JP6099325B2 - 潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維およびその不織布 - Google Patents

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Description

本発明は、不織布とした場合に優れた伸長弾性率及び風合いを付与することができる潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維、及び該複合短繊維からなる不織布に関するものである。
ポリエステル繊維は、耐候性や耐薬品性、ウォッシュアンドウェアー性等の優れた特性を有し、衣料用、産業資材用等、種々の用途に使用されている。従来、ポリエステル繊維をはじめとする合成繊維に伸縮性を付与する方法として、熱収縮特性の異なるポリマーをサイドバイサイド構造、又は偏心芯鞘構造に複合した潜在捲縮性繊維とする方法が数多く提案されている。
上記の潜在捲縮性繊維として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を共重合した共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある。)との複合繊維がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
しかし、上記複合繊維を短繊維化して得られる不織布を、潜在捲縮が十分に発現する条件で熱処理すると、該複合短繊維が硬化し得られる不織布の風合いが硬くなる。一方、該潜在捲縮の発現を抑える条件で熱処理すると、該複合短繊維に発現する捲縮数が不足し得られる不織布の伸縮性が低くなるといった問題があった。
また、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン2〜7モル%及びイソフタル酸(以下、IPAと略する。)5〜13モル%を共重合した共重合ポリエステルとPETとの複合繊維が知られている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、上記共重合ポリエステルは結晶性に劣るため、該共重合ポリエステルを含む複合繊維は熱安定性や潜在捲縮発現性に劣ったものとなり、該複合繊維を短繊維化して得られる不織布は、熱処理により風合いが硬いものとなる問題があった。
特開昭62−141141号公報 特開昭62−078214号公報 特開平7−54216号公報
本発明の目的は、上記の問題を解決し、スパイラル捲縮発現性に優れたポリエステル複合短繊維及び伸長弾性率が高く、風合いに優れた不織布を提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決するために、鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の(1)〜(6)を要旨とするものである。
(1)テレフタル酸を95モル%以上含む多塩基酸成分と、エチレングリコール、下記化学式(1)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及びジエチレングリコールを含む多価アルコール成分とからなるポリエステル樹脂(A)及びポリエチレンテレフタレート又はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなるポリエステル樹脂(B)からなる潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維であって、前記ポリエステル樹脂(A)における全多価アルコール成分に対する前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有率が7〜40モル%であり、前記ポリエステル樹脂(A)における全多価アルコール成分に対する前記ジエチレングリコールの含有率が2.0モル%以下であり、前記ポリエステル樹脂(A)の極限粘度(VA)が0.58〜0.80であることを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
(2)上記ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が70〜80℃であることを特徴とする上記(1)記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
(3)上記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が下記化学式(2)で表される化合物からなることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
(4)上記化学式(2)中、m+n=2であることを特徴とする上記(3)記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
(5)170℃における無荷重下の熱処理で100個以上/25mmのスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能を有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維からなる不織布。
本発明によれば、スパイラル捲縮発現性に優れたポリエステル複合短繊維を得ることができる。さらに、本発明の複合短繊維から得られる不織布は伸長弾性率が高く、風合いに優れたものとなる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維は、テレフタル酸を95モル%以上含む多塩基酸成分と、エチレングリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及びジエチレングリコールを含む多価アルコール成分とからなるポリエステル樹脂(A)からなる。
本発明において、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とは、下記化学式(1)で表される化合物である。ただし、下記化学式(1)中、ROはアルキレンオキサイドを表す。
ポリエステル樹脂(A)が、多価アルコール成分としてビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むことにより、複合短繊維中におけるポリエステル樹脂(A)が占める部分の熱収縮性が、該複合短繊維中におけるポリエステル樹脂(B)が占める部分の熱収縮性に比して顕著に高くなるので、該複合短繊維のスパイラル捲縮発現性を高めることが可能となる。ここで、スパイラル捲縮とはコイル(螺旋)バネ状の捲縮であって三次元的な立体捲縮のことをいう。
上記理由は明らかではないが、該ポリエステル樹脂(A)はビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物単位中のメチル基による立体障害が大きく、該ポリエステル樹脂(A)を含む前記複合短繊維を繊維化する際の残留応力が非常に高くなるため、熱処理により優れたスパイラル捲縮を発現させるものと推測される。また、得られた複合短繊維からなる不織布を、スパイラル捲縮が十分に発現する条件で熱処理すると、得られた不織布は非常にソフトで滑らかな風合いとなり、伸縮性にも優れたものとなる。
上記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の代わりにアルキレンオキサイドが付加していない化合物、すなわちビスフェノールAを用いると、多塩基酸成分との反応性が悪くなって重合度が上がらず、さらには、ポリエステル樹脂(A)も熱安定性に乏しいものとなる。そこで、アルキレンオキサイドが付加しているビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることにより、多塩基酸成分との反応性を高めることができる。
前記化学式(1)中のRO(アルキレンオキサイド)としては、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)、テトラメチレンオキサイド(THF)等が挙げられる。上記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の中でも、得られる複合短繊維のスパイラル捲縮発現性及び該複合短繊維からなる不織布の風合いの観点から、ビスフェノールA1mol部に対しEO及び/又はPOが1〜10モル部付加したもの(前記化学式(1)中、x+y=1〜10)が好ましい。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。
本発明において、前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、下記化学式(2)で表されるように、ビスフェノールA1モル部に対しエチレンオキサイドが1〜4モル部付加した化合物からなることがより好ましく、下記化学式(2)中、m+n=2である化合物からなることがさらに好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が上記化学式(2)で表される化合物からなる場合、得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性に特に優れたものとなり、該複合短繊維からなる不織布は、伸縮性及び風合いが特に優れたものとなるのでより好ましい。前記化学式(2)中、m+n=2である化合物からなる場合、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移点はより高いものとなることから、得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性、風合いに加え、熱安定性がより優れたものとなり、該複合短繊維からなる不織布は風合いがより優れたものとなるのでさらに好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)における全多価アルコール成分に対するビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有率は7〜40モル%の範囲にある必要があり、10〜30モル%が好ましく、10〜20モル%がより好ましい。
上記含有率が7モル%未満の場合、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の熱収縮性の差が小さくなり、得られる複合短繊維は所望のスパイラル捲縮発現性を得ることができず、該複合短繊維から得られる不織布は伸長率、伸長弾性率が低く、十分な伸縮性能を発揮することができない。また、上記含有率が40モル%を超えると、ポリエステル樹脂(A)の融点が消失し(すなわち、ポリエステル樹脂(A)が結晶性を失い)、得られる複合短繊維は熱安定性に劣るものとなる。該含有率が10〜30モル%の範囲だと、得られる複合短繊維は特に熱安定性に優れたものとなるので好ましい。該含有率が10〜20モル%の場合は、得られる複合繊維からなる不織布は風合いが特に優れたものとなるのでより好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の多塩基酸成分は、テレフタル酸を95モル%以上含むことが必要である。
ポリエステル樹脂(A)がテレフタル酸成分を95モル%以上含むことにより、得られる複合短繊維は結晶性が高くなり、スパイラル捲縮発現性に優れるばかりでなく、該複合繊維から得られる不織布は熱処理を施しても風合いが硬いものとなりにくい。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の全多価アルコール成分に対するジエチレングリコール(以下、DEGと略することがある。)の含有率は2.0モル%以下であることが必要である。
本発明において、DEGは、ポリエステル樹脂(A)の融点及び結晶性の低下を招くものであり、意図的に含有させるもののほか、ポリエステル樹脂(A)の重合に際し副生物として生成するものである。
直接重合法によるポリエステルの重合に際しては、エステル交換反応時にDEGの副生を伴う。前記含有率が2.0モル%を超える場合は、ポリエステル樹脂(A)の結晶性の低下を招く。高熱収縮性ポリエステルとしてIPAを必須の共重合成分とするポリエステルは公知である。しかし、本発明者等は、該ポリエステルは該IPAを共重合することに起因してDEGの副生量が多くなることを知得した。そこで、本発明においては、該IPAを必須の共重合成分として用いず、前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を必須の共重合成分として用いることにより、ポリエステル樹脂(A)におけるDEGの含有率を2.0モル%未満とし、得られる複合短繊維の結晶性を高いものとすることを可能とした。これにより、得られる複合短繊維からなる不織布は熱処理を施しても収縮が少なく、風合いに特に優れたものとなる。
なお、前記含有率が0.1モル%未満であると、重合の反応工程を高度に制御することが必要となるのでコスト高となりやすい。前記含有率が0.5〜1.8モル%であると、コスト性と得られる複合短繊維の性能との兼ね合いの点で好ましい。
DEGの副生を抑制する方法としては、共重合成分としてIPAを選択しないことのほか、触媒量及び重合条件を適切に選択することが挙げられる。
従って、ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸、エチレングリコール及びビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のみを必須の共重合成分とするポリエステルである場合は、該ポリエステル樹脂(A)の重合に際してDEG等の副生が抑制されやすくなる。これにより、得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性に特に優れ、該複合短繊維から得られる不織布は伸長弾性率及び風合いに特に優れたものとなるので好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含有させても良い。
例えば、テレフタル酸以外の多塩基酸成分としては、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、水添ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、オルソフタル酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、エチレングリコール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外の多価アルコール成分としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、トリシクロデカングリコール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂(A)には、本質的な特性を損なわない限り、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐光性改良剤、難燃剤、制電剤、導電性付与剤、抗菌剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有していても良い。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は、0.58〜0.80であることが必要である。
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度が0.58未満では、十分なスパイラル捲縮発現性を有する複合短繊維が得られない。また、極限粘度が0.80を超えると、紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が著しく悪化する。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、70〜80℃が好ましく、75〜80℃が特に好ましい。
Tgが70℃未満では、前記ポリエステル樹脂(A)の結晶性が低く、得られる複合短繊維は熱安定性に劣るものとなりやすい。通常のPETのTgは78℃程度であるため、ナフタレンジカルボン酸などのポリエステル樹脂の剛直性が高くなる成分を共重合しない限りTgは80℃を超えることは無いが、Tgが80℃を超えるほど剛直性が高くなる成分を共重合すればスパイラル捲縮の発現を阻害しやすいため好ましくない。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)がビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を共重合成分とするポリエステルであることから、例えば従来技術であるIPAを共重合成分とするポリエステルと比較して、ポリエステル樹脂(A)の結晶性を高いものとすることができる。その結果、ポリエステル樹脂(A)のTgは比較的高いものとなるので、本発明の複合短繊維は熱安定性に優れたものとなる。さらに、ポリエステル樹脂(A)のTgが上記範囲を満たすように、該ポリエステル樹脂(A)の共重合組成及び比率を調整することができ、これにより複合短繊維を得る際の紡糸、延伸熱処理の温度を高くすることが可能となり、得られる複合短繊維は潜在捲縮を発現させるための熱処理によって風合いが優れたものとなる。
本発明のポリエステル樹脂(A)を製造する方法は、特に制限されるものではない。例えば、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールをエステル化反応又はエステル交換反応させ、得られたポリエステルオリゴマーを重合反応釜に移した後に、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、重合触媒等を添加し、減圧下で溶融重合反応を行うことで得ることができる。重合触媒は、通常アンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、コバルト等の金属化合物が用いられ、反応温度は260〜280℃とすることが好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂(B)は、PET又はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであれば特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂(A)より熱収縮性が低いことを必要とするため、エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%以上であるPETとすることが好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂(B)には、ポリエステル樹脂(A)と同様に、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。さらに、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐光性改良剤、難燃剤、制電剤、抗菌剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有させてもよい。
本発明において、ポリエステル樹脂(B)の極限粘度は0.44〜0.66であることが好ましい。ポリエステル樹脂(B)の極限粘度が0.44未満では、紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が悪化しやすく、極限粘度が0.66を超えると、十分なスパイラル捲縮発現性を有する複合短繊維が得られ難くなりやすい。
本発明において、ポリエステル樹脂(A)の極限粘度(VA)とポリエステル樹脂(B)の極限粘度(VB)の差(VA−VB)は、0.05〜0.20であることが好ましく、0.05〜0.15であることがさらに好ましい。
極限粘度の差が0.05未満では、得られる複合短繊維からなる不織布を熱処理した際のスパイラル捲縮発現数が乏しいものになりやすく、該不織布の風合いは硬くなりやすい。極限粘度の差が0.20を超えると、紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が悪化しやすい。また、極限粘度の差が0.05〜0.15の範囲であればより高いスパイラル捲縮の発現性能と良好な紡糸操業性が得られる点で好ましい。
本発明の複合短繊維を構成するポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の比率(以下、(A)/(B)と略する。)は、質量比率で3/7〜7/3の範囲であることが好ましい。(A)/(B)=3/7未満では得られる複合短繊維からなる不織布を熱処理した際のスパイラル捲縮発現数が乏しいものとなりやすく、(A)/(B)=7/3を超えると紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が悪化しやすくなる。
以上のように、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)は、重合組成及び極限粘度等が相違することから、前記ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)それぞれが得られる複合短繊維中に占める部分の熱収縮性が相違する。このことから、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を複合短繊維中に例えばサイドバイサイド型や偏心芯鞘型に配することにより、該複合短繊維はスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性を有することができ、該複合短繊維からなる不織布等を熱処理することによりスパイラル捲縮を発現させることができる。
本発明のポリエステル複合短繊維は、潜在捲縮数が100個以上/25mmであることが好ましく、100個/25mm〜350個/25mmがさらに好ましく、200個/25mm〜300個/25mmが特に好ましい。
本発明における潜在捲縮数とは、不織布を構成する前の原綿の状態の複合短繊維を、収縮しても緊張しないように十分に弛ませた状態で1本ずつオーブンの中にセットし、雰囲気温度170℃で15分間熱処理し(以下、170℃における無荷重下の熱処理と略する。)、上記熱処理後に発現するスパイラル捲縮の数を、JIS L 1015 けん縮数により測定するものである。なお、170℃における無荷重下の熱処理を施した後の複合短繊維の、前記JIS L 1015 けん縮数に定める繊維長が25mmに満たない場合は、複合短繊維に切断する前の糸条を用いて測定するものとする。
複合短繊維の集合体である不織布においては、該不織布を構成する該複合短繊維同士が互いに拘束しあう。そのため、不織布を構成する状態で熱処理された複合短繊維に発現するスパイラル捲縮の数は、不織布を構成しない原綿の状態で熱処理された複合短繊維に発現するそれより少なくなる。しかし、複合短繊維が170℃における無荷重下の熱処理により100個以上/25mmのスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性を有するものであれば、該複合短繊維から得られる不織布を構成した状態の複合短繊維に発現するスパイラル捲縮は、該不織布に十分な伸縮性と優れた風合いを与えるものとなる。
複合短繊維の潜在捲縮数が100個/25mm未満であると、該複合短繊維から得られる不織布は十分な伸縮性と優れた風合いを有するものとなりにくくなる。また、複合短繊維の潜在捲縮数が350個/25mmを超えると、該複合短繊維から得られる不織布に発現するスパイラル捲縮の形態が小さくなり、またはスパイラル捲縮のコイルバネ状の形態がつぶれやすくなり、不織布の伸縮性に劣るものとなりやすく好ましくない。200個/25mm〜300個/25mmの場合は、得られる複合短繊維からなる不織布の風合いが特に優れたものとなるので好ましい。
上記潜在捲縮数は、上記ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の共重合組成、共重合量及び極限粘度の他、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比率、紡糸速度、延伸倍率及び延伸時熱処理温度等を適切に選定することにより調整することができる。
本発明の複合短繊維を用いて短繊維不織布を得る際には、潜在捲縮性能として上記のようなスパイラル捲縮を発現する能力を有することに加え、8〜18個/25mmの機械捲縮が付与されていることが好ましい。ここで、機械捲縮とは、押し込み式クリンパーやスタッフィングボックス等の捲縮付与装置により捲縮を付与されたものをいい、通常、これらの捲縮付与装置によると山部と谷部が連続して存在するジグザグ状の捲縮が付与される。一般にネップや未開繊部の発生は、機械捲縮数や機械捲縮形態と密接な関係にあり、機械捲縮数が8個未満/25mmでは未開繊部が発生しやすく、18個/25mmを超えるとネップが発生しやすい。また、梳綿工程以前でスパイラル捲縮を発現させた場合、ネップが発生しやすくウェブの均斉度が悪くなるほか、ウェブの素抜けが発生しやすくなる。機械捲縮を付与する方法としては、一般的なスタッフィングボックス式、加熱ギヤ式等が採用される。
本発明の複合短繊維を乾式短繊維不織布とする際には、該複合短繊維の繊維長を25〜100mmとすることが好ましく、中でも30〜80mmとすることが好ましい。また、本発明の複合短繊維を湿式短繊維不織布とする際には、該複合短繊維の繊維長を1〜30mmとすることが好ましく、中でも3〜20mmとすることが好ましい。
複合短繊維を乾式短繊維不織布とする際に、複合短繊維の繊維長が25mm未満であると、カード機での解繊時に該複合短繊維の脱落が生じるため操業性が悪化しやすくなる。一方、複合短繊維の繊維長が100mmを超えると、カード機での解繊性が悪くなり、該複合短繊維から得られる不織布は、地合や均斉の劣るものとなりやすい。
また、複合短繊維を湿式短繊維不織布とする際に、複合短繊維の繊維長が1mm未満であると、切断時の熱によって該複合短繊維の溶着や膠着が生じやすい。一方、複合短繊維の繊維長が30mmを超えると、抄紙機でウェブを得る際に繊維塊が生じやすくなり、該複合短繊維から得られる不織布は地合や均斉の劣るものとなりやすい。
また、本発明の複合短繊維は、繊度が1〜15dtexであるものが好ましい。繊度が1dtex以上であると、紡糸、延伸工程において単糸切断等が少なく良好な操業ができる点で好ましい。一方、繊度が15dtex以下であると、紡糸糸条を十分に冷却することができ、複合短繊維及び不織布の品位も優れたものとなりやすい。
次に、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維の製造方法について、一例を挙げて説明する。
ポリエステル樹脂(A)からなるチップ及びポリエステル樹脂(B)からなるチップを通常の複合溶融紡糸装置に供給し、例えばサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に紡出させた糸条を冷却後に未延伸糸又は半未延伸糸として一旦捲き取り、または捲き取ることなしに引き続いて、延伸、熱処理等を行い糸条束を得る。この際、未延伸糸として巻き取る場合は紡速を1000m/min前後として引き取ると、紡出される複合繊維の冷却の観点から好ましい。次いで、該糸条束にスタッフィングボックス等で機械捲縮を付与し、または付与せずに糸条束を所定の長さに切断して潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維を得る。
本発明の複合短繊維は、スパイラル捲縮発現性の点からサイドバイサイド型で接合した糸条から得られるものが好ましい。
次に本発明の不織布について説明する。本発明の不織布は、上記した潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維からなり、伸長弾性率及び風合いに優れたものである。該不織布は、少なくともその一部に本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維を使用したものであるが、該不織布の伸縮性や風合いを一層向上させるためには、本発明の複合短繊維のみからなる不織布であることが好ましい。
本発明の不織布は、乾式短繊維不織布、湿式短繊維不織布のいずれでもよい。
本発明の不織布は、伸長弾性率(%)が50%以上であることが好ましく、60%以上であることが特に好ましい。
本発明における伸長弾性率(%)とは、JIS L 1015 8 10Bの方法に準じ、不織布の50%伸長時の弾性率を測定するものである。具体的には、得られた不織布を裁断して幅2.5cm、試料長15cmの試料を作成し、つかみ間隔10cm、引張り速度10cm/分の条件で50%まで引き伸ばし、1分間放置する。次に、同じ速度で徐重し3分間放置後同じ速度で一定伸びまで引き伸ばす。記録した荷重−伸長曲線から残留伸びを測り、次の式によって伸長弾性率(%)を算出し、5回の平均値を求めるものである。
E=(L−L1)/L ×100
ここに、E:伸長弾性率(%)
L:50%伸長時の伸び(mm)
L1:残留伸び(mm)
上記伸長弾性率が50%以上であると、得られる不織布は、例えば貼付剤などの製品とした場合に、該貼付剤を患部に貼り付けた際、関節部の動きに追従できるものとなりやすいので好ましい。上記伸長弾性率が60%以上であると、得られる不織布は、例えば貼付剤などの製品とした場合に、該貼付剤を患部に貼り付けた際関節部の動きに追従でき、かつ、たるみが少なくなるので好ましい。
本発明の不織布は、例えば次の方法で得ることができる。
まず、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維を用いて、通常のカード機にて開繊してウェブを作成する。次いで、得られたウェブにニードルパンチ処理やウォーターニードル処理を施して、該ウェブを構成する複合短繊維同士を交絡させる。本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維と他の繊維とを用いる場合は、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維と他の繊維を混綿した後、通常のカード機にて開繊することができる。
そして、前記複合短繊維同士を交絡させたウェブを無荷重下の状態で、あるいはパンチングプレートなどで挟んで処理するホットエアスルー型熱処理機により弛緩状態で熱処理を施し、該ウェブを構成する複合短繊維の潜在捲縮性能を顕在化させてスパイラル捲縮を発現させ、かつ、自由収縮を生じさせて、伸縮性を有する風合いに優れた不織布とする。熱処理の際の温度条件は、不織布を熱処理することで発現させるスパイラル捲縮数等に応じて適宜調整すればよいが、風合いに優れる不織布を得るためには170℃のオーブン中で1分間の無荷重下熱処理を行うのが好ましい。
また、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維は、紡績糸とした後、織編物とすることもできる。前記織編物を熱処理することにより、不織布とした場合と同様にスパイラル捲縮を発現させることができるので、該織編物は伸長弾性率及び風合いに優れたものとなる。
以上のように、本発明のポリエステル複合短繊維は、潜在捲縮性を有し、該複合短繊維からなる不織布及び織編物を熱処理することによりスパイラル捲縮が発現するものである。不織布とする際にはニードルパンチ処理やウォーターニードル処理をした後の熱処理によって、また、織編物とする際には染色や精練工程等での熱処理によって、スパイラル捲縮を発現させることができる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。各測定、評価項目は以下の方法に従った。
(1)ポリエステル樹脂(A)の各構成成分の含有率
ポリエステル樹脂(A)を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとを容量比1/20で混合した混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を用いて、昇温速度20℃/分で測定した。
(3)極限粘度([VA]、[VB])の測定
ウベローデ型粘度計を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
(4)紡糸操業性
12錘にて24時間紡糸した際の、得られた糸条束1トン当たりの切れ糸数を用いて判定した。
○:1回未満/1トン
×:1回以上/1トン
(5)複合短繊維繊度
JIS L 1015 正量繊度のA法により測定した。
(6)強伸度
JIS L 1015 引張強さ及び伸び率により測定した。
(7)機械捲縮数
短繊維とする前の、スタッフィングボックスで機械捲縮をかけた糸条束から複合繊維をサンプリングし、JIS L 1015 けん縮数により測定した。
(8)潜在捲縮数
不織布を構成する前の原綿の状態の複合短繊維を、オーブンの中に1本ずつ収縮しても緊張しないように十分に弛ませた状態でセットし、雰囲気温度170℃で15分間熱処理し、該処理後に発現するスパイラル捲縮の数を、JIS L 1015 けん縮数により測定した。本発明において必要とする潜在捲縮数は100個以上/25mmであることから、これを満たすものを合格とした。
(9)伸張弾性率
JIS L 1015 8 10Bの方法に準じ、不織布の50%伸長時の弾性率を測定した。得られた不織布を裁断して幅2.5cm、試料長15cmの試料を作成し、つかみ間隔10cm、引張り速度10cm/分の条件で50%まで引き伸ばし、1分間放置する。次に、同じ速度で徐重し3分間放置後同じ速度で一定伸びまで引き伸ばす。記録した荷重−伸長曲線から残留伸びを測り、次の式によって伸長弾性率(%)を算出し、5回の平均値を求めた。
E=(L−L1)/L ×100
ここに、E:伸長弾性率(%)
L:50%伸長時の伸び(mm)
L1:残留伸び(mm)
なお、伸長弾性率が50%以上のものを合格とした。
(10)目付
JIS L 1085 単位面積当たりの質量に準じて、20cm×20cmの試料質量を測定し、1m2当たりの質量(g/m2)に換算して算出した。
(11)風合い
得られた不織布の風合い(柔軟性、触感等)を5人のパネラーによる官能評価を行った。各々の試料で風合いが良好なもの(柔らかい、表面が滑らか)を10点満点として1〜10点の10段階で評価し5人の平均値で示した(6点以上を合格とした)。
(実施例1)
PETオリゴマーの存在するエステル化反応缶にテレフタル酸とエチレングリコールとのモル比が1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.1MPaの条件で、エステル化反応を8時間行い、反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。このPETオリゴマー49.2kgを重縮合反応缶に移送した後、ビスフェノールA1モル部に対しエチレンオキサイドが2モル部付加したビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(前述の化学式(2)中、m+n=2)11.8kg、エチレングリコール11.8kg、二酸化チタンを34質量%含有したエチレングリコールスラリー0.5kg、三酸化アンチモンを2質量%含有したエチレングリコール溶液1.1kgをそれぞれ添加した。その後、反応器を徐々に減圧にして60分後に1.2hPa以下とし、温度275℃で攪拌しながら4時間重合反応を行い、常法により払い出し、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が15モル%共重合され、多塩基酸成分としてテレフタル酸のみからなるエチレンテレフタレート単位を主体とした極限粘度0.71のポリエステル樹脂(A)を得た。前記ポリエステル樹脂(A)の各構成成分の含有率の測定は、該ポリエステル樹脂(A)を用いて行った。
前記ポリエステル樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)として通常の重合方法により得られた極限粘度0.64のPETとを用い、該ポリエステル樹脂(A)及び該ポリエステル樹脂(B)を、複合溶融紡糸装置によって、円形紡糸孔を1390個有する紡糸口金を用い、質量比率5/5のサイドバイサイド型として、紡糸温度290℃、引取速度1150m/分、吐出量1050g/分で複合紡糸し未延伸の糸条を得た。
得られた糸条を集束して糸条束とし、延伸倍率3.0倍、延伸温度70℃、熱処理温度158℃で延伸熱処理を行い延伸熱処理後の糸条を得た。その後、該糸条をスタッフィングボックスにてニップ圧0.11MPa、スタッフィング圧0.09MPaとして機械捲縮を付与した後、切断して繊維長51mmの複合短繊維を得た。なお、上記機械捲縮数の測定は、前記スタッフィングボックスで機械捲縮を付与した糸条束からサンプリングして行い、上記複合短繊維繊度、上記強伸度及び上記潜在捲縮数の測定及び評価は、前記複合短繊維からサンプリングしたものを用いて行った。
上記のようにして得られた複合短繊維をオープナーで開繊し、梳綿機でカーディングして35g/m2の目付のウェブを作成した。次いで、得られたウェブをウォーターニードル処理し、その後に170℃のオーブン中で1分間の無荷重下熱処理を行い、80g/m2の目付の不織布を得た。そして、得られた不織布を用いて、前記伸長弾性率及び風合いの評価を行った。
(実施例2)
ポリエステル樹脂(A)のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有率を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例3)
ポリエステル樹脂(A)のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有率及びポリエステル樹脂(A)の極限粘度を表1に示したように変更し、延伸熱処理工程において延伸後におこなう158℃での熱処理をおこなわず、不織布の製造工程においてオーブンで行う無加重化熱処理の温度を130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例4)
ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例5)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物として、ビスフェノールA1モル部に対しエチレンオキサイドが1モル部付加したビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(前述の化学式(2)中、m+n=1)に変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例6)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物として、ビスフェノールA1モル部に対しエチレンオキサイドが3モル部付加したビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(前述の化学式(2)中、m+n=3)に変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例7)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物として、ビスフェノールA1モル部に対しエチレンオキサイドが4モル部付加したビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(前述の化学式(2)中、m+n=4)に変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例1)
ポリエステル樹脂(A)のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有率を表1に示したように変更し、IPAを表1に示した含有率としてポリエステル樹脂(A)に加えた以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例2)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物に替えて、IPAをポリエステル樹脂(A)の共重合成分とした以外は、実施例2と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例3)
ポリエステル樹脂(A)のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有率を表1に示したように変更し、IPAを表1に示した含有率としてポリエステル樹脂(A)に加え、延伸熱処理工程において延伸後におこなう158℃での熱処理をおこなわず、不織布の製造工程においてオーブンで行う無加重化熱処理の温度を130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例4)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物に替えて、IPAをポリエステル樹脂(A)の共重合成分とし、該IPAの含有率を表1に示したようにして、延伸熱処理工程において延伸後におこなう158℃での熱処理をおこなわず、不織布の製造工程においてオーブンで行う無加重化熱処理の温度を130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例5)
ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして行い、複合短繊維及び不織布を得た。
実施例1〜7及び比較例1〜5で得られたポリエステル樹脂の特性値、複合短繊維物性物性及び不織布性能を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜7は、ポリエステル樹脂(A)におけるDEGの含有率が2.0モル%以下となり、得られたポリエステル複合短繊維は優れた捲縮発現性能を有し、この短繊維から得られた不織布は伸長弾性率が高く、風合いも良好なものであった。
実施例3は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有率が比較的多くポリエステル樹脂(A)の融点が比較的低いものとなったことから、延伸熱処理工程において熱処理をおこなわず、不織布の熱処理温度を130℃にしておこなった。その結果、得られた複合短繊維からなる不織布は、該不織布の熱処理温度が130℃にも関わらず伸長弾性率は高いものであった。しかし、延伸熱処理工程における熱処理をおこなわなかったため、該不織布の熱処理温度を130℃と低くしても該不織布を構成する該複合短繊維の収縮がやや大きく、実施例1、2及び4の不織布と比較して風合いがやや劣るものとなった。
実施例5〜7は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物として、ビスフェノールA1モル部に対するエチレンオキサイドの付加モル数が2モル部ではなく、1、3又は4モル部であるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を用いた。その結果、ポリエステル樹脂(A)はTgが比較的低いものとなり、得られた複合短繊維及び該複合短繊維からなる不織布は熱安定性に比較的劣るものとなり、該不織布は風合いが比較的劣るものとなった。
一方、比較例1は、ポリエステル樹脂(A)の共重成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の他にIPAを併用したことから、ポリエステル樹脂(A)はジエチレングリコールの含有率が2モル%を超えたものとなり、得られた複合短繊維は結晶性が劣るものとなり、該複合短繊維から得られた不織布は風合いに劣るものとなった。
比較例2は、ポリエステル樹脂(A)の共重合成分としてIPAのみを使用したことから、ポリエステル樹脂(A)はジエチレングリコールの含有率が2モル%を超えたものとなり、得られた複合短繊維は潜在捲縮数が100個/25mm未満であって結晶性に劣るものとなり、該複合短繊維から得られた不織布は伸張弾性率及び風合いに劣るものとなった。
比較例3は、ポリエステル樹脂(A)の共重合成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の他にIPAを併用し、かつ該IPAの含有率が多かったことから、ポリエステル樹脂(A)はDEGの含有率が2モル%を超えたものとなり、該ポリエステル樹脂(A)の融点が消失した。ポリエステル樹脂(A)の融点が消失したことから、延伸熱処理工程において熱処理をおこなうことができず、不織布の熱処理も熱処理温度を130℃としておこなった。その結果、得られた複合短繊維は、ポリエステル樹脂(A)が共重合組成としてIPAを含むこと及びDEGの含有率が2モル%を超えたものであることに起因して潜在捲縮数が100個/25mm未満となり、さらに延伸熱処理工程における熱処理をおこなわなかったことが相俟って結晶性及び熱安定性に劣るものとなった。そして、該複合短繊維から得られた不織布は、該複合短繊維がスパイラル捲縮発現性に劣ること及び該不織布の熱処理温度を130℃と低くしたことが相俟って伸長弾性率に劣るものとなった。さらに、該不織布は、該複合短繊維が結晶性及び熱安定性に劣るものであったことから、不織布の熱処理温度を130℃と低くしても、該不織布を構成する該複合短繊維の収縮が大きく、風合いが劣るものとなった。
比較例4は、ポリエステル樹脂(A)の共重合成分としてIPAのみを使用し、かつ該IPAの含有率が多かったことから、ポリエステル樹脂(A)はジエチレングリコールの含有率が2モル%を超えたものとなり、該ポリエステル樹脂(A)の融点が消失した。ポリエステル樹脂(A)の融点が消失したことから、延伸熱処理工程において熱処理をおこなうことができず、不織布の熱処理も熱処理温度を130℃としておこなった。その結果、得られた複合短繊維はポリエステル樹脂(A)の共重合組成としてIPAを含むこと及びDEGの含有率が2モル%を超えたものであることに起因して潜在捲縮数が劣るものとなり、さらに延伸熱処理工程における熱処理をおこなわなかったことが相俟って結晶性及び熱安定性に劣るものとなった。そして、該複合短繊維から得られた不織布は、該複合短繊維がスパイラル捲縮発現性に劣ること及び該不織布の熱処理温度を130℃と低くしたことが相俟って伸長弾性率に劣るものとなった。さらに、該不織布は、該複合短繊維が結晶性及び熱安定性に劣るものであったことから、不織布の熱処理温度を130℃と低くしても、該不織布を構成する該複合短繊維の収縮が大きく、風合いが劣るものとなった。
比較例5は、ポリエステル樹脂(A)の極限粘度が0.58未満であったことから、得られた複合短繊維は潜在捲縮数が100個/25mm未満となり、該複合短繊維から得られた不織布は、伸長弾性率及び風合いに劣るものとなった。

Claims (6)

  1. テレフタル酸を95モル%以上含む多塩基酸成分と、エチレングリコール、下記化学式(1)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物及びジエチレングリコールを含む多価アルコール成分とからなり、共重合成分としてイソフタル酸を含まないポリエステル樹脂(A)及びポリエチレンテレフタレート又はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなるポリエステル樹脂(B)からなる潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維であって、
    前記ポリエステル樹脂(A)における全多価アルコール成分に対する前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有率が10〜40モル%であり、
    前記ポリエステル樹脂(A)における全多価アルコール成分に対する前記ジエチレングリコールの含有率が1.8モル%以下であり、
    前記ポリエステル樹脂(A)の極限粘度(VA)が0.58〜0.80であることを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
  2. 前記ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が70〜80℃であることを特徴とする請求項1記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
  3. 前記ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が下記化学式(2)で表される化合物からなることを特徴とする請求項1又は2記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
  4. 前記化学式(2)中、m+n=2であることを特徴とする請求項3記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
  5. 170℃における無荷重下の熱処理で100個以上/25mmのスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維からなる不織布。

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