JP2008266850A - ポリエステル複合短繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルを一成分とし、通常の製造装置で操業性よく生産することができ、特にバインダー繊維として用いると、熱接着させる際には低い温度で加工することができ、寸法安定性や地合に優れた不織布等の繊維構造物等の製品を得ることができるポリエステル複合短繊維を提供する。
【解決手段】テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分からなり、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有する共重合ポリエステルと、ポリプロピレンとで構成され、共重合ポリエステルが繊維表面の少なくとも一部を占めている複合繊維であって、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足し、繊維長が1〜100mmであるポリエステル複合短繊維。 b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
【選択図】図1

Description

本発明は、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルが繊維表面の少なくとも一部を占めるように配した複合繊維であって、乾熱収縮率が低く、熱接着性に優れ、バインダー繊維として用いることが好適なポリエステル複合短繊維に関するものである。
近年、自動車用内装材等において、バインダー繊維を用いて構成繊維を接着した不織布等の繊維構造物が多用されるようになっている。このようなバインダー繊維に用いられる繊維としては、ポリエチレンテレフタレートを芯部とし、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部とした芯鞘型複合短繊維が挙げられる。
この繊維は、高融点の芯部と低融点の鞘部とからなるため、熱処理の際に、芯部を溶融させず繊維形態を保持させ、鞘部のみを溶融させることにより、強度に優れた不織布を得ることができる。
しかしながら、鞘部のイソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体は、非晶性であり明確な結晶融点を示さないため、ガラス転移点以上の温度で軟化が始まる。また、明確な結晶融点を示さないポリマーを用いて短繊維を製造する場合、延伸・熱処理工程において熱処理温度を100℃以上とすると、繊維の融解・膠着が生じ、実施が困難となる。このため、延伸・熱処理工程を低温で行うこととなり、得られる短繊維は熱収縮率が高く、熱接着時の収縮が大きいものとなる。
そして、このような短繊維をバインダー繊維として使用すると、得られる製品は寸法安定性が悪くなり、また、高温雰囲気下で使用した場合、接着強力が低下して変形するという問題が生じていた。
上記問題を解決するものとして、特許文献1に芯鞘型の複合繊維が記載されている。この繊維は、芯部にポリエチレンテレフタレートを配し、鞘部にテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分及び1,4−ブタンジオール成分を共重合したポリエステル系共重合体を配した芯鞘型複合繊維である。
この複合繊維は、鞘部の共重合体は結晶性であり明確な融点を示すため、短繊維を得る際の延伸・熱処理工程を高温で行うことができ、熱収縮率の低い短繊維を得ることができる。このため、加熱接着処理の際に収縮することがなく寸法安定性に優れ、また、高温雰囲気下で使用した際の耐熱性にも優れた不織構造体を得ることができる。しかしながら、この共重合ポリエステルは融点が150〜200℃の範囲のものであり、まだ低融点領域であるとはいえず、熱接着させる際には加工温度を高くする必要があり、コスト的にも不利であった。
さらに、この繊維を製造する際の溶融紡糸工程において、鞘部の共重合体が冷え難いため、紡糸、冷却条件によっては、糸条間の溶着が発生しやすい。この問題を解決するためには、紡糸温度を低くすることが考えられるが、この方法では、芯部ポリマーの融点に紡糸温度が近くなるため、溶融斑が生じ、製糸性が劣り、操業性も低下するという問題があった。
特開2006−118066号公報
本発明は上記の問題点を解決するものであって、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルを一成分とし、通常の製造装置で操業性よく生産することができ、特にバインダー繊維として用いると、熱接着させる際には低い温度で加工することができ、寸法安定性や地合に優れた不織布等の繊維構造物等の製品を得ることができるポリエステル複合短繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分からなり、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有する共重合ポリエステルと、ポリプロピレンとで構成され、共重合ポリエステルが繊維表面の少なくとも一部を占めている複合繊維であって、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足し、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル複合短繊維。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
本発明のポリエステル複合短繊維は、低融点でありながら結晶性に優れ、特に降温時の結晶化速度が速いポリエステルを一成分としているため、通常の製造装置を用いて紡糸操業性よく生産することができる。さらに、延伸・熱処理工程において繊維の融解・膠着が生じることなく高温で熱処理することができるので、熱収縮率の低い短繊維を得ることができる。特にバインダー繊維として用いると、熱接着させる際には低い温度で加工することができ、コスト的にも有利であり、本発明のポリエステル複合短繊維を使用することにより寸法安定性や地合、耐熱性に優れた製品を得ることが可能となる。
以下、本発明のポリエステル複合短繊維を詳細に説明する。
本発明のポリエステル複合短繊維は、共重合ポリエステルとポリプロピレンとで構成されるものであり、共重合ポリエステルが繊維表面の少なくとも一部を占めている複合繊維である。つまり、本発明の複合短繊維は、マルチフィラメントでもモノフィラメントでもよいが、単糸の形状において共重合ポリエステルが繊維表面の少なくとも一部を占めているものである。中でも単糸の形状が、共重合ポリエステルが鞘部、ポリプロピレンが芯部となる芯鞘型複合繊維であることが好ましい。
まず、共重合ポリエステルについて説明する。共重合ポリエステルは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分とからなり、融点が100〜150℃のものである。
共重合ポリエステルの融点(Tm)は、100〜150℃であり、中でも110〜140℃であることが好ましい。Tmが100℃未満であると、本発明の複合短繊維を用いて得られた不織布等の製品は、高温雰囲気下で使用した場合の熱安定性(耐熱性)に劣るものとなる。一方、150℃を超えると、製品を得る際の熱接着加工温度を高くする必要があり、加工性、経済性に劣る。また、熱処理により得られる製品の品質や風合い等を損ねるため好ましくない。
共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とするものであり、テレフタル酸(以下、TPAとする)は60モル%以上、中でも80モル%以上であることが好ましい。TPAが60モル%未満であると、ポリマーの融点が本発明の範囲外のものとなったり、結晶性が低下しやすくなるため好ましくない。
なお、TPA以外の共重合成分としては、その効果を損なわない範囲であれば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルジカルボン酸、などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
ジオール成分としては、1,6−ヘキサンジオール(以下、HDとする)が50モル%以上であり、他の成分としてはエチレングリコール(以下、EGとする)や1,4−ブタンジオール(以下、BDとする)を用いることが好ましい。ジオール成分において、HDは50モル%以上であり、中でも60〜95モル%であることが好ましい。HDが50モル%未満の場合、融点が150℃を超えるものとなる。
ジオール成分として、HDとともにEGやBDを用いる際には、EGやBDをジオール成分において、5〜50モル%とすることが好ましく、中でも5〜40モル%とすることが好ましい。
さらに、ジオール成分には、HD、EGやBD以外の他の共重合成分として、その特性を損なわない範囲で、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコールなどに例示される芳香族グリコールを用いることができる。
そして、共重合ポリエステルは、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するものであり、中でも0.5〜3.0質量%含有することが好ましい。
共重合ポリエステルは、上記のような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができ、溶融紡糸工程において単糸間の溶着を生じることなく、操業性よく紡糸することが可能となる。そして、本発明のポリエステル複合短繊維は、後述する(1)式を満足することができるものとなる。
結晶核剤の含有量が0.01質量%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、本発明のポリエステル複合短繊維は後述する(1)式を満足することができない。一方、5.0質量%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、紡糸、延伸時の操業性を悪化させることとなる。また、操業性が悪化することで糸質のバラツキが大きくなり、繊維の乾熱収縮率も高くなる。
結晶核剤としては、無機系微粒子やポリオレフィン、硫酸塩等を使用することが好ましい。
無機系微粒子としては、中でもタルクなどの珪素酸化物を主成分としたものが好ましく、平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子を用いることが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、本発明のポリエステル複合短繊維は後述する(1)式を満足することが困難となりやすい。
また、結晶核剤として含有させるポリオレフィンは、反応系内で溶融するため、形状については特に限定するものではなく、例えば粒径2mm程度のチップ状のものや、粒径数μmのワックス状のものであってもよい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などを挙げることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、プロピレン・エチレンランダム共重合体が特に好ましい。なお、ポリオレフィンが炭素原子数3以上のオレフィンから得られるポリオレフィンである場合には、アイソタクチック重合体であってもよく、シンジオタチック重合体であってもよい。
結晶核剤として含有させる硫酸塩は、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどを挙げることができ、中でも結晶核剤としての効果の点から、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムが好ましい。
これらの結晶核剤を添加する方法としては、粉体のまま、あるいはジオールスラリーの形態でポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。中でも、結晶核剤としての効果を良好なものとするには、エチレングリコール等のグリコールにスラリー状態あるいは溶解させた状態で添加することが好ましい。
共重合ポリエステル中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
次にポリプロピレンについて説明する。ポリプロピレンは融点が120〜170℃のものが好ましい。ポリプロピレンの融点が低くなりすぎると、鞘部との融点差が小さくなるため、加工時に鞘部のみを溶融させる熱処理温度のコントロールが困難となりやすい。一方、ポリプロピレンの融点が高くなりすぎると、紡糸温度が高くなりすぎるため、鞘部の冷却が困難となり、単糸間の密着が生じやすい。
また、効果を損なわない範囲であれば、エチレン、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン−1,3、スチレン、α−メチルスチレン、ブテン−1、ペンテン−1,3−メチルブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ドデセン−1、オクタデセン−1を共重合成分として共重合したものでもよい。
ポリプロピレンの粘度としては、ASTM−D−1238(L)に記載の方法で測定したメルトフローレート値が10〜50g/10分であることが好ましい。メルトフローレート値が10g/10分未満であると溶融粘度が高過ぎて高速製糸性が得られず、また、メルトフローレート値が50g/10分を超えると溶融粘度が低過ぎて、ヌメリ感が発生したり、繊維の冷却が十分に行えず密着が生じやすくなる。
ポリプロピレン中にも、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
そして、本発明のポリエステル複合短繊維は、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記(1)式を満足するものであり、中でもb/a≧0.06であることが好ましい。一方、b/aが大きいほど降温時の結晶性に優れるものとなるが、本発明で目的とする効果を奏するには、b/aを0.5以下とすることが好ましい。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) (1)
本発明のポリエステル複合短繊維の融点とDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/分、試料量(2mg)で測定する。
上記b/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。図1に示すように、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05(mW/mg・℃)未満の場合、結晶化速度が遅いため、溶融紡糸時に単糸間の溶着が発生し、紡糸操業性が悪くなる。また、延伸・熱処理工程における熱処理温度を高くすると、繊維の融解・膠着が生じ、高温での熱処理を行うことができないため熱収縮率の低い繊維を得ることができず、このような繊維を用いて得られる製品は寸法安定性の悪いものとなるといった問題が生じる。
上記したように、b/aは、ポリエステルの共重合組成を特定のものとし、結晶核剤の含有量を上記範囲の量とすることにより、本発明で規定する範囲のものにすることができる。
さらに、本発明のポリエステル複合短繊維は、85℃における乾熱収縮率が5.0%以下であることが好ましく、中でも4.5〜2.0%とすることが好ましい。本発明の複合短繊維は、上記したように繊維表面の少なくとも一部を共重合ポリエステルが占めており、結晶性に優れるものであるため、延伸工程において高温で熱処理を施すことができ、乾熱収縮率の低いものとすることができる。
本発明における乾熱収縮率とは、JIS L−1015の収縮率の測定における乾熱収縮率の測定方法により測定するものであり、初荷重を50mg/デシテックス、つかみ間隔を25mm、処理温度を85℃として測定するものである。
なお、乾熱収縮率の測定において繊維長が短い場合は、短繊維にカットする前の糸条束から測定に十分な長さの繊維を取り出して測定するものとする。
85℃における乾熱収縮率を5.0%以下とすることで、この繊維を使用して得られる不織布等の製品は、熱接着処理後の地合や寸法安定性に優れるものとなる。85℃における乾熱収縮率が5.0%を超えるものでは、このような効果を奏することが困難となる。
また、本発明の複合短繊維の単糸の断面形状は特に限定するものではなく、丸型のみならず扁平型、トリローバル型、ヘキサローバル型、W型、H型等の異形断面や四角形や三角形等の多角形状、中空形状のものでもよい。
本発明の複合短繊維の共重合ポリエステルとポリプロピレンの複合比率(質量比率)は、20/80〜80/20とすることが好ましく、中でも30/70〜70/30とすることが好ましい。
さらに、本発明の複合短繊維の単糸繊度は1〜15dtexであることが好ましい。単糸繊度が1dtex未満であると、紡糸、延伸工程において単糸切断が頻発し、操業性が悪化するとともに、得られる不織布の強力も劣る傾向となる。一方、単糸繊度が15dtexを超えると紡糸糸条の冷却が不十分となり、得られる繊維の品位が低下しやすくなる。
また、本発明の複合短繊維を用いて不織布等の繊維構造物を得る際には、本発明の複合短繊維のみを用いても、本発明の複合短繊維と他の繊維とを用いてもよい。本発明の複合短繊維のみを用いる場合は、共重合ポリエステルが熱接着処理によりバインダー成分となり、ポリプロピレンが主体繊維となる繊維構造物となる。他の繊維と併用する場合は、共重合ポリエステルの融点より高い融点を持つ繊維を他の繊維として用い、熱接着処理により共重合ポリエステルがバインダー成分、ポリプロピレンと他の繊維が主体繊維となる繊維構造物とすることが好ましい。
次に、本発明の複合短繊維の製造方法について一例を用いて説明する。
まず、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、結晶核剤を添加して重縮合反応を行う。重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出して、冷却、カットすることによりチップ化する。次に、このチップ(共重合ポリエステル)とポリプロピレンのチップを通常の複合溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸を行う。紡出糸条を冷却固化した後、一旦容器へ収納する。そして、この糸条を集束して糸条束とし、ローラ間で延伸倍率2〜4倍程度で延伸を施す。続いて100〜120℃で熱処理し、次いで仕上げ油剤を付与後、スタフィングボックス等で機械捲縮を付与し、目的とする繊維長にカットして複合短繊維を得る。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a) 無機系微粒子の平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、エチレングリコール中の試料の平均粒径の値を測定した。
(b) 無機系微粒子の比表面積
BET法により測定した。
(c)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(d)融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(e)ポリマー組成
複合短繊維を構成する共重合ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)紡糸操業性
紡糸の状況により下記の2段階で評価した。
○:紡糸時の切れ糸回数が1回/トン以下であり、単糸間での溶着がない。
×:紡糸時の切れ糸回数が1回/トンを超えるか、単糸間での溶着がある。
(g)乾熱収縮率(%)
前記の方法で測定した。
(h)不織布の寸法安定性
得られた不織布の面積収縮率を以下に示すように算出し、下記の2段階で評価した。
○:面積収縮率が5%以下である。
×:不織布の面積収縮率が5%を超える。
〔面積収縮率〕
得られた不織布から面積A0(タテ20cm×ヨコ20cm=400cm2)のサンプルを切り取り、(共重合ポリエステルの融点−30℃)に維持した熱風乾燥機中に15分間放置して熱処理を行う。熱処理後の不織布の面積をA1とし、下記式により面積収縮率を求めた。
面積収縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100
(i)不織布の風合
得られた不織布の風合いを触感にて評価し、優れたものから順に○、△、×の3段階で評価した。
実施例1
エステル化反応缶に、TPAとEGのスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%の反応物を得た。この反応物を重縮合反応缶に移送し、HDを重縮合反応缶に投入し、温度240℃、常圧下で1時間攪拌した。次に、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを含有するEGスラリーを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化して共重合ポリエステルを得た。
共重合ポリエステルは、酸性分としてTPA、グリコール成分としてEG15mol%、HD85mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有する極限粘度0.95、融点128℃のものであった。
ポリプロピレンとして、融点158℃、メルトフローレート21g/10分のものを用いた。
共重合ポリエステルとポリプロピレンを複合紡糸装置に供給し、共重合ポリエステルが鞘部、ポリプロピレンが芯部となるようにし、両成分の質量比を50/50として溶融紡糸を行った。このとき、紡糸温度220℃、吐出量270g/分、紡糸速度750m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して11万デシテックスのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率3.2倍、延伸温度60℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2デシテックスの複合短繊維を得た。
得られた複合短繊維をカード機に通して、目付30g/mのウエブとした後、サクションドライヤーで155℃、5分間熱接着処理を施し、不織布を得た。
実施例2〜3、比較例1〜2、5
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示す含有量とし、共重合ポリエステルの組成を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル複合短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして不織布を得た。
実施例4
エステル化反応缶に、PBTチップとHDを供給し、温度230℃、圧力0.2MPaの条件で1時間撹拌し、解重合反応を行った。次に、重縮合反応缶に移送し、実施例1で用いたものと同じ結晶核剤(タルク)を含有するEGスラリーを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化して共重合ポリエステルを得た。
共重合ポリエステルは、酸性分としてTPA、グリコール成分としてBD20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有する極限粘度0.98、融点130℃のものであった。
この共重合ポリエステルと実施例1と同様のポリプロピレンを用いて、実施例1と同様にして複合短繊維を得た。
次に、サクションドライヤーの温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。
実施例5〜6、比較例3〜4
結晶核剤のタルクの添加量を変更し、表1に示す含有量とした以外は、実施例4と同様にして複合短繊維を得た。さらに、実施例4と同様にして不織布を得た。
実施例1〜6、比較例1〜5で得られた複合短繊維及び不織布の特性値、評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜6の複合短繊維は、(1)式を満足し、結晶性が良好であり、紡糸操業性よく得ることができた。そして、乾熱収縮率が低いものであり、これらの複合短繊維から得られた不織布は、風合い(地合)、寸法安定性ともに優れていた。
一方、比較例1、3の複合短繊維は、結晶核剤の含有量が少なかったため、(1)式の値が低く、結晶化速度が遅く、紡糸時に糸条の溶着が発生し、繊維を得ることができなかった。比較例2、4の複合短繊維は、結晶核剤の含有量が多かったため、紡糸時に切れ糸が発生し、操業性が悪く、乾熱収縮率も高いものとなり、得られた不織布は寸法安定性、風合いともに劣るものであった。比較例5の複合短繊維は、HDが50モル%未満であったため、共重合ポリエステルの融点が150℃を超えるものであり、紡糸時に切れ糸が発生し、操業性が悪く、繊維を得ることができなかった。
本発明におけるDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線の一例である。

Claims (2)

  1. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分からなり、融点が100〜150℃、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有する共重合ポリエステルと、ポリプロピレンとで構成され、共重合ポリエステルが繊維表面の少なくとも一部を占めている複合繊維であって、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足し、繊維長が1〜100mmであることを特徴とするポリエステル複合短繊維。
    b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
    なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
  2. 85℃における乾熱収縮率が5.0%以下である請求項1記載のポリエステル複合短繊維。
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