JP5117259B2 - ポリエステル複合短繊維及び短繊維不織布 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、次の(ア)、(イ)を要旨とするものである。
(ア)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、融点が100〜140℃、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステルAと、ポリエステルAの融点よりも30℃以上高い融点を有するポリ乳酸系重合体とで構成された複合繊維であって、単糸の横断面形状においてポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めるように配され、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル複合短繊維を要旨とするものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
(イ)(ア)記載のポリエステル複合短繊維とポリ乳酸系重合体からなる短繊維とを含有するウエブからなり、ポリエステル複合短繊維のポリエステルAの少なくとも一部が溶融して接着成分を成していることを特徴とする短繊維不織布。
本発明のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルAとポリ乳酸系重合体とで構成されるものであり、ポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めている複合繊維である。つまり、本発明の複合短繊維は、単繊維の横断面形状(繊維軸方向に沿って垂直に切断した断面の形状)においてポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めているものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) (1)
一方、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%を超えるものでは、このような効果を奏することが困難となりやすい。
まず、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、結晶核剤を添加して重縮合反応を行う。重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。次に、このチップ(ポリエステルA)とポリ乳酸系重合体のチップを通常の複合溶融紡糸装置に供給して、芯部がポリ乳酸系重合体、鞘部がポリエステルAの芯鞘型複合繊維となるようにして溶融紡糸を行う。紡出糸条を冷却固化した後、一旦容器へ収納する。そして、この糸条を集束して糸条束とし、ローラ間で延伸倍率2〜4倍程度で延伸を施す。続いて100〜120℃で熱処理し、次いで仕上げ油剤を付与後、スタフィングボックス等で機械捲縮を付与し、目的とする繊維長にカットしてポリエステル複合短繊維を得る。
乾式又は湿式短繊維不織布を得る際に得られたウエブから、面積A0(タテ20cm×ヨコ20cm=400cm2)のサンプルを切り取り、ポリエステルAの融点をTmとしたとき、このサンプルを(Tm+10)℃に設定した熱風乾燥機中に15分間放置し(熱接着処理を行い)、その後の不織布の面積をA1とし、下式により算出するものである。
ウエブ収縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100
ポリ乳酸系重合体からなる短繊維を主体繊維とし、前記のようにして得られた本発明のポリエステル複合短繊維(芯部がポリ乳酸系重合体、鞘部がポリエステルAの芯鞘型複合繊維)をバインダー繊維とし、バインダー繊維と主体繊維を任意の割合で計量し、カード機を用いて混綿、解繊して乾式ウエブを作成する。得られたウエブを、連続熱処理機にてポリエステルAの融点(Tm)+10℃の温度で熱接着処理を施し、バインダー繊維のポリエステルAが溶融することにより接着成分となり、芯部のポリ乳酸系重合体からなる繊維と主体繊維が一体化した乾式短繊維不織布を得る。
ポリ乳酸系重合体からなる短繊維を主体繊維とし、前記のようにして得られた本発明のポリエステル複合短繊維(芯部がポリ乳酸系重合体、鞘部がポリエステルAの芯鞘型複合繊維)をバインダー繊維とし、バインダー繊維と主体繊維を任意の割合で計量し、パルプ離解機に投入し、攪拌(混綿、解繊)する。得られた試料を抄紙機にて湿式不織ウエブを作成する。この湿式不織ウエブをプレス機にて余分な水分を脱水した後、ポリエステルAの融点(Tm)+10℃の温度で熱接着処理を施し、バインダー繊維のポリエステルAが溶融することにより接着成分となり、芯部のポリ乳酸系重合体からなる繊維と主体繊維が一体化した湿式短繊維不織布を得る。
(a) 無機系微粒子の平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(b) 無機系微粒子の比表面積
BET法により測定した。
(c)ポリエステルAの極限粘度、ポリ乳酸系重合体の相対粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(d)ポリエステルAの融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(e)ポリエステルAのポリマー組成
得られたポリエステル複合短繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)ポリ乳酸系重合体のL−乳酸及びD−乳酸の含有量
超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。カラムにはSumichiral OA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(g)紡糸操業性
紡糸の状況により下記の2段階で評価した。
○:紡糸時の切れ糸回数が1回/トン以下であり、単糸間での溶着がない。
×:紡糸時の切れ糸回数が1回/トンを超えるか、単糸間での溶着の発生がある。
(h)ポリエステル複合短繊維の乾熱収縮率(%)
前記の方法で測定した。
(i)短繊維不織布の評価
1.地合
得られた不織布表面の地合を目視、触感にて3段階(優れているものを○とし、○、△、×の3段階)で評価した。
2.ウエブ収縮率
前記の方法で測定した。
3.機械的特性(引張強さ)
得られた不織布について、JIS L 1096 8.12の引張強さ及び伸び率 標準時A法(ストリップ法)により引張強さ(N)を測定した。カットストリップ法により試験片の幅5.0cmとし、定速伸長形試験機を用い、試験条件をつかみ間隔20cm、引張速度20cm/分とした。このとき、25℃雰囲気下で測定した。
エステル化反応缶に、TPAとEGのスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%の反応物を得た。この反応物を重縮合反応缶に移送し、HDを重縮合反応缶に投入し、温度240℃、常圧下で1時間攪拌した。次に、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m2/gのタルクを含有するEGスラリーを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。得られたポリエステルAは、酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG15mol%、HD85mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有し、極限粘度0.95、融点128℃のものであった。
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点が168℃、相対粘度1.88であるポリ乳酸を用いた。
ポリエステルAチップとポリ乳酸チップを複合紡糸装置に供給し、ポリエステルAが鞘部、ポリ乳酸が芯部となるようにし、両成分の質量比を50/50として溶融紡糸を行った。このとき、紡糸温度220℃、単孔吐出量0.530g/分、紡糸速度750m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して35万dtexのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率3.2倍、延伸温度60℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与し、繊維長51mmにカットして単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル複合短繊維を得た。
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示すポリエステルA中の含有量とした以外は、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
エステル化反応缶に、TPA、HD、BDを供給し、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m2/gのタルクを添加し、温度230℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。得られたポリエステルAは、酸性分としてTPA、グリコール成分として1,4−ブタンジオール(BD)20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有し、極限粘度0.98、融点130℃のものであった。
ポリ乳酸系重合体として実施例1で用いたものと同じポリ乳酸を用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示すポリエステルA中の含有量とした以外は、実施例4と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。さらに、実施例4と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
ポリエステルAに代えて、IPAを33モル%共重合したPET(極限粘度0.75、流動開始温度130℃)を用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
ポリエステルAに代えて、酸性分としてTPA78モル%、IPA12モル%、グリコール成分としてEG70モル%、HD30モル%からなり、極限粘度0.95、融点83℃のポリエステルを用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが91/9であり、融点が130℃、相対粘度1.92であるポリ乳酸を用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表1に示す質量比とした以外は、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点が168℃、相対粘度1.88であるポリ乳酸を用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度225℃、吐出量364g/min、紡糸速度900m/minの条件で、ホール数518の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.55倍、延伸温度50℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、繊維長51mmにカットして単糸繊度2.2dtexの短繊維を得た。
実施例1のポリエステル複合短繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例2のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、両繊維の混合割合を質量比50/50(バインダー繊維/主体繊維)で混合し、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)にて湿式短繊維不織布ウエブとした。抄紙した湿式短繊維不織布ウエブを、プレス機(熊谷理機工業製)にて余分な水分を脱水した後、回転乾燥機(熊谷理機工業製:卓上型ヤンキードライヤー)を用い、(ポリエステルAの融点+10℃)の表面温度、熱処理時間100秒、プレス線圧0.1MPaの条件で熱処理し、バインダー繊維のポリエステルAのほとんどを溶融させて接着成分とし、目付40g/m2 の湿式短繊維不織布を得た。
実施例2〜6のそれぞれのポリエステル複合短繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は実施例2〜6と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例2のポリ乳酸繊維を主体繊維として用いた以外は、実施例11と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
比較例1〜7のそれぞれのポリエステル複合短繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は、比較例1〜7と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例2のポリ乳酸繊維を主体繊維として用いた以外は、実施例11と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表2に示す質量比とした以外は、実施例11と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
参考例1のポリ乳酸繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は、参考例1と同様にしてポリ乳酸繊維を得た。
Claims (3)
- テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、融点が100〜140℃、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステルAと、ポリエステルAの融点よりも30℃以上高い融点を有するポリ乳酸系重合体とで構成された複合繊維であって、単糸の横断面形状においてポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めるように配され、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル複合短繊維。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。 - ポリエステルAの融点をTmとしたとき、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%以下である請求項1記載のポリエステル複合短繊維。
- 請求項1又は2記載のポリエステル複合短繊維とポリ乳酸系重合体からなる短繊維とを含有するウエブからなり、ポリエステル複合短繊維のポリエステルAの少なくとも一部が溶融して接着成分を成していることを特徴とする短繊維不織布。
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