JP2006002275A - 可染性ポリプロピレン繊維及びその織編物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、単繊維繊度が細く、ポリエステル繊維と同様に染色可能で、タンブラー乾燥等によっても、酸化発熱のおこらないポリプロピレン繊維を得ることができ、特に衣料用途として好適に用いられるポリプロピレン繊維を提供する。
【解決手段】 1〜30重量%のポリアルキレングリコール成分を共重合したポリエステル組成物3〜30重量%と、高分子量型ヒンダードアミン系安定剤0.1重量%以上を含む可染性ポリプロピレン繊維にある。
【選択図】 なし

Description

本発明は、染色可能で酸化発熱の無いプロピレン繊維に関する。
従来、ポリプロピレン繊維は酸及びアルカリ薬品に対して耐久性が高い等の特徴を活かして、養生ネット等の産業資材用途で使用されてきた。一方、衣料用途向けにポリプロピレンを使用するためには、染色ができないことが大きな問題となっており、ポリプロピレン繊維を使用した衣料製品の意匠性が低くなるばかりでなく、顔料原着で繊維を製造しなければならないために、単糸繊度が細い繊維は、製造が難しく、スラブが多く発生するなどの品質面での問題も多かった。
また衣料用途では、洗濯やタンブル乾燥、有機溶剤によるドライクリーニングなどの処理が繰り返されるために、ポリプロピレン繊維に含有されていた安定剤が溶出し、耐光安定性が低下するだけではなく、特に綿素材と併せて使用された場合に、タンブラー乾燥等で過熱されたポリプロピレン繊維が酸化発熱を起こし、発火事故にいたる事などが知られていた。このため衣料用途向けポリプロピレン繊維の取り扱いについては、日本化学繊維検査協会による酸化発熱試験基準を設け、自主規制を行っているのが現状である。
これまでも、衣料用途向けにポリプロピレンを染色するために様々な検討が行われてきた。例えば、特許文献1ではポリプロピレンに可染性のポリエステルを添加する方法が記載されている。
また、特許文献2には安定剤の添加による耐酸化発熱性の改善された自動車天井材やダンボール等に使用されるポリプロピレン繊維が開示されている
特開平6−25912号公報 特開平10−183453公報
しかしながら、特許文献1記載の方法では、ポリプロピレン中のポリエステルの分散が不十分で、製糸性が悪く、単糸繊度5dtex以下の衣料用の原糸を得ることが困難であり、また酸化発熱に対する安定性も不十分なものであった。特許文献2記載の方法は、衣料用途を目的として開発されたものではなく、ドライクリーニング等の有機溶剤による処理により、安定剤が溶出または死活し、ポリプロピレン繊維特有の自己酸化発熱による発火を抑えうるものではなかった。
本発明の要旨は、1〜30重量%のポリアルキレングリコール成分を共重合したポリエステル組成物3〜30重量%と高分子量型ヒンダードアミン系安定剤0.1重量%以上を含む可染性ポリプロピレン繊維にある。
本発明は、染色可能で酸化発熱のないポリプロピレン繊維を得ることができ、特に衣料用途に好適なポリプロピレン繊維を得ることができる。
本発明では、1〜30重量%のポリアルキレングリコール成分を共重合したポリエステル組成物を3〜30重量%含むことが必要である。
ポリアルキレングリコール成分は、ポリエステル組成物のポリプロピレンへの分散性の点から必要であり、1重量%未満ではポリプロピレン中にポリエステル組成物が十分に分散しないために、紡糸延撚工程で糸切れが起こる。また30重量%を越えるとポリエステル組成物の熱安定性が低くなり、紡糸工程でポリエステル組成物の分解等が起こり紡糸安定性が悪化する。
ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサンメチレングリコールなどが挙げられ、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリオキシアルキレングリコール、p―キシレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール等のジオール又はそのエステル形成誘導体成分を含んでいてもよい。これらの共重合成分は互いに1種ずつ用いても良いし、2種以上用いることもできる。
また、本発明の可染性ポリプロピレン繊維に添加されるポリエステル組成物の量は、3重量%以上30重量%以下の範囲が必要である。さらに製糸安定性、染色性の点から5重量%以上15重量%以下の範囲が好ましい。ポリエステル組成物の添加量が3重量%未満の場合には、繊維を染色した際に十分に染色されない。またポリエステル組成物の添加量が30重量%を越える場合には、工業的に生産するに十分な製糸安定性が得られない。
なお該ポリエステル組成物は、ジカルボン酸類又はそのエステル形成誘導体とジオール又はそのエステル形成誘導体を原料として重縮合反応によって製造できる線状飽和ポリエステルであればよく、特に制限されるものではない。融点が250℃以上である場合は、溶融紡糸工程でポリプロピレンとポリエステル組成物を混練する際に、均一に混練することが難しくなるために、融点が250℃以下であることがさらに好ましい。
特に融点が低いポリブチレンテレフタレートを主体とするものが好ましく、ホモポリエステルであってもコポリエステルであってもよく、共重合成分としてアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、p―オキシエトキシ安息香酸等のジカルボン酸類またはそのエステル形成誘導体成分を含んでいても良い。
さらに、本発明におけるポリエステル組成物にはポリエステルが実質上線状である範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸モノカリウム塩等の多価カルボン酸成分、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等の多価ヒドロキシ化合物を少量共重合させても良い。
また、酸化チタン或いは硫酸バリウムなどの粒子が添加されていても何ら問題はなく、さらに本発明のポリエステル組成物に、抗酸化剤、艶消剤、染顔料、難燃剤等通常用いられる添加剤を添加することも可能である。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の原料となるポリプロピレンは、公知のポリプロピレンが制限なく使用される。例えば、ホモポリプロピレン、或いは共重合可能なエチレン、ブテン−1などの他のモノマーとの共重合体が挙げられる。これらのポリプロピレンを単独或いは2種以上の組合せで使用しても良い。さらにポリプロピレンのメルトフローレート(以下MFRと略称する)は、7g/min以上60g/min未満にあることが好ましい。該ポリプロピレンのMFRは7g/min未満であると、製糸可能な紡糸温度が高くなるために、顔料や添加剤が熱分解することがあるために好ましくない。またMFRが60g/min以上の場合には、紡糸工程でのドローダウンが大きくなり、製糸安定性を損なうために好ましくない。製糸安定性の面から20g/min以上40g/min以下の範囲であることが好適である。なお、MFRは、JIS K 7210に準拠し、測定温度230℃、測定荷重2.16kgにより測定される。
さらに本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、0.1重量%以上の高分子量型のヒンダードアミン系光安定剤を含むことが必要である。該ヒンダードアミン系光安定剤の添加量が0.1重量%未満では、酸化発熱を防止することが困難である。なお製糸安定性、経済性の点から5.0重量%以下の範囲であることが好ましい。
高分子量型のヒンダードアミン系光安定剤としては、公知のヒンダードアミン系安定剤であれば、その化学構造等は特に制限されることはないが、分子量1000以上の高分子量型ヒンダードアミン系安定剤が好ましい。分子量1000未満のヒンダードアミン系安定剤では、溶融紡糸或いは延伸工程、繊維形態になってからの通常の洗濯或いは有機溶剤を利用したクリーニングにより、安定剤が繊維内部から溶出しやすく、衣料用途に十分な耐光及び耐熱安定性が得られにくく、自己酸化発熱を起こしやすくなる。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維を得るために、ポリエステル組成物をポリプロピレンに添加する方法については特に限定されることなく、任意の方法を選択することができる。紡糸工程の溶融押出の前に、ポリプロピレンとポリエステル組成物をチップブレンドし、溶融押出機内で混練してもよく、また予め2軸押出機などを使用してポリプロピレン中に高濃度でポリエステル組成物を分散させたマスターバッチを作成し、紡糸工程で同様にチップブレンドを行いポリエステル組成物を添加しても何ら問題はない。
本発明の可染性ポリプロピレン繊維の製造は、一般的な溶融紡糸及び延伸方法により行われる。通常公知な紡糸工程で製糸すればよく、1軸或いは2軸押出機により溶融混練された原料をノズルから押出し、紡糸油剤を給油し、糸条を巻き取ることより未延伸糸をえる。
未延伸糸はそのまま連続工程で延伸をおこなっても良く、或いは一旦巻取った後、エージングを行い延伸しても良い。延伸工程は1段或いは2段以上の多段であっても良く、多段延伸における延伸倍率比の設定も特に限定されない。また延伸工程で接触或いは非接触型の熱源を用いても何ら問題ない。延伸時の延伸ローラー温度は60℃以上155℃以下の範囲が好ましい。
延伸ローラー温度が60℃より低い場合は、延伸時に単糸切れが多発するために好ましくない。ローラー温度が155℃を超える場合には、断糸が発生しローラーに原糸が巻きついた時など、ローラー上で原糸が融解し、製糸工程の管理面で不都合が生じる。延伸倍率についても溶融紡糸されたフィラメントの破断伸度未満の範囲で任意に設定することが可能である。最終的に繊維の強伸度は特に限定されることはない。
さらに本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、捲縮付与加工を行っても問題はない。延伸糸を公知の仮撚り技術で加工しても良く、延伸工程から連続で捲縮付与加工を行っても良い。
また、本発明の可染性ポリプロピレン繊維は、顔料原着による着色では製糸が困難であった、単繊維繊度が2dpf以下の細繊度のポリプロピレン繊維を染色することが可能となり、本発明の可染性ポリプロピレン繊維を用いた織編物は、風合いの良いファブリックが得られるばかりでなく、酸化発熱もおこらず衣料用途として好適に用いられるものである。
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。なお、各物性の測定、評価は次の方法でおこなった。評価結果は表1に示した。
(酸化発熱試験方法)
1.試料の前処理
測定するマルチフィラメントの筒編み地を作成し洗濯を行う。洗濯条件はJIS L0217 103法に準じ、液温40℃、浴比1:30、洗濯用合成洗剤(花王(株)製アタック)(表示標準使用量0.7g/l)と漂白剤(花王(株)製ハイター)(2.3g/l)を使用し、洗濯を行い乾燥を実施する。乾燥はタンブルを用いて60℃で30分行う。以上の前処理操作を100回繰り返す。
2.酸化発熱試験
試験容器は鉄製円筒形容器を用いる。容器の内径は51mmで深さ30mmである。容器の側壁には直径5mmの穴が140個、蓋及び底面に直径5mmの穴が各25個開けてある。
試験片は直径5cmの円形に調整する。また試験片と同じ大きさの綿布を調整する。試験片と綿布を交互に重ねて上記円形容器の中に詰め込む。この時、該試験片の重量比は該円筒容器内に詰め込んだサンプルに対して40〜60重量%となるようにする。
上記サンプル中央に熱伝対を挿入し、ギアオーブンの中で150℃恒温状態で100時間保持し、温度変化及び発熱状態を調べることによりサンプルの酸化発熱を試験する。100時間保持しても温度上昇の起こらないものを○、温度上昇により試験片の溶解が生じたものを△、試験片の温度が250℃以上に上昇し、かつ試験後の綿部分に黒く焦げができている状態であれば、発火有りで×と判定した。
(染色性評価方法)
マルチフィラメントの編地を作成し、染料としてダイスター製 ダイアニクスブルーを用い、温度100℃、染料濃度0.01%、浴比1:15で20分間処理して染色を行った。標準サンプルとして、ポリエステル繊維単独からなる編地を同様の条件で染色したものを用い、目視による評価を行った。標準サンプルと同程度の染色性を示すものを○、明らかに劣るものを×とした。
主成分がテレフタル酸とブタンジオールであり、イソフタル酸を5モル%、テトラメチレングリコールを8重量%共重合したポリエステル組成物と、MFR30g/minのホモポリプロピレン(日本ポリケム(株)製 SA03)を、ポリエステル組成物が30重量%となるように2軸押出機により240℃により溶融混練し、冷却後ペレタイズを行い、ポリエステル組成物の濃度が30%重量であるポリプロピレンチップを得た。
該ポリプロピレンチップをSA03と高分子量型ヒンダードアミン系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 CHIMASSORB119FL 分子量2286)20%重量濃度のマスターバッチとを、ポリエステル組成物が10重量%、高分子量型ヒンダードアミン系安定剤が0.5重量%となるように、チップブレンドし、紡糸機の1軸押出機に投入した。
1軸押出機により、溶融混練したポリマーを、ギヤポンプで定量しながら、ホール径0.6mm、ホール数36である紡糸ノズルから吐出量10.5g/minで押出し、紡糸油剤を付与しながら、500m/minの速度で巻き取った。得られた未延伸糸をローラー上で80℃で加熱しながら、2.5倍に延伸し、84dtex36フィラメント(単繊維繊度2.3dtex)のポリプロピレンマルチフィラメントを得た。染色性は良好で、酸化発熱試験による発火も起こらなかった。
ポリエステル組成物を、イソフタル酸を5モル%、アジピン酸を5モル%、テトラメチレングリコールを8重量%共重合し、繊維中のポリエステル組成物含有量を25重量%とした以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。染色性は良好で、酸化発熱試験による発火も起こらなかった。
ポリエステル組成物を、イソフタル酸を10モル%、アジピン酸を10モル%、テトラメチレングリコールを8重量%共重合した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。染色性は良好で、酸化発熱試験による発火も起こらなかった。
ヒンダードアミン系安定剤をチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 TINUVIN770DF(分子量481)に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。染色性に問題はないが、酸化発熱試験において試験片の一部に溶解が生じた。
(比較例1)
繊維中のポリエステル組成物含有量を2重量%とした以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。酸化発熱試験による発火は起こらなかったが、ポリエステル組成物の含有量が少ないため、ポリエステル繊維に比べ染色性が不十分であった。
(比較例2)
繊維中のポリエステル組成物含有量を40重量%とした以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを紡糸したが、毛羽、糸切れが多発し安定に巻き取ることが困難であった。
(比較例3)
高分子量型ヒンダードアミン系安定剤を添加しない以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンマルチフィラメントを得た。染色性に問題はないが、酸化発熱試験において発火があった。
Figure 2006002275

Claims (3)

  1. 1〜30重量%のポリアルキレングリコール成分を共重合したポリエステル組成物3〜30重量%と高分子量型ヒンダードアミン系安定剤0.1重量%以上を含む可染性ポリプロピレン繊維
  2. 高分子量型ヒンダードアミン系安定剤の分子量が1000以上である請求項1記載の可染性ポリプロピレン繊維
  3. 請求項1または2に記載の可染性ポリプロピレン繊維を用いた織編物
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