JP4454733B2 - 反射防止コーティング組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板から上塗りされたフォトレジスト層への露光照射光の後戻りによる反射を減少する組成物に関する。より詳細には、本発明は、193nm照射光のような200nm未満の照射光を含む短波長露光照射光を、効果的に吸収する樹脂バインダーを含む反射防止被覆組成物類(ARCs)に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトレジストは画像を基板に転写するために使用される感光膜である。フォトレジストの塗布層は基板の上に形成され、次いで、フォトレジスト層はフォトマスクを通して活性化照射源に露光される。フォトマスクは、活性化照射光に対して不透明な領域と、活性化照射光に対して透明な他の領域とを有する。活性化照射光に露光されると、フォトレジスト被膜が光に誘起された化学的変性(photo induced chemical transformation)を生じ、それによってフォトマスクのパターンがフォトレジストを塗布した基板に転写される。露光の後、フォトレジストを現像すると、基板の選択的加工が可能なレリーフ画像が得られる。
【0003】
フォトレジストはポジ型でもネガ型でも可能である。大抵のネガ型フォトレジストの場合、塗布層の活性化照射光に露光される部分は、フォトレジスト組成物の感光性化合物と重合可能な試薬との間の反応において、重合または架橋を行う。従って、露光された塗布部分は露光されない部分よりも現像溶液により溶解しにくくなる。ポジ型フォトレジストの場合は、露光された部分は現像溶液により溶解しやすくなり、一方露光されない領域は、比較的に現像液により溶解しにくい状態を維持する。フォトレジスト組成物は当業者には公知であり、デフォレスト(Deforest)による「フォトレジスト材料および方法」(Photoresist Materials and Prosesses)」(McGraw Hill Book Company,New York,1975)の第2章、および、モーリー(Moreay)の「半導体リソグラフィー、原理、実際および材料(Semiconductor Lithography,Principles Practies and Materials)」(Plenum Press,New York)の第2章および第4章に記載されていて、この両文献については、フォトレジスト組成物およびその製造法と使用法に関する教えについて、本発明においても参照している。
【0004】
フォトレジストの主な用途は半導体においてであり、1つの目的は、シリコンまたはヒ化ガリウムなどのような高度に研磨された半導体の薄片を、回路としての機能を発現させるために、好ましくはミクロンまたはサブミクロンの幾何学的な模様の、電子の伝導通路の複雑なマトリックスに変換することである。適切にフォトレジストを加工することがこの目的を達成するための鍵である。種々のフォトレジスト加工工程の間には強い相互依存性があるが、高解像度のフォトレジスト画像を得るにあたっては露光がより重要な工程の1つであると考えられている。
【0005】
しばしば、フォトレジストを露光するために使用する活性化照射光の反射が、フォトレジスト層においてパターン形成された画像の限度を呈することがある。照射光が基板/フォトレジスト界面から反射すると、露光の間フォトレジストの中の照射強度が変化することがあり、それによって現像時にフォトレジストの線幅が不均一になる。照射光が基板/フォトレジスト界面から露光の目的としないフォトレジスト領域へ散乱することもあり、この場合も線幅がばらつくことになる。散乱や反射の程度は領域によって典型的に変化し、これによってもさらに線幅が不均一になる。基板の形状における変化も解像度に限度を呈する反射問題を引き起こす。
【0006】
半導体デバイスが高密度となっている最近の傾向から、産業界では露光源の波長を、遠紫外(DUV)光(300nm以下の波長)、KrFエキシマーレーザー光(248.4nm)、ArFエキシマーレーザー光(193nm)、電子ビームおよび軟X線へと短くする傾向がある。フォトレジスト被膜に画像形成するために短くした波長を使用することから、結果として、一般に下層の基板の表面と同様に上層のレジスト表面からの反射が増加した。従って、より短い波長を使用することが基板表面からの反射の問題を大きくしてきた。
【0007】
反射光の問題を少なくするため使用される別の手法では、基板表面とフォトレジスト被覆層との間に挿入する照射光吸収層を使用してきた。例えば、PCT出願公開公報第90/03598号(W090/03598)、ヨーロッパ特許出願公開公報第0639941号(EP,A1,0,639,941)および米国特許第4,910,122号、同第4,370,405号および同第4,362,809号を参照されたい。これらは全て、反射防止(ハレーション防止)組成物およびその使用法の開示に関して本発明で参照している。このような層は、前記文献中でも反射防止層またはARC(反射防止組成物)という表現で述べられている。
シップレー社(Shipley Co.)のヨーロッパ特許出願公開公報第542008号(EP,A1,542,008)には、極めて有用なハレーション防止(反射防止)組成物が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
先行技術におけるARC組成物が多くの反射防止用途に有効であることが見出されている一方で、先行技術の組成物には、特に短波長画像形成用途に使用した場合いくつかの性能上の制約がある。
従って、新規な反射防止コーティング組成物を持つことが望まれる。特に、193nmのような200nm未満(sub−200nm)の照射光を含む、短波長の照射光の望ましくない反射を効果的に吸収する新規な反射防止コーティング組成物が望まれる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特に193nm画像形成のような短波長画像形成用途に対し、反射防止コーティング組成物(ARC)として使用するのに好適な新規な光吸収組成物を提供する。本発明のARC類は、一般的に、短波長露光照射光を効果的に吸収してこの照射光の反射を減少させる樹脂バインダーを含み、必要により架橋剤成分も含む。
【0010】
本発明のARC類の好ましい樹脂バインダーは、ポリマー主鎖に好ましくは懸架したフェニル単位を含む。
本発明の特に好ましいARC樹脂バインダーは、ポリマー主鎖と懸架したフェニル単位との間に介在する如何なるアルキル(例えば、置換または非置換の(−CH−)で、nは1から約6または8である。)単位も有しない。例えば、好ましい懸架した基は、置換または非置換のスチレン、置換または非置換のイソプロピルスチレン、置換または非置換のアクリル酸フェニル、及び、置換または非置換のメタクリル酸フェニルの重合により得られるものを含む。本発明で述べる、ポリマー主鎖から「直接懸架した(directly pendant)」フェニル基とは、置換または非置換のスチレンまたは置換または非置換のイソプロピルスチレン単位の重合によって得られるように、ポリマー主鎖とフェニル基との間にアルキル基または他の基が介在しないことを示す。
【0011】
しかしながら、あまり好ましくはないが、本発明は、例えばメタクリル酸−2−フェニルエチルおよびその類似化合物の重合により得られるような、ポリマー主鎖とフェニル基の間にアルキル(例えば、置換または非置換の(−CH−)で、nは1から約6または8である。)結合が介在する懸架したフェニル基を持つ樹脂バインダーを有するARC類も包含する。
【0012】
フェニル発色団部分を持った反射防止組成物樹脂バインダーは、好適にはコポリマーであり、好ましくは2またはそれ以上の異なるモノマーの重合によるものであって、そのモノマーの少なくとも1つはフェニル発色団グループを含むものである。例えば、好ましい別のARC樹脂単位は、例えば、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルおよびそれらの類似化合物のようなヒドロキシアクリレート; メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチルおよびそれらの類似化合物のようなC1−12アクリレートのようなアクリレートモノマーの重合によって得られるものを含む。フェニル発色団単位を含むアクリレート樹脂は、一般に本発明のARC類の中で使用されることが好ましい。本発明のARC類を架橋するために、好ましくはARC樹脂は硬化反応を推進するための水酸基または他の反応性部分を有する。
【0013】
本発明は、さらにレリーフ画像を形成する新規な方法、および本発明のARC組成物単独でまたはフォトレジスト組成物との組み合わせで塗布された基板を含む新規な製造技術を提供する。本発明の他の態様は以下に開示される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の反射防止組成物の樹脂バインダー組成物は、短波長の画像形成システムと共に使用するのが好ましく、200nm未満の反射、特に193nmの反射を効果的に吸収する。
【0015】
特に、好ましい本発明のARC樹脂バインダーは、懸架したフェニル基を持つ。例えば、好ましい樹脂は次式Iで示されるフェニル単位を持つ。
【0016】
【化5】
Figure 0004454733
【0017】
(式中、Wは、化学結合、アルキル結合、例えば置換または非置換の(−CH−)で、nが1から約6または8、またはエステル結合(すなわち、(C=O)O);
各R’は、水素またはハロゲン(F、Cl、Br、またはI)のような非水素置換基;好ましくは1個から約8個の炭素原子を持つ置換または非置換のアルキル;好ましくは1個から約8個の炭素原子を持つ置換または非置換のアルコキシ、−C(=O)OZのような置換または非置換のエステルで、ZはC1−8の置換または非置換のアルキル;例えばアシルおよび類似基であるC1−8アルカノイルのような置換または非置換のアルカノイル;置換または非置換の炭素環式アリール、特にフェニル;置換または非置換のアラルキル、特にベンジル(−CH);および類似基;
mは、0(懸架したフェニル基が完全に水素で置換されている場合)から5の整数;そして
Zは、ポリマーのモノマー単位間の結合基であり、例えば炭素−炭素二重結合のようなモノマー単位の反応成分で、重合して、例えば、置換または非置換のアルキレン、好ましくはC1−4アルキルで置換されたまたはされていないC1−3アルキレンを与える。)
【0018】
前述のように、より好ましい樹脂は、懸架したフェニル基を持つが、ポリマー主鎖と懸架したフェニル基の間に介在するいかなるアルキル(例えば、置換または非置換の(−CH−)で、nは1から約6または8である。)基も持たない樹脂、例えば次式IAで示されるフェニル単位を持つ樹脂である。
【0019】
【化6】
Figure 0004454733
【0020】
(式中、W’は、化学結合またはエステル結合(すなわち、(C=O)O);
各R’、mおよびZは、上記式Iで定義されたものと同じである。)
また前述のように、本発明の特に好ましいARC樹脂は、フェニル発色団単位を持つ繰り返し単位に加えてアクリレート単位を持つ。例えば、好ましい樹脂としては、次式IIで表わされる単位から成るアクリレートコポリマーが挙げられる。
【0021】
【化7】
Figure 0004454733
【0022】
(式中、W、各R’およびmは、上記式Iで定義されたものと同じであり;
は、好ましくは1から約20の炭素原子、より好ましくは1から約8ないし20の炭素原子の置換または非置換のアルキル基;フェニルなどのような置換または非置換の炭素環式アリール、または、置換または非置換のベンジル、2−フェニルエチルおよび類似基のような置換または非置換のアラルキルであり、そして好ましくはRは非芳香族基である。
各Yは、独立した、水素または置換または非置換のC1−6アルキル、そして好ましくは、各Yは、独立した、水素またはメチル;及び、
xとyは、ポリマー中のそれぞれの単位のモルパーセントであり、好ましくはxは約5パーセントから約80ないし90パーセント、より好ましくは約10ないし15パーセントから約60ないし70パーセント、さらにより好ましくは約20パーセントから約50パーセントで、ポリマーの残りはR基または他の単位を含む単位を含む。)
【0023】
3元コポリマーおよび他のより多元なコポリマー、例えば、次式IIIで示される単位を含むアクリレートコポリマーなどが特に好ましい。
【0024】
【化8】
Figure 0004454733
【0025】
(式中、W、各R’およびmは、上記式Iで定義されたものと同じであり;
式中、RとRは、それぞれ異なり、式II中のRで定義されたものと同じ基から独立に選ばれ;
各Yは、独立した、水素または置換または非置換のC1−6アルキル、好ましくは、各Yは、独立した、水素またはメチル;そして
x、yおよびzは、ポリマー中のそれぞれの単位のモルパーセントであり、好ましくは、xは約5パーセントから約80ないし90パーセント、より好ましくは約10ないし15パーセントから約60ないし70パーセント、さらにより好ましくはxは約20パーセントから約50パーセントで、ポリマーの残りはR基とR基、または他の単位を含む単位から成る。)
【0026】
上記式の好ましいRとRは、ヒドロキシ−置換アルキル基、特に2−ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルのようなC1−6ヒドロキシアルキル;メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘキシルの重合により得られるような脂環式C1−8アルキル;および、好適にはシクロヘキシル、アダマンチル、イソボルニルおよび類似基等のような3個から約20個の炭素を持ち、対応するアクリレートおよびメタクリレートの重合により得られる環状アルキル基を含む。
【0027】
前記したように、ARC樹脂は懸架したシアノおよび無水イタコン酸基等の他の単位を持ってもよい。好ましくは、無水イタコン酸部分はポリマー主鎖に直接懸架する、すなわち当該部分は、ポリマー結合基と無水イタコン酸基の間に介在するアルキレン、アリールまたは他の基を持たずに、ポリマー結合基に直接懸架する。一方、該シアノ基は好ましくは(アクリロニトリルまたは類似物の重合により)該ポリマー主鎖に直接懸架するが、結合基が該シアノ基とポリマー結合基の間に介在してもよい。
【0028】
本発明で論じられたように、ARC樹脂または他のARCあるいはレジスト成分の種々の部位は所望ならば置換されてもよい。「置換された」置換基は1個またはそれ以上の置換可能な位置、一般的には1、2または3位において、例えばハロゲン(特に、F、ClまたはBr);シアノ;C1−8アルキル;C1−8アルコキシ;C2−8アルケニル;C2−8アルキニル;ヒドロキシル;例えばアシルおよび類似基等のようなC1−6アルカノイル等のアルカノイル;等の1個またはそれ以上の好適な基で置換され得る。
【0029】
本発明のARC類に使用される特に好ましいポリマーは、フェニル単位のモルパーセント(すなわち、式III中のxの値)が10パーセントから約60パーセント、より好ましくは約10ないし15パーセントから約40ないし50パーセント;Rは、置換または非置換のアルキル、特に2−ヒドロキシエチル等のC1−6ヒドロキシアルキルであり、R基を持つエステル単位のモルパーセント(すなわち、式III中のyの値)が約1モルパーセントから50ないし60モルパーセント、より好ましくは約10モルパーセントから40ないし50モルパーセント;Rが、例えばメチル、エチル等または環状アルキル基などのC1−8脂環式アルキル等の非置換アルキルであり、R基を持つエステル単位のモルパーセント(すなわち、式III中のzの値)が約10モルパーセントから60ないし70モルパーセント、より好ましくは約20ないし30モルパーセントから40ないし50モルパーセント;各Yが、独立した、水素またはメチルである、上記式IIIの3元コポリマーを含む。特に好ましいARC樹脂については後述の実施例を参照されたい。
【0030】
本発明のARC樹脂バインダーは、同一モノマーまたは好ましくはコポリマーを得るための異なるモノマーを重合することにより好適に合成される。少なくとも1種の重合されたモノマーはフェニル基を含有する。反応温度は、使用する特定の試薬の反応性、及び反応溶媒(溶媒を使用する場合)の沸点によって変わり得るが、例えば、ラジカル開始剤の存在下で、好ましくは不活性雰囲気(例えば、窒素またはアルゴン)下、約70℃以上のような高温で、種々の単位を提供するモノマーを反応させることによるフリーラジカル重合が好適に用いられる。反応条件例は後述の実施例を参照されたい。本発明の開示により、当業者は経験的にあらゆる特定の系に対しても好適な反応温度を決めることができる。所望ならば反応溶媒を使用してもよい。好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン、プロパノールおよびブタノールのようなアルコール、並びにベンゼン、クロロベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族溶媒等が挙げられる。ジメチルスルホキシドとジメチルホルムアミドも好適である。また、重合反応は無溶媒でも進めることができる。種々のフリーラジカル開始剤を使って本発明のコポリマーを調製してもよい。例えば、Vazo 52(デュポン社)、アゾ−ビス−2,2’−イソブチロニトリル(AIBN)および1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)のようなアゾ化合物を使用してもよい。過酸化物、過酸エステル、過酸および過硫酸塩も使用してよい。
【0031】
ARC樹脂バインダーは約1,000から約10,000,000ダルトン、より一般的には約5,000から約1,000,000ダルトンの重量平均分子量(M)、および約500から約1,000,000ダルトンの数平均分子量(M)を持つことが好ましい。本発明のポリマーの分子量(M及びM)はゲル浸透クロマトグラフィによって好適に求められる。
【0032】
本発明の樹脂バインダーは、例えば200nm未満、特に193nmの短波長で良好な吸光度を示すものが好ましい。より詳細には、本発明の好ましい樹脂バインダーは、約193nmにおいてミクロン当たり少なくとも約3吸光度(吸光度/μ)の光学密度、好ましは193nmにおいて約5から20またはそれ以上のミクロン当たりの吸光度、より好ましは193nmにおいて約8から16またはそれ以上のミクロン当たりの吸光度を持つ。特徴的な樹脂に必要なより高い吸光度の値は、樹脂の発色団単位のパーセントを増やすことによって得ることができる。
また、本発明の反射防止組成物は、フェニル発色団単位を持つ樹脂と共存する共樹脂(co−resin)として、フェニル発色団単位を持たない樹脂を含有することができる。
【0033】
本発明の反射防止組成物の樹脂バインダー成分の濃度は、比較的広い範囲で変化させることができ、樹脂バインダーは、通常、ARCの全乾燥成分の約50から95重量パーセント、さらに一般的には全乾燥成分(溶媒キャリアを除いた全成分)の約60から90重量パーセントまでの濃度で使用される。
【0034】
本発明の架橋型ARCは、架橋剤成分または物質も含む。種々の架橋剤を使用することができ、その中には前記のシップレー社(Shipley Co.)のヨーロッパ特許出願第542008号に開示されているARC架橋剤類も挙げられる。
架橋剤としては、メトキシメチル化グリコウリル(glycouril)のような低塩基度の架橋剤が特に好ましい。特に好ましい架橋剤としては、下記の構造式IVに対応するメトキシメチル化グリコウリルがある。
【0035】
【化9】
Figure 0004454733
【0036】
該メトキシメチル化グリコウリルは公知の手順で調製できる。また、この化合物は、アメリカンシアナミド社(American Cyanamid Co.)からパウダーリンク(Powderlink)1174の商品名で市販されている。
【0037】
他の適当な低塩基度架橋剤としては、ヒドロキシ化合物、特に、フェニル基、または少なくとも1個のヒドロキシ基もしくはC1−8ヒドロキシアルキル置換基のようなヒドロキシアルキル置換基を持つ芳香族類のような多官能化合物が挙げられる。フェノール化合物としては、ジメタノールフェノール(C(CHOH)OH)、および隣接する(環の1−2の位置の原子)ヒドロキシ基およびヒドロキシアルキル基の置換基を持つ他の化合物、特に少なくとも1個のメタノールまたは他のヒドロキシアルキル環置換基及びヒドロキシアルキル置換基に隣接する少なくとも1個のヒドロキシ基を持つフェニル基または他の芳香族化合物が一般的に好ましい。
【0038】
ARCコーティング層を硬化させる間、該グリコウリル化合物の反応に対し触媒または促進作用を引き起こすために、本発明の架橋型反射防止組成物は、好ましくは、さらに酸または酸発生剤化合物を含有する。好ましくは、光分解または熱処理時に酸を発生する酸発生化合物が使用される。好ましくは、酸発生剤として、熱酸発生剤、すなわち、熱処理時に酸を発生する化合物が使用される。2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、ニトロベンジルトシレート、特に4−ニトロベンジルトシレートおよび他の有機スルホン酸のアルキルエステルのような種々の公知の熱酸発生剤が好適に使用される。活性化時にスルホン酸を発生する化合物が一般的に好適である。典型的には熱酸発生剤は、反射防止組成物の全乾燥成分の約0.5〜15重量パーセント、より好ましくは全乾燥成分の約2重量パーセントの濃度で反射防止組成物の中に存在する。熱酸発生剤の代りまたは追加として、光酸発生剤が酸発生剤として使用でき、ARCコーティング層ブランケットは、上塗りされたフォトレジスト組成物の塗布前に活性化照射光に露光される。
【0039】
また、むしろ酸発生剤の代りに、酸を本発明の架橋型ARCの中へ単に配合する場合があり、特に、ARCの使用前に酸が組成物成分の望ましくない反応を促進しないように、硬化させるのに酸の存在下で加熱する必要があるARC類の場合に使用される。好適な酸としては、例えば、トルエンスルホン酸、スルホン酸、トリフリック酸(triflic acid)等のスルホン酸類のような強酸、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0040】
本発明は、目的とするフォトレジスト組成物との使用の過程で著しい架橋が起こらない反射防止組成物も含む。そのような非架橋型の反射防止組成物は、架橋反応を誘起または促進させるための架橋剤成分または酸あるいは熱酸発生剤を含む必要がない。言い換えれば、そのような非架橋型の反射防止組成物は、一般的には架橋反応を促進させるための架橋剤成分および/または酸供給源を本質的に(すなわち約1または2重量パーセント未満)または完全に含まない。
【0041】
また、本発明の反射防止組成物は、好ましくは、上塗りされたフォトレジスト層の望ましくないノッチング(notching)またはフーチング(footing)を十分抑制しまたは実質的に防止する量で好適に用いられる1種以上の光酸発生剤(すなわち、「PAG」)を含む。本発明のこの態様において、光酸発生剤は、架橋反応を促進させるための酸供給源としては使用されず、従って、好ましくは、光酸発生剤は、反射防止組成物(架橋型ARCの場合)の架橋の過程で実質的に活性化されない。特に、熱的に架橋される反射防止組成物に関しては、反射防止組成物PAGは、該PAGが、上塗りされたフォトレジスト層のその次の露光過程で活性化されて酸を発生するように、架橋反応条件に対して実質的に安定であるべきである。特に、好ましいPAGは、約140℃または150℃〜190℃の温度に5分から30分またはそれ以上露光させた時に、実質的に分解ないしは劣化しない。
【0042】
一般的に、本発明のARC類に用いられるような好ましい光酸発生剤としては、例えば、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロオクタンスルホナートなどのオニウム塩、1,1−ビス[p−クロロフェニル]−2,2,2−トリクロロエタンのようなハロゲン化非イオン系の光酸発生剤、およびフォトレジスト組成物で使用するために本明細書に開示されている他の光酸発生剤が挙げられる。少なくとも本発明のいくつかの反射防止組成物に対しては、界面活性剤として作用し、反射防止組成物/レジスト塗布層の界面に近い、反射防止組成物層の上部近くに集合する、反射防止組成物用の光酸発生剤が好ましい。従って、例えば、そのような好ましいPAG類としては、4個以上の炭素、好ましくは6個〜15個の炭素、または1個または好ましくは2個以上のフッ素置換基を持つC1−15アルキルまたはC2−15アルケニルのようなフッ素化された基を持つ、置換または非置換のアルキル基または脂環式基等の長鎖脂肪族基が挙げられる。
【0043】
本発明の反射防止組成物用の特に好ましい光酸発生剤は、200nm未満、特に193nmの照射光で露光した時に活性化され、その結果、反射防止組成物は、193nmの光で画像形成される上塗りされたフォトレジストと共に効果的に使用される。反射防止組成物の光酸発生剤とフォトレジスト組成物の光酸発生剤は、同一露光波長で活性化されることが望ましい。また、フォトレジスト組成物および/または反射防止組成物に配合される増感剤は、反射防止およびフォトレジスト組成物の両方の光酸発生剤を、単一露光波長により確実に活性化するために使用される。
【0044】
さらに好ましくは、本発明の反射防止組成物はフォトレジスト組成物と共に使用され、その場合は、反射防止組成物の光活性化合物とフォトレジスト組成物の光活性化合物が、フォトレジスト層の照射過程で、活性化照射への露光時に同一またはほぼ同一の酸化合物(光生成物)、すなわち、好ましくは類似の拡散特性と酸強度を持つ光生成物、を発生する。反射防止組成物とレジストのそれぞれの光酸生成物(photoacid products)のそのようなマッチングにより、上塗りされたレジストのレリーフ画像の解像度がさらに向上することが見いだされている。ここで、本発明の「ほぼ同一の」反射防止組成物とレジストの光酸生成物に関して、それらは、2つの光生成物のpK値(25℃で測定)の差が約2または2.5以下であり、好ましくは2つの光生成物のpK値の差が約1ないし1.5以下であり、さらに好ましくは2つの光生成物のpK値の差が約0.75以下であることを意味する。さらに好ましくは、そのような「ほぼ同一の」反射防止組成物とレジストの光酸生成物の分子量の違いは、好ましくは約40パーセント以下、より好ましく約20パーセント以下、さらに好ましは約15パーセント以下である。また、さらに、反射防止組成物とレジストの光生成物が、例えば両光生成物がスルホン酸、または両者がHBr等のハロ酸類であるように、互いに同じクラスの酸であることが好ましい。好適なPAGの量は非常に広く変化させることができ、経験的に容易に決められる。一般的に、本発明の1種またはそれ以上のPAGは、反射防止組成物の全重量に対して約0.25から5重量パーセントまたはそれ以下の量で好適に使用できる。典型的な使用量については後述の実施例を参照されたい。また、本発明の反射防止組成物のPAGの特に好ましい量は、反射防止組成物と共に使用されるフォトレジストの特性と加工条件によって変えてよい。例えば、もしフォトレジストの光酸発生剤が比較的強い酸光生成物を生成し、フォトレジストが比較的低温で露光後ベーキング(PEB)される場合、反射防止組成物の光酸生成物は、そのような低いPEB温度ではより熱分解しにくいため、反射防止組成物中での有効酸濃度は比較的高くなる。従って、その反射防止組成物は、比較的低濃度の光酸発生剤を使用して効果的に配合することができる。逆に、もし、フォトレジストが比較的高温で露光後ベーキング(PEB)される場合、反射防止組成物の光酸生成物の一部がより熱分解されやすくなる。そのような場合、光生成酸の有効濃度を確保し、望ましくないフーチング(footing)の低減を最大にするために、比較的高濃度の光酸発生剤が反射防止組成物に配合される。
【0045】
本発明の反射防止組成物は、また、上塗りされたフォトレジスト層を露光するのに使用する照射光を吸収する追加の染料化合物を含んでもよい。必要に応じて使用する他の添加剤には、表面平滑剤が挙げられ、例えばユニオンカーバイド社(Union Carbide)からシルウエット(Silwet)7604の商品名で市販されている平滑剤、またはスリーエム社(3M)から市販されている界面活性剤FC430がある。そのような界面活性剤/表面平滑剤が好ましい。好ましい界面活性剤の濃度は固形分で0.5〜15パーセント、より好ましくは固形分で0.7〜1.0パーセントである。後述の実施例51〜55を参照されたい。
【0046】
液状コーティング組成物を作るには、反射防止組成物の成分を好適な溶媒に溶解させるが、その溶媒としては、例えば乳酸エチル、または、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルのような少なくとも1種のグリコールエーテル類;メトキシブタノール、エトキシブタノール、メトキシプロパノールおよびエトキシプロパノールのようなエーテル部分とヒドロキシ部分との両者を持つ溶媒;メチルセルソルブアセタート、エチルセルソルブアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートのようなエステル類;並びに二塩基酸エステル、炭酸プロピレンおよびガンマーブチロラクトンのような他の溶媒である。溶媒中の乾燥成分の濃度は、塗布方法のようないくつかの因子によって決まる。一般的に、反射防止組成物の固形分量は、反射防止組成物の全量の約0.5〜20重量パーセントで、好ましくは反射防止組成物の全量の約2〜10重量パーセントまで変化する。
【0047】
ポジ型及びネガ型の光酸発生組成物を含めて、種々のフォトレジスト組成物が、本発明の反射防止組成物と共に使用できる。好ましくは、本発明のARCは、化学増幅ポジ型レジスト組成物と共に使用される。本発明のARCと共に使用されるフォトレジストは、一般的に樹脂バインダーおよび光活性成分を含有する。
【0048】
本発明のARCと共に使用される好ましいフォトレジストは、200nm未満、特に193nmの波長で画像形成されるように設計される。本発明のARCと共に使用される好ましいレジスト組成物は、1998年8月28日付にて提出された本出願人による米国特許出願番号第09/143,462号に開示されている。本発明のARCと共に使用される、特に好ましいレジスト樹脂バインダーは、次式の構造1から17の懸架したエステルのような、5個以上の炭素の非環状または単一環のアルキル基と、2個以上の二級炭素または三級炭素ラジカルを含有する、光酸感受性の懸架したエステル繰り返し単位を持つ。式中に示された置換基Yは、好ましくは水素またはメチル、より好ましくはメチルである。
【0049】
【化10】
Figure 0004454733
【0050】
また、レジスト樹脂バインダー成分としてのポリマーは、懸架したシアノ基と無水イタコン酸基等の他の単位を持ってもよい。好ましくは、無水イタコン酸部分はポリマー主鎖に直接懸架する、すなわち該部分は、ポリマー結合基と無水イタコン酸基の間に介在するアルキレン基、アリール基または他の基を持たずに、ポリマー結合基に直接懸架する。一方、シアノ基は好ましくはポリマー主鎖に直接懸架するが、結合基がシアノ基とポリマー結合基の間に介在してもよい。
【0051】
本発明のレジストの樹脂バインダーに使用されるポリマーは、所望ならばさらにフォトレジストの水系現像性に寄与する基などの単位を含有してよい。例えば、水系現像性に寄与する好ましいポリマー基としては、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、または他のモノマーの重合により得られるようなカルボキシ部分またはヒドロキシ部分が挙げられる。他の好ましいポリマー単位としては、例えば、メタクリル酸−2−アダマンチル−2−メチル、メタクリル酸イソボルニルなどのビニル脂環式基、または、メタクリル酸−t−ブチルのような非環状アルキル基等の重合により得られる単位が含まれる。一般的に、本発明の化学増幅フォトレジストに使用する好ましい酸感受性(acid labile)ポリマーは、メタクリル酸イソボルニル、メタクリロニトリル、無水イタコン酸、メタクリル酸、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−2−メチル−2−アダマンチルまたはメタクリル酸−2,3−ジメチル−2−ブチルのモノマーの1個以上の重合単位を持つ。
【0052】
本発明のARCと共に使用される好適な樹脂の光酸発生剤化合物としては、本発明に引用記載されている米国特許第4,442,197号、第4,603,101号および第4,624,912号に開示されているようなオニウム塩、サッカレー等(Thackeray,et al.)の米国特許第5,128,232号に開示されているハロゲン化光活性化合物のような非イオン系有機光活性化合物、並びにスルホン化エステルおよびスルホニルオキシケトンを含めたスルホナート光酸発生剤などが挙げられる。ベンゾイントシレート、t−ブチルフェニルアルファー(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセタートおよびt−ブチルアルファー(p−トルエンスルホニルオキシ)−アセタートを含む好適なスルホナートPAGの開示については、「ジャーナル オブ フォトポリマー サイエンス アンド テクノロジー」(J.of Photopolymer Science and Technology,4(3):337−340,1991)を参照されたい。好ましいスルホナートPAGはシンタ(Sinta,etal.)の米国特許第5,344,742号にも開示されている。
【0053】
本発明のARCと共に使用される好適なフォトレジスト用PAG類としては、次式の化合物のようなイミドスルホナート類が挙げられる。
【0054】
【化11】
Figure 0004454733
【0055】
(式中、Rは、ショウノウ、アダマンタン、アルキル(例えばC1−12アルキル)およびペルフルオロ(C1−12アルキル)などのペルフルオロアルキル、特に、ペルフルオロオクタンスルホナート、ペルフルオロノナンスルホナート等である。特に好ましいPAGは、N−[(ペルフルオロオクタンスルホニル)オキシ]−5−ノルボルネン−2、3−ジカルボキシイミドである。)
【0056】
また、本発明のARCと共に使用される樹脂として、次式のPAGとPAGも好適である。
【0057】
【化12】
Figure 0004454733
【0058】
このようなスルホナート化合物は、上記PAG1の合成を詳細に記しているヨーロッパ特許出願第961181112号(公告番号0783136号)に開示されているように調製される。概略を述べると、PAG1は、ヨウ素酸カリウム、t−ブチルベンゼンおよび無水酢酸の混合物に硫酸を滴下し、氷浴で冷却しながら反応させて調製される。次いで、反応混合物を室温で約22時間撹拌し、水を加えて約5〜10℃まで冷却し、次いでヘキサンで洗浄する。その後、ジアリールヨードニウム・硫酸水素塩の水溶液を約5〜10℃まで冷却してショウノウスルホン酸を添加し、さらに水酸化アンモニウムで中和する。
【0059】
また、上記のショウノウスルホナート基とペルフルオロオクタンスルホナート基以外のアニオンと錯体を形成した前記2種のヨードニウム化合物も好適である。特に、好ましいアニオンとしては、式RSO3−で示されるものが挙げられる。式中、Rは、アダマンタン、アルキル(例えばC1−12アルキル)及びペルフルオロ(C1−12アルキル)などの他のペルフルオロアルキル、特に、ペルフルオロブタンスルホナート等である。
【0060】
他の公知のPAGもまた、本発明に従って使用される樹脂の中に使用できる。193nmでの画像形成のために、一般的に好ましいのは、レジストの透明性を高めるため、前述のイミドスルホナートのように芳香族基を持たないPAGである。
【0061】
所望ならば、本発明の樹脂の好ましい添加剤としては、添加塩基、特に、現像したレジストレリーフ画像の解像度を向上させるテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、または乳酸テトラブチルアンモニウムが挙げられる。193nmで画像形成させるレジストに対して、好ましい添加塩基は、ジアゾビシクロウンデカンまたはジアゾビシクロノネンのようなヒンダードアミンである。添加塩基は、例えば全固形分の約0.03〜5重量パーセントの比較的少量が好適に使用される。
【0062】
本発明のフォトレジストは、また、所望ならば他の物質も含有することができる。例えば、必要に応じた他の添加剤として、条線防止剤、可塑剤、増速剤等が挙げられる。例えば、レジスト乾燥成分の全重量の約5〜30重量パーセントの量のような比較的高濃度で存在することがある充填剤や染料を除いて、このような必要に応じて使用される添加剤は、フォトレジスト組成物に低濃度で存在するのが普通である。
【0063】
好適なグリコウリルのような低塩基度架橋剤を含有する本発明のARCは、トリフリック酸、スルホン酸ショウノウもしくは他のスルホン酸、または約2以下のpK(25℃)を持つ他の酸のような強酸光生成物を露光時に発生するフォトレジストと用いると特に有用である。理論に縛られることなく、より塩基性の架橋剤を含む同類のARCと比べ、レジストから移動してARC層の中に残る光発生型強酸がかなり少ないことから、本発明のARC類は、そのような強酸レジストと共に用いると特に有効であると考えられる。即ち、本発明の低塩基度架橋剤は、より塩基性のARC架橋剤と比べ、上塗りされたレジスト層の光発生型強酸との結合の程度が少ない。この結果、レジスト層から酸の消失は減り、潜在的フーチング(footing)のような解像度の問題は減少するか避けられる。
【0064】
使用にあたっては、本発明の反射防止組成物は、スピンコーティングのような種々の方法のいずれかによって基板へ塗布層として適用される。反射防止組成物は、通常約0.02と0.5μmの間の乾燥層の厚さ、好ましくは約0.04と0.20μmの間の乾燥層の厚さで基板に適用される。基板は、フォトレジストに関連するプロセスにおいて従来から使用されているいずれの基板でも好適である。例えば、該基板としては、シリコン、二酸化シリコン、またはアルミニウム−酸化アルミニウムのマイクロ電子ウエハー等が可能である。ヒ化ガリウム、セラミック、石英、または銅基板も使用してよい。液晶ディスプレー、または、例えば、ガラス基板、インジウム酸化錫コーティング基板等の、平板パネルディスプレー用に使用される基板も使用される。
【0065】
好ましくは、フォトレジスト組成物がARC上に塗布される前に反射防止性層を硬化するのがよい。硬化条件は、ARC成分によって変化する。従って、この組成物が酸または酸発生剤を含まない場合は、硬化温度及び条件は、酸または酸発生剤化合物を含む組成物の場合よりも厳しい。代表的な硬化条件は、約120℃〜225℃で約0.5〜40分間である。ARCコーティング層を、アルカリ性現像水溶液だけでなくフォトレジスト溶媒にも実質的に不溶化させる硬化条件が好ましい。
【0066】
このような硬化の後に、フォトレジストをARCの表面に塗布する。ARCの塗布と同様に、回転、浸漬、メニスカス(meniscus)またはロール塗布によるような通常のいずれの手段によってもフォトレジストを塗布できる。塗布の後は、一般的にフォトレジストコーティング層を加熱によって乾燥して、好ましくはレジスト層が非粘着性になるまで溶媒を除去する。最適には、ARC層とフォトレジスト層が本質的に相互に混じり合わないようにするべきである。
【0067】
次に、従来の方法で、マスクを通して活性化照射でレジスト層に画像を形成させる。レジスト系の光活性成分を効果的に活性化するために十分な露光エネルギーによって、レジストコーティング層にパターン化された画像が形成される。より詳しくは、露光エネルギーは、露光機器によるが、一般的に約3から300mJ/cmの範囲である。コーティング層の露光された領域と露光されない領域の間の溶解度の差を作り出し、またはその差を大きくにするためには、露光されたレジスト層に露光後ベーキングを施してもよい。例えば、ネガ型の酸硬化型フォトレジストは、酸促進型架橋反応を誘起するために一般的に露光後の加熱を必要とし、一方、多くの化学増幅型ポジ型レジストは酸促進型脱保護反応を行うために露光後の加熱を必要とする。一般的に、露光後のベーキング条件としては、約50℃以上の温度、より詳しくは約50℃〜160℃の範囲の温度が挙げられる。
【0068】
次いで、露光されたレジスト被覆層は現像されるが、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドの例のような有機アルカリ、または、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等を例とする無機アルカリのような水性現像液を用いるのが好ましい。別の方法として、有機現像液を使用できる。一般的に、現像は当業者に良く知られている方法による。
【0069】
次に、現像された基板はフォトレジストの露出された基板領域に、選択的加工、例えば当業者に公知の手順に従って、フォトレジストの露出された基板領域を化学的にエッチングまたはメッキすることができる。好適なエッチング剤としては、フッ化水素酸エッチング溶液、および酸素プラズマエッチング剤のようなプラズマガスエッチング剤が挙げられる。プラズマガスエッチング剤は架橋されたハレーション防止コーティング層を除去する。
【0070】
【実施例】
本発明で述べる全ての文献は、本発明の中で参照している。以下の実施例は本発明を例示するもので、限定するものではない。
【0071】
実施例 1−3: ポリマーの合成
実施例 1: モル比が30:38:32である、スチレン、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸メチルのモノマーから成る3元コポリマーを以下の手順により合成した。
上部攪拌機、凝縮器、および窒素導入口を取り付けた5Lの三つ口丸底フラスコの中で、モノマー(アルドリッチ社製の純度99%のスチレン169.79g;ロームアンドハース社製の「ロクリル400(Rocryl400)」のメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル269.10g;およびロームアンドハース社製のメタクリル酸メチル173.97g)を2,375gのTHFに溶解した。反応溶液に窒素を20分間流して脱ガスを行った。溶液にデュポン社製の開始剤Vazo52を11.63g加え、加熱環流(65−67℃)を行いながらこの温度に15時間保った。反応溶液を室温に冷却した後、MTBE/シクロヘキサン(容積/容積 1/1)12L中に沈殿させた。ポリマーを真空ろ過により収集し、50℃で48時間真空中で乾燥した。収率は68%で、その後の分析の結果残存モノマーは2.4重量%、Tg=92℃、Td=239℃であることが分かった。モノマーのモル濃度の合計に対するバゾ52開始剤のモル濃度の割合は0.72%であった。ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography)による分子量解析の結果、Mw=22,416、Mn=10,031であることが分かった。
【0072】
実施例 2−3: 投入モノマー量のモル%を下記に従って変更した以外は実施例1の手順と同様にして、スチレン:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル:メタクリル酸メチルの別の3元コポリマーを合成した。
実施例 2: モル%の比率12:38:50で合成したポリマー。沈殿溶剤としてt−ブチルメチルエーテル(5,000mL)を用いた。収量は168g(理論値の84%)であった。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=19,612、Mn=10,434であり、その後の分析の結果Tg=76℃、そしてTd=201℃であることが分かった。
【0073】
実施例 3: モル%比18:38:44のスチレン、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸メチルモノマーより成る3元コポリマー。沈殿溶剤としてヘキサン(4,500mL)を用いた。収量は68g(理論値の79%)であった。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=22,712、Mn=11,564であり、その後の分析の結果Tg=107℃であることが分かった。
【0074】
実施例 4: 実施例1の手順に従って、0.36モル%の開始剤Vazo52を用い、モノマーのモル%比30:38:32でスチレン:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル:メタクリル酸メチルの3元コポリマーを合成した。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=54,502、Mn=22,495であった。
【0075】
実施例 5: 実施例1の手順に従って、0.72モル%の開始剤Vazo52を用い、モル%比30:38:31:1でスチレン:メタクリル酸−2−ヒドロ:メタクリル酸メチル:メタクリル酸−n−ブチルの4元コポリマーを合成した。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=22,646、Mn=10,307であり、その後の分析の結果Tg=74℃、Td=331℃であることが分かった。
【0076】
実施例 6: 実施例1の手順に従って、0.36モル%の開始剤Vazo52を用い、モル%比18:38:44で4−アセトキシスチレン:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル:メタクリル酸メチルの3元コポリマーを合成した。ポリマー収率は84%であった。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=73,888、Mn=29,973であり、その後の分析の結果Tg=74℃、Td=247℃であることが分かった。
【0077】
実施例 7: 実施例1の手順に従って、0.36モル%の開始剤Vazo52を用い、モル%比30:38:32でメタクリル酸フェニル:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル:メタクリル酸メチルの3元コポリマーを合成した。収率は94%であった。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=111,039、Mn=26,866であり、その後の分析の結果Tg=91℃、Td=242℃であることが分かった。
【0078】
実施例 8: 実施例1の手順に従って、0.91モル%の開始剤Vazo52を用い、モル%比18:38:44でメタクリル酸ベンジル:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル:メタクリル酸メチルの3元コポリマーを合成した。ポリマー収率は99%であった。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=21,614、Mn=11,379であった。
【0079】
実施例 9: 実施例1の手順に従って、0.91モル%の開始剤(バゾ52)を用い、モル%比18:38:44でメタクリル酸−2−フェニルエチル:メタクリル酸−2−ヒドロキシ:メタクリル酸メチルの3元コポリマーを合成した。ポリマー収率は98%であった。ゲル浸透クロマトグラフィーによる分子量解析の結果は、ポリスチレンの標準サンプルとの相対値でMw=29,008、Mn=15,956であった。
【0080】
実施例 10: 以下の手順に従って、実施例1のポリマーを用いて反射防止コーティング(ARC)組成物を調製した。実施例1のポリマー1.2175g,テトラメトキシメチルグリコルリル(アメリカンシアナミド社製)0.225g、p−トルエンスルホン酸0.0075g、FC−430(3M社製)0.0135g、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロオクタンスルホナート(デイケム社製)0.0965gおよびプロピレングリコール モノメチルエーテルアルコール(「Dowanol PM」、ダウ社製)48.44gを秤量して100mLの瓶に入れ、ローラーの上に置いて溶解を促進した。溶解した後0.1μmまたは0.2μmのテフロンフィルターを通してARC組成物をろ過し、清浄な瓶に入れた。
【0081】
実施例 11: 以下の手順に従って、実施例1のポリマーを用いて反射防止コーティング(ARC)組成物を調製した。実施例1のポリマー1.2175g,テトラメトキシメチルグリコルリル(アメリカンシアナミド社製)0.150g、ヘキサメトキシメラミン混合物(「Cymel303」)0.075g、p−トルエンスルホン酸0.0075g、FC−430(3M社製)0.0135g、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロオクタンスルホナート(デイケム社製)0.0965gおよびプロピレングリコール モノメチルエーテルアルコール(「Dowanol PM」、ダウ社製)48.44gを秤量して100mLの瓶に入れ、ローラーの上に置いて溶解を促進した。溶解した後0.1μmまたは0.2μmのテフロンフィルターを通してARC組成物をろ過し、清浄な瓶に入れた。
【0082】
実施例 12: 以下の手順に従って、実施例1のポリマーを用いて反射防止コーティング(ARC)組成物を調製した。実施例1のポリマー4.571g,テトラメトキシメチルグリコルリル(アメリカンシアナミド社製)0.8438g、p−ニトロベンジルトシレート0.0281g、FC−430(3M社製)0.0450g、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロオクタンスルホナート(デイケム社製)0.1371gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアルコール(「Dowanol PM」、ダウ社製)48.44gを秤量して500mLの瓶に入れ、ローラーの上に置いて溶解を促進した。溶解した後0.1μmまたは0.2μmのテフロンフィルターを通してARC組成物をろ過し、清浄な瓶に入れた。
【0083】
実施例 13: 以下の手順に従って、実施例1のポリマーを用いて反射防止コーティング(ARC)組成物を調製した。実施例1のポリマー1.314g,テトラメトキシメチルグリコルリル(アメリカンシアナミド社製)0.225g、p−トルエンスルホン酸0.0075g、FC−430(3M社製)0.0135gおよびプロピレングリコール モノメチルエーテルアルコール(「Dowanol PM」、ダウ社製)48.44gを秤量して100mLの瓶に入れ、ローラーの上に置いて溶解を促進した。溶解した後0.1μmまたは0.2μmのテフロンフィルターを用いてARC組成物をろ過し、清浄な瓶に入れた。
【0084】
実施例 14−18: p−トルエンスルホン酸およびテトラメトキシメチルグリコルリルの量を変更した以外は、実施例13と非常に類似した手順と組成を用いて反射防止組成物を調製した。組成物の中の固形分の全量に対する、これら2つの成分の重量パーセントを表1に示す。
【0085】
Figure 0004454733
【0086】
実施例 19−23 FC430の量を変更した以外は、実施例13と非常に類似した手順と組成を用いて反射防止組成物を調製した。組成物の中の固形分の全量に対する、この成分の重量パーセントを表2に示す。
【0087】
Figure 0004454733
【0088】
実施例 24−25: 組成物中の各成分の重量を以下のようにし、実施例13と非常に類似した手順と組成を用いて反射防止組成物を調製した: ポリマー0.6102g,テトラメトキシメチルグリコルリル(アメリカンシアナミド社社製)0.1125g、p−トルエンスルホン酸0.0030g、FC−430(3M社製)0.0060g、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロオクタンスルホナート(デイケム社製)0.0183gおよびプロピレングリコール モノメチルエーテルアルコール(「Dowanol PM」、ダウ社製)24.25g。これらの組成物を表3に記載する。
【0089】
Figure 0004454733
【0090】
実施例 26−32: 組成物中の各成分の重量を以下のようにし、実施例13と非常に類似した手順と組成を用いて反射防止組成物を調製した: ポリマー0.974g,テトラメトキシメチルグリコルリル(アメリカンシアナミド社社製)0.180g、p−トルエンスルホン酸0.0060g、FC−430(3M社製)0.0108g、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロオクタンスルホナート(デイケム社製)0.0292gおよびプロピレングリコール モノメチルエーテルアルコール(「Dowanol PM」、ダウ社製)38.80g。これらの組成物を表4に記載する。
【0091】
Figure 0004454733
【0092】
実施例 33−35: ARC組成物の光学テスト
ARC組成物を200mmのSiウエハー上にスピンコーティングし、新型のFSIウエハー塗布ライン(wafer coating track)を用いて、非接触式150μm近接加熱板上で215℃で90秒間ベーキングを行った。ARC膜をウオーレン偏光解析型屈折率計(Wollem ellipsometer)(Lincoln NE)を用いて測定を行い、193nmにおける光学的な屈折率nおよびk(実際のおよび仮想の)を定量した。仮想の屈折率は膜の吸光度に相関している: ARC膜厚を最小化しながら膜の重なりの反射率を最小化するためには、kの値は0.3以上である必要がある。最も望ましいkの値は、約0.4以上である。これらの値を表5に記載する。
【0093】
Figure 0004454733
【0094】
これらのデータは、比較材料、すなわち、248nmにおいて使用する目的で設計され広く使用されている商業用ARC材料であるシップレーAR2が、193nmにおいて反射率を最小化するために望まれる値に比べて著しく低い仮想の屈折率を有していることを示す。これらのデータはまた、組成物30−32のk値がポリマー中のフェニル部分(このケースではスチレンモノマーを通じて導入された)が増加する程増大することを示す。本発明者らは、フェニル基は193nmにおける良好な発色団であり、ポリマー中のフェニル基の理想的な濃度を選択することにより、望ましい仮想の屈折率、kを得ることができると信じている。
【0095】
実施例 36−40: ベーキング後のARCの不溶性の評価
ARC膜がコーティングおよびベーキング工程の間に硬化し、その結果その後のリソグラフィー(lithography)加工段階の中で、引き続きコーティングされるフォトレジストに対して非感受性になることが強く望まれる。本発明において、ベーキング中のARCの硬化は、ポリマーの化学的な酸触媒による架橋を通じて達成される。特に半導体製造において使用される最新の欠陥の無いリソグラフィー加工は、レジストのパターンとARCコーティング基板との界面に可能な限りスカム(scum)、残渣、およびフレア(flare)が無く、一方で優れた画像端部の鋭さを維持することを要求している。レジストのパターンはまた、リソグラフィー工程の段階の間ARCに良く接着していなければならない。これらの要求を満たすために、本発明者らは、レジストと硬化したARC膜との相互の混ざり合いは、可能な限り最少化すべきであると信じる。
いくつかの硬化したARC膜について、それらの代表的な、商業的に使用されているレジストコーティング用溶剤である乳酸エチルの中で、溶解または膨潤に対する感受性を持つかどうかを定量化することを検討した。そのため、ARC組成物をSi上にコーティングし、215℃で60秒ベーキングを行って厚み60nmの膜を得た。膜厚はナノメトリクス(Nanometrics)215AFT膜厚測定器を用いて11個所で測定した。次いでARC塗布ウエハーを、乳酸エチル溶剤を入れたビーカーに60秒浸漬した。乳酸エチルを水ですすぎ落とした後、ウエハーを空気乾燥した。膜厚を同じ測定器を用いて同じ個所で測定し、厚みの変化を記録した。結果を表6に示す。
【0096】
Figure 0004454733
【0097】
実施例38−40は、組成物16、17および18が乳酸エチル溶剤中で溶解または膨潤のいずれにも非感受性であることを示す。この肯定的な結果は、これらの組成物が標準的なリソグラフィーによるパターン形成の間、レジストパターンとARC膜の間に結果として鮮明な界面を形成するであろうことを示唆する。実施例36−37は、レジスト溶剤の中でARCのいくらかの溶解を示しており、リソグラフィー加工が実施例38−40程良好ではなさそうであることを示唆している。組成物16−18は、トルエンスルホン酸の濃度がより低い(0.1%)実施例14および15に比べて、当初のARC組成物中により高い酸の濃度(0.3%−0.5%)を有していた。結果として、ARC組成物中における好ましい酸の濃度は0.1%より大きく、より好ましくは0.3%以上である。理論に拘らないが、より高い酸濃度はベーキング中のARC膜におけるより高い架橋密度をもたらし、溶剤の攻撃に対して膜をより非感受性にすると信じる。従って、少なくとも0.3%のトルエンスルホン酸の濃度が、以後のARC材料および組成物の評価に用いられた。
【0098】
実施例 41−42: ARCの性能評価に使用されるレジスト組成物
パーフロロ−オクタンスルホネート−ノルボルネンジカルボキシイミド0.524g、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロオクタンスルホナート(DTBIPFOS)0.0449gおよびバインダーポリマーの組み合わせを、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(アルドリッチ社製、米国)0.0045g、シルウエット7604(Silwet7604、ダウコーニング社製、米国)0.0075gおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセタート(ダウ社製、米国)43.5gを含む保存溶液の中に溶解することにより、リソグラフィーテストに好適なフォトレジスト組成物を調製した。DTBIPFOSの溶解を助長するために、この化合物を乳酸エチルの5%溶液としてレジスト組成物に加えた。溶解した後、0.1μmまたは0.2μmのテフロンフィルターを通してレジスト組成物をろ過し、清浄な瓶に入れた。
【0099】
実施例 41: 記載したレジスト組成物に、メタクリル酸イソボルニル:メタクリル酸−t−ブチル:メタクリル酸:メタクリロニトリル:無水イタコン酸の供給モル比を31:22:10:14:23にして得られたバインダーポリマーを使用した。以下の手順によりこのポリマーを調整した。
無水イタコン酸12.54g、メタクリル酸−t−ブチル15.20g、メタクリロニトリル4.58g、メタクリル酸4.28g、メタクリル酸イソボルニル33.57g、および100mLの無水のテトラヒドロフランを500mLのフラスコに入れた。全ての試薬の純度は少なくとも99%であった。フラスコには、磁気式攪拌棒、凝縮機、および注加用ろうとが取り付けられた。反応に先立って、全ての成分を窒素ガスで20分間パージした。フリーラジカル開始剤Vazo52、0.75gおよび無水のテトラヒドロフラン25mLを注加用ろうとに入れた。溶液を70℃に昇温し、次いで開始剤を20分間にわたって注加した。フラスコを70℃に14時間保ち、その後室温に冷却した。3Lのヘキサンの中で沈殿させ、ブフナーろうと(Buchner funnel)の中で乾燥してポリマーを得た。次いでそのポリマーを120mLのアセトン中に再溶解し、そして3Lのヘキサン中で再沈殿して、ブフナーろうと上に集めた。ポリマーを真空オーブン中室温で一夜乾燥した。収量は49.96g(66%)であった。
【0100】
実施例 42: 記載したレジスト組成物に、メタクリル酸イソボルニル:メタクリル酸−2,3−ジメチルブチル:メタクリル酸−t−ブチル:メタクリル酸:メタクリロニトリル:無水イタコン酸の供給モル比を15:10:28:10:14:23にして得られたバインダーポリマーを使用した。以下の手順によりこのポリマーを調整した。実施例41と類似の手順によりこのポリマーを調整した。
メタクリル酸−2,3−ジメチルブチルは、以下の手順により合成した。
無水のテトラヒドロフラン180g、2,3−ジメチル−1−ブタノール40gおよびトリエチルアミン40.93gを、攪拌棒を入れ凝縮機を取り付けた500mLのフラスコにN2雰囲気下で入れた。これに精製したメタクリル酸クロリド40.927gを注加用ろうとから滴下しながら加えた。穏やかに加熱して反応を行った。24時間攪拌した後、回転式蒸発器を用いて溶液からテトラヒドロフランを蒸発し、100mLの酢酸エチルを加えた。次いでブフナーろうとを通して塩をろ別した。酢酸エチルは回転式蒸発器の使用により除去した。8インチのビグローカラム(Vigreaux column)、攪拌棒および数個の小さい沸石を備えた減圧蒸留筒を用意した。分別蒸留を実施して、6−7トールの圧力下で約80−87℃の沸点を有する画分として生成物19.8gを回収した。HNMRを用いて構造と純度を確認した。
【0101】
実施例 43−64: ARC組成物上のレジストのリソグラフィーによるパターン形成
解像度の性能を評価するために、高圧断面走査型電子顕微鏡法を用いて焼き付けられた特性を検査した。1:1のピッチの格子画像における最小解像度は、マスク上に形成された1:1の160nmの線と160nmのスペースが、実際にそれぞれ実質的に160nmの寸法で測定されるような露光量を選択することにより、次いで清浄に現像された実質的に所定の膜厚を保持した最小の線(full−thickness line)が、平滑な頂部を有し基板上に残渣が残っていないことを測定することにより評価した。感光速度は、そのようなパターンを形成するのに必要な露光量で表す。感光速度は、ARC組成物が異なっても著しくは変わらないということが分かる。実施例41のレジスト組成物は約29mJ/cmの感光速度を示し、実施例42のレジスト組成物は約24mJ/cmの感光速度を示した。
最新のウエハー加工装置(エフエスアイ アンド エスブイジー社(FSI and SVG Companies)製)の上で、150mmおよび200mmのシリコンウエハーの双方を使用してリソグラフィー加工を実施した。全ての加工は、実質的に塩基性汚染物質の無い(測定アミン/アンモニア5ppb以下)雰囲気中で行った。その後の加工に先立って、ウエハーにARC組成物を塗布した。約65nmの厚みを与えるように選択された好適な回転速度でARC膜をスピンコートし、215℃でベーキングした。フォトレジストを約3,000rpmでウエハー上にスピンコートし、非接触式150μm近接加熱板(proximity−gap plate)の上でベーキングを行い(塗布後硬化(PAB))、その後急速に室温に冷却して4,200オングストロームの膜厚を得た。次いでこの膜に、GCA0.60NA ArF(193nm)ウエハーステッパーの上で、部分コヒーレンス(coherence)設定0.70にて、解像度テストパターンを用いて露光を行った。その後直ちに、この膜を非接触式150μm近接加熱板の上でベーキングを行い(露光後硬化(PEB))、その後急速に室温に冷却した。その後直ちに、この膜を工業規格の60秒シングルパドル式工程(60 second track−single−puddle process)にて工業規格の0.26Nテトラメチルアンモニウムヒドロキシド現像液で現像した。
【0102】
表7: ARC上のレジスト組成物のリソグラフィーテスト結果
ResLはEsにおける解像度を表す。PABおよびPEBは℃の単位で、そしてResLはnmの単位で表す。DUV−18Jは商業的に使用されているARC製品で、ミズーリ州のブリュワーサイエンス社(Brewer Sciences Incorporated)から市販されており、AR2はマサチューセッツ州のシップレー社(Shipley Company)から市販され商業的に使用されているARC製品である。
【0103】
Figure 0004454733
【0104】
Figure 0004454733
Figure 0004454733
【0105】
実施例17−32の考察
本発明の組成物は、半導体の製造用途に好適な著しく高性能のARC類をもたらすことができる。レジストパターンとARC下引き層との間の界面の品質は、より鮮明でより残渣が少なく、そしてARC組成物46−49、53および58−61の解像度は、従来のARC材料であるDUV−18JおよびAR2の解像度を上回っている。ARC組成物46−49、53および58−61の性能はまた、比較用の実施例56および57の性能を上回っている。組成物46−49、53および58−61の優れた性能はまた、ポリマーがポリマー鎖とフェニル発色団(例えば、実施例56におけるメタクリル酸フェニルや実施例57におけるメタクリル酸ベンジル)との間にアルキル介在グループ(alkyl spacer group)構造を持たない時最良の結果が得られるということを示す。
【0106】
実施例 65:反射抑制のテスト
リソグラフィー工程の中でARCを使用する第一の目的は、レジストの「振動曲線」(“swing curve”)を最小化すること、すなわち、レジストの膜厚が変わるにつれて実測感光速度に見られる変動を最小化することである。反射抑制を評価するために、実施例44−64の工程と同様の工程によって実施例49のレジストを実施例13のARCの上でリソグラフィー的手法で加工した。ただし例外としてARC膜厚を82.5mmに保ち、そしてスピンコーティングの速度を変えることによりレジスト膜の厚みを400nmから500nmに変えた。感光速度としてパターン形成に要する露光量(E)を測定した。そのデータを下記の表8に示す。
【0107】
Figure 0004454733
【0108】
実測されたEの変動における最大の変動幅は、8.0−7.5=0.5mJ/cmである。これは極めて小さい感光速度の変動であり、そして殆どの最新のリソグラフィー工程に対しても許容されるものである。この小さい値は、本発明の組成物が193nmにおける露光の間、基板からの光の反射を抑制するのに有効であることを示している。
【0109】
本発明のこれまでの記載は単にそれを例示するためのものであり、以下の請求の範囲の中で説明するように、本発明の範囲または精神から離れることなしに、変更や修正を行い得るものである

Claims (12)

  1. 次式II:
    Figure 0004454733
    (式中、Wは、化学結合、アルキル結合またはエステル結合;
    各Rは、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、エステル、置換若しくは非置換のアルカノイル、置換若しくは非置換の炭素環式アリール、又は置換若しくは非置換のアラルキル;
    は、水酸基を含むアルキルまたは水酸基を含む炭素環式アリール;
    各Yは、独立の水素または置換または非置換のC1−6アルキル;
    そしてxおよびyは樹脂中のそれぞれの単位のモル%;の単位を示す。)
    又は、次式III:
    Figure 0004454733
    (式中、Wは、化学結合、アルキル結合、またはエステル結合;
    各R’は、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、エステル、置換若しくは非置換のアルカノイル、置換若しくは非置換の炭素環式アリール、又は置換若しくは非置換のアラルキル;
    およびRは、それぞれ独立して置換若しくは非置換のアルキル又は置換若しくは非置換の炭素環式アリールであって、 又はR の少なくとも1つは、水酸基で置換されたアルキル基又は水酸基で置換された炭素環式アリールであり;
    各Yは、独立の水素または置換または非置換のC1−6アルキル; そしてx、yおよびzは、樹脂中のそれぞれの単位のモル%である。)
    で表されるフェニル基を有する樹脂バインダーを含む反射防止組成物。
  2. 上塗りされたフォトレジストを200nm未満の波長において画像形成するために使用される、請求項1に記載の反射防止組成物。
  3. 反射防止組成物が熱酸発生剤化合物を含む請求項1又は2に記載の反射防止組成物。
  4. フォトレジスト組成物層を設ける前に反射防止組成物を熱的に硬化する請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止組成物。
  5. 反射防止組成物が光酸発生剤を含み、その光酸発生剤がフォトレジスト組成物層を露光するまで実質的に活性化されない請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止組成物。
  6. 反射防止組成物が架橋剤物質を含む請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止組成物。
  7. フォトレジスト組成物が化学的に増幅されたポジ型である請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止組成物。
  8. (a)基板の上に、請求項1〜7のいずれかに記載のフェニル基を有する樹脂バインダーを含む反射防止組成物の層を設けること;
    (b)反射防止組成物層を硬化すること;
    (c)反射防止組成物の層の上にフォトレジスト組成物の層を設けること;
    (d)フォトレジスト層を活性化照射光で露光し、そして露光したフォトレジストの層を現像すること;を含む、フォトレジストレリーフ画像を形成するための方法。
  9. (a)基板の上に、請求項1〜7のいずれかに記載のフェニル基を有する樹脂バインダーを含む反射防止組成物の層を設けること;
    (b)反射防止組成物の層の上にフォトレジスト組成物の層を設けること;
    (c)フォトレジスト層を活性化照射光で露光し、そして露光したフォトレジストの層を現像すること;を含む、フォトレジストレリーフ画像を形成するための方法。
  10. フォトレジスト層を200nm未満の波長を有する活性化照射光で露光する請求項8又は9に記載の方法。
  11. フォトレジスト層を、193nmの波長を有する活性化照射光で露光する、請求項8又は9に記載の方法。
  12. (1)請求項1〜7のいずれかに記載のフェニル基を有する樹脂を含む反射防止組成物の塗布層;
    (2)反射防止組成物層の上にフォトレジスト層の塗布層;をその上に有する塗布された基板を含む塗布された基板。
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