JP6112931B2 - ポリエステル系複合短繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、良好な柔軟性を有するポリエステル系複合短繊維に関するものである。
従来、ソファーや椅子、ベッド等の家具用や自動車シート用のクッション材としては、主としてポリウレタンフォームが使用されてきた。
しかしながら、ポリウレタンフォームはクッションとして耐久性は良好だが、以下の問題が挙げられている。
(1)床つき感が大きく、透湿性に劣り、蓄熱性があるため蒸れやすい。
(2)リサイクルが困難であり、焼却処分における燃焼時の発生熱量が大きく、焼却炉の損傷が大きい。
(3)加工性は優れているが、製造中に使用される薬品の公害問題がある。
上記のような問題を解決するものとして、芯部にポリトリメチレンテレフタレートを配し、鞘部にポリブチレンテレフタレートと直鎖状ポリアルキレングリコールを共重合したポリエーテルエステルを配した芯鞘型複合短繊維を構成素材とすることにより、優れた弾性回復率を有する不織布が得られることが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この芯鞘型複合短繊維を得ようとしたとき、鞘成分に用いるポリエーテルエステルのエラスティックな性質上、重合払い出し時にストランドカットがし難いといった問題や、紡糸・延伸工程では繊維同士の膠着現象が発生しやすいといった問題があった。
さらに、特許文献1の共重合ポリエーテルエステルは融点が160〜195℃の範囲のものであり、不織布を得るにあたって熱処理するときは、設定温度を160℃を超えて高くする必要があり、コスト的にも不利なものであった。
特開2001−73229号公報号公報
本発明は上記の問題点を解決するものであって、クッション材として良好に使用できる繊維であって、繊維製造工程で問題が発生せず、また、低コストにて繊維製品を得ることが可能な繊維を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために複合短繊維の構成ポリマーに着目し、鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、横断面形状が芯鞘型であるポリエステル系複合短繊維であって、
芯成分は、非弾性ポリエステルであり、
鞘成分は、結晶核剤を0.01〜5wt%含有し、ハードセグメントであるポリヘキサメチレンテレフタレートと、ソフトセグメントであるポリテトラメチレングリコールとのブロック共重合体により構成され、
融点が100〜150℃の共重合ポリエステルエーテルであり、
共重合ポリエステルエーテルに含まれるポリテトラメチレングリコールの含有量が10〜40wt%であることを特徴とするポリエステル系複合短繊維を要旨とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル系複合短繊維は、横断面形状(繊維軸方向に沿って垂直に切断した断面の形状)が芯成分と鞘成分とから構成される芯鞘型である。芯鞘型としては、同心芯鞘型や偏心芯鞘型のものが挙げられる。
鞘成分は、ハードセグメントであるポリヘキサメチレンテレフタレートと、ソフトセグメントであるポリテトラメチレングリコールとのブロック共重合体により構成された融点が100〜150℃の共重合ポリエステルエーテルである。
共重合ポリエステルエーテルの融点を100℃以上とすることにより、ポリエステル系複合短繊維を用いて得られる不織布等の繊維製品は、高温雰囲気下で使用しうる熱安定性を具備することができる。一方、150℃以下とすることにより、不織布等の繊維製品を得る際の熱接着加工温度を高くする必要がなく、加工性、経済性に優れる。また、熱処理により得られる繊維製品の品質や風合いを良好に維持することができる。このような理由から、融点は110〜140℃の範囲が好ましく、より好ましくは115〜135℃である。
共重合ポリエステルエーテルは、ハードセグメントがポリヘキサメチレンテレフタレートである。ハードセグメントにポリヘキサメチレンテレフタレートを用いることで、共重合ポリエステルエーテルの融点を150℃以下に設定することが容易に可能となる。さらには、本発明のポリエステル系複合短繊維に良好な柔軟性と弾性性能を付与することも可能となる。
共重合ポリエステルエーテルのソフトセグメントは、弾性性能を考慮して、ポリテトラメチレングリコール(以下、「PTMG」と略記することもある。)を用いる。ソフトセグメントとしてPTMGを選択することにより、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールをソフトセグメントとして用いた共重合ポリエステルエーテルと比較しても、より弾性性能が優れるものが得られる。
共重合ポリエステルエーテルに含まれるポリテトラメチレングリコールの含有量は10〜40wt%である。中でも20〜35wt%含有することが好ましい。
ポリテトラメチレングリコールの含有量が10wt%未満であると、十分な弾性性能が得られず、本発明の目的を達することができず、一方、40wt%を超えると、弾性性能が向上し過ぎて、さらには結晶性も低下するため、溶融紡糸において繊維同士の膠着現象が発生し操業性が劣る。
用いるポリテトラメチレングリコールの平均分子量は400〜2500が好ましく、中でも600〜2000のものが好ましい。ポリテトラメチレングリコールの平均分子量を400以上とすることにより、得られる共重合ポリエステルエーテルに十分な弾性性能を付与することができ、2500以下とすることにより、ポリテトラメチレングリコールの共重合性が低下することなく、得られる複合短繊維やこの繊維を用いてなる繊維製品が良好な弾性回復性能を発揮することができる。
なお、本発明における共重合ポリエステルエーテルには、融点範囲や柔軟性、弾性性能等の特性を損なわない範囲であれば、他の成分を少量共重合させることができる。
具体的には、カルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール等に例示される芳香族グリコールを用いることができる。
本発明において、共重合ポリエステルエーテルは、結晶核剤を0.01〜5wt%含有するものであり、中でも0.1〜2wt%含有することが好ましい。
本発明における共重合ポリエステルエーテルは、上記のような共重合組成であることにより、結晶性を有しているものであるが、結晶核剤を含有することによって降温時の結晶化速度を向上させることができる。そして、繊維製造工程において、繊維同士が膠着する現象が発生すること無く、溶融紡糸を実施することが可能となり、操業性良く、複合短繊維を得ることができる。
結晶核剤の含有量が0.01wt%未満であると、降温時の結晶化速度を向上させることができず、溶融紡糸工程で繊維同士の膠着現象を抑制することができない。一方、5wt%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、紡糸、延伸時に糸切れ等の発生しやすく操業性が悪化する。
結晶核剤としては、無機系微粒子やポリオレフィン、硫酸塩等を使用することが好ましい。
無機系微粒子としては、中でもタルクなどの珪素酸化物を主成分としたものが好ましく、平均粒径3.0μm以下もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子を用いることが好ましい。上記平均粒径もしくは比表面積を満足していない場合、結晶核としての機能に乏しく、共重合ポリエステルエーテルの結晶化速度を効率良く向上させることができない。
また、結晶核剤として含有させるポリオレフィンは、反応系内で溶融するため、形状については特に限定するものではなく、例えば粒径2mm程度のチップ状のものや、粒径数μmのワックス状のものであってもよい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体などを挙げることができ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、プロピレン・エチレンランダム共重合体が特に好ましい。なお、ポリオレフィンが炭素原子数3以上のオレフィンから得られるポリオレフィンである場合には、アイソタクチック重合体であってもよく、シンジオタチック重合体であってもよい。
結晶核剤として含有させる硫酸塩は、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどを挙げることができ、中でも結晶核剤としての効果の点から、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムが好ましい。
これらの結晶核剤を添加する方法としては、粉体や粒状のまま、あるいはジオールスラリーの形態で共重合ポリエステルエーテルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。
また、共重合ポリエステルエーテル中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
次に、芯成分の非弾性ポリエステルについて説明する。非弾性ポリエステルとしては、弾性を有しないポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルが挙げられ、ホモポリマーであるポリエチレンテレフタレートを好ましく用いることができる。エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを用いる理由は、耐熱性や寸法安定性、機械的強度に優れることにある。また、熱処理により得られる繊維製品の品質や風合いが良好なものとなるためである。なお、熱処理を施して、鞘成分を溶融または軟化させて熱接着成分として機能させ、繊維製品を得る場合には、芯成分のポリエステルは、鞘成分の融点よりも高い融点を有するものを採用する。このとき融点差は30℃以上であることが好ましい。
また、芯成分である非弾性ポリエステル中には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分を少量共重合させることができる。
具体的に、カルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール等に例示される芳香族グリコールを用いることができる。
さらに、非弾性ポリエステル中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
本発明のポリエステル系複合短繊維の断面形状は特に限定するものではなく、円形のみならず扁平形、トリローバル形、ヘキサローバル形等の異形断面や四角形や三角形等の多角形状、また、中央部に中空を有する中空形状であってもよい。
ポリエステル系複合短繊維の単糸繊度は特に限定されるものではないが、一般的に1〜20dtexの範囲が好ましい。
ポリエステル系複合短繊維において、芯成分と鞘成分との複合比率(質量比率)は特に限定されるものではなく、20/80〜80/20の範囲とすればよい。
また、ポリエステル系複合短繊維は、用いられる用途に応じて、機械捲縮が付与されているものであっても、付与されていないストレートな形態のものであってもよい。
本発明のポリエステル系複合短繊維の製造方法について、一例を挙げる。
まず、鞘成分の結晶核剤を含有した共重合ポリエステルエーテルと芯成分の非弾性ポリエステルのチップを常用の複合紡糸装置に供給して溶融紡糸を行う。紡出された糸条を冷却固化し、紡糸油剤を付与した後、一旦容器へ収納する。そして、この糸条を集束して1〜100ktex程度の糸条束とし、加熱ローラー間で延伸倍率2〜5倍程度で延伸を施す。続いて押し込み式クリンパー等で機械捲縮を付与した後、仕上げ油剤を付与し、目的とする繊維長にカットしてポリエステル系複合短繊維を得る。
本発明のポリエステル系複合短繊維は、柔軟性と弾性回復性に優れており、この短繊維を用いてなる繊維製品としては、不織布、紡績糸、該紡績糸を用いた織編物、ベッド、マットや敷き布団等に用いる固綿、クッションやシート等の中綿等が挙げられる。織編物や不織布等の布帛として用いた場合には、肌触りが柔軟で、弾性を有するものが得られる。また固綿やクッションの中綿に用いた場合は、良好なクッション性を具備するものが得られる。これらの繊維製品とする際には、本発明のポリエステル系複合短繊維のみを構成繊維としてもよいが、用途や要求性能に応じて他の繊維と混用して繊維製品を得ることもできる。例えば、他の繊維と混合した混綿ウェブを用いて不織布,マットや中綿としたり、混綿ウェブを紡績して紡績糸としたり、また、他の繊維と混繊、交織、交編して、様々な形態の繊維製品を得ることもできる。混用する場合の他の繊維の素材(合成繊維や天然繊維等)、形態等は、繊維製品の用途等に応じて適宜選択すればよい。
本発明において、本発明のポリエステル系複合短繊維を構成繊維として繊維製品を得る場合、熱処理を施して、鞘成分を溶融または軟化させて熱接着成分として機能させ、構成繊維同士を熱接着させることにより一体化して繊維製品としてもよい。鞘成分を溶融または軟化する熱処理においては、熱接着成分となる共重合ポリエステルエーテルの融点が低いものであるため、低温で熱接着処理を行うことができ、コスト的に有利である。また、他の繊維を混用した際に、熱接着処理によって他の繊維が熱により劣化することを防ぐこともできる。したがって、混用する他の繊維として適用する種類の選択の幅が多岐に亘って広がり、機械的特性、品位に優れる繊維製品を得ることができる。
他の繊維と混用する場合、他の繊維は、多くとも80質量%とする。多くとも80質量%とすることにより、本発明のポリエステル系複合短繊維の特徴である弾性回復性能や柔軟性が、得られる繊維製品においても良好に発揮できるからである。
次に、繊維製品が短繊維不織布の場合について、説明する。短繊維不織布は、乾式であっても、湿式であっていずれでもよく、目付けも特に限定するものではない。不織布化手段としては、構成繊維同士が三次元的に交絡して一体化してなるものでも、本発明の複合短繊維を熱接着繊維として機能させて繊維同士が熱接着により一体化してなるものでもよい。
乾式不織布の製造方法について、一例を用いて説明する。
他の繊維としてポリエチレンテレフタレート短繊維を準備し、このポリエチレンテレフタレート短繊維と本発明のポリエステル系複合短繊維とを任意の割合で計量し、カード機を用いて混綿、解繊して乾式ウェブを作製する。得られたウェブを、連続熱処理機にて共重合ポリエステルエーテルが溶融または軟化する温度で熱接着処理を施し、構成繊維同士が熱接着により一体化した乾式短繊維不織布を得る。
次に、湿式不織布の製造方法について一例を用いて説明する。
他の繊維としてポリエチレンテレフタレート短繊維を準備し、このポリエチレンテレフタレート短繊維と本発明のポリエステル系複合短繊維とを任意の割合で計量し、パルプ離解機に投入し、攪拌(混綿、解繊)する。得られた試料を抄紙機にて湿式不織ウェブを作製する。この湿式不織ウェブをプレス機にて余分な水分を脱水した後、共重合ポリエステルエーテルが溶融または軟化する温度で熱接着処理を施し、構成繊維同士が熱接着により一体化した湿式短繊維不織布を得る。
本発明によれば、ポリヘキサメチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとがブロック共重合してなるポリエステルエーテルを用いることにより、該ポリマーが低融点でありながら結晶性が良好であるため、繊維製造工程において、一般の製造装置で溶融紡糸、延伸、熱処理を行う際に、膠着現象の発生が無く、操業性良く繊維を得ることができる。
また、本発明の複合短繊維を熱接着繊維として用いる場合は、熱接着処理温度を低く設定することが可能であり、優れた柔軟性と弾性回復率を有するポリエステル系複合短繊維によって構成される繊維製品を低コストで得ることができる。
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)相対粘度
濃度0.5%のフェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、温度20℃で測定した。
(b)共重合ポリエステルエーテルの融点(Tm)
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
(c)共重合ポリエステルエーテルのポリテトラメチレングリコール含有量
得られたポリエステル複合短繊維を重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(d)紡糸操業性
紡糸の状況により下記の2段階で評価した。
○:紡糸時の切れ糸回数が1回/トン以下であり、繊維間の膠着が発生しない。
×:紡糸時の切れ糸回数が1回/トンを超えるか、繊維間の膠着が発生した。
(e)短繊維不織布の柔軟性
得られた不織布の柔軟性を触感にて判定し、良好なものを○、不良なものを×として2段階で評価した。
(f)短繊維不織布の弾性
得られた不織布より、タテ10cm、ヨコ20cmの試料を作成し、長手方向の両端を両手で把持して、長手方向に引っ張った際の弾性および弾性回復性を下記の2段階で官能評価した。
○:良好に伸びて、かつ引っ張りを解除したときに元の形態に戻った。
×:引っ張りの際に容易に伸びなかった、あるいは引っ張りを解除したときに元の形態への戻り性が良好ではなかった。
実施例1
芯成分を構成するポリマーとして相対粘度1.385、融点256℃のポリエチレンテレフタレート、鞘成分を構成するポリマーとしてハードセグメントがポリヘキサメチレンテレフタレート、ソフトセグメントがポリテトラメチレングリコールとがブロック共重合してなる融点132℃の共重合ポリエステルエーテルであって、ポリテトラメチレングリコールの含有量が18.4wt%、平均分子量が1000であり、結晶核剤のポリエチレンを0.2wt%含有するものを用いて、繊維断面形状が芯鞘型となる複合紡糸口金を使用して、芯成分と鞘成分の溶融時体積比が50/50の割合で溶融紡糸を行った。このとき、紡糸温度270℃、単糸吐出量0.853g/min、紡糸速度600m/minの条件で紡糸した。次いで、紡出糸条を13℃の冷風で冷却し、引き取って未延伸糸を得た。
この未延伸糸を集束して12万dtexのトウ状にした未延伸繊維に、延伸倍率3.30倍、延伸温度50℃で延伸を行い、この後、ヒートドラム(温度110℃)で熱処理を施した。次いで、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与し、続いて仕上げ油剤を付与した後、繊維長51mmに切断して単糸繊度4.4dtexのポリエステル系複合短繊維を得た。
得られたポリエステル系複合短繊維を熱接着繊維とし、他の繊維(主体繊維)としてポリエチレンテレフタレート短繊維(融点256℃、繊度6.6dtex、繊維長64mm、強度4.5cN/dtex、伸度60%)を用い、混合比率を質量比50/50(バインダー繊維/主体繊維)でカード機を通して乾式ウェブを作製した。得られた乾式ウェブを温度150℃、風量57m/minの連続熱処理機で1分間の熱処理を行い、目付け50g/mの乾式短繊維不織布を得た。
実施例2〜3、比較例1〜2
結晶核剤のポリエチレンの含有量を、表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にしたところ、比較例1は、溶融紡糸の際に糸切れが多発し安定して繊維を得ることができなかった。また、比較例2は、溶融紡糸の際に繊維間の膠着が発生したため、繊維を得ることができなかった。
得られた実施例2、3のポリエステル系複合短繊維を用いて、実施例1と同様にして、実施例2〜3の乾式短繊維不織布を得た。
実施例4〜6、比較例3〜4
平均分子量が1000のポリテトラメチレングリコールの含有量を、表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして短繊維を得ようとしたところ、実施例4〜6、比較例3では複合短繊維を得られたが、比較例4は、溶融紡糸の際に繊維間の膠着が発生したため、繊維を得ることができなかった。
得られた複合短繊維を用い、連続熱処理機の熱処理温度を複合短繊維の鞘成分の融点を考慮して変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例4〜6、比較例3の乾式短繊維不織布を得た。なお、連続熱処理機の熱処理温度は、実施例4は155℃、実施例5は145℃、実施例6は140℃、比較例3は160℃、比較例4は130℃とした。
実施例7〜8
ポリテトラメチレングリコールの平均分子量と含有量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル系複合短繊維を得た。さらに、複合短繊維の鞘成分の融点を考慮して連続熱処理機の熱処理温度を140℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例9
芯成分として相対粘度1.305のポリエチレンテレフタレートを用いたこと、紡糸温度を265℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル系複合短繊維を得た。さらに、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例10
実施例1にて得られたポリエステル系複合短繊維のみを用いて、実施例1と同様にして乾式短繊維不織布を得た。
実施例1〜10、比較例3で得られたポリエステル系複合短繊維および乾式短繊維不織布の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜9のポリエステル系複合短繊維は、紡糸操業性が良好であり、繊維の膠着も発生せず、問題なく採取することができた。そして、これらのポリエステル系複合短繊維は、手触り感が良く、この複合短繊維を用いて得られた実施例1〜実施例10の不織布は、柔軟性が良好で、弾性回復性に優れたものであった。
また、実施例1および実施例10の不織布について、引張強さおよび弾性回復率について、下記の方法により測定したところ、実施例1の引張強さは、55N/5cm幅、弾性回復率は82%であり、実施例10の引張強さは、91N/5cm幅、弾性回復率は68%であった。
(1)機械的特性(引張強さ)
得られた不織布について、JIS L 1096 8.14の引張強さ及び伸び率 標準時A法(ストリップ法)により引張強さ(N)を測定した。カットストリップ法により試験片の幅50mmとし、定速伸長形試験機を用い、試験条件をつかみ間隔200mm、引張速度200mm/minとして測定した。
(2)短繊維不織布の弾性回復率
不織布を幅50mm、長さ200mmの短冊状に切断し、試料を作製した。この試料を島津製作所製オートグラフAG−1型を用いて、試料長100mm、引張速度100mm/minで25%伸長した後、同速度で元の長さまで戻し、再び伸長した時、応力の現れる伸度(E)を求め、次式によって弾性回復率を算出した。
弾性回復率(%)=〔(25−E)/25〕×100
一方、比較例1は、共重合ポリエステルエーテル中の結晶核剤の量が多かったため、紡糸時に切糸が発生し、操業性が悪かった。また、比較例2は、共重合ポリエステルエーテル中の結晶核剤の量が少なすぎたため、結晶化速度が遅くなり、紡糸時に繊維同士の膠着現象が発生し、紡糸操業性が悪かった。比較例3は、ポリテトラメチレングリコールの含有量が少なすぎたため、得られた乾式短繊維不織布は柔軟性と弾性回復率が劣り、本発明が目的とするものではなかった。比較例4は、ポリテトラメチレングリコールの含有量が多かったため、紡糸時に繊維同士の膠着現象が発生し、ポリエステル系複合短繊維を得ることができなかった。

Claims (3)

  1. 横断面形状が芯鞘型であるポリエステル系複合短繊維であって、
    芯成分は、非弾性ポリエステルであり、
    鞘成分は、結晶核剤を0.01〜5wt%含有し、ハードセグメントであるポリヘキサメチレンテレフタレートと、ソフトセグメントであるポリテトラメチレングリコールとのブロック共重合体により構成され、
    融点が100〜150℃の共重合ポリエステルエーテルであり、
    共重合ポリエステルエーテルに含まれるポリテトラメチレングリコールの含有量が10〜40wt%であることを特徴とするポリエステル系複合短繊維。
  2. 芯成分が、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルであって、鞘成分よりも高い融点を有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル系複合短繊維。
  3. 請求項1または2記載のポリエステル系複合短繊維を少なくとも構成繊維とし、該ポリエステル系複合短繊維の鞘成分が溶融または軟化することにより、構成繊維同士が熱接着していることを特徴とする短繊維不織布。
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