JP5992239B2 - 潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維およびその不織布 - Google Patents

潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維およびその不織布 Download PDF

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本発明は、不織布とした場合に優れた伸縮性及び風合いを付与することができる潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維、及び該複合短繊維からなる不織布に関するものである。
ポリエステル繊維は、耐候性や耐薬品性、ウォッシュアンドウェアー性等の優れた特性を有し、衣料用、産業資材用等、種々の用途に使用されている。従来、ポリエステル繊維をはじめとする合成繊維に伸縮性を付与する方法として、熱収縮特性の異なるポリマーをサイドバイサイド構造、又は偏心芯鞘構造に複合した潜在捲縮性繊維とする方法が数多く提案されている。
上記の潜在捲縮性繊維として、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を共重合した共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略する。)との複合繊維がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
しかし、上記複合繊維の短繊維からなる不織布を、潜在捲縮が十分に発現する条件で熱処理すると、該複合短繊維が硬化し得られる不織布の風合いが硬くなる。一方、該潜在捲縮の発現を抑えた条件で熱処理すると、該複合短繊維に発現する捲縮数が不足し得られる不織布の伸縮性が低くなるといった問題があった。
また、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン2〜7モル%及びイソフタル酸(以下、IPAと略することがある。)5〜13モル%を共重合した共重合ポリエステルとPETとの複合繊維が知られている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、上記共重合ポリエステルは結晶性に劣るため、該共重合ポリエステルを含む複合繊維は熱安定性や潜在捲縮発現性に劣ったものとなり、該複合繊維の短繊維からなる不織布は、熱処理により風合いが硬いものとなる問題があった。
特開昭62−141141号公報 特開昭62−078214号公報 特開平7−54216号公報
本発明の目的は、上記の問題を解決し、スパイラル捲縮発現性及び熱安定性に優れたポリエステル複合短繊維及び伸縮性を有し、伸長弾性率が高く、風合いに特に優れた不織布を提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決するために、鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の(1)〜(4)を要旨とするものである。
(1)多塩基酸成分としてテレフタル酸を含み、多価アルコール成分としてエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールを含む高熱収縮性ポリエステル(A)と、ポリエチレンテレフタレート又はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる低熱収縮性ポリエステル(B)がサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維であって、前記高熱収縮性ポリエステル(A)における全多価アルコール成分に対する前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率(Ma(モル%))が式(I)を満たし、前記高熱収縮性ポリエステル(A)における全多価アルコール成分に対する前記ネオペンチルグリコールの含有率(Mb(モル%))が式(II)を満たし、前記高熱収縮性ポリエステル(A)における全多価アルコール成分に対する前記ジエチレングリコールの含有率(Mc(モル%))が式(III)を満たし、前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率と前記ネオペンチルグリコールの含有率の合計(Ma+Mb(モル%))が式(IV)を満たすことを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
4≦Ma(モル%)≦10 ・・・(I)
7≦Mb(モル%)≦40 ・・・(II)
Mc(モル%)≦2.0 ・・・(III)
11≦Ma+Mb(モル%)≦45 ・・・(IV)
Ma:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率
Mb:ネオペンチルグリコールの含有率
Mc:ジエチレングリコールの含有率
(2)上記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体が下記化学式(1)で表される化合物からなることを特徴とする請求項1記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
(3)170℃における無荷重下の熱処理で100個以上/25mmのスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能を有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維からなる不織布。
本発明によれば、スパイラル捲縮発現性及び熱安定性に優れたポリエステル複合短繊維を得ることができる。さらに、本発明の複合短繊維からなる不織布は伸縮性を有し、伸長弾性率が高く、風合いに特に優れたものとなる。
本発明の複合短繊維の複合形状の一実施態様であるサイドバイサイド型を表わす該複合短繊維の横断面模式図である。 本発明の複合短繊維の複合形状の一実施態様である偏心芯鞘型を表わす該複合短繊維の横断面模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)は、テレフタル酸とエチレングリコールからなるエチレングリコール単位を主体とし、その共重合成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体(以下、BPAEOと略する。)を含む必要がある。そして、該BPAEOは下記化学式(1)で表されるように、ビスフェノールA1モル部に対しエチレンオキサイドが1〜4モル部付加した化合物からなることが好ましく、下記化学式(1)中、m+n=2である化合物からなることがより好ましい。
高熱収縮性ポリエステル(A)が共重合成分としてBPAEOを含有することで、複合短繊維中における高熱収縮性ポリエステル(A)が占める部分の熱収縮性が、該複合短繊維中における低熱収縮性ポリエステル(B)が占める部分の熱収縮性に比して顕著に高くなるので、該複合短繊維のスパイラル捲縮発現性を高めることが可能となる。ここで、スパイラル捲縮とはコイル(螺旋)バネ状の捲縮であって三次元的な立体捲縮のことをいう。
上記BPAEOの代わりにエチレンオキサイドが付加していない化合物、すなわちビスフェノールAを用いると、多塩基酸成分との反応性が悪くなって重合度が上がらず、さらには、高熱収縮性ポリエステル(A)も熱安定性に乏しいものとなる。そこで、エチレンオキサイドが付加しているBPAEOを用いることにより、多塩基酸成分との反応性を高めることができる。
BPAEOが、前記化学式(1)で表される化合物からなる場合、得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性に特に優れたものとなり、該複合短繊維からなる不織布は、伸長弾性率及び風合いが特に優れたものとなるので好ましい。さらに、前記化学式(1)中、m+n=2である化合物からなる場合、高熱収縮性ポリエステル(A)のガラス転移点はより高いものとなることから、得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性、風合いに加え、熱安定性がより優れたものとなり、該複合短繊維からなる不織布は伸長弾性率及び風合いがさらに優れたものとなるので特に好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)における、全多価アルコール成分に対するBPAEOの含有率は4〜10モル%の範囲にある必要があり、6〜10モル%が好ましい。
前記含有率が4モル%未満であると、高熱収縮性ポリエステル(A)は充分な熱収縮性を得ることができず、得られる複合短繊維は十分なスパイラル捲縮を発現させることができなくなる。また、前記含有率が10モル%を超えると、製糸性が著しく悪くなるばかりでなく、得られる複合短繊維を用いた不織布の地合が悪くなり、風合いが硬化する。前記含有率が6〜10モル%の場合は、製糸性と得られる複合短繊維からなる不織布の風合いを両立させやすいことから好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)は、共重合成分としてさらにネオペンチルグリコール(以下、NPGと略することがある。)を含む必要がある。
高熱収縮性ポリエステル(A)が共重合成分としてBPAEOに加えNPGを含むことにより、得られる複合短繊維からなる不織布は風合いに特に優れたものとなる。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)における、全多価アルコール成分に対するNPGの含有率は、7〜40モル%の範囲にある必要があり、7〜20モル%が好ましい。
前記含有率が7モル%未満であると、高熱収縮性ポリエステル(A)は充分な熱収縮性を得ることができず、得られる複合短繊維は十分なスパイラル捲縮を発現させることができなくなる。また、前記含有率が40モル%を越えると、製糸性が著しく悪くなるばかりではなく、得られる複合短繊維からなる不織布の地合が悪くなり、風合いが硬化する。また、前記含有率が7〜20モル%である場合は、得られる複合短繊維は熱安定性に優れたものとなり、加えて製糸性と不織布の風合いとを両立させやすいことから好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)がBPAEO及びNPGを共重合成分として含むことにより、得られる複合短繊維は、該複合短繊維からなる不織布に優れた風合いを与えることができる。この理由は明らかではないが、NPGが前記複合短繊維にソフト性を与えることと、前記BPAEOによって与えられた高いスパイラル捲縮発現性を熱処理等により発現させたスパイラル捲縮が相俟って、前記不織布に優れた風合いを与えることができるものと推測される。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)における、全多価アルコール成分に対するジエチレングリコール(以下、DEGと略することがある。)の含有率は2モル%以下であることが必要である。
本発明において、DEGは、高熱収縮性ポリエステル(A)の融点及び結晶性の低下を招くものであり、意図的に含有させるもののほか、該高熱収縮性ポリエステル(A)の重合に際し副生物として生成するものである。
直接重合法によるポリエステルの重合に際しては、エステル交換反応時にDEGの副生を伴う。前記含有率が2.0モル%を超える場合は、高熱収縮性ポリエステル(A)の結晶性の低下を招く。高熱収縮性ポリエステルとしてIPAを必須の共重合成分とするポリエステルは公知である。しかし、本発明者等は、該ポリエステルは該IPAを共重合することに起因してDEGの副生量が多くなることを知得した。そこで、本発明においては、該IPAを必須の共重合成分として用いず、前記BPAEO及び前記NPGを必須の共重合成分として用いることにより、高熱収縮性ポリエステル(A)におけるDEGの含有率を2.0モル%以下とし、高熱収縮性ポリエステル(A)の結晶性を高いものとすることを可能とした。これにより、得られる複合短繊維からなる不織布は熱処理を施しても収縮が少なく、風合いに特に優れたものとなる。
なお、前記含有率が0.1モル%未満であると、重合の反応工程を高度に制御することが必要となるのでコスト高となりやすい。前記含有率が0.5〜1.8モル%であると、コスト性と得られる複合短繊維の性能との兼ね合いの点で好ましい。
DEGの副生を抑制する方法としては、共重合成分としてIPAを選択しないことのほか、触媒量及び重合条件を適切に選択することが挙げられる。
本発明において、BPAEOの含有率及びNPGの含有率の合計は11〜45モル%であることが必要であり、11〜20モル%が好ましく、18〜20モル%が特に好ましい。
前記含有率の合計が11モル%未満であると、得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性が十分でなく、該複合短繊維からなる不織布は伸長弾性率に劣るものとなる。該含有率の合計が45モル%を超えると、製糸性が著しく悪くなるばかりではなく、得られた複合短繊維を用いた不織布の地合が悪くなり、風合いが硬化する。また、前記含有率が11〜20モル%であると高熱収縮性ポリエステル(A)の結晶性や融点の過度な降下が少なく、延伸後の緊張熱処理を十分におこなうことができ、得られる複合短繊維は高いスパイラル捲縮発現性を示しながら、該複合短繊維からなる不織布の風合いが特に優れたものとなるため好ましい。前記含有率が18〜20モル%であると得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性に特に優れたものとなり、該複合短繊維からなる不織布は伸長弾性率及び風合いに特に優れたものとなるので特に好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)は、多塩基酸成分がテレフタル酸を95モル%以上含むポリエステルであることが特に好ましい。さらに、高熱収縮性ポリエステル(A)は、テレフタル酸、エチレングリコール、BPAEO、NPG及びDEGのみからなるポリエステルであることが特に好ましい。
高熱収縮性ポリエステル(A)が上記ポリエステルであることにより、得られる複合短繊維はスパイラル捲縮発現性及び結晶性に優れたものとなりやすく、該複合短繊維からなる不織布は、伸縮性と風合いが特に優れたものとなりやすい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含有させても良い。
例えば、テレフタル酸以外の多塩基酸成分としては、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、水添ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、オルソフタル酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、エチレングリコール、BPAEO、NPG及びDEG以外の多価アルコール成分としては、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、トリシクロデカングリコール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
また、高熱収縮性ポリエステル(A)には、本質的な特性を損なわない限り、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐光性改良剤、難燃剤、制電剤、導電性付与剤、抗菌剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有していても良い。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度は0.58〜0.80であることが好ましい。高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度が0.58未満では、十分なスパイラル捲縮発現性を有する複合短繊維が得られにくくなる。また、該極限粘度が0.80を超えると、紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が著しく悪化しやすい。また、後述するように、低熱収縮性ポリエステル(B)として好ましい実施形態の一つであるPETを用いた場合は、該PETの通常使用する極限粘度が0.58〜0.66であるので、前記高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度は0.70〜0.80が好ましい。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)のガラス転移温度(Tg)は、70〜80℃が好ましく、75〜80℃が特に好ましい。
前記Tgが70℃未満では、前記高熱収縮性ポリエステル(A)の結晶性が低く、得られる複合短繊維は熱安定性に劣るものとなりやすい。通常のPETのTgは78℃程度であるため、ナフタレンジカルボン酸などのポリエステルの剛直性が高くなる成分を共重合しない限り高熱収縮性ポリエステル(A)のTgは80℃を超えることは無いが、該Tgが80℃を超えるほど剛直性が高くなる成分を共重合すれば潜在捲縮の発現を阻害しやすいため好ましくない。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)がBPAEO及びNPGを共重合成分とするポリエステルであることから、例えば従来技術であるIPAを共重合成分とするポリエステルと比較して、高熱収縮性ポリエステル(A)の結晶性を高いものとすることができる。その結果、高熱収縮性ポリエステル(A)のTgは比較的高いものとなるので、本発明の複合短繊維は熱安定性に優れたものとなる。さらに、高熱収縮性ポリエステル(A)のTgが上記範囲を満たすように、高熱収縮性ポリエステル(A)の共重合組成及び比率を調整することができ、これにより複合短繊維を得る際の紡糸、延伸熱処理の温度を高くすることが可能となり、得られる複合短繊維は潜在捲縮を発現させるための熱処理によって風合いが優れたものとなる。
本発明において、低熱収縮性ポリエステル(B)は、PETまたはエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルであれば特に限定されるものではないが、高熱収縮性ポリエステル(A)より熱収縮性が低いことを必要とするため、エチレンレンテレフタレート単位が全繰り返し単位中95モル%以上であるPETとすることが好ましい。
本発明において、低熱収縮性ポリエステル(B)には、高熱収縮性ポリエステル(A)と同様に、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含有させてもよい。さらに、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料、酸化セリウムのような耐光性改良剤、難燃剤、制電剤、抗菌剤、セラミック等種々の改質剤や添加剤を含有させてもよい。
本発明において、低熱収縮性ポリエステル(B)の極限粘度は0.44〜0.66であることが好ましい。低熱収縮性ポリエステル(B)の極限粘度が0.44未満では、紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が悪化しやすく、極限粘度が0.66を超えると、十分なスパイラル捲縮発現性を有する複合短繊維が得られ難くなる。また、上記のように低熱収縮性ポリエステル(B)として好ましい実施形態の一つであるPETを用いた場合は、前記低熱収縮性ポリエステル(B)の極限粘度は0.58〜0.66が好ましい。
本発明の複合短繊維において、高熱収縮性ポリエステル(A)と低熱収縮性ポリエステル(B)との極限粘度差(V(A)−V(B))は特に限定されないが、0.07以上0.25以下とすることが望ましい。
上記極限粘度差が0.07未満の場合には、得られる複合短繊維の潜在捲縮の発現が不十分となりやすい。一方、上記極限粘度差が0.25を越えると、各ポリエステルの複合流が紡糸口金から吐出される際、紡出された複合繊維の屈曲が過度に進み、該複合繊維が紡糸口金に付着して切断が生じやすく、安定して紡糸を行うことが困難となりやすい。
複合短繊維を構成する高熱収縮性ポリエステル(A)と低熱収縮性ポリエステル(B)の質量比率(以下、(A)/(B)と略する。)は3/7〜7/3の範囲であることが好ましい。(A)/(B)=3/7未満では得られる複合短繊維からなる不織布を熱処理した際のスパイラル捲縮発現数が乏しいものとなりやすく、(A)/(B)=7/3を超えると紡糸時にニーリングが発生し、糸切れが多発する等、紡糸操業性が悪化しやすくなる。
本発明において、高熱収縮性ポリエステル(A)及び低熱収縮性ポリエステル(B)は、複合短繊維の長手方向に沿ってサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に接合される必要がある。
図1(A)及び(B)は、本発明の複合短繊維の複合形状の一実施態様であるサイドバイサイド型を表す該複合短繊維の横断面模式図である。本発明におけるサイドバイサイド型として、図1(A)に示す2種類のポリエステルの接合面が直線的でほぼ等分に接合されているものや、図1(B)に示す該接合面が湾曲して接合されているものが挙げられる。
そして図2は、本発明の複合短繊維の複合形状の一実施態様である偏心芯鞘型を表す該複合短繊維の横断面模式図である。本発明における偏心芯鞘型として、図2に示す一方のポリエステルが鞘、他方のポリエステルが芯となり、芯部と鞘部の中心が一致していないものが挙げられる。なお、本発明においては、鞘部を高熱収縮性ポリエステル(A)、芯部を低熱収縮性ポリエステル(B)とすることが好ましい。
本発明のポリエステル複合短繊維は、潜在捲縮数が100個以上/25mmであることが好ましく、100個/25mm〜400個/25mmがさらに好ましく、250個/25mm〜300個/25mmが特に好ましい。
本発明における潜在捲縮数とは、不織布を構成する前の原綿の状態の複合短繊維を、収縮しても緊張しないように十分に弛ませた状態で1本ずつオーブンの中にセットし、雰囲気温度170℃で15分間熱処理し(以下、170℃における無荷重下の熱処理と略する。)、上記熱処理後に発現するスパイラル捲縮の数を、JIS L 1015 けん縮数により測定するものである。なお、170℃における無荷重下の熱処理を施した後の複合短繊維の、前記JIS L 1015 けん縮数に定める繊維長が25mmに満たない場合は、複合短繊維に切断する前の糸条を用いて測定するものとする。
複合短繊維の集合体である不織布においては、該不織布を構成する該複合短繊維同士が互いに拘束しあう。そのため、不織布を構成する状態で熱処理された複合短繊維に発現するスパイラル捲縮の数は、不織布を構成しない原綿の状態で熱処理された複合短繊維に発現するそれより少なくなる。しかし、複合短繊維が170℃における無荷重下の熱処理により100個以上/25mmのスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性を有するものであれば、該複合短繊維から得られる不織布を構成した状態の複合短繊維に発現するスパイラル捲縮は、該不織布に十分な伸縮性と優れた風合いを与えるものとなる。
したがって、複合短繊維の潜在捲縮数が100個/25mm未満であると、該複合短繊維から得られる不織布は十分な伸縮性と優れた風合いを有するものとなりにくい。また、複合短繊維の潜在捲縮数が400個/25mmを超えると、該複合短繊維から得られる不織布に発現するスパイラル捲縮の形態が小さくなり、またはスパイラル捲縮のコイルバネ状の形態がつぶれやすくなり、不織布の伸縮性に劣るものとなりやすく好ましくない。該潜在捲縮数が250個/25mm〜300個/25mmであると、該複合短繊維からなる不織布は伸長弾性率に特に優れたものとなるので特に好ましい。
上記潜在捲縮数は、上記高熱収縮性ポリエステル(A)及び低熱収縮性ポリエステル(B)の共重合組成、共重合量及び極限粘度の他、高熱収縮性ポリエステル(A)と低熱収縮性ポリエステル(B)の質量比率、紡糸速度、延伸倍率及び延伸時熱処理温度等を適切に選定することにより調整することができる。
本発明の複合短繊維を用いて短繊維不織布を得る際には、潜在捲縮性能として上記のようなスパイラル捲縮を発現する能力を有することに加え、8〜18個/25mmの機械捲縮が付与されていることが好ましい。ここで、機械捲縮とは、押し込み式クリンパーやスタッフィングボックス等の捲縮付与装置により捲縮を付与されたものをいい、通常、これらの捲縮付与装置によると山部と谷部が連続して存在するジグザグ状の捲縮が付与される。一般にネップや未開繊部の発生は、機械捲縮数や機械捲縮形態と密接な関係にあり、機械捲縮数が8個未満/25mmでは未開繊部が発生しやすく、18個/25mmを超えるとネップが発生しやすい。また、梳綿工程以前でスパイラル捲縮を発現させた場合、ネップが発生しやすくウェブの均斉度が悪くなるほか、ウェブの素抜けが発生しやすくなる。機械捲縮を付与する方法としては、一般的なスタッフィングボックス式、加熱ギヤ式等が採用される。
本発明の複合短繊維を乾式短繊維不織布とする際には、該複合短繊維の繊維長を25〜100mmとすることが好ましく、中でも30〜80mmとすることが好ましい。また、本発明の複合短繊維を湿式短繊維不織布とする際には、該複合短繊維の繊維長を1〜30mmとすることが好ましく、中でも3〜20mmとすることが好ましい。
複合短繊維を乾式短繊維不織布とする際に、複合短繊維の繊維長が25mm未満であると、カード機での解繊時に該複合短繊維の脱落が生じるため操業性が悪化しやすくなる。一方、複合短繊維の繊維長が100mmを超えると、カード機での解繊性が悪くなり、該複合短繊維から得られる不織布は、地合や均斉の劣るものとなりやすくなる。
また、複合短繊維を湿式短繊維不織布とする際に、複合短繊維の繊維長が1mm未満であると、切断時の熱によって該複合短繊維の溶着や膠着が生じやすくなる。一方、複合短繊維の繊維長が30mmを超えると、抄紙機でウェブを得る際に繊維塊が生じやすくなり、該複合短繊維から得られる不織布は地合や均斉の劣るものとなりやすくなる。
また、本発明の複合短繊維は、繊度が1〜15dtexであるものが好ましい。繊度が1dtex未満であると、紡糸、延伸工程において単糸切断が頻発し、操業性が悪化するとともに、得られる不織布の品位が低下しやすい。一方、繊度が15dtexを超えると紡糸糸条の冷却が不十分となり、繊維の品位が低下し、得られる不織布の品位も低下しやすい。
次に、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維の製造方法について、一例を挙げて説明する。
高熱収縮性ポリエステル(A)からなるチップ及び低熱収縮性ポリエステル(B)からなるチップを通常の複合溶融紡糸装置に供給し、例えばサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に紡出させた糸条を冷却後に未延伸糸又は半未延伸糸として一旦捲き取り、または捲き取ることなしに引き続いて、延伸、熱処理等を行い糸条束を得る。この際、未延伸糸として巻き取る場合は紡速を1000m/min前後として引き取ると、紡出される複合繊維の冷却の観点から好ましい。次いで、該糸条束にスタッフィングボックス等で機械捲縮を付与し、または付与せずに糸条束を所定の長さに切断して潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維を得る。
本発明の複合短繊維は、スパイラル捲縮発現性の点からサイドバイサイド型で接合した糸条から得られるものが好ましい。
次に本発明の不織布について説明する。本発明の不織布は、上記した潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維からなり、伸縮性を有し、風合いに特に優れたものである。前記不織布は、少なくともその一部に本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維含むものであるが、該不織布の伸縮性や風合いを一層向上させるためには、該複合短繊維のみからなる不織布とすることが好ましい。
本発明の不織布は、乾式短繊維不織布、湿式短繊維不織布のいずれでもよい。
本発明の不織布は、伸長弾性率(%)が50%以上であることが好ましく、65%以上であることが特に好ましい。
本発明における伸長弾性率(%)とは、JIS L 1015 8 10Bの方法に準じ、不織布の50%伸長時の弾性率を測定するものである。具体的には、得られた不織布を裁断して幅2.5cm、試料長15cmの試料を作成し、つかみ間隔10cm、引張り速度10cm/分の条件で50%まで引き伸ばし、1分間放置する。次に、同じ速度で徐重し3分間放置後同じ速度で一定伸びまで引き伸ばす。記録した荷重−伸長曲線から残留伸びを測り、次の式によって伸長弾性率(%)を算出し、5回の平均値を求めるものである。
E=(L−L1)/L ×100
ここに、E:伸長弾性率(%)
L:50%伸長時の伸び(mm)
L1:残留伸び(mm)
上記伸長弾性率が高いほど、不織布の弾性回復性が良好であることを表す。上記伸長弾性率が50%以上であると、得られる不織布は、例えば貼付剤などの製品とした場合に、該貼付剤を患部に貼り付けた際、関節部の動きに追従できるものとなりやすいので好ましい。上記伸長弾性率が65%以上であると、得られる不織布は、例えば貼付剤などの製品とした場合に、該貼付剤を患部に貼り付けた際関節部の動きに追従でき、かつ、たるみが少なくなるので好ましい。
本発明の不織布は、例えば次の方法で得ることができる。
まず、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維を用いて、通常のカード機にて開繊してウェブを作成する。次いで、得られたウェブにニードルパンチ処理やウォーターニードル処理を施して、該ウェブを構成する複合短繊維同士を交絡させる。本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維と他の繊維とを用いる場合は、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維と他の繊維を混綿した後、通常のカード機にて開繊することができる。
そして、前記複合短繊維同士を交絡させたウェブを無荷重下の状態で、あるいはパンチングプレートなどで挟んで処理するホットエアスルー型熱処理機により弛緩状態で熱処理を施し、該ウェブを構成する複合短繊維の潜在捲縮性能を顕在化させてスパイラル捲縮を発現させ、かつ、自由収縮を生じさせて、伸縮性を有する風合いに優れた不織布とする。熱処理の際の温度条件は、不織布を熱処理することで発現させるスパイラル捲縮数等に応じて適宜調整すればよいが、風合いに優れる不織布を得るためには170℃のオーブン中で1分間の無荷重下熱処理を行うのが好ましい。
また、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維は、紡績糸とした後、織編物とすることができる。前記織編物を熱処理することにより、不織布とした場合と同様にスパイラル捲縮を発現させることができるので、該織編物は伸縮性を有し、風合いに優れたものとなる。
以上のように、本発明のポリエステル複合短繊維は、潜在捲縮性を有し、該複合短繊維からなる不織布及び織編物を熱処理することによりスパイラル捲縮が発現するものである。不織布とする際にはニードルパンチ処理やウォーターニードル処理をした後の熱処理によって、また、織編物とする際には染色や精練工程での熱処理によって、スパイラル捲縮を発現させることができる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。各測定、評価項目は以下の方法に従った。
(1)高熱収縮性ポリエステル(A)の各構成成分の含有率
高熱収縮性ポリエステル(A)からなるチップを用い、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとを容量比1/20で混合した混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(2)極限粘度(V(A)、V(B))の測定
ウベローデ型粘度計を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
(3)高熱収縮性ポリエステル(A)のガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)の測定
セイコー電子工業社製示差走査熱量計SSC5200を用いて、10℃/分の昇温速度で測定した。
(4)複合短繊維繊度
JIS L 1015 正量繊度のA法により測定した。
(5)強伸度
JIS L 1015 引張強さ及び伸び率により測定した。
(6)機械捲縮数
短繊維とする前の、スタッフィングボックスで機械捲縮をかけた糸条束から複合繊維をサンプリングし、JIS L 1015 けん縮数により測定した。
(7)潜在捲縮数
不織布を構成する前の原綿の状態の複合短繊維を、オーブンの中に1本ずつ収縮しても緊張しないように十分に弛ませた状態でセットし、雰囲気温度170℃で15分間熱処理し、該処理後に発現するスパイラル捲縮の数を、JIS L 1015 けん縮数により測定した。本発明において必要とする潜在捲縮数は100個以上/25mmであることから、これを満たすものを合格とした。
(8)伸張弾性率
JIS L 1015 8 10Bの方法に準じ、不織布の50%伸長時の弾性率を測定した。得られた不織布を裁断して幅2.5cm、試料長15cmの試料を作成し、つかみ間隔10cm、引張り速度10cm/分の条件で50%まで引き伸ばし、1分間放置する。次に、同じ速度で徐重し3分間放置後同じ速度で一定伸びまで引き伸ばす。記録した荷重−伸長曲線から残留伸びを測り、次の式によって伸長弾性率(%)を算出し、5回の平均値を求めた。
E=(L−L1)/L ×100
ここに、E:伸長弾性率(%)
L:50%伸長時の伸び(mm)
L1:残留伸び(mm)
なお、伸長弾性率が50%以上のものを合格とした。
(9)目付
JIS L 1085 単位面積当たりの質量に準じて、20cm×20cmの試料質量を測定し、1m2当たりの質量(g/m2)に換算して算出した。
(10)風合い
得られた不織布の風合い(柔軟性、触感等)を5人のパネラーによる官能評価を行った。各々の試料で風合いが良好なもの(柔らかい、表面が滑らか)を10点満点として1〜10点の10段階で評価し5人の平均値で示した(6点以上を合格とした)。
(実施例1)
高熱収縮性ポリエステル(A)としてエチレンテレフタレート単位を主体とし、BPAEOとしてビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが2モル部付加した化合物(前述の化学式(1)中、m+n=2であるBPAEO)を全多価アルコール成分に対し7モル%、NPG9モル%、ジエチレングリコール1.7モル%を含む極限粘度0.74のポリエステルを用い、低熱収縮性ポリエステル(B)として極限粘度0.64のPETを用いた。
前記高熱収縮性ポリエステル(A)及び前記低熱収縮性ポリエステル(B)を、複合溶融紡糸装置によって、円形紡糸孔を1390個有する紡糸口金を用い、質量比率5/5のサイドバイサイド型として、紡糸温度290℃、引取速度1150m/分、吐出量1050g/分で複合紡糸し未延伸の糸条を得た。得られた糸条を集束して糸条束とし、延伸倍率3.0倍、延伸温度70℃で延伸し、158℃で緊張熱処理を行い、延伸熱処理後の糸条を得た。その後、該糸条をスタッフィングボックスにてニップ圧0.11MPa、スタッフィング圧0.09MPaとして機械捲縮を付与した後、切断して繊維長51mmの複合短繊維を得た。なお、上記機械捲縮数の測定は、前記スタッフィングボックスで機械捲縮を付与した糸条束からサンプリングして行い、上記複合短繊維繊度、上記強伸度及び上記潜在捲縮数の測定及び評価は、前記複合短繊維からサンプリングしたものを用いて行った。
上記のようにして得られた複合短繊維をオープナーで開繊し、梳綿機でカーディングして35g/m2の目付のウェブを作成した。次いで、得られたウェブをウォーターニードル処理し、その後に170℃のオーブン中で1分間の無荷重下熱処理を行い、80g/m2の目付の不織布を得た。そして、得られた不織布を用いて、前記伸長弾性率及び風合いの評価を行った。
(実施例2及び3)
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEOの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例4)
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEO及びNPGの含有率並びに高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例5)
低収縮性ポリエステル(B)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例6)
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるNPGの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例7)
BPAEOとして、ビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが2モル部付加した化合物に替えて、ビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが4モル部付加した化合物(前述の化学式(1)中、m+n=4)を用いた以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例8)
BPAEOとして、ビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが2モル部付加した化合物に替えて、ビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが1モル部付加した化合物(前述の化学式(1)中、m+n=1)を用いた以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(実施例9)
BPAEOとして、ビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが2モル部付加した化合物に替えて、ビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが3モル部付加した化合物(前述の化学式(1)中、m+n=3)を用いた以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例1)
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEO及びNPGの含有率並びに高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更し、製糸工程にて延伸後の緊張熱処理をおこなわなかった以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例2及び4)
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEO及びNPGの含有率並びに高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例3)
高熱収縮性ポリエステル(A)におけるNPGの含有率及び高熱収縮性ポリエステル(A)の極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例5)
高熱収縮ポリエステル(A)の構成成分であるNPGをIPAに変更し、極限粘度を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にしておこない、複合短繊維及び不織布を得た。
(比較例6)
高熱収縮ポリエステル(A)の構成成分であるBPAEOをビスフェノールA(以下、BPOと略することがある。)に変更した以外は実施例1と同様にしておこなった。
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られたポリエステルの特性値、複合短繊維物性及び不織布性能を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜9のポリエステル複合短繊維は優れたスパイラル捲縮発現性能を有し、該短繊維から得られた不織布は伸縮性及び風合いが良好なものであった。特に、BPAEOとしてビスフェノールA1モル部にエチレンオキサイドが2モル部付加した化合物(前記化学式(1)中、m+n=2)を用い、BPAEOの含有率及びNPGの含有率の合計が11〜20モル%である実施例1〜5は、高熱収縮性ポリエステル(A)のガラス転移点が高く、得られた複合短繊維は優れたスパイラル捲縮発現性を示しながら、得られた不織布は伸長弾性率及び風合いに特に優れたものであった。
一方、比較例1は、高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEOの含有率が10モル%を大きく超えたものであったことから、高熱収縮性ポリエステル(A)の融点が消失し、製糸工程で緊張熱処理をおこなうことができず、得られた不織布の地合が悪く、風合いに劣るものとなった。
比較例2は、高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEOの含有率が4モル%未満であったことから、得られた複合短繊維の潜在捲縮数が100個未満となり、得られた不織布はスパイラル捲縮が乏しく、伸縮性及び伸長弾性率に劣るものとなった。
比較例3は、高熱収縮性ポリエステル(A)におけるNPGの含有率が7モル%未満であったことから、得られた複合短繊維の潜在捲縮数が100個未満となり、得られた不織布はスパイラル捲縮が乏しく、伸縮性及び伸長弾性率に劣るものであった。
比較例4は、高熱収縮性ポリエステル(A)におけるBPAEOの含有率とNPGの含有率との合計が45モル%を超えたものであったことから、高熱収縮性ポリエステル(A)の融点が消失し、得られた不織布は地合が悪く、風合いが硬いものとなった。
比較例5は、高熱収縮性ポリエステル(A)においてNPGに替えてIPAを共重合したことから、該高熱収縮性ポリエステル(A)はジエチレングリコールの含有量が2.0モル%を超えたものとなり、得られた不織布は、熱処理により該不織布を構成する複合短繊維が収縮し、風合いが硬いものとなった。
比較例6は、高熱収縮性ポリエステル(A)においてBPAEOに替えてBPAを構成成分としたことから、重合が進行せず、高熱収縮性ポリエステル(A)のチップを得ることができなかった。

Claims (4)

  1. 多塩基酸成分としてテレフタル酸を含み、多価アルコール成分としてエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールを含む高熱収縮性ポリエステル(A)と、ポリエチレンテレフタレート又はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる低熱収縮性ポリエステル(B)とがサイドバイサイド型又は偏心芯鞘型に接合した潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維であって、
    前記高熱収縮性ポリエステル(A)における全多価アルコール成分に対する前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率(Ma(モル%))が式(I)を満たし、
    前記高熱収縮性ポリエステル(A)における全多価アルコール成分に対する前記ネオペンチルグリコールの含有率(Mb(モル%))が式(II)を満たし、
    前記高熱収縮性ポリエステル(A)における全多価アルコール成分に対する前記ジエチレングリコールの含有率(Mc(モル%))が式(III)を満たし、
    前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率と前記ネオペンチルグリコールの含有率の合計(Ma+Mb(モル%))が式(IV)を満たすことを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
    4≦Ma(モル%)≦10 ・・・(I)
    7≦Mb(モル%)≦40 ・・・(II)
    Mc(モル%)≦2.0 ・・・(III)
    11≦Ma+Mb(モル%)≦45 ・・・(IV)
    Ma:ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の含有率
    Mb:ネオペンチルグリコールの含有率
    Mc:ジエチレングリコールの含有率
  2. 前記ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体が下記化学式(1)で表される化合物からなることを特徴とする請求項1記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
  3. 170℃における無荷重下の熱処理で100個以上/25mmのスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性能を有することを特徴とする請求項1又は2記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の潜在捲縮性ポリエステル複合短繊維からなる不織布。
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