JP2014070323A - 複合繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐摩擦溶融性を有し、かつ繊維製造時および加工時の工程通過性が良好な、ポリエステルと同等の染色性を保持したポリエステル複合繊維を提供する。
【解決手段】 芯部と芯部を完全に覆う鞘部からなる複合繊維であって、芯部のポリマーは2種類以上の熱可塑性ポリマーからなるポリマーアロイであり、上記ポリマーアロイは、ポリエステル、ポリオレフィンおよび相溶化剤とからなり、上記ポリマーアロイは海相がポリエステル、島相がポリオレフィンの海島構造を形成したものであり、鞘部のポリマーはポリエステルであることを特徴とする耐摩擦溶融性布帛用の複合繊維である。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐摩擦溶融性能に優れたポリエステル複合繊維に関するものである。
ポリエステル繊維は、その優れた力学的特性および化学的特性から、スポーツ衣料分野に数多く利用されている。しかし、ポリエステル等の合成繊維は、綿やレーヨンなどの天然系繊維と異なり、体育館等でのスライディング時、床と布帛との間で生じる摩擦熱によって布帛が溶融し、布帛に穴が空いてしまう欠点を有する。
このような問題を解決するため、これまで数多くの提案がなされている。例えば、特許文献1、2では、レーヨンなどの天然系繊維や耐熱繊維と混用する方法が挙げられ、特許文献3では、後加工においてシリコンやポリエチレンワックス等の平滑剤を添加する方法が提案されている。また、ポリエステル繊維自体を改善する方法として、特許文献4、5では、ポリエステル繊維の芯部にポリエステルよりも融点の低い低融点ポリマーを配した複合繊維による方法が提案されており、作用機構としては、摩擦により発生した摩擦熱をポリエステルが溶融する前に、芯部の低融点ポリマーの融解による吸熱作用により吸収することで、ポリエステルの溶融を低減させている。このため、摩擦熱が解除された場合、芯部の低融点ポリマーが再度固化するため、繰り返し利用可能となり、また、洗濯等による耐久性も得られる。
実願昭59−26076号(実開昭60−140789号)のマイクロフィルム 実願昭61−8590号(実開昭62−122879号)のマイクロフィルム 特開昭63−243379号公報 特開平4−11006号公報 特開平6−49712号公報
しかしながら、上記の特許文献1、2の方法では、混用工程のコストが高くなることや各繊維の染色性が異なるなどの欠点を有する。
そして、特許文献3の方法では、後加工による風合いの変化や洗濯等により平滑剤が脱落するため、耐久性に劣るなどの欠点を有する。
また、特許文献4、5の方法は、芯部の低融点ポリマーとして、ポリオレフィンを使用した場合、ポリエステルとの親和性が不十分なため、紡糸や仮撚り加工時、洗濯等の使用時において、容易に芯鞘剥離が生じ、加工性の悪化や色斑の問題を生じる。特に、熱と外力が大きくかかる仮撚り加工時において、ポリエステル繊維と同等の加工温度条件で行った場合、芯鞘部の剥離だけでなく、鞘部に亀裂が発生し、芯部のポリオレフィンが漏出することで、白粉が多量に発生する問題が生じる。逆に加工温度条件を緩和させた条件で行った場合、ポリエステル複合繊維は熱セットされず、十分な伸縮性と嵩高性が得られない。
したがって、本発明の目的は、かかる従来技術の諸欠点を改善し、各加工時および使用時における芯鞘剥離を軽減し、加工性や染色性の良好な、耐摩擦溶融性布帛用のポリエステル複合繊維を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ポリマーアロイ技術を利用し、ポリエステル中にポリオレフィンを安定的に分散させた海島型アロイ構造をなすことで、各加工時および使用時の熱や外力によるポリマー界面の剥離を軽減させた耐摩擦溶融性を有するポリエステル複合繊維が得られることを見出した。また、上記に加えて、芯部に該ポリマーアロイ、鞘部にポリエステルを配した繊維横断面形態にすることで、一部の露出による欠点を改善したものが得られることを見出した。また、今回、芯部がポリエステル中にポリオレフィンを分散させた海島型アロイ構造をとり、鞘部が芯部を完全に覆うことで、染色性の良好なポリエステル複合繊維が得られることを見出した。
すなわち、芯部と芯部を完全に覆う鞘部からなる複合繊維であって、芯部のポリマーは2種類以上の熱可塑性ポリマーからなるポリマーアロイであり、上記ポリマーアロイは、ポリエステル、ポリオレフィンおよび相溶化剤とからなり、上記ポリマーアロイは海相がポリエステル、島相がポリオレフィンの海島型アロイ構造を形成したものであり、鞘部のポリマーはポリエステルであることを特徴とする耐摩擦溶融性布帛用の複合繊維をその要旨とする。
なかでも、前記ポリオレフィンが低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンよりなる群から選ばれた少なくとも1種類のポリマーであることが好ましい。また、芯部のポリマーアロイにおけるポリエステルおよびポリオレフィンの質量比率が95:5〜55:45質量%であることが好ましい。
本発明によれば、加工性や染色性の良好な耐摩擦溶融性布帛用のポリエステル複合繊維を得ることができる。
図1は本発明の複合繊維の繊維横断面の例を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、芯部のポリマーと鞘部のポリマーとからなる複合繊維である。
まず本発明の鞘部のポリマーおよび芯部の海相であるポリエステルについて説明する。
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。このようなポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられる。力学的特性、紡糸性の観点からポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、これらのポリエステルには、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、他の成分が共重合されていてもよい。具体的には、共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。また、ジオール成分としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールも挙げられる。共重合量としては、構成する繰り返し単位あたり10モル%以内が好ましく、5モル%以内がより好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法としては、まず、前述のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成誘導体とを主たる出発原料として、常法に従い、エステル化またはエステル交換反応を行った後、さらに高温・減圧下で重縮合反応を行うことによって製造する方法等が挙げられる。
本発明のポリエステル粘度は特に制限されるものではなく、通常のポリエステル繊維に利用されている固有粘度(以下IVという)のポリエステルを使用することができる。紡糸性および繊維の力学的強度の点から、例えばポリエチレンテレフタレートであれば、IV=0.4〜1.5であることが好ましく、IV=0.55〜1.0であることがより好ましい。
なお、本発明の目的を損なわない範囲において、これらのポリエステル中には少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、艶消し剤、顔料、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤またはその他の添加剤等が含有されていてもよい。
次に、本発明の芯部の島相であるポリオレフィンについて説明する。
芯部のポリマーには、ポリエステル複合繊維の耐摩擦溶融性を得るため、上記ポリエステルにポリエステルよりも融点の低いポリマーを分散させたものを用いる。耐摩擦溶融性を最大限発揮するためには、ポリエステルとの融点差が大きく、融解熱量が大きいポリマーが好ましく、また、ポリエステルの溶融紡糸温度に耐え得るポリマーが好ましい。これらの要求を満足するポリマーとしては、ポリオレフィンが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、またこれらの共重合体などが挙げられる。中でも、ポリエステルとの親和性が他のポリオレフィンと比べ良好で、融解熱量の大きい低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンが好ましい。特に好ましくは、高密度ポリエチレンである。なお、低密度ポリエチレンとは、密度が0.910〜0.929であり、直鎖状低密度ポリエチレンとは、密度が0.930〜0.941であり、高密度ポリエチレンとは、密度が0.942以上である。また、これらのポリオレフィンは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。ここでいう密度とは、試料の質量と体積の比であり、単位としては、g/cmで表す。
また、本発明の目的を損なわない範囲において、これらのポリオレフィンには少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、艶消し剤、顔料、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤又はその他の添加剤等が含有されていてもよい。
本発明の芯部のポリマーアロイにおけるポリエステルとポリオレフィンの質量比率として、95:5〜55:45質量%が好ましく、より好ましくは85:15〜60:40質量%であり、さらに好ましくは80:20〜65:35質量%である。ポリオレフィンが5質量%未満では、得られるポリエステル複合繊維として十分な耐摩擦溶融性が得られないおそれがある。一方、ポリオレフィンが45質量%より多い場合、ポリエステル中へのポリオレフィンの分散が悪くなることで紡糸性が悪化したり、また相構造の海相と島相が逆転する恐れがあるため、好ましくない。
次に、本発明の芯部のポリマーアロイ中に含まれる相溶化剤について説明する。本発明の芯成分であるポリマーアロイは、ポリエステルとポリオレフィンとの相溶性が不十分なため、通常の方法で溶融混合して得たものでは、ポリエステル中へのポリオレフィンの分散性が悪く、紡糸性の悪化や得られる繊維物性の低下が生じる。そこで本発明では、上記ポリマーアロイに相溶化剤を添加することが必要である。本発明における相溶化剤とは、2種類以上のポリマーを混合させた場合、ポリマー界面に働き、両者のモルフォロジーを安定化させる化合物である。本発明では、相溶化剤を添加することで、ポリエステル中におけるポリオレフィンの分散を安定させ、紡糸性を良好にする役割を果たす。これより、ポリエステル中に安定的にポリオレフィンを高分散させることが可能となる。本発明におけるポリエステルとポリオレフィンとのポリマーアロイの場合、使用される相溶化剤としては、変性ポリオレフィンが挙げられる。上記変性ポリオレフィンとは、分子内にカルボン酸、カルボン酸金属塩基、カルボン酸エステル基、無水酢酸およびエポキシ基などの官能基を有するポリオレフィンである。これらの官能基を有するモノマーが共重合されたポリオレフィンであれば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体いずれであってもよい。また、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを主成分とする重合体やエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体等の共重合体などを挙げることができる。
本発明に使用可能な相溶化剤の具体例としては、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、アクリル酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン−メタクリル酸グラフトグリシジル共重合体、無水マレイン酸グラフトエチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン共重合体およびアクリル酸グラフトエチレン/酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、これらの相溶化剤は単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
上記相溶化剤の添加量としては、ポリマーアロイ全体に対し0.1〜30質量%であることが好ましく、0.3〜20質量%であることがより好ましい。相溶化剤が0.1質量%未満では、ポリエステルとポリオレフィンとの相溶性を改善することが難しく、一方、30質量%を超えると、それ自身が阻害物となり、紡糸性の悪化や繊維物性の低下が生じるため好ましくない。
本発明におけるポリマーアロイの作製方法としては、特に制限されるものではなく、例えば(1)ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂および相溶化剤をドライブレンド後、そのまま紡糸機に投入し、紡糸機流路内で混合する方法、(2)ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂および相溶化剤をドライブレンド後、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法、(3)ポリエステル樹脂にポリオレフィン樹脂および相容化剤を夫々押出機に投入する方法が挙げられる。
上記混練機の例としては、一軸押出機、二軸混練押出機、ロールミキサー、バンバリーミキサー等が挙げられる。なかでも、二軸混練押出機が作業性、混練性の点から好ましい。
次に本発明のポリエステル複合繊維について説明する。
本発明のポリエステル複合繊維は、上記ポリエステルとポリオレフィンおよび変性ポリオレフィンからなるポリマーアロイとポリエステルを通常の方法で乾燥後、複合紡糸装置を用いて、通常の溶融紡糸を行うことにより得ることができる。ここでいう複合繊維とは、ポリマーアロイとポリエステルとを別々に溶融し、紡糸時に様々な形状にて結合させた複合(コンジュゲート)繊維のことを示す。
紡糸方法は特に限定するものではなく、例えば低速で未延伸糸を巻き取った後、延撚工程にて延伸する所謂コンベンショナル法、直接紡糸延伸法(スピンドロー法)、高速で巻き取り部分未延伸糸を得るPOY法が挙げられる。なお、省力化、および安価生産可能な点から、スピンドロー法、POY法を採用することが好ましい。
本発明のポリエステル複合繊維は、芯部にポリマーアロイ成分、芯部を完全に覆った鞘部にポリエステル成分を配置した繊維横断面形状をしている必要がある。芯部を完全に覆うとは、芯部が繊維表面に露出しないことを意味する。ポリマーアロイ成分が表面に露出した場合、一部の島相であるポリオレフィンが露出することで、紡糸性の悪化を生じてしまう。このため、ポリマーアロイ成分をポリエステル成分で完全に覆った形状をとることでそれらの欠点なく、ポリエステル複合繊維の作製が可能となる。
本発明の複合繊維の繊維横断面形状は、上述した通り、芯部にポリマーアロイ成分、芯部を完全の覆った鞘部にポリエステル成分を配置した繊維断面形状であれば特に限定するものではないが、例えば、図1(A)のような単芯の芯鞘型、図1(B)のような多芯の芯鞘型等が挙げられる。
芯部および鞘部の割合としては、耐摩擦溶融性能の点から、容積比率が芯部:鞘部=95:5〜20:80であることが好ましく、より好ましくは80:20〜30:70の範囲である。芯部が20%よりも小さい場合、鞘部のポリエステルが厚くなり、耐摩擦溶融性能が得られにくくなるため好ましくない。また、鞘部が5%よりも小さい場合、繊維強さが低下するため好ましくない。
このようにして得られたポリエステル複合繊維は、耐摩擦溶融性を必要とする製品などで使用した場合を考慮すると、繊度/フィラメント数は、22〜267dtex/12〜72fであることが好ましく、50〜168dtex/12〜48fがより好ましい。
また、本発明のポリエステル複合繊維は、製品として実用可能な力学的特性を考慮すると、強度は3.0cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは3.5cN/dtex以上である。
本発明の複合繊維は、耐摩擦溶融性布帛に好適に用いることができる。
本発明のポリエステル複合繊維を使用して、耐摩擦溶融性布帛を作製する場合、布帛の種類としては特に制限するものではないが、織物、編物、不織布などいずれでもよい。また、布帛全体に使用してもよく、摩擦面のみの一部に使用してもよい。
本発明のポリエステル複合繊維は、例えば、学校体育衣料等やバレーボール、バスケットボール、ハンドボール等のスポーツ衣料等の材料として、好適に用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各評価項目は次の方法で測定した。
(1)極限粘度[η]
フェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)の混合溶媒中20℃で常法により求めた。
(2)MFR(g/10分)
測定法は、JIS K 6922−2に従った。
(3)繊維の力学的物性(強さ):
島津製作所製オートグラフAGSを用いた引張試験を行い、測定長:200mm、引張り速度:200mm/分の条件下にて、繊維が破断したときの破断強さをそれぞれ5回測定し、その平均値を求めた。
(4)染色性:
得られたポリエステル複合仮撚り糸を用いて丸編みにし、精練した後、染料D/N BLUEACE1.0%owf、酢酸0.2ml/L、イオネットRP1.0g/L、の染浴中、浴比1:20にて130℃で60分染色させ、目視での観察から、○(染色性良好)、×(染色性不良)で評価した。
(5)耐摩擦溶融性能評価
得られたポリエステル複合仮撚り糸を用いて丸編みにし、JIS L1056(B法)に準拠する試験であるローター型摩擦溶融試験を用いて、5秒間接圧摩擦した後の丸編みの破損状態より、○(擦過跡のみ)、△(一部溶融跡あり)、×(試料が破損し穴あき有り)で評価した。
[実施例1]
極限粘度が0.64のポリエチレンテレフタレート樹脂とMFRが7.0で密度が0.964の高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製)を使用し、相溶化剤として、エチレン―グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学社製ボンドファースト、グレード:2C)を使用して、それぞれ表1に示す所定量に配合しドライブレンドした後、二軸混練押出機に供給し、混練温度270℃、スクリュー回転数250rpmの条件にて溶融混練し、冷却ペレット化して芯部に使用するポリマーアロイを得た。一方、鞘部として、極限粘度[η]が0.64のポリエチレンテレフタレートを使用した。それぞれのポリマーを乾燥後に複合紡糸機に導入しポリマーアロイとポリエチレンテレフタレートの容積比率を2:1として溶融し、図1(A)の芯部にポリマーアロイ、鞘部にポリエチレンテレフタレートとなるように紡糸口金から押し出し、通常の方法で油剤付与後、第一ゴデッドローラー(GR1)の周速1400m/分(温度:80℃)で引取り、次いで、第二ゴデッドローラー(GR2)の周速4300m/分(温度:130℃)に導きGR1とGR2の間で延伸する通常のSPD法にて、167dtex/48fの芯鞘型複合繊維を得た。得られたポリエステル複合繊維を用い、ヒーター温度200℃、糸速100m/分、撚数2800T/mの条件にて、仮撚り加工を行ったところ、欠点なく優れた仮撚り加工通過性を示し、嵩高性の良好な仮撚り加工糸を得た。得られた仮撚り加工糸を用いて、丸編みを作製し、耐摩擦防融性評価および染色性評価を行った。結果は表1の通りであった。
[実施例2]
芯成分であるポリマーアロイのポリエチレンテレフタレートと高密度ポリエチレンの比率を表1の通り、65:35質量%に変更した以外は実施例1と同様の方法で、167dtex/72fの芯鞘型複合繊維を得た。また、実施例と同様の条件にて仮撚り加工を行ったところ、欠点なく嵩高性の良好な仮撚り加工糸を得た。結果は表1に示す。
[実施例3]
芯成分であるポリマーアロイのポリオレフィンをMFR5.0で密度が0.935の直鎖状低密度ポリエチレンに変更した以外は実施例1と同様の方法で、167dtex/72fの芯鞘型複合繊維を得た。また、実施例と同様の条件にて仮撚り加工を行ったところ、欠点なく崇高性の良好な仮撚り加工糸を得た。結果は表1に示す。
[比較例1]
極限粘度[η]が0.64のポリエチレンテレフタレートを用いて、実施例1と同様の方法で167dtex/72fでの単独繊維を得た。また、実施例と同様の条件にて仮撚り加工を行ったところ、欠点なく嵩高性の良好な仮撚り加工糸を得た。結果は表1に示す。
[比較例2]
芯成分としてMFR2.3の高密度ポリエチレン、鞘成分として極限粘度[η]が0.64のポリエチレンテレフタレートを用いて、容積比率が1:3として、実施例1と同様の方法にて、167dtex/72fでの芯鞘型複合繊維を得た。実施例と同様の条件にて仮撚り加工を行ったところ、鞘部に亀裂が生じ、芯成分である高密度ポリエチレンの露出が確認され、白粉が多量に発生し、糸切れが多発した。仮撚り加工性に劣るものであったため少量しか得られず、それを用いて耐摩擦防融性評価および染色性評価を行った。結果は表1に示す。
[比較例3]
実施例1で使用した芯部のポリマーアロイのみを使用し、167dtex/72fでの単独紡糸を実施した。しかし、一部表面に露出した高密度ポリエチレンにより、白粉が発生し、糸切れが多発した。また、仮撚り加工でも白粉が発生し、糸切れが多発した。
Figure 2014070323
実施例より得られた複合繊維はいずれも、紡糸性および仮撚り加工性が良好であり、かつ耐摩擦溶融性および染色性に優れたものであった。一方、比較例1より得られたポリエチレンテレフタレート単独繊維は耐摩擦溶融性に劣り、芯部がポリエチレンで鞘部がポリエチレンテレフタレートの比較例2より得られた芯鞘繊維は仮撚り加工性および染色性に劣るものであった。また、ポリマーアロイのみの比較例3より得られた単独繊維は紡糸性および仮撚り加工性に劣るものであった。
a ポリマーアロイ成分
b ポリエステル成分

Claims (3)

  1. 芯部と芯部を完全に覆う鞘部からなる複合繊維であって、芯部のポリマーは2種類以上の熱可塑性ポリマーからなるポリマーアロイであり、上記ポリマーアロイは、ポリエステル、ポリオレフィンおよび相溶化剤とからなり、上記ポリマーアロイは海相がポリエステル、島相がポリオレフィンの海島構造を形成したものであり、鞘部のポリマーはポリエステルであることを特徴とする耐摩擦溶融性布帛用の複合繊維。
  2. 前記ポリオレフィンが低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンである請求項1に記載の複合繊維。
  3. 芯部のポリマーのポリエステルとポリオレフィンの質量比率が95:5〜55:45質量%である請求項1または2記載の複合繊維。
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