JP5117259B2 - ポリエステル複合短繊維及び短繊維不織布 - Google Patents

ポリエステル複合短繊維及び短繊維不織布 Download PDF

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Description

本発明は、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルが繊維表面の少なくとも一部を占めるように配された複合繊維であって、熱接着性に優れ、バインダー繊維として用いることが好適なポリエステル複合短繊維及び本発明のポリエステル複合短繊維とポリ乳酸繊維とからなる短繊維不織布に関するものである。
合成繊維、特にポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性、さらにはリサイクル性等から、衣料、産業資材として不可欠のものとなっており、様々な分野において、ポリエステル繊維が広く使用されている。
近年、自動車用内装材等において、バインダー繊維を用いて構成繊維を接着した不織布等の繊維構造物が多用されるようになっている。このようなバインダー繊維に用いられる繊維としては、ポリエチレンテレフタレートを芯部とし、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部とした芯鞘型複合短繊維が挙げられる。
この繊維は、高融点の芯部と低融点の鞘部とからなるため、熱処理の際に芯部を溶融させず繊維形態を保持させ、鞘部のみを溶融させて接着成分とすることにより、強度に優れた不織布を得ることができる。
しかしながら、鞘部のイソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体は、非晶性であり明確な結晶融点を示さないため、ガラス転移点以上の温度で軟化が始まる。また、明確な結晶融点を示さないポリマーが繊維表面を占める短繊維を製造する場合、延伸・熱処理工程において熱処理温度を100℃以上とすると、繊維の融解・膠着が生じ、実施が困難となる。このため、延伸・熱処理工程を低温で行うこととなり、得られる短繊維は熱収縮率が高いものとなる。
そして、このような短繊維をバインダー繊維として使用すると、熱接着処理時の収縮が大きいものとなり、不織布等の製品を得る際の寸法安定性が悪くなり、地合や均斉に劣る製品となるという問題があり、また、高温雰囲気下で使用した場合、接着強力が低下して変形するという問題が生じていた。
上記の問題を解決するものとして、特許文献1に芯鞘型の複合繊維が記載されている。この繊維は、芯部にポリエチレンテレフタレートを配し、鞘部にテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分及び1,4−ブタンジオール成分を共重合したポリエステル系共重合体を配した芯鞘型複合繊維である。
この複合繊維は、鞘部の共重合体は結晶性であり明確な融点を示すため、短繊維を得る際の延伸・熱処理工程を高温で行うことができ、熱収縮率の低い短繊維を得ることができる。このため、熱接着処理の際に収縮することがなく、寸法安定性よく不織布等の製品を得ることができ、また、高温雰囲気下で使用した際の耐熱性にも優れた製品とすることができる。
しかしながら、この共重合ポリエステルは融点が150〜200℃の範囲のものであり、まだ低融点領域であるとはいえず、熱接着処理する際には加工温度を高くする必要があり、コスト的にも不利であった。
特開2006−118066号公報
本発明は上記の問題点を解決するものであって、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルを用いることで、通常の製造装置で溶融紡糸、延伸、熱処理を操業性よく行って得ることができ、特にバインダー繊維として用いると、熱接着させる際には低い温度で加工することができ、寸法安定性よく、地合や品位に優れた不織布等の製品を得ることができるポリエステル複合短繊維であって、さらにはポリ乳酸系重合体をもう一方の成分として用いることにより植物由来成分を使用し、環境に配慮したポリエステル複合短繊維を提供することを技術的な課題とするものである。また、このようなポリエステル複合短繊維とポリ乳酸繊維とからなるものであるため、植物由来成分を使用し、環境に配慮した不織布とすることができる短繊維不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の(ア)、(イ)を要旨とするものである。
(ア)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、融点が100〜10℃、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステルAと、ポリエステルAの融点よりも30℃以上高い融点を有するポリ乳酸系重合体とで構成された複合繊維であって、単糸の横断面形状においてポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めるように配され、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル複合短繊維を要旨とするものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
(イ)(ア)記載のポリエステル複合短繊維とポリ乳酸系重合体からなる短繊維とを含有するウエブからなり、ポリエステル複合短繊維のポリエステルAの少なくとも一部が溶融して接着成分を成していることを特徴とする短繊維不織布。
本発明のポリエステル複合短繊維は、低融点でありながら結晶性に優れ、特に降温時の結晶化速度が速いポリエステルを用い、繊維表面の少なくとも一部を占めるように配することで、紡糸工程においては単糸間の溶着がなく、延伸、熱処理工程においては高温で熱処理を行うことが可能となり、乾熱収縮率の低い短繊維とすることができる。このため、バインダー繊維として用いると、熱接着処理する際には低い温度で加工することができ、コスト的に有利であり、熱接着性にも優れている。さらに、熱接着処理時の収縮が小さく、寸法安定性よく、地合や品位に優れた不織布等の製品を得ることが可能となる。さらに、本発明のポリエステル複合短繊維は、ポリ乳酸系重合体をもう一方の成分として使用するものであるので、植物由来成分を使用した地球環境に配慮したものである。
本発明の短繊維不織布は、本発明のポリエステル複合短繊維とポリ乳酸繊維とからなり、ポリエステルAが溶融して接着成分となっているものであるため、低温で熱接着することが可能であり、主体繊維となるポリ乳酸繊維が熱劣化することなく、機械的特性と品位に優れたポリ乳酸繊維からなる不織布となるものである。さらには植物由来成分を多く使用した不織布となり、地球環境に配慮したものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルAとポリ乳酸系重合体とで構成されるものであり、ポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めている複合繊維である。つまり、本発明の複合短繊維は、単繊維の横断面形状(繊維軸方向に沿って垂直に切断した断面の形状)においてポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めているものである。
このような形状としては、サイドバイサイド型や偏心芯鞘型、多層型のもの等が挙げられるが、中でも単糸の横断面形状においてポリエステルAが鞘部、ポリ乳酸系重合体が芯部に配された芯鞘形状であることが好ましい。
まず、ポリエステルAについて説明する。ポリエステルAは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、融点が100〜10℃の共重合ポリエステルである。
ポリエステルAの融点(Tm)は100〜10℃であり、中でも110〜140℃であることが好ましい。Tmが100℃未満であると、本発明の複合短繊維を用いて得られた不織布等の製品は、高温雰囲気下で使用した場合の熱安定性(耐熱性)に劣るものとなる。一方、10℃を超えると、製品を得る際の熱接着加工温度を高くする必要があり、加工性、経済性に劣る。また、熱処理により得られる製品の品質や風合い等を損ねるため好ましくない。
ポリエステルAは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とするものであり、テレフタル酸(以下、TPAとする)は60モル%以上、中でも80モル%以上であることが好ましい。TPAが60モル%未満であると、ポリマーの融点が本発明の範囲外のものとなったり、結晶性が低下しやすくなるため好ましくない。
なお、TPA以外の共重合成分としては、その効果を損なわない範囲であれば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
ジオール成分としては、1,6−ヘキサンジオール(以下、HDとする)が60〜95モル%であり、他の成分としてはエチレングリコール(以下、EGとする) または1,4−ブタンジオール(以下、BDとする)を用いるHDが50モル%未満の場合、融点が150℃を超えるものとなる。
ジオール成分として、HDとともに用いるEGやBDオール成分において、〜40モル%とする
そして、ポリエステルAは、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するものであり、中でも0.5〜3.0質量%含有することが好ましい。
ポリエステルAは、上記のような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができ、後述する(1)式を満足することができるものとなる。そして、ポリエステルAとポリ乳酸系重合体を用いて繊維化する際、溶融紡糸工程においては単糸間の溶着を生じることなく、延伸、熱処理工程においては高温で熱処理することが可能となるため、乾熱収縮率の低い繊維とすることができる。
結晶核剤の含有量が0.01質量%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、ポリエステルAは後述する(1)式を満足することができない。一方、5.0質量%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、紡糸、延伸時の操業性を悪化させることとなる。また、操業性が悪化することで糸質のバラツキが大きくなり、繊維の乾熱収縮率も高くなる。
結晶核剤としては、無機系微粒子やポリオレフィン、硫酸塩等を使用することが好ましい。
無機系微粒子としては、中でもタルクなどの珪素酸化物を主成分としたものが好ましく、平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子を用いることが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、ポリエステルAは後述する(1)式を満足することが困難となりやすい。
また、結晶核剤として含有させるポリオレフィンは、反応系内で溶融するため、形状については特に限定するものではなく、例えば粒径2mm程度のチップ状のものや、粒径数μmのワックス状のものであってもよい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などを挙げることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、プロピレン・エチレンランダム共重合体が特に好ましい。なお、ポリオレフィンが炭素原子数3以上のオレフィンから得られるポリオレフィンである場合には、アイソタクチック重合体であってもよく、シンジオタチック重合体であってもよい。
結晶核剤として含有させる硫酸塩は、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどを挙げることができ、中でも結晶核剤としての効果の点から、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムが好ましい。
これらの結晶核剤を添加する方法としては、粉体のまま、あるいはジオールスラリーの形態でポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。中でも、結晶核剤としての効果を良好なものとするには、エチレングリコール等のグリコールにスラリー状態あるいは溶解させた状態で添加することが好ましい。
また、ポリエステルA中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
そして、ポリエステルAは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記(1)式を満足するものであり、中でもb/a≧0.06であることが好ましい。一方、b/aが大きいほど降温時の結晶性に優れるものとなるが、本発明で目的とする効果を奏するには、b/aを0.5以下とすることが好ましい。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) (1)
本発明におけるポリエステルAの融点とDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/分、試料量2mg(短繊維の質量)で測定する。
上記b/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。このとき、繊維を形成するポリエステルAとポリ乳酸系重合体のピークが2つ現れるが、低温側に現れるピークのDSC曲線がポリエステルAのものである。
そして、図1に示すように、ポリエステルAのDSC曲線において、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05(mW/mg・℃)未満の場合、結晶化速度が遅いため、溶融紡糸時に単糸間の溶着が発生し、紡糸操業性が悪くなる。また、延伸・熱処理工程における熱処理温度を高くすると、繊維の融解・膠着が生じ、高温での熱処理を行うことができないため熱収縮率の低い繊維を得ることができない。
上記したように、b/aは、ポリエステルAの共重合組成を特定のものとし、結晶核剤の含有量を上記範囲の量とすることにより、本発明で規定する範囲のものにすることができる。
次にポリ乳酸系重合体について説明する。ポリ乳酸系重合体としては、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体を用いることができる。
そして、ポリ乳酸系重合体は、ポリエステルAの融点よりも30℃以上高い融点を有するものである。上記のようにL−乳酸やD−乳酸を単独で用いる場合、融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると、融点はおよそ130℃程度となる。
そこで、ポリ乳酸としては、ラクチドを原料として重合する時のL−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが、90/10以上のものが好ましく、中でも95/5以上、さらには98/2以上とすることが好ましい。
また、ポリ乳酸の中でも、上記したようなポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)は、融点が200〜230℃と高く、高温雰囲気下での強度も高くなり、特に好ましい。
本発明のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルAを低融点のポリエステル、ポリ乳酸系重合体を高融点のポリエステルとすることで、バインダー繊維として用いることが好適なものであり、熱接着処理によりポリエステルAが溶融して接着成分となり、ポリ乳酸系重合体は溶融せずに主体繊維とすることが好ましいものである。
ポリ乳酸系重合体の融点とポリエステルAの融点との差が30℃未満であると、熱接着処理によりポリエステルAを溶融させる際に、ポリ乳酸系重合体も溶融したり劣化が生じることとなり、得られる不織布等の製品は機械的特性や品位に劣るものとなる。
また、本発明におけるポリ乳酸系重合体には、目的を損なわない範囲で、ε−カプロラクトンなどの環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸などのα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類を含有してもよい。
本発明のポリエステル複合短繊維のポリエステルAとポリ乳酸系重合体の複合比率(質量比率)は、20/80〜80/20とすることが好ましく、中でも30/70〜70/30とすることが好ましい。ポリエステルAの成分がこれより少ないと接着成分が不足してバインダー繊維として不適なものとなる。一方、ポリエステルAの成分がこれより多いと、得られる不織布等の製品は十分な強力が得られないものとなりやすい。
そして、本発明のポリエステル複合短繊維は、上記したように結晶性に優れるポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めるように配されているので、溶融紡糸する際に単糸間の溶着が発生せず、延伸、熱処理を高温で施すことができ、熱収縮率の低い繊維とすることができる。具体的には、本発明のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルAの融点をTmとしたとき、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%以下であることが好ましく、中でも5%以下であることが好ましく、さらには4.5〜0.5%とすることが好ましい。
本発明における乾熱収縮率とは、JIS L−1015の収縮率の測定における乾熱収縮率の測定方法により測定するものであり、初荷重を50mg/デシテックス、つかみ間隔を25mm、処理温度を(Tm−30)℃として測定するものである。なお、繊維長が短くて測定が困難である場合は、短繊維にカットする前の繊維を用いて測定するものとする。
(Tm−30)℃における乾熱収縮率を7%以下とすることで、この短繊維をバインダー繊維として不織布等を製造する際に、ウエブ等を熱接着処理する際の収縮が小さくなり、熱接着処理後に得られる不織布等の製品は、地合や均斉に優れるものとなる。
一方、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%を超えるものでは、このような効果を奏することが困難となりやすい。
従来のような明確な結晶融点を示さないポリエステルを用いて短繊維を製造すると、溶融紡糸する際に単糸間の溶着が発生するとともに、延伸、熱処理工程において熱処理温度を100℃以上とすると、繊維の融解、膠着が生じ、実施が困難となる。したがって、延伸、熱処理工程を低温で行うこととなり、得られる短繊維は乾熱収縮率が高くなる。このため、このような短繊維をバインダー繊維として不織布を製造すると、ウエブを熱接着処理する際の収縮が大きくなり、得られる不織布は熱接着処理前のウエブの面積と比較したウエブ収縮率が大きくなり、地合や均斉に劣るものとなっていた。
また、本発明のポリエステル複合短繊維の単糸の断面形状は特に限定するものではなく、丸型のみならず扁平型、トリローバル型、ヘキサローバル型等の異形断面や四角形や三角形等の多角形状、中空形状のものでもよい。
そして、本発明のポリエステル複合短繊維は、繊維長が1〜100mmの短繊維であり、中でも繊維長は3〜80mmが好ましく、バインダー繊維として不織布等の製品を得る際に好適に用いることができる。繊維長が1mm未満であると、切断時の熱によって繊維の融着や膠着が生じる。繊維長が100mmを超えると、カード機での解繊性が悪くなり、得られる不織布等の製品は地合や均斉の劣るものとなる。
さらに、本発明のポリエステル複合短繊維の単糸繊度は1〜15dtexであることが好ましい。単糸繊度が1dtex未満であると、紡糸、延伸工程において単糸切断が頻発し、操業性が悪化するとともに、得られる不織布の強力も劣る傾向となる。一方、単糸繊度が15dtexを超えると紡糸糸条の冷却が不十分となり、得られる繊維の品位が低下しやすくなる。
また、本発明のポリエステル複合短繊維は、用いる用途に応じて機械捲縮が付与されているものであっても、付与されていないものであってもよい。
本発明のポリエステル複合短繊維の製造方法について一例を用いて説明する。
まず、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、結晶核剤を添加して重縮合反応を行う。重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。次に、このチップ(ポリエステルA)とポリ乳酸系重合体のチップを通常の複合溶融紡糸装置に供給して、芯部がポリ乳酸系重合体、鞘部がポリエステルAの芯鞘型複合繊維となるようにして溶融紡糸を行う。紡出糸条を冷却固化した後、一旦容器へ収納する。そして、この糸条を集束して糸条束とし、ローラ間で延伸倍率2〜4倍程度で延伸を施す。続いて100〜120℃で熱処理し、次いで仕上げ油剤を付与後、スタフィングボックス等で機械捲縮を付与し、目的とする繊維長にカットしてポリエステル複合短繊維を得る。
次に、本発明のポリエステル複合短繊維を用いた短繊維不織布としては、本発明の複合短繊維のみを用いたものや、本発明の複合短繊維をバインダー繊維とし、他の繊維を主体繊維とするものが挙げられる。そして、主体繊維としては、ポリエステルやポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる合成繊維や天然繊維のいずれであってもよい。
本発明のポリエステル複合短繊維は、バインダー成分(熱接着成分)となるポリエステルAの融点が低いものであるため、低温で熱接着処理を行うことができ、コスト的に有利であると同時に、熱接着処理による主体繊維の劣化を防ぐことが可能となる。したがって、用いることができる主体繊維の種類も多くなり、機械的特性、品位に優れる不織布を得ることが可能となる。
中でも本発明のポリエステル複合短繊維を用いた短繊維不織布としては、本発明のポリエステル複合短繊維をバインダー繊維、主体繊維としてポリ乳酸系重合体からなる短繊維を用いるものが好ましい。そして、このような本発明の短繊維不織布は、ポリエステル複合短繊維のポリエステルAの少なくとも一部が溶融して接着成分を成しているものである。
つまり、本発明の短繊維不織布は、バインダー繊維のポリエステルAを溶融させる際の熱接着処理において、ポリエステルAの全てを溶融させて接着成分としているもの、もしくは一部のみを溶融させて接着成分としているもののいずれでもよいが、中でもポリエステルAの全てを溶融させて接着成分としているものが好ましい。
そして、本発明の短繊維不織布においては、本発明のポリエステル複合短繊維(バインダー繊維)を形成するポリ乳酸系重合体は熱接着処理により溶融せず、主体繊維となることが好ましいものである。これにより、本発明の短繊維不織布は、ポリ乳酸系重合体からなる繊維のみを主体繊維とするものとなり、環境に配慮した不織布とすることができる。
さらに、本発明の短繊維不織布は、ポリエステルAが低融点のものであるため、熱接着処理を低温で行うことができ、熱劣化しやすいポリ乳酸繊維の性能の低下を防ぐことができ、機械的特性や品位に優れたポリ乳酸短繊維不織布とすることができる。
また、本発明の短繊維不織布は、乾式短繊維不織布、湿式短繊維不織布のいずれでもよく、目付けも特に限定するものではない。
本発明の短繊維不織布中の主体繊維の混合割合は、10〜90質量%であることが好ましい。主体繊維の割合が90質量%を超えると、バインダー繊維の割合が少なく、接着成分が少なくなり、接着力が低くなるため、短繊維不織布は機械的特性(強度等)に劣るものとなる。一方、主体繊維の割合が10質量%未満であると、バインダー繊維の割合が多く、接着成分が多くなりすぎるため、短繊維不織布は柔軟性に乏しくなる。
次に、本発明の短繊維不織布を構成する主体繊維は、ポリ乳酸系重合体からなる短繊維であるが、ポリ乳酸系重合体としては、前記したような本発明のポリエステル複合短繊維を形成するポリ乳酸系重合体と同様のものを用いることが好ましい。そして、ポリ乳酸系重合体の融点はバインダー繊維を構成するポリエステルAの融点より30℃以上高いものが好ましい。
ポリエステルAの融点との差が30℃未満であると、熱接着処理によりポリエステルAを溶融させる際に、主体繊維も溶融したり劣化が生じることとなり、得られる不織布は機械的特性や品位に劣るものとなりやすい。
そして、本発明の短繊維不織布を乾式短繊維不織布とする際には、バインダー繊維、主体繊維ともに、繊維長を25〜100mmとすることが好ましく、中でも30〜80mmとすることが好ましい。また、本発明の不織布を湿式短繊維不織布とする際には、バインダー繊維、主体繊維ともに、繊維長を1〜30mmとすることが好ましく、中でも3〜20mmとすることが好ましい。
乾式短繊維不織布とする際に短繊維の繊維長が25mm未満であると、カード機での解繊時に繊維の脱落が生じるため、操業性が悪化する。一方、100mmを超えると、カード機での解繊性が悪くなり、得られる不織布は地合や均斉の劣るものとなる。また、湿式短繊維不織布とする際に短繊維の繊維長が1mm未満であると、切断時の熱によって繊維の溶着や膠着が生じる。一方、30mmを超えると、抄紙機でウエブを得る際に繊維塊が生じやすくなり、得られる不織布は地合や均斉の劣るものとなる。
そして、本発明の短繊維不織布は、本発明のポリエステル複合短繊維をバインダー繊維に用いるものであるため、ウエブを熱接着処理する際の収縮が小さく、得られる不織布は熱接着処理前のウエブの面積と比較したウエブ収縮率が小さくなるものである。ウエブ収縮率が小さいことにより地合や均斉に優れる短繊維不織布とすることができるものである。
本発明における短繊維不織布のウエブ収縮率は、次のようにして求めるものである。
乾式又は湿式短繊維不織布を得る際に得られたウエブから、面積A0(タテ20cm×ヨコ20cm=400cm)のサンプルを切り取り、ポリエステルAの融点をTmとしたとき、このサンプルを(Tm+10)℃に設定した熱風乾燥機中に15分間放置し(熱接着処理を行い)、その後の不織布の面積をA1とし、下式により算出するものである。
ウエブ収縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100
そして、本発明の短繊維不織布においては、ウエブ収縮率は10%以下、中でも9.5%以下であることが好ましい。ウエブ収縮率が10%を超えるものでは、不織布とする際の熱接着処理時の収縮が大きくなり、得られる不織布は地合や均斉に劣るものとなりやすい。
次に、本発明の短繊維不織布(乾式)の製造方法について一例を用いて説明する。
ポリ乳酸系重合体からなる短繊維を主体繊維とし、前記のようにして得られた本発明のポリエステル複合短繊維(芯部がポリ乳酸系重合体、鞘部がポリエステルAの芯鞘型複合繊維)をバインダー繊維とし、バインダー繊維と主体繊維を任意の割合で計量し、カード機を用いて混綿、解繊して乾式ウエブを作成する。得られたウエブを、連続熱処理機にてポリエステルAの融点(Tm)+10℃の温度で熱接着処理を施し、バインダー繊維のポリエステルAが溶融することにより接着成分となり、芯部のポリ乳酸系重合体からなる繊維と主体繊維が一体化した乾式短繊維不織布を得る。
次に、本発明の短繊維不織布(湿式)の製造方法について一例を用いて説明する。
ポリ乳酸系重合体からなる短繊維を主体繊維とし、前記のようにして得られた本発明のポリエステル複合短繊維(芯部がポリ乳酸系重合体、鞘部がポリエステルAの芯鞘型複合繊維)をバインダー繊維とし、バインダー繊維と主体繊維を任意の割合で計量し、パルプ離解機に投入し、攪拌(混綿、解繊)する。得られた試料を抄紙機にて湿式不織ウエブを作成する。この湿式不織ウエブをプレス機にて余分な水分を脱水した後、ポリエステルAの融点(Tm)+10℃の温度で熱接着処理を施し、バインダー繊維のポリエステルAが溶融することにより接着成分となり、芯部のポリ乳酸系重合体からなる繊維と主体繊維が一体化した湿式短繊維不織布を得る。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a) 無機系微粒子の平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(b) 無機系微粒子の比表面積
BET法により測定した。
(c)ポリエステルAの極限粘度、ポリ乳酸系重合体の相対粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(d)ポリエステルAの融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(e)ポリエステルAのポリマー組成
得られたポリエステル複合短繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)ポリ乳酸系重合体のL−乳酸及びD−乳酸の含有量
超純水と1Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液の等質量混合溶液を溶媒とし、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。カラムにはSumichiral OA6100を使用し、UV吸収測定装置により検出した。
(g)紡糸操業性
紡糸の状況により下記の2段階で評価した。
○:紡糸時の切れ糸回数が1回/トン以下であり、単糸間での溶着がない。
×:紡糸時の切れ糸回数が1回/トンを超えるか、単糸間での溶着の発生がある。
(h)ポリエステル複合短繊維の乾熱収縮率(%)
前記の方法で測定した。
(i)短繊維不織布の評価
1.地合
得られた不織布表面の地合を目視、触感にて3段階(優れているものを○とし、○、△、×の3段階)で評価した。
2.ウエブ収縮率
前記の方法で測定した。
3.機械的特性(引張強さ)
得られた不織布について、JIS L 1096 8.12の引張強さ及び伸び率 標準時A法(ストリップ法)により引張強さ(N)を測定した。カットストリップ法により試験片の幅5.0cmとし、定速伸長形試験機を用い、試験条件をつかみ間隔20cm、引張速度20cm/分とした。このとき、25℃雰囲気下で測定した。
実施例1
エステル化反応缶に、TPAとEGのスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%の反応物を得た。この反応物を重縮合反応缶に移送し、HDを重縮合反応缶に投入し、温度240℃、常圧下で1時間攪拌した。次に、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを含有するEGスラリーを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。得られたポリエステルAは、酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG15mol%、HD85mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有し、極限粘度0.95、融点128℃のものであった。
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点が168℃、相対粘度1.88であるポリ乳酸を用いた。
ポリエステルAチップとポリ乳酸チップを複合紡糸装置に供給し、ポリエステルAが鞘部、ポリ乳酸が芯部となるようにし、両成分の質量比を50/50として溶融紡糸を行った。このとき、紡糸温度220℃、単孔吐出量0.530g/分、紡糸速度750m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して35万dtexのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率3.2倍、延伸温度60℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与し、繊維長51mmにカットして単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル複合短繊維を得た。
得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、両繊維の混合割合を質量比50/50(バインダー繊維/主体繊維)でカード機を通し、乾式ウエブを作成した。得られた乾式ウエブを(ポリエステルAの融点+10℃)の温度、風量20m/分の連続熱処理機で1分間の熱接着処理を行い、バインダー繊維のポリエステルAのほとんどを溶融させて接着成分とし、目付100g/mの乾式短繊維不織布を得た。
実施例2〜3、比較例1〜2
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示すポリエステルA中の含有量とした以外は、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例4
エステル化反応缶に、TPA、HD、BDを供給し、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを添加し、温度230℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。得られたポリエステルAは、酸性分としてTPA、グリコール成分として1,4−ブタンジオール(BD)20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有し、極限粘度0.98、融点130℃のものであった。
ポリ乳酸系重合体として実施例1で用いたものと同じポリ乳酸を用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例5〜6、比較例3〜4
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示すポリエステルA中の含有量とした以外は、実施例4と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。さらに、実施例4と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
比較例5
ポリエステルAに代えて、IPAを33モル%共重合したPET(極限粘度0.75、流動開始温度130℃)を用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
比較例6
ポリエステルAに代えて、酸性分としてTPA78モル%、IPA12モル%、グリコール成分としてEG70モル%、HD30モル%からなり、極限粘度0.95、融点83℃のポリエステルを用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
比較例7
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが91/9であり、融点が130℃、相対粘度1.92であるポリ乳酸を用い、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
そして、得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例1のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例7〜10
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表1に示す質量比とした以外は、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
参考例1
ポリ乳酸系重合体として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが98.8/1.2であり、融点が168℃、相対粘度1.88であるポリ乳酸を用い、通常の溶融紡糸装置を用い、紡糸温度225℃、吐出量364g/min、紡糸速度900m/minの条件で、ホール数518の丸型断面のノズルで紡出し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を12.3ktexのトウに集束した後、延伸倍率3.55倍、延伸温度50℃で延伸を行い、押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、繊維長51mmにカットして単糸繊度2.2dtexの短繊維を得た。
実施例1〜10、比較例1〜7で得られたポリエステル複合短繊維及び乾式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜6のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルAが(1)式を満足するものであり、結晶性が高く、紡糸操業性よく得ることができ、また延伸、熱処理を良好に行うことができ、乾熱収縮率の低いものであった。そして、これらの複合短繊維をバインダー繊維に用いた実施例1〜10の乾式短繊維不織布は、ウエブ収縮率が低く、寸法安定性よく得ることができ、地合、機械的特性ともに優れたものであった。
一方、比較例1、3のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルA中の結晶核剤の含有量が少なすぎたため、結晶化速度が遅くなり、紡糸時に単糸間の溶着が生じ、紡糸操業性が悪かった。また、ヒートドラム温度を実施例1と同様の温度では熱処理できず、ヒートドラム温度を80℃としたため、得られた繊維は乾熱収縮率の大きいものとなった。比較例2、4のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルA中の結晶核剤の含有量が多かったため、紡糸時に切れ糸が発生し、操業性が悪かった。これにより糸質のバラツキが大きくなり、乾熱収縮率の大きいものとなった。比較例5のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルAに明確な融点を示さないポリエステルを用いたため、結晶化速度が遅くなり、ヒートドラム温度を実施例1と同様の温度では熱処理できず、ヒートドラム温度を80℃としたため、得られた繊維は乾熱収縮率の大きいものとなった。比較例6のポリエステル複合短繊維は、ポリエステルAの融点が低すぎたため、紡糸時に単糸間の溶着が生じ、紡糸操業性が悪かった。また、ヒートドラム温度を実施例1と同様の温度では熱処理できず、ヒートドラム温度を80℃としたため、得られた繊維は乾熱収縮率の大きいものとなった。このため、比較例1〜6で得られた乾式短繊維不織布は、いずれもウエブ収縮率が高く、地合にも劣るものであった。また、比較例7のポリエステル複合短繊維は、ポリ乳酸の融点が低いものであったため、乾式ウエブを熱処理する際に芯のポリ乳酸が溶けてしまい、得られた乾式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。
実施例11
実施例1のポリエステル複合短繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例2のポリ乳酸繊維を主体繊維として用い、両繊維の混合割合を質量比50/50(バインダー繊維/主体繊維)で混合し、パルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)にて湿式短繊維不織布ウエブとした。抄紙した湿式短繊維不織布ウエブを、プレス機(熊谷理機工業製)にて余分な水分を脱水した後、回転乾燥機(熊谷理機工業製:卓上型ヤンキードライヤー)を用い、(ポリエステルAの融点+10℃)の表面温度、熱処理時間100秒、プレス線圧0.1MPaの条件で熱処理し、バインダー繊維のポリエステルAのほとんどを溶融させて接着成分とし、目付40g/m の湿式短繊維不織布を得た。
実施例12〜16
実施例2〜6のそれぞれのポリエステル複合短繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は実施例2〜6と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例2のポリ乳酸繊維を主体繊維として用いた以外は、実施例11と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
比較例8〜12
比較例1〜7のそれぞれのポリエステル複合短繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は、比較例1〜7と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。
得られたポリエステル複合短繊維をバインダー繊維とし、参考例2のポリ乳酸繊維を主体繊維として用いた以外は、実施例11と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例17〜20
バインダー繊維と主体繊維の混合割合を表2に示す質量比とした以外は、実施例11と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
参考例2
参考例1のポリ乳酸繊維の製造において、機械捲縮を付与せず、繊維長5mmにカットした以外は、参考例1と同様にしてポリ乳酸繊維を得た。
表2から明らかなように、実施例11〜20の湿式短繊維不織布は、本発明のポリエステル複合繊維をバインダー繊維に用いたものであったため、ウエブ収縮率が低く、寸法安定性よく得ることができ、地合、機械的特性に優れたものであった。
一方、比較例8〜11の湿式短繊維不織布は、比較例1〜6のポリエステル複合短繊維(繊維長5mmにカットしたもの)を用いたものであったため、いずれもウエブ収縮率が高く、地合にも劣るものであった。また、比較例12では、ポリエステル複合短繊維を構成するポリ乳酸重合体の融点が低いものであったため、湿式ウエブを熱処理する際に芯のポリ乳酸が溶けてしまい、得られた湿式短繊維不織布は機械的特性に劣るものであった。
本発明のポリエステル複合短繊維を構成するポリエステルAのDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線の一例である。

Claims (3)

  1. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、融点が100〜10℃、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステルAと、ポリエステルAの融点よりも30℃以上高い融点を有するポリ乳酸系重合体とで構成された複合繊維であって、単糸の横断面形状においてポリエステルAが繊維表面の少なくとも一部を占めるように配され、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル複合短繊維。
    b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
    なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
  2. ポリエステルAの融点をTmとしたとき、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%以下である請求項1記載のポリエステル複合短繊維。
  3. 請求項1又は2記載のポリエステル複合短繊維とポリ乳酸系重合体からなる短繊維とを含有するウエブからなり、ポリエステル複合短繊維のポリエステルAの少なくとも一部が溶融して接着成分を成していることを特徴とする短繊維不織布。
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