JP4889604B2 - ポリエステル短繊維 - Google Patents
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すなわち、本発明は、ジカルボン酸成分がテレフタル酸のみ、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、融点が100〜150℃、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステル(A)からなる繊維であって、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル短繊維を要旨とするものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) (1)
まず、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、結晶核剤を添加して重縮合反応を行う。重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。次に、このチップを通常の溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行う。紡出糸条を冷却固化した後、一旦容器へ収納する。そして、この糸条を集束して糸条束とし、ローラ間で延伸倍率2〜4倍程度で延伸を施す。続いて100〜120℃で熱処理し、次いで仕上げ油剤を付与後、スタフィングボックス等で機械捲縮を付与し、目的とする繊維長にカットしてポリエステル短繊維を得る。
(a) 無機系微粒子の平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(b) 無機系微粒子の比表面積
BET法により測定した。
(c)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(d)ポリエステル(A)の融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(e)ポリエステル(A)のポリマー組成
得られたポリエステル短繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)紡糸操業性
紡糸の状況により下記の2段階で評価した。
○:紡糸時の切れ糸回数が1回/トン以下であり、単糸間での溶着がない。
×:紡糸時の切れ糸回数が1回/トンを超えるか、単糸間での溶着の発生がある。
(g)乾熱収縮率(%)
前記の方法で測定した。
(h)不織布の評価
1.地合
得られた不織布表面の地合を目視にて、良好(○)、不良(×)の2段階で評価した。
2.ウエブ収縮率
不織布を得る際に得られたウエブから、面積A0(タテ20cm×ヨコ20cm=400cm2)のサンプルを切り取り、ポリエステル(A)の融点をTmとしたとき、このサンプルを(Tm+10)℃に設定した熱風乾燥機中に15分間放置し(熱接着処理を行い)、その後(熱接着処理後)の不織布の面積をA1とし、下式により算出するものである。ウエブ収縮率は10%以下であることが好ましく、中でも7.5%以下であることが好ましい。
ウエブ収縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100
エステル化反応缶に、TPAとEGのスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%の反応物を得た。この反応物を重縮合反応缶に移送し、HDを重縮合反応缶に投入し、温度240℃、常圧下で1時間攪拌した。次に、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m2/gのタルクを含有するEGスラリーを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
このようにして得られた極限粘度0.95、融点128℃の酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG15mol%、HD85mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有するポリエステル(A)チップを紡糸装置に供給し、紡糸温度220℃、吐出量307g/分、紡糸孔数518、紡糸速度850m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して11万dtexのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率2.62倍、延伸温度40℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維を得た。
得られたポリエステル短繊維をバインダー繊維とし、主体繊維として、ポリエチレンテレフタレートからなる、融点256℃、繊度2.2dtex、繊維長51mm、強度5.5cN/dtex、伸度40%、170℃、15分での乾熱収縮率が3.0%の短繊維を用い、混合比率を質量比30/70(バインダー繊維/主体繊維)でカード機を通して乾式ウエブを作成した。得られた乾式ウエブを温度138℃、風量20m3/分の連続熱処理機で1分間の熱処理を行い、目付け100g/m2の乾式不織布を得た。
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示す繊維中の含有量とした以外は、実施例1と同様にしてポリエステル短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
結晶核剤のタルクを含有しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリエステル短繊維を得た。
エステル化反応缶に、TPA、HD、BDを供給し、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m2/gのタルクを添加し、温度230℃、圧力0.2MPaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。そして、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
このようにして得られた極限粘度0.98、融点130℃の酸性分としてTPA、グリコール成分として1,4−ブタンジオール(BD)20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有するポリエステル(A)チップを紡糸装置に供給し、紡糸温度220℃、吐出量307g/分、紡糸孔数518、紡糸速度850m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して11万デシテックスのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率3.2倍、延伸温度60℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム温度110℃で熱処理を施した。次いで、押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維を得た。
得られたポリエステル短繊維を用い、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示す繊維中の含有量とした以外は、実施例4と同様にしてポリエステル短繊維を得た。さらに、実施例4と同様にして乾式不織布を得た。
結晶核剤のタルクを含有しなかった以外は、実施例4と同様にしてポリエステル短繊維を得た。
HDの供給量を変更して重縮合反応を行い、極限粘度0.85、融点200℃の酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG80mol%、HD20mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有する共重合ポリエステルチップを用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステル短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)を0.04kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを0.04kg、これらを重縮合反応缶に投入した以外は実施例1と同様にしてチップ化し、結晶核剤として0.1質量%のポリエチレンワックスを含有するチップとした以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)の投入量を変更し、結晶核剤として0.05質量%のポリエチレンワックスを含有するチップとした以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
結晶核剤として硫酸ナトリウムを0.04kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを0.04kg、これらを重縮合反応缶に投入した以外は実施例1と同様にしてチップ化し、結晶核剤として0.1質量%の硫酸ナトリウムを含有するチップとした以外は実施例1と同様に行い、ポリエステル短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
結晶核剤の重縮合反応缶への投入量を変更し、結晶核剤として0.8質量%の硫酸ナトリウムを含有するチップとした以外は実施例1と同様にして行い、ポリエステル短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式不織布を得た。
一方、比較例1、4のポリエステル短繊維は、結晶核剤としてのタルクの含有量が多かったため、紡糸時に切れ糸が発生し、操業性が悪かった。これにより糸質のバラツキが大きくなり、乾熱収縮率が高くなり、不織布を得る際にはウエブ収縮率が大きく、得られた不織布は地合いの悪いものであった。比較例2、5のポリエステル短繊維は、結晶核剤の含有量が少なすぎたため、結晶化速度が遅くなり、ヒートドラム温度を実施例1や4と同様の温度では熱処理できず、熱処理温度を低くしたため、得られた繊維は乾熱収縮率の大きいものとなった。このため、不織布を得る際のウエブ収縮率が大きく、得られた不織布は地合いの悪いものであった。比較例3、6のポリエステルは結晶核剤を含有していなかったため、結晶化速度が遅く、紡糸時に糸条の融着が発生し、繊維を得ることができなかった。比較例7のポリエステル短繊維は、HDが50モル%未満であったため、融点が150℃を超えるものとなり、実施例1と同様の方法では不織布を得ることができなかった。
Claims (2)
- ジカルボン酸成分がテレフタル酸のみ、ジオール成分が1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールのみ、あるいは1,6−ヘキサンジオールと1,4−ブタンジオールのみにより構成され、ジオール成分において1,6−ヘキサンジオールが60〜95モル%であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、融点が100〜150℃、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足するポリエステル(A)からなる繊維であって、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル短繊維。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。 - ポリエステル(A)の融点をTmとしたとき、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%以下である請求項1記載のポリエステル短繊維。
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