図1は、本発明の燃料電池セルの一例を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は一部を省略して示す斜視図である。なお、両図面において、燃料電池セル1の各構成を一部拡大等して示している。なお、以下の説明においては、内側電極層を燃料極層とし、外側電極層を空気極層とし、ガス流通孔に燃料ガス(水素含有ガス)を流通させる構成の燃料電池セルについて説明する。
この燃料電池セル1は、中空平板型の燃料電池セル(以下、燃料電池セルと略す)1で、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状をした多孔質の導電性支持体2を備えている。導電性支持体2の内部には、適当な間隔で複数のガス流通孔7が長手方向に沿って形成されており、燃料電池セル1は、この導電性支持体2上に各種の部材が設けられた構造を有している。なお、ガス流通孔7は、燃料電池セル1の断面において円形の形状とすることがよい。
導電性支持体2は、図1に示されている形状から理解されるように、互いに平行な一対の平坦面nと、一対の平坦面nの両端をつなぐ側面(弧状部)mとで構成されている。平坦面nの両面は互いにほぼ平行に形成されており、平坦面nの一方の表面(下面)と両側の側面mを覆うように多孔質な燃料極層3(内側電極層)が設けられており、さらに、この燃料極層3を覆うように、緻密質な固体電解質層4が積層されている。また、固体電解質層4の上には、燃料極層3と対面するように、多孔質な空気極層5(外側電極層)が積層されている。また、燃料極層3および固体電解質層4が積層されていない他方の平坦面nには、インターコネクタ6が形成されている。
図1から明らかなように、固体電解質層4(および燃料極層3)は、平坦面nの両端をつなぐ弧状の側面mを経由して他方の平坦面n側に延びており、インターコネクタ6の両端部が固体電解質層4の両端部上に積み重なって配置されており、一対の重なり部Aを有している。
なお、図1には示していないが、インターコネクタ6と導電性支持体2との間に、インターコネクタ6と導電性支持体2とを強固に接合するための密着層を有することもできる。
ここで、燃料電池セル1においては、燃料極層3と空気極層5とが対面している部分が発電部として機能して発電する。即ち、空気極層5の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ導電性支持体2内のガス流通孔7に燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。そして、かかる発電によって生成した電流は、導電性支持体2上に積層されたインターコネクタ6を介して集電される。以下に、燃料電池セル1を構成する各構成について順に説明する。
導電性支持体2は、燃料ガスを燃料極層3まで透過させるためにガス透過性であること、インターコネクタ6を介して集電を行うために導電性であることが要求されることから、例えば、鉄族金属成分と特定の希土類酸化物とにより形成されることが好ましい。
鉄族金属成分としては、鉄族金属単体、鉄族金属酸化物、鉄族金属の合金もしくは合金酸化物等が挙げられる。より詳細には、例えば、鉄族金属としてはFe、Ni(ニッケル)およびCoを用いることができ、特には安価であることおよび燃料ガス中で安定であることから、鉄族成分/鉄族金属酸化物としてNiおよび/またはNiOを含有していることが好ましい。なお、Niおよび/またはNiOに加えてFeやCoを含有してもよい。
また、特定の希土類酸化物とは、導電性支持体2の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近づけるために使用されるものであり、Y、Lu(ルテチウム)、Yb、Tm(ツリウム)、Er(エルビウム)、Ho(ホルミウム)、Dy(ジスプロシウム)、Gd、Sm、Pr(プラセオジム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物が、上記鉄族成分との組み合わせで使用することができる。このような希土類酸化物の具体例としては、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、Tm2O3、Er2O3、Ho2O3、Dy2O3、Gd2O3、Sm2O3、Pr2O3を例示することができ、鉄族金属の酸化物との固溶、反応が殆どなく、また、熱膨張係数が固体電解質層4とほとんど同程度であり、かつ安価であるという点から、Y2O3、Yb2O3が好ましい。
ここで、導電性支持体2の良好な導電率を維持し、かつ熱膨張係数を固体電解質層4と近似させるという点で、鉄族金属成分と希土類酸化物成分とが、焼成−還元後における体積比率で35:65〜65:35の体積比で存在することが好ましい。なお、鉄族金属成分としてNiを、希土類酸化物成分としてY2O3を用いる場合には、Ni/(Ni+Y)が65〜86モル%となるように含有することが好ましい。なお、導電性支持体2中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で、他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
また、導電性支持体2は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好ましい。また、導電性支持体2の導電率は、50S/cm以上、より好ましくは300S/cm以上、特に好ましくは440S/cm以上とすることがよい。
なお、導電性支持体2の平坦面nの長さ(導電性支持体2の幅方向の長さ)は、通常、15〜35mm、側面mの長さ(弧の長さ)は、2〜8mmであり、導電性支持体2の厚み(平坦面nの両面間の厚み)は1.5〜5mmであることが好ましい。
燃料極層3は、電極反応を生じさせるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスにより形成することが好ましい。例えば、希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶したCeO2と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。なお、希土類元素としては、導電性支持体2において例示した希土類元素を用いることができ、例えばYが固溶したZrO2(YSZ)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
燃料極層3中の希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶しているCeO2の含量と、NiあるいはNiOの含量とは、焼成−還元後における体積比率で、35:65〜65:35の体積比で存在することが好ましい。さらに、この燃料極層3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1〜30μmであるのが好ましい。例えば、燃料極層3の厚みがあまり薄いと、性能が低下するおそれがあり、またあまり厚いと、固体電解質層4と燃料極層3との間で熱膨張差による剥離等を生じるおそれがある。
また、図1(a)および(b)の例では、燃料極層3は、一方の平坦面n(図1において下側に位置する平坦面n)から側面mを介して他方の平坦面n(図1において上側に位置する平坦面n)にまで延びているが、空気極層5に対面する位置に形成されていればよいため、例えば空気極層5が設けられている側の平坦面nにのみ燃料極層3が形成されていてもよい。すなわち、燃料極層3は平坦面nにのみ設けられ、固体電解質層4が燃料極層3上、両側面m上および燃料極層3が形成されていない他方の平坦面n上に形成された構造をしたものであってもよい。
固体電解質層4は、3〜15モル%のY(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、Yb(イッテルビウム)等の希土類元素を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2からなる緻密質なセラミックスを用いるのが好ましい。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。さらに、固体電解質層4は、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましく、かつその厚みが5〜50μmであることが好ましい。
なお、固体電解質層4と後述する空気極層5の間に、固体電解質層4と空気極層5との接合を強固とするとともに、固体電解質層4の成分と空気極層5の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制する目的で中間層を備えることもできる。
ここで、中間層としては、Ce(セリウム)と他の希土類元素とを含有する組成にて形成することができ、例えば、(CeO2)1−x(REO1.5)x、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数、で表される組成を有していることが好ましい。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いることが好ましく、例えば10〜20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2からなることが好ましい。
また、固体電解質層4と空気極層5とを強固に接合するとともに、固体電解質層4の成分と空気極層5の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることをさらに抑制することを目的として、中間層を2層から形成することもできる。
空気極層5としては、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスにより形成することが好ましい。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物の少なくとも1種が好ましく、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaCoO3系酸化物が特に好ましい。なお、上記ペロブスカイト型酸化物においては、Bサイトに、Co(コバルト)とともにFe(鉄)やMn(マンガン)が存在しても良い。
また、空気極層5は、ガス透過性を有する必要があり、従って、空気極層5を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。さらに、空気極層5の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが好ましい。
また、導電性支持体2の空気極層5側と反対側の平坦面n上には、インターコネクタ6が積層されている。
インターコネクタ6としては、導電性セラミックスにより形成されることが好ましいが、燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、耐還元性、耐酸化性を有する導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)を使用することが好ましい。さらには、特に導電性支持体2と固体電解質層4との熱膨張係数を近づける目的から、BサイトにMgが存在するLaCrMgO3系酸化物を用いることが好ましい。なおMgの量は、インターコネクタ6の熱膨張係数が、導電性支持体2および固体電解質層4の熱膨張係数に近づくように、具体的には10〜12ppm/Kとなるように適宜調整することができる。なお、インターコネクタ6については後に詳述する。
また、導電性支持体2とインターコネクタ6との間には、インターコネクタ6と導電性支持体2との間の熱膨張係数差を軽減する等のための密着層を設けることもできる。
このような密着層としては、燃料極層3と類似した組成とすることができる。例えば、希土類酸化物、希土類元素が固溶したZrO2、希土類元素が固溶したCeO2のうち少なくとも1種と、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。より具体的には、例えばY2O3とNiおよび/またはNiOからなる組成や、Yが固溶したZrO2(YSZ)とNiおよび/またはNiOからなる組成、Y、Sm、Gd等が固溶したCeO2とNiおよび/またはNiOからなる組成から形成することができる。なお、希土類元素が固溶したZrO2または希土類元素が固溶しているCeO2の含量と、NiあるいはNiOの含量とは、焼成−還元後における体積比率で、40:60〜60:40の体積比で存在することが好ましい。
また、図1には示していないが、インターコネクタ6の外面(上面)には、P型半導体層を設けることが好ましい。集電部材を、P型半導体層を介してインターコネクタ6に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくでき、集電性能の低下を有効に回避することが可能となる。
このようなP型半導体層としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物からなる層を例示することができる。具体的には、電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO3系酸化物、LaFeO3系酸化物、LaCoO3系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層の厚みは、一般に、30〜100μmの範囲にあることが好ましい。
以上、燃料電池セル1を構成する各部材について説明したが、このような構成により作製された燃料電池セル1の作製時や、燃料電池セル1を集電部材を介して複数配列してなるセルスタックを収納してなる燃料電池装置(これら燃料電池セルスタック装置や燃料電池装置については後述する。)の運転を行なっている間に、導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔7にクラックが生じ、燃料電池セル1の耐久性が低下する場合があった。
これは、導電性支持体2と固体電解質層4との熱膨張率が若干異なり、さらに固体電解質4とインターコネクタ6との互いの両端部が積み重なって配置された一対の重なり部A(図1に示す燃料電池セル1においては、さらに燃料極層3も積み重なっている)は、他の部位に比べて剛性が高くなり、導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔(重なり部Aの直下に位置するガス流通孔7や、重なり部Aより外側の領域に位置する(導電性支持体2の両側面側に配置された)ガス流通孔7に応力が集中し、クラックが生じるものと考えられる。
そこで、本発明の燃料電池セル1においては、重なり部Aにおけるインターコネクタ6の厚み(D1)を、重なり部A以外の領域におけるインターコネクタ6の厚み(D2)よりも薄くしたことを特徴とする。
それにより、固体電解質4とインターコネクタ6との互いの両端部が積み重なって配置された一対の重なり部Aにおける剛性を低下させることができ、導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔7に応力が集中することを抑制できることで、ガス流通孔7にクラックが生じることを抑制できる。なお、以降の説明において、導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔7を、重なり部Aより外側の領域のガス流通孔7という場合がある。
ここで、重なり部A以外の領域におけるインターコネクタ6の厚み(D2)は、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜50μmであることが好ましい。この範囲よりも厚みが薄いと、ガスのリークを生じやすく、またこの範囲よりも厚みが大きいと、電気抵抗が大きく、電位降下により集電機能が低下してしまうおそれがある。
一方、重なり部Aにおけるインターコネクタ6の厚み(D1)は、重なり部A以外の領域におけるインターコネクタ6の厚み(D2)よりも薄ければよいが、重なり部Aにおける応力を効率よく低下させるにあたり、特には、重なり部Aにおけるインターコネクタ6の厚み(D1)の1/2以下、より好ましくは1/4以下とすることが好ましい。それにより、導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔7にクラックが生じることをより抑制することができる。なお、重なり部Aにおけるインターコネクタ6の厚み(D1)があまり薄いと製造が困難となることも想定されるため、例えば重なり部Aにおけるインターコネクタ6の厚み(D1)の1/20以上とすることが好ましい。
また、重なり部Aは、他方の平坦面n(上面)上に設けた例を示したが、導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔7にクラックが生じることをより抑制することを目的として、側面m上に位置するように設けることもできる。
以上説明した本発明の燃料電池セル1の作製方法について説明する。
先ず、Ni等の鉄族金属或いはその酸化物粉末と、Y2O3などの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いて押出成形により導電性支持体成形体を作製し、これを乾燥する。なお、導電性支持体成形体として、導電性支持体成形体を900〜1000℃にて2〜6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
次に、例えば所定の調合組成に従いNiO、Y2O3が固溶したZrO2(YSZ)の素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダーおよび溶媒を混合して燃料極層用スラリーを調製する。
さらに、希土類元素が固溶したZrO2粉末に、トルエン、バインダー、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、7〜75μmの厚さに成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。得られたシート状の固体電解質層成形体上に燃料極層用スラリーを塗布して燃料極層成形体を形成し、この燃料極層成形体側の面を導電性支持体成形体に積層する。なお、燃料極層用スラリーを導電性支持体成形体の所定位置に塗布し乾燥して、固体電解質層成形体を導電性支持体成形体(燃料極層成形体)に積層しても良い。
固体電解質層4と空気極層5との間に中間層を形成する場合においては、続いて、以下に従って作製する。なお、下記においては、中間層を2層として形成する場合の例を示す。
例えば、GdO1.5が固溶したCeO2粉末を800〜900℃にて2〜6時間、熱処理を行い、その後、湿式解砕して凝集度を5〜35に調整し、中間層成形体用の原料粉末を調整する。湿式解砕は溶媒を用いて10〜20時間ボールミルすることが望ましい。なお、中間層をSmO1.5が固溶したCeO2粉末より形成する場合も同様である。
そして、凝集度が調製された中間層成形体の原料粉末に、溶媒としてトルエンを添加し、中間層用スラリーを作製し、このスラリーを固体電解質層成形体上に塗布して第1の層の塗布膜を形成し、第1の層成形体を作製する。なお、シート状の第1の層成形体を作製し、これを固体電解質層成形体上に積層してもよい。
続いて、インターコネクタ用材料(例えば、LaCrMgO3系酸化物粉末)、有機バインダーおよび溶媒を混合してスラリーを調製し、導電性支持体成形体の所定の位置に、スクリーン印刷等にてインターコネクタ成形体を形成する。なおこの際、重なり部Aにおけるインターコネクタの厚み(D1)および重なり部A以外の領域におけるインターコネクタ6の厚み(D2)が上述の関係となるように調製する。なお、インターコネクタ6をシートで作製する場合には、D1の厚みで重なり部Aおよび重なり部A以外の領域に対応する幅の支持体側シートと、(D2−D1)の厚みで重なり部A以外の領域に対応する幅の上面側シートを作製し、導電性支持体成形体の重なり部A以外の領域に支持体側シートを積層し、その上面に上面側シートを積層する。
また、導電性支持体2とインターコネクタ6との間に密着層を形成する場合には、例えば、Yが固溶したZrO2とNiOが、焼成−還元後における体積比率で、40:60〜60:40の範囲となるように混合して乾燥し、有機バインダー等を加えて密着層用スラリーを調整する。調整した密着層用スラリーを、導電性支持体成形体の所定の位置に、スクリーン印刷等にて塗布して密着層成形体を形成する。なおインターコネクタ成形体をシートにて作製する場合には、密着層用スラリーをインターコネクタ用シートに塗布して密着層成形体を形成し、この密着層成形体側の面を導電性支持体成形体に積層することもできる。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1350℃〜1450℃(より好ましくは1400〜1430℃)にて2〜6時間、同時焼結(同時焼成)する。
その後、形成された第1の層焼結体の表面に上記中間層用スラリーを塗布して第2の層成形体を作製して焼結する。なお、第2の層成形体を焼結するにあたって、固体電解質層と第1の層との同時焼結温度より、200℃以上低いことが好ましく、例えば1150℃〜1250℃で行うことが好ましい。なお、第2の層と第1の層とを固着させるための焼結時間としては、2〜6時間とすることができる。
さらに、空気極層5用材料(例えば、LaCoO3系酸化物粉末)、溶媒および増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により中間層上に塗布する。また、インターコネクタの所定の位置に、必要によりP型半導体層用材料(例えば、LaCoO3系酸化物粉末)と溶媒を含むスラリーを、ディッピング等により塗布し、1000〜1300℃で、2〜6時間焼き付けることにより、本発明の燃料電池セル1を製造できる。なお、燃料電池セル1は、その後、内部に水素ガスを流し、導電性支持体2および燃料極層3の還元処理を行なうのが好ましい。その際、たとえば750〜1000℃にて5〜20時間還元処理を行なうのが好ましい。
このような製造方法により、導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔7にクラックが生じることを抑制できる耐久性の向上した燃料電池セル1を作製することができる。
図2は、本発明の燃料電池セルの他の一例を示すものであり、(a)は燃料電池セル8の横断面を示し、(b)は燃料電池セル8の斜視図である。なお、両図面において、燃料電池セル8の各構成を一部拡大等して示している。
図2に示す燃料電池セル8においては、一対の重なり部Aより外側の領域に位置するガス流通孔7b(導電性支持体2の両側面側に配置されたガス流通孔7b)の径が、一対の重なり部Aの間の領域に位置するガス流通孔7aの径よりも小さいように構成されている。なお、図2においては一対の重なり部Aの間を明確とすべく、破線により重なり部Aの間を表している。
それにより、特に重なり部Aより外側の領域に位置するガス流通孔7bにおいて、重なり部Aに伴う応力が集中することを抑制することができることから、ガス流通孔7bにクラックが生じることを抑制でき、燃料電池セル8の耐久性を向上できるほか、信頼性を向上することもできる。
より具体的には、上述したような、平坦面nの長さが15〜35mm、側面mの長さが2〜8mm、厚みが1.5〜5mmの導電性支持体2においては、一対の重なり部Aの間の領域に位置するガス流通孔7aの径(D3)を0.75〜2.5mmとすることができ、一対の重なり部Aの外側の領域に位置するガス流通孔7bの径(D4)を0.3〜2.0mmとすることができる。
さらに、上述のような組成や形状により作製される燃料電池セル1においては、一対の重なり部Aの外側の領域に位置するガス流通孔7bの径(D4)を、一対の重なり部Aの間の領域に位置するガス流通孔7aの径(D3)の70%以下とすることが好ましい。具体的には、ガス流通孔7bの径(D4)を0.3〜1.75mmとすることが好ましい。それにより、特に重なり部Aより外側の領域に位置するガス流通孔7bにおいて、重なり部Aに伴う応力が集中することをさらに抑制することができることから、ガス流通孔7bにクラックが生じることを抑制でき、燃料電池セル1の耐久性を向上できるほか、信頼性を向上することもできる。
なお、一対の重なり部Aより外側の領域に位置するガス流通孔7bの径が、一対の重なり部Aの間の領域に位置するガス流通孔7aの径よりも小さい導電性支持体2を形成するにあたっては、導電性支持体成形体を押出成形により作製する際に、孔の径が小さいガス流通孔が、一対の重なり部Aの外側の領域に位置するよう(孔の径が大きいガス流通孔が一対の重なり部Aの間に配置されるよう)に、ガス流通孔を作製するためのピンの大きさや間隔等を調整することで作製することができる。
図3は、上述した燃料電池セル1の複数個を、集電部材12を介して電気的に直列に接続して構成される燃料電池セルスタック装置の一例を示したものであり、(a)は燃料電池セルスタック装置10を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セルスタック装置10の一部拡大平面図であり、(a)で示した点線枠で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した点線枠で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示している。
なお、燃料電池セルスタック装置10においては、各燃料電池セル1を集電部材12を介して配列することでセルスタック11を構成しており、各燃料電池セル1の下端が、燃料電池セル1に燃料ガスを供給するためのマニホールド15に、ガラスシール材等の接着剤により固定されている。また、燃料電池セル1の配列方向の両端から集電部材12を介してセルスタック11を挟持するように、マニホールド15に下端が固定された弾性変形可能な導電部材13を具備している。これら各部材により、燃料電池セルスタック装置10が構成されている。なお、図3に示す燃料電池セル1においては、密着層、中間層、P型半導体層は省略して示している。
また、図3に示す導電部材13においては、燃料電池セル1の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、セルスタック11(燃料電池セル1)の発電により生じる電流を引出すための電流引出し部14が設けられている。
ここで、本発明の燃料電池セルスタック装置10においては、上述した耐久性の向上した燃料電池セル1を用いて、セルスタック11を構成することにより、信頼性が向上した燃料電池セルスタック装置10とすることができる。
図4は、本発明の燃料電池セルスタック装置10を収納容器内に収納してなる燃料電池モジュール16の一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器17の内部に、図3に示した燃料電池セルスタック装置10を収納して構成されている。
なお、燃料電池セル1にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器18をセルスタック11の上方に配置している。そして、改質器18で生成された燃料ガスは、ガス流通管19を介してマニホールド15に供給され、マニホールド15を介して燃料電池セル1の内部に設けられたガス流通孔7に供給される。
なお、図4においては、収納容器18の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されている燃料電池セルスタック装置10および改質器18を後方に取り出した状態を示している。ここで、図4に示した燃料電池モジュール17においては、燃料電池セルスタック装置10を、収納容器17内にスライドして収納することが可能である。なお、燃料電池セルスタック装置10は、改質器18を含むものとしても良い。
また収納容器17の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材20は、図4においてはマニホールド15に並置されたセルスタック11の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル1の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、燃料電池セル1の下端部に酸素含有ガスを供給する。そして、燃料電池セル1のガス流路より排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃料電池セル1の上端部側で燃焼させることにより、燃料電池セル1の温度を上昇させることができ、燃料電池セルスタック装置10の起動を早めることができる。また、燃料電池セル1の上端部側にて、燃料電池セル1のガス流通孔7から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、燃料電池セル1(セルスタック11)の上方に配置された改質器18を温めることができる。それにより、改質器18で効率よく改質反応を行うことができる。
さらに、本発明の燃料電池モジュール16においても、耐久性が向上した燃料電池セル1を用いて構成される燃料電池セルスタック装置10を収納容器17内に収納してなることから、信頼性が向上した燃料電池モジュール16とすることができる。
図5は、外装ケース内に図4で示した燃料電池モジュール16と、燃料電池セルスタック装置10を動作させるための補機とを収納してなる本発明の燃料電池装置の一例を示す分解斜視図である。なお、図5においては一部構成を省略して示している。
図5に示す燃料電池装置21は、支柱22と外装板23から構成される外装ケース内を仕切板24により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール16を収納するモジュール収納室25とし、下方側を燃料電池モジュール16を動作させるための補機類を収納する補機収納室26として構成されている。なお、補機収納室26に収納する補機類を省略して示している。
また、仕切板24には、補機収納室26の空気をモジュール収納室25側に流すための空気流通口27が設けられており、モジュール収納室25を構成する外装板23の一部に、モジュール収納室25内の空気を排気するための排気口28が設けられている。
このような燃料電池装置21においては、上述したように、信頼性を向上することができる燃料電池モジュール16をモジュール収納室25に収納して構成されることにより、信頼性の向上した燃料電池装置22とすることができる。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の用紙を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
上述の説明においては、導電性支持体2上に、内側電極層としての燃料極層3、固体電解質層4および外側電極層としての空気極層5を順に積層したタイプの燃料電池セル1を用いて説明したが、例えば、導電性支持体2上に、内側電極層としての空気極層5、固体電解質層4および外側電極層としての燃料極層3を順に積層してなる燃料電池セル1とすることもできる。この場合においては、導電性支持体2に設けられたガス流通孔7中に酸素含有ガスを流通させることとなる。またこのような燃料電池セル1においても、ガス流通孔7にクラックが生じることを抑制できることから、耐久性、信頼性の向上した燃料電池セル1とすることができる。
以下に本実施例について説明する。なお本実施例においては、中間層を2層とした燃料電池セルを用いて実験を行なった。
先ず、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径0.9μmのY2O3粉末を焼成−還元後における体積比率が、NiOが48体積%、Y2O3が52体積%になるように混合し、有機バインダーと溶媒にて作製した坏土を押出成形法にて成形し、乾燥、脱脂して導電性支持体成形体を作製した。なお、導電性支持体成形体の作製時に、後述する固体電解質とインターコネクタの両端が積み重なった一対の重なり部の間の領域に表1に示した径のガス流通孔と、一対の重なり部より外側の領域に表1に示した径のガス流通孔とを成形した各導電性支持体2を1つの試料につき20個ずつ作製した。
次に、8mol%のYが固溶したマイクロトラック法による粒径が0.8μmのZrO2粉末(固体電解質層原料粉末)と有機バインダーと溶媒とを混合して得られたスラリーを用いて、ドクターブレード法にて厚み30μmの固体電解質層用シートを作製した。
次に平均粒径0.5μmのNiO粉末とY2O3が固溶したZrO2粉末と有機バインダーと溶媒とを混合した燃料極層用スラリーを作製し、固体電解質層用シート状に塗布して燃料極層成形体を形成した。続いて、燃料極層成形体側の面を下にして導電性支持体成形体の所定位置に積層した。
続いて、上記のように成形体を積層した積層成形体を1000℃にて3時間仮焼処理した。
次に、CeO2を85モル%、他の希土類元素の酸化物(GdO1.5)のいずれかを15モル%含む複合酸化物を、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用いて振動ミル又はボールミルにて粉砕し、900℃にて4時間仮焼処理を行い、再度ボールミルにて解砕処理し、セラミック粒子の凝集度を調製し、中間層原料粉末を得た。この粉体にアクリル系バインダーとトルエンとを添加し、混合して作製した中間層用のスラリーを、得られた積層仮焼体の固体電解質層仮焼体上に、スクリーン印刷法にて塗布し、第1の層成形体を作製した。
続いて、LaCrMgO3系酸化物と、有機バインダーと溶媒とを混合したスラリーを作製し、スクリーン印刷にて導電性支持体2上に塗布し、インターコネクタを積層した積層成形体を作製した。なおその際、焼成後における重なり部Aにおけるインターコネクタの厚みと、重なり部A以外の領域におけるインターコネクタの厚みが、表1に示す値となるように厚みを調整した。
次いで、上記のインターコネクタを積層した積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中で1450℃にて3時間同時焼成した。
次に、形成された第1の層焼結体の表面に、上記中間層用スラリーをスクリーン印刷法にて塗布して第2の層の膜を形成し、1250℃にて3時間焼結処理を行った。
次に、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3粉末と、イソプロピルアルコールとからなる混合液を作製し、中間層が積層された積層焼結体の中間層の表面に噴霧塗布し、空気極層成形体を形成し、1100℃にて4時間で焼き付け、空気極層を形成し、燃料電池セルを作製した。
なお、作製した燃料電池セルの寸法は25mm×200mmで、導電性支持体の厚み(平坦面n間の厚み)は2mm、開気孔率35%、燃料極層の厚さは10μm、開気孔率24%、空気極層の厚みは50μm、開気孔率40%、固体電解質層の相対密度は97%であった。
次に、この燃料電池セルの内部に水素ガスを流し、850℃で10時間、導電性支持体および燃料極層の還元処理を施した。
得られた各燃料電池セルを電気炉内に設置し、電気炉内の温度を900℃まで上昇させて30分維持した後、50℃まで低下させることを1サイクルとして、このサイクルを5回繰り返し行ない、重なり部より外側の領域のガス流通孔のクラックの発生を調査した。
表1の結果より、重なり部Aにおけるインターコネクタの厚みD1が、重なり部以外の領域におけるインターコネクタの厚みD2と同じ厚みである試料No.11、重なり部Aにおけるインターコネクタの厚みD1が、重なり部以外の領域におけるインターコネクタの厚みD2よりも厚い試料No.12においては、重なり部より外側の領域の全てのガス流通孔においてクラックが発生していた。
それに対し、重なり部Aにおけるインターコネクタの厚みD1が、重なり部以外の領域におけるインターコネクタの厚みD2よりも薄い試料No.1〜試料No.10においては、重なり部より外側の領域のガス流通孔のクラック発生率が40%以下であり、重なり部より外側の領域のガス流通孔のクラックの発生を有効に抑制できた。
さらに、重なり部より外側の領域のガス流通孔の径が、重なり部の間の領域のガス流通孔の径よりも小さい試料No.6〜試料No.9においては、重なり部より外側の領域のすべてのガス流通孔においてクラックの発生はなった。
それゆえ、重なり部Aにおけるインターコネクタの厚みD1を、重なり部以外の領域におけるインターコネクタの厚みD2よりも薄くすることで、燃料電池セルの耐久性をより向上できることが確認できた。