JPWO2006121054A1 - 人工毛髪用ポリエステル系繊維 - Google Patents
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Abstract
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、アルキレンテレフタレート単位を主構成単位とするポリエステル(A)100質量部に対し、1.5〜1.8の屈折率と2以下のアスペクト比とを有する、無機粒子及び無機有機樹脂複合粒子からなる群れから選ばれる少なくとも1種の微粒子(B)を0.1〜5質量部含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とするものである。前記人工毛髪は、従来の光沢が抑制されたポリエステル繊維からなる人工毛髪に比べて、光沢抑制効果と着色時の発色性とのバランスに優れた人工毛髪であり、人毛に近い光沢感と発色性とを有する。
Description
本発明は、人毛繊維の代替品として使用される人工毛髪用ポリエステル系繊維に関する。
従来、ヘアウィッグ、ツーペ、付け毛、ヘアバンド等の頭飾製品やドールヘア等に用いられる毛髪用繊維として人毛繊維が用いられていた。しかし、近年、人毛繊維の入手は困難である。そのために、前記毛髪用繊維として、モダクリル繊維等のアクリロニトリル繊維,ポリ塩化ビニル繊維,ポリエステル繊維等の合成繊維からなる人工毛髪が幅広く用いられている。
前記人工毛髪の中でも、ポリエステル繊維からなる人工毛髪は、耐熱性が高く、ヘアセット性に優れているという長所を備える。
しかし、ポリエステル繊維は、その表面光沢が人毛に比べて強いために、頭部に装着した場合に人毛との光沢感の違いが際立つという問題があった。
前記表面光沢を抑制する方法としては、例えば、以下の特許文献1〜3に開示されたような、繊維表面に凹凸を形成する方法が知られている。
特許文献1には、無機粒子を含有するポリエステル繊維をアルカリ性水溶液で処理することにより得られる、繊維表面に特定の微細な凹凸が形成された人工毛髪用繊維が記載されている。その実施例には硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム等を含有するポリエステル繊維からなる人工毛髪が開示されている。
特許文献2には、無機粒子とポリエステル樹脂とを含有する樹脂組成物を溶融紡糸することにより得られる、繊維表面に特定のサイズの突起が形成された人工毛髪用繊維が記載されている。また、その実施例には酸化珪素(シリカ)を含有する人工毛髪用ポリエステル繊維が開示されている。
特許文献3にも、無機粒子とポリエステル樹脂とを含有する樹脂組成物を溶融紡糸することにより得られる、繊維表面に微細な突起が形成された人工毛髪用繊維が記載されている。その実施例には酸化チタン、タルク、三酸化アンチモンを含有する人工毛髪用ポリエステル繊維が開示されている。
しかしながら、ポリエステル繊維に含有される無機粒子は、繊維の透明感を低下させる。そして、前記繊維の透明感の低下は、繊維を着色したときの発色性(以下、単に、発色性ともいう)を低下させるという問題があった。
例えば、シリカを含有する人工毛髪用ポリエステル繊維においては、シリカの屈折率がポリエステル繊維の屈折率に比べて低すぎるために繊維の透明感を低下させて、発色性を低下させるという問題があった。
また、例えば、酸化チタンを含有する人工毛髪用ポリエステル繊維は、酸化チタンの屈折率がポリエステル繊維の屈折率に比べて高すぎるために、シリカと同様に発色性が低下するという問題があった。
特開昭63−12716号公報
特開平05−086505号公報
特開2005−42234号公報
上記問題に鑑み、本発明は、微粒子を含有するポリエステル系繊維において、光沢の抑制と発色性とのバランスに優れた人工毛髪用ポリエステル系繊維を得ることを目的とする。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、アルキレンテレフタレート単位を主構成単位とするポリエステル(A)100質量部に対し、1.5〜1.8の屈折率と2以下のアスペクト比とを有する、無機粒子及び無機有機樹脂複合粒子からなる群れから選ばれる少なくとも1種の微粒子(B)を0.1〜5質量部含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とするものである。
以下に本発明について具体的に説明する。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、アルキレンテレフタレート単位を主構成単位とするポリエステル(A)100質量部に対し、1.5〜1.8の屈折率と2以下のアスペクト比とを有する、無機粒子及び無機有機樹脂複合粒子からなる群れから選ばれる少なくとも1種の微粒子(B)を0.1〜5質量部含有する樹脂組成物を溶融紡糸することにより得られうる。
前記(A)アルキレンテレフタレート単位を主構成単位とするポリエステルは、アルキレンテレフタレート単位を80モル%以上含有するポリエステルであり、ポリアルキレンテレフタレート単独のポリエステルのほか、各種アルキレンテレフタレート単位を80モル%以上含有し、その他の共重合単位を20モル%未満含有する共重合ポリアルキレンテレフタレートからなるポリエステルが挙げられる。
前記ポリアルキレンテレフタレートの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
前記共重合ポリアルキレンテレフタレートとしては、ポリアルキレンテレフタレート単位を主構成単位として、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチル等を共重合単位とするポリエステルが挙げられる。前記ポリアルキレンテレフタレート及び共重合ポリアルキレンテレフタレートは、単独でも、2種以上が組み合わされてもよい。これらの中ではポリエチレンテレフタレート、あるいは、ポリエチレンテレフタレート単位を主構成単位とする共重合ポリアルキレンテレフタレートが耐熱性が適度であるために、アイロンセット性等のヘアセット性に優れる点から好ましい。
前記ポリエステル(A)の固有粘度としては、0.5〜1.4、さらには0.6〜1.2であることが繊維の機械的強度が高い点から好ましい。
一方、前記微粒子(B)は、1.5〜1.8の屈折率と2以下のアスペクト比とを有する、無機粒子及び無機有機樹脂複合粒子からなる群れから選ばれる少なくとも1種の粒子である。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、前記微粒子(B)を含有することにより、光沢抑制効果と発色性とのバランス性が優れた繊維になる。
前記微粒子(B)の屈折率は1.5〜1.8であり、好ましくは1.6〜1.7である。前記屈折率が1.5未満の場合及び1.8を超える場合には、繊維の透明感が低下して、発色性が低下する。なお、前記屈折率は、屈折液を用いた顕微鏡浸漬法により測定することができる。
また前記微粒子(B)のアスペクト比は2以下であり、好ましくは、1.7以下である。前記アスペクト比が2を超える場合には、光沢を充分に抑制するために粒子の含有量を本発明の範囲の含有量に比べて高くする必要がある。そして、前記含有量を高めた場合には、発色性及び触感が低下する。
なお、本発明におけるアスペクト比は、以下のようにして求める。
走査型電子顕微鏡で粒子を観察し、無機微粒子の長径と短径とを測定し、長径と短径との比(長径/短径)を算出する。そして不作為に選んだ100個の粒子の前記比を算術平均して求める。
前記微粒子(B)の具体例としては、前記屈折率とアスペクト比とを有する炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等や、炭酸カルシウムとリン酸カルシウム系化合物との無機複合粒子等の無機粒子や、樹脂と酸化ケイ素との無機有機樹脂複合粒子が挙げられる。これらは人工合成されたものであっても、天然鉱物に由来する粒子を前記アスペクト比の範囲になるように分別分離したものであってもよい。また、単独でも、2種以上が組み合わされてもよい。
前記微粒子(B)は、市販品として、例えば、以下のようなものが入手できる。
前記炭酸カルシウムとしては、丸尾カルシウム(株)製のCUBE、EC−1等、酸化マグネシウムとしては協和化学工業(株)製のPYROKISUMA 5Q等、酸化アルミニウムとしては日本軽金属(株)製のA34EC‐1等が挙げられる。
また、無機複合粒子としては、炭酸カルシウムとリン酸カルシウムとの複合粒子である丸尾カルシウム(株)製のHAP等が挙げられる。
また、前記樹脂と酸化ケイ素との無機有機樹脂複合粒子としては、酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子である日産化学工業(株)製のオプトビーズや、酸化ケイ素とアクリル系樹脂との複合粒子である日本触媒(株)製のソリオスター(屈折率1.52、アスペクト比1.1)、酸化ケイ素とアミノ樹脂との複合粒子、酸化ケイ素とポリスチレン系樹脂との複合粒子等が挙げられる。
これらの中では、前記炭酸カルシウムとリン酸カルシウムとの複合粒子は、特に優れた発色性を示す点から好ましい。また、前記酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子は、特に優れた光沢抑制効果を示す点から好ましい。
なお、前記丸尾カルシウム(株)製のHAPは、炭酸カルシウムの表面にリン酸カルシウム系化合物が被着した無機複合粒子である。
前記炭酸カルシウムの表面にリン酸カルシウム系化合物が被着した無機複合粒子は、炭酸カルシウムを分散した水性媒体中で水可溶性リン酸又は水可溶性リン酸塩等を徐々に添加して反応させて、炭酸カルシウム表面にリン酸カルシウム系化合物を沈着させる方法により得られる。
前記リン酸カルシウム系化合物としては、α型又はβ型のリン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、フッ化アパタイト等が挙げられる。
前記炭酸カルシウムとリン酸カルシウム系化合物との無機複合粒子中の前記リン酸カルシウム系化合物の割合は、5〜50質量%、さらには、10〜40質量%であることが好ましい。前記リン酸カルシウム系化合物の割合がこのような範囲の場合には、ポリエステル系繊維中での分散性がよいために分散粒子径を容易に制御することができ、光沢抑制効果と発色性とのバランスを調整しやすい点から好ましい。
一方、前記酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子は、例えば、無機酸のアルカリ金属塩を溶解した水性媒体中に5〜70nm程度の数平均粒子径のコロイダルシリカを懸濁させ、メラミン化合物とアルデヒド化合物を塩基性条件下で反応させて水に可溶なメラミン系樹脂の初期縮合物の水溶液を生成させ、前記水溶液に酸触媒を加えることにより析出させる方法により得られる。
このようにして製造された酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子は球状のメラミン樹脂の表面近傍に酸化ケイ素粒子が偏在している形態を有するものである。
なお、前記球状のメラミン樹脂の表面近傍に酸化ケイ素粒子が偏在している形態とは、酸化ケイ素がメラミン樹脂の表面に露出して表面全体を、あるいは表面を部分的に覆うように存在しているような形態であり、粒子内部にも酸化ケイ素が存在していてもよい。
前記樹脂と酸化ケイ素との無機有機樹脂複合粒子における、前記酸化ケイ素と樹脂との割合は、複合粒子全体に対する酸化ケイ素の割合が0.5〜30質量%で、更には1〜20質量%であることが好ましい。前記酸化ケイ素が前記割合で含有されている場合には溶融混練時に粒子が容易に分散する。なお、前記酸化ケイ素の割合が高すぎる場合には、屈折率が1.5よりも低くなるために、発色性が低下する。
前記微粒子(B)の数平均粒子径としては、0.2〜10μm、さらには0.7〜5μm、とくには0.7〜2μmであることが、発色性を維持しながら特に高いレベルで光沢を抑制でき、且つ、触感及びくし通り性にも優れる点から好ましい。前記平均粒子径が小さすぎる場合には、繊維表面に形成される凹凸が小さくなりすぎて、光沢抑制効果が不充分になる傾向があり、大きすぎる場合には、前記凹凸が大きくなりすぎて、触感及び櫛通りが不充分になる傾向がある。
また、前記微粒子(B)の粒子径分布(質量平均粒子径/数平均粒子径)としては1.1〜3程度であることが好ましい。なお前記粒子径分布が大きい場合には、光沢の抑制効果が若干低下する傾向があるが、触感及びくし通りが良くなるという利点もある。
なお、前記微粒子(B)の数平均粒子径及び粒子径分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置、具体的には、例えば、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT3300EX等を用いて測定することができる。
前記微粒子(B)は、ポリエステルとの密着性を高めるためにカップリング剤及び界面活性剤からなる群れから選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。前記表面処理によりポリエステルと前記微粒子(B)との密着性が向上する。そして、人工毛髪をスチームセットしたときに、ポリエステルと前記微粒子(B)との界面に水分が侵入することを抑制することにより、白化の発生を抑制することができる。
前記表面処理剤としては、例えば、シラン系、チタネート系、エポキシ系等のカップリング剤や脂肪酸、脂肪酸の金属塩、脂肪酸のアンモニウム塩、脂肪酸エステル類等の界面活性剤が挙げられる。
前記表面処理剤を用いて表面処理する方法としては、前記微粒子(B)に前記カップリング剤や界面活性剤をミキサー中で逐次添加し、均一になるように混合する乾式処理方法や、前記微粒子(B)の水媒体スラリーを調製し、前記カップリング剤や界面活性剤を添加・攪拌して表面に付着させた後、脱水、乾燥、粉砕する湿式処理方法が挙げられる。
前記微粒子(B)の配合量としては、ポリエステル(A)100質量部に対して0.1〜5質量部であり、0.2〜3質量部であることが好ましい。前記配合量が0.1質量部未満の場合には、充分な光沢抑制効果が得られず、5質量部を超える場合には発色性が低下する。
本発明のポリエステル系繊維を形成するための樹脂組成物は、ポリエステル(A)及び前記微粒子(B)の他、必要に応じて難燃剤、難燃助剤、光安定剤、熱安定剤等を含有してもよい。
前記難燃剤としては、リン系難燃剤や臭素系難燃剤等が好ましく用いられる。
リン系難燃剤の具体例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリネフチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのほか、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェート、縮合リン酸エステル系化合物、リン酸エステルアミド化合物又は有機環状リン系化合物などが挙げられる。
また、臭素系難燃剤の具体例としては、例えば、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等の臭素含有リン酸エステル類、臭素化ポリスチレン類、臭素化ポリベンジルアクリレート類、臭素化エポキシオリゴマー類、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリカーボネートオリゴマー類、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)などのテトラブロモビスフェノールA誘導体、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンなどの臭素含有トリアジン系化合物、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素含有イソシアヌル酸系化合物などが挙げられる。これらの難燃剤は単独でも、2種以上が組み合わされてもよい。これらの中では、臭素含有リン酸エステル系難燃剤、臭素化ポリスチレン系難燃剤、臭素化ベンジルアクリレート系難燃剤、臭素化エポキシ系難燃剤、臭素化ポリカーボネート系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA誘導体、臭素含有トリアジン系化合物、臭素含有イソシアヌル酸系化合物が、とくには、臭素化エポキシ系難燃剤が光沢を大幅に低下させることなく、高い難燃性が得られる点から好ましい。
前記難燃剤の配合量としては、ポリエステル(A)100質量部に対して、3〜30質量部、さらには6〜25質量部、とくには、7〜20質量部であることが好ましい。前記配合量が少なすぎる場合には難燃効果が不充分になり、30質量部を超える場合には人工毛髪のヘアセット性が低下するとともに、接炎時にドリップしやすくなる傾向がある。
なお、前記難燃剤はポリエステル系繊維に難燃性を付与する成分であるが、さらに高い難燃性が求められる場合には、難燃助剤を配合することが好ましい。なお、前記高い難燃性が求められる場合としては、繊維の表面処理剤としてシリコーン系の繊維処理剤を用いる場合や、可燃性の人工毛髪用繊維と混合して繊維束として用いる場合が挙げられる。
前記難燃助剤としては、特に限定はない。その具体例としては、例えば、メラミンシアヌレート、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムが挙げられる。これらの難燃助剤は単独でも、2種以上が組み合わされてもよい。これらの中では、紡糸加工性の点から、アンチモン酸ナトリウムが好ましい。
前記難燃助剤の配合量としては、前記ポリエステル(A)100質量部に対して、10質量部以下、さらには、8質量部以下、とくには、6質量部以下であって、0.5質量部以上であることが好ましい。前記配合量が多すぎる場合には、人工毛髪の発色性が低下する傾向がある。
本発明に用いられる難燃助剤の平均粒子径としては、1.5μm以下、さらには、1.4μm以下、とくには、1.3μm以下であって、0.2μm以上、さらには、0.5μm以上、とくには、0.8μm以上であることが好ましい。
前記光安定剤としては特に限定はないが、耐熱性に優れるものが特に好ましい。
前記光安定剤の具体例としては、例えば、2−(2h−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2h−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1、3、5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系光安定剤、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル}{2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ)]、ビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等のヒンダードアミン系光安定剤、などが挙げられる。これらの光安定剤は単独でも、2種以上が組み合わされてもよい。これらの中では、ベンゾトリアゾール系及びヒンダードアミン系光安定剤が、耐熱性、耐揮発性の点から好ましい。
前記光安定剤の配合量は、ポリエステル(A)100質量部に対し、0.01〜3質量部、更には0.05〜2.5質量部、とくには0.1〜2質量部であることが好ましい。前記配合量の場合には、人工毛髪の耐光性が充分に向上するとともに、溶融加工性に優れている点から好ましい。
本発明のポリエステル系繊維は、上記各成分をドライブレンドして配合した後、溶融混練して得られる樹脂組成物を溶融紡糸することにより得られうる。
前記溶融混練には、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが用いられる。これらのうちでは、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。
二軸押出機を用いて溶融混練する場合の溶融混練方法の一例としては、例えば、スクリュー径45mmの二軸押出機を用いて、シリンダ設定温度を260〜300℃とし、吐出量50〜150kg/hr、スクリュー回転数150〜200rpmで前記ドライブレンドした配合物を溶融混練し、ダイスよりストランドを引取り、水冷した後に、ストランドカッターを用いてペレット化することによりポリエステル系樹脂組成物が得られる。
次に、前記ポリエステル系樹脂組成物を溶融紡糸する方法の一例について説明する。
例えば、押出機、ギアポンプ、口金等の温度を250〜310℃に設定して溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒中に通過させた後、ガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度や長さ、冷却風の温度や吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間、引取速度は、吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。
得られた紡糸糸状はさらに、熱延伸される。前記延伸は未延伸糸を一旦巻き取ってから延伸する2工程法及び巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。
熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
なお、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、通常、着色して用いられる。前記着色の方法としては、前記溶融混練時に顔料や染料等の着色剤を他の成分と共に配合して溶融混練する方法(原着法)や、溶融紡糸後の繊維を染料で染色する方法(後染色法)が挙げられる。本発明においては特に溶融紡糸後の繊維を染色する後染色法で着色した繊維が発色性にとくに優れ、鮮明な色や深みのある色に着色できる点から好ましい。
染色に用いられる染料としては、分散染料を用いることが好ましい。また、染色助剤としては、分散剤、均染剤、オリゴマー除去剤等が挙げられる。
前記染料の具体例としては、例えば、ベンゼンアゾ系(モノアゾ、ジスアゾ等)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、キノリンアゾ、ピリジンアゾ、イミダゾールアゾ、チオフェンアゾ等)、アントラキノン系、縮合系(キノフタリン、スチリル、クマリン等)の分散染料等が挙げられる。
また、前記染色助剤としては、たとえばナフタリンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
染色方法としては、染色温度が90〜150℃、好ましくは100〜140度で、pHが8.0〜10.0、好ましくは8.5〜9.0に調整されたアルカリ性の染色浴中で染色することが好ましい。
染料の吸尽量は特に限定されない。人工毛髪においては、黒髪のような濃色、褐色や赤毛等の中間色、金髪や灰色のような淡色等、目的に応じて調色する必要があるためである。従って、その吸尽量は、染色浴の濃度、温度、染色時間等の条件により適宜調整される。
さらに、本発明のポリエステル系繊維は、繊維処理剤で表面処理されていることが好ましい。
前記繊維処理剤の具体例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、両末端水酸基ジメチルポリシロキサン、ビニル基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、エステル基含有オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン含有オルガノポリシロキサン等のシリコーン系繊維処理剤、ポリエーテル系化合物、脂肪酸エステル系化合物、有機アミン系化合物、有機アミド系化合物、有機脂肪酸エステル類、有機アンモニウム塩、有機脂肪酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩、有機リン酸エステル塩等の非シリコーン系繊維処理剤等が挙げられる。
このようにして得られる、本発明のポリエステル系繊維の繊度は、通常、10〜100dtex、さらには20〜90dtexであることが人工毛髪に適している点から好ましい。
また、本発明のポリエステル系繊維の表面は以下のような表面状態であることが好ましい。
すなわち、繊維の表面状態としては、算術平均粗さ(Ra)が0.1〜0.3μmで十点平均粗さ(Rz)が0.3〜2.0μmの範囲、さらには、Raが0.10〜0.15μmでRzが0.6〜1.0μmの範囲であることが好ましい。前記範囲の場合には、光沢が充分に抑制されるとともに、触感及び櫛通りが優れた人工毛髪が得られる。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ヘアウィッグ、ツーペ、付け毛、ヘアバンド等の頭飾製品やドールヘア等に用いられる毛髪用繊維として好ましく用いられる。
前記頭飾製品を製造する方法としては、公知の方法が用いられ、例えば、ヘアウイッグを製造する方法としては以下の方法が挙げられる。
すなわち、はじめに、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維を束ねて形成される繊維束をウイッグ用ミシンで縫製して蓑毛を作る。次に、前記蓑毛をパイプに巻いてスチームセットすることによりカールを付与する。そして、カールのついた蓑毛をヘアキャップに縫いつけ、スタイルを整えることにより、ヘアウイッグが得られる。
なお、これらの頭飾製品等を作製する場合には、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維と、その他のポリエステル系繊維、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維等の人工毛髪用繊維、人毛や獣毛等を組み合わせて用いてもよい。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本実施例で用いたメラミン樹脂と酸化ケイ素との複合粒子の製造方法について説明する。
(製造例1〜8)
攪拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した3Lの反応フラスコに、表1に示す比率でメラミン、ホルマリン37質量%水溶液、水性シリカゾル(日産化学工業(株)製のスノーテックスN、SiO2濃度20.3質量%、pH9.5、平均粒子径12.0nm))、水を仕込み、25%アンモニア水にてpHを8.5に調整した。
攪拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した3Lの反応フラスコに、表1に示す比率でメラミン、ホルマリン37質量%水溶液、水性シリカゾル(日産化学工業(株)製のスノーテックスN、SiO2濃度20.3質量%、pH9.5、平均粒子径12.0nm))、水を仕込み、25%アンモニア水にてpHを8.5に調整した。
その後、上記混合物を攪拌しながら70℃にまで昇温し、そのまま70℃で30分間反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調整した。次に、温度を70℃に維持したまま、得られた初期縮合物の水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を添加して表1に記載のpHに調整した。約5〜20分後に反応系内が白濁してメラミン樹脂と酸化ケイ素との複合粒子の前駆体が析出した。
その後、温度を90℃まで昇温して3時間メラミンの硬化反応を続けた。そして、硬化反応終了後に冷却し、得られた反応液をろ過、乾燥することにより白色のメラミン樹脂と酸化ケイ素との複合粒子が得られた。
そして、前記複合粒子の平均粒子径をレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定した。また、前記メラミン樹脂と酸化ケイ素との複合粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、及びスライスして透過型電子顕微鏡―エネルギー分散型X線分析(TEM−EDX)にて観察したところ、前記粒子は球状で、かつ、コロイダルシリカが該粒子表面付近に偏在していることが確認された。
次に、本実施例で用いた各種粒子の特性を以下にまとめて示す。
また、その他の原材料を以下に示す。
(ポリエチレンテレフタレート)
・EFG−A (カネボウ合繊(株)製、固有粘度0.85)
・BK−2180 (三菱化学(株)製、固有粘度0.83)
・EFG−A (カネボウ合繊(株)製、固有粘度0.85)
・BK−2180 (三菱化学(株)製、固有粘度0.83)
(難燃剤)
・SR−T20000(阪本薬品工業(株)製の臭素化エポキシ樹脂系難燃剤)
・MエステルHP(三光(株)製の環状リン化合物系難燃剤)
・SR−T20000(阪本薬品工業(株)製の臭素化エポキシ樹脂系難燃剤)
・MエステルHP(三光(株)製の環状リン化合物系難燃剤)
(難燃助剤)
アンチモン酸ソーダ(日本精鉱(株)製)
アンチモン酸ソーダ(日本精鉱(株)製)
(表面処理剤)
・KWC−Q(丸菱油化工業(株)製のエチオキサイド−プロピレンオキサイドのランダム共重合ポリエーテル)
・KWC−B(丸菱油化工業(株)製のアミノ変性シリコーン)
・カチオン性界面活性剤(丸菱油化工業(株)製の加工剤 No.29)
・KWC−Q(丸菱油化工業(株)製のエチオキサイド−プロピレンオキサイドのランダム共重合ポリエーテル)
・KWC−B(丸菱油化工業(株)製のアミノ変性シリコーン)
・カチオン性界面活性剤(丸菱油化工業(株)製の加工剤 No.29)
(実験例)
表2に示された粒子を含有する表4〜表6の配合比率の配合物を、水分量100ppm以下に乾燥してドライブレンドした後、二軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX44)に供給し、バレル設定温度280℃で溶融混練し、吐出された組成物をペレット化した。
表2に示された粒子を含有する表4〜表6の配合比率の配合物を、水分量100ppm以下に乾燥してドライブレンドした後、二軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX44)に供給し、バレル設定温度280℃で溶融混練し、吐出された組成物をペレット化した。
次に、前記得られたペレットを水分量100ppm以下に乾燥した後、溶融紡糸機(シンコーマシナリー(株)製、SV30)により、バレル設定温度280℃で扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸に対し、85℃に加熱したヒートロールを用いて4倍に延伸し、200℃に加熱したヒートロールを用いて熱処理を行い、30m/分の速度で巻き取り、単繊維繊度が60dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
そして、得られた繊維を以下の方法により染色した。
〈染色方法〉
得られたポリエステル系繊維120gを束ねた直径約40cmの枷を、表3に示す染色レサイプの染色液で染料濃度が1質量%になるように処理した。
得られたポリエステル系繊維120gを束ねた直径約40cmの枷を、表3に示す染色レサイプの染色液で染料濃度が1質量%になるように処理した。
なお、染色は高圧染色機で、130℃、浴比1:20の染色液中に60分間浸漬し、次いで、表3に示す還元溶液及び還元条件で還元洗浄を行ない染色されたポリエステル系繊維を得た。
分散染料:ダイスター(株)製のダイアニックス ブラック SPN リキッド
分散剤:明成化学(株)製のディスパーTL
ノニオン系界面活性剤:第一工業(株)製のアミラジンD
分散剤:明成化学(株)製のディスパーTL
ノニオン系界面活性剤:第一工業(株)製のアミラジンD
そして、染色されたポリエステル系繊維の表面に繊維処理剤を表4〜6に記載の割合で付着させた後、熱風乾燥機を用いて120℃で10分間乾燥させた。
そして、得られたポリエステル系繊維を次の評価方法により評価した。
〈光沢感〉
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを専門美容師が太陽光のもとで目視により観察し、下記の基準で評価した。
優:対比して注意深く比較しても、人毛との差を認めることができない程度の光沢。
良:対比して注意深く比較した場合に、人毛よりも光沢が多い、または、少ないと判断できる光沢。
可:対比して通常の注意力で比較した場合に、人毛よりも光沢が多い、または、少ないと判断できる光沢。
劣:対比を要することなく、明らかに人毛よりも光沢が多すぎる、または、少なすぎると判断できる光沢。
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを専門美容師が太陽光のもとで目視により観察し、下記の基準で評価した。
優:対比して注意深く比較しても、人毛との差を認めることができない程度の光沢。
良:対比して注意深く比較した場合に、人毛よりも光沢が多い、または、少ないと判断できる光沢。
可:対比して通常の注意力で比較した場合に、人毛よりも光沢が多い、または、少ないと判断できる光沢。
劣:対比を要することなく、明らかに人毛よりも光沢が多すぎる、または、少なすぎると判断できる光沢。
〈発色性〉
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを専門美容師が太陽光のもとで目視により観察し、下記の基準で評価した。
優:曇りがなく、鮮やかな発色である。
良:やや曇りが認められるが、鮮やかな発色である。
可:曇りが明らかで、白ぼけた発色である。
劣:曇りが高く、白ぼけた発色である。
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを専門美容師が太陽光のもとで目視により観察し、下記の基準で評価した。
優:曇りがなく、鮮やかな発色である。
良:やや曇りが認められるが、鮮やかな発色である。
可:曇りが明らかで、白ぼけた発色である。
劣:曇りが高く、白ぼけた発色である。
〈触感〉
専門美容師による官能評価を行い、下記の基準で評価した。
優:人毛と同等の非常に柔らかな風合い
良:人毛に似た柔らかな風合い
可:人毛に比べやや硬い風合い
劣:人毛に比べ硬い風合い
専門美容師による官能評価を行い、下記の基準で評価した。
優:人毛と同等の非常に柔らかな風合い
良:人毛に似た柔らかな風合い
可:人毛に比べやや硬い風合い
劣:人毛に比べ硬い風合い
〈滑り触感〉
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを手で触り、フィラメント表面のベタツキ感、滑り触感を下記の基準で評価した。
優:ベタツキ感がなく、滑り触感が優れている
良:ベタツキ感が殆どなく、滑り触感がやや優れている
可:ベタツキ感またはキシミ感があり、滑り触感がやや不足
劣:ベタツキ感及びキシミ感があり、滑り触感に乏しい
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを手で触り、フィラメント表面のベタツキ感、滑り触感を下記の基準で評価した。
優:ベタツキ感がなく、滑り触感が優れている
良:ベタツキ感が殆どなく、滑り触感がやや優れている
可:ベタツキ感またはキシミ感があり、滑り触感がやや不足
劣:ベタツキ感及びキシミ感があり、滑り触感に乏しい
〈くし通り〉
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントの最上部を片手に持って垂直に垂らし、くし(NEW DELRIN COMB No.826)を0.3m/sの速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、くしの通り易さを下記の基準で評価した。
優:全く抵抗感がなく、非常に軽いくし通り
良:ほとんど抵抗感がなく、適度に軽いくし通り
可:若干抵抗感があり、やや重いくし通り
劣:かなり抵抗感があり、又は、タングル、フリッツがあり途中で引っかかる。
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントの最上部を片手に持って垂直に垂らし、くし(NEW DELRIN COMB No.826)を0.3m/sの速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、くしの通り易さを下記の基準で評価した。
優:全く抵抗感がなく、非常に軽いくし通り
良:ほとんど抵抗感がなく、適度に軽いくし通り
可:若干抵抗感があり、やや重いくし通り
劣:かなり抵抗感があり、又は、タングル、フリッツがあり途中で引っかかる。
〈スチームによる変色〉
長さ30cm、総繊度5万dtexの繊維束を、高圧滅菌装置(平山製作所(株)製)内に入れて密閉し、スチームを発生させて120℃に昇温した。120℃に到達してから1時間経過後に繊維束を取り出し、80℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。得られた繊維束を専門美容師が目視により観察し、変色の程度を処理前の繊維束と比較して下記の基準で評価した。
優:注意深く対比して比較しても、白化が確認できない
良:注意深く対比して比較することにより、白化したことが確認できる
可:対比して比較することにより、白化が確認できる
劣:対比して比較しなくとも、白化したことが明らかである
長さ30cm、総繊度5万dtexの繊維束を、高圧滅菌装置(平山製作所(株)製)内に入れて密閉し、スチームを発生させて120℃に昇温した。120℃に到達してから1時間経過後に繊維束を取り出し、80℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。得られた繊維束を専門美容師が目視により観察し、変色の程度を処理前の繊維束と比較して下記の基準で評価した。
優:注意深く対比して比較しても、白化が確認できない
良:注意深く対比して比較することにより、白化したことが確認できる
可:対比して比較することにより、白化が確認できる
劣:対比して比較しなくとも、白化したことが明らかである
〈アイロンセット性〉
ヘアアイロンによるカールセットのしやすさや、カール形状の保持性を評価した。
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを180℃に加熱したヘアアイロン(ロッド径:15mm)にかるく挟み、3回扱き予熱した。このときのフィラメント間の融着、フィラメントの縮れ・糸切れを目視で観察した。さらに、予熱したフィラメントをヘアアイロンに捲きつけ、10秒間保持し、アイロンを引き抜く。このときの抜きやすさ(ロッドアウト性)、抜いたときのカールの保持性を目視で観察した。そして、下記の基準で評価した。
優:融着,フィラメントの縮れ,糸切れが殆どなく、ロッドアウト性及びカールの保持性にも優れている。
劣:融着,フィラメントの縮れ,糸切れが観察されるか、ロッドアウト性及びカールの保持性が劣っている。
ヘアアイロンによるカールセットのしやすさや、カール形状の保持性を評価した。
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを180℃に加熱したヘアアイロン(ロッド径:15mm)にかるく挟み、3回扱き予熱した。このときのフィラメント間の融着、フィラメントの縮れ・糸切れを目視で観察した。さらに、予熱したフィラメントをヘアアイロンに捲きつけ、10秒間保持し、アイロンを引き抜く。このときの抜きやすさ(ロッドアウト性)、抜いたときのカールの保持性を目視で観察した。そして、下記の基準で評価した。
優:融着,フィラメントの縮れ,糸切れが殆どなく、ロッドアウト性及びカールの保持性にも優れている。
劣:融着,フィラメントの縮れ,糸切れが観察されるか、ロッドアウト性及びカールの保持性が劣っている。
〈スチームセット性〉
繊維束を蓑毛にし、これを直径60mmφのパイプに巻いて、120℃でスチームセットしてカールを付与した。そして、カールが付与された蓑毛をヘアキャップに縫い付けてショートボブスタイルのウィッグを作製し、専門美容師により、毛先カール保持性、カールの安定性、中間部のストレート性、スタイルの順応性を下記基準に従って評価した。
繊維束を蓑毛にし、これを直径60mmφのパイプに巻いて、120℃でスチームセットしてカールを付与した。そして、カールが付与された蓑毛をヘアキャップに縫い付けてショートボブスタイルのウィッグを作製し、専門美容師により、毛先カール保持性、カールの安定性、中間部のストレート性、スタイルの順応性を下記基準に従って評価した。
[毛先カール保持性]
スタイルに必要なカールを毛先に付与したときにその形状を維持し、また、霧吹きなどで水分を充分に吸収させた後、乾燥しても、その形状を維持しているときを優、そうでないときを劣とした。
スタイルに必要なカールを毛先に付与したときにその形状を維持し、また、霧吹きなどで水分を充分に吸収させた後、乾燥しても、その形状を維持しているときを優、そうでないときを劣とした。
[カールの安定性]
商品を実用的な範囲で振り、その際にスタイルが安定しているときを優、そうでないときを劣とした。
商品を実用的な範囲で振り、その際にスタイルが安定しているときを優、そうでないときを劣とした。
[中間部のストレート性]
スタイルに不要な中間部のカールの出現が抑えられているときを優、そうでないときを劣とした。
スタイルに不要な中間部のカールの出現が抑えられているときを優、そうでないときを劣とした。
[スタイルの順応性]
ヘアアイロンを用いて、フォワード巻き、フォワード縦巻き、リバース巻き、リバース・フォワード・フリップ(外はね)のスタイルセットをし、そのカール形状が安定な場合を優、不安定な場合を劣とした。
ヘアアイロンを用いて、フォワード巻き、フォワード縦巻き、リバース巻き、リバース・フォワード・フリップ(外はね)のスタイルセットをし、そのカール形状が安定な場合を優、不安定な場合を劣とした。
〈表面粗さ〉
繊維の表面粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK−9500)を用い、繊維側面を3000倍(対物レンズ150倍×内蔵レンズ20倍)の倍率で、繊維軸と平行に10本測定し得られた画像を、JIS B0601−1994表面粗さの定義に準じた計算式に基づき算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)を求めた。
繊維の表面粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK−9500)を用い、繊維側面を3000倍(対物レンズ150倍×内蔵レンズ20倍)の倍率で、繊維軸と平行に10本測定し得られた画像を、JIS B0601−1994表面粗さの定義に準じた計算式に基づき算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rz)を求めた。
〈難燃性〉
得られたフィラメントを150mmの長さに切断した。そして、前記フィラメントを0.7g分を束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに有効長120mmになるように固定して垂直に垂らした。前記固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎し、火炎を遠ざけた後の燃焼時間を測定し、以下の基準により判定した。
優:燃焼時間が1秒未満
良:1秒〜5秒未満
可:5秒〜8秒未満
劣:8秒以上
得られたフィラメントを150mmの長さに切断した。そして、前記フィラメントを0.7g分を束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに有効長120mmになるように固定して垂直に垂らした。前記固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎し、火炎を遠ざけた後の燃焼時間を測定し、以下の基準により判定した。
優:燃焼時間が1秒未満
良:1秒〜5秒未満
可:5秒〜8秒未満
劣:8秒以上
〈染料濃度〉
染料濃度は、得られた染め上がり延伸糸をオルソクロロフェノールに溶解させ、比色計(東京光電(株)製、ANA−18A+)により吸光度を測定して繊維中に吸尽された染料濃度を求めた。
染料濃度は、得られた染め上がり延伸糸をオルソクロロフェノールに溶解させ、比色計(東京光電(株)製、ANA−18A+)により吸光度を測定して繊維中に吸尽された染料濃度を求めた。
〈引張強度及び引張伸度〉
引張圧縮試験機(インテスコ社製、INTESCO Model201型)を用いて、フィラメントの引張強度及び引張伸度を測定した。長さ40mmのフィラメント1本をとり、フィラメントの両端10mmを、接着剤を糊付けした両面テープを貼り付けた台紙(薄紙)で挟み、一晩風乾させて、長さ20mmの試料を作製した。そして、前記試験機に試料を装着し、温度24℃、湿度80%以下、引張速度20mm/分で試験を行ない、破断時の引張強度及び伸度を測定した。なお、測定はN=10で行い、その平均値を求めた。
引張圧縮試験機(インテスコ社製、INTESCO Model201型)を用いて、フィラメントの引張強度及び引張伸度を測定した。長さ40mmのフィラメント1本をとり、フィラメントの両端10mmを、接着剤を糊付けした両面テープを貼り付けた台紙(薄紙)で挟み、一晩風乾させて、長さ20mmの試料を作製した。そして、前記試験機に試料を装着し、温度24℃、湿度80%以下、引張速度20mm/分で試験を行ない、破断時の引張強度及び伸度を測定した。なお、測定はN=10で行い、その平均値を求めた。
結果を以下に示す。
実験番号1−1〜1−5は1.56〜1.64の屈折率と2以下のアスペクト比とを有する、無機粒子又は無機有機樹脂複合粒子を1質量部含有する樹脂組成物から形成される本発明のポリエステル系繊維である。実験番号1−1〜1−5においては、光沢感又は発色性の何れかが優であることがわかる。
一方、1.47の屈折率を有する球状シリカを用いた実験番号1−6では、いずれも良であることがわかる。
また、実験番号1−7は実験番号1−1と同じ粒子を10質量部含有する樹脂組成物から形成されるポリエステル系繊維であり、光沢感は可であり、発色性が劣であった。
さらに、実験番号1−8はアスペクト比4のタルクを用いた例である。アスペクト比が高い無機粒子を含有する場合には、光沢感及び発色性も可であった。
実験番号2−1〜2−15は1.62〜1.64の屈折率を有し、アスペクト比1の無機有機樹脂複合粒子を含有する樹脂組成物から形成される本発明のポリエステル系繊維の例である。実験番号2−1〜2−15においても、光沢性又は発色性の何れかが優であることがわかる。
一方、実験番号2−16は実験番号2−3と同じ粒子をポリエステル樹脂100質量部に対して0.3質量部含有する樹脂組成物から形成されるポリエステル系繊維であり、光沢性及び発色性がともに良であった。
さらに、実験番号2−17は屈折率及びアスペクト比は本発明の粒子の範囲であるが、有機樹脂粒子を用いた例である。有機樹脂粒子を含有する樹脂組成物から形成されるポリエステル系繊維では、光沢性が可であり、発色性は劣であった。
実験番号3−1〜3−9は1.58〜1.64の屈折率を有し、アスペクト比1.2〜1.5の無機有機樹脂複合粒子をポリエステル樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部含有する樹脂組成物から形成される本発明のポリエステル系繊維の例である。実験番号3−1〜3−8においても、光沢感及び発色性の何れか一方が少なくとも優であることがわかる。
また、実験番号3−9は実験番号3−3と同じ粒子をポリエステル樹脂100質量部に対して5質量部含有する樹脂組成物から形成されるポリエステル系繊維であり、光沢感及び発色性がともに良であった。
一方、実験番号3−10は実験番号3−1と同じ粒子を7質量部含有する樹脂組成物から形成されるポリエステル系繊維であり、光沢感は良であったが発色性が可であった。
また、実験番号3−11は屈折率及びアスペクト比は本発明の粒子の範囲であるが、有機樹脂粒子を用いた例である。有機樹脂粒子を含有する樹脂組成物から形成されるポリエステル系繊維では、光沢性が可であり、発色性は劣であった。
さらに、実験番号3−12はアスペクト比3.7のシリカを用いた例である。アスペクト比が高いシリカを含有する場合には、光沢性が劣であり、発色性が可であった。
以上、説明したように、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、アルキレンテレフタレート単位を主構成単位とするポリエステル(A)100質量部に対し、1.5〜1.8の屈折率と2以下のアスペクト比とを有する、無機粒子及び無機有機樹脂複合粒子からなる群れから選ばれる少なくとも1種の微粒子(B)を0.1〜5質量部含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とするものである。そして、前記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、従来の光沢が抑制されたポリエステル繊維からなる人工毛髪に比べて、光沢抑制効果と着色時の発色性との両立性に優れた繊維である。
また、前記無機粒子が、リン酸カルシウム系化合物と炭酸カルシウムとの複合粒子である場合には、特に優れた発色性を示す人工毛髪が得られる点から好ましい。
また、前記リン酸カルシウム系化合物と炭酸カルシウムとの複合粒子が、炭酸カルシウム粒子表面にリン酸カルシウム系化合物が被着した炭酸カルシウム粒子である場合には、繊維中における分散性が特に優れている点から好ましい。
また、前記無機有機樹脂複合粒子が、酸化ケイ素と樹脂との複合粒子である場合には、特に光沢が抑制された人工毛髪が得られる点から好ましい。
また、前記酸化ケイ素と樹脂との複合粒子が酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子である場合には、特に光沢が抑制された人工毛髪が得られる点から好ましい。
また、前記酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子が表面近傍に酸化ケイ素が偏在した複合粒子である場合には、溶融混練時の前記粒子の分散性が優れているために繊維表面に適度な大きさの凸部を形成することができる。そのために、特に光沢の抑制効果に優れた人工毛髪が得られる。
また、前記表面近傍に酸化ケイ素が偏在した酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子中の酸化ケイ素の割合が1〜20質量%である場合には、溶融混練時の前記粒子の分散性が特に優れており、また、屈折率を低下させない点から、発色性を低下させない点から好ましい。
また、前記微粒子(B)の数平均粒子径が0.2〜10μmである場合には、光沢抑制効果と発色性とのバランスに優れている点から好ましい。
また、前記微粒子(B)がカップリング剤及び界面活性剤からなる群れから選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されたものである場合には、スチームセット時に樹脂成分と前記粒子との間に水分が侵入することを抑制して白化の発生を抑制する点から好ましい。
また、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維が臭素化エポキシ系難燃剤を含有する場合、発色性を大幅に低下させることなく、高い難燃性を示す点から好ましい。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、従来の光沢が抑制されたポリエステル繊維からなる人工毛髪に比べて、光沢抑制効果と着色時の発色性とのバランスに優れた人工毛髪用ポリエステル系繊維であり、人毛に近い光沢感と発色性とを有する。従って、ヘアウィッグ、ツーペ、付け毛、ヘアバンド等の頭飾製品として用いた場合に、人毛との違和感が認識されにくい、人毛繊維の代替として用いられる優れた人工毛髪用ポリエステル系繊維である。
Claims (10)
- 人工毛髪用ポリエステル系繊維であって、
前記人工毛髪用ポリエステル系繊維が、アルキレンテレフタレート単位を主構成単位とするポリエステル(A)100質量部に対し、1.5〜1.8の屈折率と2以下のアスペクト比とを有する、無機粒子及び無機有機樹脂複合粒子からなる群れから選ばれる少なくとも1種の微粒子(B)を0.1〜5質量部含有する樹脂組成物から形成されることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維。 - 前記無機粒子が、リン酸カルシウム系化合物と炭酸カルシウムとの複合粒子である請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記リン酸カルシウム系化合物と炭酸カルシウムとの複合粒子が、炭酸カルシウム粒子表面にリン酸カルシウム系化合物が被着した炭酸カルシウム粒子である請求項2に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記無機有機樹脂複合粒子が、酸化ケイ素と樹脂との複合粒子である請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記酸化ケイ素と樹脂との複合粒子が酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子である請求項4に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子が表面近傍に酸化ケイ素が偏在した複合粒子である請求項5に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記表面近傍に酸化ケイ素が偏在した酸化ケイ素とメラミン樹脂との複合粒子中の酸化ケイ素の割合が1〜20質量%である請求項6に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記微粒子(B)の数平均粒子径が0.2〜10μmである請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記微粒子(B)がカップリング剤及び界面活性剤からなる群れから選ばれる少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されたものである請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 臭素化エポキシ系難燃剤を含有する請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
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