JP2007308830A - 可染性ポリプロピレン繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 分散染料で十分に染色可能であり、染色堅牢度に優れており、かつ操業性よく得ることができる可染性ポリプロピレン繊維を提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン中に共重合ポリエステルが1〜50質量%含有されたポリプロピレン繊維であって、共重合ポリエステルは、テレフタル酸と2種類以上のグリコール成分とからなり、グリコール成分はエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールであり、結晶融点が110〜190℃である可染性ポリプロピレン繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、共重合ポリエステルが含有されたポリプロピレン繊維であって、分散染料に染色可能で染色堅牢度に優れた可染性ポリプロピレン繊維に関するものである。
従来、ポリプロピレン繊維は酸及びアルカリ薬品に対して耐久性が高いことや、風合いがソフトであることから、土木資材、養生ネット等の産業資材用途あるいは紙おむつの表面材不織布用途などで多く使用されてきた。一方、衣料用途向けにポリプロピレン繊維を使用しようとすると、通常の染色方法では染色できないことが大きな問題となっている。
特許文献1ではポリプロピレンに1〜20重量%のポリエステルを含有させたポリプロピレン繊維が記載されている。特許文献1記載の繊維に用いるポリエステルはポリエチレンテレフタレートであり、融点は255℃程度のものであった。ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンとは相溶性が悪く、均一に配合することが困難である。このため、ある程度以上の量のポリエステルを配合し、染色性に優れ、かつ十分な強度を有する繊維を操業性よく得ることは困難であった。
また、特許文献2には1〜30重量%のポリアルキレングリコール成分を共重合したポリエステル組成物と安定剤を含むポリプロピレンからなる可染性のポリプロピレン繊維が開示されている。
特許文献2記載の繊維は、ポリプロピレン中に含有させるポリエステル成分の分散性を向上させるため、ポリアルキレングリコールを共重合したポリエステル用いるものである。しかしながら、ポリアルキレングリコール成分を共重合したポリエステルは熱あるいは紫外線により分解しやすく、染色堅牢度が劣るという欠点があった。
特開平6−25912号公報 特開2006−2275号公報
本発明は、上記のような問題点を解決し、分散染料で十分に染色可能であり、染色堅牢度に優れており、かつ操業性よく得ることができる可染性ポリプロピレン繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は次の(1)、(2)を要旨とするものである。
(1)ポリプロピレン中に共重合ポリエステルが1〜50質量%含有されたポリプロピレン繊維であって、共重合ポリエステルは、テレフタル酸と2種類以上のグリコール成分とからなり、グリコール成分はエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールであり、結晶融点が110〜190℃であることを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維。
(2)ポリプロピレン中に非晶性の共重合ポリエステルが1〜50質量%含有されたポリプロピレン繊維であって、非晶性の共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを用いるものであることを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、分散染料で十分に染色可能であり、染色堅牢度に優れており、紡糸操業性よく得ることができる。このため、本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、ポリマー中に顔料を添加して繊維を着色させる方法では製糸が困難であった、単糸繊度が2デシテックス以下の細繊度のポリプロピレン繊維を操業性よく得ることが可能となる。細繊度の本発明の可染性ポリプロピレン繊維を用いた織編物等の布帛は、ソフト感に優れた風合いの良好なものとなるので衣料用途としても好適に用いることができる。
第一の発明のポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン中に共重合ポリエステルが含有されたものであり、共重合ポリエステルは、テレフタル酸と2種類以上のグリコール成分を有するものである。グリコール成分はエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールであり、これらのうち少なくとも2種を含有するものである。テレフタル酸とエチレングリコール成分はポリエステルとしての基本物性(化学的あるいは物理的安定性、紡糸操業性、コスト)を満足するものであって、長鎖の脂肪族成分を有する1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオール成分はポリプロピレンとの相溶性を良好にすることができる。
中でも第一の発明のポリプロピレン繊維中に含有させる共重合ポリエステルとしては、以下の(1)〜(3)のものが好ましい。
(1)テレフタル酸、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール成分を有し、エチレングリコール/1,4−ブタンジオール成分のモル比率が20/80〜80/20のもの
(2)テレフタル酸、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール成分を有し、エチレングリコール/1,6−ヘキサンジオール成分のモル比率が20/80〜80/20のもの
(3)テレフタル酸、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール成分を有し、1,4−ブタンジオール/1,6−ヘキサンジオール成分のモル比率が20/80〜80/20のもの
そして、これらの第一の発明のポリプロピレン繊維中に含有させる共重合ポリエステルの結晶融点は110℃〜190℃である。結晶融点が110℃に満たない場合、分散染料による100℃以上の温度での染色工程でポリエステル成分が流動化し、繊維物性の劣化が生じたり、極端な場合、染色工程でポリエステル成分が流出してしまう場合がある。一方、結晶融点が190℃を超える場合、ポリプロピレンとの相溶性が低下する。
本発明においては、ポリプロピレン中に上記したような共重合ポリエステルを含有することによって、繊維を構成する主成分のポリプロピレンの結晶構造が含有された共重合ポリエステルによって乱された状態となっており、このように乱された領域に染料分子が入り込みやすくなるため、分散染料によって容易に染色が可能となる。
ポリプロピレン中の共重合ポリエステルの含有量は1〜50質量%であり、中でも10〜45質量%、さらには20〜40質量%であることが好ましい。共重合ポリエステルの含有量が1質量%未満であると、上記のような染色性の向上効果が不十分となる。一方、50質量%を超える場合、紡糸操業性が安定せず、強伸度や物性が低下する。
次に、第二の発明のポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン中に非晶性の共重合ポリエステルが含有されたものであるが、非晶性の共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを用いるものである。テレフタル酸とエチレングリコール成分はポリエステルとしての基本物性(化学的あるいは物理的安定性、紡糸操業性、コスト)を満足するために必要である。また、イソフタル酸は、ガラス転移温度を落とすことなくポリエステルの結晶性を阻害してより分散染料に染まりやすくする効果がある。長鎖の脂肪族成分を有する1,4−ブタンジオール成分はポリプロピレンとの相溶性を良好化するために必要である。
ここで、テレフタル酸/イソフタル酸成分のモル比率は90/10〜60/40とすることが好ましい。さらに、エチレングリコール/1,4−ブタンジオール成分のモル比率は20/80〜80/20とすることが好ましい。
また、第二の発明のポリプロピレン繊維に含有される共重合ポリエステル中には、ジカルボン酸成分としてアジピン酸も用いることが好ましい。アジピン酸成分は1,4−ブタンジオール成分と同様にポリプロピレンとの相溶性を良好化することができる。アジピン酸のモル比率はジカルボン酸成分中の5〜30%とすることが好ましい。
このように共重合ポリエステルを非晶性のポリエステルとすることによって、よりミクロに相分離したり、ポリマーアロイを形成しやすくなるためかポリエステル成分をポリプロピレン成分が完全に取り巻くような状態となり、例えばポリエステルを溶解するようなアルカリ溶液で処理しても全く溶出しない。このような分散状態は染色工程でポリエステル成分が流出するといったことが起こらないので好ましい。
ポリプロピレン中の非晶性の共重合ポリエステルの含有量は1〜50質量%であり、中でも10〜45質量%、さらには20〜40質量%であることが好ましい。非晶性の共重合ポリエステルの含有量が1質量%未満であると、上記のような染色性の向上効果が不十分となる。一方、50質量%を超える場合、紡糸操業性が安定せず、強伸度や物性が低下する。
第一、第二の発明のポリプロピレン繊維においては、共重合ポリエステル又は非晶性の共重合ポリエステルが含有されたポリプロピレンの相対粘度は、製糸性を考慮すると、1.40〜1.70とすることが好ましい。
また、第一、第二の発明のポリプロピレン繊維においては、含有させる共重合ポリエステル中に、ポリプロピレンとの相溶性を向上させるためにある程度長鎖の脂肪族ジカルボン酸あるいはジオールすなわち、セバシン酸、アジピン酸、6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,12−ドデカンジオールなどをさらに共重合させるのも好ましい。また、カチオン染料でも染色可能となるよう、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1〜5モル程度共重合させてもよい。
さらに、第一、第二の発明のポリプロピレン繊維中には、酸化チタン或いは硫酸バリウムなどの粒子が添加されていてもよく、さらには、抗酸化剤、艶消剤、染顔料、難燃剤等通常用いられる添加剤を添加することも可能である。
さらに、第一、第二の発明のポリプロピレン繊維は、ポリプロピレンの酸化による発熱、発火をさけるため、公知のヒンダードフェノール、ヒンダードアミン系酸化防止剤を含むことが好ましい。
第一、第二の発明のポリプロピレン繊維の主成分となるポリプロピレンは、公知のポリプロピレンを使用することができる。例えば、ホモポリプロピレン、あるいは共重合可能なエチレン、ブテン−1などの他のモノマーとの共重合体であってもよい。これらのポリプロピレンを単独あるいは2種以上を組合せて使用してもよい。
さらにポリプロピレンのメルトフローレート(以下MFRと略称する)は、7g/min以上、60g/min未満にあることが好ましい。ポリプロピレンのMFRが7g/min未満であると、製糸可能な紡糸温度が高くなるために、顔料や添加剤が熱分解することがあるために好ましくない。一方、MFRが60g/min以上の場合には、紡糸工程での曳糸性が低くなり、製糸安定性を損なうために好ましくない。中でも製糸安定性の面から20g/min以上、40g/min以下であることが好適である。
なお、MFRは、JIS K 7210に準拠し、測定温度230℃、測定荷重2.16kgにより測定される。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、短繊維であっても長繊維であってもよい。短繊維の場合、本発明の可染性ポリプロピレン繊維のみを用いて紡績糸としたり、あるいは他の天然繊維、合成繊維と混紡して混紡糸としてもよい。また、短繊維不織布を得ることもできる。短繊維不織布の場合、乾式不織布、湿式不織布のいずれとしてもよい。
短繊維とする際には、単糸繊度は特に限定するものではないが、通常、1〜5デシテックスとするのが好ましい。また、切断長は30〜80mm、中でも40〜60mmとすることが好ましい。
長繊維とする際には単糸繊度は特に限定するものではないが、0.5〜3デシテックスとすることが好ましい。
長繊維とする場合は捲縮をかけずに生糸の状態で使用してもよいし、仮撚機やインターレーサー等で捲縮付与加工を行ってもよい。また、他の天然繊維、合成繊維と混繊してもよい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の繊維断面形状は特に限定されるものではなく、通常の丸断面の他にも多角形や多葉形等の異形断面のものであってもよく、中空部を有するものであってもよい。
次に、本発明の可染性ポリプロピレン繊維の製造方法について説明する。
共重合ポリエステルや非晶性の共重合ポリエステルをポリプロピレンに添加する方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を選択することができる。紡糸工程の溶融押出の前に、ポリプロピレンと共重合ポリエステルをチップブレンドし、溶融押出機内で混練してもよく、また予め2軸押出機などを使用してポリプロピレン中に共重合ポリエステルを高濃度に加えたマスターチップ作成し、紡糸工程で上記と同様にチップブレンドを行ってもよい。この際、ポリプロピレン成分と共重合ポリエステルを均一に配合させるための相溶化剤を用いることが好ましい。このような相溶化剤としては例えばエチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体(商品名:lotader)あるいはエチレン成分とアクリル酸エステル成分との共重合体(商品名:lotryl)などが挙げられる。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、一般的な溶融紡糸及び延伸方法により製造できる。短繊維の場合は、1軸或いは2軸押出機により溶融混練されたポリマーを複数の紡糸孔が穿設された紡糸口金から溶融紡糸し、紡出した繊維を冷却した後引き取り、集束して10万デシテックスを超える未延伸糸条束とする。得られた未延伸糸条束を例えば複数段の熱ローラ延伸装置を用い、延伸して延伸糸条束とし、押込み型捲縮付与装置により機械捲縮を施した後、所定長に切断して短繊維とする。
長繊維の場合は、短繊維と同様に溶融紡糸を行い、未延伸糸をそのまま連続して延伸を行ってもよく、あるいは一旦巻取った後、別工程で延伸してもよい。延伸工程は1段或いは2段以上の多段であってもよく、多段延伸における延伸倍率の設定も特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよい。また延伸工程で接触或いは非接触型のヒータを用いて熱延伸を施してもよい。なお、延伸時の熱処理温度は60〜155℃とすることが好ましい。
熱処理温度が60℃より低い場合は、延伸時に単糸切れが多発しやすくなるため好ましくない。熱処理温度が155℃を超える場合には、断糸が発生しやすく、ローラに糸が巻きついた時など、ローラ上で糸が融解し、製糸性が悪化しやすい。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、ポリマー中に顔料を添加して繊維を着色させる方法では製糸が困難であった、単糸繊度が2デシテックス以下の細繊度のポリプロピレン繊維を操業性よく得ることができるため、様々な用途に使用することが可能となる。そして、細繊度の本発明の可染性ポリプロピレン繊維を用いた織編物は、ソフト感に優れた風合いの良好なものとなるので衣料用途としても好適に用いられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、各特性値の測定、評価は次のとおりに行った。
(1)融点(℃):パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−2型を用いて、昇温速度20℃/分で測定した。
(2)相対粘度:フェノール/四塩化エタン等質量混合物を溶媒とし、0.5g/dlのポリマー濃度で20℃にて測定した。
(3)染色堅牢度
得られたマルチフィラメントを用いて筒編地を作成し、赤色染料としてDianix Red UN-SE(1.0%omf)、青色染料としてDianix Blue UN-SE(1.0%omf)、黒色染料としてDianix Black HG-FS(4.0%omf)を用い、染色温度130℃で染色を行った。これらのサンプルをJIS L−0842 紫外線カーボンアーク灯火に対する染色堅牢度試験方法の第3露光法に準じて測定した。
(4)染色性
標準サンプルとして、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル繊維)のみからなる編地を上記(3)と同様の条件で染色したものを用い、上記(3)で得られた染色を行ったサンプルと比較して目視による評価を行い、以下の4段階評価とした。
◎:標準サンプルよりも良好な染色性を示す
○:標準サンプルと同程度の染色性を示す
△:標準サンプルより染色性がやや劣る
×:標準サンプルより染色性が明らかに劣る
(5)紡糸性
5錘で48時間連続して操業を行い、その間の紡糸時の糸切れ回数により以下のように3段階で評価した。
○:0〜5回
△:6〜10回
×:11回以上
実施例1
共重合ポリエステルとして、テレフタル酸と、エチレングリコール(a)と1,4−ブタンジオール(b)(モル比率a/b=50/50)成分からなり、相対粘度1.45、融点178℃の共重合ポリエステルを用いた。
MFR30g/minのホモポリプロピレン(日本ポリケム(株)製 SA03)70質量%、共重合ポリエステル28質量%、相溶化剤としてエチレンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体(商品名lotader)を2質量%となるように2軸押出混練機(L/D=30)に投入した。240℃で溶融混練し、冷却後チップ化を行って共重合ポリエステルが均一配合されたポリプロピレンチップを得た。
このチップを溶融紡糸装置に投入し、1軸押出機により溶融混練したポリマーを、孔径0.5mm、孔数36の紡糸口金から紡糸温度200℃、吐出量12.7g/分で溶融紡糸した。紡出した糸条に紡糸油剤を付与しながら、延伸することなく700m/分の速度で巻き取り、未延伸糸を得た。
得られた未延伸糸をローラ上で75℃に加熱しながら延伸倍率2.5倍で熱延伸を行い、84dtex/36フィラメント(単糸繊度2.3dtex)のポリプロピレンマルチフィラメントを得た。
実施例2〜6、比較例1
表1に示すように、共重合ポリエステルを構成する各種の成分と量を種々変更して共重合ポリエステルを得、紡糸温度を高融点ポリマーの融点+20℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。
実施例7〜8
表1に示す成分と量を含有する非晶性の共重合ポリエステルを用い、紡糸温度を200℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。
実施例9〜12、比較例2〜3
実施例6の共重合ポリエステルを用い、共重合ポリエステルの含有量と相溶化剤の含有量を表1に示すように種々変更した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。
実施例13
実施例1で用いたポリプロピレンを70質量%、実施例8で得られた非晶性の共重合ポリエステルを28質量%、実施例1で用いた相溶化剤2質量%を実施例1と同様にして溶融混練してポリプロピレンチップを得た。
このチップを溶融紡糸装置に投入し、孔数265の紡糸口金から紡糸温度200℃、吐出量232g/分で溶融紡糸を行った。紡出糸条を冷却した後、引き取り速度1000m/分で引き取って未延伸糸を得た。得られた糸条を集束し、11万デシテックスのトウにして、延伸倍率3.5、延伸温度80℃で延伸した。120℃のヒートドラムで熱処理してから押し込み式クリンパーを使用して捲縮を付与した後、長さ51mmに切断して、強度4.3cN/dtex、伸度33%、単糸繊度2.5デシテックスのポリプロピレン短繊維を得た。
得られた短繊維を梳綿機に通した後、常法に従って粗紡、精紡を行い、30/1の紡績糸を得た。紡績時の操業性は糸切れもなく良好であった。
実施例1〜12、比較例1〜3で得られたポリプロピレンマルチフィラメント及び実施例13で得られたポリプロピレン短繊維からなる紡績糸の各種の評価結果を表1に示した。
表1から明らかなように、実施例1〜12のポリプロピレンマルチフィラメント、実施例13のポリプロピレン短繊維からなる紡績糸ともに、紡糸性、染色性、染色堅牢度の評価のいずれも優れていた。
一方、比較例1のポリプロピレンマルチフィラメントは、共重合ポリエステルの結晶融点が高過ぎたため、ポリプロピレンとの相溶性が低下し、均一に混合しにくくなり、紡糸工程で糸切れが多発した。比較例2のポリプロピレンマルチフィラメントは、共重合ポリエステルの含有量が少なすぎたため、染色性、染色堅牢度ともに悪かった。比較例3のポリプロピレンマルチフィラメントは、共重合ポリエステルの含有量が多すぎたため、紡糸工程で糸切れが多発した。

Claims (2)

  1. ポリプロピレン中に共重合ポリエステルが1〜50質量%含有されたポリプロピレン繊維であって、共重合ポリエステルは、テレフタル酸と2種類以上のグリコール成分とからなり、グリコール成分はエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールであり、結晶融点が110〜190℃であることを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維。
  2. ポリプロピレン中に非晶性の共重合ポリエステルが1〜50質量%含有されたポリプロピレン繊維であって、非晶性の共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールと1,4−ブタンジオールを用いるものであることを特徴とする可染性ポリプロピレン繊維。

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