式(2)の電極反応を生じることによって発電する。
空気極: 1/2O+2e → O2− (固体電解質) …(1)
燃料極: O2− (固体電解質)+ H → HO+2e…(2)
かかる発電によって生成した電流は、支持板21に取り付けられているインターコネクタ25を介して集電される。
(燃料電池セルの製造)
以上のような構造を有する燃料電池セル1は、以下のようにして製造される。
先ず、Ni等の鉄族金属或いはその酸化物粉末と、希土類酸化物(例えばY粉末)と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いての押出成形及び乾燥することにより、支持板成形体を作製する。
次に、燃料極形成用材料(Ni或いはNiO粉末と安定化ジルコニア粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いて燃料極用のシートを作製する。尚、燃料極用のシートを作製する代りに、燃料極形成用材料を溶媒中に分散したペーストを、上記で形成された支持板成形体の所定位置に塗布し乾燥して、燃料極用のコーティング層を形成してもよい。
このとき、後にインターコネクタが形成される部分には、予めマスクしておくのがよい。
この燃料極用シートを仮焼し、表面に燃料極仮焼体が形成された支持板仮焼体を作製する。ここで、この後、燃料極仮焼体の開気孔中に、樹脂材料を含浸することが望ましい。樹脂材料としては、アクリル系の樹脂などが用いられ、含浸させるには、樹脂を溶解した有機溶媒中に浸漬すれば良い。
そして、燃料極仮焼体の表面に浸漬塗布法により固体電解質層を形成する。先ず、固体電解質層材料を含有する浸漬液を作製し、この浸漬液に上記支持板仮焼体を浸漬する。固体電解質層材料としては、例えば希土類元素が固溶したZrO粉末(安定化ジルコニア粉末)を用い、その他に、浸漬液中には、有機バインダーとしてアクリル系バインダーと、溶媒としてトルエンが添加混合されている。この浸漬液は、所定の粘度を有するように、有機成分が調整されている。尚、燃料側電極仮焼体の開気孔中には、固体電解質層材料は含浸されていない。
この後、インターコネクタ用材料(例えば、LaCrO系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、インターコネクタ用シートを作製する。このインターコネクタ用シートを、上記で得られた積層体の固体電解質層が形成されていない位置に積層し、焼成用積層体を作製する。
次いで、上記の焼成用積層体を脱バインダ処理し、酸素含有雰囲気中、1300〜1600℃で同時焼成し、得られた焼結体の所定の位置に、空気極形成用材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)と溶媒を含有するペースト、及び必要により、P型半導体層形成用材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)と溶媒を含むペーストを、ディッピング等により塗布し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、燃料電池セル本体を製造することができる。
尚、支持板や燃料極の形成にNi単体を用いた場合には、酸素含有雰囲気での焼成により、Niが酸化されてNiOとなっているが、必要により、還元処理することにより、Niに戻すことができる。
一方、補強材を構成するZrO、Alなどの原料粉末をIPA(イソプロピルアルコール)やトルエン、アセトンなどの溶媒およびバインダーを添加し混合することにより補強材用のスラリーを作製する。このスラリーを用いて、押し出し成形により補強材用成形体を作製する。
この補強材用成形体を1000〜1800℃に熱することにより補強材成形体は補強材となる。これをすでに作製した燃料電池セル本体にガラスペーストを用いて接着させ、900〜1000℃に熱することにより、燃料電池セル本体と一体化させる。
(燃料電池セルスタック)
燃料電池セルスタックは、図に示すように、上述した燃料電池セル20を複数集合させて、隣接する一方の燃料電池セル20と他方の燃料電池セル20との間に、金属フェルト及び/又は金属板からなる集電部材27を介在させ、両者を互いに直列に接続することにより構成されている。即ち、一方の燃料電池セル20の支持板21は、インターコネクタ25、P型半導体層26、集電部材27を介して、他方の燃料電池セル20の空気極24に電気的に接続されている。また、このような燃料電池セルスタックは、図に示すように、サイドバイサイドに配置されており、隣接するセルスタック同士は、導電部材28によって直列に接続されている。
(燃料電池)
本発明の燃料電池は、図に示す燃料電池セルスタックを、収納容器内に収容して構成される。この収納容器には、外部から水素等の燃料ガスを燃料電池セル1に導入する導入管、及び空気等の酸素含有ガスを燃料電池セル1の外部空間に導入するための導入管が設けられており、燃料電池セル1が所定温度(例えば、650〜1000℃)に加熱されることにより発電し、使用された燃料ガス、酸素含有ガスは、収納容器外に排出される。
平均粒径0.5μmのNiO粉末と、Y粉末(平均粒径は0.6〜0.9μm)を、焼成後におけるNiOがNi換算で48体積%、Yが52体積%になるようにして混合し、この混合粉末に、ポアー剤、有機バインダーと、水(溶媒)とを混合して形成した支持板用坏土を押出成形し、これを乾燥し、脱バインダー処理し、細長平板状の支持板用成形体を作製し、これを乾燥した。この後、1000℃で仮焼し、支持板仮焼体を作製した。
次に、8モル%Yを含有するZrO(YSZ)粉末と、NiO粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合したスラリーを用いて燃料極形成用シートを作製し、これを支持板仮焼体の所定位置に積層し、1000℃で仮焼し、支持板仮焼体の表面に燃料極仮焼体を形成した。
この後、上記YSZ粉末と、有機バインダー(アクリル樹脂)と、トルエンからなる溶媒とを混合した浸漬液を作製し、この浸漬液中に支持板仮焼体を浸漬し、引き上げることにより燃料側電極仮焼体の表面に固体電解質層材料の塗布膜を形成し、乾燥することにより固体電解質層成形体を形成した。
次に、平均粒径2μmのLaCrO系酸化物粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合したスラリーを用いて、インターコネクタ用シートを作製し、これらのシートを、上記積層シートのマスクを剥離した部分に積層し、支持板仮焼体、燃料極仮焼体、インターコネクタ用シート、固体電解質層成形体からなる焼結用積層シートを作製した。次に、この焼結用積層シートを脱バインダ処理し、大気中にて1500℃で同時焼成した。
得られた焼結体を、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8粉末と、溶媒をからなるペースト中に浸漬し、焼結体に形成されている固体電解質層の表面に空気極用コーティング層を設け、同時に、上記ペーストを焼結体に形成されているインターコネクタの外面に塗布し、P型半導体用コーティング層を設け、さらに、1150℃で焼き付け、燃料電池セル本体を作製した。
作製した燃料電池セル本体の長さは145mm、幅は26mm、厚みは3.2mm、燃料極の厚みは10μm、空気極の厚みは50μm、インターコネクタの厚みは50μm、P型半導体層の厚みは50μmであった。
尚、燃料電池セル本体は、焼成後であって還元雰囲気に晒される前であっても若干の反りが確認される。このとき、図に示すようにインターコネクタの形成側と反対側の面の上下端に直線状の定規を当て、この定規とセル表面との最大距離Lを求めた値を反り量とすると、この反り量は0.5mmであった。
この作した燃料電池セル本体の円弧状部に、ZrO粉末と溶媒及びバインダーを混合することにより得られたスラリーを押し出し成形し焼成してなる補強材を、ホウケイ酸系のガラスペーストにより取り付けた。そのあと、900℃に熱することにより完全に燃料電池セル本体と補強材とを接着させ、図1に示すような燃料電池セルを作製した。
得られた燃料電池セルを850℃の温度で水素ガスをガス流路内に12時間供給し、水素ガスを流しながら放冷した。その後、反り量(最大距離L)を求めたところ、この反り量は0.6mmであった。
一方、比較例として、補強材を接着させてない燃料電池セルを作製し、上記還元処理後の反り量(最大距離L)を測定したところ、1.8mmであった。
従って、本発明の燃料電池セルでは、反り量を抑制できることがわかる。
本発明の燃料電池セルの一実施形態を示す斜視図である。 本発明の燃料電池セルの他の実施形態を示す斜視図である。 図1に示す燃料電池セル1の説明図である。 に示す燃料電池セルを複数個直列に配置してなる本発明の燃料電池セルスタックの説明図である。 従来の燃料電池セルの説明図である。 従来の燃料電池セルスタックの説明図である。 燃料電池セルの反りに関する説明図である。
符号の説明
1・・・燃料電池セル
11,121,122,123,13・・・補強材
20・・・燃料電池セル本体
21・・・支持板
211・・・ガス流路
A・・・平坦部
B・・・円弧状部
22・・・燃料極
23・・・固体電解質層
24・・・空気極
25・・・インターコネクタ
26・・・P型半導体
27・・・集電部材
28・・・導電部材

Claims (4)

  1. 長手方向に沿って内部に複数のガス流路を有し、対向する両平坦部と該平坦部同士を接続する一対の円弧状部とからなる支持板を具備するとともに、該支持板の一方側平坦部少なくとも固体電解質層と外側電極とをこの順に積層してなり、前記支持体の他方側平坦部LaCrO 系酸化物を含んでなるインターコネクタを具備してなる細長平板状の燃料電池セル本体と、前記円弧状部上に、前記支持板の長手方向に沿って固着された補強材とからなることを特徴とする燃料電池セル。
  2. 前記補強材の少なくとも表面が絶縁性セラミックスからなることを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料電池セルを、集電部材を介して直列に複数個接続してなることを特徴とする燃料電池セルスタック。
  4. 請求項に記載の燃料電池セルスタックを収納容器内に収納してなることを特徴とする燃料電池。
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