JP4435684B2 - 人工毛髪用繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
中でも光沢に関しては、これら合成繊維は、一般的に繊維表面が極めて平滑であり、そのままでは外観及び触感等の点で毛髪用繊維に適さない為、例えば特公昭56−44164号や特開昭56−309号、特開昭56−311号等に開示されているダル化剤の添加による方法や、特開昭61−245301号、特開昭63−12716号、特開平5−140807号、特開平5−140817号等に開示されている表面の粗面化等の改善により人毛ライクな光沢に近づける努力がなされ、頭髪商品に幅広く利用されて来た。
しかしながら、近年では頭飾分野においても、ファッション性がより重要視される様になり、特徴のある輝きを持った繊維やより高級感のある繊維の出現が市場から強く望まれている。従来の繊維では、前述したダル化剤の添加や表面加工により、自然な光沢感を有するものの、繊維表面の凹凸形状が微細な為に単調な外観光沢を有したものしか存在せず、市場の要望に十分には答えられていないのが現状である。
本発明者らは、かかる市場の要望と特異な外観光沢を持った繊維を開発すべく、鋭意検討した結果、繊維表面に特定の節状凹凸形状を付与させる事で、光拡散性のある、即ち、ちらつき感のある特異な外観光沢を持った繊維を得る事に成功し、さらに、その目的とする特異な外観光沢を白色光における反射率と光拡散係数で表すことが可能であることとその適性範囲を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、単繊維繊度が20〜80dtexのアクリル系合成繊維であって、白色光における反射率が下記(1)又は(2)の何れかの範囲であり、且つ繊維の光拡散係数が0.25以上であることを特徴とする人工毛髪用繊維に関する。
(1)ハンターLabのL値が21未満の繊維の場合、反射率が15〜36%
(2)ハンターLabのL値が21以上の繊維の場合、反射率が36〜70%
更にその好ましい実施態様として、繊維表面に節状の凹凸形状を有し、凸部と凹部の平均高低差が5〜15μmで、且つ隣接する凸部頂点距離が0.05〜0.5mmの範囲にある人工毛髪用繊維に関する。
また、本発明は、アクリロニトリルを30〜85重量%とハロゲン含有単量体14〜69重量%及びスルホン酸基を有する親水性オレフィン系単量体1.0〜3.0重量%とからなる重合体を主成分とする樹脂組成物から得られる人工毛髪用繊維、および、上記樹脂組成物を湿式紡糸する際、粘度が3〜10Pa・secになる様に有機溶媒で調整した紡糸原液を用い、突起部分のL/W値が0.5〜2.0で且つ4〜8個の突起が放射方向に連接した断面形状のノズルを用いて、ノズルドラフト係数が0.8〜1.3の条件で湿式紡糸し、水洗後、乾熱温度が120℃以上且つ湿球温度が70℃以上の湿熱風雰囲気下で乾燥させる人工毛髪用繊維の製造方法に関する。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の人工毛髪用繊維とは、アクリロニトリルを含有するアクリル系共重合体を繊維化して得られるアクリル系合成繊維であり、更には、アクリロニトリル30〜85重量%とハロゲン含有単量体14〜69重量%及びスルホン酸基を有する親水性オレフィン系単量体1.0〜3.0重量%とからなる重合体を主成分とする樹脂組成物から得られるものであるのが好ましい。
ここで、ハロゲン含有単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビリル、臭化ビニリデン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでも、入手のしやすさの点で、塩化ビニリデン、塩化ビニルが好ましい。又必要に応じてこれらと共重合可能なその他のモノオレフィン系単量体を本発明に差し支えない程度で使用することもできる。その他のモノオレフィン系単量体としては例えばアクリル酸、メタクリル酸、及びそれらのエステル、アクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられ、そのなかでも良好な反応性、染色性向上の点からアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが好ましい。アクリル系共重合体中のハロゲン含有単量体が14重量%未満の場合は、ソフト且つ獣毛ライクな触感が得られにくくなり、69重量%を超えると耐熱性が低下し、また製造時に繊維同士が融着し易くなる傾向があるのであまり好ましくない。
また、スルホン酸基を含有する親水性オレフィン系単量体としては、例えば、パラスチレンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、イソプレンスルホン酸ナトリウム(2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸ナトリウム)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(アクリルアミド−t−ブチル−スルホン酸ナトリウム)、パラスチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸(2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(アクリルアミド−t−ブチル−スルホン酸)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、良好な反応性、入手のし易さの面から、パラスチレンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム又はイソプレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(アクリルアミド−t−ブチル−スルホン酸)が好ましい。このスルホン酸基を含有する親水性オレフィン系単量体は、特に凝固浴中で所定のボイドを形成させる為には必要であり、その含有量はアクリル系共重合体中1.0〜3.0重量%の範囲が好ましい。この範囲を外れると、凝固浴中で狙いとする大きさのボイドが発現せず、目的とした凹凸のある繊維を本発明の製造方法で得ることが困難となる。但し、ボイドを形成せずに、目的とする特異な外観特性や繊維表面の凹凸を付与させる場合にはその限りではない。
本発明でいう、白色光における反射率とは、繊維の光沢度(艷)を表す指標で、繊維束から任意に11本の繊維を選び、村上色彩研究所製光沢計(GONIO PHOTO METER GP−200型)を用い、ハロゲンランプ(白色)を光源とし、入射角30°で入射された繊維からの反射光分布を測定し、この時の最大反射率で表されるものである。第1図に反射光分布の一例を示す。第1図における(a)が最大反射率の数値となる。
本発明の人工毛髪用繊維の白色光における反射率は、ハンターLabのL値が21未満の繊維の場合は15〜36%であり、ハンターLabのL値が21以上の繊維の場合は36〜70%の範囲に調整する事により、人工毛髪としての自然な光沢感が得られる。
ここでいう、ハンターLabのL値とは、JIS Z−8722に準じた方法で測定されるもので、L値は明度を表している。一般にL値が21未満の繊維とは濃色繊維、L値が21以上の繊維とは中色〜淡色の繊維が相当する。各L値に相当する繊維の反射率が上記範囲より低いと死毛調となり、色相もくすんだ色となり商品価値が低い。一方、上記反射率を超えた場合は、プラスチックライクな光沢となり、毛髪用繊維として好ましくない。
本発明で言う、光拡散係数とは、反射光の散乱性を表したもので、上記反射率と同じ測定条件で得られる反射光分布(第1図)から、最大反射率(a)の半分の値の分布巾、すなわち半価巾(b)を求め、次式により算出される。
光拡散係数(D)=b/a a:最大反射率(%)
b:半価巾(度)
この光拡散係数は、繊維を目視で評価した時のちらつき感と良く相関が取れており、この拡散係数が大きい程、そのちらつき度合いも大きく、かつら等の最終商品に仕上げた時に、従来にない特異な外観光沢を示し、より品位のある商品を得ることが出来る。目視によるちらつき感を出す為には、発明者らの知見では、拡散係数は0.25以上が必要で、0.25未満ではちらつき感が少なく、商品の見栄えとして従来のものと大差なかった。
本発明の人工毛髪用繊維は、繊維表面に節状の凹凸を有し、且つ、凸部と凹部の平均高低差が5〜15μmで且つ隣接する凸部頂点距離が0.05〜0.5mmの範囲にある場合に、上記白色光における反射率と光拡散係数の数値範囲を満たすので、好ましい。さらに、凸部と凹部の平均高低差は6〜12μm、隣接する凸部頂点距離は0.06〜0.40mmであるのがより好ましい。ここで、繊維表面に節状の凹凸が有るというのは、例えば第2図に模式的に示されるような形状であり、このときの凸部と凹部の平均高低差は、第2図の繊維の太い部分(H1)と細い部分(H2)の長さを計測し、次式により求められる値である。
凸部と凹部の平均高低差(H)=(H1−H2)×1/2
H1:太い部分の長さ
H2:細い部分の長さ
また、隣接する凸部頂点距離についても、第2図に示した如く、隣接する凸部の頂点距離を計測して求められるものである。
発明者らはこの特定範囲の凹凸形状を繊維表面に付与する事で、光拡散性のある、即ち、ちらつき感のある特異な外観光沢を持った繊維が得られることを見いだした。凸部と凹部の平均高低差が5μmより小さい場合、或いは隣接する凸部の頂点距離が0.5mmより大きい場合は、目標とする光拡散係数が0.25以上の繊維を得るためには他の工夫が必要となり、凸部と凹部の平均高低差が15μmを超えると光拡散係数は増大するが、繊維のガサツキ感が過大となり、更には風合いも悪化する傾向があるため、好ましくない。もちろん、他の工夫によって特異な外観光沢を付与する場合はこの限りでない。
本発明の人工毛髪用繊維の単繊維繊度は20〜80dtexである。繊度が20dtex未満であると軟らか過ぎて腰がなく、頭飾製品として好ましくない。一方、80dtexを超えると繊維が剛直となり、繊維の触感を著しく低下させる為、適切な繊度を有する事が重要で、好ましくは、30〜70dtexが良い。
次に本発明の人工毛髪用繊維の製造方法について説明する。
本発明の人工毛髪用繊維を作る方法としては、特に限定はしないが、例えば、以下の方法により製造する事が出来る。
本発明の人工毛髪用繊維に用いられるアクリル系重合体の共重合方法は、通常知られているビニル系単量体の重合方法であれば何れでも良く、例えば懸濁重合法や溶液重合法、乳化重合法等が挙げられる。
次に、アクリル系重合体を主成分とする樹脂組成物を有機溶媒に溶解して紡糸原液を調整する。ここで紡糸原液に使用される有機溶媒としては、上記樹脂組成物を溶解するものであれば、特に限定しないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、アセトン、アセトニトリル等を使う事が出来る。又必要に応じてこの紡糸原液に艶消し剤や着色安定剤、難燃剤、光安定剤、防錆剤、制電剤、抗菌剤等を添加する事も可能である。
この紡糸原液の粘度は3〜10Pa・secの範囲が好ましく、より好ましくは4〜8Pa・secの範囲が良い。この原液粘度の好ましい範囲は、後述する凝固浴中で特定のボイドを形成させるのに必要な条件である。この原液粘度が3Pa・sec未満では凝固浴中で形成されるボイドが過大となり、乾燥工程での失透回復性が悪化し、得られた繊維は死毛調で色相もくすんだ色となる為、好ましくない。一方、原液粘度が10Pa・secを超えると凝固浴中で繊維が緻密になり、目標とする大きさのボイドが得られず、結果繊維表面の凹凸度合いが小さく、光拡散係数の小さい繊維しか得ることが出来ない。
この様にして調整された紡糸原液は、通常の湿式紡糸法により紡糸されるが、使用するノズルとして、突起部分のL/W値が0.5〜2.0で且つ4〜8個の突起が放射方向に連接した断面形状のノズルを使用し、紡糸されるのが好ましい。
上記ノズルを使用する目的は、凝固浴中で5〜30μm程度のある大きさのボイドを持った糸条を作る為であり、このボイドが後の乾燥工程で目潰しされる事により、繊維表面に節状の凹凸形状が発現すると考えられる。
ここでいう突起が放射方向に連接した断面形状とは、例えば第3図の(a)〜(c)に示す様な断面形状で、突起部分のL/W値とは第4図に示す突起部の長さ(L)と幅(W)の比(L/W)で表わされる。上記範囲の形状を有したノズルを使用する事で、凝固浴で目標とするボイドの発現が可能となる。L/W値が0.5未満の場合は、発現するボイド径が小さく、L/W値が2.0を超えるとボイド径が大きくなり過ぎて失透回復し難い問題が生ずる。
又ノズルの突起の数は4〜8個が好ましく、5〜7個がより好ましい。4個より少ないとボイドが発現せず、8個より多いとノズルのスリット幅が小さくなり、可紡性が劣ると言った問題が生じる為、好ましくない。
さらに、紡糸原液をノズルより紡出する際、ノズルドラフト係数が0.8〜1.3になる様に調整されるのが好ましい。このノズルドラフト係数は下式により算出されるが、ノズルドラフト係数が0.8より小さいと狙いとする大きさのボイドが発現せず、1.3を超えると糸切れ等が生じ易くなる。
ノズルドラフト係数=V0/V1 V0:ノズル出の線速度
V1:巻取り線速度
上記方法により、凝固浴中で特定のボイドを形成させた後、温水等で水洗、延伸後、特定の条件で乾燥が施される。具体的には、乾熱温度が120℃以上且つ湿球温度が70℃以上の湿熱風雰囲気下で乾燥される。
前述した様に、凝固糸条の段階で大きなボイドを形成させる為、通常の乾燥条件では失透回復し難く、上記条件で乾燥させることが必要である。特に湿球温度は重要で、70℃以上好ましくは80℃以上が良い。
ここでいう湿球温度とは、温度計の感温部を湿った布で包んだいわゆる湿球温度計を用いて測定されるもので、この湿球温度が高い程、乾燥雰囲気中の水分量が多い事を意味し、通常の乾熱風に比べて、繊維への熱伝導が飛躍的に向上する為、ボイドが潰れ易くなると推定される。
乾熱温度が120℃より低い場合、若しくは湿球温度が70℃より低い場合は、ボイドが完全に潰れきれず、結果凹凸感の少ない、光拡散係数の小さい繊維しか得る事が出来ない。
本発明の製造方法は、凝固時に大きなボイドを形成させ、これを特定の乾燥条件下で目潰させる事によって、繊維表面に凹凸形状を発現させる事が特徴であって、前述した紡糸原液の粘度や特定形状を持ったノズル、ノズルドラフト係数、及び乾燥条件が特に重要であり、これらの製造条件を満たすことで、目的とする人工毛髪用繊維を得ることができる。但し、本発明の人工毛髪用繊維を、上記本発明の製造条件以外の方法で得ることを、制限するものではない。
第2図は、本発明の人工毛髪用繊維の凹凸形状の模式図(繊維縦方向断面)である。
第3図は、本発明の製造方法で用いられるノズルの断面形状の例である。
第4図は、本発明の製造方法で用いられるノズルの突起部分のL値、W値の説明図である。
(最大反射率)
繊維束から任意に11本の毛髪を選び、村上色彩研究所製光沢計(GONIO PHOTO METER GP−200型)を用い、ハロゲンランプ(12V・50W)を光源とし、電圧−760Vに設定し、入射角30°で入射された繊維からの反射光分布を測定し、その時の最大反射率を求めた。
(光拡散係数)
上記の方法で求めた反射光分布から、最大反射率の半分の値の分布巾を示す半価巾を求め、次式により算出した。(第1図参照)
光拡散係数(D)=b/a a:反射率(%)
b:半価巾(度)
(L値)
日本電色製の測色機(Σ90)を用い、付属の白度標準板を基準とし、30Φ反射試料台に長さ20cm、総繊度90万dtexの繊維束を横向きに置き、JIS Z−8722に準じた方法で3回測定を行い、その平均値(L値)を求めた。
(繊維表面凹凸測定)
オリンパス製光学顕微鏡を用い、100倍の倍率で繊維の側面を観察し、第2図に示す様に、繊維の太い部分と細い部分を計測し、次式により算出した。尚、測定はn=30点行い、その平均値を求めた。
凸部と凹部の平均高低差(H)=(H1−H2)×1/2
H1:太い部分の長さ
H2:細い部分の長さ
又隣接する凸部頂点距離についても第2図に示した如く、30箇所計測し、その平均値を求めた。
(紡糸原液粘度)
芝浦システム(株)製のB型粘度計を用い、原液温度が40℃の時の粘度を測定した。
(外観光沢評価)
総繊度90万dtexの繊維束を用い、光沢のちらつき度合いを視覚的観点から5名の判定者による官能的評価を行い、以下の基準で外観光沢を3段階評価した。
○:光沢のちらつき感があり、特異な外観を有する。
△:光沢のちらつき感が少なく、不満足なレベル。
×:殆ど光沢のちらつき感が認められない。
得られた繊維は、単繊維繊度が50dtexで、L値が85の白色繊維であり、緯維表面に凹凸形状を有し、凸部と凹部の平均高低差は8μmで、凸部頂点距離の間隔は平均0.25mmであった。又白色光(ハロゲンランプ)による最大反射率は55%で、光拡散係数は0.32であった。
後染め加工方法は、カチオン染料(Maxilon Yellow 2RL0.36%omf、Maxilon Red GRL0.06%omf、Maxilon Blue GRL0.18%omf:何れもCiba−Geigy社製)と助剤として、酢酸及び酢酸ナトリウム及び陰イオン系分散剤2%omf(LevenolWX:花王社製)、促染剤0.4%omf(ラウリル硫酸ナトリウム)を用い、浴比1:25で1時間常圧沸騰させ、水洗、乾燥処理を行った。
染色後の繊維はL値が31の茶色の繊維であり、その最大反射率は36%で、光拡散係数は0.40であった。
後染め加工方法は、カチオン染料(Maxilon Yellow 2RL0.78%omf、Maxilon Red GRL0.24%omf、Maxilon Blue GRL0.58%omf:何れもCiba−Geigy社製)と助剤として、酢酸及び酢酸ナトリウム及び陰イオン系分散剤2%omf(LevenolWX:花王社製)、促染剤0.6%omf(ラウリル硫酸ナトリウム)を用い、浴比1:25で1時間常圧沸騰させ、水洗、乾燥処理を行った。
染色後の繊維はL値が17の黒色の繊維であり、その最大反射率は24%で、光拡散係数は0.45であった。
(比較例1)
アクリロニトリル49重量%、塩化ビニル50.5重量%、スチレンスルホン酸ソーダー0.5重量%とからなるアクリル系共重合体を、アセトンに樹脂濃度で28重量%になるように調整し、粘度が4Pa・secの紡糸原液を作成した。次いで実施例1と同じノズルを用い、0.9のノズルドラフト係数で、アセトン濃度が36重量%及び温度が20℃のアセトン/水系の凝固浴中に紡出し、次いで50〜60℃の水洗浴に導き、水洗しながら1.9倍の予備延伸を行った。次いで乾熱温度125℃及び湿球温度80℃の湿熱風雰囲気下で乾燥して失透回復させ、2.0倍の熱延伸を施した後、145℃の乾熱雰囲気下で10%の弛緩熱処理を行った。次いで実施例2と同様の方法で繊維を着色化し、単繊維繊度が50dtex、L値が26の茶色の繊維を作成した。得られた繊維は、繊維表面に凹凸形状が殆どなく、100倍の光学顕微鏡による凹凸評価でも、凹凸差が認識出来なかった。又この繊維の白色光における最大反射率は75%で、光拡散係数は0.10とプラスチックライクな光沢を示し、不満足な結果となった。
(比較例2)
アクリロニトリル49重量%、塩化ビニル50重量%、スチレンスルホン酸ソーダー1.0重量%とからなるアクリル系共重合体を、アセトンに樹脂濃度で28重量%になるように調整し、粘度が4Pa・secの紡糸原液を作成した。次いで実施例1と同じノズルを用い、0.7のノズルドラフト係数で、アセトン濃度が36重量%及び温度が20℃のアセトン/水系の凝固浴中に紡出し、次いで50〜60℃の水洗浴に導き、水洗しながら1.9倍の予備延伸を行った。次いで乾熱温度125℃及び湿球温度80℃の湿熱風雰囲気下で乾燥して失透回復させ、2.0倍の熱延伸を施した後、145℃の乾熱雰囲気下で10%の弛緩熱処理を行った。次いで実施例2と同様の方法で繊維を着色化し、単繊維繊度が50dtex、L値が28の茶色の繊維を作成した。得られた繊維は、表面凹凸形状を有するものの、その凸部と凹部の平均高低差は4μ,凸部頂点距離の間隔は平均0.30mmと、凹凸度合いの小さい繊維であり、光拡散係数も0.18と低く、肉眼で評価した時のちらつき感も不満足な結果となった。
(比較例3)
実施例1と同じ組成のアクリル系共重合体を使用し、アセトンに樹脂濃度で26重量%になるように調整し、粘度が5Pa・secの紡糸原液を作成した。次いでノズルの形状が丸孔の形をした孔径0.3Φで孔数が50ホールズのノズルを使用し、0.9のノズルドラフト係数で、実施例1と同様の方法で水洗、乾燥、熱処理を施し、更に実施例2と同様の方法で繊維を着色化し、単繊維繊度が50dtex、L値が26の茶色の繊維を作成した。得られた繊維は、繊維表面に凹凸形状が殆どなく、100倍の光学顕微鏡による凹凸評価でも、凹凸差が認識出来なかった。又この繊維の白色光における最大反射率は82%で、光拡散係数は0.08とプラスチックライクな光沢を示し、不満足な結果となった。
(比較例4)
実施例1と同じ組成のアクリル系共重合体を使用し、アセトンに樹脂濃度で26重量%になるように調整し、粘度が5Pa・secの紡糸原液を作成した。次いで実施例1と同じノズルを用い、0.9のノズルドラフト係数で、アセトン濃度が36重量%及び温度が20℃のアセトン/水系の凝固浴中に紡出し、次いで50〜60℃の水洗浴に導き、水洗しながら1.9倍の予備延伸を行った。次いで乾熱温度125℃及び湿球温度60℃の湿熱風雰囲気下で乾燥させ、2.0倍の熱延伸を施した後、160℃の乾熱雰囲気下で10%の弛緩熱処理を行った。次いで実施例2と同様の方法で繊維を着色化し、単繊維繊度が50dtexで、L値が38の茶色の繊維を作成した。得られた繊維は、失透回復性が不十分なため不透明な繊維となった。又この繊維の凹凸度評価の結果、凸部と凹部の平均高低差は2μmで、凸部頂点距離は0.30mmであった。又白色光における最大反射率は28%で、光拡散係数は0.15と不満足な結果となった。
上記実施例及び比較例の反射特性及び外観光沢評価の結果を表1に示す。
Claims (4)
- 単繊維繊度が20〜80dtexのアクリル系合成繊維であって、白色光における反射率が下記(1)又は(2)の何れかの範囲であり、且つ繊維の下記式で示される光拡散係数が0.25以上であることを特徴とする人工毛髪用繊維。
(1)ハンターLabのL値が21未満の繊維の場合、反射率が15〜36%
(2)ハンターLabのL値が21以上の繊維の場合、反射率が36〜70%
光拡散係数=b/a a:最大反射率(%)(白色光における反射率)
b:半価巾(度)(最大反射率の半分の値の分布巾) - 繊維表面に節状の凹凸を有し、凸部と凹部の平均高低差が5〜15μmで、且つ隣接する凸部頂点距離が0.05〜0.5mmの範囲である請求項1記載の人工毛髪用繊維。
- アクリル系合成繊維が、アクリロニトリルを30〜85重量%とハロゲン含有単量体14〜69重量%及びスルホン酸基を有する親水性オレフィン系単量体1.0〜3.0重量%とからなる重合体を主成分とする樹脂組成物から得られるものである請求項1又は2記載の人工毛髪用繊維。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維の製造方法であって、アクリロニトリルを30〜85重量%とハロゲン含有単量体14〜69重量%及びスルホン酸基を有する親水性オレフィン系単量体1.0〜3.0重量%とからなる重合体を主成分とする樹脂組成物を、粘度が3〜10Pa・secになる様に有機溶媒で調整した紡糸原液を用い、突起部分のL/W値が0.5〜2.0で且つ4〜8個の突起が放射方向に連接した断面形状のノズルを用いて、ノズルドラフト係数が0.8〜1.3の条件で湿式紡糸し、水洗後、乾熱温度が120℃以上且つ湿球温度が70℃以上の湿熱風雰囲気下で乾燥させる事を特徴とする人工毛髪用繊維の製造方法。
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