JP5188069B2 - 燃料電池セルおよびセルスタックならびに燃料電池 - Google Patents

燃料電池セルおよびセルスタックならびに燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、支持基板の一方側主面にインターコネクタを、他方側主面に発電部を有する燃料電池セルおよびセルスタックならびに燃料電池に関するものである。
次世代エネルギーとして、近年、燃料電池セルのセルスタックを収納容器内に収容した燃料電池が種々提案されている。
図6は従来の中空平板型の固体電解質形燃料電池セルを示すもので、全体的に見て細長基板状の導電性の支持基板1を備えている。支持基板1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路1a(ガス流路を形成する)が長さ方向(軸長方向)に貫通して形成されており、燃料電池セルは、この支持基板1上に各種の部材が設けられた構造を有している。このような燃料電池セルの複数を集電部材により互いに直列に接続することにより、燃料電池を構成するセルスタックを形成することができる。
支持基板1は、平坦部Aと平坦部Aの両端の弧状部Bとからなっており、平坦部Aの他方側主面と両側の弧状部Bを覆うように燃料極層2が設けられており、さらに、この燃料極層2を覆うように、緻密質な固体電解質層3が積層されており、この固体電解質層3の上には、燃料極層2と対面するように、平坦部Aの一方側主面に酸素極層4が積層されている。
また、燃料極層2および固体電極層3が積層されていない、支持基板1の他方側主面を構成する平坦部Aには、インターコネクタ5が形成されている。燃料極層2および固体電解質層3は、インターコネクタ5の両サイドにまで延びており、支持基板1の表面が外部に露出しないように構成されている。
そして、支持基板1の一方委側主面(酸素極層4が形成された側の面)の、酸素極層4の両側に、酸素極層4と所定間隔を置いて離間してインターコネクタ材料層6が形成されており、これらのインターコネクタ材料層6は一定幅を有する直線状とされ、ガス流路形成方向zに、かつインターコネクタ5と支持基板1を介して対向するように連続して形成されている。インターコネクタ材料層6は、燃料極層2、固体電解質層3から露出している(例えば特許文献1参照)。
このような燃料電池セルでは、インターコネクタ5と対向して2条のインターコネクタ材料層6が形成されているため、支持基板1の両側に形成されたインターコネクタ5、インターコネクタ材料層6にそれぞれ長さ方向、幅方向に寸法変化が発生しても、それぞれの寸法変化が打ち消しあって燃料電池セル全体としての長さ方向、幅方向の反り量を抑制できる。
特開2006−155919号公報
しかしながら、上記燃料電池セルでは、インターコネクタ5と対向して2条のインターコネクタ材料層6が形成されているため、燃料電池セルの反りを抑制することができるものの、未だ反り量が大きいという問題がある。
即ち、近年では、小型化、材料コスト削減等の観点から支持基板1の厚みを薄くすることが行われているが、このように支持基板1の厚みが薄くなると支持基板1の強度が低下し、特許文献1のようにインターコネクタ5と対向して2条のインターコネクタ材料層6を形成したとしても、支持基板1の両側で、インターコネクタ5とインターコネクタ材料層6の積層構造(積層位置、積層面積等)が異なるため、燃料電池セルの反り量が大きくなるという問題があった。
本発明は、反り量を最小限に抑制できる燃料電池セルおよびセルスタックならびに燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池セルは、柱状の支持基板の一方側主面に固体電解質層、電極層および第1インターコネクタを、前記一方側主面と前記支持基板を挟んで反対側の他方側主面に固体電解質層、電極層および第2インターコネクタを有してなり、前記第1および第2インターコネクタが前記支持基板を挟んで対称かつ前記支持基板の長さ方向に一端から他端まで延設されてなることを特徴とする。
このような燃料電池セルでは、第1インターコネクタおよび第2インターコネクタが、支持基板の両主面に形成されているため、第1、第2インターコネクタに、それぞれ長さ方向、幅方向に寸法変化が発生しても、支持基板の両主面で同一の寸法変化が生じ、燃料電池セルの長さ方向、幅方向の反り量を抑制できる。本発明では、特に、燃料電池セルの反りに大きく影響を与える緻密なインターコネクタを、支持基板の両主面に対称に形成したため、反り抑制効果が大きい。本発明では、第1インターコネクタおよび第2インターコネクタを支持基板の両主面に対称に形成することにより、燃料電池セルの反り量をさらに抑制できる。
また、本発明の燃料電池セルは、柱状の支持基板の一方側主面に固体電解質層、電極層および第1インターコネクタを、前記一方側主面と前記支持基板を挟んで反対側の他方側主面に固体電解質層、電極層および第2インターコネクタを有してなり、前記第1および第2インターコネクタが前記支持基板を挟んで対称に設けられており、かつ前記支持基板の長さ方向に一端から他端まで延設されてなることを特徴とする。このような燃料電池セルでは、支持基板の両主面に固体電解質層および電極層、言い換えれば電極層で固体電解質層を挟持した発電部を有するため、燃料電池セルの積層構造を、支持基板の両主面で対称に近づけることができ、燃料電池セルの反りをさらに抑制することができるとともに、発電部面積を増加できるため、燃料電池セルの発電性能を向上できる。特に、本発明の燃料電池セルでは、前記固体電解質層および前記電極層が、前記支持基板の両主面に対称的に形成されているため、燃料電池セルの第1、第2インターコネクタ、固体電解質層および電極層が、支持基板の両主面で対称に形成され、燃料電池セルの反りをさらに抑制することができる。
また、本発明の燃料電池セルは、前記支持基板内部にガス流路を有し、かつ前記支持基板の両主面にそれぞれ設けられた前記第1、第2インターコネクタがガス流路形成方向に延設され、前記第2インターコネクタの両側に、かつ前記ガス流路形成方向に前記固体電解質層および前記電極層が延設されていることを特徴とする。
ガス流路形成方向(セル長さ方向)にインターコネクタが形成されている場合には、インターコネクタの延設方向で反りが発生しやすいが(図2(a)参照)、本発明の燃料電池セルでは、支持基板の両主面に第1、第2インターコネクタが対称に形成されているため、反りを大きく抑制することが可能となる。
本発明のセルスタックは、上記燃料電池セルを複数配列し、一方の前記燃料電池セルの電極層と、該一方の燃料電池セルと隣り合う他方の前記燃料電池セルの第1インターコネクタとを集電部材で電気的に接続してなることを特徴とする。このようなセルスタックでは、燃料電池セルを電気的に直列に接続することができるとともに、上記したように、燃料電池セルの反りを最小限に抑制できるため、長期発電に伴う集電部材の燃料電池セルからの剥離等を抑制でき、複数の燃料電池セルの電気的接続信頼性を向上できる。
本発明の燃料電池は、上記セルスタックを収納容器内に収納してなることを特徴とする。このような燃料電池では、燃料電池セルの反りを最小限に抑制できるため、長期信頼性を向上できる。
本発明の燃料電池セルでは、第1インターコネクタおよび第2インターコネクタが、柱状の支持基板の一方側主面に固体電解質層、電極層および第1インターコネクタを、前記一方側主面と前記支持基板を挟んで反対側の他方側主面に固体電解質層、電極層および第2インターコネクタを有してなり、前記第1および第2インターコネクタが前記支持基板を挟んで対称に設けられており、かつ前記支持基板の長さ方向に一端から他端まで延設されているため、第1、第2インターコネクタに、それぞれ長さ方向、幅方向に寸法変化が発生しても、支持基板の両主面で同一寸法変化が生じ、燃料電池セルの長さ方向、幅方向の反り量を抑制できる。これにより、電気的接続信頼性を向上したセルスタックを提供でき、燃料電池の長期信頼性を向上できる。
本発明の燃料電池セルを示す図1において、全体として30で示す燃料電池セルは中空平板状であり、断面が扁平状で、全体的に見て細長基板状の導電性の支持基板31を備えている。支持基板31の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路31a(ガス流路を形成する)が長さ方向(軸長方向)に貫通して形成されており、燃料電池セル30は、支持基板31上に各種の部材が設けられた構造を有している。このような燃料電池セル30の複数を、図3に示すように、集電部材40により互いに直列に接続することによりセルスタックを形成することができる。
支持基板31は、図1に示されている形状から理解されるように、平坦部Aと平坦部Aの両端の弧状部Bとからなっており、平坦部Aは主面を構成する。平坦部Aの両主面は互いにほぼ平行に形成されており、平坦部Aの両主面の幅方向両端部と両側の弧状部Bを覆うように燃料極層32が設けられており、さらに、この燃料極層32を覆うように、緻密質な固体電解質層33が積層されている。尚、図1(a)では、理解を容易にするため、燃料極層32を太線で記載した。
支持基板31の一方側主面(図1(a)の支持基板の上面)の幅方向中央部には、図2(b)に示すように、第1インターコネクタ35が形成され、支持基板31の他方側主面(図1(a)の支持基板の下面)の幅方向両端部における固体電解質層33の上面には、燃料極層32と対面するようにそれぞれ酸素極層34が積層され、これにより支持基板31の他方側主面の幅方向両端部には発電部が形成されている。燃料極層32および固体電解質層33は、平坦部Aの他方側主面に、ガス流路形成方向に連続して形成されている。いわゆる縦縞型の燃料電池セルである。尚、図2は、インターコネクタ35、36を黒塗りで記載するとともに、セル長さを短縮して記載した。
燃料電池セル30は、支持基板31が導電性を有するとともに、該導電性支持基板31の他方側主面を構成する平坦部Aに燃料極層32を介して固体電解質層33を形成することにより、ガス透過性が要求される支持基板31、およびガスとの反応性が要求される電極層を、別個に形成するため、それぞれの機能に対応した材料、組織等とすることができ、また集電も容易に行うことができ、最適な燃料電池セルを作製できる。
第1インターコネクタ35は、燃料極層32および固体電極層33が積層されていない、支持基板31の一方側主面(図1(a)の支持基板の上面)を構成する平坦部Aに形成されている。図1から明らかな通り、燃料極層32および固体電解質層33は、支持基板31の他方側主面から第1インターコネクタ35の両サイドにまで延びており、支持基板31の表面が外部に露出しないように構成されている。
そして、本発明では、図1に示すように、支持基板31の一方側主面と対向する他方側主面であって、幅方向中央部に第2インターコネクタ36が形成されており、この第2インターコネクタ36は一定幅を有する直線状とされ、ガス流路形成方向(セル長さ方向)zに、かつ第1インターコネクタ35と支持基板31を介して対向するように形成されている。
支持基板31の他方側主面の幅方向両端部には、酸素極層34がガス流路形成方向(セル長さ方向)zに、言い換えれば、第2インターコネクタ36に所定間隔を置いて離間して形成されている。図2(b−1)(b−2)に、燃料電池セルの側面図を示す。
インターコネクタ35、36は、支持基板31の両主面に対称に形成されており、第1、第2インターコネクタ35、36は、支持基板31の厚みを2分する面(主面と平行で支持基板31厚みを2分する面)を介して対称に形成されている。即ち、第1、第2インターコネクタ35、36は、支持基板31の厚みを2分する面を介して、同一位置に同一形状同一材料で形成されている。
このような燃料電池セルでは、第1インターコネクタ35および第2インターコネクタ36が、支持基板31の両主面に対称に形成されているため、第1、第2インターコネクタ35、36に、それぞれ長さ方向、幅方向に寸法変化が発生しても、支持基板31の両主面で同一の寸法変化が生じ、燃料電池セルの長さ方向、幅方向の反り量を最小限に抑制できる。また、燃料電池セルの製造時においても、熱膨張による変形を低減することができる。尚、第1インターコネクタ35および第2インターコネクタ36を、両主面に対称に形成せずとも、両主面に形成することだけでも反り量をある程度抑制できる。
また、ガス流路形成方向zにインターコネクタが形成されている場合には、セルの長さ方向で反りが発生しやすい(図2(a−2)参照)ため、本発明の燃料電池セルを好適に用いることができる。
第2インターコネクタ36は、酸素極層34との導通や、他部材、例えば後述する集電部材との導通を防止し、燃料電池セルの信頼性を向上するという点から、絶縁層により被覆することが望ましい。
また、本発明の燃料電池セルでは、長さが120mm以上、厚みが8mm以下、幅が20mm以上である場合に好適に用いることができる。即ち、中空平板型燃料電池セルでは、長さが長い場合、図2(a−2)に示すように、セルを長さ方向に見た場合に、インターコネクタ側を背にして弓なりに反り易くなるため、本発明を有効に用いることができ、また、幅が広くなると、セルの幅方向に、即ち、燃料電池セルを幅方向に見た場合に、インターコネクタ側を背にして三日月状に反り易くなるため(a−3)、本発明を有効に用いることができる。セルの長さは120mm以上、特に145mm以上である場合に、好適に用いることができる。
また、燃料電池セルの厚みが8mm以下である場合には、対向する主面間の距離が薄いため、長さ方向や幅方向に反り易くなるため、本発明を有効に用いることができる。特に3mm以下である場合に好適に用いることができる。
上記のような構造の燃料電池セルでは、燃料極層32の酸素極34と対面している部分が燃料極として作動して発電する。即ち、酸素極層34の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持基板31内のガス通路31aに燃料ガス(水素)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより、酸素極層34で下記式(1)の電極反応を生じ、また燃料極層32の燃料極となる部分では例えば下記式(2)の電極反応を生じることによって発電する。
酸素極: 1/2O+2e → O2− (固体電解質) …(1)
燃料極: O2− (固体電解質)+ H → HO+2e …(2)
かかる発電によって生成した電流は、支持基板31に取り付けられているインターコネクタ35を介して集電される。
(支持基板31)
上記のような構造を有する燃料電池セル30において、支持基板31は、燃料ガスを燃料極層32まで透過させるためにガス透過性(多孔質)であること、およびインターコネクタ35を介しての集電を行うために導電性であること、同時焼成時の熱膨張差による固体電解質などのクラックや剥離がないことが要求されるが、このような要求を満たすと同時に、還元・酸化サイクルにおける支持基板31の体積膨張に起因した固体電解質などのクラックを抑制する目的で、触媒活性金属およびその酸化物のいずれかと、触媒金属およびその酸化物との反応物を生成しない無機骨材、例えば、金属酸化物である固体電解質層または少なくとも一種の希土類元素を含有する希土類元素酸化物とを含有せしめて構成する。
触媒金属としてはFe、Co、Niなどの鉄族成分があり、金属単体であってもよいし、また酸化物、合金もしくは合金酸化物であってもよい。本発明では、何れをも使用することができるが、安価であることおよび燃料ガス中で安定であることからNiおよび/またはNiOを含有していることが好ましい。
また、無機骨材としては、(2)の電極反応を促進するために、所謂三相界面(電解質/触媒金属/気相の界面)を増やすために、固体電解質層33を形成している安定化ジルコニアやランタンガレート系ペロブスカイト型組成物等と同等の材料を用いても良いし、熱膨張係数を下げて固体電解質層33と近似させるために希土類酸化物を用いても良い。後者には特にSc、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む酸化物が使用される。このような希土類酸化物の具体例としては、Sc、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prを例示することができ、特に安価であるという点で、Y、Yb、さらにはYが好適である。
尚、支持基板31中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
上記のような支持基板31は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好適である。また、支持基板31の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
また、支持基板31の平坦部Aの長さは、通常、20〜35mm、弧状部Bの長さ(弧の長さ)は、3〜8mm程度であり、支持基板31の厚みは(平坦部Aの両面の間隔)は2.5mm以下の場合に、本発明を好適に用いることができる。
(燃料極層32)
本発明において、燃料極層32は、前述した式(2)の電極反応を生じせしめるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスから形成される。例えば、希土類元素が固溶しているZrOと、Niおよび/またはNiOとから形成される。この希土類元素が固溶しているZrO(安定化ジルコニア)としては、以下に述べる固体電解質層33の形成に使用されているものと同様のものを用いるのがよい。
燃料極層32中の安定化ジルコニア含量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65〜35体積%であるのがよい。さらに、この燃料極層32の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのがよく、その厚みは、1〜30μmであることが望ましい。例えば、燃料極層32の厚みがあまり薄いと、性能が低下するおそれがあり、またあまり厚いと、固体電解質層33と燃料極層32との間で熱膨張差による剥離等を生じるおそれがある。
また、図1の例では、この燃料極層32は、インターコネクタ35の両サイドにまで延びているが、酸素極層34に対面する位置に存在していればよいため、例えば酸素極層34が設けられている側の平坦部Aにのみ燃料極層32が形成されていてもよい。さらには、支持基板31の全周にわたって燃料極層32を形成することも可能である。本発明においては、固体電解質層33と支持基板31との接合強度を高めるために、固体電解質層33の全体が燃料極層32上に形成されていることが好適である。
(固体電解質層33)
この燃料極層32上に設けられている固体電解質層33は、一般に3〜15モル%の希土類元素が固溶したZrO(通常、安定化ジルコニア)と呼ばれる緻密質なセラミックスから形成されている。希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを例示することができるが、安価であるという点からY、Ybが望ましい。
この固体電解質層33を形成する安定化ジルコニアセラミックスは、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましく、且つその厚みが10〜100μmであることが望ましい。固体電解質層33としては、安定化ジルコニア以外に、ランタンガレート系ペロブスカイト型組成物から構成されていても良い。
(酸素極層34)
酸素極層34は、所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成される。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも1種が好適であり、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaFeO系酸化物が特に好適である。尚、上記ペロブスカイト型酸化物においては、AサイトにLaと共にSrなどが存在していてもよいし、さらにBサイトには、FeとともにCoやMnが存在していてもよい。
また、酸素極層34は、ガス透過性を有していなければならず、従って、酸素極層34を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが望ましい。
このような酸素極層34の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
(インターコネクタ35、36)
支持基板31上に設けられているインターコネクタ35、36は、導電性セラミックスからなるが、燃料ガス(水素)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、かかる導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)を使用できる。ランタンクロマイト系酸化物としては、(La,Sr)CrO、Laの一部をSrで置換したもの、Crの一部をMgで置換したもの、La(Cr,Mg)Oを使用できる。本発明では、ランタンクロマイト系のインターコネクタ35,36に限定されるものではないが、ランタンクロマイト系のインターコネクタ35,36では、特に、還元時に膨張する傾向があるため、本発明の燃料電池セルを好適に用いることができる。
また、支持基板31の内部を通る燃料ガスおよび支持基板31の外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかる導電性セラミックスは緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。
かかるインターコネクタ35、36は、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜200μmであることが望ましい。即ち、この範囲よりも厚みが薄いと、ガスのリークを生じやすく、またこの範囲よりも厚みが大きいと、電気抵抗が大きく、電位降下により集電機能が低下してしまうおそれがあるからである。
また、図1から明らかな通り、ガスのリークを防止するために、インターコネクタ35、36の両サイドには、緻密質の固体電解質層33が密着しているが、シール性を高めるために、例えばYなどからなる接合層(図示せず)をインターコネクタ35、36の両側面と固体電解質層33との間に設けることもできる。
第2インターコネクタ36は、第1インターコネクタ35と同一材料を用いることができるが、この場合には製造上容易となる。また、インターコネクタ35の材料と少々異なっていてもある程度の効果を有する。例えば、置換材料が異なっていたり、添加物が異なるものも使用できる。
インターコネクタ35の外面(上面)には、P型半導体層を設けることもできる。P型半導体としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物を例示することができる。
(燃料電池セルの製造)
以上のような構造を有する燃料電池セルは、以下のようにして製造される。先ず、Ni等の鉄族金属或いはその酸化物粉末と、例えばY粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いての押出成形により、支持基板成形体を作製し、これを乾燥する。
次に、燃料極層形成用材料(Ni或いはNiO粉末と安定化ジルコニア粉末)、有機バインダーおよび溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いて燃料極層用のシートを作製する。また、燃料極層用のシートを作製する代りに、燃料極層形成用材料を溶媒中に分散したペーストを、上記で形成された支持基板成形体の所定位置に塗布し乾燥して、燃料極層用のコーティング層を形成してもよい。この際、インターコネクタ35、36が形成される部分には燃料極層が形成されないようにした。これを仮焼し、表面に燃料極層仮焼体が形成された支持基板仮焼体を作製し、インターコネクタ35、36が形成される、燃料極層仮焼体の開口部にマスクして、固体電解質層が形成されないようにする。
この後、固体電解質材料を含有する浸漬液を作製し、この浸漬液に上記支持基板仮焼体を浸漬する。固体電解質材料としては、例えば希土類元素が固溶したZrO粉を用い、その他に、浸漬液中には、有機バインダーと、溶媒が添加混合されている。この浸漬液は、所定の粘度を有するように、有機成分が調整されている。
この後、インターコネクタ用材料(例えば、LaCrO系酸化物粉末)、有機バインダーおよび溶媒を混合してスラリーを調製し、インターコネクタ用シートを作製する。このシートを、上記で得られた積層体のマスクした所定位置に、マスクを除去して積層し、焼成用積層体を作製する。
次いで、上記の焼成用積層体を脱バインダ処理し、酸素含有雰囲気中、1300〜1600℃で同時焼成し、得られた焼結体の所定の位置に、酸素極層形成用材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)と溶媒を含有するペースト、および必要により、P型半導体層形成用材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)と溶媒を含むペーストを、ディッピング等により塗布し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、図1に示す構造の本発明の燃料電池セル30を製造することができる。
尚、支持基板31や燃料極層32の形成にNiを用いた場合には、酸素含有雰囲気での焼成により、Niが酸化されてNiOとなっているが、必要により、還元処理することにより、Niに戻すことができる。
(セルスタック)
セルスタックは、図3に示すように、上述した燃料電池セル30が複数集合して、一方の燃料電池セル30と隣り合う他方の燃料電池セル30との間に、金属板からなる集電部材40を介在させ、両者を互いに直列に接続することにより構成されている。即ち、他方の燃料電池セル30の支持基板31は、第1インターコネクタ35、集電部材40を介して、一方の燃料電池セル30の酸素極層34に電気的に接続されている。集電部材40は、一方の燃料電池セル30の幅方向端部を抱え込み、酸素極層34に接続するアーム部40aと、他方の燃料電池セル30の第1インターコネクタ35に当接する当接部40bと、アーム部40aと当接部40bとを支持する支持部40cとから構成され、支持部40cは、ガス流路形成方向zに形成されている。一方の燃料電池セル30の酸素極層34に接続された集電部材40は、一方の燃料電池セル30の第2インターコネクタ36には接続しないように形成されている。集電部材40は、一方の燃料電池セル30の酸素極層34と、他方の燃料電池セル30の第1インターコネクタ35と接合しており、第2インターコネクタ36は外部とは何ら接続されず、ダミーとされている。
尚、図3では、支持基板31の一方側主面にも酸素極層34を有する図4の燃料電池セルを集電部材40で接続する場合について記載したものである。
本発明の燃料電池は、セルスタックを収納容器内に収容して構成される。この収納容器には、外部から水素等の燃料ガスを燃料電池セル30に導入する導入管、および空気等の酸素含有ガスを燃料電池セル30の外部空間に導入するための導入管が設けられており、燃料電池セルが所定温度(例えば、600〜900℃)に加熱されることにより発電し、使用された燃料ガス、酸素含有ガスは、収納容器外に排出される。
尚、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記形態では、支持基板31上に燃料極層32を形成した場合について説明したが、支持基板自体に燃料極としての機能を付与し、支持基板に固体電解質層、酸素極層を形成しても良い。また、上記形態では、支持基板31上に燃料極層32を形成した場合について説明したが、支持基板に酸素極層を形成したセルであってもよい。さらに、支持基板自体に酸素極層としての機能を付与しても良い。また、上記形態では、中空平板型燃料電池セルについて説明したが、例えば、円筒型燃料電池セルにおいても適用できる。
図4は、本発明の燃料電池セルの他の形態を示すもので、この形態では、支持基板31の他方側主面のみならず、一方側主面にも固体電解質層33および酸素極層34を有しており、支持基板31の両主面に発電部を有している。
即ち、支持基板31の一方側主面にも、幅方向中央部に形成された第1インターコネクタ35の両側に、固体電解質層33および酸素極層34が形成され、一方側主面の固体電解質層33、酸素極層34、第1インターコネクタ35と、他方側主面の固体電解質層33、酸素極層34、第2インターコネクタ36とが、支持基板31の厚みを2分する面で対称に形成されている。図2(c−1)(c−2)に燃料電池セルの側面図を示す。
このような燃料電池セルは、図3に示すように、集電部材40により接続され、セルスタックが形成される。
このような燃料電池セルでは、支持基板31の両主面に、インターコネクタ35、36、固体電解質層33、酸素極層34を有するため、燃料電池セルの積層構造を、支持基板31の両主面で対称とすることができ、燃料電池セルの反りをさらに抑制することができるとともに、発電部が支持基板31の一方側主面にも形成されているため発電面積を向上して、燃料電池セルの発電性能を向上できる。
図5は、本発明の燃料電池セルのさらに他の形態を示すもので、この形態では、支持基板31の一方側主面の幅方向両側に第1インターコネクタ35がそれぞれ形成され、これらの第1インターコネクタ35の間に固体電解質層33、酸素極層34が、ガス流路形成方向zに形成されており、支持基板31の他方側主面の幅方向両側にも第2インターコネクタ36がそれぞれ形成され、これらの第2インターコネクタ36の間に固体電解質層33、酸素極層34が、ガス流路形成方向zに形成され、支持基板31の両主面では、インターコネクタ35、36、固体電解質層33、酸素極層34が対称に形成されている。図2(d−1)(d−2)に燃料電池セルの側面図を示す。
このような燃料電池セルでは、燃料電池セルの反りを抑制することができるとともに、固体電解質層33を燃料極層32および酸素極層34で挟持した発電部が支持基板31の主面中央部に形成されているため、発電の安定性を向上できる。
尚、上記形態では、支持基板31の両端の弧状部Bにも固体電解質層33を形成した状態を説明したが、本発明では、酸素極層34を形成する部分だけ固体電解質層33を形成し、発電部を形成すればよく、固体電解質層33が形成されていない部分については、ガス遮断のために、例えばアルミナからなる緻密層を形成しても良い。
平均粒径0.5μmのNiO粉末と、Y粉末(平均粒径は0.6〜0.9μm)を、NiOがNi換算で48体積%、Yが52体積%になるようにして混合し、この混合粉末に、ポアー剤、有機バインダーと、水とを混合して形成した支持基板用坏土を押出成形し、これを乾燥し、脱バインダー処理し、扁平状の支持基板用成形体を作製し、これを乾燥した。この後、1000℃で仮焼し、支持基板仮焼体を作製した。
次に、8モル%Yを含有するZrO(YSZ)粉末と、NiO粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合したスラリーを用いて燃料極層形成用シートを作製し、これを支持基板仮焼体の所定位置に積層し、1000℃で仮焼し、支持基板仮焼体の表面に燃料側電極仮焼体を形成した。尚、燃料極層形成用シートとして、インターコネクタを形成する位置が開口したシートを用いた。
この後、インターコネクタを形成する位置にマスクした。
一方、上記YSZ粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合した浸漬液を作製し、この浸漬液中に支持基板仮焼体を浸漬し、引き上げることにより燃料側電極仮焼体の表面に固体電解質材料の塗布膜を形成し、乾燥することにより固体電解質層成形体を形成した。
次に、平均粒径2μmのLaCrO系酸化物粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合したスラリーを用いて、インターコネクタ用シートを作製し、これらのシートを、上記マスクを剥離して露出した部分に積層し、支持基板仮焼体、燃料極層仮焼体、インターコネクタ用シート、固体電解質層成形体からなる焼結用積層シートを作製した。次に、この焼結用積層シートを脱バインダ処理し、大気中にて1500℃で同時焼成した。
得られた焼結体を、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8粉末と、溶媒をからなるペースト中に浸漬し、焼結体に形成されている固体電解質層の表面に酸素極層用コーティング層を設け、1150℃で焼き付け、図4に示す燃料電池セルを作製した。
作製した燃料電池セルの長さは145mm、幅は26mm、厚みは3.2mm、燃料極層の厚みは10μm、酸素極層の厚みは50μm、第1、第2インターコネクタの幅は11mm、長さ145mm、厚みは50μmであった。
作製した燃料電池セルについて、図2(a)に示すように、第1インターコネクタの形成側と反対側の面の上下端に直線状の定規を当て、この定規とセル表面との最大距離Lhを求め、長さ方向の反り量とし、第1インターコネクタの形成側と反対側の面の幅方向両端に直線状の定規を当て、この定規とセル表面との最大距離Lbを求め、幅方向の反り量とした。この結果、長さ方向の反り量は、0.07mm、幅方向の反り量は0.05mmであった。
さらに、得られた燃料電池セルを850℃の温度で水素ガスをガス通路31a内に12時間供給し、水素ガスを流しながら放冷した。その後、上記と同様にして長さ方向の反り量および幅方向の反り量を求めたところ、長さ方向の反り量は0.09mm、幅方向の反り量は0.06mmであった。
一方、第2インターコネクタを形成せず、この第2インターコネクタが形成されていた部分に固体電解質層、酸素極層を形成した従来の燃料電池セルを作製し、作製後の反り量、および上記還元処理後の反り量を測定したところ、焼成後においては、長さ方向の反り量は0.5mm、幅方向の反り量は0.12mmであり、還元処理後では、長さ方向の反り量は1.8mm、幅方向の反り量は0.3mmであった。従って、本発明の燃料電池セルでは、反り量を抑制できることがわかる。
本発明の燃料電池セルを示すもので、(a)は横断面図、(b)はx−x断面における縦断面図、(c)はy−y断面における縦断面図である。 インターコネクタの形成状態を示す説明図で、(a)は従来のセルのインタコネクタを示す正面図(a−1)、側面図(a−2)、平面図(a−3)、(b)は一方側主面に第1インターコネクタを、他方側主面に第2インターコネクタ、酸素極層を形成した状態の一方側主面の正面図(b−1)とその背面図(b−2)、(c)は両主面にインターコネクタ、酸素極層を形成した状態の一方側主面の正面図(c−1)とその背面図(c−2)、(d)は両主面にインターコネクタ、酸素極層を形成するとともに、発電部の両側にインターコネクタを形成した状態の一方側主面の正面図(d−1)とその背面図(d−2)である。 本発明のセルスタックを示すもので、(a)は横断面図、(b)は集電部材のみ抜き出して記載した説明図、(c)は(b)の側面図である。 両主面にインターコネクタ、酸素極層を形成した本発明の燃料電池セルを示すもので、(a)は横断面図、(b)はx−x断面における縦断面図、(c)はy−y断面における縦断面図である。 本発明の両主面にインターコネクタ、酸素極層を形成するとともに、発電部の両側にインターコネクタを形成した燃料電池セルを示すもので、(a)は横断面図、(b)はx−x断面における縦断面図、(c)はy−y断面における縦断面図である。 従来の燃料電池セルを示すもので、(a)は横断面図、(b)はx−x断面における縦断面図、(c)はy−y断面における縦断面図である。
符号の説明
30・・・燃料電池セル
31・・・支持基板
31a・・・燃料ガス通路
32・・・燃料極層
33・・・固体電解質層
34・・・酸素極層
35・・・第1インターコネクタ
36・・・第2インターコネクタ
40・・・集電部材
z・・・ガス流路形成方向

Claims (4)

  1. 柱状の支持基板の一方側主面に固体電解質層、電極層および第1インターコネクタを、前記一方側主面と前記支持基板を挟んで反対側の他方側主面に固体電解質層、電極層および第2インターコネクタを有してなり、前記第1および第2インターコネクタが前記支持基板を挟んで対称に設けられており、かつ前記支持基板の長さ方向に一端から他端まで延設されてなることを特徴とする燃料電池セル。
  2. 前記支持基板内部にガス流路を有し、かつ前記支持基板の両主面にそれぞれ設けられた前記第1、第2インターコネクタがガス流路形成方向に延設され、前記第2インターコネクタの両側に、かつ前記ガス流路形成方向に前記固体電解質層および前記電極層が延設されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
  3. 請求項1または2のうちいずれかに記載の燃料電池セルを複数配列し、一方の前記燃料電池セルの電極層と、該一方の燃料電池セルと隣り合う他方の前記燃料電池セルの第1インターコネクタとを集電部材で電気的に接続してなることを特徴とするセルスタック。
  4. 請求項記載のセルスタックを収納容器内に収納してなることを特徴とする燃料電池。
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