本発明の中空ブレンド繊維を形成する成分Aは繊維形成能を有する。本発明における繊維とは細く長い形状を指し、一般的に言われる長繊維(フィラメント)であっても短繊維(ステープル)であってもよく、あるいは電気植毛加工などに用いられる非常に短い、通常10mm以下の長さの繊維であってもよく、これらの繊維形状となしうるポリマであれば繊維形成能を有すると認められ特に制限されない。
本発明で使用される中空ブレンド繊維を形成する成分Aは、繊維形成能を有するポリマであり、汎用的に用いられるポリマとしては、例えば、ポリエステル系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリイミド系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマやその他ビニル基の重合により形成されるポリビニル系ポリマ、フッ素系ポリマ、セルロース系ポリマ、シリコーン系ポリマ、エラストマーおよびその他多種多様なエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
より具体的には、例えば、ビニル基を有したモノマーが、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの付加重合反応によりポリマが生成する機構により合成されるポリオレフィン系ポリマやその他のポリビニル系ポリマとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、などが挙げられるが、これらは例えばポリエチレンのみ、あるいはポリプロピレンのみのように単独重合によるポリマであっても良いし、あるいは複数のモノマー共存下に重合反応を行うことで形成される共重合ポリマであっても良く、例えばスチレンとメチルメタクリレート存在下での重合を行うとポリ(スチレン−メタクリレート)という共重合したポリマが生成するが、このような共重合体であるポリマであっても良い。
また、成分Aとして、例えば、カルボン酸あるいはカルボン酸クロリドと、アミンの反応により形成されるポリアミド系ポリマを挙げることができ、具体的にはナイロン6、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,9、ナイロン6,12、ナイロン5,7およびナイロン5,6などが挙げられるほか、本発明の主旨を損ねない範囲で他の芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸と芳香族、脂肪族、脂環族ジアミン成分が、あるいは芳香族、脂肪族、脂環族などの1つの化合物がカルボン酸とアミノ基を両方有したアミノカルボン酸化合物が単独で用いられていてもよく、あるいは第3、第4の共重合成分が共重合されているポリアミド系ポリマであっても良い。
また、成分Aとして、例えば、カルボン酸とアルコールのエステル化反応により形成されるポリエステル系ポリマを挙げることができる。具体的には、本発明で用いられるポリエステル系ポリマとしては、例えばジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合から形成される重合体を挙げることができ、これらにかかるポリマとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどが挙げられる。そして、特に制限されるものではないものの、ジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合から形成されるポリエステル系ポリマには、本発明の主旨を損ねない範囲で他の成分が共重合されていても良く、共重合成分のジカルボン酸化合物としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらジカルボン酸化合物のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
また共重合成分として、例えばジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールS、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらジオール化合物のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
また共重合成分として、1つの化合物に水酸基とカルボン酸を具有する化合物、すなわちヒドロキシカルボン酸を挙げることができ、該ヒドロキシカルボン酸としては、例えば乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレートバリレート、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカルボン酸といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらヒドロキシカルボン酸のうち1種を単独で用いても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いても良い。
またポリエステル系ポリマとしては、芳香族、脂肪族、脂環族などの1つの化合物がカルボン酸と水酸基を両方有したヒドロキシカルボン酸化合物を主たる繰り返し単位とする重合体であっても良く、特に制限されるものではないものの、例えばこれらにかかる重合体としては、ポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレートバリレート)、といったポリ(ヒドロキシカルボン酸)を挙げることができ、その他にも、これらポリ(ヒドロキシカルボン酸)には、本発明の主旨を損ねない範囲で芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸、あるいは芳香族、脂肪族、脂環族ジオール成分が用いられていてもよく、あるいは複数種のヒドロキシカルボン酸が共重合されていても良い。
その他に本発明で用いられるの繊維形成能を有する成分Aのポリマとしては、アルコールと炭酸誘導体のエステル交換反応により形成されるポリカーボネート系ポリマ、カルボン酸無水物とジアミンの環化重縮合により形成されるポリイミド系ポリマ、ジカルボン酸エステルとジアミンの反応により形成されるポリベンゾイミダゾール系ポリマや、そのほかにもポリスルホン系ポリマ、ポリエーテル系ポリマ、ポリフェニレンスルフィド系ポリマ、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマ、ポリエーテルケトンケトン系ポリマなどの合成ポリマの他、セルロース系ポリマや、キチン、キトサンおよびそれらの誘導体など、天然高分子由来のポリマなども挙げられる。後述するように成分Aと成分Bは溶融状態で好ましいブレンド状態を形成することから、これら成分Aとして挙げられるポリマの中で、好ましいのは熱可塑性を有するポリマである。
これら繊維形成能を有するポリマの中で成分Aについては、後述するように成分Bと非常に大きなガラス転移温度差(Tgb−Tga)を有することで、成分Aと成分Bとの界面に大きな空隙を生成しやすく好ましい、あるいは繊維形成時の紡糸性あるいは延伸性に優れるという点でポリオレフィン系ポリマが好ましい。これらポリオレフィン系ポリマのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリブチレンといった側鎖のないもしくは側鎖長の小さなポリオレフィン系ポリマは成分Bとのガラス転移温度差が大きく設計できるという点でより好ましい。なおここで言うガラス転移温度Tgは、後述するB.の方法で測定される。
また同様に、これら繊維形成能を有するポリマの中で成分Aについては、後述するように臨界表面張力γcAが大きく、かつ延伸時の張力が小さく、延伸時に成分Bとの界面に空隙が発現しやすく好ましいという点で、成分Aとしてはポリエステル系ポリマまたはポリアミド系ポリマが好ましく、延伸時により軽量性を高めうることからポリエステル系ポリマがより好ましい。そしてこれらポリエステル系ポリマのうち、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、あるいは乳酸であるポリエステル系ポリマが好ましく、融点が高く耐熱性に優れることから主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル系ポリマがより好ましい。なお、これらナイロン6などのポリアミド系ポリマあるいはポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系ポリマは、後述するC.の方法において共に臨界表面張力γcAが約43dyne/cm程度であるが、より臨界表面張力を高くしうる共重合成分、例えばスルホイソフタル酸塩や、リン酸塩などを共重合させた共重合ポリエステルなどでは43dyne/cmよりも大きな臨界表面張力γcをとりうるため好ましい。
そして本発明の成分Aの臨界表面張力γcAについては、成分Aと成分Bとの界面剥離がより効率的に発現するという点で、また後述する成分Aと成分Bとの臨界表面張力の関係γcA−γcBが大きい値ほど界面剥離において好ましいことから、γcAの値は35dyne/cm以上であることが好ましく、38dyne/cm以上であることがより好ましく、40dyne/cm以上であることが特に好ましい。
本発明の成分Aとして好ましいとされるポリエステル系ポリマの粘度については特に制限されるものではなく、通常合成繊維に供する固有粘度(以下IVと称することがある)のポリエステル系ポリマを使用することが出来る。例えばポリエチレンテレフタレートであれば、IV0.4〜1.5であることが好ましく、0.5〜1.3であることがより好ましい。また、ポリプロピレンテレフタレートであれば、IV0.7〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.8であることがより好ましい。あるいは、ポリブチレンテレフタレートであれば、IV0.6〜1.5であることが好ましく、0.7〜1.4であることがより好ましい。また本発明に用いるポリエステルで、その粘度をIVにて評価しないものとして、例えばポリ乳酸等を挙げることができるが、これらはIVではなく重量平均分子量(以下単に平均分子量と称することがある)にて記載しうるものであり、例えばポリ乳酸であれば平均分子量が5万〜50万のものが通常用いられ、好ましくは10万〜30万、加工性や紡糸性を考えると15万〜25万の平均分子量のポリ乳酸がより好ましく用いられる。またポリアミド系ポリマにおいては極限粘度[η]などが用いられ、例えばナイロン6であれば[η]が1.9〜3.0であることが好ましく、2.1〜2.8であることがより好ましい。
そして、成分Aは、これらの中から選ばれるポリマを1種類を単独で用いても良くあるいは発明の主旨を損ねない範囲において、複数種を併用しても良い。
本発明の中空ブレンド繊維中における成分Aの含有量は、50重量%以上であるものの、50重量%以上の含有量においては特に制限されるものではなく、任意の含有量を取ることができる。特に繊維物性において成分Aが繊維物性を左右し、安定した繊維物性を確保する上で好ましいことから、中空ブレンド繊維における成分Aの含有量は、70〜99.5重量%であることが好ましく、より好ましくは80〜98重量%、更により好ましくは85〜95重量%である。
本発明の熱可塑性ポリマである成分Bは、後述するように成分Aとブレンド繊維を形成し、かつ繊維単糸横断面において島を形成することから、すなわち成分Aに対して実質的に非相溶である。本発明において「非相溶」とは、成分Aと成分Bが高分子の分子鎖サイズオーダーで相溶せず、成分Aの中で成分Bにより形成される平均ドメインサイズ(ドメインで最も短い直径相当長さ)が、少なくとも10nmの大きさを有するものを指し、下記実施例のF.の方法にて確認される。成分Aと成分Bが相溶性である場合、すなわち成分Bで形成される平均ドメインサイズが10nm未満である場合、成分Bは成分Aとブレンド繊維を形成するものの、前述した成分Bが形成する島は非常に小さなドメインとなり、空隙を有することがない、もしくは軽量性に優れた繊維となるのに必要な空隙が十分に発現せず、結果的に軽量性に劣る中空ブレンド繊維となり好ましくない。
本発明の成分Bは、成分Aに対して前述のとおり非相溶であって、ブレンド繊維となした場合に島を構成するものであれば特に制限されるものではなく、成分Aと同様の多種多様な熱可塑性ポリマを、成分Aと成分Bとの非相溶性を勘案して使用することができる。例えば、ポリエステル系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリイミド系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマやその他ビニル重合体、フッ素系ポリマ、セルロース系ポリマ、シリコーン系ポリマ、エラストマー、その他多種多様なエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
より具体的には、前述の通り好ましいとされる成分Aとしてポリエステル系ポリマあるいはポリアミド系ポリマを採用する場合には、後述する臨界表面張力、密度、あるいはガラス転移温度(Tg)などの観点から好ましいものとして、成分Bにはポリオレフィン系ポリマをまず挙げることができる。ここで言うポリオレフィン系ポリマとは、前述と同様、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合といったビニル基を有した芳香族、脂肪族、あるいは脂環族のモノマーが付加重合反応、もしくは開環重合反応によりポリマが生成する機構により合成されるポリオレフィンやその他のビニル重合体などのポリマの総称であって、ポリオレフィンであれば例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンの単独重合体あるいは共重合体、誘導体が挙げられ、またその他のビニル重合体であればポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、ポリノルボルネンおよびこれらの共重合体や誘導体などが挙げられる。
そして該ポリオレフィン系ポリマとして例示されるものの中で、好ましい成分Bとしては、ポリオレフィンとして、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、メチルブテン、メチルペンテン、エチルペンテン、ヘキセン、エチルヘキセン、オクテン、デセン、テトラデセンおよびオクタデセンなどをモノマーとして用いたポリオレフィンのほかに、脂環族モノマーの開環重合、付加重合などにより合成される、例えば下記化学式1、化学式2、あるいは化学式3に示す、環状構造を有するポリオレフィン系ポリマが挙げられる。
ここで置換基X、Yはそれぞれ、水素、アルキル基、脂環基、シアノ基、アルキルエステル基、脂環エステル基の中から選ばれる基。
該構造を有するものとしては、例えば、JSR(株)製アートン(登録商標)、日本ゼオン(株)製ゼオノア(登録商標)などが挙げられるものの環状構造を有するポリオレフィンは特にこれらに制限されるものではない。
上記これらポリオレフィン系ポリマはモノマー1種類を単独で用いた単独重合体であっても良く、あるいは複数種を用いた共重合体であっても良く、さらにはオレフィンと他のビニル化合物とを共重合した共重合体であってもよい。共重合成分として具体的には、2〜6個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステルや、1〜20個の炭素原子を有するアルコールから導かれるアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルや、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸あるいは該不飽和カルボン酸の酸ハライド、アミド、イミド、酸無水物およびエステルや、スチレンあるいはスチレン誘導体や、アクリロニトリルあるいはアクリロニトリル誘導体や、ビニロキシアルキル誘導体(アルコール型あるいはカルボン酸型)といったビニル化合物、あるいは脂環構造を持つビニル化合物が挙げられる。特に該脂環構造を共重合成分として有するポリオレフィン系ポリマとしては、例えば三井化学(株)製アペル(登録商標)などが挙げられるが、言うまでもなく該脂環構造を有する共重合ポリオレフィン系ポリマはこれに限定されるものではない。
そしてこれら成分Bで好ましいとして例示したポリオレフィン系ポリマのうち、形成される繊維の空隙生成性が高いという点で、プロピレンおよび/またはメチルペンテンを主たる繰り返し単位とするポリオレフィン系ポリマ、あるいは環状構造を有するポリオレフィン系ポリマ、脂環構造を有する共重合ポリオレフィン系ポリマが好ましい。
また、本発明の成分Bとしては、前述の通り成分Aが好ましいとするポリエステル系ポリマあるいはポリアミド系ポリマ、あるいはポリオレフィン系ポリマである場合には、ポリエーテル系ポリマも挙げられ、その中でポリフェニレンエーテルに代表される芳香族ポリエーテル系ポリマが好ましいものとして挙げられる。芳香族ポリエーテル系ポリマは、フェニレンオキサイドが主たる構造を成す単独重合体であっても良く、あるいは第2成分を共重合させた共重合体であっても良く、また発明の主旨を損ねない範囲において、添加物含有するもの、すなわちポリスチレン系ポリマ、ポリアミド系ポリマ、ポリエステル系ポリマ、ポリオレフィン系ポリマなどを第二成分としてアロイ化した変性ポリフェニレンエーテルであっても良い。該変性ポリフェニレンエーテルとしては、例えば三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユピエース(登録商標)、レマロイ(登録商標)や、日本ジーイープラスチックス(株)製のノリル(登録商標)、旭化成(株)製のザイロン(登録商標)、住友化学(株)製のアートレックス(登録商標)、アートリー(登録商標)などが挙げられるが、言うまでもなく好ましい成分Bとして挙げられる芳香族ポリエーテル系ポリマがこれらに限定されるものではない。なお芳香族ポリエーテル系ポリマはTgが通常150℃以上を示し、本発明において後述するように、ガラス転移温度が高いという点で好ましい。
本発明における成分Bは、成分Bとの組み合わせにおいて、本発明の主旨を損ねない範囲において特に制限されることなく多種多様のものを採用できるものの、本発明の中空ブレンド繊維を用いた場合に着色が見られると用途が制限され、好ましくない場合もある。そこで該黄変に由来する着色を回避するために、成分Bの分子骨格にマレイミド構造を持たないことが好ましい場合がある。成分Bが該マレイミド構造を有する場合、前述の通り、生成した後の繊維が黄変するといったデメリットが見られる場合があるのみならず、成分Aとの組み合わせによっては成分Aと成分Bとの親和性が高すぎるため空隙生成性に乏しく、十分な軽量性が発現しないことがあり、またあるいは、空隙生成に劣ることで得られる繊維の遮光性も低くなる場合がある。該マレイミド構造を有する成分Bとしては、例えば電気化学(株)製のスチレンマレイミド系ポリマ(タイプ:MS−NAなど)などが挙げられるが、もちろん本発明の中空軽量繊維の用途、すなわち着色を気にすることのない場合には成分Bとしてマレイミド構造を有するものを採用したとしても全く差し支えない。
本発明における成分Bは、前述の通り例示した多種多様なポリマ1種類を単独で用いても良く、あるいは発明の主旨を損ねない範囲において、複数種を併用しても良い。
本発明で用いられる成分Bは、繊維の軽量感がより優れるという点で密度が小さいほど好適であり、密度が1.0g/cm3以下であることが好ましい。特に制限されるものではないものの、前述の成分Bの中では、ポリオレフィン系ポリマが挙げられ、それらの中で、該密度が1.0g/cm3以下のものとしては、エチレンおよび/またはプロピレンおよび/またはブチレンおよび/またはメチルペンテンが80モル%以上を占めるポリオレフィンの単独重合体あるいは共重合体が挙げられより好ましく、プロピレンおよび/またはメチルペンテンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体が更により好ましい。特に、かかるプロピレンおよび/またはメチルペンテンが80モル%以上を占める共重合体においては、共重合されるものとしては特に制限されるものではないものの、延伸性や可塑性などの加工性を向上させるために、例えば炭素数が5個以上の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、あるいはこれらの誘導体を側鎖に有するビニル化合物を共重合したものが挙げられる。そして該密度は、より好ましくは0.95g/cm3以下であり、さらにより好ましくは0.90g/cm3以下である。
また本発明で用いられる成分Bの平均分子量については特に制限されるものではないものの、繊維中における形態保持性および剛性の点から数平均分子量が2,000〜10,000,000であることが好ましく、5,000〜5,000,000であることがより好ましく、10,000〜1,000,000であることが更により好ましい。
本発明で用いられる成分Bの溶融粘度は、特に制限されるものではなく、用いるポリエステルの溶融紡糸温度で、剪断速度が10sec-1の剪断粘度が10〜100,000ポイズのポリマが通常用いられ、好ましくは100〜50,000ポイズである。
本発明の中空ブレンド繊維で成分Bは、中空ブレンド繊維の延伸時に空隙が生成しやすく、得られる繊維の軽量性がより高いという点で、成分Bのガラス転移温度(Tgb)は成分Aのガラス転移温度(Tga)より5℃以上高いことが好ましい。ここでガラス転移温度(Tg)とは、後述実施例のB.の方法で定義される。そしてTgbはTgaより10℃以上高いことがより好ましく、30℃以上高いことがさらにより好ましく、50℃以上高いことが特に好ましい。TgbがTgaより5℃以上高いことで、延伸時の空隙生成においては成分Aと成分B間の界面剥離で発現するのみならず、成分B自身の割裂及び剥離でも発現する。さらに溶融紡糸においても、成分Bは成分Aよりも高い温度で固化し空隙生成に有利な構造を形成し、やはり軽量性を向上させるため好ましい。そして該島成分をなす成分Bのガラス転移温度(Tgb)は、より空隙生成に適しているという点で、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更により好ましく、130℃以上であることが特に好ましい。なお各成分Aのガラス転移温度Tgaは、ポリエチレンテレフタレートであれば72℃に、ポリプロピレンテレフタレートであれば47℃に、ポリブチレンテレフタレートであれば24℃に、ポリ乳酸であれば58℃に、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートであれば87℃に、ポリエチレンナフタレートであれば122℃に、ナイロン6であれば72℃(ただし133Pa以下で12時間以上乾燥させた絶乾時)にそれぞれ観測される。
本発明で用いられる中空ブレンド繊維における成分Bの添加量は特に制限されるものではなく、採用する成分Aと成分Bとの組み合わせや目的とする軽量性、あるいは製糸性などの特性に合わせて適宜決定すればよいものの、より製糸性に優れかつ適度な軽量性が付与可能であるという点から、本発明の中空ブレンド繊維における成分Bの含有量は1〜40重量%が好ましく、2〜30重量%がより好ましく、5〜20重量%がさらにより好ましい。
本発明において、紡糸にかかるブレンドポリマには、本発明の効果を妨げない範囲で、成分Aと成分B以外のポリマを配合することができる。
本発明の成分Aの臨界表面張力γcAと成分Bの臨界表面張力γcBの関係は、γcA−γcB≧10dyne/cmであることが好ましい。該臨界表面張力の関係γcA−γcBが10dyne/cm以上である場合、成分Aと成分Bの界面において延伸時に剥離したのちに空隙が発現するという本発明の機構において、より界面が剥離しやすく複合繊維の軽量性がより優れるため好ましい。そして該臨界表面張力の関係γcA−γcBは大きな値をとるほど空隙が発現しやすく軽量性が優れることから、13dyne/cm以上であることがより好ましく、15dyne/cm以上であることがさらにより好ましい。そして該関係γcA−γcBの上限は、特に制限されるものではないものの、組み合わせの関係から通常50dyne/cm以下となりうる。
該臨界表面張力の好ましいとされるγcA−γcB≧10dyne/cmの関係を満たす成分Aと成分Bの組み合わせとしては特に制限されるものではないものの、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレートをはじめとするポリエステル系ポリマを成分Aとし、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテンをはじめとするポリオレフィン系ポリマを成分Bとする組み合わせや、あるいはナイロン6やナイロン66などのポリアミド系ポリマを成分Aとし、前述ポリオレフィン系ポリマを成分Bとする組み合わせなどを挙げることができ、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレートを成分Aとし、ポリメチルペンテンを成分Bとする組み合わせがより好ましい。
また本発明の成分Bは、本発明の方法により得られる複合繊維の成分Aと成分Bとの界面において剥離して空隙を発現しやすくし、結果的に得られる複合繊維がより軽量性に優れるという点で、成分Bの臨界表面張力γcBは10〜30dyne/cmであることが好ましく、15〜25dyne/cmであることがより好ましい。この臨界表面張力γcBの範囲を満足する成分Bとしては、例えば、フッ素系ポリマ(18〜28dyne/cm)、シリコーン系ポリマ(18〜25dyne/cm)、ポリオレフィン系ポリマ(24〜30dyne/cmのもの)が挙げられ、これらの中でもポリオレフィン系ポリマが前述の密度の点からより好ましく、前述のオレフィンモノマーあるいは他のエチレン性不飽和化合物からなるポリオレフィンのうち、プロピレンおよび/またはメチルペンテンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体が好ましく、メチルペンテンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体がより好ましく、ポリエステルを成分Aとする組み合わせにおいて空隙発現性に非常に優れ、大変好ましい。特に前述のプロピレンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体の場合は29〜30dyne/cm、メチルペンテンが80モル%以上を占める単独重合体あるいは共重合体の場合は24〜25dyne/cmである。
本発明の成分Aおよび成分Bは特に制限されるものではないものの、成分Aの融点Tmaと成分Bの融点Tmbの関係はTma>Tmbであることが好ましい。該融点の関係がTma>Tmbを満たすことで成分Bは成分Aに対し微分散しやすく、空隙発現性が好ましい。
そして本発明で用いられる成分Aは特に制限されるものではないものの、本発明の方法により得られる複合繊維の耐熱性が良好、すなわち高温において成分Aが変形し空隙が潰れてしまうといったことを回避する点で、成分Aの融点Tmaは160℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることが更により好ましい。また本発明で用いられる成分Bは、中空ブレンド繊維の耐熱性が良好、すなわち本発明の方法により得られた繊維が高温下に晒されても空隙中で成分Bが変形して空隙を埋めてしまうことがない、つまり空隙の潰れがなく軽量性に優れるという点で該成分Bの融点Tmbは150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維は、主たる成分Aと成分Bとからなるブレンド繊維である。ブレンド繊維とは、後述するような様々な方法により溶融紡糸が完結する以前の任意の段階において成分Aと成分Bとが混練(ブレンド)されてなるブレンド組成物から形成された繊維を意味し、該ブレンド繊維の繊維軸方向に直交する単繊維横断面の中空部分以外の繊維を形成している部分において、成分Aが海、成分Bが2つ以上の島を形成している海島構造をなしており、かつ島である成分Bが繊維軸方向に不連続に存在する(図2参照)。ここで島が繊維軸方向に不連続に分散して存在することについては、繊維軸方向の断面について、後述する測定法などにより観察して確認することが可能であり、通常、単繊維の繊維径の少なくとも1,000倍の任意の間隔で繊維軸方向に観察を複数箇所行った場合、それぞれの単繊維横断面の海島構造の形状が異なるものが不連続性であるとする。ここで該不連続性の指標は、単繊維横断面における島の直径(α)(円相当)と繊維軸方向の長さ(β)の比β/αが1,000以下であることを「島が繊維軸方向に不連続に分散して存在する」と定義し、β/αが100以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。そして本発明におけるブレンド繊維は、1つの島が繊維軸方向に連続してかつ同形状に形成される芯鞘複合紡糸や複数の島が繊維軸方向に連続してかつ同形状に形成される海島複合紡糸から得られる複合紡糸繊維などとは本質的に異なる。これら複合紡糸繊維は、本発明のブレンド繊維と比較してブレンド界面の面積が非常に小さく、海と島の界面に空隙は生成しないか、もしくは殆ど空隙が生成せず軽量性に乏しい。しかし本発明のブレンド繊維からなる中空ブレンド繊維は成分Aが海を、成分Bが島をそれぞれ形成することにより、後述に例示の製糸方法により海と島の界面が乖離して無数の空隙が発現し、軽量性に優れた繊維となるのである。
本発明の中空ブレンド繊維を形成するための成分Aと成分Bのブレンド方法は特に制限されるものではなく、例えば、(A)成分Aと成分Bをチップあるいは粉体で混合し、紡糸吐出孔から溶融吐出されるまでの紡糸機流路内を、溶融した混合ポリマが流れるときの剪断応力のみでブレンドする方法、(B)成分Aと成分Bとをチップあるいは粉体で混合し、エクストルーダやスタティックミキサーのような混練機により常圧もしくは減圧下でブレンドする方法、(C)成分Bを成分Aに高濃度で添加しエクストルーダやスタティックミキサーのような混練機を用いて常圧もしくは減圧下でブレンドすることでマスターポリマを得たのち、紡糸時にエクストルーダやスタティックミキサーのような混練機において、該マスターポリマと成分Aとを、成分Bが所望の濃度となるような割合で希釈し、常圧もしくは減圧下でブレンドする方法、(D)通常の成分Aの重合反応において、成分Aの重合反応が停止する以前の任意の段階で成分Bを含有せしめてブレンドする方法、(E)成分Aおよび成分Bを個別に溶融したのち溶融状態で成分Aと成分Bを計量しながら配管流路内で合一させ、溶融した混合ポリマが流れるときの剪断応力のみ、もしくはスタティックミキサーを用いてブレンドする方法、などが挙げられるが、簡便にブレンドが達成できかつ成分Aと成分Bがより微細に混練されることから、好ましくは前述の(B)、(C)あるいは(E)の方法が採用される。
特にエクストルーダに関しては1軸あるいは2軸以上の多軸エクストルーダを好適に用いることができるものの、成分Aと成分Bとをブレンドした際に、成分A中で成分Bが微細混練するという点で2軸以上の多軸エクストルーダを採用することが好ましい。そしてエクストルーダの軸の長さ(l)および軸の太さ(w)の比l/wについては特に制限されるものではないものの、より成分Aと成分Bの混練性がより向上するという点でl/wは10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更により好ましい。また特にスタティックミキサーに関しては、例えば溶融ポリマの流路を2つあるいはそれ以上の複数に分割して再度合一するという作業(この分割から合一までの作業1回を1段とする)がなされる静置型の混練素子であれば特に制限されるものではないものの、より混練性が優れるという点でスタティックミキサーの段数は5段以上であることが好ましく、10段以上であることが更により好ましい。そして該スタティックミキサーの設置場所に関しては、紡糸機内であれば特に制限されるものではなく、溶融ポリマの吐出の計量を行う装置の前であっても、計量を行う装置のあとで溶融吐出にかかる吐出孔までの間であっても構わず、特に制限されるものではないが、例えば溶融吐出孔を備えた紡糸パック内に設置することで好適に用いられる。
本発明の中空ブレンド繊維における成分Bからなる島の平均分散直径は特に制限されるものではないものの、前述したように成分Aと成分Bとのブレンド界面の面積が非常に大きくなり、ブレンド界面の少なくとも一部分に存在する空隙が微細化かつ非常に多くなり、軽量性に非常に優れることから、該平均分散直径は0.01〜5μmが好ましい。該平均分散直径が0.01〜5μmである場合、生成した空隙は適度な大きさ有し繊維の欠陥とはなり難いため、中空ブレンド繊維の繊維強度も低下せずに非常に優れたものとなり優れている。そしてより緻密かつ微細な空隙が発現し軽量性に優れ、また繊維物性が均質化されるという点から、該平均分散直径は0.02〜3μmがより好ましく、0.05〜1μmが更により好ましい。0.05〜1μmが特に好ましい。
また該平均最大分散直径(r)と繊維単糸横断面の直径(R;換言すると単繊維径)との比率(R/r)は、より多くの空隙が生成するあるいは繊維物性が優れるという点において、R/rが5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらにより好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維は、前述のとおり成分Aと成分Bとのブレンド界面の少なくとも一部分に空隙を有することが必要である(図2参照)。空隙を有することで本発明の中空ブレンド繊維は非常に軽量性に優れたものとなり好ましいほか、前述のとおり光拡散性に由来する優れた遮光性を具備しうる。また該空隙は微細であることから繊維構造における欠点となり難く繊維強度も優れたものとなる。そして繊維中の空隙の割合を示す空隙率(Va)については特に制限されるものではないものの、本発明の中空ブレンド繊維がより軽量性に優れたものとなる点から、Vaは15%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。なお成分Aと成分Bとのブレンド界面の少なくとも一部分に空隙を有することは(株)ニコン社製、走査型電子顕微鏡ESEM−2700を用いて、加速電圧10kVで、試料を白金−パラジウム蒸着(蒸着膜圧:25〜50オングストローム)処理を行った後、倍率200〜100000倍の任意の倍率で確認した。サンプルの調製は、液体窒素中で試料として用いる繊維及び刃物を冷却し15分の冷却後に液体窒素中で繊維軸方向に垂直な繊維横断面を観察面となるよう切断したのち得たサンプルか、あるいは包埋してウルトラミクロトームにて繊維軸方向に垂直な繊維横断面の端面出しを行ったサンプルを観察することにより確認できる。
本発明の中空ブレンド繊維の空隙を発現させる方法としては特に制限されるものではなく、例えば応力を印可し空隙を発現しうる方法であれば良く、例示すると、紡糸時に巻き取って得られた未延伸糸を高倍率で延伸する方法、紡糸時に未延伸糸を巻き取ることなく連続して高倍率で延伸する方法、紡糸において高速で引き取る方法、などの他、あるいは得られた糸を加熱あるいは特定の光を照射することにより、中空ブレンド繊維中の成分Bを収縮させる方法などが挙げられ、それぞれ任意の方法を採用しうるものの、工程が簡便でかつ空隙生成の制御が容易という点で、紡糸に巻き取って得られた未延伸糸を高倍率で延伸する方法、あるいは紡糸時に未延伸糸を巻き取ることなく連続して高倍率で延伸する方法が好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維は、繊維軸方向に連通した中空部を有することが必要である(図2参照)。本発明の中空ブレンド繊維に該中空部が無い場合、前述のとおり空隙に依存した軽量性を有するがその軽量化には自ずと限界があり、本発明で目的とする軽量性あるいは強度など諸物性を繊維が担う上で好ましくない。しかし該中空部を有することで本発明の中空ブレンド繊維は中空部が担う軽量性がさらに付与されるため、軽量性が格段に向上するという大変好ましい特性を具備しうる。そして該中空部の量を示す中空率(Vb)については特に制限されるものではないものの、本発明の中空ブレンド繊維がより軽量性に優れるという点で、Vbは10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更により好ましい。また単繊維の繊維軸方向に直交する断面において中空部の個数は特に制限されるものではなく、1個もしくは2個以上の複数個を有していれば良いものの、中空部が潰れにくく、また前述の光拡散性を向上せしめることが可能であるという点で、中空部の個数は2個以上であることが好ましく、4〜2000個であることがより好ましく、6〜500個であることがさらにより好ましく、10〜100個であることが特に好ましい。
また中空部の形状としては特に制限されるものではなく、丸形、多角形型、多葉型などが目的に応じて好適に採用される他、あるいは単繊維外周部から単繊維の中心に向かって中空部と繊維部分が交互に同心円状あるいは偏心円状に層を形成するようなものであっても良い。また本発明の中空ブレンド繊維は単繊維横断面の中に有する複数の中空部の形状が同じであっても異なっていても良く、あるいは本発明がマルチフィラメントであれば中空部の形状は単繊維間で同じであっても異なっても良い。更に中空部の大きさは特に制限されるものではないものの、繊維の単糸直径に比べて小さいほど好ましいことから、単繊維の繊維軸方向に直交する断面において単繊維直径の4分の3以下であることが好ましく、2分の1以下であることがより好ましく、3分の1以下であることがより好ましい。ここで単繊維直径とは、丸形断面を有する繊維であれば、断面の見かけ中心を通る繊維直径を意味し、丸形以外の断面形状を有するものであれば、単繊維の最短径の太さを単繊維直径と見なす。あるいは中空部の最大直径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらにより好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μm以下である。ここで中空部の最大直径とは、丸形断面を有する中空部であれば、中空部の見かけ中心を通る中空部直径を意味し、丸形以外の断面形状を有する中空部であれば、中空部の最長径の大きさを中空部の最大直径と見なす。
該中空部を形成させる方法としては特に制限されるものではなく、例えば、紡糸吐出孔の形状をスリットの入った円のような中空を形成しうるような吐出形状にして中空繊維を得たり、水溶液や熱水、あるいは有機溶剤など試薬を用いて溶出しうる成分(以下「溶出成分」と称することがある)を芯成分もしくは島成分として、本発明の中空ブレンド繊維を形成する成分Aと成分Bとからなるブレンド組成物を鞘成分もしくは海成分として、芯鞘複合繊維もしくは海島複合繊維を得た後に、芯成分もしくは島成分である溶出成分を溶出して中空繊維を得たりする方法、さらには、成分Aと成分Bとからなるブレンド組成物に該溶出成分をブレンドして3成分のブレンド組成物を調製したのち溶融紡糸を行い、溶出成分を溶出して中空繊維を得たりする方法、などが挙げられるものの、中空部の形態が繊維の高次加工で潰されることなく維持しうるという点で、芯成分もしくは島成分を形成する溶出成分を溶出して中空繊維を得る方法が好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維を製造する手段として特に制限されるものではないものの、より具体的な好ましい方法を以下に例示する。
本発明の中空ブレンド繊維は、多種多様な繊維の製造方法の中で、工程が非常に簡便であり、生産性に優れ、繊維の断面形状も自由に制御可能であるといった利点を有することから水溶液や熱水、あるいは有機溶剤など試薬を用いて溶出しうる成分を芯成分、本発明の中空ブレンド繊維を形成する成分Aと成分Bとからなるブレンド組成物を鞘成分とした芯鞘複合型か、もしくは前述溶出しうる成分を島成分として前述ブレンド組成物を海成分とした海島複合型の溶融紡糸であることが好ましい。ここで芯鞘複合において中空部の大きさを決定する芯と鞘の比率は芯:鞘=10:90〜80:20が好ましく、20:80〜70:30がより好ましい。また海島複合においては後の工程で溶出されたのち中空部を形成する島の数は2個以上であって4〜2000個であることが好ましく、6〜500個であることがより好ましく、10〜100個であることがさらにより好ましい。また該島の大きさは島の数に依存して適宜決定されればよいものの、単繊維直径の4分の3以下であることが好ましく、2分の1以下であることがより好ましく、3分の1以下であることがより好ましい。また該島(もしくは芯)の形状としては特に制限されるものではなく、丸形、多角形型、多葉型が挙げられ、特に該島を形成するものの中で特異的な構造としては単繊維外周部から単繊維の中心に向かって島と海が交互に同心円状に層を形成するようなものであっても良い。また1本の芯鞘複合紡糸糸あるいは海島複合紡糸糸の繊維軸方向に直交する繊維横断面において複数の該島を有する場合は該島の形状が全て同じであっても異なっていても良く、あるいは芯鞘複合紡糸糸あるいは海島複合紡糸糸がマルチフィラメントであれば該島の形状は単繊維間で同じであっても異なっても良い。あるいは該島の最大直径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらにより好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μm以下である。ここで該島の最大直径とは、丸形断面を有する島であれば、島の見かけ中心を通る島直径を意味し、丸形以外の断面形状を有する島であれば、島の最長径の大きさを島の最大直径と見なす。
そして溶融紡糸において、口金孔から吐出された芯鞘複合紡糸糸あるいは海島複合紡糸糸は、本発明のポリエステルのガラス転移温度以下に冷却され、100〜10000m/分の引取速度で、好ましくは4000m/分以下、より好ましくは3000m/分以下、更により好ましくは2500m/分以下、特に好ましくは2000m/分以下の引取速度で引き取る。
引き取った後、巻き取ることなくもしくは一旦巻き取った後、加熱することなく、もしくは加熱して、好ましくは成分Bのガラス転移温度(Tgb)以下の温度に加熱して、より好ましくは成分Aのガラス転移温度(Tga)−20℃〜Tgbの温度範囲に加熱して、自然延伸倍率以上の倍率で、好ましくは1.5倍以上の延伸倍率で、より好ましくは自然延伸倍率以上延伸糸の残留伸度が3〜50%となる倍率で、更により好ましくは自然延伸倍率以上延伸糸の残留伸度が10〜40%となる倍率で延伸することである。ここで、一旦延伸したのち(すなわち1段目の延伸を終えた後)、さらに2倍以下の倍率で2段目の延伸を施してもよい。
延伸したのち、Tga+10℃以上の温度で熱処理する方法が好ましい。これは高倍率で延伸を行うことで空隙はより大きなものとなり、本発明により得られる複合繊維は軽量性に非常に優れるものとなるが、延伸後に熱処理を施すことで発現した空隙の周りが熱固定され、耐熱性に優れた軽量性を付与することができるのである。ここで延伸後に施す熱処理の温度は、発現したボイドが潰れることの無いよう、成分Bの融点より低い温度で熱処理を施すことが好ましい。
上記延伸方法あるいは延伸後の熱処理方法としては特に制限されるものではなく、加熱されたピン状物、ローラ状物、プレート状物などの接触式ヒーターや加熱した液体を用いた接触式バス、あるいは加熱気体、加熱蒸気などを用いた非接触式加熱ボックスなどを採用することが可能であるものの、加熱効率が高いことから、加熱されたピン状物、ローラ状物、プレート状物などの接触式ヒーターや加熱した液体を用いた接触式バスなどを用いた場合に、未延伸糸が変形可能な温度に到達すると同時に未延伸糸に急激な変形が起こりやすく、好ましい。
前述の芯鞘複合紡糸糸あるいは海島複合紡糸糸は、特に制限されるものではなく、溶融紡糸で引き取った後、巻き取ることなくもしくは一旦巻き取った後そのまま延伸を施さずに、あるいは延伸を施したのちに仮撚加工されてもよい。仮撚加工において複合繊維は、延伸糸を用いる場合には、接触型もしくは非接触型の方法により加熱され、ディスク状物、ベルト状物、あるいはピン状物によって仮撚加工される。未延伸糸を用いる場合には、同様に接触型もしくは非接触型のヒーターなどにより加熱した後もしくは加熱されることなく延伸を施しながら、ディスク状物、ピン状物、あるいはベルト状物によって仮撚り加工される。仮撚加工された複合繊維はそのまま巻き取ることが可能であるものの、熱セットされた後に巻き取られることが好ましい。
前述の延伸あるいは仮撚り加工を経たのち、芯鞘複合紡糸糸あるいは海島複合紡糸糸は、芯成分もしくは島成分である溶出成分を除去することにより中空部を形成した本発明の中空ブレンド繊維を得る。該溶出成分は、前述のとおり水、熱水、その他の有機および/または無機化合物を溶解した水溶液、あるいは有機溶剤、あるいはこれらの中から選ばれる複数種からなる混合液体などの試薬を用いて溶出することで除去できることが好ましく、水、熱水、その他の有機および/または無機化合物を溶解した水溶液にて溶出されることがより好ましい。
ここで該溶出成分として好ましいものは、例えば、易アルカリ溶解性ポリエステル、熱水可溶性ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールあるいはエチレン−ビニルアルコールコポリマー、多糖系化合物、などが挙げられ、本発明の中空ブレンド繊維を形成するポリマの種類に応じて適宜採用できる。そして、特に制限されるものではないものの、溶融紡糸における取り扱いが簡便であることから、易アルカリ溶解性ポリエステルや熱水に容易に溶解する熱水可溶性ポリエステルがより好ましい。
本発明において、成分Aと成分Bは非相溶のポリマ同士の組み合わせであることから、相溶性が悪い場合がある。そこで成分Aと成分Bとからなる中空ブレンド繊維は、成分Aと成分Bの相溶化剤を含有していることが好ましい。本発明における相溶化剤とは、成分Aと成分Bとをブレンドする際にブレンド界面における相互作用を変化させて両者の相溶性を高めることで、該成分Bのドメインのサイズを小さくする添加剤である。該相溶化剤としては、低分子化合物あるいは高分子化合物など多種多様の化合物を採用することができ、例えば、低分子化合物としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやアルキルスルホネートナトリウム塩、グリセリンモノステアレート、テトラブチルホスホニウムパラアミノベンゼンスルホネートなどのアニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤や両性界面活性剤、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリ(アルキレンオキシド)グリコールやエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
また、相溶化剤として挙げられる高分子化合物としては、成分Aおよび成分Bのそれぞれに対し、相溶性あるいは親和性の高い高分子化合物を用いれば良く、例えば、ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、ポリメタクリレート系ポリマ、ポリ(ビニルアルコール−エチレン)コポリマー、ポリ(ビニルアルコール−プロピレン)コポリマー、ポリ(ビニルアルコール−スチレン)コポリマー、ポリ(酢酸ビニル−エチレン)コポリマー、ポリ(酢酸ビニル−プロピレン)コポリマー、ポリ(酢酸ビニル−スチレン)コポリマーのようなビニル系のポリマあるいはコポリマー、アイオノマー、側鎖部分を化学修飾することにより耐熱性及び溶融可塑性を向上させた多糖類、ポリアルキレンオキシドあるいはポリ(アルキレンオキシド−エチレン)コポリマー、ポリ(アルキレンオキシド−プロピレン)コポリマーなどのアルキレンオキシドと各ビニル誘導体のコポリマー、あるいはポリアルキレンオキシドの誘導体、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオールとのコポリマー、などのようなポリマ、コポリマーなどが挙げられる。それらの中でも、相溶化剤としての効果が大きく、本発明で得られる中空ブレンド繊維を形成した場合の糸物性が良好であることを考慮すると、ポリスチレン系ポリマ、ポリアクリレート系ポリマ、ポリメタクリレート系ポリマ、スチレンとメチルメタクリレートのコポリマー、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマー、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール、アルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオールとのコポリマー、またはこれらポリマの誘導体が好ましい。
以下に、好ましいと思われるアルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオール、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマー、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマー、あるいはポリ(アルキレンオキシド)グリコールまたはその誘導体について具体例を述べるが、言うまでもなく、本発明における相溶化剤がこれらに制限されるものではない。
アルキレンテレフタレートとポリアルキレンジオールとのコポリマーとしてはエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、ペンタメチレンテレフタレート、ヘキサメチレンテレフタレートなどから選ばれたアルキレンテレフタレートと、ポリエチレンジオール、ポリブチレンジオールなどから選ばれたポリアルキレンジオールとからなるコポリマーであり、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールをそれぞれ1種類ずつ用いても良く、あるいは複数種用いても良い。特に制限されるものではないものの、具体的には、ポリ(エチレンテレフタレート−ポリエチレンジオール)コポリマー、ポリ(プロピレンテレフタレート−ポリエチレンジオール)コポリマー、ポリ(ブチレンテレフタレート−ポリブチレンジオール)コポリマーなどを挙げることができる。
アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールのコポリマーとしてはエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、ペンタメチレンテレフタレート、ヘキサメチレンテレフタレートなどから選ばれたアルキレンテレフタレートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(あるいはテトラメチレングリコール)、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールから選ばれたアルキレングリコールとからなるコポリマーであり、アルキレンテレフタレートとアルキレングリコールをそれぞれ1種類ずつ用いても良く、あるいは複数種用いても良い。特に制限されるものではないものの、具体的には、ポリエチレンテレフタレート−ブチレグリコールコポリマー、ポリプロピレンテレフタレート−エチレングリコールコポリマー、ポリブチレンテレフタレート−テトラメチレングリコールコポリマーなどを挙げることができる。
アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールのコポリマーとしてはエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、ペンタメチレンテレフタレート、ヘキサメチレンテレフタレートなどから選ばれたアルキレンテレフタレートと、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ジプロピレングリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体からなるポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)グリコール、などから選ばれたポリ(アルキレンオキシド)グリコールとからなるコポリマーであり、アルキレンテレフタレートとポリ(アルキレンオキシド)グリコールをそれぞれ1種類ずつ用いても良く、あるいは複数種用いても良い。特に制限されるものではないものの、具体的には、ポリエチレンテレフタレート−ジエチレングリコールコポリマー、ポリエチレンテレフタレート−ポリ(エチレンオキシド)グリコールコポリマー、ポリブチレングリコール−ポリ(エチレンオキシド)グリコールコポリマー、ポリプロピレンテレフタレート−ポリ(エチレンオキシド)グリコールコポリマーなどを挙げることができる。
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールまたはその誘導体の主たる化学構造としては、脂肪族、芳香族、脂環族などの炭素が主鎖をなしている基(もしくはグループ)と酸素原子が交互に結合しているような繰り返し構造を有しているものであれば良く、例えば下記一般式(X)で表されるような単一アルキレンオキシドを繰り返し単位としたポリ(アルキレンオキシド)グリコールを用いることができる。
−[(CH2)a−O]m− ・・・(X)
(X)式を満足するものとしては、例えば、ポリ(エチレンオキシド)グリコール(a=2)、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール(a=3)、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール(a=4)、などのポリ(アルキレンオキシド)グリコールが挙げられる。
また、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、たとえば下記一般式(Y)で表されるような、異なったアルキレンオキシドの交互、ランダム、あるいはブロック共重合体でも良い。
−{[(CH2)a−O]m−[(CH2)b−O]n}x−・・・(Y)
(Y)式を満足するものとして、たとえばポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)共重合体(a=2または3、b=2または3、またaとbは同じであっても異なっても良い。)、ポリ(オキシテトラメチレン−オキシエチレン−オキシプロピレン)共重合体(a=1または2または3、b=1または2または3、またaとbは同じであっても異なっても良い。)などのように、異なったアルキレンオキシドの共重合体などが挙げられる。
さらに、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、上記一般式(X)あるいは(Y)で表されるポリアルキレンオキシドを、1種単独であっても良いし、または発明の主旨を損ねない範囲で、発明の主旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせたものを用いても良い。
本発明の中空ブレンド繊維における相溶化剤の含有量としては、成分Aと成分Bのブレンドがより効果的に微細化し、得られる中空ブレンド繊維の空隙が微細化して繊維物性が優れたものとなるという点で、相溶化剤の含有量は、成分Bの含有重量に対し2〜500重量%であることが好ましく、5〜400重量%であることがより好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維における相溶化剤の添加方法としては、溶融紡糸が完結する以前の任意の段階で成分Aと成分Bのブレンド組成物に添加される方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、(a)通常の成分Aの重合反応において、重合反応が停止する以前の任意の段階で添加して溶融混練する方法、(b)あらかじめ調製した成分Aと成分Bとをブレンドした組成物に相溶化剤を添加しエクストルーダやスタティックミキサーといった混練機により常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法、(c)溶融紡糸時にエクストルーダやスタティックミキサーといった混練機に相溶化剤、成分Aと成分Bとを同時に規定量添加して、常圧もしくは減圧下で溶融混練する方法、などが挙げられ、特に制限されるものではないが、操業性の面で前述の(b)または(c)の方法が好適に採用される。
本発明の中空ブレンド繊維の繊維直径に関しては特に制限されるものではないが、繊維物性に優れ、あるいは布帛を形成する上で加工性がより向上するという点で、繊維直径は0.01〜5000μmであることが好ましく、より好ましくは1000μm以下であり、200μm以下であることがさらにより好ましい。また、繊維の外径断面形状についても、前述中空部を有する物であれば特に制限されるものではなく例えば丸形、多角形、多葉型などが挙げられるが、繊維が安定した物性を有する点では丸形が好ましく、あるいは更に軽量性を向上させるという点では、多角型や多葉型が好ましい。そしてまた1本の糸条における単繊維の本数は特に制限されるものではなく、衣料用途あるいは産業資材用途などの使用目的に応じて適宜設定すれば良く、例えば1本のモノフィラメントでもよく、あるいは2本以上の複数の糸条からなるマルチフィラメントでもよい。特にマルチフィラメントの場合は、紡糸あるいは延伸工程での製糸性や高次加工での工程通過性などを考慮すると、2本〜2000本となすことが好ましく、4本〜500本となすことがさらに好ましく、4本〜250本となすことがさらにより好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維は、特に制限されるものではないものの、形態安定性や耐候性が優れる、あるいは衣料用あるいは産業用の各種素材における様々な使用環境での収縮特性を採用するという点で、温水あるいは沸騰水(約70〜100℃)中、15分間保持した際の収縮率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらにより好ましい。
また本発明の中空ブレンド繊維は、特に制限されるものではないものの、形態安定性が優れることのほかに、衣料用あるいは産業用の各種素材の許容変形度を鑑みて、20℃での繊維の伸度が100%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらにより好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維は、より軽量性に優れるという点で見かけ比重が1.2以下であることが好ましい。該見かけ比重が1.2以下であると、幼児あるいは年配者用衣料として用いる場合はもちろんのこと、スポーツ用ユニフォームあるいはアウトドア用衣料として用いる場合において、同等の嵩(体積)で軽量性に優れ非常に好ましい。さらに産業用素材として用いる場合にも、例えば本発明の複合繊維と、通常の溶融紡糸および延伸により得られる合成繊維とを用いて比較する場合に、同等の強力を担うことを想定すると、本発明の複合繊維は総重量が小さくなるために例えば運搬において非常に好ましいほか、逆に前述2種類の繊維を同等の重量となしてその担いうる強力を比較する場合には、本発明の複合繊維の方が、より大きな強力を担いうる非常に優れた素材である。そして、かかる複合繊維の見かけ比重は、1.0以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらにより好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維は、衣料用あるいは産業資材用として幅広く用いることが可能であるという点で、繊維強度は、2.5cN/dtex以上であることが好ましい。前述した、幼児あるいは年配者用衣料として用いる場合はもちろんのこと、スポーツ用ユニフォームあるいはアウトドア用衣料として用いる場合、さらには産業用素材として用いる場合には、繊維強度の点で丈夫な素材であることが用途展開を図る上で好ましい。また繊維あるいは布帛の加工性を考慮する場合にも加工のバリエーションが広がるという点で糸物性は強度が高いことが求められる。そして、かかる複合繊維の強度は3.0cN/dtex以上とであることが好ましく、3.5cN/dtex以上であることがより好ましく、4.0cN/dtex以上であることがさらにより好ましい。
本発明の中空ブレンド繊維は、微細な空隙と中空部を共に有することから軽量性に非常に優れ、特に制限されるものではないものの、空隙および中空部から形成される中空ブレンド繊維中の総空孔の度合いを示す総空孔率(V)は25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更により好ましく、50%以上であることが特に好ましい。ここで該総空孔率(V;%)は、本発明の繊維見かけ比重を下記実施例E.の方法により測定することで算出でき、また前述の中空部の量を示す中空率(Vb;%)や、空隙の量を示す空隙率(Va;%)についても実施例中のE.に示す方法から算出できる。
本発明の中空ブレンド繊維は、発明の主旨を損ねない範囲で成分Aの部分、成分Bの部分、空隙部あるいは中空部に艶消剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤等の添加剤を少量保持しても良い。
本発明の中空ブレンド繊維は軽量性に優れることから繊維そのものとしても非常に有用で、繊維をそのまま使用することができるが、軽量性に優れることから、本発明の中空ブレンド繊維を繊維製品の一部または全部に用いても良い。本発明の中空ブレンド繊維が一部または全部に用いられている繊維製品とは、タフタ、ツイル、サテン、デシン、パレス、ジョーゼットなどの織物、平編、ゴム編、両面編、シングルトリコット編、ハーフトリコット編などの編物、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、ウォータージェットパンチ(スパンレース)法、スティッチボンド法、フェルト法などの方法により形成された不織布等を示し、生糸、撚糸、加工糸など繊維の形態等については特に制限はない。また当然ながら、織物あるいは編物であれば常法の精練、染色、熱セット等の加工を受けてもよく、あるいは不織布であれば、艶付けプレス、エンボスプレス、コンパクト加工、柔軟加工、ヒートセッティングなどの物理的処理加工や、ボンディング加工、ラミネート加工、コーティング加工、防汚加工、撥水加工、帯電防止加工、防炎加工、防虫加工、衛生加工、泡樹脂加工などの化学的処理加工や、その他にマイクロ波応用や、超音波応用、遠赤外線応用、紫外線応用、低温プラズマ応用などの応用処理がなされていても良く、最終形態として、衣料品として縫製されていてもよい。
また本発明の中空ブレンド繊維が一部に用いられている繊維製品とは、本発明の中空ブレンド繊維と本発明とは異なる合成繊維、半合成繊維、天然繊維など、例えばセルロース繊維、ウール、絹、ストレッチ繊維、アセテート繊維から選ばれた少なくとも1種類の繊維を用いたことを特徴とする混用の繊維製品(以下、混用品と称することがある)である。具体的に例を挙げると、セルロース繊維としては、綿、麻等の天然繊維、鋼アンモニアレーヨン、レーヨン、ポリノジック等が挙げられ、これらセルロース繊維と混用する中空ブレンド繊維の含有率については特に制限はないが、セルロース繊維の風合い、吸湿性、吸水性、制電性を生かし、かつ本発明の中空ブレンド繊維の軽量性を生かすために、25〜75%が好ましい。また、混用品に用いられるウール、絹は既存のものがそのまま使用でき、これらウール、あるいは絹と混用する中空ブレンド繊維の含有率については、ウールの風合い、暖かみ、かさ高さ、また、絹の風合い、きしみ音を生かし、かつ本発明の中空ブレンド繊維の軽量性を生かすために、25〜75%が好ましい。また、混用品に用いられるストレッチ繊維は、特に限定されるものではなく、乾式紡糸または溶融紡糸されたポリウレタン繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維やポリテトラメチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル系弾性糸等が挙げられ、ストレッチ繊維を用いる混用品において、中空ブレンド繊維の含有率は60〜98%程度が好ましい。中空ブレンド繊維の含有率が85%を越える場合には、伸縮特性が抑えられるので、アウター、カジュアルウェアー用途等に用いることができる。また70%未満の場合には、その伸縮特性のためにインナーウェアー、ファンデーション、水着用途等に用いることができる。また、混用品に用いられるアセテート繊維は特に制限されるものではなく、ジアセテート繊維でもトリアセテート繊維でもよい。これらアセテート繊維と混用する中空ブレンド繊維の含有率については、アセテート繊維の風合い、鮮明性、光沢を生かし、かつ本発明の中空ブレンド繊維の軽量性を生かすために、25〜75%が好ましい。
これら各種の混用品において、本発明の中空ブレンド繊維の形態、混用方法については特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、混用方法としては経糸または緯糸に用いる交織織物、リバーシブル織物等の織物、トリコット、ラッセル等の編物などが挙げられ、その他交撚、合糸、交絡を施してもよい。
本発明の繊維製品は、混用品も含め、染色されていてもよく、例えば製編織後、常法により精練、プレセット、染色、ファイナルセットの過程をとることが好ましい。また、必要に応じて、精練後、染色前に常法によりアルカリ減量処理するのも好ましい。精練は40〜98℃の温度範囲で行うことが好ましい。特にストレッチ繊維との混用の場合には、該混用品をリラックスさせながら精練することが弾性を向上させるのでより好ましい。染色前後の熱セットは一方あるいは両方共省略することも可能であるが、混用品の形態安定性、染色性を向上させるためには両方行うことが好ましい。熱セットの温度としては、120〜190℃、好ましくは140〜180℃であり、熱セット時間としては10秒〜5分、好ましくは、20秒〜3分である。
以下実施例により、本発明を具体的かつより詳細に説明する。本発明は、成分Aに例示するものとして、ポリエステル系ポリマとしてポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記することがある)を、またポリアミド系ポリマとしてナイロン6をとりあげ実施例を説明するが、当然ながら成分Aはこれらポリマのみに制限されるものではない。なお実施例中の物性値は以下の方法によって測定した。
A.溶融粘度の測定
(株)東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、窒素雰囲気下、バレル径9.55mm、ノズル長10mm,ノズル内径1mmで、剪断速度10sec-1で測定した。そして5回測定した値の平均値を溶融粘度の測定値とした。なお測定時間については、試料の劣化を防ぐため5回の測定を30分以内で完了した。
B.ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)の測定
パーキンエルマー社製示差走査熱量分析装置(DSC−2)を用いて試料10mgで、昇温速度16℃/分で測定した。Tm、Tgの定義は、一旦昇温速度16℃/分で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、約(Tm1+20)℃の温度で5分間保持した後、室温まで急冷し、(急冷時間および室温保持時間を合わせて5分間保持)、再度16℃/分の昇温条件で測定した際に、段状の基線のずれとして観測される吸熱ピーク温度をTgとし、結晶の融解温度として観測される吸熱ピーク温度をTmとした。
C.臨界表面張力γcの測定
成分Aあるいは成分Bからなるフィルムにおいて、純水72.8dyne/cm,エチルアルコール(特級以上)22.3dyne/cm,ジオキサン33.6dyne/cm,ヘキサン18.4dyne/cm,20%アンモニア水59.3dyne/cm,の5種類の液体を用いて、20℃、湿度40〜80%、静置の条件下、測定するフラットな面を持つ試料上に液滴を1滴置いて液滴が静止したときに、液滴が接している固体平面と液滴が空気層と接している液滴表面とがなす角度を接触角θとして測定し、用いた液体の表面張力に対しcosθをプロットし(Zismanプロット)、完全に濡れる、すなわちcosθ=1となるときの表面張力をプロットした点について外挿することで臨界表面張力γcを求めた。
D.繊維強度、残留伸度の測定、自然延伸倍率の設定
オリエンテック社製テンシロン引張試験機(TENSIRON UCT−100)を用い、未延伸糸であれば初期試料長50mm、引張速度400mm/分で、延伸糸であれば初期試料長200mm、引張速度200mm/分でそれぞれ強度および残留伸度を測定し、5回測定した平均値をそれぞれの測定値とした。また自然延伸倍率は、未延伸糸の強度および伸度の測定の際に得られた応力−歪み曲線(S−S)において、定応力伸長域が終了する伸度(%)を100で割って1を加えた値を自然延伸倍率とした。
E.繊維の見かけ比重の測定および総空孔率、空隙率、中空率の算出
繊維の見かけ比重は、以下の方法により測定・算出した。
(a)繊維の見かけ比重が0.659以上の場合
JIS−L−1013:1999 8.17.1(日本規格協会発行、化学繊維フィラメント糸試験方法)に定められた浮沈法に基づき、20℃±5℃の温度下、溶媒として、比重が1以上であればNaBr水溶液を用いて、比重が1〜0.789の間であればエチルアルコール水溶液を用いて、比重が0.789〜0.659の間であればエチルアルコール−ヘキサン溶液を用いて、それぞれ糸が24時間、浮かびも沈みもしない比重の液体を調製して測定し、5本測定した比重値の平均値を測定比重値(Q)とした。
(b)繊維の見かけ比重が0.659未満の場合
本発明の繊維のみからなる100g±10gの下記K.に記載の方法により作成した筒編布帛を用いて事前に重量を測定し、またあらかじめ重量および体積の分かったおもりを筒編みした布帛に固定し、4℃±1℃に調製したイオン交換水に沈めて5分間の超音波による脱泡を行った後、筒編みの体積を測定し、10枚測定した布帛の比重値の平均値を測定比重値(Q)とした。
また繊維中の空隙および中空部の総量を表す総空孔率(V;%)は下記式に準じ、空隙および中空部のない場合のブレンド繊維の見かけ比重(R;下記式より算出)と測定比重値Qとを用いて算出した。
総空孔率(V;%)=100(1−Q/R),
空隙および中空部の無い場合の複合繊維の見かけ比重R;R=100/((100−S1−S2)/V+S1/V1+S2/V2)、
[ただし、V:成分Aの密度(g/cm3)、S1:成分Bの繊維中の重量%]、V1:成分Bの密度(g/cm3)、S2:相溶化剤の繊維中の重量%(S2=S1×[S1に対する重量%]/100)、V2:相溶化剤の密度(g/cm3)なお、成分A,成分B、相溶化剤の各密度については、製造元の公称値をそのまま用いるか、あるいは各成分単独からなる未延伸糸もしくは延伸糸を用いてJIS−L−1013の密度勾配管法で測定した値を用いた。例えば成分AがPETの場合、未延伸糸であれば1.34を、延伸糸であれば1.38を用いた。)]
さらに得られた各繊維の空隙率(Va;%)あるいは中空率(Vb;%)は、下記E−1,F−2の方法に準じて算出した。
<E−1;空隙率(Va;%)の算出方法>
下記実施例において、空隙を発現させる延伸前後の繊維比重をJIS−L−1013の浮沈法にて測定し、Va(%)=[延伸後の繊維比重]/[延伸前の繊維の比重]×100、から算出した。
<E−2;中空率(Vb;%)の算出方法>
下記実施例において、異形断面口金を用いて溶融紡糸を行う場合は、得られた延伸糸の断面写真をデジタル撮影し、100本分の単糸見かけ繊維断面積において中空部分が占める面積比を、コンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)において繊維略外径および繊維中空部略内径から算出し、該面積比(平均値)に100を掛けて中空率(平均中空率)Vbとした。また芯鞘繊維もしくは海島繊維から芯もしくは島を溶脱して中空繊維を得る場合には、溶脱前後の繊維比重をJIS−L−1013の浮沈法にて測定し、Vb(%)=[溶脱後の繊維比重]/[溶脱前の繊維の比重]×100、から算出した。
F.繊維径(R)、成分Bの非相溶性確認、平均分散直径、平均最大分散直径(r)の測定
(株)ニコン社製、走査型電子顕微鏡ESEM−2700を用いて、加速電圧10kVで、試料を白金−パラジウム蒸着(蒸着膜圧:25〜50オングストローム)処理を行った後、倍率200〜100000倍の任意の倍率で確認した。サンプルの調製は、液体窒素中で試料として用いる繊維及び刃物を冷却し15分の冷却後に液体窒素中で繊維軸方向に垂直な繊維横断面を観察面となるよう切断したのち得たサンプルか、あるいは包埋してウルトラミクロトームにて繊維軸方向に垂直な繊維横断面の端面出しを行ったサンプルを観察に供した。成分Bの平均ドメインサイズについては、前E.項同様に断面写真をデジタル撮影し、コンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)において該繊維横断面上に存在する全ての成分Bの平均面積値を算出し、更に該平均面積値から略円形と判断してドメインの平均直径(ドメインサイズ)を算出した。
G.成分Bの不連続性(繊維軸方向の成分Bの分散長さ)の確認
得られた複合繊維0.1gを、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液200mlに含浸し、50℃にて24時間攪拌して成分AであるPETを加水分解した。そして水溶液表面に浮いている浮遊物をスポイトで採取し、エタノールで洗浄したスライドガラスに滴下してカバーガラスで挟み、光学顕微鏡にておよそ100〜600倍で観察した。光学顕微鏡で観察できないものについては該浮遊物を前F.項のESEM−2700を用いて600Paの水蒸気雰囲気下で観察した。そしてブレンド性の評価として、成分Bの直径(α)と長さ(β)の比β/αを求め、観察しうる最大の比をその成分Bの分散長さの指標とし、1,000以下である場合に○とし、1,000を超えて大きい場合に×とした。
H.延伸性の評価
延伸性については、10kgの延伸糸を作成し、1kg当たりの、単糸切れの平均回数で評価し、単糸巻き付きが頻発し延伸不可能な場合もしくは単糸が巻き付く回数が10回以上を△(劣る)、単糸が巻き付く回数が3回以上10回未満を○(良好)、単糸が巻き付く回数が3回未満を二重丸(優れる)と評価した。
I.重量平均分子量の測定
(株)島津製作所製高速液体クロマトグラフLC−6A(示差屈折計RID−6A,ポンプLC−9A,カラムオーブンCTO−6A,カラムShim-pack GPC-801C,-804C,-806C,-8025C)を用いて、溶媒にクロロフォルム(流速1mL/分,サンプル量200μL(ただしサンプル0.5w/w%をクロロフォルムに溶解したもの)を用いて、カラム温度40℃で測定して得た。
J.固有粘度(IV)の測定
試料をオルソクロロフェノール溶液に溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
K.遮光性の評価
サンプルとしてゲージ巾が20/2.54cm、ピッチ長が1mmである筒編布帛を作製し、この布帛を8枚重ねとし、5×5cmの試料板の上に重ね、試料板の色が透けて現われないことを目視観測にて確認したものを試料とした。そしてこの試料の標準白板に対する0.36〜0.74μmの波長領域についての分光透過率特性を分光測色計(ミノルタ(株)製 CM−3700d)の透過率測定モードにて測定し、各サンプルにおいて一つの測定箇所につき3回、測定個所を違えて3回測定した結果を平均して得られた分光透過率特性から該波長域における最大分光透過率を求め、前記波長域における透過率の最大値が10%以上であるものを△(劣る)、5%以上10%未満であるものを○(良好)、5%未満であるものを◎(優れる)と評価した。
参考例
テレフタル酸166重量部とエチレングリコール75重量部からの通常のエステル化反応によって得た低重合体に、着色防止剤としてリン酸85%水溶液を0.03重量部、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.06重量部、調色剤として酢酸コバルト4水塩を0.06重量部添加して重縮合反応を行い、通常用いられるIV0.70、溶融粘度2050ポイズ(290℃、剪断速度10sec-1)のポリエチレンテレフタレート(以下PET)を得た。
このPETを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて、紡糸温度290℃で孔径が0.3mm、孔数が24個の丸形の孔形状の口金を用いて溶融紡糸を行い、1200m/分の引き取り速度で引き取って、292dtex−24フィラメントの、断面形状が丸形のポリエステルマルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
得られたポリエステル繊維について延伸を行うに際し、送糸ローラーの送糸速度100m/分、第1ローラーは加熱せず(室温)送糸速度100m/分、第2ローラーの送糸速度350m/分とし、第1ローラーと第2ローラー間で延伸を行うために熱源として100℃のホットプレートを用いて、延伸倍率が3.5倍で延伸し、第2ローラーを150℃として繊維に熱処理を施した後、冷ローラーで糸をポリエステルのTg以下に冷却した後に巻き取った。延伸中に糸切れは発生せず、延伸性は優れていた。参考例の紡糸条件については表1に、糸物性などについては表2にそれぞれ示す。
実施例1
参考例で得られたポリエステルを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、成分Bとして三井化学(株)製ポリメチルペンテン(TPX,タイプRT18、以下同製品を用いPMPと略記する)を8重量%添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、またイソフタル酸を20モル%、イソフタル酸のスルホン酸ナトリウム塩誘導体を15モル%それぞれ共重合したIV0.51の熱水可溶性の共重合ポリエチレンテレフタレート(以下、熱水可溶PETと略す)を複合紡糸における島成分として用い、海:島=65:35となりかつ島数が4つとなるように海島複合紡糸を行い、その他は参考例と同様の紡糸条件で305dtex−24フィラメントの断面形状が丸形のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして倍率3.3倍で延伸を行った。延伸中に単糸切れが4.5回発生したものの延伸性は良好であった。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。成分A(ポリエステル)と成分B(PMP)との界面に空隙がみられた。実施例1の結果を表2に示す。
実施例2
参考例で得られたポリエステルを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、成分BとしてPMPを8重量%添加してブレンドポリマを作成した後に、スリット幅0.08mm、スリット径1.00mmφ、4スリットの口金を用いて溶融紡糸を行い、その他は参考例と同様の紡糸条件で290dtex−24フィラメントの断面形状が丸形中空のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして倍率3.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れが6.7回発生したものの延伸性は良好であった。また成分A(ポリエステル)と成分B(PMP)の界面には空隙がみられた。実施例1の結果を表2に示す。
比較例1
実施例1においてPETとPMPのブレンドポリマ(PMPを8重量%)を用いて溶融紡糸を行う際に、丸孔形の口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行い308dtex−24フィラメントの断面形状が丸形のポリエステルマルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして倍率3.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れが3.2回発生したものの延伸性は良好であった。比較例1の結果を表2に示す。実施例1と比較して成分Aと成分Bの界面には空隙がみられたが、中空部が形成されないことで比重が大きく、軽量性に劣ることが分かった。
比較例2
実施例1において成分B(PMP)を用いず、PET単成分を海島複合紡糸の海成分として用いた以外は実施例1と同様の方法で島成分に熱水可溶性PETを用いて、島を4つ有する海島複合紡糸を行い290dtex−24フィラメントの断面形状が丸形のポリエステルマルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして倍率3.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどが発生して延伸性が劣っていた。そして延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。比較例2の結果を表2に示す。実施例1と比較して空隙が形成されないことで軽量性に乏しいことが分かった。
実施例3
参考例で得られたポリエステルを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、成分Bとして、電気化学工業(株)製スチレンマレイミド共重合体(MSN、平均分子量約11万、臨界表面張力約39dyne/cm、以下MSNと略記する)を10重量%を添加して実施例1と同様の方法で島成分に熱水可溶性PETを用いて、島を4つ有する海島複合紡糸を行い285dtex−24フィラメントの断面形状が丸形のポリエステルマルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして倍率3.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れは2.2回発生したものの延伸性は良好であった。そして延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。実施例3の結果を表2に示す。実施例1と比較してPETとMSNの臨界表面張力差が小さく空隙があまり形成されなかったため、軽量性に対する空隙の寄与は小さかったが繊維全体としては中空部分のみを形成することに比較すると軽量性は良好であった。また得られた繊維は黄味掛かって見られた。
実施例4
参考例で得られたポリエステルを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、成分BとしてPMPを8重量%、相溶化剤としてエチレンテレフタレートとポリ(エチレンオキシド)グリコールとの共重合体(以下PET−PEG;ポリ(エチレンオキシド)グリコール成分が10%共重合されたもの)をPMPの添加量に対して200重量%、それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用いた以外は実施例1と同様の紡糸方法で301dtex−24フィラメントの断面形状が丸形のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて実施例1と同様にして延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。実施例4の結果を表2に示す。成分Aと成分Bの界面には空隙がみられ、しかも相溶化剤を用いたことでより均一にPMPが分散したことで、実施例1より空隙率が大きくなり、結果として比重がより小さくなり、また延伸性も優れていた。
実施例5
参考例で得られたポリエステルを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、成分Bとして(株)グランドポリマー製ポリプロピレン(グレードJ108M,以下PPと略記する)を5重量%、相溶化剤としてPET−PEGをPMPの添加量に対して320重量%、それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、また熱水可溶PETを複合紡糸における島成分として用い、海:島=70:30となりかつ島数が12となるように海島複合紡糸を行い、その他は参考例と同様の紡糸条件で299dtex−24フィラメントの断面形状が丸形のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして倍率3.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。また成分Aと成分B(PP)の界面には空隙が見られた。実施例5の結果を表2に示す。
実施例6
実施例2において、成分Bとして三井化学(株)製ポリエチレン(ハイゼックス、グレード8200B、以下PEと略記する)を10重量%、相溶化剤として新日鐵化学社製スチレン系共重合ポリマのエスチレン(MS200、以下エスチレンと略記する)をPEの添加量に対して10重量%、それぞれ含有せしめた後ブレンドポリマを作成したものを用い、図1に示すスリット幅0.08mm、円弧部スリット径1.00mmφ、T形4スリットの口金を用いて、実施例2と同様の方法で溶融紡糸を行ったのち、参考例と同様にして倍率3.5倍で延伸を行い、繊維断面で4つの中空部を有する繊維を得た。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。また成分Aと成分B(PE)との界面には空隙が見られた。実施例6の結果を表2に示す。
実施例7
実施例4において、成分Aとして東レ(株)製ナイロン6アミラン(登録商標、タイプCM1017)を133Paで24時間乾燥させたのち用い、成分BとしてPMPを用い、相溶化剤として東レ・デュポン(株)製ハイトレル(タイプ4057,以下ハイトレルと略記する)を成分Bに対して20重量%それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、また熱水可溶PETを複合紡糸における島成分として用い、海:島=65:35となりかつ島数が12個となるように海島複合紡糸を行い、その他は参考例と同様の紡糸条件で299dtex−24フィラメントの断面形状が丸形のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして倍率3.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。成分A(ナイロン6)と成分B(ハイトレル)の界面には空隙が見られた。実施例7の結果を表2に示す。
実施例8〜11
参考例で得られたポリエステルを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、成分BとしてPMPを用いて表3のとおり添加量を種々変更し、また相溶化剤としてエスチレンを用いて成分Bに対する添加量を表3のとおりにしてブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、また熱水可溶PETを複合紡糸における島成分として用い、海:島=55:45となりかつ島数が32個となるように海島複合紡糸を行い、その他は参考例と同様の紡糸条件で299dtex−36フィラメントの断面形状が丸形のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして実施例8および10については倍率3.5倍で、実施例9および11については倍率3.0倍でそれぞれ延伸を行った。実施例9において延伸中に3.2回の単糸巻き付きが発生したが、その他の水準においては延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず、概して延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。それぞれの結果を表3に示す。実施例8〜11のすべてにおいて成分Aと成分Bの界面に空隙が見られた。結果的に実施例8、9よりも実施例10,11の方が軽量性、延伸性に優れ、成分Bの添加量を最適化することでより糸物性および製糸性に優れることが分かった。
実施例12〜15
参考例で得られたポリエステルを用いて、2軸エクストルーダ型溶融紡糸機を用いて溶融紡糸を行う際に、成分BとしてPPを用いて表3のとおり添加量を5重量%とし、また相溶化剤としてPET−PEGを用いて成分Bに対する添加量を表3のとおり種々変更してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、また熱水可溶PETを複合紡糸における島成分として用い、海:島=45:55となりかつ島数が144個となるように海島複合紡糸を行い、その他は参考例と同様の紡糸条件で302dtex−12フィラメントの断面形状が丸形のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様にして実施例12および14については倍率3.2倍で、実施例13および15については倍率3.5倍でそれぞれ延伸を行った。実施例12、13において延伸中に2,3回の単糸巻き付きが発生したが、その他の水準においては延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず、概して延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。それぞれの結果を表3に示す。実施例12〜15のすべてにおいて成分Aと成分Bの界面に空隙が見られ、結果的に実施例12,13よりも実施例14,15の方が軽量性、延伸性に優れ、相溶化剤の添加量を最適化することでより糸物性および製糸性に優れることが分かった。
実施例16
実施例5と同様の溶融紡糸を行う際に、成分Aとして実施例6のPEを、また成分Bとして三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ユピエース(登録商標、タイプAH90、以下PPE)を10重量%、それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、紡糸温度300℃とした以外は実施例5と同様の方法で217dtex−24フィラメントの断面形状が丸形の複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様の方法にて倍率4.0倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。成分A(PE)と成分B(PPE)の界面には空隙が見られることが分かった。実施例16の結果を表4に示す。
実施例17
実施例5と同様の溶融紡糸を行う際に、成分Aとして参考例で得たポリエステルを、また成分BとしてJSR(株)製ノルボルネン系樹脂アートン(登録商標、タイプF5023)を10重量%、それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、実施例5と同様の方法で310dtex−24フィラメントの断面形状が丸形の複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様の方法にて倍率5.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。成分Aと成分Bの界面には空隙が見られた。実施例17の結果を表4に示す。
実施例18
実施例5と同様の溶融紡糸を行う際に、成分Aとして、東レ(株)製ナイロン6アミラン(登録商標、タイプCM1017)を133Pa以下で24時間乾燥して用い、また成分Bとして三井化学(株)製アペル(登録商標、タイプ6015T)を10重量%、それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、紡糸温度280℃とした以外は実施例5と同様の方法で241dtex−24フィラメントの断面形状が丸形の複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様の方法にて倍率4.0倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。成分Aと成分Bの界面には空隙が見られた。実施例18の結果を表4に示す。
実施例19
実施例5と同様の溶融紡糸を行う際に、成分Aとして、参考例で得たポリエステルを用い、また成分Bとして実施例16のPPEをを10重量%、それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、紡糸温度290℃とした以外は実施例5と同様の方法で302dtex−24フィラメントの断面形状が丸形の複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様の方法にて倍率5.0倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。成分Aと成分Bの界面には空隙が見られた。実施例19の結果を表4に示す。
実施例20
実施例5と同様の溶融紡糸を行う際に、成分Aとして参考例で得たポリエステルを用い、また成分Bとして日本ゼオン(株)製ゼオノア(登録商標、タイプ1600R、以下ゼオノア)を5重量%、相溶化剤として実施例7のハイトレルをゼオノアの添加量に対し20重量%、それぞれ添加してブレンドポリマを作成したものを複合紡糸における海成分として用い、紡糸温度280℃とした以外は実施例5と同様の方法で283dtex−24フィラメントの断面形状が丸形の複合マルチフィラメント繊維を得た。紡糸中に糸切れは発生せず、製糸性は優れていた。
紡糸にて得られた繊維を用いて参考例と同様の方法にて倍率5.5倍で延伸を行った。延伸中に糸切れやローラーへの単糸巻き付きなどは発生せず延伸性は優れていた。
延伸により得られた繊維を熱水中に浸漬して島の共重合PETを除去したのち中空ブレンド繊維を得た。成分Aと成分Bの界面には空隙が見られた。実施例20の結果を表4に示す。