JP4988484B2 - 短繊維不織布 - Google Patents
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b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
本発明の短繊維不織布は、熱処理により捲縮を発現する潜在捲縮性能を有する複合繊維を主体繊維とし、以下に詳述するポリエステルAからなる短繊維をバインダー繊維とし、両短繊維を含有するウエブからなり、バインダー繊維の少なくとも一部が溶融して接着成分を成しているものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) (1)
そして、主体繊維及びポリエステルAからなる短繊維は、本発明の不織布を乾式不織布とする際には繊維長を25〜100mmとすることが好ましく、中でも30〜80mmが好ましい。また、本発明の不織布を湿式不織布とする際には繊維長を1〜30mmとすることが好ましく、中でも3〜20mmとすることが好ましい。
潜在捲縮性能を有する複合繊維を主体繊維とし、ポリエステルAからなる短繊維をバインダー繊維とし、バインダー繊維と主体繊維を任意の割合で計量し、カード機を用いて混綿、解繊して乾式ウエブを作成する。得られたウエブを、連続熱処理機にてポリエステルAの融点(Tm)+10℃以上、かつ主体繊維の潜在捲縮が発現し得る温度で熱接着処理を施し、バインダー繊維を溶融させ、主体繊維の捲縮を発現させ、捲縮の発現した主体繊維が一体化した乾式短繊維不織布を得る。
潜在捲縮性能を有する複合繊維を主体繊維とし、ポリエステルAからなる短繊維をバインダー繊維とし、バインダー繊維と主体繊維を任意の割合で計量し、パルプ離解機に投入し、攪拌(混綿、解繊)する。得られた試料を抄紙機にて湿式不織ウエブを作成する。この湿式不織ウエブの余分な水分を脱水した後、ポリエステルAの融点(Tm)+10℃以上、かつ主体繊維の潜在捲縮が発現し得る温度で熱接着処理を施し、バインダー繊維を溶融させ、主体繊維の捲縮を発現させ、捲縮の発現した主体繊維が一体化した湿式短繊維不織布を得る。
(a) 極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(b)ポリエステルAの融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(c)ポリエステルAのポリマー組成
得られたポリエステルAからなるポリエステル短繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(d)ポリエステルAからなる短繊維の乾熱収縮率(%)
前記の方法で測定した。なお、繊維長が短くて測定が困難である場合は、カットする前の繊維で測定した。
(e)不織布の評価
1.地合
得られた不織布表面の地合を目視にて、良好(○)、不良(×)の2段階で評価した。
2.柔軟性(風合)
得られた不織布の柔軟性を触感にて判断し、良好(○)、不良(×)の2段階で評価した。
3.機械的特性(引張強さと耐熱性)
〔引張強さ〕
得られた不織布について、JIS L 1096 8.12の引張強さ及び伸び率 標準時A法(ストリップ法)により引張強さ(N)を測定した。カットストリップ法により試験片の幅5.0cmとし、定速伸長形試験機を用い、試験条件をつかみ間隔20cm、引張速度20cm/分とした。このとき、25℃雰囲気下で測定した。
〔耐熱性〕
上記の引張り強さを70℃雰囲気下で測定し、下記式で強力保持率を算出した。なお、強力保持率は耐熱性を示す指標であり、70%以上であることが好ましい。
強力保持率(%)=〔(70℃雰囲気下での引張強さ)/(25℃雰囲気下での引張強さ)〕×100
4.嵩高性
得られた不織布を20cm×20cmに切り出してサンプルとし、そのサンプル10枚を重ねた上に25cm×25cm×5mmのアクリル板(370g)を載せ、その上に1kgの錘を載せてアクリル板の下面の4辺のそれぞれの辺の中央の高さを測定し、4点の平均値を求めた。
乾式不織布、湿式不織布のそれぞれにおいて、平均値により以下のように3段階評価した。
(乾式不織布)
○:高さが40.0mm以上である
△:高さが25.0mm以上40.0mm未満である
×:高さが25.0mm未満である
(湿式不織布)
○:高さが15.0mm以上である
△:高さが10.0mm以上15.0mm未満である
×:高さが10.0mm未満である
(バインダー繊維)
極限粘度0.95、融点128℃の酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG15mol%、HD85mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有するポリエステルAをチップ化して溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度220℃、吐出量307g/分、紡糸孔数518、紡糸速度850m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出した糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して11万デシテックスのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率2.62倍、延伸温度40℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、仕上げ油剤を付与した後、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与し、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維(バインダー繊維)を得た。
(主体繊維)
PETと、SIPを4.5モル%共重合した共重合PETを質量比50/50でサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維であって、機械捲縮が付与されており、繊維長51mm、単糸繊度2.2デシテックス、170℃の熱処理により70個/25mmの捲縮を発現するポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製潜在捲縮綿〈C81〉)を用いた。
(乾式短繊維不織布)
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を質量比50/50(バインダー繊維/主体繊維)でカード機を通し、乾式ウェブを作成した。得られた乾式ウェブを温度160℃、風量20m3/分の連続熱処理機で1分間の熱接着処理を行い、ほとんど全てのバインダー繊維を溶融させて接着成分とし、かつ主体繊維の潜在捲縮が発現した目付100g/m2の乾式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表1に示す質量比とした以外は、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
極限粘度0.98、融点130℃の酸性分としてTPA、グリコール成分として1,4−ブタンジオール(BD)20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有するポリエステルAをチップ化して溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度220℃、吐出量307g/分、紡糸孔数518、紡糸速度850m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出した糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して11万デシテックスのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率2.8倍、延伸温度65℃で第一延伸を行い、次いで、延伸倍率1.15倍、延伸温度80℃で第二延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、仕上げ油剤を付与した後、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与し、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維(バインダー繊維)を得た。
主体繊維として実施例1で用いたポリエステル短繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表1に示す質量比とした以外は、実施例6と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
主体繊維として、PETと、IPAを4.0モル%、BAEOを4.0モル%共重合した共重合PETを質量比50/50でサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維であって、機械捲縮が付与されており、繊維長51mm、単糸繊度2.2デシテックス、170℃の熱処理により65個/25mmの捲縮を発現するポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製潜在捲縮綿〈T81〉)を用いた。
実施例1で用いたバインダー繊維を用い、不織布を製造する際の連続熱処理機での熱接着処理温度を140℃とした以外は、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
主体繊維として実施例11で用いたポリエステル短繊維を用い、バインダー繊維として実施例6で用いた短繊維を用い、実施例11と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
主体繊維のポリエステル短繊維を極限粘度0.64のPETのみからなる単糸繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリエステル短繊維とした以外は、実施例1と同様にして、乾式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維として、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部、ポリエチレンテレフタレートを芯部とする芯鞘型複合短繊維であって、単糸繊度2.2デシテックス、繊維長51mm、100℃、15分での乾熱収縮率が15.2%のポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製メルティ<3380>)を用いた。
主体繊維として実施例1で用いたポリエステル短繊維を用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
一方、比較例1では、主体繊維として潜在捲縮性能を有していないPETからなる短繊維を用いたため、得られた乾式短繊維不織布は、嵩高性、柔軟性に乏しいものであった。比較例2では、バインダー繊維が非晶性ポリエステルからなるものであったため、乾熱収縮率が高く、不織布を得る際の熱接着処理における収縮が大きく、得られた乾式短繊維不織布は、地合、柔軟性、耐熱性ともに劣るものであった。
(バインダー繊維)
実施例1と同様のポリエステルAを用い、実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸、熱処理を行い、仕上げ油剤を付与した後、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与せずに、繊維長5mmにカットして単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維を得た。
(主体繊維)
PETと、SIPを4.5モル%共重合した共重合PETを質量比50/50でサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維であって、機械捲縮が付与されていない、繊維長5mm、単糸繊度2.2デシテックス、170℃の熱処理により70個/25mmの捲縮を発現するポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製潜在捲縮綿〈C81〉)を用いた。
(湿式短繊維不織布)
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を質量比50/50(バインダー繊維/主体繊維)で混合し、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)にて湿式不織布ウエブとした。抄紙した湿式不織布ウエブの余分な水分を脱水した後、温度160℃、風量20m3/分の連続熱処理機で10分間の熱接着処理を行い、ほとんど全てのバインダー繊維を溶融させて接着成分とし、かつ主体繊維の潜在捲縮が発現した目付50g/m2の湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表1に示す質量比とした以外は、実施例13と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例6と同様のポリエステルAを用い、実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸、熱処理を行い、仕上げ油剤を付与した後、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与せずに、繊維長5mmにカットして単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維(バインダー繊維)を得た。
主体繊維として実施例13で用いたポリエステル短繊維を用いた以外は、実施例13と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表2に示す質量比とした以外は、実施例18と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維として、PETと、IPAを4.0モル%、BAEOを4.0モル%共重合した共重合PETを質量比50/50でサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維であって、機械捲縮が付与されておらず、繊維長5mm、単糸繊度2.2デシテックス、170℃の熱処理により65個/25mmの捲縮を発現するポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製潜在捲縮綿〈T81〉)を用いた。
実施例13で用いたバインダー繊維を用い、不織布を製造する際の連続熱処理機での熱接着処理温度を140℃とした以外は、実施例13と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維として実施例23で用いたポリエステル短繊維を用い、バインダー繊維として実施例18で用いた短繊維を用い、不織布を製造する際の連続熱処理機での熱接着処理温度を140℃とした以外は、実施例18と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
主体繊維のポリエステル短繊維を極限粘度0.64のPETのみからなる単糸繊度2.2デシテックス、繊維長5mmのポリエステル短繊維とした以外は、実施例13と同様にして、湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維として、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部、ポリエチレンテレフタレートを芯部とする芯鞘型複合短繊維であって、単糸繊度2.2デシテックス、繊維長5mm、100℃、15分での乾熱収縮率が15.2%のポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製メルティ<3380>)を用いた。
主体繊維として実施例13で用いたポリエステル短繊維を用い、実施例13と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
一方、比較例3では、主体繊維として潜在捲縮性能を有していないPETからなる短繊維を用いたため、得られた湿式短繊維不織布は、嵩高性、柔軟性に乏しいものであった。比較例4では、バインダー繊維が非晶性ポリエステルからなるものであったため、乾熱収縮率が高く、不織布を得る際の熱接着処理における収縮が大きく、得られた湿式短繊維不織布は、地合、柔軟性、耐熱性ともに劣るものであった。
Claims (3)
- ジカルボン酸成分がテレフタル酸のみ、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステルAのみからなる短繊維と、熱処理により捲縮を発現する潜在捲縮性能を有する複合繊維を含有するウエブからなり、ポリエステルAからなる短繊維の少なくとも一部が溶融して接着成分を成していることを特徴とする短繊維不織布。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。 - 潜在捲縮性能を有する複合繊維が、ポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステルを複合したものであり、共重合ポリエステルは、全酸成分に対して芳香族ジカルボン酸2〜6モル%を共重合したポリエステル、全酸成分に対してイソフタル酸1〜9モル%及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体2〜5モル%を共重合したポリエステルのいずれかである請求項1記載の短繊維不織布。
- ポリエステルAからなる短繊維は、ポリエステルAの融点をTmとしたとき、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%以下である請求項1又は2記載の短繊維不織布。
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