JP2015066234A - 人工毛髪用ポリエステル系繊維、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い難燃性を有し、発色性も良好である人工毛髪用ポリエステル系繊維、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品の提供。【解決手段】人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上のポリエステル樹脂10と臭素化エポキシ系難燃剤20を含み、繊維軸方向Dに平行の断面100において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅Wは0.05μm以下である。人工毛髪用ポリエステル系繊維において、280℃における溶融粘度はポリエステル樹脂が上記臭素化エポキシ系難燃剤より大きい。亦、繊維を280℃で溶融したときの粘度が剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseである。【選択図】図1
Description
本発明は、人毛の代替品として使用できる人工毛髪用ポリエステル系繊維、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品に関し、詳細には、高い難燃性を有しつつ、発色性も良好である人工毛髪用ポリエステル系繊維、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品に関する。
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭飾製品においては、従来、人毛が使用されていた。しかしながら、近年、人毛の入手が次第に困難になり、人毛に代わって人工毛髪用繊維の重要性が高まっている。例えば、人工毛髪用繊維素材として、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル系繊維を用いることが提案されていた。また、人工毛髪用繊維として使用するに当たって、安全性観点から難燃性も要求されることから、ポリエステル系繊維に難燃性を付与することが検討されていた。例えば、特許文献1〜3には、ポリエステル系繊維に臭素化エポキシ系難燃剤を含ませた難燃性ポリエステル系繊維が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の難燃性ポリエステル系繊維は、臭素化エポキシ系難燃剤を含むことにより難燃性は向上しているものの、発色性が低下する場合があった。
本発明は、上記従来の問題を解決するため、高い難燃性を有しつつ、発色性も良好である人工毛髪用ポリエステル系繊維、それを含む毛髪用繊維束及び頭飾製品を提供する。
本発明は、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含み、上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅は0.05μm以下であることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維に関する。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維において、上記ポリエステル樹脂の280℃における溶融粘度が上記臭素化エポキシ系難燃剤の280℃における溶融粘度より大きいことが好ましい。また、繊維を280℃で溶融したときの粘度が剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseであることが好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、上記ポリエステル樹脂100重量部に対してグリシジル基含有ビニル系ポリマーを0.5〜5重量部含有することが好ましい。上記グリシジル基含有ビニル系ポリマーは、ポリマー全体重量に対してグリシジルメタクリレートを1〜20重量%含有することが好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、上記ポリエステル樹脂100重量部に対してハイドロタルサイトを0.2〜3重量部含むことが好ましい。
本発明は、また、上記の人工毛髪用ポリエステル系繊維と、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含むことを特徴とする毛髪用繊維束に関する。
本発明は、また、上記の人工毛髪用ポリエステル系繊維を含むことを特徴とする頭飾製品に関する。
上記頭飾製品は、さらに、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含んでもよい。
本発明は、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅を0.05μm以下にすることで、高い難燃性を有しつつ、発色性も良好である人工毛髪用ポリエステル系繊維、毛髪用繊維束及び頭飾製品を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅を0.05μm以下にすることで、高い難燃性を維持しつつ、発色性が良好になることを見出し、本発明に至った。また、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維において、ポリエステル樹脂の280℃における溶融粘度を上記臭素化エポキシ系難燃剤の280℃における溶融粘度より大きくし、繊維を280℃で溶融したときの粘度を剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseになるようにすることで、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅が0.05μm以下になることを見出した。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂及び臭素化エポキシ系難燃剤などを含むポリエステル樹脂組成物で構成される。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅は、0.05μm以下である。上記臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅の下限値は、0.005μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上である。上記臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅の上限値は、0.04μm以下であることが好ましい。本発明において、繊維軸方向に対して平行の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅は、繊維軸方向に対して平行の断面において、臭素化エポキシ系難燃剤の繊維軸方向に対して垂直方向における最大長さをいう。具体的には、図1に示しているように、繊維軸方向Dに対して平行の断面100において、ポリエステル樹脂10中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤20の繊維軸方向Dに対して垂直方向における最大長さWが対角幅である。そして、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅は、面積360μm2当たりに存在する臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅を平均したものである。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤は、繊維軸方向に対して平行の断面を走査電子顕微鏡(SEM)などで観察することで確認することができる。また、本発明では、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行の断面のSEM写真を用いて、繊維軸方向に対して平行の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅を測定し、平均対角幅を算出することができる。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に対して平行の断面の作製は、例えば、クロスセクションポリッシャー(CP)装置を使用した断面作製(イオンミリング加工)により行うことができる。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察することができる。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。
上記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上である。上記ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートを主体とし、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステルが挙げられる。本発明において、「主体」とは、50モル%以上含有される成分のことを意味し、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを50モル%以上含有する共重合ポリエステルをいう。好ましくは、「ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステル」は、ポリアルキレンテレフタレートを60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含有する。
上記他の共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スべリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びそれらの誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルからなる群から選ばれる一種の化合物を共重合したポリエステルなどが挙げられる。
上記ポリアルキレンテレフタレート及び上記ポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、ポリエチレンテレフタレートを主体とし、イソフタル酸を共重合したポリエステル、及びポリエチレンテレフタレートを主体とし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどを単独又は2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
上記臭素化エポキシ系難燃剤は、特に限定されないが、例えば、原料としては分子末端がエポキシ基、トリブロモフェノールなどからなる臭素化エポキシ系難燃剤を用いることができる。
上記臭素化エポキシ系難燃剤としては、具体的には、下記一般式(1)で表される構造式を分子中に含む化合物を用いることができる。
但し、上記一般式(1)において、mは1〜1000である。
上記一般式(1)で表される化合物として、具体的には、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物を用いることができる。
但し、上記一般式(2)〜(4)において、mは1〜1000、R1は炭素数1〜10のアルキル基、yは0〜5を示す。
本発明では、分子末端が上述した構造を有する臭素化エポキシ系難燃剤を原料として用いるが、溶融混練及び/又は溶融紡糸後(繊維中)の臭素化エポキシ系難燃剤の構造は、特に限定されず、例えば、分子末端がエポキシ基、水酸基、リン酸基又はホスホン酸基に置換されてもよく、或いは、分子末端がポリエステル樹脂とエステル基で結合してもよい。
上記臭素化エポキシ系難燃剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含むことが好ましい。より好ましくは、ポリエステル樹脂100重量部に対する臭素化エポキシ系難燃剤の含有量の下限値は、6重量部以上である。ポリエステル樹脂100重量部に対する臭素化エポキシ系難燃剤の含有量の上限値は、30重量部以下であることがより好ましく、25重量部以下であることがさらに好ましい。臭素化エポキシ系難燃剤の含有量が上記範囲内であれば、人工毛髪用ポリエステル系繊維は、難燃性、発色性及び紡糸性にも優れる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維において、上記ポリエステル樹脂の280℃における溶融粘度(以下において、単に溶融粘度とも記す。)が上記臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度より大きいことが好ましい。臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度がポリエステル樹脂の溶融粘度より小さいことにより、臭素化エポキシ系難燃剤が凝集せず、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に平均対角幅0.05μm以下の大きさで分散している。臭素化エポキシ系難燃剤がポリエステル樹脂中で凝集せずより分散しやすい観点から、上記ポリエステル樹脂の溶融粘度は上記臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度より、1000poise以上大きいことが好ましく、1500poise以上大きいことがより好ましい。また、上記ポリエステル樹脂の溶融粘度と上記臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度の差は、6000poise以下であることが好ましく、5000poise以下であることがより好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維を280℃で溶融したときの粘度が剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseになるように調整しやすい観点から、上記ポリエステル樹脂の溶融粘度は、2000〜8000poiseであることが好ましい。上記ポリエステル樹脂の溶融粘度の下限値は、3000poise以上であることがより好ましい。また、上記ポリエステル樹脂の溶融粘度の上限値は、7000poise以下であることがより好ましい。上記臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度の下限値は、500poise以上であることが好ましく、800poise以上であることがより好ましい。また、上記臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度の上限値は、3200poise以下であることが好ましく、3000poise以下であることがより好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、グリシジル基含有ビニル系ポリマーを0.5〜5重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.5〜3重量部含み、さらに好ましくは0.5〜2重量部含む。グリシジル基含有ビニル系ポリマーはポリエステル樹脂の増粘剤としての効果を発揮し、ポリエステル樹脂の溶融粘度を臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度より高くすることで、ポリエステル樹脂中の臭素化エポキシ系難燃剤の分散性が向上し、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の発色性がより良好になる。
上記グリシジル基含有ビニル系ポリマーは、ポリエステル樹脂の溶融粘度を増加することができるポリマーであればよく、特に限定されない。例えば、上記グリシジル基含有ビニル系ポリマーとしては、グリシジルメタクリレートを含むポリマーなどを用いることができる。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の発色性を高めつつ、繊維融着を抑制する観点から、グリシジル基含有ビニル系ポリマーは、ポリマー全体重量に対してグリシジルメタクリレートを1〜20重量%含むことが好ましい。上記グリシジル基含有ビニル系ポリマー中のグリシジルメタクリレートの含有量の下限値は、より好ましくは2重量%以上であり、さらに好ましくは3重量%以上である。上記グリシジル基含有ビニル系ポリマー中のグリシジルメタクリレートの含有量の上限値は、より好ましくは15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、ハイドロタルサイトを0.2〜3重量部含むことが好ましい。ポリエステル樹脂100重量部に対するハイドロタルサイトの含有量の下限値は、より好ましくは0.5重量部以上である。ポリエステル樹脂100重量部に対するハイドロタルサイトの含有量の上限値は、より好ましくは3重量部以下であり、さらに好ましくは2重量部以下である。ハイドロタルサイトは、臭素吸着剤としての効果を発揮し、臭素化エポキシ系難燃剤の熱分解によって生じる臭素を吸着し、臭素によって臭素化エポキシ系難燃剤のエポキシ基が重合してゲルが発生する現象を防止することができ、ひいては繊維融着を抑制することができる。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、難燃性の観点から、さらに難燃助剤を含んでもよい。上記難燃助剤としては、例えば、アンチモン化合物を用いることができる。上記アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの酸化アンチモンや、アンチモン酸ナトリウム(アンチモン酸ソーダ)、アンチモン酸カリウムなどのアンチモン酸金属塩が挙げられる。上記ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物を0.5〜10重量部含むことが好ましい。ポリエステル樹脂100重量部に対するアンチモン化合物の含有量の下限値は、より好ましくは1重量部以上であり、さらに好ましくは1.5重量部以上である。ポリエステル樹脂100重量部に対するアンチモン化合物の含有量の上限値は、より好ましくは7重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下である。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、臭素化エポキシ系難燃剤以外の難燃剤、アンチモン化合物以外の難燃助剤、耐熱剤、安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、例えば、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤などを含むポリエステル樹脂組成物を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより得られる。
上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を5〜40重量部含むことが好ましい。より好ましい下限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を6重量部以上含む。より好ましい上限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤を30重量部以下含み、25重量部以下含むことがさらに好ましい。また、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、グリシジル基含有ビニル系ポリマーを0.5〜5重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.5〜3重量部含み、さらに好ましくは0.5〜2重量部含む。また、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、ハイドロタルサイトを0.2〜3重量部含むことが好ましい。より好ましい下限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、ハイドロタルサイトを0.5重量部以上含む。より好ましい上限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、ハイドロタルサイトを3重量部以下含み、2重量部以下含むことがさらに好ましい。また、上記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物を0.5〜10重量部含むことが好ましい。より好ましい下限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物を1重量部以上含み、1.5重量部以上含むことがさらに好ましい。より好ましい上限値として、ポリエステル樹脂100重量部に対し、アンチモン化合物を7重量部以下含み、5重量部以下含むことがさらに好ましい。
上記ポリエステル樹脂組成物は、上述したポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤、グリシジル基含有ビニル系ポリマーなどの各成分をドライブレンドした後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練して得ることができる。上記混練機としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。中でも、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。溶融混練は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂の融点以上の温度、例えば、250〜280℃の温度で行うことが好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、上述したポリエステル樹脂、臭素化エポキシ系難燃剤、グリシジル基含有ビニル系ポリマーなどを含むポリエステル樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練したポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸して製造することが好ましい。本発明では、ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含むポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸するに際し、(繊維化後の)ポリエステル樹脂の280℃における溶融粘度を(繊維化後の)臭素化エポキシ系難燃剤の280℃における溶融粘度より大きくし、繊維を280℃で溶融したときの粘度が剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseになるようにすることで、繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅が0.05μm以下の人工毛髪用ポリエステル系繊維を得ることができる。
繊維を280℃で溶融したときの粘度は、紡糸安定性の観点から、剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseであることが好ましい。2000poise以上であると、繊度斑を小さくできる。また、8000poise以下であると、樹脂圧力が高すぎず、生産性を上げることが容易となる。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸して製造する場合には、例えば、押出機、ギアポンプ、口金などの温度を250〜310℃とし、溶融混錬したポリエステル樹脂組成物を溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させた後、ポリエステル樹脂のガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸条(未延伸糸)が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度と長さ、冷却風の温度と吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間及び引取速度は、ポリマーの吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。
本発明において、得られた紡出糸条(未延伸糸)は熱延伸されることが好ましい。延伸は、紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法と、紡出糸条を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によって行ってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、非捲縮生糸状の繊維であることが好ましい。また、人工毛髪に適するという観点から、繊度が10〜100dtexであることが好ましい。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊度の下限値は、より好ましくは20dtex以上であり、さらに好ましくは35dtex以上である。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の繊度の上限値は、より好ましくは90dtex以下であり、さらに好ましくは80dtex以下である。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、難燃性、発色性が良好であり、繊維融着も少ない。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維の難燃性は、LOI値と燃焼試験によるドリップの有無で判断することができる。LOI値の測定及び燃焼試験は、後述する通りに行うことができる。上記人工毛髪用ポリエステル系繊維は、難燃性に優れる観点から、LOI値が23以上であり、かつ燃焼試験でドリップが発生しないことが好ましく、LOI値が25以上であり、かつ燃焼試験でドリップが発生しないことがより好ましい。
上記人工毛髪用ポリエステル系繊維(マルチフィラメント)は、繊維融着が少ない。例えば、後述するとおりに繊維融着を評価する際、融着糸が50本未満であることが好ましく、10本未満であることがより好ましい。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維は、そのまま単独で人工毛髪として用いることができる。或いは、上記人工毛髪用ポリエステル系繊維に、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を混ぜ合わせて毛髪用繊維束として用いることができる。上記毛髪用繊維束は、難燃性及び発色性に優れる。また、繊維融着も少ない。
本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維を用いて形成した頭飾製品は、難燃性及び発色性に優れる。また、繊維融着も少ない。上記頭飾製品としては、特に限定されないが、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、ドールヘアーなどが挙げられる。
上記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維のみで形成されていてもよい。また、上記頭飾製品は、本発明の人工毛髪用ポリエステル系繊維に、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を組み合わせて形成してもよい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた化合物を、下記に示した。
ポリエチレンテレフタレート(以下において、「PET」とも記す。):日本ユニペット社製、製品名「RT543」、IV=0.75
臭素化エポキシ系難燃剤1(以下において、「難燃剤1」とも記す。):阪本薬品工業社製、製品名「SRT−20000」、数平均分子量40000、末端エポキシ型臭素化エポキシ系難燃剤
臭素化エポキシ系難燃剤2(以下において、「難燃剤2」とも記す。):ICL社製、製品名「F2400」、数平均分子量55000、末端エポキシ型臭素化エポキシ系難燃剤
難燃助剤1:アンチモン酸ナトリウム(日本精鉱社製、製品名「SAA」)
難燃助剤2:三酸化アンチモン(日本精鉱社製、製品名「PATOXM」
増粘剤1:グリシジル基含有ビニル系ポリマー(日本油脂社製、製品名「マーブルーフG-01100」、GMA100重量%)
増粘剤2:グリシジル基含有ビニル系ポリマー(BASF社製、製品名「ADR4300S」、GMA5重量%)
臭素吸着剤:ハイドロタルサイト(協和化学社製、製品名「HT-1」)
ポリエチレンテレフタレート(以下において、「PET」とも記す。):日本ユニペット社製、製品名「RT543」、IV=0.75
臭素化エポキシ系難燃剤1(以下において、「難燃剤1」とも記す。):阪本薬品工業社製、製品名「SRT−20000」、数平均分子量40000、末端エポキシ型臭素化エポキシ系難燃剤
臭素化エポキシ系難燃剤2(以下において、「難燃剤2」とも記す。):ICL社製、製品名「F2400」、数平均分子量55000、末端エポキシ型臭素化エポキシ系難燃剤
難燃助剤1:アンチモン酸ナトリウム(日本精鉱社製、製品名「SAA」)
難燃助剤2:三酸化アンチモン(日本精鉱社製、製品名「PATOXM」
増粘剤1:グリシジル基含有ビニル系ポリマー(日本油脂社製、製品名「マーブルーフG-01100」、GMA100重量%)
増粘剤2:グリシジル基含有ビニル系ポリマー(BASF社製、製品名「ADR4300S」、GMA5重量%)
臭素吸着剤:ハイドロタルサイト(協和化学社製、製品名「HT-1」)
(実施例1〜4、比較例1〜3)
上述した各化合物(原料)を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表1に示す配合割合でドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機に供給して、280℃で溶融混練し、ペレット化したのちに、水分量100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを溶融紡糸機に供給し、280℃でノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融したポリマーを吐出した。吐出した溶融ポリマーを加熱筒に通過させたのちポリエステル樹脂のガラス転移温度以下に冷却し、60〜150m/分の速度で巻き取って紡出糸条を得た。得られた紡出糸条を80℃で延伸を行ない、3倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、熱処理を行ない、単繊維繊度が約60dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
上述した各化合物(原料)を水分量100ppm以下に乾燥し、下記表1に示す配合割合でドライブレンドした。得られたポリエステル樹脂組成物を二軸押出機に供給して、280℃で溶融混練し、ペレット化したのちに、水分量100ppm以下に乾燥させた。次いで、乾燥したペレットを溶融紡糸機に供給し、280℃でノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融したポリマーを吐出した。吐出した溶融ポリマーを加熱筒に通過させたのちポリエステル樹脂のガラス転移温度以下に冷却し、60〜150m/分の速度で巻き取って紡出糸条を得た。得られた紡出糸条を80℃で延伸を行ない、3倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、熱処理を行ない、単繊維繊度が約60dtex程度のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたポリエステル系繊維において、ポリエステル樹脂(PET)の280℃における溶融粘度(PETの溶融粘度)、臭素化エポキシ系難燃剤の280℃に溶融粘度(難燃剤の溶融粘度)を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたポリエステル系繊維を280℃で溶融したときの剪断速度50mm/分における粘度(繊維の粘度)を測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたポリエステル系繊維の繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅(難燃剤の平均対角幅)を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。また、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたポリエステル系繊維の耐熱性、発色性及び繊維融着を下記のように測定・評価し、その結果を下記表1に示した。
(繊維の粘度)
株式会社東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、テストスピード50mm/分、オリフィス0.05cm、バレル半径0.4775cm、バレル温度280℃の条件下で、押出荷重(F)を測定し、下記式より溶融粘度を算出し、繊維の粘度とした。
せん断圧力 τ=P・r/2L=F・r/2πR2L (1)
フロー値 Q=πRv (2)
せん断速度 γ=4Q/πr3=4V/60πr3 (3)
見かけ粘度(溶融粘度) η=τ/γ (4)
但し、式(1)〜(4)中、τはせん断圧力、Pはバレル内圧、Fは押出荷重、Rはバレル半径、rはキャピラリー半径、Lはキャピラリー長さ、Qはフロー値、vは押出速度、γはせん断速度、Vは押出量、ηは見かけ粘度(溶融粘度)である。
株式会社東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、テストスピード50mm/分、オリフィス0.05cm、バレル半径0.4775cm、バレル温度280℃の条件下で、押出荷重(F)を測定し、下記式より溶融粘度を算出し、繊維の粘度とした。
せん断圧力 τ=P・r/2L=F・r/2πR2L (1)
フロー値 Q=πRv (2)
せん断速度 γ=4Q/πr3=4V/60πr3 (3)
見かけ粘度(溶融粘度) η=τ/γ (4)
但し、式(1)〜(4)中、τはせん断圧力、Pはバレル内圧、Fは押出荷重、Rはバレル半径、rはキャピラリー半径、Lはキャピラリー長さ、Qはフロー値、vは押出速度、γはせん断速度、Vは押出量、ηは見かけ粘度(溶融粘度)である。
(繊維中のポリエステル樹脂の溶融粘度)
繊維中のポリエステル樹脂の粘度を測定する際には、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=1/1の溶媒で繊維を溶解してフィルム化を行い、得られたフィルムをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解し、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した成分をメタノールで沈降させて、得られた沈降物(ポリエステル樹脂成分)を粉砕してサンプルとして用い、上記繊維の粘度を測定する場合と同様にして、繊維中のポリエステル樹脂の溶融粘度を測定・算出した。
繊維中のポリエステル樹脂の粘度を測定する際には、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=1/1の溶媒で繊維を溶解してフィルム化を行い、得られたフィルムをヘキサフルオロイソプロパノールで溶解し、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した成分をメタノールで沈降させて、得られた沈降物(ポリエステル樹脂成分)を粉砕してサンプルとして用い、上記繊維の粘度を測定する場合と同様にして、繊維中のポリエステル樹脂の溶融粘度を測定・算出した。
(繊維中の臭素化エポキシ系難燃剤の溶融粘度)
繊維中の臭素化エポキシ系難燃剤の粘度を測定する際には、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=1/1の溶媒で繊維を溶解してフィルム化を行い、得られたフィルムをクロロホルムで溶解し、クロロホルムで溶解した成分をメタノールで沈降させて、得られた沈降物(臭素化エポキシ系難燃剤成分)を粉砕してサンプルとして用い、上記繊維の粘度を測定する場合と同様にして、繊維中の難燃剤の溶融粘度を測定・算出した。
繊維中の臭素化エポキシ系難燃剤の粘度を測定する際には、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=1/1の溶媒で繊維を溶解してフィルム化を行い、得られたフィルムをクロロホルムで溶解し、クロロホルムで溶解した成分をメタノールで沈降させて、得られた沈降物(臭素化エポキシ系難燃剤成分)を粉砕してサンプルとして用い、上記繊維の粘度を測定する場合と同様にして、繊維中の難燃剤の溶融粘度を測定・算出した。
(臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅)
繊維軸方向に対して平行の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅は、下記分析方法で観察・測定した。繊維軸方向に対して平行の断面の断面作製(イオンミリング加工)は、クロスセクションポリッシャー(CP)装置(日本電子株式会社製「SM−09020CP」)を用い、加速電圧6kVの加工条件で行った。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察した。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。今回、試料(ポリエステル系繊維)はポリエチレンテレフタレート、臭素化エポキシ系難燃剤、アンチモン化合物を含むため、組成像は、(1)アンチモン化合物、(2)臭素化エポキシ系難燃剤、(3)ポリエチレンテレフタレートの順で明るい像が得られる。得られた画像から、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「winROOF」)を用い、臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅、360μm2あたりの個数を測定し、360μm2あたりに存在する臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅の平均を算出し、臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅とした。
繊維軸方向に対して平行の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅は、下記分析方法で観察・測定した。繊維軸方向に対して平行の断面の断面作製(イオンミリング加工)は、クロスセクションポリッシャー(CP)装置(日本電子株式会社製「SM−09020CP」)を用い、加速電圧6kVの加工条件で行った。形態観察は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)装置(カールツァイス製「ULTRA plus」を用い、加速電圧2kV下で観察した。試料の組成像は平均原子番号に依存するため、重元素がある部分では明るく、軽元素がある部分では暗い像が得られる。今回、試料(ポリエステル系繊維)はポリエチレンテレフタレート、臭素化エポキシ系難燃剤、アンチモン化合物を含むため、組成像は、(1)アンチモン化合物、(2)臭素化エポキシ系難燃剤、(3)ポリエチレンテレフタレートの順で明るい像が得られる。得られた画像から、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「winROOF」)を用い、臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅、360μm2あたりの個数を測定し、360μm2あたりに存在する臭素化エポキシ系難燃剤の対角幅の平均を算出し、臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅とした。
(難燃性)
LOIの値と、燃焼試験によるドリップの有無に基づいて以下の4段階の基準で判定した。
A:ドリップが無く、LOI値25以上
B:ドリップが無く、LOI値23以上25未満
C:ドリップが有り、LOI値23以上
D:ドリップの有無に関わらず、LOI値23未満
〈LOI値の測定〉
LOI値は、JIS L 1091 E法(酸素指数法試験)に準じて測定した。具体的には、フィラメント(長さ16cm、重さ0.25g)の両端を軽く両面テープでまとめ、懸撚器で挟み撚りをかけた。十分に撚りがかかったら、真中で二つに折り撚り合わせた。撚り合わせたフィラメントの両端をセロファン(登録商標)テープで止め、全長7cmになるようにした。得られた試料は、105℃にて60分間前乾燥を行ない、さらにデシケーターで30分以上乾燥させた。乾燥した試料を所定の酸素濃度に調整し、40秒後8〜12mmに絞った点火器で、上部より着火し、着火後点火器を離した。5cm以上燃えるか、3分以上燃え続けた酸素濃度を調べ、同じ条件で試験を3回繰り返し、限界酸素指数(LOI)とした。
〈燃焼試験〉
150mmの長さに切断したフィラメント0.7g分を束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに有効長120mmになるように固定して垂直に垂らした。固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎して燃焼させ、ドリップの有無を観察した。
LOIの値と、燃焼試験によるドリップの有無に基づいて以下の4段階の基準で判定した。
A:ドリップが無く、LOI値25以上
B:ドリップが無く、LOI値23以上25未満
C:ドリップが有り、LOI値23以上
D:ドリップの有無に関わらず、LOI値23未満
〈LOI値の測定〉
LOI値は、JIS L 1091 E法(酸素指数法試験)に準じて測定した。具体的には、フィラメント(長さ16cm、重さ0.25g)の両端を軽く両面テープでまとめ、懸撚器で挟み撚りをかけた。十分に撚りがかかったら、真中で二つに折り撚り合わせた。撚り合わせたフィラメントの両端をセロファン(登録商標)テープで止め、全長7cmになるようにした。得られた試料は、105℃にて60分間前乾燥を行ない、さらにデシケーターで30分以上乾燥させた。乾燥した試料を所定の酸素濃度に調整し、40秒後8〜12mmに絞った点火器で、上部より着火し、着火後点火器を離した。5cm以上燃えるか、3分以上燃え続けた酸素濃度を調べ、同じ条件で試験を3回繰り返し、限界酸素指数(LOI)とした。
〈燃焼試験〉
150mmの長さに切断したフィラメント0.7g分を束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに有効長120mmになるように固定して垂直に垂らした。固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎して燃焼させ、ドリップの有無を観察した。
(発色性)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光のもと、目視により、人毛の外観との比較により、以下の4段階の基準で評価した。
A:人毛に近い鮮明な色相となっている
B:繊維がやや白濁気味で、人毛の外観に対して若干色の鮮明性が劣る
C:繊維が白濁気味で、人毛の外観に対して色の鮮明性が劣る
D:繊維の白濁が強く、人毛の外観に対して明らかに色の鮮明性が劣る
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを用い、太陽光のもと、目視により、人毛の外観との比較により、以下の4段階の基準で評価した。
A:人毛に近い鮮明な色相となっている
B:繊維がやや白濁気味で、人毛の外観に対して若干色の鮮明性が劣る
C:繊維が白濁気味で、人毛の外観に対して色の鮮明性が劣る
D:繊維の白濁が強く、人毛の外観に対して明らかに色の鮮明性が劣る
(繊維融着)
毛束(長さ50cm、重さ136g)20本にポリアセタール樹脂製くし(株式会社植原セル製、商品名「ニューデルリンコーム#826」)を0.3m/sの速さで毛束の上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、櫛に絡んだ融着糸の数を基に下記のように判定を行なった。
A:融着糸10本未満
B:融着糸10本以上50本未満
C:融着糸50本以上100本未満
D:融着糸100本以上
毛束(長さ50cm、重さ136g)20本にポリアセタール樹脂製くし(株式会社植原セル製、商品名「ニューデルリンコーム#826」)を0.3m/sの速さで毛束の上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、櫛に絡んだ融着糸の数を基に下記のように判定を行なった。
A:融着糸10本未満
B:融着糸10本以上50本未満
C:融着糸50本以上100本未満
D:融着糸100本以上
上記表1の結果から分かるように、実施例1〜4のポリエステル系繊維では、繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅が0.05μm以下であり、ポリエステル樹脂の280℃における溶融粘度が臭素化エポキシ系難燃剤の280℃における溶融粘度より大きかった。また、繊維を280℃で溶融したときの粘度が剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseの範囲内であった。一方、比較例1〜2のポリエステル系繊維では、繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅が0.05μmを超えており、ポリエステル樹脂の280℃における溶融粘度が臭素化エポキシ系難燃剤の280℃における溶融粘度より小さかった。
繊維軸方向に平行の断面における臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅が0.05μm以下の実施例1〜4のポリエステル系繊維は、難燃性に優れるとともに、発色性も良好であった。また、ハイドロタルサイトを含む実施例3のポリエステル系繊維は、繊維融着がほとんどなかった。実施例2と実施例4の対比から分かるように、ポリマー全体重量に対してグリシジルメタクリレートを1〜20重量%含むグリシジル基含有ビニル系ポリマーを用いると、繊維融着が減少する。
一方、繊維軸方向に平行の断面において、ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅が0.05μmを超える比較例1〜2のポリエステル系繊維は、発色性が悪かった。また、臭素化エポキシ系難燃剤を含まない比較例3のポリエステル系繊維は、難燃性が悪かった。
Claims (9)
- ポリエステル樹脂と臭素化エポキシ系難燃剤を含む人工毛髪用ポリエステル系繊維であって、
前記ポリエステル樹脂は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とする共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、
繊維軸方向に平行の断面において、前記ポリエステル樹脂中に分散している臭素化エポキシ系難燃剤の平均対角幅は0.05μm以下であることを特徴とする人工毛髪用ポリエステル系繊維。 - 前記ポリエステル樹脂の280℃における溶融粘度が前記臭素化エポキシ系難燃剤の280℃における溶融粘度より大きい請求項1に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 繊維を280℃で溶融したときの粘度が剪断速度50mm/分において2000〜8000poiseである請求項1又は2に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記ポリエステル樹脂100重量部に対してグリシジル基含有ビニル系ポリマーを0.5〜5重量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記グリシジル基含有ビニル系ポリマーが、ポリマー全体重量に対してグリシジルメタクリレートを1〜20重量%含有する請求項4に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 前記ポリエステル樹脂100重量部に対してハイドロタルサイト0.2〜3重量部を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維と、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含むことを特徴とする毛髪用繊維束。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工毛髪用ポリエステル系繊維を含むことを特徴とする頭飾製品。
- 前記頭飾製品は、さらに、人毛、獣毛、ポリ塩化ビニル系繊維、モダアクリル繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、再生蛋白繊維及び他のポリエステル系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つの繊維を含む請求項8に記載の頭飾製品。
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- 2013-09-30 JP JP2013204016A patent/JP2015066234A/ja active Pending
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- 2014-02-04 ZA ZA2014/00821A patent/ZA201400821B/en unknown
- 2014-02-06 AP AP2014007418A patent/AP2014007418A0/xx unknown
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WO2017077748A1 (ja) * | 2015-11-04 | 2017-05-11 | 花王株式会社 | トナー用結着樹脂組成物 |
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