JP4819502B2 - 難燃性ポリエステル系人工毛髪繊維 - Google Patents
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Description
一方、かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭髪製品においては、従来、人毛や人工毛髪(モダクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維)などが使用されてきている。しかし、人毛の提供は困難になってきており、人工毛髪の重要性が高まってきている。人工毛髪素材として、難燃性の特徴を生かしてモダクリル繊維が多く使用されてきているが、耐熱性の点では不充分である。
近年、耐熱性に優れたポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルを主成分とする繊維を用いた人工毛髪が提案されるようになってきている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステルからの繊維は、可燃性素材であるため、耐燃性が不充分である。
従来、ポリエステル繊維の耐燃性を向上させようとする試みは種々なされており、たとえばリン原子を含有する難燃性モノマーを共重合させたポリエステルからの繊維にする方法や、ポリエステル繊維に難燃剤を含有させる方法などが知られている。
前者の難燃性モノマーを共重合させる方法としては、たとえば、リン原子が環員子となっていて熱安定性の良好なリン化合物を共重合させる方法(特公昭55−41610号公報)、また、カルボキシホスフィン酸を共重合させる方法(特公昭53−13479号公報)、ポリアリレートを含むポリエステルにリン化合物を共重合させる方法(特開平11−124732号公報)などが提案されている。
前記難燃化技術を人工毛髪に適用したものとしては、たとえばリン化合物を共重合させたポリエステル繊維が提案されている(特開平3−27105号公報、特開平5−339805号公報など)。
しかしながら、人工毛髪には高い難燃性が要求されるため、これらの共重合ポリエステル繊維を人工毛髪に使用するには、その共重合量を多くしなければならず、その結果、ポリエステルの耐熱性が大幅に低下し、溶融紡糸が困難になったり、火炎が接近した場合、着火・燃焼はしないが、溶融・ドリップするという別の問題が発生する。また、前記リン系難燃剤を配合した場合、難燃性を発現するためその添加量を多くする必要があることにも起因するべたつき感の増加に加え、得られたポリエステル繊維からなる人工毛髪に熱履歴や高湿の条件下において、失透という繊維の外観上の問題が発生しやすいという課題がある。
一方、後者の難燃剤を含有させる方法としては、ポリエステル繊維に、微粒子のハロゲン化シクロアルカン化合物を含有させる方法(特公平3−57990号公報)、臭素含有アルキルシクロヘキサンを含有させる方法(特公平1−24913号公報)などが提案されている。しかし、ポリエステル繊維に難燃剤を含有させる方法では、充分な難燃性を得るために、含有処理温度を150℃以上の高温にすることが必要であったり、含有処理時間を長時間にする必要があったり、あるいは大量の難燃剤を使用しなければならないといった問題があり、繊維物性の低下や生産性の低下、製造コストがアップするなどの問題が発生する。
人工毛髪用ポリエステル系フィラメントを紡糸するにあたっては、所望の繊度を得るために、多くの場合、水冷法が採用されているが、この方法は生産速度が遅く、また乾燥工程が必要になるためにコスト高になる。空冷法による溶融紡糸では、所望の繊度を得るためには、樹脂組成物の溶融粘度を高く保つことが重要になり、溶融粘度の低下が、紡糸加工性の低下につながり、安定に良好なフィラメントを得ることが出来なくなるという問題が発生する。このように、紡糸加工性に優れ、従来のポリエステル繊維の繊維物性を維持し、難燃性、耐熱性、透明性などに優れた人工毛髪は、いまだ得られていないのが実状である。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルと臭素化エポキシ系難燃剤と反応促進剤から得られる組成物を溶融紡糸することにより、通常のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度繊維物性を維持し、人工毛髪として要求される難燃性、セット性、透明性、失透性、くし通りに優れ、空冷法での紡糸性が良好である難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリアルキレンテレフタレートまたはポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルの1種以上からなるポリエステル(A)100重量部と臭素化エポキシ系難燃剤(B)5〜30重量部と反応促進剤(C)0.05〜1重量部を用いてなる難燃性ポリエステル系人工毛髪繊維に関し、好ましくは、(A)成分が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種のポリマーからなるポリエステルである上記難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維、あるいは(B)成分が、一般式(1)で表される難燃剤である上記難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維、
(式中、mは0〜100を示す)
(C)成分としては、炭素数6〜32の有機カルボン酸金属塩および、または、ホスファイト系化合物ある上記難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維に関する。
また、上記難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は非捲縮生糸状であり、原着されており、単繊維繊度が10〜80dtexであることが好ましい。
前記共重合成分としては、たとえばイソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸、それらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸、その誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどがあげられる。
前記共重合ポリエステルは、通常、主体となるテレフタル酸および/またはその誘導体(たとえばテレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの重合体に少量の共重合成分を含有させて反応させることにより製造するのが、安定性、操作の簡便性の点から好ましいが、主体となるテレフタル酸および/またはその誘導体(たとえばテレフタル酸メチル)と、アルキレングリコールとの混合物に、さらに少量の共重合成分であるモノマーまたはオリゴマー成分を含有させたものを重合させることにより製造してもよい。
前記共重合ポリエステルは、主体となるポリアルキレンテレフタレートの主鎖および/または側鎖に前記共重合成分が重縮合していればよく、共重合の仕方などには特別な限定はない。
前記ポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルの具体例としては、たとえばポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどがあげられる。
前記ポリアルキレンテレフタレートおよびその共重合ポリエステルは、1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなど)が好ましく、これらを2種以上混合したものも好ましい。
(A)成分の固有粘度としては、0.3〜1.2であるのが好ましく、さらには0.3〜1.0であるのが好ましい。固有粘度が0.3未満の場合、得られる繊維の機械的強度が低下する傾向が生じ、1.2をこえると、分子量の増大に伴い溶融粘度が高くなり、溶融紡糸が困難になったり、繊度が不均一になる傾向が生じる。
本発明に用いられる臭素化エポキシ系難燃剤(B)は末端未封止型臭素化エポキシ系難燃剤である以外はとくに限定はなく、一般に用いられているものであれば使用することができる。
(B)成分の具体例としては、一般式(1)で表される末端未封止型臭素化エポキシ系難燃剤が挙げられる。これらの中でも下記式:
で表される化合物を用いるのが好ましく、これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記(B)成分の使用量は、(A)成分100重量部に対し、5〜30重量部である。その中でも6〜25重量部が好ましく、8〜20重量部がさらに好ましい。使用量が5重量部より少ないと難燃効果が得られ難くなり、30重量部より多いと機械的特性、耐熱性、耐ドリップ性が損なわれる。
(B)成分の数平均分子量は2000〜35000であるのが好ましく、さらには2000〜25000であるのが好ましい。数平均分子量が2000未満の場合、溶融混練または紡糸時にポリエステルのカルボン酸末端との反応が促進されゲル化が起こり紡糸性が悪化する。数平均分子量が35000をこえるとポリエステルのカルボン酸末端との反応性が低下し、空冷法で安定に溶融紡糸を行なうために必要な溶融粘度が得られない。
本発明の(C)成分は、(A)成分のカルボン酸末端基と(B)成分のエポキシ基との反応を促進させる物質である。(A)成分と(B)成分を溶融混練するだけでは(A)成分のカルボン酸末端基と(B)成分のエポキシ基の反応性は低いが、(C)成分を添加し溶融混練することで、反応が促進され、樹脂組成物の溶融粘度が上昇し、空冷での溶融紡糸性が向上する。(C)成分としては、たとえば、炭素数6〜32の有機カルボン酸金属塩、ホスファイト系化合物などが挙げられる。炭素数6〜32の有機カルボン酸金属塩としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラギニン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸などの金属塩が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ホスファイト系化合物としては、たとえばトリアルキルホスファイト類、トリアリルホスファイト類、アルキルアリルホスファイト類および一般式(2)〜(5):
(式中、R1は炭素数4〜20の直鎖または分岐を有する炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)、
(式中、R2は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい)、
(式中、R3は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、R4は炭素数4〜20の炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である)、
(式中、R5は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、R6は炭素数4〜20の炭化水素基または炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、Xはメチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、カルボニル基、スルホニル基、1,3−フェニレンジイソプロピリデン基または1,4−フェニレンジイソプロピリデン基を示すで表わされるホスファイト系抗酸化剤などのホスファイト系化合物などがあげられる。
前記トリアルキルホスファイト類、トリアリルホスファイト類、アルキルアリルホスファイト類および一般式(2)〜(5)で表わされるホスファイト系抗酸化剤などのホスファイト系化合物の具体例としては、たとえばトリオクチルホスファイト、トリデカニルホスファイトなどのトリアルキルホスファイト類、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ(t−ブチル)フェニル)ホスファイト、トリアリルホスファイト類、ジデカニルフェニルホスファイト、デカニルジフェニルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイトなどのアルキルアリルホスファイト類、式:
で表わされる化合物を含む一般式(2)〜(5)で表わされるホスファイト系抗酸化剤などがあげられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)成分の使用量としては(A)成分100重量部に対し0.05〜1重量部である。その中でも0.1〜1重量部が好ましく0.2〜0.8重量部がさらに好ましい。使用量が0.05より少ないと(A)成分のカルボン酸末端基と(B)成分のエポキシ基との反応性が低下し空冷での溶融紡糸に必要な溶融粘度が得られ難くなり、1重量部より多いと反応が促進されすぎ、ゲル化が起こり紡糸性が悪化する。
(C)成分を使用して(A)成分と(B)成分を反応させた場合には、溶融粘度が上昇し、空冷での溶融紡糸性が向上するだけでなく、得られたフィラメントの透明性をさらに向上させることができるので好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は、前記難燃性ポリエステル系組成物を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより製造することができる。
本発明に使用する難燃性ポリエステル系組成物は、たとえば、(A)および(B)および(C)成分を事前にドライブレンドした後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練することにより製造することができる。前記混練機の例としては、たとえば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどがあげられる。これらのうちでは、二軸押出機が、混練度の調整、操作の簡便性の点から好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は、前記難燃性ポリエステル系組成物を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸することにより製造することができる。
すなわち、たとえば、押出機、ギアポンプ、口金などの温度を270〜310℃とし、溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒に通過させたのち、ガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取ることにより紡出糸条が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度や長さ、冷却風の温度や吹付量、冷却水槽の温度、冷却時間、引取速度は、吐出量および口金の孔数によって適宜調整することができる。
得られた紡出糸条は熱延伸されるが、延伸は紡出糸条を一旦巻き取ってから延伸する2工程法および巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。熱延伸は、1段延伸法または2段以上の多段延伸法で行なわれる。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することもできる。
本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維には、必要に応じて、(B)成分以外の難燃剤、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、可塑剤、潤滑剤、などの各種添加剤を含有させることができる。顔料を含有させることにより、原着繊維を得ることができる。
このようにして得られた本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は、非捲縮生糸状の繊維であり、その繊度は、通常、10〜80dtex、さらには35〜75dtexであるのが、人工毛髪用に適している。また、人工毛髪用繊維としては、160〜200℃で美容熱器具(ヘアーアイロン)が使用できる耐熱性を有しており、着火しにくく、自己消火性を有していることが好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル系繊維が原着されている場合、そのまま使用することができるが、原着されていない場合、通常の難燃性ポリエステル系繊維と同様の条件で染色することができる。
染色に使用される顔料、染料、助剤などとしては、耐候性および難燃性のよいものが好ましい。
本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は、美容熱器具(ヘアーアイロン)を用いたカールセット性に優れ、カールの保持性にも優れる。また、必要に応じダル化剤を添加することで、繊維表面に凹凸を付与する事が可能であり、適度に艶消され人工毛髪としてより好適に使用することができる。さらに、繊維表面処理剤、柔軟剤などの油剤を使用し、触感、風合を付与して、より人毛に近づけることができる。
また、本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維は、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維など、他の人工毛髪素材と併用してもよいし、人毛と併用してもよい。
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛などの頭髪製品に使用される人毛は、一般に、キューティクルの処理や脱色および染色されており、触感、くし通りを確保するために、シリコーン系の繊維表面処理剤、柔軟剤を使用しているため、未処理の人毛とは異なり易燃性であるが、本発明の難燃性ポリエステル系人工毛髪用繊維と人毛とを人毛混率60%以下で混合した場合、良好な難燃性を示す。
なお、特性値の測定法は、以下のとおりである。
(強度および伸度)
インテスコ社製、INTESCO Model 201型を用いて、フィラメントの引張強伸度を測定する。長さ40mmのフィラメント1本をとり、フィラメントの両端10mmを、接着剤を糊付けした両面テープを貼り付けた台紙(薄紙)で挟み、一晩風乾させて、長さ20mmの試料を作製する。試験機に試料を装着し、温度24℃、湿度80%以下、荷重0.034cN×繊度(dtex)、引張速度20mm/分で試験を行ない、強伸度を測定する。同じ条件で試験を10回繰り返し、平均値をフィラメントの強伸度とする。
(難燃性)
繊度約50dtexのフィラメントを150mmの長さに切り、0.7gを束ね、一方の端をクランプで挟んでスタンドに固定して垂直に垂らす。有効長120mmの固定したフィラメントに20mmの炎を3秒間接炎させ、燃焼させる。燃焼性は、残炎時間が0秒(着火しない)を◎、3秒未満を○、3〜10を△、10秒以上を×とし、また、耐ドリップ性は、消火するまでのドリップ数が0を◎、5以下を○、6〜10を△、11以上を×として評価する。
(透明性)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントを太陽光のもと、目視により評価する。
◎:十分な透明感があり、色の深み(鮮やかさ)がある
○:透明感がある
△:若干不透明感(曇り)がある
×:不透明感があり、色の深みがない
(くし通り)
長さ30cm、総繊度10万dtexのトウフィラメントに繊維表面処理剤として、PO/EOランダム共重合体(分子量20000)とカチオン系帯電防止剤を50/50の比率で含む3%水溶液に浸漬し、それぞれ0.1%が付着するようにし、80℃で5分間乾燥させる。処理されたトウフィラメントにくし(NEW DELRIN COMB No.826)を0.3m/sの速さでトウフィラメントの上部3cmの所から下へ、完全に30回以上通過させ、くしの通り易さを評価する。
○:ほとんど抵抗ない(軽い)
△:若干抵抗がある(重い)
×:かなり抵抗がある、または、途中で引っかかる
(コールドセット性)
160mmのフィラメントを真っ直ぐに伸ばし、両端をテープで固定して、100℃で40分間加熱する。室温まで冷却したのち、85mmにカットし、2つ折りにして両端をミシン糸で結び、4mmΦの棒に釣り下げ、荷重が6.7mg/dtexになるように錘を付け、30℃、60%RHで24時間保持する。錘を外し、5分間静置したのちに80mmにカットし、フィラメントの曲がり具合(角度)を測定する。これを低温での癖の付きやすさの指標とし、真っ直ぐ(180℃)に回復するのが最も好ましい。
(カール保持力)
蓑毛にしたフィラメントを32mmΦのパイプに捲きつけ、120℃の温度で60分間カールセットし、室温で60分間エイジングしたのちに、カールしたフィラメントの一端を固定し釣り下げ、初期のフィラメント長、7日後までのフィラメント長の経時変化を調べる。これをカールの付きやすさ、保持性の指標とし、初期長は短い方がよく、低温でカールセットが可能で、かつ、より高温でセットできるのが好ましい。
(アイロンセット性)
ヘアーアイロンによるカールセットのしやすさ、カール形状の保持性の指標である。フィラメントを180℃に加熱したヘアーアイロンにかるく挟み、3回扱き予熱する。このときのフィラメント間の融着、櫛通り、フィラメントの縮れ、糸切れを目視評価する。つぎに、予熱したフィラメントをヘアーアイロンに捲きつけ、10秒間保持し、アイロンを引き抜く。このときの抜きやすさ(ロッドアウト性)、抜いたときのカールの保持性を目視評価する。
(耐失透性)
長さ10cm、総維度10万dtexのトウフィラメントをスチーム加工(120℃、相対湿度100%で1時間)した後に、室温で十分に乾燥する。スチーム加工前後の光沢、色相の変化を比較し、変化が大きいほど耐失透性が悪い。
◎:光沢、色相とも変化なし
○:光沢変化なし、色相若干変化あり
△:光沢、色相とも若干変化あり
×:光沢、色相とも明確な変化あり
(べたつき)
長さ30cm、総維度10万dtexのトウフィラメントを恒温恒湿室(23℃、相対湿度55%)内で3時間静置した後に、右手親指、人差し指、中指を使って評価する。
○:べたつき感なし
△:若干べたつき感あり
×:べたつき感あり
(溶融粘度)
(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用いて行った。テストスピードは50mm/min、オリフィス半径0.0500cm、バレル半径0.4775cm、バレル温度280℃として測定し、下記式より溶融粘度を算出した。
せん断圧力 τ=P・r/2L=F・r/2πR2L・・・・(1)
せん断速度 γ=4Q/πr3=4V/60πr3 (2)
見かけ粘度 η=τ/γ (3)
(式中、Pはバレル内圧、Fは押出荷重、Rはバレル半径、rはキャピラリー半径、Lはキャピラリー長さ、Qはフロー値、Vは押出量、vは押出速度である。)
(紡糸性)
○:安定に紡糸できる
△:紡糸できるが、所望の繊度が得られない
×:糸切れ、融着等が発生し安定に紡糸できない
[実施例1〜8]
水分量100ppm以下に乾燥したポリエチレンテレフタレート、臭素化エポキシ系難燃剤、反応促進剤からなる表1に示す比率の組成物に、着色用ポリエステルペレットPESM6100BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%、ポリエステルは(A)成分に含まれる)2部を添加してドライブレンドし、二軸押出機に供給し、280℃で溶融混練し、ペレット化したのちに、水分量100ppm以下に乾燥させた。ついで、溶融紡糸機を用いて280℃でノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金より溶融ポリマーを吐出し、加熱筒に通過させたのちガラス転移温度以下に冷却し、100〜150m/分の速度で巻き取って紡出糸条を得た。得られた紡出糸条を80℃の温水浴中で延伸を行ない、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行ない、単繊維繊度が50dtex前後のポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
*1:ポリエチレンテレフタレート、カネボウ合繊(株)製、IV値=0.85
*2:ポリエチレンテレフタレート、カネボウ合繊(株)製、IV値=0.60
*3:末端未封止型臭素化エポキシ系難燃剤、東都化成(株)製、分子量約30000
*4:末端未封止型臭素化エポキシ系難燃剤、東都化成(株)製、分子量約17000
*5:末端未封止型臭素化エポキシ系難燃剤、東都化成(株)製、分子量約4000
*6:モンタン酸ナトリウム、クラリアントジャパン(株)製
*7:ホスファイト系化合物、大八化学(株)製
得られた繊維を用いて、強伸度、難燃性、光沢、コールドセット性、カール保持力、アイロンセット性、耐失透性、べたつき、くし通りを評価した結果を表2に示す。
(比較例1)
水分量100ppm以下に乾燥したポリエチレンテレフタレート(EFG−85A、カネボウ合繊(株)製)100重量部に対し、臭素化エポキシ系難燃剤(SR−T10000、末端未封止型臭素化エポキシ系難燃剤、阪本薬品工業(株)製)15重量部、着色用ポリエステルペレットPESM6100BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%)2重量部を添加してドライブレンドし、ノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金を用いて溶融ポリマーを吐出し、空冷法により溶融紡糸を行なったが、樹脂組成物の溶融粘度不足のため所望の繊度が得られなかった。得られた紡出糸条を80℃の温水浴中で延伸を行い、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行い、単繊維繊度が20dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。尚、所望の繊度が得られなかった
ので、難燃性、コールドセット性、カール保持力、アイロンセット性は評価しなかった。
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレート(EFG−85A、カネボウ合繊(株)製)100重量部に対し、リン系難燃剤10重量部(PX−200、縮合リン酸エステル化合物、大八化学(株)製)着色用ポリエステルペレットPESM6100BLACK(大日精化工業(株)製、カーボンブラック含有量30%)2重量部を添加し、ドライブレンドし、ノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金を用いて溶融ポリマーを吐出し、空冷法により溶融紡糸を行なったが、溶融粘度不足のため糸切れが頻繁に発生し、巻き取りを行なうことができなかった。
(比較例3)
溶融紡糸方法を水冷式(溶融ポリマーを吐出し、口金下25cmの位置に設置した水温30℃の水浴中で冷却し、100m/分の速度で巻き取り紡出糸条を得た。)に変更し、得られた紡出糸条を80℃の温水浴中で延伸を行い、4倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行なった以外は比較例2と同様にして、単繊維繊度が50dtexのポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
得られた繊維を用いて、強伸度、難燃性、透明性、コールドセット性、カール保持力、アイロンセット性、耐失透性、べたつき、くし通りを評価した結果を表2に示す。
表2に示したように、比較例1、2に対し実施例では、空冷式での紡糸性、透明性に優れることが確認された。比較例3に対し実施例では、難燃性、耐熱性、透明性、くし通り、アイロンセット性、耐失透性、べたつきに優れることが確認された。
Claims (6)
- ポリアルキレンテレフタレートまたはポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルの1種以上からなるポリエステル(A)100重量部と臭素化エポキシ系難燃剤(B)5〜30重量部と前記ポリエステル(A)のカルボン酸末端基と前記臭素化エポキシ系難燃剤(B)のエポキシ基との反応を促進する反応促進剤(C)0.05〜1重量部を用いてなる難燃性ポリエステル系人工毛髪繊維。
- (A)成分が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種のポリマーからなるポリエステルである請求項1記載の難燃性ポリエステル系人工毛髪繊維。
- (C)成分が、炭素数6〜32の有機カルボン酸金属塩および/またはホスファイト系化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリエステル系人工毛髪繊維。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリエステル系繊維が空冷式の溶融紡糸方法にて形成されることを特徴とする人工毛髪繊維。
- 単繊維繊度が10〜80dtexである請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリエステル系人工毛髪繊維。
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