JP4439102B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に半導体ウエハや液晶基板等のウエハを静電吸着力によって吸着保持する静電チャックに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造工程において、シリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下、単にウエハという)に微細加工を施すエッチング工程、ウエハに薄膜を形成する成膜工程、あるいは各種処理工程間への搬送等においては、ウエハを高精度に保持する必要があることから静電チャックが使用されている。
【0003】
この種の静電チャックは、板状セラミック体の一方の主面(最も広い表面)を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミック体中の載置面側に内部電極を備えたもので、ウエハを載置面に載せ、ウエハと内部電極との間に静電吸着力を発現させることによりウエハを載置面に強制的に吸着固定するようになっていた。
【0004】
ところで、静電吸着力には、誘電分極によるクーロン力と微小な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力があり、高い吸着力が得られるジョンソン・ラーベック力を発現させることが望まれている。
【0005】
このジョンソン・ラーベック力を得るには、ウエハの載置面と内部電極との間にあるセラミック部の体積固有抵抗値が使用温度雰囲気下において、1×108Ω・cm程度から1×1012Ω・cm程度の範囲にあることが必要であり、このジョンソン・ラーベック力を発現させるためには、載置面と内部電極との間にあるセラミック部を、遷移金属がほぼ均一に含有された低抵抗アルミナ質焼結体により形成したものが提案されている(特公平6−97675号公報参照)。
【0006】
しかしながら、特公平6−97675号公報に開示された静電チャックは、室温域での使用を目的としたものであり、150℃以上の高温下では、載置面と内部電極との間にあるセラミック部を形成する低抵抗アルミナ質焼結体の体積固有抵抗値が1×108Ω・cmを下回り、過大な漏れ電流が発生する結果、ウエハ上の微小回路が破壊されるといった課題があった。
【0007】
そこで、遷移金属の添加量を制御することにより、載置面と内部電極との間にあるセラミック部の体積固有抵抗値を制御することも考えられるが、主成分であるアルミナに遷移金属を添加した原料を用いて遷移金属がほぼ均一に含有されたアルミナ質焼結体を得ることは非常に難しく、抵抗値が大きくばらついたり、収縮率が変化して所望の大きさの焼結体が得られないといった課題があった。
【0008】
その為、本件出願人は、載置面と内部電極との間にあるセラミック部中に内部電極の導体成分を分散させることにより、250℃〜450℃の温度範囲において、上記セラミック部の抵抗値が、1×109Ω・cm〜1×1011Ω・cmの範囲にある静電チャックを先に提案した(特開2000−77508公報参照)。
【0009】
この静電チャックは、載置面と内部電極との間にあるセラミック部となるセラミックグリーンシート上に密着液を介して内部電極となる導体ペーストを印刷し、上記密着液の作用によって導体ペーストの成分を上記セラミックグリーンシートに少量浸透させ、その状態で同時に焼成することにより得ることができ、このように内部電極の成分を分散させることで、微妙な抵抗値の制御が可能になるとともに、収縮率の変化が小さいため、所定の寸法精度の焼結体が得られるといった利点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、ウエハ上に形成する回路の微小化が進み、より精度の高いウエハの固定が望まれているが、特開2000−77508公報に開示した静電チャックでは、載置面が高硬度のセラミックスからなるため、ウエハの脱着時において、載置面の摩耗は極めて少ないものの、載置面と摺動するウエハの摩耗が多く、パーティクルを発生させるため、このパーティクルが載置面に付着すると、次のウエハを吸着固定する際、ウエハと載置面との間にパーティクルが介在することになり、ウエハを高精度に固定することができないといった課題があった。
【0011】
即ち、ウエハを静電吸着力によって載置面に吸着させる際、高硬度のセラミックスからなる載置面上を、硬度の小さいウエハが高い静電吸着力によって滑り合わされる状態となるため、載置面を平坦に仕上げたとしてもウエハを引っかき、ウエハを摩耗させていた。
【0012】
また、特開2000−77508公報に開示した静電チャックは、250℃〜450℃の温度範囲では高い静電吸着力が得られるものの、近年では一つの静電チャックで幅広い温度範囲をカバーすることができるものが望まれており、これまでの静電チャックでは250℃〜450℃の温度範囲を超える領域で使用することができなかった。
【0013】
【発明の目的】
本発明の目的は、150〜500℃という広い温度範囲において、ジョンソン・ラーベック効果を利用した高い静電吸着力でもってウエハを載置面上に吸着固定することができるとともに、ウエハの脱着を繰り返したとしても載置面及びウエハを摩耗させることがなく、パーティクルの発生が極めて少ない静電チャックを提供することにある。
【0014】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、板状セラミックス体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミック体中に内部電極を備えた静電チャックにおいて、少なくとも上記載置面と内部電極との間にあるセラミック部を、炭素を含有し、150℃〜500℃の温度範囲における体積固有抵抗値が1×10 8 Ω・cm〜1×10 12 Ω・cmの範囲にある窒化アルミニウム質焼結体により形成し、上記載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100となるようにしたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1(a)は本発明に係る静電チャックをベース基体に固定した状態を示す斜視図、図1(b)は(a)のX−X線断面図であり、この静電チャック1は、円盤状をした板状セラミック体2の一方の主面(最も広い表面の一方)を、ウエハWを載せる載置面3とするとともに、上記板状セラミック体2中の載置面3近傍には静電吸着用の内部電極4を、上記板状セラミック体2中の他方の主面近傍には加熱用の内部電極5をそれぞれ埋設したもので、上記静電吸着用の内部電極4は、図2に示すように、2つの半円をした導体層4aから構成するように配置してあり、また、上記加熱用の内部電極5は、図3に示すように、略同心円状に配置された円弧状の帯状導体層5aと、隣接する円弧状の帯状導体層5a同士を接続する直線状の帯状導体層5bとから構成してある。
【0018】
なお、上記静電吸着用の内部電極4を形成する2つの導体層4aにはそれぞれ給電端子6が電気的に接続してあり、また、加熱用の内部電極5を形成する帯状導体層5bにはそれぞれ給電端子7が電気的に接続してある。
【0019】
また、上記静電チャック1の下面には、金属製のベース基体8を取着してあり、ヒートシンクやプラズマ電極として利用するようになっている。
【0020】
また、図1(a)(b)に示す静電チャック1は、基本的に板状セラミック体2の全体を、絶縁性の窒化アルミニウム質焼結体により形成してあり、少なくとも載置面3と内部電極4との間にあるセラミック部2aを形成する窒化アルミニウム質焼結体中に炭素を含有させてある。このセラミック部2aは、静電吸着力に影響を与える重要な部分であり、通常、50〜1500μm、好ましくは100〜1000μmの厚みに設定するのであるが、上記セラミック部2aを形成する窒化アルミニウム質焼結体中に炭素を含有させることにより、上記セラミック部2aの体積固有抵抗値を他のセラミック部2bより小さくすることができるため、150℃〜500℃の温度範囲における体積固有抵抗値を1×108Ω・cm〜1×1012Ω・cmの範囲に設定することができるとともに、載置面3の硬度をビッカース硬度(Hv)で800〜1100と、炭素を含まない窒化アルミニウム質焼結体や、従来技術のように内部電極の導体成分を含有した窒化アルミニウム質焼結体の硬度(Hv:1200)よりも小さくすることができる。
【0021】
その為、本発明の静電チャック1によれば、各給電端子7間に通電して加熱用の内部電極5を発熱させ、静電チャック1を150℃〜500℃の温度に加熱した状態で、各給電端子6より静電吸着用の内部電極4を構成する2つの導体層4a間に直流電圧を印加することにより、ウエハWと内部電極4との間にジョンソン・ラーベック力による静電吸着力を発現させることができ、150℃〜500℃という広い温度範囲において、ウエハWを載置面3に強固に吸着固定させることができる。
【0022】
また、ウエハWの脱着時に、シリコン、ガリウム砒素等からなるウエハが載置面3と摺り合わされたとしても、載置面3の硬度をウエハWの硬度に近似させることができるため、載置面3の摩耗を抑えつつ、ウエハWの摩耗も低減することができ、その結果、パーティクルの発生を大幅に低減し、載置面3へのパーティクルの付着を抑制することができる。即ち、上述した材料からなるウエハWとの摺動による摩耗を抑えるには、載置面3の硬度をビッカース硬度(Hv)で800〜1100とすることが重要であり、載置面3のビッカース硬度(Hv)が1100を超えると、ウエハWとの硬度差が大きくなりすぎ、ウエハWの脱着時における載置面3との摺動によってウエハWが大きく摩耗し、パーティクルの発生を抑えることができず、また、載置面3のビッカース硬度(Hv)が800未満となると、載置面3を形成する窒化アルミニウム質焼結体そのものの焼結が不十分となり、脱粒等によるパーティクルの発生が多くなってしまうからである。
【0023】
かくして、本発明の静電チャック1を用いれば、ウエハWを載置面3上に精度良く固定することができるため、成膜工程では均一な厚みの膜をウエハ上に被着することができ、また、エッチング工程では、所定の寸法精度に微細加工を施すことが可能となる。
【0024】
さらに、上記板状セラミック体2の全体は、セラミックスの中でも高い熱伝導率を有する窒化アルミニウム質焼結体により形成してあることから、加熱用の内部電極5の発熱により静電チャック1を短時間で均一に加熱することができ、例えば、成膜工程やエッチング工程におけるスループットを向上させることができるとともに、載置面3の温度分布を均一にすることができるため、成膜工程では、ウエハ上に均質な膜を被着することができ、また、エッチング工程では所定の深さに微細加工することができる。
【0025】
しかも、窒化アルミニウム質焼結体は、成膜ガスやエッチングガス等に用いられる弗素系ガスや塩素系ガス等のプロセスガスに対する耐食性にも優れることから、腐食摩耗によるパーティクルの発生も低減することができる。
【0026】
ところで、板状セラミック体2を形成する窒化アルミニウム質焼結体としては、窒化アルミニウムの含有量が98.5重量%以上、さらには99.5重量%以上、好ましくは99.8重量%以上である高純度の窒化アルミニウム質焼結体、あるいは窒化アルミニウムを主成分とし、YやEr等の希土類酸化物を1〜9重量%の範囲で含有する窒化アルミニウム質焼結体を用いることができ、上記高純度の窒化アルミニウム焼結体を用いれば、焼結体中に殆ど粒界相が存在しないことから耐食性が要求される場合に好適であり、また、希土類酸化物を含有した窒化アルミニウム質焼結体を用いれば、焼結体の熱伝導率を100W/m・K以上、さらには150W/m・K以上にまで高めることができ、昇温速度の速い静電チャック1が要求される場合に好適である。
【0027】
ところで、前述した静電チャック1を製造するには、主成分であるAlN粉末に対し、必要に応じて希土類酸化物を添加するとともに、バインダー及び溶媒を添加混合して泥奬を製作し、ドクターブレード法等のテープ成形法にてAlNグリーンシートを複数枚形成する。そして、一つのAlNグリーンシートに静電吸着用の内部電極4をなす導体ペーストを、図2に示すパターン形状に敷設するとともに、別のAlNグリーンシートに加熱用の内部電極5をなす導体ペーストを、図3に示すパターン形状に敷設する。
【0028】
この時、少なくとも静電吸着用の内部電極4をなす導体ペーストには、WCやTiC等の金属炭化物を主体とする導体ペーストを用いる。なお、加熱用の内部電極5をなす導体ペーストには、静電吸着用の内部電極4と同様に、WCやTiC等の金属炭化物を主体とする導体ペースト、あるいはWやMo等の金属を主体とする導体ペーストを用いれば良い。
【0029】
次いで、図4に示すように、各AlNグリーンシートを密着液を介して所定の順序で積み重ね、圧力を加えながら熱圧着することによりAlNグリーンシート積層体を製作する。この時、必要に応じて切削加工を施しても良い。
【0030】
しかる後、AlNグリーンシート積層体に脱脂処理を施した後、窒素雰囲気や不活性ガス雰囲気下で焼成するのであるが、ここで焼成温度は2050℃以上、好ましくは2100℃以上とする。
【0031】
即ち、2050℃以上の温度で焼成すると、内部電極4をなす導体ペースト中の金属炭化物が金属成分と炭素成分に分解され、内部電極4は主に上記金属成分により形成され、内部電極4の周囲にあるセラミック部中には上記炭素成分が傾斜的に減少するように分散させることができる。図5に内部電極4をなす導体ペーストとして、WCを主体とする導体ペーストを用いた例を示すように、内部電極4から離れるにしたがって炭素が傾斜的に減少するように含有していることが分かる。また、図5より分かるように、炭素は内部電極4から約2000μm以内の距離まで分散含有しており、載置面3と内部電極4との間にあるセラミック部2aに要求される50〜1500μmの厚み範囲において炭素を含有させることができ、上記厚み範囲においてはその表面(載置面3)のビッカース硬度(Hv)を800〜1100とすることができる。
【0032】
よって、上述した条件にて焼成することにより、静電吸着用の内部電極4と加熱用の内部電極5がそれぞれ埋設され、少なくとも内部電極4の周囲に炭素が傾斜的に減少するように分散した板状セラミック体2を製作することができる。
【0033】
次に、得られた板状セラミック体2において、内部電極4が埋設されている側の表面に研削加工を施して内部電極4から研削面までの距離を50〜1500μmとし、さらに研削面を中心線平均粗さ(Ra)で0.5μm以下に研磨することによりウエハWを載せる載置面3を形成するとともに、加熱用の内部電極5が埋設されている側の表面に、静電吸着用の内部電極4及び加熱用の内部電極5と連通する穴をそれぞれ穿孔し、各穴に給電端子6,7を挿入してロウ付けすることにより得ることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態では、静電チャック1を構成する板状セラミック体2が焼結にて一体的に形成され、該板状セラミック体2中に静電吸着用の内部電極4を埋設した例を示したが、板状セラミック体2が2つの部材から構成されたものでも良く、例えば、図6に示すように、板状セラミック体2を、ウエハWの載置面3と静電吸着用の内部電極4との間にあるセラミック部2aと、それ以外のセラミック部2bとに分割し、両者を接着やロウ付け等にて接合したものでも良く、この場合、上記セラミック部2aは、セラミック部2aとなるAlNグリーンシート上に、静電吸着用の内部電極4となるWCやTiC等の金属炭化物を主体とする導体ペーストを印刷した状態で、2050℃以上の温度で同時焼成することにより、セラミック部2a上に、静電吸着用の内部電極4が一体的に形成され、上記導体ペーストの炭素成分が内部電極4側から傾斜的に減少するように含有された窒化アルミニウム質焼結体により形成するか、あるいはAlN原料に炭素を添加した原料を用いてAlNグリーンシートを制作し、焼結させることができる温度にて焼成することにより炭素が均一に含有された窒化アルミニウム質焼結体により形成すれば良い。ただし、セラミック部2aに、炭素が均一に含有された窒化アルミニウム質焼結体を用いる場合、静電吸着用の内部電極4はメタライズ等にてセラミック部2aに接合すれば良い。
【0035】
また、本発明は上記実施形態に示したものだけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更したものでも良いことは言うまでもない。
【0036】
【実施例】
以下、図1に示す本発明の静電チャック1の具体例を以下に示す。
【0037】
純度99%、平均粒径1.2μmのAlN粉末に、有機バインダーと溶媒のみを加えて泥奬を作製し、ドクターブレード法にて厚さ約0.5mmのAlNグリーンシートを複数枚制作した。このうち一枚のAlNグリーンシートには、図2に示すようなパターン形状となるように、静電吸着用の内部電極4をなす導体ペーストを、もう一枚のAlNグリーンシートには、図3に示すようなパターン形状となるように、加熱用の内部電極5をなす導体ペーストをそれぞれスクリーン印刷法にて敷設した。
【0038】
上記静電吸着用の内部電極4をなす導体ペーストには、WC粉末とAlN粉末とを7:3の重量比で混合して粘度調整した導体ペーストを用い、加熱用の内部電極5をなす導体ペーストには、W粉末とAlN粉末とを7:3の重量比で混合して粘度調整した導体ペーストを用いた。
【0039】
そして、各AlNグリーンシートを所定の順序で積み重ね、50℃、4.9KPaの圧力にて熱圧着することによりAlNグリーンシート積層体を形成し、切削加工を施して円盤状に形成した。
【0040】
次いで、AlNグリーンシート積層体を真空脱脂した後、窒素雰囲気下で2100℃の温度で焼成することにより、静電吸着用の内部電極4と加熱用の内部電極5がそれぞれ埋設され、内部電極4の周囲に炭素が傾斜的に減少するように含有された窒化アルミニウム質焼結体からなる板状セラミック体2を制作した。
【0041】
しかる後、得られた板状セラミック体2に研削加工を施して外径200mm、板厚9mm、内部電極4が埋設されている側の研削面から内部電極4までの距離が1200μmとなるように研削加工した後、上記研削面にラップ加工を施し、その表面粗さを算術平均粗さ(Ra)で0.2μmに仕上げて載置面3を形成するとともに、載置面3と反対側の表面に、静電吸着用の内部電極4と加熱用の内部電極5とそれぞれ連通する穴を穿孔し、各穴に給電端子6,7を挿入してロウ付けすることにより得た。
【0042】
そこで、上記静電チャック1の加熱用の内部電極5を発熱させ、載置面3の温度が300℃となるように加熱した状態で、静電吸着用の内部電極4に500Vの直流電圧を印加して1インチ角のシリコンウエハを吸着させ、このシリコンウエハをロードセルにて引き剥がすのに要する荷重を吸着力として測定したところ、34.3KPaの吸着力が得られ、またシリコンウエハと内部電極4との間にあるセラミック部2aの300℃における体積固有抵抗値を測定したところ、1×1010Ω・cmと所定の抵抗値範囲にあり、吸着時の漏れ電流量も0.04mAと小さく何ら問題ないレベルであった。
【0043】
次に、1インチ角のシリコンウエハに換えて8インチのシリコンウエハを同様の条件にて吸着させた後、ウエハに付着する0.3μm以上のパーティクルの数をパーティクルカウンターで測定したところ、約2000個程度であり、その後、載置面3におけるビッカース硬度(Hv)をビッカース硬度計にて測定したところ1000であった。
【0044】
なお、漏れ電流の測定は、JIS C2141の規格に従って微少電流測定器にて測定し、ウエハに付着するパーティクル数については、TENKOR社製のウエハーパーティクルカウンター(機種名:SP1)にて0.3μm以上のパーティクルを測定した。このパーティクルカウンターは、アルゴンイオンレーザを用いてウエハ表面上の異物等を検出し、画像処理するもので、半導体製造プロセスにおいて広く用いられている装置である。また、載置面3のビッカース硬度は、AKASHI製作所製のビッカース硬度計を用い、1kgの加重を15秒間加えた後の圧痕の長さを測定し、JISに定められたビッカース硬度測定式から硬度を算出した。
【0045】
ここで、本発明の静電チャック1における吸着力とパーティクル発生数を比較するため、静電吸着用の内部電極4の導体成分を載置面3と内部電極4との間にあるセラミック部2aに分散含有させた従来の静電チャック1、及び載置面3と内部電極4との間にあるセラミック部2aが、炭素や内部電極の導体成分を含有させていない高純度の窒化アルミニウム質焼結体からなる比較例としての静電チャック1をそれぞれ用意して前述した方法と同様の条件にて測定を行った。
【0046】
なお、従来例の静電チャック1を製造するにあたっては、静電吸着用の内部電極4となる導体ペーストには、W粉末とAlN粉末とを7:3の割合で混合して粘度調整した導体ペーストを用い、2000℃の温度で焼成することにより制作した。
【0047】
それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0048】
【表1】
【0049】
この結果、載置面3と内部電極4との間にあるセラミック部2aを高純度の窒化アルミニウム質焼結体により形成した比較例の静電チャック1では、吸着力が1KPa程度しか得られず、載置面3と内部電極4との間にあるセラミック部2aの300℃における体積固有抵抗値を測定したところ、1×1013Ω・cmと高く、ジョンソン・ラーベック力を発現させることができなかった。また、強い静電吸着力が得られないものの、載置面3のビッカース硬度が1300と高いため、シリコンウエハを吸着した後のパーティクル数は7000個と本発明品と比較して多かった。
【0050】
また、載置面3と内部電極4との間にあるセラミック部2aを、内部電極4の導体成分であるWを含有させた窒化アルミニウム質焼結体により形成した従来例の静電チャック1では、300℃における体積固有抵抗値を1×1010Ω・cmとすることができ、ジョンソン・ラーベック力を発現させることができるため、本発明品と同様に34.3KPaの吸着力が得られたものの、載置面3のビッカース硬度が1200と高いため、シリコンウエハを吸着した後のパーティクル数が12000個と本発明品と比較して6倍近くのパーティクルの発生が見られた。
【0051】
よって、本発明の静電チャック1を用いれば、高温雰囲気下においてウエハを強固に吸着固定させることができるだけでなく、載置面3及びウエハの摩耗を抑え、パーティクルの発生を大幅に低減することができ、優れていることが分かる。
【0052】
次に、本発明の静電チャック1において、載置面3と静電吸着用の内部電極4との間にあるセラミック部2aの厚みを異ならせた時の載置面3における炭素の分散量、載置面3のビッカース硬度と表面粗さ及びウエハに付着するパーティクル数について測定する実験を行った。
【0053】
なお、載置面3における炭素の分散量は、載置面3をEPMAにてMAP分析することにより測定した。ただし、標準試料として、炭素を含有させていない窒化アルミニウム質焼結体を用い、この標準試料との相対比較値として求めた。
【0054】
結果は表2に示す通りである。
【0055】
【表2】
【0056】
この結果、まず、炭素は内部電極4に近い程多く存在しており、内部電極4から離れるにしたがって含有量が減少していることが判る。そして、載置面3に炭素が含有されないセラミック部2aの厚さが2000μmでは、硬度が1150と大きく、その結果、ウエハを吸着固定した後に付着したパーティクル数が12000個と非常に多かった。
【0057】
これに対し、セラミック部2aの厚さが1500μm以下であれば、ビッカース硬度を1100以下とすることができ、また、ビッカース硬度を1100以下とすれば、ウエハに付着するパーティクル数も4500個以下と、近年、半導体製造装置で許容される5000ヶ以下の範囲を十分に満足することができた。また、ビッカース硬度を1000前後とすることにより、ウエハに付着するパーティクル数を2500個以下にまで低減することができ、特に優れていた。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、板状セラミックス体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミック体中に内部電極を備えた静電チャックにおいて、少なくとも上記載置面と内部電極との間にあるセラミック部を、炭素を含有する窒化アルミニウム質焼結体により形成し、上記載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100となるようにしたことから、150℃〜500℃という広い温度範囲においてジョンソン・ラーベック力による高い静電吸着力を発現させることができ、ウエハを強固に吸着固定することができるとともに、シリコン、ガリウム砒素等のウエハを吸着固定させても、載置面の硬度がウエハの硬度に近似していることから、載置面及びウエハの摩耗を抑えることができ、パーティクルの発生を大幅に低減することができる。
【0059】
よって、本発明の静電チャックを半導体製造装置に用いれば、半導体ウエハを載置面上に精度良く固定することができるため、成膜工程では均一な厚みの膜をウエハ上に被着することができ、また、エッチング工程では、所定の寸法精度に微細加工を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る静電チャックをベース基体に固定した状態を示す斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】図1の静電チャックに備える静電吸着用の内部電極のパターン形状を示す平面図である。
【図3】図1の静電チャックに備える加熱用の内部電極のパターン形状を示す平面図である。
【図4】本発明に係る静電チャックの製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係る静電チャックにおいて、静電吸着用の内部電極からの距離と炭素の含有状態及び載置面のビッカース硬度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る他の静電チャックのみを示す断面図である。
【符号の説明】
1 :静電チャック
2 :板状セラミック体
2a:載置面と静電吸着用の内部電極との間にあるセラミック部
2b:静電吸着用の内部電極と板状セラミック体の下面との間にあるセラミック部
3 :吸着面
4 :静電吸着用の内部電極
5 :加熱用の内部電極
6 :静電吸着用の内部電極の給電端子
7 :加熱用の内部電極の給電端子
8 :ベース基体
W :ウエハ
Claims (1)
- 板状セラミック体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記板状セラミック体中に内部電極を備えた静電チャックにおいて、少なくとも上記載置面と上記内部電極との間にあるセラミック部が、炭素を含有し、150℃〜500℃の温度範囲における体積固有抵抗値が1×10 8 Ω・cm〜1×10 12 Ω・cmの範囲にある窒化アルミニウム質焼結体からなり、上記載置面におけるビッカース硬度(Hv)が800〜1100であることを特徴とする静電チャック。
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