JP4468892B2 - カウンタウェイトがないトラクションシーブエレベータ - Google Patents

カウンタウェイトがないトラクションシーブエレベータ Download PDF

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Description

詳細な説明
本発明は、請求項1の前段に記載のエレベータに関するものである。
エレベータ開発作業の1つの目的は、建造物のスペースの効率的で経済的な利用を実現することにある。近年において、この開発作業により、とりわけ機械室のない種々のエレベータの方式が作り出された。機械室のないエレベータの良い例は、欧州特許出願公開第EP0631967 (A1)号および第EP0631968号の明細書に開示されている。これらの明細書に記載されたエレベータは、スペースの利用については相当に効率的である。それは、エレベータシャフトを大型にする必要なしに、建造物中においてエレベータの機械室が必要とするスペースを除去することを可能としたからである。これらの明細書に開示されたエレベータにおいて、巻上機は、少なくとも一方向にはコンパクトであるが、他の方向には、従来のエレベータ巻上機よりも相当に大きな寸法を持つことがありうる。
これらの基本的には良好なエレベータの方式において、巻上機が必要とするスペースは、エレベータのレイアウトの方式においての選択の自由を制限する。巻上ロープを送るために必要な装置のためにスペースが必要とされる。エレベータカー自身によって必要とされる、その経路上のスペース、並びに、カウンタウェイトによって必要とされるスペースを、少なくとも妥当なコストで、エレベータの性能並びに作動の品質を低下させずに削減することは困難である。機械室のないトラクションシーブエレベータにおいて、エレベータシャフト中に、巻上機を取り付けることは、とくに巻上機を上部に備えた方式においては、巻上機が相当大きな重量および寸法を持つため、困難であることが多い。とくに、負荷、速度および/または巻上高さが大きい場合、巻上機の大きさおよび重量は、設置上問題になる。そのため、必要な巻上機の大きさおよび重量は、機械室のないエレベータの構想の適用範囲を実際上制限するか、または、その構想の大型エレベータへの導入を遅らせている。エレベータの近代化において、エレベータシャフト中の利用可能なスペースは、機械室のないエレベータの構想の適用領域を制限している。多くの場合、とくに油圧式エレベータを近代化し、または置き換える場合、機械室のないロープ式エレベータの構想を適用することは、とくに近代化し、または置き換えようとする油圧式エレベータの方式がカウンタウェイトを持たない場合には、シャフト中のスペースが不十分なため、実際的ではない。カウンタウェイトを備えたエレベータの欠点は、カウンタウェイトのコストと、カウンタウェイトがシャフトにおいて占めるスペースである。今日ではほとんど用いられないドラム式エレベータの欠点は、動力/トルク要求の高い、重く複雑な巻上機である。カウンタウェイトがないエレベータの従来の方式は珍しく、適切な方式は見出されていない。従来は、カウンタウェイトがないエレベータを作ることは、技術的または経済的に合理的ではなかった。この形式の1つの方式は、国際出願公開第WO9806655号明細書に開示されている。カウンタウェイトがないエレベータの最近の方式は、実行可能な1つの方式を示す。カウンタウェイトがないエレベータの従来の方式において、巻上ロープをぴんと張ることは、重りまたはバネによって実現され、これは、巻上ロープをぴんと張ることを実現する上で好ましいアプローチではない。たとえば巻上高さの大きいカーまたは高懸垂比のためロープ長が長いことによって、長いロープを用いる場合の、カウンタウェイトがないエレベータの別の問題は、ロープの伸びの補償と、トラクションシーブと巻上ロープとの間の摩擦が、ロープの伸びにより、エレベータの作動にとって不十分となることである。油圧式エレベータ、とくにリフト力が下方から加わる油圧式エレベータの場合、シャフト効率、すなわちエレベータシャフトの全断面積に対するエレベータカーによって占められるエレベータシャフトの断面積の比は、相当に高い。これは、以前から、建造物用のエレベータの方式として油圧式エレベータが選択される大きな要因となっていた。他方では、油圧式エレベータには、そのリフト機構並びに油の消費量に関連した多くの問題があった。油圧式エレベータは、大量のエネルギーを費消し、エレベータ機器から油が漏れる可能性があり、これにより、環境上のリスクを引き起こし、油の定期的な交換が必要なため、大きなコストを要する。またどんなに良好に修理してもエレベータ機器から少量の油がエレベータシャフト中または機械室に、さらにそこから建造物の他の部分または環境中などに漏れると、悪臭が発生する。油圧式エレベータの欠陥を除去する別の形式のエレベータに置き換えることによる油圧式エレベータの近代化は、より小型のエレベータカーの使用を必然的にもたらすが、油圧式エレベータのエレベータシャフト効率を考えた場合、エレベータの所有者にとって魅力的ではない。さらに、エレベータシャフトから大きく離して配することのできる油圧式エレベータの小さなマシンスペースは、エレベータの形式の変更を困難にする。
非常に多くのトラクションシーブエレベータが設置され、使用されている。これらのトラクションシーブエレベータは、以前に、建築当時において考えられたユーザのニーズと、当該建造物の予定された用途に従って建築された。その後、ユーザのニーズと建造物の用途が、多くの場合において変化し、従来のトラクションシーブエレベータは、カーの大きさ等について不十分なことが判明することがある。たとえば、より古い比較的小型のエレベータは、乳母車や車椅子の搬送には、必ずしも適合していない。他方では、居住用からオフイスまたはその他の用途に転用されたより古い建造物においては、当時設置された、より小型のエレベータは、能力において不十分である。公知のように、このトラクションシーブエレベータを大型にすることは、実際上不可能である。それは、エレベータカーとカウンタウェイトとがすでに、エレベータシャフトの断面積を占有しており、カーの寸法を大きくする合理的な方法がないためである。
本発明の目的は全体として、次の目的のうち少なくとも1つを達成することにある。他方で、本発明の目的は、従来よりも建造物およびエレベータシャフト中のスペースをより有効に利用しうるように、機械室のないエレベータを開発することでもある。これは、必要ならば相当に狭いエレベータシャフト中に設置できるようにエレベータを構成せねばならないことを意味している。1つの目的は、トラクションシーブに対して良好な把持力/接触を巻上ロープが持つようにしたエレベータを構成することにある。別の目的は、エレベータの特性を低下させずに、カウンタウェイトがないエレベータの方式を実現することにある。さらに別の目的は、ロープの伸びによる有害な効果を除去することにある。本発明のさらに別の目的は、カウンタウェイトがないエレベータによって、エレベータシャフトの底部および上部のスペースがより有効に使用されうるようにすることにある。
本発明の目的は、エレベータの基本的なレイアウトの変更可能性を犠牲にすることなく実現されねばならない。
本発明のエレベータは、請求項1の特徴部に開示されていることにより特徴付けられる。本発明の他の実施例は、他の請求項の特徴部に開示されていることにより特徴付けられる。本発明の実施例は、本願の説明部分にも示されている。本願の発明の内容は、上記の請求項に規定されているものとは、別の形で規定することも可能である。また、本発明は、とくに表現または内在するサブタスクの点から見た場合、または、達成される利点もしくは利点のカテゴリの観点から見た場合、いくつかの別々の発明から成っていてもよい。そのため、各請求項に含まれる属性のいくつかは、別々の発明の概念からみて、不必要であるかも知れない。
本発明の適用により、とくに、以下の利点の1つ以上が達成されうる。
―本発明のエレベータにおいて、シャフトの上部スペースを狭くする別個のスチール構造は、エレベータシャフトの上端および下端においては必要ではない。
―本発明によれば、エレベータの設置時間と全設置コストとを少なくできる。
―エレベータシャフトの下端において、懸垂のためのロープシーブまたは他の装置のための、エレベータカーよりも下方のスペースが必要とされないので、エレベータシャフトの底部のピットを浅くできる。
―本発明のエレベータによれば、巻上ロープの横に行く部分は、エレベータカーを通っているため、エレベータカーの直上または直下のスペースには、上に行くまたは下に行くロープ部分も転向プーリもなく、それにより、エレベータが必要とするエレベータシャフトの頂部および底部のスペースを狭くできる。
―本発明のエレベータによれば、ロープの横に行く部分は、エレベータカーに、好ましくは、エレベータカーを構成する横ビームに配されるため、シャフトの上部または下部に巻上ロープの横に行くための通路を設ける必要がなくなり、それにより、エレベータが必要とするシャフトの頂部および底部のスペースを狭くできる。
―本発明のエレベータによれば、ロープの横に行く部分は、エレベータカーに、好ましくは、エレベータカーを構成する横ビームに配されるため、シャフトの上部および下部に巻上ロープの横に行くための通路を設ける必要がなくなり、その結果として、ロープ張力の横向きの力は、カーの構造の内部において作用し、転向プーリまたは巻上機についてエレベータシャフトの上部および/または下部に支持装置を別個に設ける必要はなくなる。
―本発明の適用により、エレベータシャフトの断面積の有効な利用が可能となる。
―本発明は、本来、機械室のないエレベータに向けられているが、機械室を備えたエレベータにも適用可能である。
―エレベータカーの懸垂の実現において、エレベータカーの上方および下方の懸垂比は、どんな適切な値を用いてもよいが、好ましくは、エレベータカーの上方および下方の懸垂比には、偶数比を用いる。
―本発明によれば、エレベータカーの上方および下方の好ましい懸垂比は、2:1、6:1,10:1等である。
―本発明により、エレベータカーの対称な懸垂が可能となる。
―エレベータカーの各転向プーリは、取り付けエレメントによって適切に固定されているため、設置および保守が容易に実現できる。
―本発明によれば、巻上機の設置が容易となる。
本発明の主要な適用分野は、人および/または貨物の搬送用のエレベータである。本発明の典型的な適用分野は、1.0m/s以下の速度範囲のエレベータであるが、この速度範囲よりも高速でもよい。走行速度がたとえば0.6m/sのエレベータも、本発明によって容易に実現可能である。
本発明のエレベータにおいて、通常のエレベータの巻上ロープ、たとえば汎用されるスチールワイヤロープを使用しうる。合成材料製ロープ、並びに荷重支持部分が人造繊維からできているロープ、たとえば最近エレベータに使用することが提案された「アラミドロープ」を、エレベータについて使用してもよい。適用可能な方式には、スチール補強フラットロープも含まれるが、それは、このロープが小さな曲がり半径を可能とするからである。たとえば丸型の強靭なワイヤを撚って製造したエレベータの巻上ロープは、本発明のエレベータにおいてとくに好ましい。丸型のワイヤから、同一もしくは異なる太さのワイヤを用いて、いろいろの仕方で撚り合わせてロープを製造することができる。本発明にとくに適したロープにおいて、ワイヤの太さは、平均で0.4mm以下である。強靭なワイヤから作られたとくに好ましいロープは、平均太さが0.3mmより小さいロープまたは時には0.2mmより小さいロープである。たとえば、細いワイヤからできている強靭な4mmのロープは、ワイヤから比較的に経済的に撚り線加工により製造でき、完成したロープにおいてのワイヤの平均太さは、0.15〜0.25mmであり、最も細いワイヤの太さは、わずか約0.1mmとすることができる。細いロープワイヤは、容易に強靭にすることができる。本発明においては、強度が2000N/mm2より高いロープワイヤを使用することができる。ロープワイヤの強度の適切な範囲は約2300〜2700N/mm2である。原則として、約3000N/mm2までの強度のロープワイヤを使用してよいが、それ以上の強度値としてもよい。
トラクションシーブと巻上ロープとの間の把持力は、転向プーリとして用いられるロープシーブによって接触角を増大させることによって増大させることができる。トラクションシーブと巻上ロープとの間の180oよりも大きな接触角は、1つ以上の転向プーリを用いることによって達成される。これによりエレベータカーの大きさおよび重量を減少させ、それによりエレベータのスペース節減の潜在力を増大させる。
本発明のエレベータは、カウンタウェイトがないトラクションシーブ式のエレベータであって、エレベータカーがエレベータガイドレールによって案内され、複数の偏向プーリによって巻上ロープに吊り下げられる。エレベータの巻上ロープは、エレベータカーから上に行くおよび下に行くロープ部分を有するようにされている。エレベータは、エレベータシャフトの上部および下部に設けた複数の転向プーリを備えている。エレベータは、エレベータシャフト内に配されトラクションシーブを備えた駆動機械を有している。エレベータはまた、ロープの張力および/または伸びを等化および/または補償するように巻上ロープに作用する補償装置を備えている。エレベータカーの2つの側面壁の近傍には、転向プーリが取り付けられている。本発明のエレベータにおいて、エレベータシャフトの下部の転向プーリからおよびエレベータシャフトの上部の転向プーリから、エレベータカーに取り付けた転向プーリまでのロープ部分は、実質的に垂直方向に延びている。またエレベータにおいて、エレベータカーの一方の側からのロープ部分をその他方の側に連結するロープ部分は、エレベータカーの別々の側面壁の近傍に取り付けられた転向プーリの間のロープ部分である。
次に本発明を、いくつかの実施例により、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明によるエレベータの構造を概略的に示している。エレベータは、好ましくは、機械室のないエレベータであり、駆動機械4がエレベータシャフトに配置されている。図示したエレベータは、カウンタウェイトがないトラクションシーブエレベータであり、機械を上部に有し、ガイドレール2に沿って移動するエレベータカー1を含む。図1,2および3において、巻上ロープの通路は次の通りである。巻上ロープの一端は、補償装置8として用いられる補償シーブシステムに含まれる、より小さい直径のシーブに固定されている。このシーブは、補償シーブシステム8に含まれる、より大きい直径の第2のシーブに、移動不可能に固定されている。補償装置8として機能するこの補償シーブシステム8は、エレベータのガイドレール2に移動不可能に固着された支持エレメント7を介して、エレベータシャフトに取り付けられている。補償シーブシステム8の、より小さい直径のシーブから、巻上ロープ3は、下に行き、転向プーリ12に至っている。転向プーリ12はビーム20に取り付けられており、ビーム20はエレベータカーの適所に、好ましくはエレベータカーの上部に取り付けられている。巻上ロープは、このシーブ12のロープ溝に沿ってシーブ12を回る。転向プーリとして用いられるロープシーブにおいて、これらのロープ溝は、たとえばポリウレタンなどの摩擦増加材またはその目的に適した他の材料により被覆されていてもよく、また被覆されていなくてもよい。ロープは、転向プーリ12から、エレベータシャフト中の転向プーリ19に向かってさらに上に行く。転向プーリ19は、支持エレメント7に取り付けてあり、この支持エレメントは、エレベータのガイドレールに転向プーリ19を支持している。転向プーリ19の回りに通された巻上ロープは、さらに下に行って、転向プーリ14に至っている。この転向プーリもビーム20に取り付けられ、ビーム20はエレベータカーの適所に取り付けられ、好ましくはエレベータカーの上部に取り付けられる。転向プーリ14の回りに通された巻上ロープは、エレベータシャフトおよびエレベータカーに対して横に行き、エレベータカーの他側において同じビーム20に取り付けた転向プーリ15に至っている。巻上ロープは、この転向プーリの回りに通された後、さらに上に行き、エレベータシャフトの上部の適所に取り付けた転向プーリ10に至っている。この転向プーリ10は、支持エレメント5の適所に取り付けられている。転向プーリ10は、支持エレメント6を介してエレベータガイドレール2に支持されている。転向プーリ10の回りに通された巻上ロープは、さらに下に行き、エレベータカー上の転向プーリ17に至っている。この転向プーリも、ビーム20の適所に取り付けられている。転向プーリ17の回りに通された巻上ロープは、さらに上に行って、転向プーリ9に至っている。この転向プーリは、巻上機4の近傍の適所に好ましくは取り付けられている。図示した転向プーリ9とトラクションシーブ10との間のロープ装置は、Double Wrap (DW)ローピングである。巻上ロープは、転向プーリ9からさらにトラクションシーブ10に至り、最初に転向プーリ9を、それとの「接線接触」で通過する。これは、トラクションシーブ10からエレベータカー1に行くロープ3が、偏向プーリ9のロープ溝を通過し、偏向プーリ9によって生ずるロープ3の曲がりが非常に少ないことを意味している。トラクションシーブ10からのロープ3は偏向プーリ9に単に接線方向に接触するだけであると言えよう。この接線接触は、外行するロープの振動を減衰させる方式として役立ち、ローピング方式にも適用することができる。巻上ロープは、トラクションシーブ10のロープ溝に沿って巻上機4のトラクションシーブ10上を通される。ロープ3は、トラクションシーブ10からさらに下に行って、転向プーリ9に至り、転向プーリ9のロープ溝に沿って、転向プーリ9を回った後、トラクションシーブ10に戻り、トラクションシーブ10のロープ溝に沿って、トラクションシーブ10を回る。ロープ3は、トラクションシーブ10から、転向プーリ9と接線接触しながら、ガイドレール2に沿って移動するエレベータカー1を通り過ぎて、さらに下に行き、エレベータシャフトの底部に配された転向プーリ18に到達する。巻上機と転向プーリ9とは、やはりエレベータのガイドレール2に支持された支持エレメント5の適所に固定されている。転向プーリ12、19、14、15、10、17、9および補償シーブシステム8の、より小さい直径のシーブは、巻上機4のトラクションシーブ10と共に、エレベータカーの上部の懸垂を形成している。この懸垂は、エレベータカーの下部の懸垂と同じ懸垂比を有している。この懸垂比は、図1、2および3の場合6:1である。巻上ロープは転向プーリ18を、転向プーリ18のロープ溝に沿って回る。このプーリは、好ましくは、エレベータカーのガイドレール2の適所に固定された支持エレメント6においてエレベータシャフトの下部の適所に取り付けられている。転向プーリ18を回った巻上ロープ3は、さらに上に行って、エレベータカーの適所に取り付けた転向プーリ17に至り、転向プーリ17はビーム20に取り付けられており、ロープは、この転向プーリ17を回った後、さらに下に行って、エレベータシャフトの下部の支持エレメント6の適所に取り付けた転向プーリ16に到達する。ロープは、転向プーリ16を回った後、エレベータカーの適所に取り付けた転向プーリ15に戻る。この転向プーリはビーム20に取り付けられる。巻上ロープ3は、転向プーリ15から、エレベータカーの他方の側においてビーム20に取り付けた転向プーリ14まで、エレベータカーを横切ってさらに横に行く。ロープは、この転向プーリ14を回った後、さらに下に行って、エレベータシャフトの下部の適所に取り付けた転向プーリ13に到達する。この転向プーリは、エレベータのガイドレール2の適所に固定した支持エレメント22の適所に取り付けられている。転向プーリ13を回ったロープは、さらに上に行き、ビーム20においてエレベータカーの適所に取り付けた転向プーリ12に到達する。転向プーリ12を回ったロープ3は、さらに下に行って、シャフトの下部の適所に固定され支持エレメント22に取り付けられた転向プーリ11に到達する。巻上ロープ3は、転向プーリ11を回った後、さらに上に行って、エレベータシャフトの上部の適所に取り付けた補償シーブシステム9に到達する。巻上ロープの第2の端部は、補償シーブシステム8のうち、直径がより大きいシーブに固着されている。補償装置8として機能する補償シーブシステムは、支持エレメント7上の固定装置である。転向プーリ18、17、16、15、14、13、19、11、および補償シーブシステム8に含まれる直径がより大きいシーブは、エレベータカーの上部の懸垂と同じ懸垂比の、エレベータカーの下部の懸垂を形成している。この懸垂比は、図1、2および3の場合6:1である。
図1、2および3において、補償シーブシステム8は、互いに移動不可能に連結され直径が互いに異なる2個のホイール状部材、好ましくはシーブから成っている。補償シーブシステム8は、支持エレメント7の適所に取り付けられ、支持エレメント7は、エレベータガイドレール2の適所に取り付けられている。ホイール状部材のうち、エレベータカーの下方の巻上ロープ部分と係合するシーブは、エレベータカーの上方の巻上ロープ部分と係合するシーブよりも大径である。補償シーブシステムの各シーブの直径比は、巻上ロープに作用する張力の大きさ、従ってロープ伸び補償力を定め、さらに、同様に補償すべきロープの伸びの大きさを定める。補償シーブシステム8の使用により、非常に大きなロープの伸びが前記の構成により補償されるという利点がある。補償シーブシステム8のシーブの直径の値を変えることによって、補償すべきロープの伸びの大きさ並びにトラクションシーブに作用するロープ力T1, T2の比に影響を与えることが可能となる。この比はこの装置により一定とすることができる。懸垂比が大きく、または巻上高さが大きいため、エレベータにおいて用いられるロープの長さは大きくなる。エレベータの作動および安全にとっては、エレベータカーの下方の巻上ロープ部分が十分な張力の下に保たれることと、補償すべきロープの伸びの量が大きいこととが不可欠である。これは、バネや簡単なレバーを用いたのでは実現できないことが多い。エレベータカーの上部および下部の懸垂比が奇数の場合、図1、2および3に示したエレベータの補償装置として機能する補償シーブシステムは、トランスファギアを介して、エレベータカーの適所に取り付けられ、また懸垂比が偶数の場合、本発明のエレベータの補償装置として機能する補償シーブシステムはエレベータシャフトの適所に、好ましくはエレベータガイドレールに取り付けられる。本発明による補償シーブシステム8において、2個のシーブを用いてもよいが、使用するホイール状部材の数は変更してもよい。たとえば、1つのシーブのみを使用し、巻上ロープの固着点を設ける位置によって直径を可変としてもよい。さらに、2個より多くのシーブを使用し、たとえば、単に補償シーブシステムのシーブ間の直径を変更することによって、シーブの直径比を変更するようにしてもよい。図1、2および3に示したカウンタウェイトがないエレベータは、従来のようなロープ力補償バネを備えてなく、その代わりに、補償器は、補償シーブシステム8から成っている。そのため、巻上ロープ3は、補償シーブシステム8に直接固着することができる。本発明の補償装置は、各図に示した補償シーブシステムの他に、その目的に適したレバーまたは補償装置から成っていてもよく、複数の補償用シーブを備えていてもよい。エレベータカーに結合している固着装置である、各図に示したビーム20は、図示したエレベータカーの上方の位置以外の、他の位置に配してもよい。ビーム20は、たとえばエレベータカーの下部または適宜の中間の位置に配してもよい。転向プーリに数個の溝を設けてもよく、エレベータカーの上方の懸垂に含まれる巻上ロープとエレベータカーの下方の懸垂に含まれる巻上ロープの両方の通行を制御するために、同一の転向プーリを用いてもよい。これはたとえば転向プーリ12、14、15、17について、各図に示されている。
本発明のエレベータの好ましい実施例は、機械室がなくかつ機械が上部に配されたエレベータであり、駆動機械が被覆されたシーブを有し、エレベータは、実質的に丸型の断面の複数の細い巻上ロープを備えている。このエレベータにおいて、巻上ロープとトラクションシーブとの間の接触角は、180oよりも大きい。エレベータはユニットを含み、ユニットは、(支持エレメントにより適所に取り付けられた)駆動機械と、トラクションシーブと、トラクションシーブに対してある適切な角度に取り付けられた転向プーリとを含む。ユニットは、エレベータガイドレールに固着されている。エレベータは、カウンタウェイトなしで構成され、懸垂比は6:1である。ロープ力および伸びの補償は、本発明による補償装置を用いて実現される。エレベータシャフトにある転向プーリは、エレベータガイドレールに支持エレメントを介して、所定の位置に取り付けられ、エレベータカーに設けられた複数の転向プーリはすべて、エレベータカーに含まれるビームの適所に取り付けられている。このビームは、また、エレベータカーの支持構造を形成している。
当業者には明らかなように、本発明のさまざまな実施例は、以上に説明した実施例には限定されず、上記の特許請求の範囲の範囲内で、種々変更することができる。たとえば、エレベータシャフトの上部とエレベータカーとの間並びにエレベータカーとその下方の各転向プーリとの間の、巻上ロープの掛け回しの回数は、ロープを多重に掛け回すことによって何らかの付加的な利点が得られるとしても、本発明の基本的な利点について、とくに決定的な問題ではない。一般に、カウンタウェイトなしの用途では、とくに上方からエレベータカーに向かってロープを下に行かせる回数が下方から上に行く回数と等しくなるように構成する。その結果、上に行く転換プーリと下に行く転換プーリとの懸垂比は同じになる。当業者には明らかなように、本発明の実施例は、エレベータカーの上方および下方において懸垂比が奇数になるように構成してもよく、その場合には、補償装置は、エレベータカーまたはその構造物に取り付ける。当業者は、以上に説明した例に従って、本発明の実施例を変更し、トラクションシーブおよびロープのプーリを、被覆金属プーリとせずに、未被覆メタルプーリとしたり、所期の目的に適合した他の材料製の未被覆プーリとしたりすることができる。
同様に、当業者には明らかなように、トラクションシーブおよび、本発明において用いられ、転向プーリとして用いられ、少なくともその溝の領域に非金属材料製の被覆を備えている金属または他の適宜の材料製のロープのプーリは、所期の目的に適合した、たとえばゴム、ポリウレタンまたは他の材料製の被覆を備えることができる。また同様に当業者には明らかなように、エレベータカーに関してエレベータカーの側面に補償シーブシステムを移動させるとは、「エレベータカーの側面」がカーの高さの範囲内の移動であり、この移動距離が、好ましくは、エレベータカーの全高であることを意味している。
やはり当業者には明らかなように、上記の各例に示したレイアウトとは異なった仕方で、エレベータシャフトの断面内のエレベータカーおよびマシンユニットのレイアウトを定めるようにしてもよい。このように異なったレイアウトの一例として、シャフトドアから見てカーの後方にマシンを配し、カーの底部に関して対角線の方向にロープをカーの下を通す。底部の形状に関して対角線の方向または他の斜め方向においてカーの下方にロープを通すことは、他の形式の懸垂レイアウトにおいても、ロープに対するカーの懸垂をエレベータの質量中心に関して、対称にすべき場合に、利点を提供する。
同様に、当業者には明らかなように、本発明によるエレベータの装備は、前記の各実施例によるものと異ならせてもよい。同様に、当業者には明らかなように、本発明によるエレベータは、巻上ロープとして、ほぼすべての形式の可撓性巻上手段、たとえば、1本以上のストランドから成る可撓性ロープ、フラットベルト、コグドベルト、台形ベルト、または、所期の目的に適した他の形式のベルトを用いて実現しうる。
やはり当業者には明らかなように、本発明によるエレベータは、以上に例として説明したローピング配置に比べて接触角を増大させるように、トラクションシーブと、1個または複数の転向プーリとの間の種々のローピング配置を用いて構成してもよい。一例として、1個または複数の転向プーリ、トラクションシーブおよび巻上ロープは、たとえばDW, XWまたはCSWローピングを用いるなどにより、実施例のローピング配置と異なった仕方で配置してもよい。同様に、当業者には明らかなように、本発明によるエレベータに、カウンタウェイトを設けてもよく、その場合に、カウンタウェイトは、たとえばエレベータカーよりも重量を小さくし、別個のローピング配置によって懸垂させるようにする。
図1は、本発明によるエレベータの概略を示す。 図2は、別の角度から見た本発明による図1のエレベータを示す。 図3は、第3の角度から見た本発明によるエレベータを示す。

Claims (15)

  1. エレベータカーがガイドレールによって案内されるとともに、巻上ロープに複数の転向プーリによって懸垂されて、該エレベータカーから上に行くおよび下に行く巻上ロープのロープ部分と、エレベータシャフトの上部に備えられた上部転向プーリおよび該シャフトの下部に備えられた下部転向プーリとを有し、該エレベータシャフト内に配されトラクションシーブを備えた駆動機械を有し、ロープの張力および/または伸びを等化および/または補償するように前記巻上ロープに作用する補償装置を含むカウンタウェイトのないエレベータにおいて、該補償装置には前記巻上ロープの両端部が固定され、前記駆動機械は前記エレベータカーに対して一方の側に、前記補償装置は該一方の側と対向する他方の側に、前記上部および下部転向プーリは前記エレベータカーの両側に、該エレベータカーの直上および直下の空間を避けて備えられ、該エレベータは、さらに前記エレベータカーに2つの側面壁の近傍で取り付けられたカー転向プーリを含み、前記トラクションシーブから、前記下部転向プーリから、および前記上部転向プーリから前記カー転向プーリまでのロープ部分が前記エレベータカーの両側において実質的に垂直方向に延び、該エレベータにおいて、該ロープ部分を前記エレベータカーの一方の側からその他方の側に連結するロープ部分が、前記カー転向プーリの間のロープ部分であることを特徴とするエレベータ。
  2. 請求項1に記載のエレベータにおいて、前記上部の前記転向プーリはすべて、支持エレメントによって、前記ガイドレールに支持されることを特徴とするエレベータ。
  3. 請求項1に記載のエレベータにおいて、前記巻上機はガイドレールに、少なくとも1個の転向プーリが共有する1つの支持エレメントによって、支持されることを特徴とするエレベータ。
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載のエレベータにおいて、前記エレベータカーの別々の側面壁の近傍に取り付けられた前記転向プーリのうち、該別々の側面壁の各々の近傍に取り付けられた少なくとも1つの転向プーリは、該エレベータカーを補強または支持する水平ビーム構造に取り付けられることを特徴とするエレベータ。
  5. 請求項1から4までのいずれかに項記載のエレベータにおいて、前記トラクションシーブと前記転向プーリとの間で使用されるローピング配置はDWローピングであることを特徴とするエレベータ。
  6. 請求項1から5までのいずれかに項記載のエレベータにおいて、前記下部の前記転向プーリはすべて、支持エレメントによって前記ガイドレールに支持されることを特徴とするエレベータ。
  7. 請求項1から6までのいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータは補償システムを有し、該補償システムは好ましくは、レバー、テンションシーブシステムまたは補償シーブシステムであることを特徴とするエレベータ。
  8. 請求項1から7までのいずれかに記載のエレベータにおいて、該エレベータは補償システムを有し、該補償システムは、好ましくは、1つ以上の転向プーリを含むことを特徴とするエレベータ。
  9. 請求項1から8までのいずれかに記載のエレベータにおいて、前記トラクションシーブと前記巻上ロープとの間の連続接触角は少なくとも180oであることを特徴とするエレベータ。
  10. 請求項1から9までのいずれかに記載のエレベータにおいて、使用する前記巻上ロープは高強度の巻上ロープであることを特徴とするエレベータ。
  11. 請求項1から10までのいずれかに記載のエレベータにおいて、前記巻上ロープの直径は、8mmより小さく、好ましくは3〜5mmの間であることを特徴とするエレベータ。
  12. 請求項1から11までのいずれかに記載のエレベータにおいて、前記巻上機は、荷重に比してとくに軽量であることを特徴とするエレベータ。
  13. 請求項1から12までのいずれかに記載のエレベータにおいて、前記トラクションシーブは、ポリウレタン、ゴム、またはその目的に適合した他の摩擦材料であることを特徴とするエレベータ。
  14. 請求項1から13までのいずれかに記載のエレベータにおいて、前記トラクションシーブは、少なくともロープ溝の領域において、金属、好ましくは鋳鉄からできており、好ましくは、アンダカットロープ溝を有することを特徴とするエレベータ。
  15. 請求項1から14までのいずれかに記載のエレベータにおいて、前記エレベータカーの下方の前記転向プーリのD/d比は40より小さいことを特徴とするエレベータ。
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