JP2015094050A - 人工毛髪用ポリエステル系繊維及びそれを含む頭飾製品 - Google Patents

人工毛髪用ポリエステル系繊維及びそれを含む頭飾製品 Download PDF

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智一 樋上
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Abstract

【課題】光沢を人毛に近似させつつ、触感と櫛通り性も良くした人工毛髪用ポリエステル系繊維及びそれを含む頭飾製品を提供する。【解決手段】本発明は、ポリエステル樹脂100重量部に対して臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含み、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有し、繊維表面には、粘度が1万〜5000万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤が繊維重量に対して0.04〜0.45重量%と、帯電防止剤が繊維重量に対して0.03〜0.3重量%付着している人工毛髪用ポリエステル系繊維及びそれを含む頭飾製品に関する。【選択図】図1

Description

本発明は、人毛の代替品として使用できる人工毛髪用ポリエステル系繊維に関し、詳細には、光沢を人毛に近似させつつ、触感と櫛通り性も良くした人工毛髪用ポリエステル系繊維及びそれを含む頭飾製品に関する。
従来、ヘアーウィッグ、かつら、ヘアーエクステンション、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等の頭飾製品に用いられる毛髪用繊維材料としては、人毛が用いられていた。近年においては、人毛の入手が困難になったため、人毛から各種人工毛髪用繊維、例えば、モダクリル繊維等のアクリル系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維等への代替が進んでいる。ポリエステル系繊維等の人工毛髪用繊維は、その繊維表面の光沢が強く、頭飾製品、特にヘアーウィッグ、かつら等の人毛に取り付けるような頭飾製品に用いた場合、人毛との光沢の違いにより頭髪全体として違和感があるという問題があった。
そこで、特許文献1では、光沢を調整する方法として、人工毛髪用ポリエステル系繊維に有機粒子や無機粒子を含有させることにより繊維の艶を調整する技術が提案されている。これは、微粒子により、繊維表面に突起を形成する技術である。
特開2005−42234号公報
従来の技術において、有機粒子や無機粒子の添加によって、人毛とはかけ離れた触感のがさつきが生じてしまい、人毛に近似した光沢と触感を有する人工毛髪用ポリエステル系繊維を得るのは困難であった。また、従来の技術において、有機粒子や無機粒子の添加によって、櫛通り性も悪くなる傾向があった。
本発明は、上記従来の問題を解決し、光沢を人毛に近似させつつ、触感と櫛通り性も良くした人工毛髪用ポリエステル系繊維及びそれを含む頭飾製品を提供する。
本発明は、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維であって、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂100重量部に対して臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含み、上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルであり、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、上記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有し、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維表面には、粘度が1万〜5000万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤が繊維重量に対して0.04〜0.45重量%と、帯電防止剤が繊維重量に対して0.03〜0.3重量%付着していることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維に関する。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm2あたりに、針状比が2〜20且つ対角幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個以上有することが好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、表面粗さRaが0.07〜0.2μmであることが好ましい。上記帯電防止剤は、カチオン系帯電防止剤及び/又はポリエーテル系帯電防止剤であることが好ましい。上記ジメチルシリコーン系油剤は、粘度が10万〜100万mm2/sであることが好ましい。
本発明は、また、上記の人工毛髪用ポリエステル系繊維を含むことを特徴とする頭飾製品に関する。
上記頭飾製品は、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーからなる群から選ばれるいずれかの一種であってもよい。
本発明は、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行方向の断面において、ポリエステル樹脂中に臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体が島状に分散するようにし、繊維表面に、粘度が1万〜5000万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤を繊維重量に対して0.04〜0.45重量%と、帯電防止剤を繊維重量に対して0.03〜0.3重量%付着させることにより、光沢を人毛に近似させつつ、触感と櫛通り性も良くした人工毛髪用ポリエステル系繊維及びそれを含む頭飾製品を提供することができる。
図1は、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行方向の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅と最大長を模式的に示した図である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行方向の断面において、ポリエステル樹脂中に島状に分散するように臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を形成することで、人工毛髪用ポリエステル系繊維の表面に凹凸が形成され、人毛に近似した柔らかい触感を付与しつつ、光沢を抑制して人毛に近い光沢を実現できることを見出した。さらに、該ポリエステル系繊維において、繊維表面に、粘度が1万〜5000万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤を繊維重量に対して0.04〜0.45重量%と、帯電防止剤を繊維重量に対して0.03〜0.3重量%付着させることにより、櫛通り性が向上することを見出し、本発明に至った。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂及び臭素化エポキシ系難燃剤を含むポリエステル樹脂組成物で構成されている。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有する。これにより、ポリエステル系繊維の表面に適度に凹凸を形成することができ、柔らかい触感を付与しつつ、光沢を人毛に近似させることができる。繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm2あたりに、針状比が2〜20且つ対角幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個以上有することが好ましい。より好ましくは、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm2あたりに、針状比が2.5〜100/7且つ対角幅が0.07μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を40個以上有し、さらに好ましくは、360μm2あたりに、針状比が20/7〜100/9且つ対角幅が0.09μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を10個以上有する。
本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅とは、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の繊維軸方向に対して垂直方向における最大長さをいう。また、本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の最大長とは、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の繊維軸方向に対して平行方向における最大長さをいう。また、本発明において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の針状比とは、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の最大長と対角幅の比をいう。以下、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行方向の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅と最大長を模式的に示した図1に基づいて具体的に説明する。図1に示しているように、繊維軸方向Dに対して平行方向の断面100において、ポリエステル樹脂10中に臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20が島状に分散している。繊維軸方向Dに対して平行方向の断面100において、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20の繊維軸方向Dに対して垂直方向における最大長さWが対角幅であり、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20の繊維軸方向Dに対して平行方向における最大長さLが最大長である。そして、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体20の針状比は、最大長(L)/対角幅(W)で示される。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体は、繊維軸方向に対して平行方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等で観察することで確認することができる。また、本発明において、繊維軸方向に対して平行方向の断面のSEM写真を用いて、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の針状比、対角幅及び一定面積あたりの個数を測定することができる。本発明において、繊維軸方向に対して平行方向の断面の作製は、例えば、クロスセクションポリッシャー(CP)装置を使用した断面作製(イオンミリング加工)により行うことができる。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察することができる。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。
上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルである。上記ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートを主体とし、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステル等が挙げられる。本発明において、「主体」とは、50モル%以上含有される成分のことを意味し、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを50モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。好ましくは、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有する。
上記他の共重合成分としては、例えばイソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチル等のスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びそれらの誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル等が挙げられる。
上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルからなる群から選ばれる一種の化合物を共重合したポリエステル等が挙げられる。
上記ポリアルキレンテレフタレート及び上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、イソフタル酸を共重合したポリエステル、及びポリエチレンテレフタレートを主体とし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステル等を単独又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含む。臭素化エポキシ系難燃剤の含有量が上記範囲内の場合には、臭素化エポキシ系難燃剤がポリエステル樹脂中に島状に分散した凝集体を形成し、触感や光沢調整効果に優れる。臭素化エポキシ系難燃剤の含有量の下限値は、ポリエステル樹脂100重量部に対して10重量部以上であることが好ましく、より好ましくは15重量部以上である。また、臭素化エポキシ系難燃剤の含有量の上限値は、ポリエステル樹脂100重量部に対して30重量部以下であることが好ましく、25重量部以下であることがより好ましい。
上記臭素化エポキシ系難燃剤は、原料としては分子末端にエポキシ基を有する臭素化エポキシ系難燃剤を用いることができるが、臭素化エポキシ系難燃剤の溶融混練後や溶融紡糸後(繊維中)の構造は、特に限定されず、下記化学式(1)に示す構成ユニットと下記化学式(1)の少なくとも一部が改変した構成ユニットの総数を100モル%とした場合、80モル%以上が化学式(1)で示す構成ユニットであればよい。上記臭素化エポキシ系難燃剤は、溶融混練後に、構造が分子末端で変化してもよい。例えば、上記臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端がエポキシ基以外の水酸基、リン酸、ホスホン酸等に置換されていてもよく、分子末端がポリエステル成分とエステル基で結合していてもよい。また、臭素化エポキシ系難燃剤の分子末端以外の構造の一部が変化してもよい。例えば、臭素化エポキシ系難燃剤の二級水酸基とエポキシ基が結合して分岐構造となっていてもよく、臭素化エポキシ系難燃剤分子中の臭素含有量が大きく変化しなければ、下記化学式(1)の臭素の一部が脱離又は付加されてもよい。
Figure 2015094050
上記臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、下記一般式(2)に表されている臭素化エポキシ系難燃剤が好ましく用いられる。下記一般式(2)に表されているような臭素化エポキシ系難燃剤としては、例えば、阪本薬品工業株式会社製の臭素化エポキシ系難燃剤(商品名「SR−T2MP」)等の市販品を用いてもよい。
Figure 2015094050
但し、上記一般式(2)において、mは1〜1000である。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維において、上記臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体は、特に限定されないが、臭素化エポキシ系難燃剤同士の反応を促進する触媒として機能する化合物によって臭素化エポキシ系難燃剤を凝集させて形成することが好ましい。好ましくは、酸化アンチモンやpHが3.5以下の酸性リン系化合物などの臭素化エポキシ系難燃剤同士の反応を促進する触媒と臭素化エポキシ系難燃剤を併用することにより、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を形成することができる。難燃性の観点から、酸化アンチモンと臭素化エポキシ系難燃剤を併用することにより、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を形成することがより好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、酸化アンチモンを1.5重量部以上7重量部未満含むことが好ましい。上記酸化アンチモンの含有量が上記範囲内の場合、酸化アンチモンが臭素化エポキシ系難燃剤同士の反応の触媒として作用しやすく、臭素化エポキシ系難燃剤がポリエステル樹脂中に島状に分散して適切な大きさと個数の凝集体を形成しやすい。光沢調整効果に優れるという観点から、上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、酸化アンチモンを1.5〜5重量部含むことがより好ましく、1.5〜4重量部含むことがさらに好ましく、1.5〜3重量部含むことがさらにより好ましい。
上記酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維において、上記臭素化エポキシ系難燃剤及び酸化アンチモンは、光沢を調整する効果を発揮する。なお、上記臭素化エポキシ系難燃剤及び酸化アンチモンは、光沢調整効果に加えて、それぞれ、難燃剤及び難燃助剤としての機能を発揮してもよい。また、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、臭素化エポキシ系難燃剤以外の他の難燃剤、酸化アンチモン以外の他の難燃助剤を含んでもよい。
他の難燃助剤としては、アンチモン酸金属塩が挙げられる。上記アンチモン酸金属塩としては、特に限定されないが、例えば、アンチモン酸ナトリウム(アンチモン酸ソーダ)、アンチモン酸カリウム等を用いることができる。他の難燃剤としては、例えば、リン含有難燃剤、臭素化エポキシ系難燃剤以外の他の臭素含有難燃剤を用いることができる。上記リン含有難燃剤としては、例えば、リン酸エステルアミド化合物、有機環状リン系化合物等が挙げられる。上記他の臭素含有難燃剤としては、例えば、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等の臭素含有リン酸エステル類、臭素化ポリスチレン類、臭素化ポリベンジルアクリレート類、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリカーボネートオリゴマー類、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(ヒドロキシエチルエーテル)等のテトラブロモビスフェノールA誘導体、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン等の臭素含有トリアジン系化合物、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の臭素含有イソシアヌル酸系化合物等が挙げられる。中でも、リン酸エステルアミド化合物、有機環状リン系化合物、臭素化フェノキシ樹脂系難燃剤が難燃性に優れている点で好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維表面には、粘度が1万〜5000万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤と帯電防止剤が付着している。本発明において、ジメチルシリコーン系油剤の粘度は、ASTM D 445−46Tによるウッベローデ粘度計により、25℃の動粘度(mm2/s)を測定したものである。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維において、上記ジメチルシリコーン系油剤の付着量は、繊維重量に対して0.04〜0.45重量%であり、上記帯電防止剤の付着量は、繊維重量に対して0.03〜0.3重量%である。これにより、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、櫛通り性が向上する。上記ジメチルシリコーン系油剤の粘度が1万mm2/s以上であると、繊維表面が滑りやすくて櫛通り性が良好になる上、キシミも少なく触感が良好になる。上記ジメチルシリコーン系油剤の粘度が5000万mm2/s以下であると、繊維表面が滑りやすくて櫛通り性が良好になる上、ベタツキも少なく触感が良好になる。上記ジメチルシリコーン系油剤は、粘度が10万〜100万mm2/sであることが好ましい。繊維表面が滑りやすくて櫛通り性が良好になる上、キシミもベタツキもなく優れた触感になる。通常、ポリエステル系繊維は、粘度が10万mm2/s未満の油剤で処理した方が、櫛通り性や触感が向上するが、驚くことに、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、粘度が10万mm2/s以上のジメチルシリコーン系油剤を付着させた場合、櫛通り性と触感がより向上する、これは、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維が、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有することに起因すると推測される。上記ジメチルシリコーン系油剤の付着量が繊維重量に対して0.04重量%以上であると、繊維表面が滑りやすくて櫛通り性が良好になる。上記ジメチルシリコーン系油剤の付着量が繊維重量に対して0.45重量%以下であると、櫛通り性が良好になる上、ベタツキが少なく触感が良好になり、光沢も高くならず人毛の光沢に近似しやすい。上記帯電防止剤の付着量が繊維重量に対して0.03重量%以上であると、静電気による絡みが生じることなく、櫛通り性が良好になる。上記帯電防止剤の付着量が繊維重量に対して0.3重量%以下であると、静電気が発生して繊維が絡みやすくなったり、櫛通り性が大きく低下したりすることがない。
上記ジメチルシリコーン系油剤の付着量の上限は、繊維重量に対して、好ましくは0.4重量%以下であり、より好ましくは0.35重量%以下であり、さらに好ましくは0.25重量%以下である。上記ジメチルシリコーン系油剤の付着量の下限は、繊維重量に対して、好ましくは0.045重量%以上であり、より好ましくは0.05重量%以上である。上記帯電防止剤の付着量の上限は、繊維重量に対して、好ましくは0.25重量%以下であり、より好ましくは0.2重量%以下であり、さらに好ましくは0.15重量%以下である。
上記ジメチルシリコーン系油剤としては、信越化学工業株式会社製の品名「KM−9738」(粘度:1万mm2/s)及び品名「KM−797」(粘度10万mm2/s)、竹本油脂株式会社製の品名「K901」(粘度:10万mm2/s)、松本油脂製薬株式会社製の品名「L油剤」(粘度:50万mm2/s)及び品名「M油剤」(粘度:3000万mm2/s)等の市販品を用いてもよい。
上記帯電防止剤は、カチオン系帯電防止剤及び/又はポリエーテル系帯電防止剤であることが好ましい。上記カチオン系帯電防止剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾリン系帯電防止剤及び第4級アンモニウム塩系帯電防止剤等の公知の帯電防止剤等を用いることができる。第4級アンモニウム塩系帯電防止剤としては、例えば、丸菱油化工業株式会社製の品名「加工油剤 No.29」等の市販品を用いることができる。上記ポリエーテル系帯電防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系ブロックとポリエーテル系ブロックとのブロック共重合体からなる帯電防止剤等を用いることができる。上記ポリオレフィン系ブロックを構成するオレフィン系単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン等が挙げられる。上記ポリエーテル系ブロックを構成する単量体としては、アルキレンオキシド等が挙げられ、特にエチレンオキシドやプロピレンオキシド等の炭素数が2〜4のアルキレンオキシドが好ましい。上記ポリオレフィン系ブロックとポリエーテル系ブロックとのブロック共重合体からなるポリエーテル系帯電防止剤としては、例えば、丸菱油化工業株式会社製の品名「Q−Type」等の市販品を用いることができる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維へのジメチルシリコーン系油剤及び帯電防止剤の付着は、特に限定されないが、例えば、上記ジメチルシリコーン系油剤及び帯電防止剤を含む油剤処理液に上記人工毛髪用ポリエステル系繊維を浸漬することで行うことができる。上記油剤処理液は、上記ジメチルシリコーン系油剤及び帯電防止剤を水性媒体に分散又は溶解、好ましくは分散させて得ることができる。水性媒体は、好ましくは水であり、例えば、蒸留水、イオン交換水、及び超純水等が使用できる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維における油剤(ジメチルシリコーン系油剤及び/又は帯電防止剤)の付着量は、以下のように測定することができる。まず、繊維2gをエタノール:シクロヘキサン=1:1(重量割合)の混合溶剤30gに浸漬させて油剤を溶解させる。得られた溶解物から溶剤のみを抽出して気化させ、残った油成分(油剤の混合物)の重量を測定する。次に油剤の混合物をTHFに溶解させて、ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies社製、「GC6890N」)でTHF溶解物の分析を行い、検出ピークのMSスペクトルをライブラリー検索して、油剤の混合物における各種油剤成分の特定と各種油剤成分の含有量を求める。そして、下記式により、各種油剤成分(各種ジメチルシリコーン系油剤や帯電防止剤)の付着量を算出する。
各種油剤成分の付着量(%)=[(油剤の混合物の重量×油剤の混合物中の各種油剤成分の含有量)/繊維の重量]×100
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、表面粗さRaが0.07〜0.2μmの範囲であることが好ましい。表面粗さRaが0.07μm以上であるとシリコーンのベタツキ感が顕著となって触感が悪化することがない。また、表面粗さRaが0.2μm以下であると櫛通り性が著しく低下することがない。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の表面粗さRaの上限は、0.15μm以下であることがより好ましく、0.11μm以下であることがさらに好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の表面粗さRaの下限は、0.08μm以上であることがより好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の表面粗さRaは、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製「VK−8500」)を用いて、対物レンズ50倍且つ測定の間隔0.02μmの条件下で測定した繊維の長手方向300μmにおける粗さ曲線より、JIS B 0601で規定された計算式によって、算出した算術平均粗さ(Ra)をいう。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、着色されてもよく、市場の需要の観点から、黒系の濃色に着色されていることが好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の着色は、原着法又は後染色法により行うことができる。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、繊維中に顔料又は染料を0.1〜2重量%含むことが好ましい。上記顔料又は染料が0.1重量%以上であると十分に着色される。また、上記顔料又は染料が2重量%以下であると、顔料又は染料により触感が悪化することもない。上記顔料としては、一般的に使用されるものであればよく、特に限定されない。例えば、有機系の黒色、黄色、赤色、褐色等の顔料及び無機系黒色、黄色、赤色、褐色等の顔料を用いることができる。また、上記染料としては、一般的に使用されるものであればよく、特に限定されない。例えば、有機系の黒色、黄色、赤色、褐色等の染料及び無機系の黒色、黄色、赤色、褐色等の染料等を用いることができる。また、二種以上の顔料及び染料を混合して調色して用いてもよい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、必要に応じて、耐熱剤、安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤等の各種添加剤を含有してもよい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤及び酸化アンチモン等を含むポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸し、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、上記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を形成することで製造することができる。例えば、上述したポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤、酸化アンチモン等の各成分をドライブレンドしたポリエステル樹脂組成物を、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練してペレット化した後、溶融紡糸することにより作製することができる。上記混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等が挙げられる。中でも、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維を、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸する場合には、例えば、押出機、ギアポンプ、口金等の温度を250℃以上300℃以下とし、溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ポリエステル樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50m/分以上5000m/分以下の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度と長さ、冷却風の温度と吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間及び引取速度は、ポリマーの吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。
得られた紡出糸条(未延伸糸)は熱延伸されることが好ましい。延伸は、紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法と、紡出糸条を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれかの方法によって行ってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行なうことができる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽等を使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
得られた延伸糸(人工毛髪用ポリエステル系繊維)は、上述したジメチルシリコーン系油剤及び帯電防止剤を含む油剤処理液に浸漬することで、繊維表面にジメチルシリコーン系油剤及び帯電防止剤を付着させることができる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、人工毛髪に適するという観点から、繊度が10〜100dtexであることが好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊度の下限値は、より好ましくは20dtex以上であり、さらに好ましくは35dtex以上である。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊度の上限値は、より好ましくは90dtex以下であり、さらに好ましくは80dtex以下である。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、単独で用いてもよく、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維と組み合わせて用いてもよい。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維を用いて頭飾製品を形成することができる。上記頭飾製品としては、特に限定されないが、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等が挙げられる。
上記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維のみで構成されていてもよい。また、上記頭飾製品は、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維に加えて、さらに、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含んでもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜12、比較例1〜9)
ポリエチレンテレフタレート(三菱化学株式会社製、商品名「BK−2180」)100重量部、臭素化エポキシ系難燃剤(阪本薬品工業株式会社製、商品名「SR−T2MP」)20重量部及び三酸化アンチモン(日本精鉱株式会社製、商品名「PATOX−M」)2重量部を混合した混合物を水分量100ppm以下に乾燥した。乾燥後の混合物に顔料のトータル濃度(含有量)が0.7重量%になるとともに、黒色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名「PESM22367BLACK(100)D」):黄色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名「PESM1001YELLOW(100)D」):赤色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名「PESM3005RED(100)D」)の重量割合が60:25:15になるように顔料を添加してドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機(日本製鋼所株式会社製、商品名「TEX44」)に供給し、バレル設定温度270℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを水分率100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを、溶融紡糸機(シンコーマシナリー株式会社製、商品名「SV30」)に供給し、バレル設定温度270℃で、扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を、75℃に加熱したヒートロールを用いて3.5倍に延伸し、180℃に加熱したヒートロールで熱処理した。得られた延伸糸を、各種油剤の付着量が下記表1〜表2に示す値になるように、所定の濃度の油剤処理液に浸漬させた後、ニップロールを通して含水率を15%に調整し、150℃で乾燥させたのちに、30m/分の速度で巻き取り、繊度が約65dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。上記油剤処理液は、イオン交換水に、下記表1〜表2に示すジメチルシリコーン系油剤と帯電防止剤を所定の濃度になるように添加して調整した。
(比較例10〜13)
ポリエチレンテレフタレート(三菱化学株式会社製、商品名「BK−2180」)100重量部、臭素化エポキシ系難燃剤(阪本薬品工業株式会社製、商品名「SR−T2MP」)20重量部及びアンチモン酸ナトリウム(日本精鉱株式会社製、商品名「SA−A」)2重量部を混合した混合物を水分量100ppm以下に乾燥した。乾燥後の混合物に顔料のトータル濃度(含有量)が0.7重量%になるとともに、黒色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名「PESM22367BLACK(100)D」):黄色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名「PESM1001YELLOW(100)D」):赤色顔料(大日精化工業株式会社製、商品名「PESM3005RED(100)D」)の重量割合が60:25:15になるように顔料を添加してドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機(日本製鋼所株式会社製、商品名「TEX44」)に供給し、バレル設定温度270℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを水分率100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを、溶融紡糸機(シンコーマシナリー株式会社製、商品名「SV30」)に供給し、バレル設定温度270℃で、扁平比が1.4:1の繭形断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、20℃の冷却風により空冷し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を、75℃に加熱したヒートロールを用いて3.5倍に延伸し、180℃に加熱したヒートロールで熱処理した。得られた延伸糸を、各種油剤の付着量が下記表2に示す値になるように、所定の濃度の油剤処理液に浸漬させた後、ニップロールを通して含水率を15%に調整し、150℃で乾燥させたのちに、30m/分の速度で巻き取り、繊度が約65dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。上記油剤処理液は、イオン交換水に、下記表2に示すジメチルシリコーン系油剤と帯電防止剤を所定の濃度になるように添加して調整した。
実施例及び比較例で用いたジメチルシリコーン系油剤及び帯電防止剤を下記に示した。
(1)ジメチルシリコーン系油剤:MOMENTIVE製、品名「Silsoft EM202C」、粘度40mm2/s
(2)ジメチルシリコーン系油剤:信越化学工業株式会社製、品名「KM−9738」、粘度1万mm2/s
(3)ジメチルシリコーン系油剤:竹本油脂株式会社製、品名「K901」、粘度10万mm2/s
(4)ジメチルシリコーン系油剤:松本油脂製薬株式会社製、品名「L油剤」、粘度50万mm2/s
(5)ジメチルシリコーン系油剤:松本油脂製薬株式会社製、品名「M油剤」、粘度3000万mm2/s
(6)帯電防止剤:第4級アンモニウム塩系帯電防止剤、丸菱油化工業株式会社製、品名「加工油剤 No.29」
(7)帯電防止剤:ポリエーテル系帯電防止剤、丸菱油化工業株式会社製、品名「Q−type」
実施例1〜12及び比較例1〜13のポリエステル系繊維において、繊維軸方向に対して平行方向の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅、針状比、360μm2あたりの個数を下記のように測定した。実施例1〜12及び比較例1〜13のポリエステル系繊維における各種油剤成分の付着量を下記のように測定した。実施例1〜12及び比較例1〜13のポリエステル系繊維の表面粗さRaを下記のように測定した。また、実施例1〜12及び比較例1〜13のポリエステル系繊維の光沢、触感、櫛通り性を下記のように評価した。これらの結果を下記表1〜表2に示した。
(臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の評価)
臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅、針状比及び360μm2あたりの個数は、下記分析方法で観察・測定した。繊維軸方向に対して平行方向の断面の断面作製(イオンミリング加工)は、クロスセクションポリッシャー(CP)装置(日本電子株式会社製「SM−09020CP」)を用い、加速電圧6kVの加工条件で行った。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察した。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。今回、試料はポリエチレンテレフタレート、臭素化エポキシ系難燃剤、アンチモン化合物を含むため、組成像は、(1)アンチモン化合物、(2)臭素化エポキシ系難燃剤、(3)ポリエチレンテレフタレートの順で明るい像が得られる。すなわち、ポリエチレンテレフタレートの像が一番暗い。得られた画像から、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「winROOF」)を用い、臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体の対角幅、針状比、360μm2あたりの個数を測定した。
(油剤の付着量)
まず、繊維2gをエタノール:シクロヘキサン=1:1(重量割合)の混合溶剤30gに浸漬させて油剤を溶解させた。得られた溶解物から溶剤のみを抽出して気化させ、残った油成分(油剤の混合物)の重量を測定した。次に油剤の混合物をTHFに溶解させて、ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies社製、「GC6890N」)でTHF溶解物の分析を行い、検出ピークのMSスペクトルをライブラリー検索して、油剤の混合物における各種油剤成分の特定と各種油剤成分の含有量を求めた。そして、下記式により、各種油剤成分(各種ジメチルシリコーン系油剤や帯電防止剤)の付着量を算出した。
各種油剤成分の付着量(%)=[(油剤の混合物の重量×油剤の混合物中の各種油剤成分の含有量)/繊維の重量]×100
(繊維の表面粗さ)
レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製「VK−8500」)を用いて、対物レンズ50倍且つ測定の間隔0.02μmの条件下で測定した繊維の長手方向300μmにおける粗さ曲線より、JIS B 0601で規定された計算式によって、算術平均粗さ(Ra)を算出した。
(光沢評価)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光のもと、人毛(中国人の頭髪)との比較により、以下の基準で官能評価した。
A:人毛の光沢と同等である。
B:人毛の光沢とほぼ同等である。
C:人毛の光沢とやや差がある。
D:人毛の光沢とかなり差がある。
(触感)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、人毛との比較により、以下の基準で官能評価した。
A:人毛とほぼ同等の触感
B:若干のキシミ感或いはベタツキ感はあるが、頭髪製品として問題はないレベルの触感
C:キシミ感或いはベタツキ感はあるが、頭髪製品として適用できるレベルの触感
D:キシミ感或いはベタツキ感が強く、頭髪製品として適用できない人毛とかけ離れた触感
(櫛通り性)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、トウフィラメントにポリアセタール樹脂製くし(株式会社植原セル製、商品名「ニューデルリンコーム#826)を0.3m/sの速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、くしの通り易さを評価した。
A:抵抗がなく、くしが極めて通りやすい。
B:ほとんど抵抗がなく、くしが通りやすい。
C:若干抵抗があり、くしはやや通りにくい。
D:抵抗がある或いは途中で引っかかり、くしが通りにくい。
E:くしが通らない
Figure 2015094050
Figure 2015094050
上記表1の結果から分かるように、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有し、繊維表面に、粘度が1万〜5000万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤が繊維重量に対して0.04〜0.45重量%と、帯電防止剤が繊維重量に対して0.03〜0.3重量%付着している実施例1〜12の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、光沢と触感が人毛とはかけ離れず、櫛通り性も悪くなかった。ジメチルシリコーン系油剤の粘度が10万mm2/s以上であると、より櫛通り性と触感が向上することが分かった。特に、ジメチルシリコーン系油剤の粘度が10万〜100万mm2/sであり、ジメチルシリコーン系油剤の付着量が繊維重量に対して0.05〜0.3重量%であると、光沢、触感及び櫛通り性のいずれも良好であった。
一方、繊維表面に帯電防止剤が付着していない比較例1のポリエステル系繊維は、静電気による絡みが発生し、くしが通らなかった。繊維表面にジメチルシリコーン系油剤が付着していない比較例2、ジメチルシリコーン系油剤の粘度が1万mm2/s未満である比較例3〜4、ジメチルシリコーン系油剤の付着量が繊維重量に対して0.04重量%未満の比較例6及び比較例8のポリエステル系繊維は、繊維表面の滑りが足りず、くしが通らなかった。ジメチルシリコーン系油剤の付着量が繊維重量に対して0.45重量%を超える比較例5、比較例7及び比較例9のポリエステル系繊維は、ベタツキが強く触感が悪い上、光沢が高くなりすぎて人毛の光沢とかけ離れた光沢になっていた。繊維軸方向に対して平行方向の断面において、ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有しない比較例10〜13のポリエステル系繊維は、光沢が高く人毛の光沢とかけ離れた光沢になっていた。また、粘度が50万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤が付着されている比較例12及び比較例13のポリエステル系繊維は、ジメチルシリコーン系油剤の付着量が繊維重量に対してそれぞれ0.05重量%、0.2重量%であるにも関わらず、触感も悪かった。
100 繊維軸方向に対して平行方向の断面
10 ポリエステル樹脂
20 臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体

Claims (8)

  1. ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維であって、
    前記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂100重量部に対して臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含み、前記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルであり、
    前記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、前記ポリエステル樹脂中に島状に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を有し、
    前記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維表面には、粘度が1万〜5000万mm2/sのジメチルシリコーン系油剤が繊維重量に対して0.04〜0.45重量%と、帯電防止剤が繊維重量に対して0.03〜0.3重量%付着していることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維。
  2. 前記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、繊維軸方向に対して平行方向の断面において、360μm2あたりに、針状比が2〜20且つ対角幅が0.05μm以上である臭素化エポキシ系難燃剤の凝集体を50個以上有する請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
  3. 前記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、酸化アンチモン化合物を1.5重量部以上7重量部未満含有する請求項1又は2に記載の毛髪用繊維束。
  4. 前記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、表面粗さRaが0.07〜0.2μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
  5. 前記帯電防止剤は、カチオン系帯電防止剤及び/又はポリエーテル系帯電防止剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
  6. 前記ジメチルシリコーン系油剤は、粘度が10万〜100万mm2/sである請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。
  8. 前記頭飾製品が、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアーからなる群から選ばれる一種である請求項7に記載の頭飾製品。
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