JP5705697B2 - 固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池モジュール - Google Patents

固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池モジュールに関するものである。
近年、次世代エネルギーとして、固体酸化物形燃料電池セルを収納容器内に収容した燃料電池モジュールが種々提案されている。
このような固体酸化物形燃料電池セルとして、互いに平行な一対の平坦面を有し、内部に燃料ガスを流通させるための燃料ガス流路を有するとともに、Niを含有してなる導電性の多孔質基板の一方側主面上に、燃料極層、固体電解質層、酸素極層を順に積層し、他方側主面上にインターコネクタ層を積層してなる固体酸化物形燃料電池セルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、このような固体酸化物形燃料電池セルの複数個を、集電部材を介して電気的に接続してなる燃料電池セル装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
従来、固体酸化物形燃料電池セルは、多孔質基板の一方側主面の固体電解質層の両端部が、それぞれ多孔質基板の側面を介して他方側主面まで延設され、固体電解質層の両端部が、多孔質基板の他方側主面に配置されたインターコネクタ層の両端部に積層され接合され、多孔質基板の内部を通過する燃料ガスが、固体電解質層とインターコネクタ層とにより形成された空間から外部に漏出しないように構成されていた。
特開2008−84716号公報 特開2008−135304号公報
従来、固体電解質層の両端部上および両端部間にスラリーを塗布してインターコネクタ層を形成する際に、多孔質基板の他方側主面の固体電解質層の両端部上の部分と両端部間の部分とでインターコネクタ層成形体に厚み差が生じ、焼成後には、固体電解質層の両端部上におけるインターコネクタ層は薄く、固体電解質層の両端部間におけるインターコネクタ層の厚みは厚くなり、固体電解質層の両端部上と両端部間とでインターコネクタ層に厚み差が生じていた。
これにより、長期発電中や起動停止を繰り返した際にインターコネクタ層の薄い部分と厚い部分との境界部分や厚みの薄い部分に高い応力が生じ、この部分にクラックや剥離が生じるおそれがあった。
本発明は、インターコネクタ層におけるクラックや剥離の発生を抑制できる固体酸化物形燃料電池セルおよび燃料電池モジュールを提供することを目的とする。
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、対向する一対の主面と該主面同士を接続する対向する一対の側面とを有する平板状の多孔質基板と、該多孔質基板の一方側主面に設けら
れた固体電解質層と、前記多孔質基板の他方側主面に設けられたインターコネクタ層とを有し、前記多孔質基板の一方側主面の前記固体電解質層の両端部が、それぞれ前記側面を介して前記多孔質基板の他方側主面まで延設され、前記固体電解質層の両端部が、前記多孔質基板の他方側主面に配置された前記インターコネクタ層の両端部とそれぞれ積層され接合されており、前記インターコネクタ層の外面は平坦状であるとともに、前記固体電解質層の両端部上の前記インターコネクタ層の両端部の厚みは、前記固体電解質層の両端部間における前記インターコネクタ層の厚みに対して厚み差が±5%の範囲であることを特徴とする。
本発明の固体酸化物形燃料電池用セルは、対向する一対の主面と該主面同士を接続する対向する一対の側面とを有する平板状の多孔質基板と、該多孔質基板の一方側主面に設けられた固体電解質層と、前記多孔質基板の他方側主面に設けられたインターコネクタ層とを有し、前記多孔質基板の一方側主面の前記固体電解質層の両端部が、それぞれ前記側面を介して前記多孔質基板の他方側主面まで延設され、前記固体電解質層の両端部が、前記多孔質基板の他方側主面に配置された前記インターコネクタ層の両端部とそれぞれ積層され接合されており、前記多孔質基板は前記固体電解質層の両端部間に外面が平坦状の突出部を有しており、前記固体電解質層の両端部が設けられた部分における前記多孔質基板の他方側主面からの前記突出部の高さが、前記固体電解質層の両端部が設けられた部分における前記多孔質基板の他方側主面からの前記固体電解質層の端部の高さに対して高低差が±5%の範囲であることを特徴とする。
本発明の燃料電池モジュールは、上記固体酸化物形燃料電池セルを収納容器内に収納してなることを特徴とする。
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体電解質層の両端部上のインターコネクタ層の両端部の厚みが、固体電解質層の両端部間におけるインターコネクタ層の厚みに対して厚み差が±5%の範囲であるため、インターコネクタ層の厚み差に基づく応力を低減でき、クラックや剥離の発生を抑制することができる。これにより、長期信頼性の高い燃料電池モジュールを提供することができる。
固体酸化物形燃料電池セルを示すもので、(a)は横断面図、(b)はインターコネクタ層の記載を省略した状態を、インターコネクタ層側から見た側面図である。 (a)は支持基板を示す横断面図、(b)はスラリー吐出装置でインターコネクタ層用のスラリーを塗布する状態を示す説明図である。 燃料電池セル装置の一例を示し、(a)は燃料電池セル装置を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セル装置の破線で囲った部分の一部を示す横断面図である。 燃料電池モジュールの一例を示す外観斜視図である。 燃料電池装置の一部を省略して示す斜視図である。
図1は、本形態の固体酸化物形燃料電池セル(以下、燃料電池セルと略す場合がある)の一例を示すものであり、(a)はその横断面図、(b)は(a)において、インターコネクタ層の記載を省略した側面図である。なお、両図面において、燃料電池セル10の各構成を一部拡大して示している。また、図1(b)は、長さ方向に縮小して記載しており、実際は上下方向に長い形状とされている。
この燃料電池セル10は、中空平板型で、断面が扁平状で、全体的に見て平板棒状をした、導電性の多孔質基板(導電性支持体ということもある)1を備えている。多孔質基板
1の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス流路2が多孔質基板1(燃料電池セル10)の長さ方向Lに貫通して形成されており、燃料電池セル10は、この多孔質基板1上に各種の部材が設けられた構造を有している。
多孔質基板1は、図1に示されている形状から理解されるように、対向する一対の主面nと、多孔質基板1の幅方向Bの両側に形成された、一対の主面nをそれぞれ接続する弧状面からなる側面mとで構成されている。
そして、多孔質基板1の一方側主面n(下面)と両側の側面mを覆うように多孔質な燃料極層3が設けられており、さらに、この燃料極層3を覆うように、緻密質な固体電解質層4が積層されている。また、固体電解質層4の上には、反応防止層5を介して、燃料極層3と対面するように、多孔質な酸素極層6が積層されている。燃料極層3、固体電解質層4および酸素極層6により発電部が構成されており、この発電部が多孔質基板1に設けられている。
多孔質基板1の他方側主面n(上面)には、インターコネクタ層8が設けられており、多孔質基板1の一方側主面の固体電解質層4の両端部が、それぞれ側面mを介して多孔質基板1の他方側主面(上面)nまで延設されており、固体電解質層4の両端部に、多孔質基板1の他方側主面のインターコネクタ層8の両端部がそれぞれ積層され接合されている。これにより、固体電解質層4とインターコネクタ層8とで多孔質基板1を取り囲み、内部を流通する燃料ガスが外部に漏出しないように構成されている。
言い換えると、平面形状が矩形状のインターコネクタ層8が多孔質基板1の他方側主面の一端から他端まで形成されており、その左右両端部が、固体電解質層4の開口した両端部の表面に積層され、接合されている。
そして、インターコネクタ層8の外面は平坦状であるとともに、固体電解質層4の両端部上のインターコネクタ層8の両端部8aの厚みは、固体電解質層4の両端部間におけるインターコネクタ層8の厚みと実質的に同一厚みとされている。実質的に同一厚みとは、インターコネクタ層8の両端部8aの厚みは、固体電解質層4の両端部間におけるインターコネクタ層8の厚みに対して、±5%の厚み差を許容することを意味する。
言い換えれば、多孔質基板1は固体電解質層4の両端部間に外面が平坦状の突出部9を有しており、該突出部9の高さhが、固体電解質層4の両端部の上面から他方側主面nまでの高さと実質的に同一高さとされている。実質的に同一高さとは、突出部9の高さhが、固体電解質層4の両端部の上面から他方側主面nまでの高さに対して、±5%の高低差を許容することを意味する。
固体電解質層4の両端部間におけるインターコネクタ層8の厚みは、突出部9上のインターコネクタ層8の厚みとされ、インターコネクタ層8の幅方向Bにおける中央部8bの厚みとすることができる。
すなわち、多孔質基板1の他方側主面nにおける幅方向Bには、固体電解質層4、燃料極層3の両端部が配置されており、固体電解質層4、燃料極層3が積層された部分における多孔質基板1の他方側主面から、固体電解質層4の上面までの高さは、固体電解質層4、燃料極層3が積層された部分における多孔質基板1の他方側主面nから突出部9の上面までの高さhと実質的に同一高さとされている。言い換えれば、固体電解質層4の両端部上面と突出部9の上面とは実質的に同一平面とされている。さらに言い換えれば、固体電解質層4と燃料極層3との積層体の厚みが、突出部9の高さhと実質的に同一とされている。
なお、燃料極層3が多孔質基板1の他方側主面まで延設されていない場合、すなわち燃料極層3が多孔質基板1の一方側主面だけに形成され、他方側主面には固体電解質層4だけが延設されている場合には、固体電解質層4の厚みが、突出部9の高さhと実質的に同一とされていることになる。
突出部9の高さhは、支持基板1に設けられる固体電解質層4、燃料極層3の厚みによるが、5〜100μmとされている。突出部9の上面は、多孔質基板1の他方側主面nの一部を構成する。
このような燃料電池セルでは、突出部9の高さhが、固体電解質層4の両端部上面の他方側主面nからの高さと実質的に同一高さとされ、固体電解質層4の両端部上のインターコネクタ層8の両端部8aの厚みは、固体電解質層4の両端部間におけるインターコネクタ層8の中央部8bの厚みと実質的に同一厚みとされ、全体的にほぼ均一厚みとできるため、インターコネクタ層8の厚み差に基づく応力を低減でき、クラックや剥離の発生を抑制することができる。これにより、長期信頼性の高い燃料電池モジュールを提供することができる。
多孔質基板1の突出部9は、多孔質基板1を押出成形して作製する際の金型を、多孔質基板1の他方側主面に突出部を形成するように変更することにより、容易に突出部9を形成することができる。
燃料電池セル10は、燃料極層3と酸素極層6とが固体電解質層4を介して対面している部分が電極として機能して発電する。即ち、酸素極層6の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ多孔質基板1内の燃料ガス流路2に燃料ガス(水素含有ガス)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより発電する。そして、かかる発電によって生成した電流は、多孔質基板1に取り付けられているインターコネクタ層8を介して集電される。
以下に、本形態の燃料電池セル10を構成する各部材について説明する。
多孔質基板1は、燃料ガスを燃料極層3まで透過させるためにガス透過性であること、インターコネクタ層8を介して集電を行うために導電性であることが要求されることから、例えば、Niと無機酸化物、例えば、特定の希土類酸化物とにより形成されることが好ましい。
特定の希土類酸化物とは、多孔質基板1の熱膨張係数を固体電解質層4の熱膨張係数に近づけるために使用されるものであり、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む希土類酸化物が、Niおよび/またはNiOとの組み合わせで使用することができる。このような希土類酸化物の具体例としては、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prを例示することができ、Niおよび/またはNiOとの固溶、反応が殆どなく、また、熱膨張係数が固体電解質層4と同程度であり、かつ安価であるという点から、Y、Ybが好ましい。
また、本形態においては、多孔質基板1の良好な導電率を維持し、かつ熱膨張係数を固体電解質層4と近似させるという点で、Niおよび/またはNiO:希土類酸化物=35:65〜65:35の体積比で存在することが好ましい。なお、多孔質基板1中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で、他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
また、多孔質基板1は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35〜50%の範囲にあることが好ましい。また、多孔質基板1の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
なお、多孔質基板1の主面nの長さ(多孔質基板1の幅方向Bの長さ:側面m間の長さ)は、通常、15〜35mm、弧状の側面mの長さ(弧の長さ)は、2〜8mmであり、多孔質基板1の厚み(主面n間の厚み)は1.5〜5mmであることが好ましい。多孔質基板1の長さは、100〜150mmとされている。
燃料極層3は、電極反応を生じさせるものであり、それ自体公知の多孔質の導電性セラミックスにより形成することが好ましい。例えば、希土類元素が固溶したZrOまたは希土類元素が固溶したCeOと、Niおよび/またはNiOとから形成することができる。なお、希土類元素としては、多孔質基板1において例示した希土類元素を用いることができ、例えばYが固溶したZrO(YSZ)とNiおよび/またはNiOとから形成することができる。
燃料極層3中の希土類元素が固溶したZrOまたは希土類元素が固溶しているCeOの含有量は、35〜65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNiあるいはNiOの含有量は、65〜35体積%であるのが好ましい。さらに、この燃料極層3の開気孔率は、15%以上、特に20〜40%の範囲にあるのが好ましく、その厚みは、1〜30μmであるのが好ましい。
また、燃料極層3は、酸素極層6に対面する位置に形成されていればよいため、例えば酸素極層6が設けられている側の主面(下面)nにのみ燃料極層3が形成されていてもよい。すなわち、燃料極層3は下側の主面nにのみ設けられ、固体電解質層4が燃料極層3上、多孔質基板1の両弧状面m上および燃料極層3が形成されていない他方の主面n上に形成された構造をしたものであってもよい。
固体電解質層4は、3〜15モル%のY、Sc、Yb等の希土類元素を含有した部分安定化あるいは安定化ZrOからなる緻密質なセラミックスを用いるのが好ましい。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが好ましい。さらに、固体電解質層4は、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に95%以上の緻密質であることが望ましく、かつその厚みが5〜50μmであることが好ましい。固体電解質層4は、ランタンガレート系、セリア系等のZrO系以外の固体電解質層であっても良い。
なお、固体電解質層4と後述する酸素極層6との間に、固体電解質層4と酸素極層6との接合を強固とするとともに、固体電解質層4の成分と酸素極層6の成分とが反応して電気抵抗の高い反応層が形成されることを抑制する目的で反応防止層5を備えることもでき、図1に示した燃料電池セル10においては反応防止層5を備えた例を示している。
ここで、反応防止層5としては、CeとCe以外の他の希土類元素とを含有する組成にて形成することができ、例えば、(CeO1−x(REO1.5(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成を有していることが好ましい。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いることが好ましく、例えば10〜20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeOからなることが好ましい。
酸素極層6としては、いわゆるABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスにより形成することが好ましい。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷
移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにSrとLaが共存するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも1種が好ましく、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaCoO系酸化物が特に好ましい。なお、上記ペロブスカイト型酸化物においては、Bサイトに、CoとともにFeやMnが存在しても良い。
また、酸素極層6は、ガス透過性を有する必要があり、従って、酸素極層6を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30〜50%の範囲にあることが好ましい。さらに、酸素極層6の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが好ましい。
インターコネクタ層8としては、Laを含有するペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスにより形成されている。燃料ガス(水素含有ガス)および酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、耐還元性、耐酸化性を有する導電性セラミックスとしては、例えば、Laと、CrまたはTiとを含有するペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物、LaTiO系酸化物)を用いることができる。多孔質基板1および固体電解質層4の熱膨張係数に近づける目的から、BサイトにMgが存在するLaCrMgO系酸化物を用いることができる。インターコネクタ層8の材料はこれに限定されるものではない。
また、インターコネクタ層8の厚みは、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜50μmであることが好ましい。この範囲ならばガスのリークを防止できるとともに、電気抵抗を小さくできる。特に、インターコネクタ層8の厚みを均一とできるため、従来よりも厚みを薄くでき、電気抵抗を小さくできる。
以上説明した本形態の燃料電池セル10の作製方法の一例について説明する。燃料電池セル10の製法は、対向する一対の主面と該主面同士を接続する対向する一対の側面とを有する平板状の多孔質基板成形体と、該多孔質基板成形体の一方側主面に設けられた固体電解質層成形体と、多孔質基板成形体の他方側主面に設けられたインターコネクタ層成形体とを有し、多孔質基板成形体の一方側主面の固体電解質層成形体の両端部が、それぞれ側面を介して多孔質基板成形体の他方側主面まで延設され、固体電解質層成形体の両端部が他方側主面に配置されたインターコネクタ層成形体の両端部にそれぞれ積層された積層成形体を作製し、焼成してなる固体酸化物形燃料電池セルの製法であって、多孔質基板成形体は固体電解質層成形体の両端部間に外面が平坦状の突出部を有している。
突出部の高さは、固体電解質層成形体の両端部の他方側主面からの高さと実質的に同一高さとされており、インターコネクタ層成形体は、インターコネクタ層を形成する材料を含有するスラリーを、固体電解質層成形体の両端部上および該両端部間に塗布して形成される。
具体的に説明する。先ず、例えば、Niおよび/またはNiO粉末と、Yなどの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合して坏土を調製し、この坏土を用いて押出成形により多孔質基板成形体を作製し、これを乾燥する。なお、多孔質基板成形体として、多孔質基板成形体を900〜1000℃にて2〜6時間仮焼した仮焼体を用いてもよい。
押出成形の際の成形型は、突出部9を形成する口金形状を有している。これにより、図2(a)に示すような突出部9を有する多孔質基板1を作製することができる。
次に、例えば所定の調合組成に従いNiO、Yが固溶したZrO(YSZ)の
素原料を秤量、混合する。この後、混合した粉体に、有機バインダーおよび溶媒を混合して燃料極層用スラリーを調製する。
さらに、希土類元素が固溶したZrO粉末に、トルエン、バインダー、市販の分散剤等を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、7〜75μmの厚さに成形してシート状の固体電解質層成形体を作製する。得られたシート状の固体電解質層成形体上に燃料極層用スラリーを塗布して燃料極層成形体を形成し、この燃料極層成形体側の面を多孔質基板成形体に積層する。
すなわち、固体電解質層成形体と燃料極層成形体との積層体を、多孔質基板成形体の下側の主面から側面を介して上面の主面まで積層し、上記積層体の端面を、多孔質基板成形体の突出部の側面に対向するように位置せしめる。この際、固体電解質層成形体と燃料極層成形体との積層体の上面は、多孔質基板成形体の突出部の上面と実質的に同一高さとなるように、多孔質基板成形体の突出部の高さが調整されている。
なお、固体電解質層成形体と燃料極層成形体との積層体の端面と突出部の側面との間は、当接することが望ましいが、1mm程度の間隔があっても、後述するようにインターコネクタ層用のスラリーを塗布する際に埋設されるため、また、間隔が狭いため、この部分に基づく応力は殆ど発生しない。
なお、燃料極層用スラリーを多孔質基板成形体の所定位置に塗布し乾燥して、固体電解質層成形体を燃料極層成形体上に積層しても良い。
続いて固体電解質層4と酸素極層6との間に配置する反応防止層5を形成する。
例えば、GdO1.5が固溶したCeO粉末を用いた原料粉末に、溶媒としてトルエンを添加し、反応防止層用スラリーを作製し、このスラリーを固体電解質層成形体上に塗布して反応防止層の塗布膜を形成し、成形体を作製する。なお、シート状の成形体を作製し、これを固体電解質層成形体上に積層してもよい。
この後、インターコネクタ層用材料(例えば、LaCrMgO系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーを、図2(b)に示すように、スラリー吐出装置Sにより、多孔質基板成形体1a上に塗布し、積層成形体を作製する。
すなわち、固体電解質層成形体4aの両端部上、および両端部間にスラリーを塗布するように、スラリー吐出装置Sを配置し、このスラリー吐出装置Sを多孔質基板成形体1aの長さ方向L側に移動させ、スラリーを塗布し、乾燥させて、インターコネクタ層成形体を形成する。
このような製法では、多孔質基板成形体1aは固体電解質層成形体4aの両端部間に外面が平坦状の突出部9aを有しており、該突出部9aの高さが、固体電解質層成形体4aの両端部の他方側主面からの高さと実質的に同一高さとされ、固体電解質層成形体4aの両端部上面と突出部9aの上面はほぼ同一高さ(同一平面)とされているため、スラリー吐出装置10の高さを、固体電解質層成形体4aの両端部からの高さを基準に設定した場合であっても、スラリー吐出装置10の高さは、固体電解質層成形体4aの両端部からの高さ、多孔質基板成形体1aの突出部9aからの高さとほぼ同一高さとなり、スラリーを、固体電解質層成形体4aの両端部上および該両端部間にほぼ同一厚みに塗布して形成することができ、インターコネクタ層成形体の厚み差を無くすことができる。これにより、焼成後においても、固体電解質層4上のインターコネクタ層8の両端部8aの厚みは、多
孔質基板1の他方側主面上のインターコネクタ層8の中央部8bの厚みと実質的に同一厚みとされ、インターコネクタ層8の厚み差に基づく応力を低減でき、クラックや剥離を抑制することができる。
次いで、上記の積層成形体を脱バインダー処理し、酸素含有雰囲気中、1400〜1450℃にて2〜6時間、同時焼結(同時焼成)する。
さらに、酸素極層用材料(例えば、LaCoO系酸化物粉末)、溶媒および増孔剤を含有するスラリーをディッピング等により反応防止層上に塗布し、1000〜1300℃で、2〜6時間焼き付けることにより、図1に示す構造の本形態の燃料電池セル10を製造できる。なお、燃料電池セル10は、その後、内部に水素ガスを流し、多孔質基板1および燃料極層3の還元処理を行なうのが好ましい。その際、たとえば750〜1000℃にて5〜20時間還元処理を行なうのが好ましい。
図3は、上述した燃料電池セル10の複数個を、集電部材13を介して電気的に直列に接続して構成される燃料電池セル装置の一例を示したものであり、(a)は燃料電池セル装置11を概略的に示す側面図、(b)は(a)の燃料電池セル装置11の一部拡大断面図であり、(a)で示した破線で囲った部分を抜粋して示している。なお、(b)において(a)で示した破線で囲った部分に対応する部分を明確とするために矢印にて示しており、(b)で示す燃料電池セル10においては、上述した反応防止層5等の一部の部材を省略して示している。
なお、燃料電池セル装置11においては、各燃料電池セル10を集電部材13を介して配列することで燃料電池セルスタック12を構成しており、各燃料電池セル10の下端部が、燃料電池セル10に燃料ガスを供給するためのガスタンク16に、ガラスシール材等の接着剤により固定され、これにより燃料電池セル装置11が構成されている。また、燃料電池セル装置11は、燃料電池セル10の配列方向の両端から燃料電池セルスタック12を挟持するように、ガスタンク16に下端部が固定された弾性変形可能な導電部材14を具備している。
また、図3に示す導電部材14には、燃料電池セル10の配列方向に沿って外側に向けて延びた形状で、燃料電池セルスタック12(燃料電池セル10)の発電により生じる電流を出入するための電流引出し部15が設けられている。
ここで、本形態の燃料電池セル装置11においては、上述した燃料電池セル10を用いて、燃料電池セルスタック12を構成することにより、長期信頼性が向上した燃料電池セル装置11とすることができる。
図3に示す燃料電池セル装置11では、燃料電池セル10の下端部は、燃料電池セル10に燃料ガスを供給するためのガスタンク16に、ガラスシール材等の接着剤により固定されている。
図4は、燃料電池セル装置11を収納容器内に収納してなる燃料電池モジュール18の一例を示す外観斜視図であり、直方体状の収納容器19の内部に、図3に示した燃料電池セル装置11を収納して構成されている。
なお、燃料電池セル10にて使用する燃料ガスを得るために、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料ガスを生成するための改質器20を燃料電池セルスタック12の上方に配置している。そして、改質器20で生成された燃料ガスは、ガス流通管21を介してガスタンク16に供給され、ガスタンク16を介して燃料電池セル10の内部に設けられた
ガス流路2に供給される。
なお、図4においては、収納容器19の一部(前後面)を取り外し、内部に収納されている燃料電池セル装置11および改質器20を後方に取り出した状態を示している。図4に示した燃料電池モジュール18においては、燃料電池セル装置11を、収納容器19内にスライドして収納することが可能である。なお、燃料電池セル装置11は、改質器20を含むものとしても良い。
また収納容器19の内部に設けられた酸素含有ガス導入部材22は、図4においてはガスタンク16に並置された燃料電池セルスタック12の間に配置されるとともに、酸素含有ガスが燃料ガスの流れに合わせて、燃料電池セル10の側方を下端部から上端部に向けて流れるように、燃料電池セル10の下端部に酸素含有ガスを供給する。
そして、燃料電池セル10のガス流路より排出される燃料ガスを酸素含有ガスと反応させて燃料電池セル10の上端部側で燃焼させることにより、燃料電池セル10の温度を上昇させることができ、燃料電池セル装置11の起動を早めることができる。また、燃料電池セル10の上端部側にて、燃料電池セル10のガス流路から排出される燃料ガスと酸素含有ガスとを燃焼させることにより、燃料電池セル10(燃料電池セルスタック12)の上方に配置された改質器20を温めることができる。それにより、改質器20で効率よく改質反応を行うことができる。
さらに、本形態の燃料電池モジュール18においても、上述した燃料電池セル装置11を収納容器19内に収納してなることから、長期信頼性が向上した燃料電池モジュール18とすることができる。
図5は、外装ケース内に図4で示した燃料電池モジュール18と、燃料電池セル装置11を動作させるための補機とを収納してなる燃料電池装置を示す斜視図である。なお、図5においては一部構成を省略して示している。
図5に示す燃料電池装置23は、支柱24と外装板25とから構成される外装ケース内を仕切板26により上下に区画し、その上方側を上述した燃料電池モジュール18を収納するモジュール収納室27とし、下方側を燃料電池モジュール18を動作させるための補機類を収納する補機収納室28として構成されている。なお、補機収納室28に収納する補機類は省略している。
また、仕切板26には、補機収納室28の空気をモジュール収納室27側に流すための空気流通口29が設けられており、モジュール収納室27を構成する外装板25の一部に、モジュール収納室27内の空気を排気するための排気口30が設けられている。
このような燃料電池装置23においては、上述したように、信頼性を向上することができる燃料電池モジュール18をモジュール収納室27に収納して構成されることにより、信頼性の向上した燃料電池装置23とすることができる。
以上、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上記形態では、多孔質基板1に燃料極層3、固体電解質層4、酸素極層6を形成したが、燃料極を兼ねる多孔質基板に、固体電解質層、酸素極層を形成した燃料電池セルであっても、上記形態と同様の効果を得ることができる。
また、各層間に必要に応じて中間層を形成しても良い。例えば、多孔質基板とインターコネクタ層との間に中間層を形成することもできる。
1:多孔質基板
2:燃料ガス流路
3:燃料極層
4:固体電解質層
5:反応防止層
6:酸素極層
8:インターコネクタ層
9:突出部
11:燃料電池セル装置
18:燃料電池モジュール
S:スラリー塗布装置

Claims (3)

  1. 対向する一対の主面と該主面同士を接続する対向する一対の側面とを有する平板状の多孔質基板と、該多孔質基板の一方側主面に設けられた固体電解質層と、前記多孔質基板の他方側主面に設けられたインターコネクタ層とを有し、前記多孔質基板の一方側主面の前記固体電解質層の両端部が、それぞれ前記側面を介して前記多孔質基板の他方側主面まで延設され、前記固体電解質層の両端部が、前記多孔質基板の他方側主面に配置された前記インターコネクタ層の両端部とそれぞれ積層され接合されており、前記インターコネクタ層の外面は平坦状であるとともに、前記固体電解質層の両端部上の前記インターコネクタ層の両端部の厚みは、前記固体電解質層の両端部間における前記インターコネクタ層の厚みに対して厚み差が±5%の範囲であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
  2. 対向する一対の主面と該主面同士を接続する対向する一対の側面とを有する平板状の多孔質基板と、該多孔質基板の一方側主面に設けられた固体電解質層と、前記多孔質基板の他方側主面に設けられたインターコネクタ層とを有し、前記多孔質基板の一方側主面の前記固体電解質層の両端部が、それぞれ前記側面を介して前記多孔質基板の他方側主面まで延設され、前記固体電解質層の両端部が、前記多孔質基板の他方側主面に配置された前記インターコネクタ層の両端部とそれぞれ積層され接合されており、前記多孔質基板は前記固体電解質層の両端部間に外面が平坦状の突出部を有しており、前記固体電解質層の両端部が設けられた部分における前記多孔質基板の他方側主面からの前記突出部の高さが、前記固体電解質層の両端部が設けられた部分における前記多孔質基板の他方側主面からの前記固体電解質層の端部の高さに対して高低差が±5%の範囲であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。
  3. 請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池セルを収納容器内に収納してなることを特徴とする燃料電池モジュール。
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