JP2009062666A - 短繊維不織布 - Google Patents

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Yoshiyuki Kizuka
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Tsuneo Iizuka
恒夫 飯塚
Shunsuke Okubo
俊介 大久保
Hiroshi Idokawa
寛 井戸川
Hiroshi Ishida
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Abstract

【課題】低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルを繊維化して得ることができる短繊維不織布であって、繊維構造物等に介在させて熱接着処理する際には低い温度で加工することができ、さらには、熱接着処理時の熱収縮率が小さく、寸法安定性よく繊維構造物等を接着させることができる短繊維不織布を提供する。
【解決手段】テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分とからなり、融点(Tm)が100〜150℃であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が特定式を満足する共重合ポリエステルからなる短繊維のみを含有するウエブからなり、短繊維の少なくとも一部が溶融して短繊維同士を接着する接着部を成しており、(Tm−30)℃の雰囲気下における面積収縮率が10%以下である短繊維不織布。
【選択図】図1

Description

本発明は、1,6−ヘキサンジオールを多く含有するポリエステルであって、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルからなる短繊維で形成された短繊維不織布であって、繊維構造物間に介在させて熱接着させる用途に好適に使用できるものであり、低温での熱接着処理が可能であり、熱接着処理時の収縮が小さく、熱接着性にも優れる短繊維不織布に関するものである。
合成繊維、特にポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性、耐久性、さらにはリサイクル性等から、衣料、産業資材として不可欠のものとなっており、様々な分野において、ポリエステル繊維が多く使用されている。
近年、自動車用内装材において、繊維を接着してなる不織構造物が提案されており、さらにこれを補強する目的で不織構造物同士を接着させて用いることがある。このように不織構造物同士を接着させる際には、不織構造物と不織構造物の間に熱接着性を有する繊維からなる不織布を介在させて、熱処理を施すことにより両不織構造物を接着させる。このような不織布としては、不織構造物が主としてポリエステル系繊維からなるものが多いため、リサイクルの観点よりポリエステル系重合体からなるものが好適である。
そして、このような不織布としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維を主体繊維とし、ポリエチレンテレフタレートよりも低融点のポリマーで構成された繊維をバインダー繊維とする不織布が挙げられるが、この不織布では、熱接着させる際に接着剤として機能するものは、不織布中に含まれるバインダー繊維のみである。バインダー繊維の量は相対的に少ないため、不織構造物同士をこの不織布で接着させるには接着性が弱く、剥離しやすいものであった。
また、不織構造物との接着性を向上させるために、ポリエチレンテレフタレートを芯部とし、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部とした芯鞘型複合繊維からなる不織布も用いられている。この不織布は、高融点を有する芯部と低融点を有する鞘部とからなり、熱接着処理の際には、芯部を溶融させずに繊維形態を保持させ、鞘部のみを溶融させることにより接着成分とするものである。
しかしながら、鞘部のイソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体は、非晶性であり明確な結晶融点を示さないため、ガラス転移点以上の温度で軟化が始まる。このため、熱接着処理の際に繊維が収縮し、得られた不織構造物の寸法安定性が悪くなるという問題があった。また、接着後の不織構造物を高温雰囲気下で使用した場合、接着強力が低下して変形するという問題も生じるものであった。
上記問題を解決するものとして、特許文献1には芯鞘型の複合繊維が記載されている。この繊維は、芯部にポリエチレンテレフタレートを配し、鞘部にテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分及び1,4−ブタンジオール成分を共重合したポリエステル系共重合体を配した芯鞘型複合繊維である。
この複合繊維は、鞘部の共重合体は結晶性であり明確な融点を示すため、この複合繊維を用いた不織布は、熱接着処理の際の収縮が小さいものとなる。このため、接着した不織構造物等の寸法安定性は優れており、また、接着後の不織構造物を高温雰囲気下で使用した際の耐熱性も優れたものとなる。
しかしながら、鞘部の共重合ポリエステルは融点が150〜200℃の範囲のものであり、まだ低融点領域であるとはいえず、熱接着処理の際には加工温度を高くする必要があり、コスト的にも不利であった。
特開2001−3256号公報
本発明は上記の問題点を解決するものであって、低融点でありながら結晶性に優れたポリエステルを繊維化して得ることができる短繊維不織布であって、繊維構造物等に介在させて熱接着処理する際には低い温度で加工することができ、さらには、熱接着処理時の熱収縮率が小さく、寸法安定性よく繊維構造物等を接着させることができる短繊維不織布を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分とからなり、融点(Tm)が100〜150℃であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足する共重合ポリエステルからなる短繊維のみを含有するウエブからなり、短繊維の少なくとも一部が溶融して接着部を成していることを特徴とする短繊維不織布を要旨とするものである。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
本発明の短繊維不織布は、低融点でありながら結晶性に優れた共重合ポリエステルからなる短繊維で構成されているため、低温での熱接着処理においてポリエステル短繊維が溶融して熱接着成分となり、熱接着性に優れるものであり、繊維構造物等に介在させて熱接着処理する用途に好適なものである。そして、熱接着処理を低温化、高速化することが可能であり、コスト的にも優位である。
さらに、本発明の短繊維不織布は、(Tm−30)℃雰囲気下での面積収縮率が10%以下であり、これにより、熱接着処理する際の収縮が小さく、構造物等に介在させて構造物同士を熱接着させる際に、寸法安定性よく構造物等(製品)を得ることが可能となる。
また、本発明の短繊維不織布を構成する短繊維は、結晶性に優れた共重合ポリエステルからなるものであるため、捲縮を付与しやすく、特定の形状の捲縮を付与したものとすることができる。そしてこのような捲縮を有する短繊維を用いることによって、不織布の製造工程における、空気流、カード機等による短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程等のウエブ形成工程において繊維塊が生成せず、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性にも優れる短繊維不織布とすることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の短繊維不織布は、以下に詳述する共重合ポリエステルを溶融紡糸、延伸して得られた短繊維で構成されるものである。つまり、本発明の短繊維不織布は、共重合ポリエステルからなる短繊維のみを使用(含有率100%)するものであり、この短繊維のみを含有するウエブを作成し、不織布としての形態を保持するために、短繊維の少なくとも一部を溶融させて、短繊維同士を接着させているものである。
中でも、短繊維の一部のみが溶融して接着部を成しているものが好ましく、このような不織布の形態としては、短繊維が部分熱圧着されているものが好ましい。
そして、本発明の短繊維不織布は、乾式不織布、湿式不織布のいずれであってもよい。
まず、本発明の短繊維不織布を構成する短繊維について説明する。
本発明における短繊維は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分とからなり、融点が100〜150℃である共重合ポリエステルからなるものである。
共重合ポリエステルの融点(Tm)は、100〜150℃であり、中でも105〜140℃であることが好ましく、さらには110〜130℃であることが好ましい。Tmが100℃未満であると、得られる短繊維不織布は、高温雰囲気下で使用した場合の熱安定性(耐熱性)に劣るものとなる。一方、150℃を超えると、熱接着処理温度を高くする必要があり、加工性、経済性に劣る。また、熱接着処理により接着される製品の品質や風合い等を損ねるため好ましくない。
共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とするものであり、テレフタル酸(以下、TPAとする)は60モル%以上、中でも80モル%以上であることが好ましい。TPAが60モル%未満であると、ポリマーの融点が上記の範囲外のものとなったり、結晶性が低下しやすくなるため好ましくない。
なお、TPA以外の共重合成分としては、その効果を損なわない範囲であれば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルジカルボン酸、などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
ジオール成分としては、1,6−ヘキサンジオール(以下、HDとする)が50モル%以上であり、他の成分としてはエチレングリコール(以下、EGとする)や1,4−ブタンジオール(以下、BDとする)を用いることが好ましい。ジオール成分において、HDは50モル%以上であり、中でも60〜95モル%であることが好ましい。HDが50モル%未満の場合、融点が150℃を超えるものとなる。
ジオール成分として、HDとともにEGやBDを用いる際には、EGやBDをジオール成分において、5〜50モル%とすることが好ましく、中でも5〜40モル%とすることが好ましい。
さらに、ジオール成分には、HD、EGやBD以外の他の共重合成分として、その特性を損なわない範囲で、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコールなどに例示される芳香族グリコールを用いることができる。
そして、共重合ポリエステルは、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有するものであり、中でも0.5〜3.0質量%含有することが好ましい。
共重合ポリエステルは、上記のような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができ、後述する(1)式を満足することができるものとなる。
そして、共重合ポリエステルを繊維化する際、溶融紡糸工程において単糸間の溶着を生じることなく、延伸、熱処理工程において高温で熱処理することが可能となるため、乾熱収縮率の低い短繊維とすることができ、(Tm−30)℃の雰囲気下における面積収縮率が10%以下の不織布を得ることが可能となる。
結晶核剤の含有量が0.01質量%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、共重合ポリエステルは後述する(1)式を満足することができない。一方、5.0質量%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、繊維化する際の紡糸、延伸時の操業性が悪化するとともに、不織布化する際の各種の工程においても操業性を悪化させることとなり、得られる短繊維や不織布の品位も低いものとなる。
結晶核剤としては、無機系微粒子やポリオレフィン、硫酸塩等を使用することが好ましい。中でも無機系微粒子が好ましく、無機系微粒子としては、タルクなどの珪素酸化物を主成分としたものが好ましく、平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子を用いることが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、本発明における共重合ポリエステルは後述する(1)式を満足することが困難となりやすい。
なお、これらの結晶核剤を添加する方法としては、粉体のまま、あるいはジオールスラリーの形態でポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。中でも、結晶核剤としての効果を良好なものとするには、エチレングリコール等のグリコールにスラリー状態あるいは溶解させた状態で添加することが好ましい。
共重合ポリエステル中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
そして、共重合ポリエステルは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記(1)式を満足するものであり、中でもb/a≧0.06であることが好ましい。一方、b/aが大きいほど降温時の結晶性に優れるものとなるが、本発明で目的とする効果を奏するには、b/aを0.5以下とすることが好ましい。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) (1)
本発明における共重合ポリエステルの融点とDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/分、試料量(繊維量2mg)で測定する。
上記b/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。図1に示すように、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
なお、上記したように、b/aは、共重合ポリエステルの共重合組成を特定のものとし、結晶核剤の含有量を上記範囲の量とすることにより、本発明で規定する範囲のものにすることができる。
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05(mW/mg・℃)未満の場合、結晶化速度が遅いため、溶融紡糸する際には単糸間の溶着が発生し、紡糸操業性が悪くなる。また、延伸・熱処理工程における熱処理温度を高くすると、繊維の融解・膠着が生じ、高温での熱処理を行うことができないため熱収縮率の低い繊維を得ることができない。そして、得られる不織布の熱収縮率も高いものとなり、(Tm−30)℃の雰囲気下における面積収縮率が10%以下のものを得ることができない。
そして、本発明の短繊維不織布は(Tm−30)℃の雰囲気下における面積収縮率が10%以下であることが好ましく、中でも7.0〜0.3%、さらには6.5〜0.5%であることが好ましい。
面積収縮率は以下のようにして求めるものである。短繊維不織布をカットし、面積A0(20cm×20cm=400cm)としたものをサンプルとし、これを(Tm−30)℃に維持した熱風乾燥機中に15分間放置し、この熱処後の不織布の面積をA1とし、下式により面積収縮率を求める。
面積収縮率(%)={(A0−A1)/A0}×100
短繊維不織布の面積収縮率が10%以下であることにより、熱接着処理した際の収縮が小さく、不織構造物等の間に介在させて接着させる際の収縮が小さく、得られる製品(不織構造物等)は寸法安定性に優れたものとなる。面積収縮率が10%を超えると、熱収縮率が大きくなり、本発明の短繊維不織布を用いて熱接着して得られる製品は、収縮が生じて良好に接着できず、得られる製品の品位も劣るものになりやすい。
さらに、本発明においては、共重合ポリエステルからなる短繊維は、共重合ポリエステルの融点をTmとしたとき、(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%以下であることが好ましく、中でも5%以下であることが好ましく、さらには4.5%以下とすることが好ましい。
本発明における短繊維の乾熱収縮率とは、JIS L−1015の収縮率の測定における乾熱収縮率の測定方法により測定するものであり、初荷重を50mg/デシテックス、つかみ間隔を25mm、処理温度を(Tm−30)℃として測定し、算出するものである。
また、本発明の短繊維不織布は、短繊維の乾熱収縮率が小さいため、短繊維不織布を得る際、不織布を構成する短繊維の一部を溶融させて接着部を形成させる処理においても、熱処理前のウエブの面積と熱処理後に得られた不織布の面積の差も小さくなり、寸法安定性よく得ることができるものである。(Tm−30)℃における乾熱収縮率が7%を超えるものでは、このような効果を奏することが困難となりやすい。
そして、本発明の短繊維不織布の目付は特に限定するものではないが、10〜300g/mであることが好ましい。目付が10g/m未満であると、地合及び機械的強力に劣り、実用に耐えないものとなりやすい。一方、目付が300g/mを超えるとコスト面で不利となる。
このように、本発明の短繊維不織布を構成する短繊維は、上記した共重合ポリエステルのみからなるものであり、かつ本発明の短繊維不織布は、共重合ポリエステルのみからなる短繊維を100%使用(含有率100%)することにより、低温の熱処理により不織布を構成する全ての繊維が溶融して熱接着成分となるものであり、ヒートシール特性を有するものとなる。このため、本発明の短繊維不織布は、構造物と構造物との間に介在させて熱処理を施すことにより構造物同士を接着させる用途に用いることが好適である。そして、本発明の短繊維不織布は全ての繊維が溶融して熱接着成分となるものであるため、接着強力にも優れており、構造物同士を接着させると、強固に接着したものとなる。
共重合ポリエステルからなる短繊維は、繊維長を1.0〜100mmとすることが好ましい。本発明の不織布を乾式不織布とする際には繊維長を25〜100mmとすることが好ましく、中でも30〜80mmが好ましい。また、本発明の不織布を湿式不織布とする際には繊維長を1〜30mmとすることが好ましく、中でも3〜20mmとすることが好ましい。
さらに、本発明の短繊維不織布において、共重合ポリエステルからなる短繊維は特定の形状の捲縮が付与されていることが好ましい。低融点でありながら結晶性の高い共重合ポリエステルからなるものであるため、後述する特定の形状を有する捲縮を付与することができるものである。本発明における短繊維は、スタフィングボックス法や押込加熱ギア法等により機械捲縮が付与されているものが好ましい。
そして、短繊維を構成する単糸に付与されている捲縮形態は、捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺の長さ(L)の比(H/L)が下記式(2)を満足することが好ましい。
すなわち、本発明における短繊維は、短繊維を構成する単糸に付与されている捲縮形態が、捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺の長さ(L)の比(H/L)が下記(2)式を満足するものであることが好ましい。
(2)式:0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25
Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数
このような捲縮形態を有することで、不織布の製造工程における、空気流、カード機等による短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程等のウエブ形成工程において繊維塊が生成せず、均一性に優れ、品質が高く、かつ嵩高性にも優れる短繊維不織布とすることができるものである。
乾式不織布を得る場合、特にエアレイド法で製造する場合には、静電気の発生が多くなる。このエアレイド法に用いられる装置としては、例えば特開平5−9813号公報に開示されているような、複数の回転シリンダーをハウジング内に収納し、これらシリンダーを高速回転させることによってシリンダーの周縁に積極的に空気流を発生させ、この空気流によって繊維成分を所定方向に吹き飛ばし得る装置が挙げられる。そして、このエアレイド法によるウエブ形成(短繊維の解繊、搬送、分散、積層工程の全て)においては、空気流を積極的に発生させているために、繊維同士が摺擦され、また繊維と装置(金属製部材)との摩擦によっても静電気の発生が多くなる。
静電気の問題を考慮する場合、捲縮が多く、大きく付与されているほど形状的に電気をためやすいものとなる。つまり、繊維に捲縮が付与されていると、3次元的な立体形状を呈するため、その立体的な空間部分が多くなるほど静電気がたまりやすくなる。一方、捲縮がないフラットな状態となるほど、平面的な形状となり、静電気をためにくくなるが、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が増え、摩擦による静電気の発生が多くなる。
そこで、捲縮形態を特定のものとすることで、ウエブ形成の各工程(解繊、搬送、分散、積層工程)において、繊維同士、繊維と金属間での摩擦によって静電気が発生しにくく、かつ発生した静電気をためにくいものとなり、短繊維同士が集合して繊維塊を生じることが格段に減少される。
本発明における短繊維の単糸の捲縮形態を図2を用いて説明する。単糸の捲縮形態において、捲縮部の最大山部における山部の頂点Pと、隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、この三角形の高さ(H)と底辺の長さ(L)の比(H/L)が上記(2)式を満足するものである。ここで、最大山部とは、本発明における短繊維の繊維長において複数の山部がある場合、山部の高さ(H)が最大のものをいう。
H/Lが大きすぎると、繊維の立体形状において、空間部分が大きくなり、静電気をためやすく、繊維の絡みが生じやすくなる。一方、H/Lが小さすぎると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気が発生しやすく、繊維塊が生成して好ましくない。
なお、H/Lの測定は次のとおりである。まず、短繊維不織布の一部を切り取り、接着されていない部分から任意に20本の単繊維を取り出す。そして、取り出した単繊維について拡大写真(約10倍)を撮り、その写真から上記したように、最大山部における、山部の頂点Pと隣接する谷部の底点Q、Rの2点を結んで三角形とし、三角形の高さ(H)と底辺の長さ(L)を測定し、その比(H/L)を算出するものである。このようにして20本分の単繊維の測定を行い、その平均値をとる。
さらに、本発明における短繊維は、0.1T+3.8≦捲縮数≦0.3T+7.3 ・・・(3)式〔Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数〕を満足することが好ましい。この捲縮数とは、JIS L1015 8.12.1に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮数の測定において繊維長が短い場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮数が(3)式の上限より多くなると、3次元的な立体形状による空間部分となる捲縮部が多くなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が絡みやすくなるため玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(3)式の下限より小さくなると、捲縮部が少なくなることから繊維の形態がフラットに近くなり、繊維同士あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、糸状の繊維塊が生成して好ましくない。
さらに、本発明における短繊維は、0.8T+0.3≦捲縮率≦1.0T+4.9・・・(4)式〔Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)数〕を満足することが好ましい。この捲縮率とは、JIS L1015 8.12.2に基づき測定、算出したものである。なお、捲縮率の測定において繊維長が短くて測定が困難となる場合は、捲縮付与後、カット前の繊維において測定し、繊維長25mmあたりの個数に換算する。
捲縮率が(4)式の上限より高くなると、3次元的な立体形状による空間部分が多く又は大きくなり、空気流での短繊維の送り込み、分散、解繊、積層工程において繊維間で発生した静電気をためやすくなり、また、繊維同士が交絡しやすくなるため、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。一方、(4)式の下限より低くなると、繊維の形態がフラットに近いものとなり、繊維同士、あるいは繊維と金属との接触点(面)が多くなるため静電気の発生が生じやすく、玉状の繊維塊が生成して好ましくない。
以上のように、本発明における短繊維を上記のような捲縮形態とすることにより、本発明の短繊維不織布は、特にエアレイド法により得られたものとすることが好ましいものとなる。
また、上記のような捲縮形態の短繊維とする際には、繊維長を1〜30mmとし、中でも3〜20mmとすることが好ましい。
繊維長が1mm未満であると、切断時の熱によって繊維の溶着や膠着が生じる。一方、30mmを超えると、乾式不織布においてはエアレイド法による製造工程において、空気流での解繊、積層しウエブを得る工程で繊維塊が生じやすくなる。また湿式不織布においては抄紙機でウエブを得る際に繊維塊が生じやすくなるため、得られる不織布は均斉の劣るものとなる
さらには、上記のような捲縮形態の短繊維とする際には、単糸繊度を0.3〜20dtexとし、中でも0.5〜15dtex、さらには1.0〜10dtexとすることが好ましい。単糸繊度が0.3dtex未満であると、紡糸、延伸工程において単糸切断が頻発し、操業性が悪化するとともに、得られる不織布の品位が低下しやすい。一方、単糸繊度が20dtexを超えると紡糸糸条の冷却が不十分となり、繊維の品位が低下し、得られる不織布の品位も低下しやすい。
本発明における短繊維の単糸の断面形状は特に規定するものではなく、丸型のみならず扁平型、トリローバル型、ヘキサローバル型、W型、H型等の異形断面や、四角形や三角形等の多角形状、中空形状のものでもよい。
次に、本発明の短繊維不織布(乾式)の製造方法について一例を用いて説明する。
共重合ポリエステルを溶融紡糸し、未延伸糸を集束して繊維束とし、これに延伸、熱処理を施し、必要に応じて機械捲縮を付与し、カットすることにより短繊維を得る。次に、この短繊維のみを用いて、カード機により解繊して乾式ウエブを作成する。得られたウエブの短繊維の一部を溶融させて熱接着させることにより乾式短繊維不織布を得る。
このとき、ウエブの短繊維の少なくとも一部を熱接着させる方法としては、熱エンボス加工装置や超音波溶着装置等を用いる熱圧着方式、熱風乾燥機等の乾熱による熱風循環方式、加熱スチームを用いた湿熱方式、超音波溶着装置を用いた方式等を用いることができる。
次に、本発明の短繊維不織布(湿式)の製造方法について一例を用いて説明する。
共重合ポリエステルを溶融紡糸し、未延伸糸を集束して繊維束とし、これに延伸、熱処理を施し、機械捲縮を付与又は付与することなく短繊維を得る。次に、この短繊維のみを用いて、パルプ離解機に投入し、解繊し、抄紙機にて湿式ウエブを作成する。この湿式ウエブをプレス機にて余分な水分を脱水した後、乾式不織布と同様にして短繊維の一部を溶融させて熱接着させることにより湿式短繊維不織布を得る。
また、本発明の短繊維不織布を構成する共重合ポリエステルからなる短繊維の製造方法について一例を用いて説明する。
共重合ポリエステルを溶融紡糸し、紡出糸条を冷却固化した後、一旦容器へ収納する。そして、この糸条を集束して糸条束とし、ローラ間で延伸倍率2〜4倍程度で延伸を施す。続いて100〜120℃で熱処理した後、機械捲縮を付与する。次いで仕上げ油剤を付与後、目的とする繊維長にカットしてポリエステル短繊維を得る。ポリエステル短繊維を(2)式を満足する機械捲縮が付与されたものとするには、延伸条件(倍率、温度)及び押込み式クリンパー等の捲縮付与装置での捲縮付与条件(ニップ圧力、スタフィン圧力)を適宜変更することにより行うことができる。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a) 極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(b)共重合ポリエステルの融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(c)共重合ポリエステルのポリマー組成
得られたポリエステル短繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(d)共重合ポリエステルからなる短繊維の乾熱収縮率(%)
前記の方法により測定した。
(e)目付
得られた短繊維不織布から縦10cm×横10cmのサンプル10点を作成し、平衡水分に至らしめた後、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算して不織布の目付(g/m)とした。
(f)地合
得られた不織布表面の地合を目視にて、良好(○)、不良(×)の2段階で評価した。
(g)面積収縮率
前記の方法により測定した。
(h)接着強力(N)
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長51mm、繊度2.2T)と、ユニチカ社製ポリエステル系芯鞘複合バインダー繊維<7080>(繊維長51mm、繊度2.2T)とを質量比率1:1で混綿し、カード機で目付400g/mのウエブを作成し、熱風乾燥機を用いて熱処理条件180℃×60秒で融着処理を行い、短繊維不織布を得る。
さらに、上記短繊維不織布2枚の間に、実施例及び比較例で得られた短繊維不織布(以下、短繊維不織布Mとする)をはさみ、積層不織布の厚みを5mmとなるように厚みを規制し、熱風乾燥機を用いて熱処理条件(短繊維不織布Mを構成する短繊維の融点+10)℃×100秒で融着処理を行い、厚さ5mmの積層体を作成する。
積層体より試料長20cm、試料幅5cmの試料片を5点作成し、試料片の短繊維不織布の2枚の間を10cm剥離させ、剥離部分をつかみ間隔5cm、引張速度10cm/分で伸長し、剥離強力(N/5cm)を測定した。そして試料片5点の平均値を接着強力(N)とした。
ここで接着強力とは、短繊維不織布Mをポリエステル系不織構造物等と一体化させた後に短繊維不織布Mを溶融させてポリエステル系不織構造物同士を一体化させ、その後に不織構造物間を剥離させる際に要する強力の値である。なお、本発明においては、この接着強力は20N以上であることが好ましい。この接着強力が20N未満であると、不織構造物との接着強力に劣り、一体化させた構造物は使用するうちに不織布構造物同士の剥離が生じやすくなる。
(i)繊度、繊維長、捲縮部のH/L、捲縮数、捲縮率
前記の方法で測定、算出した。
(j)繊維塊の生成
得られた共重合ポリエステルからなる短繊維を図2の簡易空気流撹拌試験機を用い繊維塊の生成を評価した。100gの短繊維を解綿機で予備解繊した後、サンプル送り込み用ブロア3から空気流にて撹拌タンク1に投入し、撹拌用ブロア2から20m/秒の空気流を吹き込み、攪拌タンク1内で1分間撹拌する。攪拌後の繊維をサンプリング口5より0.1g採取し、黒色紙の上に広げ、独立した繊維塊の有無を目視にて評価した。
○:繊維塊が発生していない
△:繊維塊が少量発生している
×:繊維塊が大量発生している
(k)均一性
得られた短繊維不織布の均一性の状態を目視にて観察し、以下のように3段階評価とした。
○:十分に解繊されて均一である
△:部分的に未解繊な部分がある
×:解繊が不十分で不均一である
実施例1
酸性分としてテレフタル酸(TPA)、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)15mol%、1,6−ヘキサンジオール(HD)85mol%からなり、結晶核剤として1.0質量%のタルクを含有する共重合ポリエステル(極限粘度0.95、融点128℃)をチップ化して溶融紡糸装置に供給し、紡糸温度220℃、吐出量307g/分、紡糸孔数518、紡糸速度850m/分の条件で紡糸した。次いで、紡出した糸条を18℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して11万デシテックスのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率2.62倍、延伸温度50℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、仕上げ油剤を付与した後、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維を得た。
得られたポリエステル短繊維をカード機を通して解繊し、50g/mの乾式不織ウエブを得た。その後、この乾式不織ウエブをエンボスロールとフラットロールからなる部分的熱圧着装置に通し、ロール温度100℃、圧着面積率14.9%、圧着点密度21.9個/cm、線圧500N/cmの条件にて部分的に熱圧着し、単糸繊度2.2dtexの短繊維からなる目付50g/mの乾式短繊維不織布を得た。
実施例2〜3、比較例1〜2
共重合ポリエステル中のタルクの含有量が表1に示すものとなるようにした以外は実施例1と同様にしてチップ化を行い、実施例1と同様にして短繊維を得、乾式短繊維不織布を得た。
実施例4
共重合ポリエステルとして、酸性分としてTPA、グリコール成分として1,4−ブタンジオール(BD)20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有するポリエステル(極限粘度0.98、融点130℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして短繊維を得、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例5〜6、比較例3〜4
共重合ポリエステル中のタルクの含有量が表1に示すものとなるようにした以外は実施例4と同様にしてチップ化を行い、実施例4と同様にして短繊維を得、乾式短繊維不織布を得た。
実施例7
共重合ポリエステル中の結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)を用い、含有量を0.1質量%とした以外は実施例1と同様にして短繊維を得、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例8
共重合ポリエステル中の結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)を用い、含有量を0.05質量%とした以外は実施例1と同様にして短繊維を得、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例9
共重合ポリエステル中の結晶核剤として硫酸ナトリウムを用い、含有量を0.1質量%とした以外は実施例1と同様にして短繊維を得、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例10
共重合ポリエステル中の結晶核剤として硫酸ナトリウムを用い、含有量を0.8質量%とした以外は実施例1と同様にして短繊維を得、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例11〜14
単糸繊度や繊維長を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして短繊維を得、乾式短繊維不織布を得た。
比較例5
共重合ポリエステルに代えて、酸性分としてテレフタル酸(TPA)100mol%、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)80mol%、1,6−ヘキサンジオール(HD)20mol%からなり、結晶核剤として1.0質量%のタルクを含有するポリエステル(極限粘度0.80、融点210℃)を用いた以外は実施例1と同様にして短繊維を得た。
比較例6
共重合ポリエステルに代えて、酸性分としてテレフタル酸(TPA)55mol%、イソフタル酸(IPA)45mol%、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)15mol%、1,6−ヘキサンジオール(HD)85mol%からなり、結晶核剤として1.0質量%のタルクを含有するポリエステル(極限粘度0.68、融点なし)を用いた以外は実施例1と同様にして短繊維を得た。
比較例7
短繊維として、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部、ポリエチレンテレフタレートを芯部とする芯鞘型複合短繊維であって、単糸繊度2.2デシテックス、繊維長51mm、100℃、15分での乾熱収縮率が12.2%のポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製メルティ<4080>)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして短繊維不織布を得た。
実施例1〜14、比較例1〜7で得られた短繊維及び乾式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜14では、紡糸、延伸操業性よく短繊維を得ることができ、短繊維の乾熱収縮率は低いものであり、得られた乾式短繊維不織布は、地合が良好で、面積収縮率が低いものであり、他のポリエステル系繊維からなる構造物との接着強力にも優れたものであった。
一方、比較例1、3では、ポリエステル中のタルクの含有量が多かったため、紡糸時に切れ糸が発生し、紡糸、延伸時の操業性が悪く、得られた短繊維の乾熱収縮率は高いものとなり、得られた短繊維不織布は、地合が悪く面積収縮率も高いものであった。比較例2、4では、ポリエステル中のタルクの含有量が少なかったため、降温結晶化速度が遅く、(1)式を満足することができず、紡糸時に糸条の溶着が発生し、延伸工程での操業性も悪かった。このため、得られた短繊維は、乾熱収縮率の高いものとなり、得られた短繊維不織布は面積収縮率の高いものとなった。比較例5では、ポリエステル中のHDが50モル%未満であったため、融点が150℃を超えるものとなり、紡糸温度が低いため切れ糸が発生し、短繊維を得ることができなかった。比較例6では、ポリエステルはTPAが少なかったため融点がDSCでは確認できず、熱安定性が悪く、結晶性も有しておらず、チップ化できなかった。比較例7では、短繊維として非晶性ポリエステルを接着成分とする芯鞘型の複合繊維を用いたものであり、乾熱収縮率が高いものであったため、得られた短繊維不織布は、地合が悪く、面積収縮率も高いものであった。さらに接着強力も低いものであった。
実施例15
実施例1と同様の共重合ポリエステルを用い、実施例1と同様にして溶融紡糸、延伸、熱処理を行い、仕上げ油剤を付与した後、押し込み式クリンパーで捲縮を付与せずに、繊維長5mmに切断して単糸繊度2.2デシテックスのポリエステル短繊維を得た。
得られたポリエステル短繊維をパルプ離解機(熊谷理機工業製)に投入し、3000rpmにて1分間撹拌した。その後、得られた試料を抄紙機(熊谷理機工業製角型シートマシン)にて湿式不織布ウエブとした。その後、この湿式不織ウエブを実施例1と同様にして部分的に熱圧着し、単糸繊度2.2dtexの短繊維からなる目付50g/mの湿式短繊維不織布を得た。
実施例16〜17、比較例8〜9
共重合ポリエステル中のタルクの含有量が表2に示すものとなるようにした以外は実施例1と同様にしてチップ化を行い、実施例15と同様にして短繊維を得、湿式短繊維不織布を得た。
実施例18
共重合ポリエステルとして、酸性分としてTPA、グリコール成分として1,4−ブタンジオール(BD)20mol%、HD80mol%からなり、結晶核剤として0.5質量%のタルクを含有するポリエステル(極限粘度0.98、融点130℃)を用いた以外は、実施例15と同様にして短繊維を得、実施例15と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例19〜20、比較例10〜11
共重合ポリエステル中のタルクの含有量が表2に示すものとなるようにした以外は実施例18と同様にして短繊維を得、実施例18と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例21
共重合ポリエステル中の結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)を用い、含有量を0.1質量%とした以外は実施例15と同様にして短繊維を得、実施例15と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例22
共重合ポリエステル中の結晶核剤としてポリエチレンワックス(クラリアント社製、Licowax PE190)を用い、含有量を0.05質量%とした以外は実施例15と同様にして短繊維を得、実施例15と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例23
共重合ポリエステル中の結晶核剤として硫酸ナトリウムを用い、含有量を0.1質量%とした以外は実施例15と同様にして短繊維を得、実施例15と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例24
共重合ポリエステル中の結晶核剤として硫酸ナトリウムを用い、含有量を0.8質量%とした以外は実施例15と同様にして短繊維を得、実施例15と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例25〜28
単糸繊度および繊維長を表2のように変更した以外は、実施例15と同様にして短繊維を得、湿式短繊維不織布を得た。
比較例12
短繊維として、イソフタル酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレート系共重合体を鞘部、ポリエチレンテレフタレートを芯部とする芯鞘型複合短繊維であって、単糸繊度2.2デシテックス、繊維長5mm、100℃、15分での乾熱収縮率が12.2%、機械捲縮が付与されていないポリエステル短繊維(ユニチカファイバー社製メルティ<4080>)を用いた。それ以外は実施例15と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例15〜28、比較例8〜12で得られた短繊維及び湿式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例15〜28では、紡糸、延伸操業性よく短繊維を得ることができ、短繊維の乾熱収縮率は低いものであり、得られた湿式短繊維不織布は、地合が良好で、面積収縮率が低いものであり、他のポリエステル系繊維からなる構造物との接着強力にも優れたものであった。一方、比較例8、10では、ポリエステル中のタルクの含有量が多かったため、紡糸時に切れ糸が発生し、紡糸、延伸時の操業性が悪く、得られた短繊維の乾熱収縮率は高いものとなり、得られた湿式短繊維不織布は、地合が悪く面積収縮率も高いものであった。比較例9、11では、ポリエステル中のタルクの含有量が少なかったため、降温結晶化速度が遅く、(1)式を満足することができず、紡糸時に糸条の溶着が発生し、延伸工程での操業性も悪かった。このため、得られた短繊維は、乾熱収縮率の高いものとなり、得られた湿式短繊維不織布は面積収縮率の高いものとなった。比較例12では、短繊維として非晶性ポリエステルを接着成分とする芯鞘型の複合繊維を用いたものであり、乾熱収縮率が高いものであったため、得られた湿式短繊維不織布は、地合が悪く、面積収縮率も高いものであった。さらに接着強力も低いものであった。
実施例29
実施例1と同様にして未延伸糸を得、未延伸糸を集束して11万デシテックスのトウ状にした未延伸繊維に、実施例1と同様にして延伸、熱処理を施した後、押し込み式クリンパーで捲縮付与条件をニップ圧0.39MPa、スタフィン圧0.07MPaとして、捲縮数5.6個/25mm、捲縮率4.1%の捲縮を付与した。仕上げ油剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする油剤を0.2質量%の付着量となるよう付与した後、切断して単糸繊度2.2dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。
得られた短繊維を図3に示す簡易エアレイド試験機を用い、まず、試料投入ブロア13より投入された短繊維は、解繊翼回転モータ15により解繊翼回転用スプロケット16を介して回転する、それぞれ5枚1組の第1解繊翼11と第2解繊翼12で解繊され飛散落下させた。落下する短繊維を、下部にあるサクションボックス14で吸引しつつ、矢印方向に移動する集綿コンベア17の上に堆積させ、目付50g/mの乾式不織ウエブを得た(目付調整は集綿コンベア17の移動速度を変化させることで行った)。
その後、実施例1と同様にして部分的に熱圧着し、単糸繊度2.2dtexの短繊維からなる目付50g/mの乾式短繊維不織布を得た。
また、得られた短繊維を用いて実施例15と同様にして湿式短繊維不織布を得た。
実施例30〜34
それぞれ、実施例2〜6と同様にして未延伸糸を得た以外は、実施例29と同様にして乾式短繊維不織布及び湿式短繊維不織布を得た。
実施例29〜34で得られた短繊維、乾式短繊維不織布及び湿式短繊維不織布の特性値及び評価結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例29〜34では、実施例1〜6の短繊維において捲縮形態を変更したものであり、いずれの短繊維も(2)〜(4)式を満足する捲縮形態のものであったため、繊維塊の生成がなく、得られた乾式不織布、湿式不織布は地合が良好で、面積収縮率が低く、接着強力に優れると同時に均一性にも優れたものであった。
実施例35〜38
押し込み式クリンパーで捲縮を付与する条件(ニップ圧、スタフィン圧)を表4に示すように種々変更し、表4に示す捲縮形態、捲縮数、捲縮率のものとした以外は、実施例29と同様に行って短繊維を得、さらに、実施例29と同様にして乾式不織布及び湿式不織布を得た。
表4から明らかなように、実施例35〜38は、実施例1の短繊維において捲縮形態を変更したものであり、(2)〜(4)式を満足する捲縮形態のものであったため、繊維塊の生成がなく、得られた乾式不織布、湿式不織布は地合が良好で、均一性にも優れ、面積収縮率が低く、接着強力に優れたものであった。
本発明における短繊維を構成する共重合ポリエステルのDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線の一例である。 本発明における短繊維の捲縮形態を示す拡大説明図である。 実施例において乾式不織布を製造した簡易エアレイド試験機を示す説明図である。

Claims (3)

  1. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオール50モル%以上のジオール成分とからなり、融点(Tm)が100〜150℃であり、結晶核剤を0.01〜5.0質量%含有し、かつDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足する共重合ポリエステルからなる短繊維のみを含有するウエブからなり、短繊維の少なくとも一部が溶融して接着部を成していることを特徴とする短繊維不織布。
    b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
    なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
  2. 共重合ポリエステルの融点(Tm)より30℃低い温度(Tm−30℃)の雰囲気下における面積収縮率が10%以下である請求項1記載の短繊維不織布。
  3. 共重合ポリエステルからなる短繊維は捲縮が付与されており、短繊維を構成する単糸に付与されている捲縮形態が捲縮部の最大山部において、山部の頂点と隣接する谷部の底点2点を結んだ三角形の高さ(H)と底辺の長さ(L)の比(H/L)が下記式(2)を満足し、かつ繊維長が1.0〜30mm、単糸繊度が0.3〜20dtexである、請求項1又は2記載の短繊維不織布。
    0.01T+0.10≦H/L≦0.02T+0.25・・・ (2)
    Tは単糸繊度のデシテックス(dtex)
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