JP4912713B2 - 人工毛髪およびそれからなる頭飾製品 - Google Patents

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Description

本発明は、人毛の代替品として使用できるポリエステル系繊維からなる人工毛髪に関し、詳しくは、ポリエステル系繊維からなる人工毛髪の欠点である光沢を抑制した、ウィービング、ウィッグ、ツーぺ、ヘアーエクステンションまたはヘアアクセサリー等の頭飾製品として好適に用いられる人工毛髪およびそれからなる頭飾製品に関するものである。
ヘアーウィッグ、ツーぺ、エクステンション、ヘアアクセサリー、ドールヘアー等に用いられる毛髪用繊維材料としては当初、人毛が用いられていたが、近年においては、人毛の入手が困難になったために、各種人工毛髪繊維材料(例えば、モダクリル繊維等のアクリル系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維等)への代替が進んでいる。
前記各種人工毛髪用繊維材料の中でも、ポリエステル系繊維を用いた人工毛髪用繊維材料は、アクリル系繊維やポリ塩化ビニル系繊維を用いた人工毛髪用繊維材料に比べて耐熱性が高いためアイロンセット性が良いとして好ましく用いられているが、ポリエステル系繊維を用いた人工毛髪は表面の光沢が強く、人毛と一緒に用いるような頭飾製品、特にヘアーウィッグやツーぺ等のかつら用途に用いた場合には人毛との光沢感の違いにより頭髪全体として違和感が生じるという問題があった。
前記光沢感を調整する方法としては、例えば、ポリエステル系人工毛髪用繊維に有機粒子や無機粒子を含有させたポリエステル系繊維を用いることにより、繊維の艶を調整する技術が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、前記特許文献1に記載の有機微粒子や無機微粒子を含有するポリエステル系繊維を用いても、人毛と同等の光沢レベルに抑制するのは困難であった。また、有機微粒子や無機微粒子の添加量を増やすことにより、光沢を抑制することが可能になるが、発色性(色相)の低下が生じ、人毛に近い外観を有するポリエステル系繊維を用いた人工毛髪は得られていなかった。
また、ポリフェニレンエーテルを含有するポリエステル系繊維として、有機リン化合物と併用し、有機リン化合物により難燃性を付与し、ポリフェニレンエーテルにより耐ドリップ性を向上させた、耐炎性に優れたポリエステル繊維に関する技術が開示されている(特許文献2)が、光沢の抑制効果に関しては記載も示唆もなかった。
特開2005−42234号公報 特開平10−219519号公報
本発明は、ポリエステル系繊維を用いた人工毛髪において、光沢を抑制することにより人毛により近い光沢感を有し、かつ、アイロンセット性、カール保持性、触感、くし通り性を維持したポリエステル系繊維を用いた人工毛髪およびそれからなる頭飾製品を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂を特定の割合で含有するポリエステル系繊維からなる人工毛髪であって、特定の粒子径で分散させることにより、ポリエステル系繊維の表面光沢を抑制するのに適した凹凸を形成し、人毛に近い光沢感を実現することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1の発明は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、ポリフェニレンエーテル系樹脂を0.5〜5質量部含有するポリエステル系繊維からなる人工毛髪であって、ポリエステル系繊維中に分散されたポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均粒子径が0.2〜5μmであることを特徴とする人工毛髪である。このような構成により、光沢感が十分に抑制された人工毛髪を得ることができる。
また、請求項2の発明は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテルおよびポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテルよりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の人工毛髪である。すなわち、ポリフェニレンエーテル系樹脂種の選択により、ポリエステル系繊維中に前記ポリフェニレンエーテル系樹脂がより良く分散し、光沢が抑制された人工毛髪を得ることができる。
また、請求項3の発明は、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の固有粘度が0.2〜0.8dl/gである請求項1または2に記載の人工毛髪である。前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の固有粘度が0.2〜0.8dl/gの場合には、さらに良好に光沢が抑制された人工毛髪を得ることができる。
また、請求項4の発明は、前記ポリエステル系人工毛髪が、染色されている請求項1〜3のいずれかに記載の人工毛髪である。
また、請求項5の発明は、前記ポリエステル系人工毛髪が、原着されている請求項1〜3のいずれかに記載の人工毛髪である。
また、請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工毛髪を加工して得られる頭飾製品である。このような頭飾製品は、人毛に近い外観と良好なセット性等の加工性を有しているものである。
また、請求項7の発明は、前記頭飾製品が、ウィービング、ウィッグ、ツーぺ、ヘアーエクステンションまたはヘアーアクセサリーである請求項6に記載の頭飾製品である。このような頭飾製品は、人毛と一緒に用いても人毛との光沢感の違いによる違和感がないものである。
本発明によると、耐熱性の高いポリエステル繊維を用いた人工毛髪のアイロンセット性、カール保持性、触感、くし通り性を維持しながら、人毛により近い光沢を有する人工毛髪を得ることができる。そして、このような人工毛髪を用いて得られる頭飾製品は、人毛と一緒に用いても違和感がないものであり、ヘアーウイッグやツーペ等の頭飾製品として好ましく用いられる。
本発明の人工毛髪は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、ポリフェニレンエーテル系樹脂を0.5〜5質量部含有するポリエステル系繊維からなる人工毛髪であって、人工毛髪中に分散された前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均粒子径が0.2〜5μmであることを特徴とするものである。
本発明におけるポリエステル系繊維は、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂の他、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、光安定剤、熱安定剤等を含有するポリエステル系樹脂組成物を溶融紡糸することにより得られるものである。
前記ポリエステル系樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレートおよび、ポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステル、並びにそれらと他の樹脂成分とをポリマーアロイ化して得られる樹脂成分によりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエステルが挙げられる。さらに具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、前記ポリアルキレンテレフタレートを主体として少量の共重合成分を含有する共重合ポリエステル、および前記ポリアルキレンテレフタレートとポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等とのポリマーアロイにより得られる樹脂成分が挙げられる。
なお、前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とするとは、ポリアルキレンテレフタレート単位からなる構成単位を80モル%以上含有し、共重合成分を20モル%以下含有することをいう。
前記共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸、それらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸およびそれらの誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
前記共重合ポリエステルは、通常、主体となるテレフタル酸および/またはその誘導体(例えば、テレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの重合体に少量の共重合成分を含有させて反応させることにより製造するのが、安定性、操作の簡便性の点から好ましいが、主体となるテレフタル酸および/またはその誘導体(例えば、テレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの混合物に、さらに少量の共重合成分であるモノマーまたはオリゴマー成分を含有させたものを重合させることにより製造してもよい。
前記共重合ポリエステルは、主体となるポリアルキレンテレフタレートの主鎖および/または側鎖に前記共重合成分が重縮合していればよく、共重合の仕方などには特別な限定はない。
前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどが挙げられる。
前記ポリアルキレンテレフタレート、その共重合ポリエステルおよび前記ポリマーアロイにより得られる樹脂成分は、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステル)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとのポリマーアロイ、ポリエチレンテレフタレートとポリアリレートとのポリマーアロイ、ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートとのポリマーアロイが、耐熱性、繊維物性の点から好ましい。
前記ポリエステル系樹脂の固有粘度としては、0.5〜1.4が好ましく、0.6〜1.2がより好ましい。ポリエステル系樹脂の固有粘度が0.5未満の場合、得られる繊維の機械的強度が低下する傾向があり、1.4を超えると、分子量の増大に伴い溶融粘度が高くなり、溶融紡糸が困難になったり、繊度が不均一になる傾向がある。
本発明の人工毛髪においては、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有することにより、光沢を適度に抑制することができる。
本発明に用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、単独重合体としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−イソプロプル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられ、これらの中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテルおよびポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。共重合体としては、フェニレンオキシド単位を主たる構成単位とするものであり、前記の単独重合体を形成する単量体(例えば、2,6−ジメチルフェノール)と他のフェノール類との共重合体、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体を挙げることができる。
本発明に用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂としては、ポリスチレン変性ポリフェニレンエーテルなどの変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることもできる。変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、フェニレンエーテルを繰り返し単位として含むポリフェニレンエーテルと、ポリスチレンあるいは、ポリブタジエンなどのゴム成分を5〜20質量%含む耐衝撃性ポリスチレンとが、40/60〜85/15の質量比でブレンドされたポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル、重合度60〜90のフェニルエーテル・オリゴマー100質量部に対して、スチレン系化合物を30〜180質量部グラフト重合させたグラフト共重合体を主成分とし、これにポリスチレンあるいは前記耐衝撃性ポリスチレンをブレンドしたグラフトタイプのポリスチレン変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、などが挙げられる。
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対し、0.5〜5質量部が好ましく、0.7〜4.5質量部がより好ましく、1〜4質量部がさらに好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が、0.5質量部未満では、光沢抑制効果が不十分となる傾向があり、5質量部を超えると、透明性が著しく低下して発色性が低下する傾向がある。
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリエステル系繊維中でほぼ楕円球状形状にて分散されており、他の粒子形状を有する酸化チタン、シリカ、タルク等に比べて、ポリエステル系樹脂との界面において親和性が良いため、界面剥離が起こり難く、発色性やスチームによる変色に関して優れている。
前記ポリエステル系繊維中に分散されたポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均粒子径(以下、「繊維中での分散粒子の数平均粒子径」と称する場合もある)は、0.2〜5μmが好ましく、0.3〜4.5μmがより好ましく、0.5〜4μmがさらに好ましい。数平均粒子径が0.2μm未満では、繊維表面の表面粗さが小さく、光沢抑制効果が低減する傾向があり、5μmを超えると、繊維表面のざらつき触感やくし通り性が低下する傾向がある。
本発明におけるポリエステル系繊維中に分散されたポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均粒子径は、以下の方法により算出した値である。すなわち、走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、S−3500N)を用い、倍率1万倍で、ポリエステル系繊維の断面に分散したポリフェニレンエーテル系樹脂の分散状態を撮影した。その際、断面観察のための試料は、液体窒素を用いて凍結割断して調整した。得られた電子顕微鏡観察写真に対して、画像解析装置(インタークエスト社製、PIAS III)を用い、分散粒子の形状を円形近似処理して算出した。
なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂の繊維中での数平均粒子径は、樹脂組成物を溶融混練する際のせん断力を調整することにより、制御することができる。
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の30℃クロロホルム中で測定した固有粘度は、0.2〜0.8dl/gが好ましく、0.25〜0.75dl/gがより好ましく、0.3〜0.7dl/gがさらに好ましい。前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の固有粘度が0.2dl/g未満では、ポリエステル系樹脂と溶融混練した場合に分散粒子径が細かくなり過ぎて、繊維表面の光沢抑制の効果が著しく低下する傾向があり、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の固有粘度が0.8dl/gを超えると、ポリエステル系樹脂と溶融混練した場合に分散が不良になり、繊維表面の光沢抑制効果が低減したり、繊維物性や加工安定性が低下する傾向がある。
前記ポリエステル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、難燃剤および難燃助剤、光安定剤や熱安定剤等の各種添加剤を含有してもよい。ポリエステル系繊維は、モダクリル繊維等のアクリル系繊維やポリ塩化ビニル繊維よりは難燃性が低いために、特に、難燃剤および難燃助剤を配合することが好ましい。
前記難燃剤としては、リン系難燃剤および臭素系難燃剤が好ましく用いられる。
前記リン系難燃剤の具体例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリネフチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのほか、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどが挙げられる。
また、前記縮合リン酸エステル系化合物、リン酸エステルアミド化合物または有機環状リン系化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル系化合物、下記一般式(2)で表されるリン酸エステルアミド化合物、下記一般式(3)および(4)で表される有機環状リン系化合物が挙げられる。
Figure 0004912713
(式中、R1は1価の芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。R2は2価の芳香族炭化水素基であり、2個以上含まれる場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい。nは0〜15を示す。)
Figure 0004912713
(式中、R3は水素原子、直鎖または分岐を有するアルキル基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよく、R4は2価の直鎖または分岐を有するアルキレン基、直鎖または分岐を有するヒドロキシアルキル基、シクロアルキレン基、主鎖中にエーテル酸素を有するアルキレン基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のアラルキル基を示し、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。)
Figure 0004912713
(式中、R5は水素原子、直鎖または分岐を有するアルキル基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよく、R6は水素原子、直鎖または分岐を有するアルキル基、直鎖または分岐を有するヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のアラルキル基を示す。)
Figure 0004912713
(式中、R7は水素原子、直鎖または分岐を有するアルキル基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよく、pは3〜100の整数を示す)
それらの具体例としては、
Figure 0004912713
Figure 0004912713
Figure 0004912713
などの式(5)〜(7)で表される縮合リン酸エステル系化合物、
Figure 0004912713
などの式(8)で表されるリン酸エステルアミド化合物、
Figure 0004912713
Figure 0004912713
Figure 0004912713
などの式(9)〜(11)で表される有機環状リン系化合物、
Figure 0004912713
Figure 0004912713
Figure 0004912713
Figure 0004912713
などの式(12)〜(15)で表される有機環状リン系化合物などが挙げられる。
また、前記臭素系難燃剤としては、特に限定はなく、一般に用いられている臭素系難燃剤であれば使用することができ、臭素含有リン酸エステル類、臭素化ポリスチレン類、臭素化ポリベンジルアクリレート類、臭素化エポキシオリゴマー類、臭素化フェノキシオリゴマー類、臭素化ポリカーボネートオリゴマー類、テトラブロモビスフェノールA誘導体、臭素含有トリアジン系化合物、臭素含有イソシアヌル酸系化合物などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記臭素系難燃剤の具体例としては、例えば、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの臭素含有リン酸エステル類、
Figure 0004912713
などの臭素化ポリスチレン類、
Figure 0004912713
などの臭素化ポリベンジルアクリレート類、
Figure 0004912713
などの臭素化エポキシオリゴマー類、臭素化フェノキシオリゴマー類、
Figure 0004912713
(式中、R8は水素原子、直鎖または分岐を有するアルキル基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)などの臭素化ポリカーボネートオリゴマー類、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)などのテトラブロモビスフェノールA誘導体、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンなどの臭素含有トリアジン系化合物、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素含有イソシアヌル酸系化合物などが挙げられる。
各種難燃剤の中では、臭素含有リン酸エステル系難燃剤、臭素化ポリスチレン系難燃剤、臭素化ベンジルアクリレート系難燃剤、臭素化エポキシ系難燃剤、臭素化フェノキシ系難燃剤、臭素化ポリカーボネート系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA誘導体、臭素含有トリアジン系化合物、臭素含有イソシアヌル酸系化合物が、耐熱性、繊維物性の低下が小さく、十分な難燃性が得られる点から好ましく用いられる。
前記難燃剤の配合割合としては、ポリエステル系樹脂100質量部に対し、5〜30質量部が好ましく、6〜25質量部がより好ましく、7〜20質量部がさらに好ましい。前記難燃剤の配合割合が5質量部未満の場合には、難燃効果が不十分になる傾向があり、30質量部を超える場合には、機械的特性、耐熱性、耐ドリップ性が損なわれる傾向がある。
前記難燃剤を配合することにより難燃性は発現されるが、さらに、難燃助剤を配合することにより、難燃効果が著しく向上し、十分な難燃性を得ることができる。
前記難燃助剤としては、特に限定はなく、一般に用いられているものであれば使用することができる。
前記難燃助剤の具体例としては、例えば、メラミンシアヌレート、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。混合物の紡糸加工性の点から、アンチモン酸ナトリウムが好ましい。
前記難燃助剤を使用する場合の使用割合としては、ポリエステル系樹脂100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6重量部以下0.5質量部以上がさらに好ましい。前記難燃助剤の使用割合が10質量部を超える場合には、加工安定性、外観性および透明性が損なわれる傾向がある。
前記光安定剤としては、特に限定はなく、一般に用いられているものであれば、使用することができるが、耐熱性に優れるものが特に好ましい。
前記光安定剤の具体例としては、例えば、2−(2h−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2h−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1、3、5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系光安定剤、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル}{2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ)]、ビス(1、2、2、6、6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等のヒンダードアミン系光安定剤、などが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、また、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中では、ベンゾトリアゾール系光安定剤およびヒンダードアミン系光安定剤が、耐熱性、耐揮発性の点からより好ましい。
前記光安定剤の配合量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対し、0.01〜3質量部が好ましく、0.05〜2.5質量部がより好ましく、0.1〜2質量部がさらに好ましい。光安定剤の配合量が0.01質量部未満の場合には、人工毛髪の耐光性が不充分となる傾向があり、3質量部を超える場合には、溶融粘度の低下により紡糸安定性が低下して糸切れが発生したり、機械的特性、耐熱性、難燃性、耐ドリップ性が損なわれる傾向がある。
前記耐熱安定剤は、特に限定はなく、一般に用いられているものであれば、使用することができる。
前記耐熱安定剤の具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)ブタン、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)ブタン等のヒンダードフェノール系耐熱安定剤、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−p−トリル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等のリン系耐熱安定剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンの反応生成物等のラクトン系耐熱安定剤、ジステアリルヒドロキシルアミンなどのアミン系耐熱安定剤、3,4−ジヒドロー2,5、7,8−テトラメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)−2H−ベンゾピラン−6−オール等のビタミンE系耐熱安定剤、ジドデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系耐熱安定剤などが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、また、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中では、ヒンダードフェノール系耐熱安定剤およびリン系耐熱安定剤が、溶融紡糸時のゲル発生抑制効果の点からより好ましい。
前記耐熱安定剤の配合量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対し、0.01〜3質量部が好ましく、0.05〜2.5質量部がより好ましく、0.1〜2質量部がさらに好ましい。前記耐熱安定剤の配合量が0.01質量部未満では、溶融紡糸時にゲルが発生し、糸切れが発生したり、繊維表面にゲル由来の突起が残るため触感が低下したりする傾向があり、3質量部を超えると、溶融粘度低下により紡糸安定性が低下して糸切れが発生したり、機械的特性、耐熱性、難燃性、耐ドリップ性が損なわれる傾向がある。
次に、本発明におけるポリエステル系繊維の製造方法について説明する。
本発明におけるポリエステル系繊維は、例えば、ポリエステル系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂、および必要に応じて用いられる難燃剤、難燃助剤、光安定剤、耐熱安定剤をドライブレンドした後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練して得られたポリエステル系組成物を、単軸押出機を用いて溶融紡糸して得ることができる。
樹脂組成物の製造に用いられる前記混練機の例としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどがあげられる。これらのうちでは、二軸押出機が、溶融混練の程度を制御しやすく、ポリフェニレンエーテル系樹脂の分散粒子径を制御し、光沢抑制効果を安定に得られる点から好ましい。
本発明におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の分散粒子径の制御は、例えば、二軸押出機の温度条件、スクリュー構成、スクリュー回転数、吐出量などを適宜選定することにより可能である。
これらのうちでも、溶融混練の程度の指標として、吐出量Q(単位:g/分)とスクリュー回転数R(単位:rpm)との関係を示す混練度(Q/R)が重要である。なお、混練度(Q/R)は小さい場合、十分に混練されていることを示し、大きい場合、混練が不十分であることを示す。本発明における溶融混練時の混練度としては、Q/R=0.3〜2.0が好ましく、Q/R=0.6〜1.7の範囲がより好ましく、Q/R=0.8〜1.5の範囲がさらに好ましい。
本発明における溶融混練にあたっては、水分の影響による溶融粘度低下や熱分解を極力抑制し、高い溶融粘度で混練ができるよう、条件を調整する必要がある。
二軸押出機を用いて溶融混練する場合の条件としては、例えば、スクリュー径45mmの二軸押出機を用いて、バレル温度を260〜300℃とし、吐出量30〜80kg/hr、スクリュー回転数40〜250rpmで溶融混練し、ダイスよりストランドを引取、水冷した後に、ストランドカッターを用いてペレット化することによりポリエステル系樹脂組成物が得られる。
本発明のポリエステル系繊維は、前記ポリエステル系樹脂組成物を通常の溶融紡糸法にて溶融紡糸することにより得ることができる。すなわち、例えば、押出機、ギアポンプ、口金などの温度を250〜310℃として溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸条が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度や長さ、冷却風の温度や吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間、引取速度は、吐出量および口金の孔数によって適宜調整することができる。
得られた紡糸糸状は、さらに、熱延伸されるが、延伸は未延伸糸を一旦巻き取ってから延伸する2工程法および巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。
熱延伸は、1段延伸法または2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
このようにして得られるポリエステル系繊維は、染色法または原着法によって着色される。
本発明における染色法で用いられる染料としては、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、黒色、黄色、赤色、褐色等の染料を任意に用いることができ、また、複数の染料を混合して調色して用いてもよい。
前記染料の具体例としては、例えば、ベンゼンアゾ系(モノアゾ、ジスアゾ等)、複素環アゾ系(チアゾ−ルアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、チオフェンアゾ等)、アントラキノン系、縮合系(キノフタリン、スチリル、クマリン等)の分散染料が挙げられる。
染色条件としては、染色温度90〜150℃、好ましくは、100〜140℃で行ない、適切なpHに調整することが好ましい。
染料は、主として分散染料を用いることが好ましく、染色助剤としては、分散剤、均染剤、オリゴマー除去剤などが使用されるが、特にそれらに限定されるものではない。染色に使用される顔料、染料、染色助剤等としては、耐光性および難燃性に優れたものが好ましい。
染色助剤としては、分散性と均染性を促進する薬剤である分散在、均染剤ならびに分散均染剤を配合することができる。かかる薬剤としては、例えば、ナフタリンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル塩等を使用することができる。かかる染色助剤は、好ましくは0.5〜2g/Lの範囲で使用される。
また、pH調整剤としては、例えば、酢酸/酢酸ナトリウム、酢酸/ピロリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムまたは有機リン化合物とポリカルボン酸との組合せ等を使用することができる。かかるpH調整剤は、好ましくは0.5〜2g/Lの範囲で使用される。
染料は、ポリエステル系繊維中に0.1質量%以上吸尽されるのが好ましいが、人工毛髪においては、黒髪のような濃色から、褐色や赤毛のような中間色、金髪や白髪(グレー)のような淡色までの色のバリエーションが多いため、各色に合わせ、適宜調整する必要があり、その吸尽量は、染色浴の濃度、染色温度、時間によって調整することができる。
本発明における原着法で用いられる顔料としては、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、有機系、無機系の黒色、黄色、赤色、褐色等の顔料を任意に用いることができ、また、複数の染料を混合して調色して用いてもよい。
原着法による着色は、ポリエステル系樹脂とセルロース化合物、その他の添加剤を溶融混練するときに、顔料原体、分散剤等により加工された加工顔料またはポリエステル系樹脂中に予め分散されたマスターペレット顔料を配合し、溶融混練することにより実施することができる。
原着に使用される顔料としては、耐光性および難燃性に優れたものが好ましい。
このようにして着色されたポリエステル系繊維は、さらに後処理されて、人工毛髪に加工される。
前期後処理としては、例えば、触感やくし通りを向上させるためのシリコーン系繊維処理剤による表面処理や、非シリコーン系繊維処理剤による表面処理等が挙げられる。
前期シリコーン系繊維処理剤の具体例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポチシロキサン、両末端水酸基ジメチルポリシロキサン、ビニル基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、エステル基含有オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン含有オルガノポリシロキサン等が挙げられ、前期非シリコーン系繊維処理剤の具体例としては、例えば、ポリエーテル系化合物、脂肪族エステル系化合物、有機アミン系化合物、有機アミド系化合物、有機アンモニウム塩、有機脂肪酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩、有機リン酸エステル塩等が挙げられる。
このようにして得られる本発明の人工毛髪の繊度は、通常、10〜100dtex、さらには20〜90dtexであるのが人工毛髪に適している点から好ましい。
本発明の人工毛髪は、ポリエステル系繊維からなるために美容熱器具を用いたカールセット性に優れ、カールの保持性にも優れるものであり、かつ、本発明における前期セルロース化合物により形成される繊維表面の凹凸により、光沢が適度に抑制されたものである。
本発明の人工毛髪には、具体的には、ヘアーウィッグ、ツーペ、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレード、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等の頭飾製品への加工に好適であり、人毛により近い外観(光沢、色相)と柔らかい触感を有しており、また、カール特性にも優れている。
なお、ヘアーウィッグとは、婦人用、紳士用を問わず、頭部に面で取り付けられる、主におしゃれを楽しむための装飾品であり、その装着面によって部分ウィッグ、ハーフウィッグ、七分ウィッグ、フルウィッグに分けられる。
一方、ツーペとは、主に紳士用として使用される部分または頭部全体につけるかつらの総称であり、擬似頭皮に人工毛髪を植毛して作製される頭飾製品である。
本発明の人工毛髪を用いて、これらの頭飾製品を加工する方法は、公知の製法で行える。例えば、ヘアーウィッグを作る場合には、該繊維束ウィッグ用ミシンで縫製して蓑毛を作り、これをパイプに巻いてスチームセットにてカールを付与し、カールの付いた蓑毛をヘアキャップに縫い付け、スタイルを整えることにより作製できる。
また、これらの頭飾製品を作製する場合に、本発明の人工毛髪と、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維など、他の人工毛髪素材と併用してもよいし、人毛や獣毛等と併用してもよい。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例および比較例において使用した原料は、以下のとおりである。
ポリエステル系樹脂:
・ポリエチレンテレフタレート、三菱化学(株)製、BK−2180、IV=0.85
ポリフェニレンエーテル系樹脂:
・ポリフェニレンエーテル、旭化成ケミカルズ(株)製、PPEパウダー、IV=0.53dl/g
・変性ポリフェニレンエーテル、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユピエースAH−90
・変性ポリフェニレンエーテル、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ユピエースPX−100L、IV=0.37dl/g
リン系難燃剤:
・環状リン化合物系難燃剤、三光(株)製、MエステルHP
臭素系難燃剤:
・臭素化エポキシ系難燃剤、阪本薬品工業(株)製、SR−T20000
難燃助剤:
・アンチモン酸ナトリウム、日本精鉱(株)製、SA−A(数平均粒子径2.0μm)
酸化チタン:
・石原産業(株)、CR−60(数平均粒子径0.2μm)
シリカ:
・UNIMIN社製、イムシルA−8(数平均粒子径2〜3μm)
タルク:
・富士タルク(株)製、PKP−53(数平均粒子径15μm)
架橋アクリル粒子:
・綜研化学(株)MR−2HG(数平均粒子径2μm)
分散染料:
・ダイスター(株)製、ダイアニックス ブラック SPN リキッド
分散剤:
・明成化学(株)製、ディスパーTL
ノニオン系界面活性剤:
・第一工業(株)製、アミラジンD
次に、本発明の実施例および比較例で用いた評価方法を、以下にまとめて示す。
(SEMによる繊維中に分散されたポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均粒子径)
ポリエステル系繊維中に分散されたポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均粒子径(繊維中での分散粒子の数平均粒子径)は、以下の方法により算出した。すなわち、走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、S−3500N)を用い、倍率1万倍にてポリエステル系繊維の断面に分散したポリフェニレンエーテル系樹脂の分散状態を撮影した。断面観察のための試料は、液体窒素を用いて凍結割断して調整した。数平均粒子径は、得られた電子顕微鏡観察写真に対して、画像解析装置(インタークエスト社製、PIAS III)を用いて、ポリフェニレンエーテル系樹脂の分散粒子の形状を円形近似処理して算出した。また、他の微粒子の分散粒子径も、同様の方法により算出した。
(強度および伸度)
引張圧縮試験機(インテスコ社製、INTESCO Model201型)を用いて、フィラメントの引張強伸度を測定した。長さ40mmのフィラメント1本をとり、フィラメントの両端10mmを、接着剤を糊付けした両面テープを貼り付けた台紙(薄紙)で挟み、一晩風乾させて、長さ20mmの試料を作製した。そして、前期試験機に試料を装着し、温度24℃、湿度80%以下、荷重1/30gF×繊度(デニール)、引張速度20mm/分で試験を行ない、破断時の引張強度および伸度を測定した。なお、測定はN=10で行い、その平均値を求めた。
(光沢)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを太陽光のもと、専門美容師の目視により、以下の基準で評価した。
◎:対比して注意深く比較しても、人毛との差を認めることができない程度の光沢
○:対比して注意深く比較した場合に、人毛よりも光沢が多い、または、少ないと
判断できる光沢
△:対比して通常の注意力で比較した場合に、人毛よりも光沢が多い、または、少な いと判断できる光沢
×:対比を要することなく、明らかに人毛よりも光沢が多すぎる、または、少なすぎ ると判断できる光沢。
(発色性)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを太陽光のもと、目視により、以下の基準で評価した。
○:透明感があり、色の深み(鮮やかさ)がある
△:若干不透明感(曇り)がある
×:不透明感があり、色の深みがない。
(難燃性)
得られたフィラメントを150mmの長さに切り、0.7gを束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに固定して垂直に垂らした。そして、有効長120mmの固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎し、火炎を遠ざけた後の燃焼時間を測定し、難燃性の評価とした。
◎:燃焼時間が1秒未満
○:1秒〜5秒未満
△:5秒〜8秒未満
×:8秒以上。
(スチームによる変色)
長さ30cm、総繊度5万dtexの繊維束を、高圧滅菌装置(平山製作所(株)製)内に入れて密閉し、スチームを発生させて120℃に昇温した。120℃に到達してから1時間経過後に繊維束を取り出し、80℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、専門美容師の目視により、変色の程度を処理前の繊維束と比較して以下の基準により評価した。
◎:注意深く対比して比較しても白化が確認できない
○:注意深く対比して比較することにより白化したことが確認できる
△:対比して比較することにより白化が確認できる
×:対比して比較しなくとも白化したことが明らかである。
(触感)
専門美容師による官能評価を行い、4段階で評価した。
◎:人毛と同等の非常に柔らかい触感
○:人毛に似た柔らかい触感
△:人毛に比べやや硬い触感
×:人毛に比べ硬い触感。
(くし通り)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントに繊維表面処理剤を付着させる。処理されたトウフィラメントにくし(デルリン樹脂製)を通し、くしの通り易さを評価した。
◎:全く抵抗ない(非常に軽い)
○:ほとんど抵抗ない(軽い)
△:若干抵抗がある(重い)
×:かなり抵抗がある、または、途中で引っかかる。
(アイロンセット性)
ヘアーアイロンによるカールセットのしやすさや、カール形状の保持性の指標である。長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを180℃に加熱したヘアーアイロン(ロッド径:15mm)にかるく挟み、3回扱き予熱する。このときのフィラメント間の融着、フィラメントの縮れ、糸切れを目視評価する。次に、予熱したフィラメントをヘアーアイロンに捲きつけ、10秒間保持し、アイロンを引き抜く。このときの抜きやすさ(ロッドアウト性)、抜いたときのカールの保持性を目視評価する。
−融着−
◎:融着なし
○:3ヶ所以下の手でほぐせる程度の融着がある
△:4〜7ヶ所以下の手でほぐせる程度の融着がある
×:8ヶ所以上の手でほぐせる程度の融着、または、手でほぐせない融着がある
−縮れ/糸切れ−
◎:縮れ、または、糸切れなし
○:3ヶ所以下の縮れがある
△:3ヶ所以下の糸切れがある
×:4ヶ所以上の縮れ、または、糸切れがある
−ロッドアウト−
◎:アイロンロッドが抵抗なく抜ける
○:わずかに抵抗がある
△:抵抗がある
×:抵抗があり、抜け難い
−セット性−
◎:セットが付きやすく、カール形状が円形で安定している
○:セットは付きやすいが、若干カール形状が楕円形に崩れる
△:カール形状が崩れる、または、カールが伸びる
×:セットが付き難い。
(実施例1〜11)
表1に示す配合比率の原料を、水分量100ppm以下になるように乾燥し、ドライブレンドした後、二軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEX44)に供給し、バレル設定温度280℃で溶融混練し、ペレット化してポリエステル系樹脂組成物を得た。
なお、前記溶融混練においては、混練度Q/R値を調整することにより、ポリフェニレンエーテル系樹脂の分散粒子径を制御した。
Figure 0004912713
そして、得られたペレットを水分量100ppm以下になるように乾燥した後、溶融紡糸機(シンコーマシナリー(株)製、SV30)に供給して、バレル設定温度280℃で扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸に対し、85℃に加熱したヒートロールを用いて4倍に延伸し、200℃に加熱したヒートロールを用いて熱処理を行い、30m/分の速度で巻き取り、単繊維繊度が60dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
得られたポリエステル系繊維120gを用い、直径約40cmの枷を、表2に示す染料レサイプにより作製した染料液を用いて、高圧染色機で130℃にて浴比1:20の該処理液中に60分間浸漬し、それぞれの染料濃度が1質量%になるように処理した。次いで、表2に示す還元溶液を用い還元条件にて還元洗浄を行なって染色されたフィラメントを得た。
Figure 0004912713
そして、染色されたポリエステル系繊維に対し、繊維処理剤として、KWC−Q(エチオキサイド−プロピレンオキサイドのランダム共重合ポリエーテル;丸菱油化工業(株)製)/KWC−B(アミノ変性シリコーン;丸菱油化工業(株)製)/加工剤29(カチオン性界面活性剤;丸菱油化工業(株)製)=0.10/0.20/0.05%omfを塗布し、熱風乾燥機を用いて120℃にて10分間乾燥させた。
これらの繊維を用いて、上記評価方法により、人工毛髪中のセルロースエステル化合物の数平均粒子径、繊度、強度、伸度、光沢、発色性、染料濃度、難燃性、スチームによる変色、触感、くし通り、アイロンセット性、さらに、これらの繊維を蓑毛にし、これを直径60mmφのパイプに巻いて、120℃でスチームセットしてカールを付与し、カールの付いた蓑毛をヘアキャップに縫付けてショートボブスタイルのウィッグを作製し、美容特性を評価した。結果を、表3に示す。
Figure 0004912713
(比較例1〜10)
表4に示す配合比率の原料を、実施例と同様にして、単繊維繊度が60dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を作製し、評価した。結果を、表5に示す。
Figure 0004912713
Figure 0004912713
表3の結果から、本発明の実施例1〜11においては、全て光沢が◎または○であり、触感、くし通りが◎または○であることから、光沢と触感、くし通りを兼ね備えた人工毛髪が得られているのに対し、表5に示された比較例1〜10においては、光沢、触感、くし通りのいずれかが△または×と評価され、光沢と触感、くし通りを兼ね備えたものが得られなかった。

Claims (7)

  1. ポリエステル系樹脂100質量部に対し、ポリフェニレンエーテル系樹脂を0.5〜5質量部含有するポリエステル系繊維からなる人工毛髪であって、ポリエステル系繊維中に分散されたポリフェニレンエーテル系樹脂の数平均粒子径が0.2〜5μmであることを特徴とする人工毛髪。
  2. 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテルおよびポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテルよりなる群から選ばれたすくなくとも1種である、請求項1に記載の人工毛髪。
  3. 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の固有粘度が0.2〜0.8dl/gである、請求項1または2に記載の人工毛髪。
  4. 前記ポリエステル系人工毛髪が、染色されている、請求項1〜3のいずれかに記載の人工毛髪。
  5. 前記ポリエステル系人工毛髪が、原着されている、請求項1〜3のいずれかに記載の人工毛髪。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工毛髪を加工して得られる頭飾製品。
  7. 前記頭飾製品が、ウィービング、ウィッグ、ツーぺ、ヘアーエクステンションまたはヘアアクセサリーである、請求項6に記載の頭飾製品。
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