JP4884286B2 - 熱接着性ポリエステル長繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルからなる長繊維であり、操業性よく得ることができ、特にバインダー繊維として用いることが好適な熱接着性ポリエステル長繊維に関するものである。
合成繊維、特にポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性、さらにはリサイクル性等から、衣料、産業資材として不可欠のものとなっており、様々な分野において、ポリエステル繊維が多く使用されている。
近年では、環境配慮の観点から、ウレタン系やアクリル系の熱接着性樹脂の代替として、熱接着性のポリエステル繊維が見直されつつあり、繊維形状であるため布帛に織り込んで使用できることなどの取り扱い易さの面からも、各種衣料用途、椅子張りやパーテーション等のインテリア用途、フィルター等の資材用途での需要が大きい。
熱接着性の繊維(バインダー繊維)としては、ポリエチレンテレフタレートを芯部とし、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部とした芯鞘型複合繊維が提案されている。この繊維は、高融点の芯部と低融点の鞘部とからなるため、熱処理の際に、芯部を溶融させず繊維形態を保持させ、鞘部のみを溶融させることにより、強度に優れた製品を得ることができる。
しかしながら、鞘部のイソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体は、非晶性であり明確な結晶融点を示さないため、ガラス転移点以上の温度で軟化が始まる。このため、溶融紡糸して得られる長繊維は、染色や熱接着処理の際の熱収縮が大きく、この長繊維を少なくとも一部に用いた布帛や繊維構造物は寸法安定性が悪いものであった。また高温雰囲気下で使用した際の耐熱性にも劣るものであった。
特許文献1には熱接着性のポリエステル長繊維が提案されている。この繊維は、芯部にポリエチレンテレフタレートを配し、鞘部にテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分及び1,4−ブタンジオール成分を共重合したポリエステル系共重合体を配した芯鞘型複合繊維である。
この鞘部のポリエステル系共重合体は、結晶性であり明確な融点を示すため、溶融紡糸して得られる熱接着性長繊維は、強度が高く、熱収縮率も低いものであった。
このため、この熱接着性のポリエステル長繊維は染色や熱接着処理の際の収縮が小さく、寸法安定性に優れ、高温雰囲気下で使用した際の耐熱性にも優れる布帛や繊維構造物等の製品を得ることができる。
しかしながら、このポリエステル系共重合体は融点が150〜200℃の範囲のものであり、まだ低融点領域であるとはいえず、熱接着させる際には加工温度を高くする必要があり、コスト的にも不利であった。
さらに、繊維を製造する際の溶融紡糸工程において、鞘部の共重合体が冷え難いため、紡糸、冷却条件によっては、糸条間の溶着や捲取パッケージの膠着が発生しやすい。この問題を解決するためには、紡糸温度を低くすることが考えられるが、この方法では、芯部ポリマーの融点に紡糸温度が近くなるため、溶融斑が生じ、製糸性が劣り、操業性も低下するという問題があった。
特開2003−201627号公報
本発明は上記の問題点を解決するものであって、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルからなり、通常の製造装置で溶融紡糸、延伸し、操業性よく生産することができるポリエステル長繊維であって、特にバインダー繊維として用いると、熱接着させる際には低い温度で加工することができ、寸法安定性に優れた布帛や繊維構造等の製品を得ることができる熱接着性ポリエステル長繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸のみジオール成分が、1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールは60〜95モル%であり、融点が100〜150℃であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するポリエステルからなる長繊維であって、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足することを特徴とする熱接着性ポリエステル長繊維。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は、低融点でありながら結晶性に優れ、特に降温時の結晶化速度が速いポリエステルからなるため、繊維を製造する際の溶融紡糸工程において糸条間の溶着やそれに伴う紡糸糸切れ、さらには捲取パッケージの膠着の発生がなく、生産性よく得ることができる。そして、延伸、熱処理工程も操業性よく行うことができ、十分な強度を有し、熱水収縮率の低いものとすることができる。
特に本発明の熱接着性ポリエステル長繊維をバインダー繊維として用いると、熱接着させる際には低い温度で加工することができ、コスト的にも有利である。さらに、撚糸加工や製織、製編等に耐えうる強度を有しており、各種の加工糸や布帛、繊維構造物に使用することができる。
さらに、熱水収縮率も低いものであるため、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維を少なくとも一部に用いた加工糸や布帛、繊維構造物等の製品は、熱接着処理後も寸法安定性、形態保持性に優れ、接着後の染色処理、熱水処理の際にも接着部位が剥離することなく、また高温雰囲気下での使用においてもその接着性を維持することができ、耐熱性(耐久性)の高いものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸のみジオール成分が、1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールは60〜95モル%であり、融点が100〜150℃であるポリエステル(A)からなるものであって、中でもポリエステル(A)のみからなることが好ましい。
ポリエステル(A)の融点(Tm)は、100〜150℃であり、中でも105〜140℃であることが好ましく、さらには110〜130℃であることが好ましい。Tmが100℃未満であると、本発明の長繊維より得られた製品は、高温雰囲気下で使用した場合の熱安定性(耐熱性)に劣るものとなる。一方、150℃を超えると、製品を得る際の熱接着加工温度を高くする必要があり、加工性、経済性に劣る。また、熱処理により得られる製品の品質や風合い等を損ねるため好ましくない。
ポリエステル(A)は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸のみ分とするものである。
ジオール成分としては、1,6−ヘキサンジオール(以下、HDとする)が60〜95モル%であり、他の成分としてはエチレングリコール(以下、EGとする)または1,4−ブタンジオール(以下、BDとする)を用いるHDが50モル%未満の場合、融点が150℃を超えるものとなる。
ジオール成分として、GやBDをジオール成分において、〜40モル%とする
そして、ポリエステル(A)は、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するものであり、中でも0.5〜3.0質量%含有することが好ましい。
ポリエステル(A)は、上記のような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができ、溶融紡糸工程における単糸間の溶着や捲取パッケージの膠着を生じないものとすることができる。そして、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は、後述する(1)式を満足することができるものとなる。
結晶核剤の含有量が0.01質量%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は後述する(1)式を満足することができない。一方、5.0質量%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、紡糸、延伸時の操業性を悪化させることとなり、強度や品位の低い繊維となる。
結晶核剤としては、無機系微粒子やポリオレフィン、硫酸塩等を使用することが好ましい。
無機系微粒子としては、中でもタルクなどの珪素酸化物を主成分としたものが好ましく、平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子を用いることが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、本発明の熱接着性ポリエステル短繊維は後述する(1)式を満足することが困難となりやすい。
また、結晶核剤として含有させるポリオレフィンは、反応系内で溶融するため、形状については特に限定するものではなく、例えば粒径2mm程度のチップ状のものや、粒径数μmのワックス状のものであってもよい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などを挙げることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、プロピレン・エチレンランダム共重合体が特に好ましい。なお、ポリオレフィンが炭素原子数3以上のオレフィンから得られるポリオレフィンである場合には、アイソタクチック重合体であってもよく、シンジオタチック重合体であってもよい。
結晶核剤として含有させる硫酸塩は、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどを挙げることができ、中でも結晶核剤としての効果の点から、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムが好ましい。
これらの結晶核剤を添加する方法としては、粉体のまま、あるいはジオールスラリーの形態でポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。中でも、結晶核剤としての効果を良好なものとするには、エチレングリコール等のグリコールにスラリー状態あるいは溶解させた状態で添加することが好ましい。
ポリエステル(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
そして、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するものであり、中でもb/a≧0.06であることが好ましい。一方、b/aが大きいほど降温時の結晶性に優れるものとなるが、本発明で目的とする効果を奏するには、b/aを0.5以下とすることが好ましい。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) (1)
本発明のポリエステル長繊維の融点とDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/分、試料量(2mg)で測定する。
上記b/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。図1に示すように、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05(mW/mg・℃)未満の場合、降温時の結晶化速度が遅くなり、溶融紡糸時に単糸間の溶着や巻取りパッケージの膠着が発生し、安定した生産が困難となる。
上記したように、b/aは、ポリエステルの共重合組成を特定のものとし、結晶核剤の含有量を上記範囲の量とすることにより、本発明で規定する範囲のものにすることができる。
さらに、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は、100℃での熱水収縮率が17%以下であることが好ましく、中でも15%以下、さらには12%以下であることが好ましい。
100℃での熱水収縮率が17%を超えると、加工糸、布帛や繊維構造物等にし、熱接着処理した後に、これらの製品の風合いが硬化したり、寸法安定性が悪くなりやすい。そして、繊維が熱融解した際にできるポリマー塊が点在し、非接着体側の繊維の交点に万遍なく行きわたらないことから、接着性も低下する傾向がある。さらに、接着後の染色処理、熱水処理の際には接着部位の剥離が生じやすいものとなる。
本発明における熱水収縮率とは、JIS L−1013の熱水収縮率のかせ収縮率(A法)に従って測定するものである。
さらに、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は、強度が1.0cN/dtex以上のものであることが好ましく、中でも1.5cN/dtex以上であることが好ましい。強度が1.0cN/dtex未満であると、加工糸とする際の仮撚り加工工程やエアーやインターレース等での混繊加工工程、製編織工程における張力や擦過抵抗によって糸切れが発生し、工程通過性が悪くなり、得られる製品の品位も悪化しやすい。
また、本発明における強度とは、JIS L−1013の引張強さ及び伸び率の標準時試験に従い、ORIENTEC社製引っ張り試験機RTC−1210型を用い、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/分で測定するものである。
本発明の熱接着性ポリエステル長繊維は、低融点でありながら結晶性が高く、降温結晶化速度の速いポリエステル(A)からなるものであるため、溶融紡糸して得られた未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する二工程法、未延伸糸を一旦巻き取ることなく連続して延伸する一工程法のいずれにおいても、紡糸工程における糸条間の溶着やそれに伴う紡糸糸切れ、さらには捲取パッケージの膠着の発生がなく、生産性よく品質良く得ることができるものである。そして、延伸、熱処理を操業性よく行うことができ、延伸倍率、熱処理温度を調整することにより、強度1.0cN/dtex以上、100℃での熱水収縮率が17%以下の特性を有する長繊維とすることができる。
本発明の熱接着性ポリエステル長繊維が好適に用いられる用途としては、例えば、複数の繊維の一部に混繊させた混繊糸とし、熱処理により形態を固定してモップ等に用いられるブラシ毛部分やカーペット用のパイル糸とする例や、織編物を構成する繊維の一部に使用し、熱処理を施すことによって布帛同士を接着させる芯材として用いる例や織物を構成する繊維の一部に使用し、熱処理を施すことによって繊維間を接着してフィルター用途として用いる例等が挙げられる。
また、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維の単糸繊度は特に限定するものではないが、上記のような用途に用いる際には、1〜50dtex、中でも3〜30dtexとすることが好ましい。
そして、断面形状は特に規定するものではなく、丸型のみならず扁平型、トリローバル型、ヘキサローバル型、W型、H型等の異形断面や、四角形や三角形等の多角形状、中空形状のものでもよい。
次に、本発明の熱接着性ポリエステル長繊維の製造方法について説明する。まず、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、結晶核剤を添加して重縮合反応を行う。重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。次に、このチップを通常の溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行う。溶融紡糸後、冷却固化し、油剤を付与した未延伸糸は、一旦巻取った後に、又は巻き取ることなく連続して延伸が施される。未延伸を延伸する際には、複数のローラ間で延伸倍率1.5〜4.0倍で延伸し、必要に応じて熱処理を施すことにより本発明の熱接着性ポリエステル長繊維が得られる。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値の測定、評価は次の通りに行った。
(a) 無機系微粒子(タルク)の平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(b) 無機系微粒子(タルク)の比表面積
BET法により測定した。
(c)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(d)融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(e)ポリマー組成
得られた熱接着性ポリエステル長繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)紡糸操業性
16錘で24時間の操業を行い、紡糸の状況により下記の3段階で評価した。
○ : 紡糸時の糸切れ回数が3回以下
△ : 紡糸時の糸切れ回数が4回〜9回
× : 紡糸時の糸切れ回数が10回以上
(g)強度、伸度、熱水収縮率
前記の方法により測定した。
(h)接着性
得られた熱接着性ポリエステル長繊維1本と、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル長繊維(84dtex/36fil、強度4.3cN/dtex、伸度35%)2本を合わせて混繊し、混繊工程の途中でスピンドル回転によって撚りを施し、15ヶ/mの撚数の撚糸を得る。この撚糸を10cmに切断して伸ばした状態で両端を固定し、ローラ温度120℃、ローラスピード0.5m/分、プレス圧力0.7kg/cmの条件で繊維軸方向に加熱圧着し、その後に両端をカットして長さ5cmのサンプルを得た。
このサンプルをガラス製の300mlビーカーに入れ、95℃に加温した熱水中で、巾4cmのラグビーボール型マグネチック攪拌子により200rpmの回転数で30分間攪拌処理し、30分後に繊維が剥離を起こしているかを確認した。
測定はサンプル数10個について行い、攪拌処理後、サンプルを自然乾燥させ、乾燥後の繊維の剥離状態を目視により観察し、下記の3段階で評価した。
○ : 全てのサンプルで剥離なし
△ : 部分的に剥離を起こしているサンプルがある
× : 剥離を起こし、撚糸の形態を維持していないサンプルがある
実施例1
エステル化反応缶に、TPAとEGのスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%の反応物を得た。この反応物を重縮合反応缶に移送し、HDを重縮合反応缶に投入し、温度240℃、常圧下で1時間攪拌した。次に、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを含有するEGスラリーを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
このようにして得られた極限粘度0.95、融点128℃の酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG15mol%、HD85mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有する共重合ポリエステルチップを溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度230℃、吐出量13.2g/分とし、紡糸孔数36の紡糸口金を用い、紡糸速度800m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を冷却した後、油剤を付与し、168dtex/36フィラメントの未延伸糸を得た。
次に、この未延伸糸を表面温度50℃の第一ローラで引取り、第二ローラとの間に115℃に加熱したヒートプレートを設置して、延伸倍率2.0倍で熱延伸を行い、84dtex/36フィラメントの熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例2〜3、比較例1〜2
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示す繊維中の含有量とした以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
比較例3
結晶核剤のタルクを含有しなかった以外は、実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例4
エステル化反応缶に、TPA、HD、BDを供給し、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを添加し、温度230℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
このようにして得られた極限粘度0.98、融点130℃の酸性分としてTPA、グリコール成分として1,4−ブタンジオール(BD)20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有する共重合ポリエステルチップを紡糸装置に供給した以外は、実施例1と同様にして紡糸、延伸を行い、熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例5〜6、比較例4〜5
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示す繊維中の含有量とした以外は、実施例4と同様にして熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
比較例6
結晶核剤のタルクを含有しなかった以外は、実施例4と同様にして熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
比較例7
HDの供給量を変更して重縮合反応を行い、極限粘度0.85、融点200℃の酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG80mol%、HD20mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有する共重合ポリエステルチップを用い、紡糸温度を250℃、第一ローラの表面温度を70℃、ヒートプレートの温度を150℃、延伸倍率を2.5倍にした以外は実施例1と同様にして熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例7
結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)を0.04kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを0.04kg、これらを重縮合反応缶に投入した以外は実施例1と同様にしてチップ化し、結晶核剤として0.1質量%のポリエチレンワックスを含有するチップとした以外は実施例1と同様に行い、熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例8
結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)の投入量を変更し、結晶核剤として0.05質量%のポリエチレンワックスを含有するチップとした以外は実施例1と同様に行い、熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例9
結晶核剤として硫酸ナトリウムを0.04kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを0.04kg、これらを重縮合反応缶に投入した以外は実施例1と同様にしてチップ化し、結晶核剤として0.1質量%の硫酸ナトリウムを含有するチップとした以外は実施例1と同様に行い、熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例10
結晶核剤の重縮合反応缶への投入量を変更し、結晶核剤として0.8質量%の硫酸ナトリウムを含有するチップとした以外は実施例1と同様にして行い、熱接着性ポリエステル長繊維を得た。
実施例1〜10、比較例1〜7で得られた熱接着性ポリエステル長繊維の特性値と評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜10の熱接着性ポリエステル長繊維は、(1)式を満足し、結晶性が高く、紡糸操業性よく得ることができた。また延伸、熱処理を良好に行うことができ、強度が1.0cN/dtex以上のものであり、熱水収縮率も低いものであった。さらには、接着性にも優れていた。
一方、比較例1、4の熱接着性ポリエステル長繊維は、結晶核剤の含有量が少なかったため、(1)式を満足せず、降温時の結晶化速度が遅く、紡糸時に糸条同士の溶着が生じ、紡糸操業性が悪かった。比較例2、5の熱接着性ポリエステル長繊維は、結晶核剤の含有量が多かったため、紡糸時に切れ糸が発生し、操業性が悪かった。さらに、強度も低く、接着性にも劣るものであった。比較例3、6では、ポリエステル中に結晶核剤を含有していなかったため、降温時の結晶化速度が遅く、紡糸時に糸条の溶着が発生し、繊維を得ることができなかった。比較例7の熱接着性ポリエステル長繊維は、HDが50モル%未満であったため、融点が150℃を超えるものであった。したがって、接着性の評価を行う際に撚糸にローラ温度120℃で熱処理を行っても熱接着せず、全てのサンプルにおいて剥離を起こし、撚糸の形態を維持していなかった。
本発明におけるDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線の一例である。

Claims (2)

  1. ジカルボン酸成分がテレフタル酸のみジオール成分が、1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールは60〜95モル%であり、融点が100〜150℃であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するポリエステルからなる長繊維であって、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足することを特徴とする熱接着性ポリエステル長繊維。
    b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
    なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
  2. 強度が1.0cN/dtex以上、100℃での熱水収縮率が17%以下である請求項1記載の熱接着性ポリエステル長繊維。
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